退職金への税金を減らす受け取り方と申告の注意点


この記事のポイント
- ✓退職金への税金について
- ✓所得税・住民税の計算方法
- ✓転職・年金受け取り時の注意点を解説します
まず、安心してください。退職金への税金は、給与や賞与と同じように全額へそのまま課税される仕組みではありません。長年働いたことへの配慮として「退職所得控除」があり、さらに原則として控除後の金額を2分の1にして税額を計算します。ただし、申告書の提出漏れ、短期退職、役員退職金、複数回の退職金、年金受け取りを選んだ場合などでは扱いが変わるため、受け取る前に全体像を押さえておくことが大切です。
退職金への税金はどのように決まるのか
退職金への税金を考えるとき、最初に理解したいのは「退職所得」という独立した扱いです。会社員の給与は給与所得、事業の利益は事業所得、退職により受け取る退職金は退職所得として整理されます。退職所得は、長い勤務期間の成果が一時に支払われる性質があるため、税負担が急に重くなりすぎないように、退職所得控除と2分の1課税という仕組みが用意されています。
国税庁の退職金を受け取ったときでは、退職所得の計算式や退職所得控除額、申告書を提出した場合の扱いが説明されています。退職金の額面だけを見て「税金でかなり引かれる」と不安になる人は多いですが、実際には勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。まずは額面から退職所得控除を引き、その後に課税対象となる退職所得を出す順番で考えます。
所得税と住民税がかかる
退職金にかかる主な税金は、所得税、復興特別所得税、住民税です。会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社が退職金支払い時に税額を計算し、源泉徴収や特別徴収を行うのが一般的です。この場合、多くの人は退職金だけを理由に確定申告をする必要はありません。ただし、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除、年の途中退職による給与の年末調整未了などがある場合は、確定申告で精算する場面があります。
住民税も忘れやすいポイントです。退職所得に対する住民税は、原則として退職金の支払い時に徴収されます。一方、退職後の翌年に届く住民税は、前年の給与所得などに基づくものです。退職金そのものの税金とは別に、退職後に給与が減っても前年所得に対する住民税の納付が続くため、資金繰りで驚く人がいます。退職金の手取りだけでなく、翌年の住民税、国民健康保険料、国民年金保険料まで見ておく必要があります。
退職所得控除が大きな分岐点になる
退職金への税金で一番大きな分岐点は、退職所得控除額です。勤続年数が20年以下の場合は、原則として40万円に勤続年数を掛けます。ただし控除額が80万円未満になる場合は80万円です。勤続年数が20年を超える場合は、800万円に、20年を超える年数分として年70万円を加えます。
注:1.勤続年数に1年未満の端数がある場合は、端数を切り上げます。端数は1日でも1年として計算します。2.障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額(80万円未満の場合は80万円)に、100万円を加えた金額となります。
勤続年数の端数を切り上げる点は、実務ではかなり重要です。たとえば勤続19年1か月なら、退職所得控除の計算上は20年として扱います。退職日を数日ずらすだけで勤続年数の扱いが変わるケースもあり得るため、退職予定日が近い人は人事や税務担当者に確認しておく価値があります。
退職金の税金を計算する基本手順
退職金への税金は、いきなり税率を掛けるのではなく、段階を踏んで計算します。基本の流れは、退職金の額面を確認する、勤続年数を確認する、退職所得控除額を計算する、額面から控除額を引く、原則として残額の2分の1を退職所得にする、その退職所得に所得税率と住民税率を当てはめる、という順番です。この手順を知っておくだけで、会社から提示された手取り額の妥当性を確認しやすくなります。
勤続20年以下の場合の考え方
勤続年数が20年以下の場合、退職所得控除額は「40万円×勤続年数」で計算します。たとえば勤続15年なら控除額は600万円です。退職金が500万円なら、退職金の額面が控除額を下回るため、退職所得は発生しません。退職金が900万円なら、控除後の300万円の原則2分の1、つまり150万円が退職所得の金額になります。
ここで注意したいのは、退職所得の金額と税額は同じではないことです。退職所得が150万円だから税金が150万円かかるわけではありません。退職所得の金額に応じて所得税の速算表を使い、さらに復興特別所得税や住民税を加味します。会社の源泉徴収ではこの計算が行われるため、まずは退職所得控除を超えるかどうかを確認するのが第一段階です。
勤続20年超の場合の考え方
勤続年数が20年を超えると、控除額はより大きくなります。計算式は「800万円+70万円×勤続年数から20年を引いた年数」です。勤続30年なら、控除額は1,500万円です。退職金が1,500万円以下なら、原則として退職所得は発生しません。退職金が2,000万円なら、控除後の500万円の半分、250万円が退職所得です。
生命保険文化センターの退職金にかかる税金でも、勤続年数に応じた控除額の考え方が示されています。退職金の額面が大きくても、長期勤続の場合は控除額も大きくなります。逆に、転職回数が多く勤続期間が短い場合や、企業型確定拠出年金の一時金を別の退職金と近い時期に受け取る場合は、控除の使い方に注意が必要です。
退職所得の受給に関する申告書を必ず確認する
