副業会社員に仕事を頼む時も新法の対象になるか|従業員でない相手への発注ルール 2026


この記事のポイント
- ✓副業会社員に業務委託で仕事を発注する際
- ✓フリーランス新法の対象になるのかを解説
- ✓書面明示や支払期日などの義務
「副業をしている会社員に、業務委託で仕事をお願いしたい。でもこの人はうちの従業員じゃないし、本業もある。それでもフリーランス新法の対象になるのだろうか」。こう相談されることが、ここ数ヶ月で急に増えました。個人事業主として活動しながら発注もされているクライアントの方、店舗を経営していて事務作業を誰かに頼みたい方、そういう立場の方からの声です。
結論から先にお伝えします。副業会社員であっても、発注事業者との関係では「従業員を使用しない事業者」に該当すれば、フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の保護対象になります。相手の本業が会社員かどうかは関係ありません。大丈夫です。順を追って、発注する側が何を守ればよいのか、費用感はどのくらいか、依頼の流れまで一つずつお話ししていきます。
副業会社員への業務委託発注が増えている背景
まず、なぜこのテーマの相談が増えているのか、少し俯瞰して見てみましょう。
働き方改革以降、多くの企業が副業・兼業を容認する方向に舵を切りました。厚生労働省も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、企業側に対して副業を認める就業規則の整備を促しています。この流れの中で、平日の夜や週末に個人としてスキルを提供する会社員が増加しました。
まずは、実際に業務委託で副業を行っている人たちの「リアルな数字」を見ていきましょう。ここでは、パーソルキャリア株式会社が発表した「副業・フリーランス人材白書2025」のデータをもとに、業務委託で副業をする人の実態を解説します。 出典: hipro-job.jp
発注する側から見ると、この動きは大きなチャンスです。専業フリーランスに比べて、副業会社員は本業で培った実務経験や専門知識を持っていることが多く、経理・広告運用・システム開発・デザイン・ライティングなど幅広い分野で即戦力になります。しかも、代理店や制作会社に依頼するより費用を抑えられるケースが多いのも事実です。
一方で、「相手は会社員だから、フリーランス向けの法律は関係ないだろう」という誤解も同時に広がっています。この誤解のまま契約を進めてしまうと、知らないうちに法律違反の状態になっているリスクがあります。まずはこの点を正確に整理しておきましょう。
フリーランス新法は副業会社員への発注にも適用されるか
「特定受託事業者」の定義を確認する
フリーランス新法は2024年11月1日に施行された法律で、発注事業者と個人事業者(フリーランス)との取引を適正化することを目的としています。この法律のポイントは、保護対象を「特定受託事業者」という言葉で定義していることです。
特定受託事業者とは、業務委託の相手方であって、次のいずれかに当てはまる者を指します。
・従業員を使用しない個人 ・代表者以外に従業員を使用しない法人(一人法人)
ここで重要なのは、この定義に「本業が会社員かどうか」という条件は一切含まれていない点です。法律が見ているのは「発注者から業務委託を受けるその人が、従業員を雇っているかどうか」だけです。副業会社員は、勤務先では従業員(労働者)という立場ですが、個人として別の会社から業務委託を受ける場面では、多くの場合「従業員を使用しない個人」に該当します。
つまり、あなたが副業会社員に業務委託で仕事を発注する場合、その相手が誰かを雇っていない限り、原則としてフリーランス新法の対象になります。「相手は会社員だから対象外」という理解は誤りです。
発注事業者に課される主な義務
特定受託事業者に業務委託をする発注事業者には、取引の規模や継続期間に応じていくつかの義務が課されます。主なものを整理します。
・書面等による取引条件の明示(業務内容、報酬額、支払期日などを明確にする) ・報酬の支払期日を、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に設定する ・継続的業務委託(1ヶ月以上)の場合、募集情報の的確表示、育児介護等への配慮、ハラスメント対策体制の整備 ・6ヶ月以上の継続的業務委託を中途解除・不更新する場合は、原則30日前までの予告
短期・単発の依頼であっても、書面等での取引条件明示義務は原則として発生します。「口約束で始めて、後から条件が揉めた」というトラブルは、この明示義務を軽視したケースで特に多く起きています。
副業会社員だからといって、これらの義務が軽くなることはありません。むしろ副業会社員は本業と並行して作業時間を確保しているため、納期や報酬の認識ズレがトラブルに発展しやすい傾向があります。だからこそ、書面での条件明示は発注者自身を守る意味でも重要です。
フリーランス(個人事業主)や会社員の副業希望者と業務委託契約を結び、プロジェクトベースで仕事をしたいと考える企業も増えてきました。 出典: note.com
発注する前に確認しておきたい「雇用」との境界線
副業会社員への業務委託で、法律面でもう一つ注意すべきなのが「実態が雇用契約とみなされないか」という論点です。
業務委託契約は、あくまで対等な事業者間の契約です。発注者が業務の進め方や労働時間を細かく指揮命令し、専属的に拘束するような働かせ方をすると、契約書の名称が「業務委託契約書」であっても、実態として「雇用」と判断されるリスクがあります。これは労働基準法や社会保険関連の適用に関わる重大な論点で、税務調査や労基署の調査でも確認されるポイントです。
具体的には、以下のような発注の仕方は避けるべきです。
・始業・終業時刻を指定し、勤務時間を管理する ・業務の進め方を細かく指示し、裁量の余地をほとんど残さない ・他社の仕事を受けることを禁止する ・会社の設備やパソコンを使わせ、出社を強制する
副業会社員は本業ですでに雇用契約を結んでいるため、あなたが発注する業務委託まで「雇用的な働かせ方」にしてしまうと、本業側の就業規則(副業の届出制、競業避止など)とも衝突しかねません。発注者としては、成果物や納期、業務範囲を明確にし、進め方や時間配分は相手の裁量に委ねる設計にすることが、法的リスクを避けるうえでも実務上もっとも安全です。
副業会社員に発注する際の費用相場
発注者が最も気になるのは、やはり費用感でしょう。職種別のおおよその相場を整理します。あくまで目安であり、実績・専門性・緊急度によって変動します。
・SNS運用代行:月額3万円〜10万円程度(投稿本数・分析レポートの有無で変動) ・経理・事務代行:時給1,500円〜3,000円程度、または月額固定契約 ・Webライティング:1文字1円〜5円程度(専門知識が必要な分野ほど単価は上がる) ・簡単なデザイン制作:1件1万円〜5万円程度 ・広告運用代行:広告費の15%〜20%程度、または月額固定
代理店や制作会社などの仲介事業者を通す場合、この相場に加えてディレクション費や仲介手数料が上乗せされることが一般的です。仲介事業者に発注すると窓口が一本化されて楽な反面、実際に手を動かす人に届く報酬は目減りし、その分発注者側の総支払額も膨らみやすくなります。
一方、副業会社員を含むフリーランスに直接依頼する場合は、間に立つ仲介会社が存在しない分、中間マージンが発生しません。同じ予算でも、発注者はより多くの作業量を依頼できますし、受け手にとっても手取りが厚くなります。この構造は、発注者・受注者の双方にメリットがある点として押さえておく価値があります。
失敗しない発注先の選び方
ここからは、実際にどう選び、どう依頼を進めればよいかを具体的にお話しします。
選定時にチェックすべき4つのポイント
実績とポートフォリオを確認する:本業の専門性と、実際に副業として提供できる成果物が一致しているかを確認しましょう。本業がマーケターだからといって、必ずしもSNS運用の実務経験が豊富とは限りません。
稼働可能な時間帯と量を事前に確認する:副業会社員は平日夜や週末しか稼働できないことがほとんどです。急ぎの案件を依頼する場合は、対応可能な時間帯を最初に確認しておかないと、納期のミスマッチが起きます。
連絡手段とレスポンスの目安をすり合わせる:本業がある以上、日中の即レスは期待できません。「24時間以内に返信」「週2回定例で進捗共有」など、具体的な運用ルールを最初に決めておくとストレスが減ります。
契約条件を書面で残す:前述のフリーランス新法の観点からも、業務内容・報酬・支払期日・納品形式を書面(メールやチャットでのテキスト明示でも可)で残すことが大切です。
私自身の失敗談
実は私自身、フリーランスとして独立した当初、逆の立場で発注を受ける側として痛い経験をしたことがあります。ある依頼主から「とりあえず口頭で条件を決めて、契約書は後で」と言われて仕事を始めたところ、納品後になって報酬額の認識が食い違い、支払いまで1ヶ月以上揉めてしまったのです。
この経験があったからこそ、後に自分が発注する立場になったとき、必ず最初に条件を文章で残すようにしています。「言った言わない」のトラブルは、書面一枚あれば防げることがほとんどです。発注者・受注者どちらの立場であっても、最初の条件確認を丁寧にすることが、結局は一番の近道だと感じています。
業務範囲の決め方
副業会社員への発注でもっとも重要なのが、業務範囲(スコープ)の明確化です。範囲があいまいなまま進めると、「ここまでやってもらえると思っていた」「それは契約に含まれていない」という認識のズレが必ず起きます。
具体的には、以下の項目を発注前にリスト化しておきましょう。
・成果物の形式(文書、画像、コード、レポートなど) ・修正対応の回数と範囲(何回まで無料修正か、それ以降は追加費用か) ・打ち合わせの頻度と方法(オンライン/テキストのみ) ・素材やデータの提供方法と提供元(発注者側で用意するか、受注者側で調達するか) ・著作権・使用権の帰属(納品後、誰がどこまで自由に使えるか)
特に著作権の帰属は見落とされがちですが、業務委託契約では原則として著作権は制作者(受注者)に残るため、発注者側が自由に二次利用したい場合は、契約書に権利譲渡の条項を明記する必要があります。ここを曖昧にしたまま進めると、後で「この画像を別の用途に使いたいが、著作権はどうなっているのか」という揉め事に発展します。
発注の流れ
実際に副業会社員へ業務委託で発注する際の基本的な流れを整理します。
- 業務内容の言語化:依頼したい業務を具体的な言葉に落とし込みます。「SNSを何とかしてほしい」ではなく「Instagramの週3投稿と月次分析レポートの作成」のように、粒度を細かくします。
- 予算感の設定:前述の相場を参考に、上限予算を先に決めておきます。
- 募集・マッチング:知人紹介、SNS、業務委託マッチングサービスなど複数の経路で候補を探します。
- 面談・すり合わせ:稼働時間、コミュニケーション方法、業務範囲を確認します。
- 契約条件の書面化:業務内容、報酬、支払期日、契約期間、解除条件を文書で残します。
- 業務開始・進捗管理:定例の報告タイミングを決め、細かすぎない範囲で進捗を確認します。
- 検収・支払い:成果物を確認し、フリーランス新法が定める支払期日(受領日から60日以内のできる限り短い期間)を守って支払います。
会社の担当者としてお仕事ガイドから業務内容を具体化したい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のページで、広告運用やSNS分析といった委託しやすい業務の切り出し方が整理されています。システム開発やアプリ改修を依頼したい場合は、アプリケーション開発のお仕事で必要な工程や発注時の確認事項を確認しておくと、業務範囲を決める際の抜け漏れを減らせます。
契約書の準備について
書面での条件明示は法律上の義務であると同時に、トラブル予防の観点からも欠かせません。契約書をゼロから作るのは負担が大きいため、テンプレートを活用するのが現実的です。発注者向けに項目が整理されたテンプレートを使えば、報酬・支払期日・解除条件といった必須項目の抜け漏れを防げます。業務委託契約書の作り方|発注者向けテンプレート付きでは、フリーランス新法の明示義務を踏まえた条項の書き方が解説されています。あわせて業務委託契約書テンプレート|発注者向けチェックリスト付き【2026年版】も、契約前に確認すべき項目をチェックリスト形式でまとめているので、初めて発注する方には特に参考になります。
なお、副業会社員に限らず、専門職の方への発注を検討している場合は職種特有の働き方も押さえておくとよいでしょう。例えば薬剤師フリーランスの働き方|派遣・業務委託・ライターの選択肢のように、専門資格を持つ人材が業務委託でどのように働いているかを知ることで、他職種への発注時にも応用できる視点が得られます。
単価データから見る発注の目安
職種ごとの単価相場を客観的なデータで確認しておくと、予算設定がしやすくなります。例えばエンジニアへの開発委託を検討する際はソフトウェア作成者の年収・単価相場、記事作成やコンテンツ制作を委託する際は著述家,記者,編集者の年収・単価相場のようなデータベースを参照すると、相手の専門性に見合った適正な報酬を提示しやすくなります。相場より極端に低い金額で発注しようとすると、結局は途中離脱や品質低下を招き、かえって追加コストがかさむケースが少なくありません。
運営者から見た、直接依頼が定着する理由
フリーランス・在宅ワーク市場を長く見てきた運営者の立場から言えば、副業会社員への直接発注が増えている背景には、単なるコスト削減以上の理由があります。長く良い関係が続く発注者ほど、単発の作業を右から左に流すのではなく「この人に任せておけば安心」という信頼関係の構築に時間を使っています。仲介会社を挟んだ取引では、この信頼関係が発注者と実務担当者の間に直接築かれにくく、担当者が変わるたびに一からやり直しになることもしばしばです。
また、中間マージンが乗らない直接取引は、同じ予算でも発注者はより多くの作業を依頼でき、受け手にとっては同じ作業量でも手取りが厚くなります。手数料0%で直接つながる仕組みは、金額の大小そのものより「双方にとって割のいい取引が続けやすい」という質の面で効いてきます。長期的に見れば、これが結果的に発注者側の採用・教育コストの削減にもつながっているという実感があります。
もう一つ、現場で感じるのは、フリーランス新法の施行以降、発注者側の意識が明らかに変わってきたということです。「口約束で進めて後から揉める」という相談は、以前に比べて減少傾向にあります。書面での条件明示が当たり前になったことで、副業会社員のように限られた時間で稼働する人材とも、無理のない形で継続的な関係を築きやすくなったと言えるでしょう。法律の整備は面倒に感じるかもしれませんが、結果的には発注者・受注者双方の安心材料になっています。
よくある質問
Q. 副業会社員に業務委託で発注する場合、必ず契約書を作らないといけませんか?
契約書という形式でなくても、フリーランス新法により業務内容・報酬・支払期日などの取引条件を書面またはメール等で明示する義務があります。口頭のみのやり取りは避けましょう。
Q. 副業会社員への報酬支払いはいつまでにすればよいですか?
フリーランス新法では、成果物を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定することが求められています。月末締め翌々月払いなど極端に遅い設定は避けるべきです。
Q. 副業会社員に業務委託で発注すると、雇用契約とみなされることはありますか?
勤務時間や進め方を細かく指揮命令し、専属的に拘束する働かせ方をすると、実態として雇用と判断されるリスクがあります。成果物と納期を定め、進め方は相手の裁量に委ねる契約設計が安全です。
Q. 仲介会社を通さず副業会社員に直接発注するメリットは何ですか?
仲介手数料が発生しないため、同じ予算でより多くの作業を依頼できます。受注者側も手取りが厚くなるため、双方にとって継続しやすい関係を築きやすい点がメリットです。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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