退職金を受け取る前に、会社から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を求められることがあります。これを提出していれば、会社が退職所得控除を反映して税額を計算します。提出していない場合は、退職金の支払金額に対して20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収され、あとで確定申告により精算する扱いになります。
国税庁の説明でも、申告書を提出している人は、退職金支払い時に所得税額および復興特別所得税額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ないとされています。一方で、申告書を提出していない人は、税額が多く引かれている可能性があるため、確定申告での精算が重要です。退職時は書類が多く、健康保険、年金、雇用保険、離職票などに意識が向きますが、この申告書は税額に直結します。
退職金が非課税になるケースと課税されるケース
退職金への税金を調べている皆さんが一番知りたいのは、「自分はいくら引かれるのか」だと思います。結論から言うと、退職金の額面が退職所得控除額以下なら、原則として退職所得は発生しません。つまり、所得税や住民税の対象になる退職所得がない状態です。長く勤めた人ほど控除額が大きくなるため、退職金の全額に税金がかかるわけではない点をまず押さえてください。
非課税かどうかは額面と控除額で見る
たとえば勤続20年なら退職所得控除額は800万円です。退職金が800万円以下なら、退職所得は原則として0円です。勤続35年なら控除額は1,850万円です。退職金がこの範囲内なら、退職所得控除で収まります。
ただし、ここでいう非課税は、退職所得の計算上の話です。退職後に給与がなくなっても、前年の所得に対する住民税や、国民健康保険料の負担が発生することがあります。また、退職金を受け取った後に資産運用を始め、配当や売却益が出れば別の税金が関係します。退職金そのものの税金と、退職後の生活にかかる税金や社会保険料は分けて考えます。
課税されても全額に税率がかかるわけではない
退職金が退職所得控除を超えた場合でも、超えた全額がそのまま課税所得になるわけではありません。原則として、控除後の金額に2分の1を掛けたものが退職所得になります。たとえば退職金2,400万円、退職所得控除1,500万円なら、差額は900万円です。その半分の450万円が退職所得になります。
ただし、勤続年数が短い退職手当や、役員等としての退職手当では、2分の1課税が制限される場合があります。国税庁は、役員等勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等について、退職金から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得になると説明しています。また、役員以外でも短期勤続年数に対応する退職手当では、控除後の金額のうち300万円を超える部分について、2分の1計算が適用されない扱いがあります。
確定申告が必要な人と不要な人
退職金への税金で誤解されやすいのが、確定申告です。退職金を受け取ったら必ず確定申告が必要だと思っている人もいますが、会社に退職所得の受給に関する申告書を提出し、会社が正しく源泉徴収している場合、退職金だけを理由に確定申告する必要は原則ありません。反対に、申告書を提出していない、医療費控除などを受けたい、年の途中で退職して年末調整を受けていない、といった場合は確定申告を検討します。
不要になりやすいケース
確定申告が不要になりやすいのは、退職前に会社へ必要書類を提出し、退職金支払い時に税金が精算されているケースです。この場合、会社が退職所得控除を反映して源泉徴収を行います。退職金が控除額以下で税額が出ない場合も、通常は会社側で処理されます。退職所得は給与所得などと分離して計算されるため、会社で適切に処理されていれば、退職金単独で申告する場面は多くありません。
ただし、不要かどうかは退職金だけで判断しないことが重要です。退職した年に再就職していない、年末調整を受けていない、医療費が多い、ふるさと納税をワンストップ特例で処理できない、住宅ローン控除の初年度である、といった場合は確定申告の対象になります。国税庁の還付申告では、年の途中で退職し年末調整を受けず源泉徴収税額が納め過ぎとなっている場合が例として挙げられています。
必要または有利になりやすいケース
確定申告が必要または有利になりやすいのは、退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合です。この場合、退職金の支払額に対して20.42%が源泉徴収されるため、本来の税額より多く引かれている可能性があります。確定申告を行うことで、退職所得控除や税率を反映した正しい税額に精算できます。
また、退職した年の給与が途中までしかなく、年末調整を受けていない場合も、源泉徴収された所得税が戻ることがあります。医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除などを使う場合も確定申告が必要です。退職時は気持ちが落ち着かず、書類を後回しにしがちです。私自身も退職前後は、雇用保険、健康保険、年金、開業届の手続きに追われ、源泉徴収票の保管を雑にしてしまいました。結局、あとで探し直す時間の方が長くなりました。退職金の源泉徴収票、給与の源泉徴収票、保険料控除証明書、医療費の記録は、ひとつの封筒やフォルダにまとめておくことをおすすめします。
一時金と年金で税金はどう変わるか
退職金や企業年金は、一時金で受け取る方法と、年金形式で分割して受け取る方法があります。税金の扱いは同じではありません。一時金として受け取る場合は退職所得として扱われることが多く、退職所得控除や2分の1課税の対象になります。年金形式で受け取る場合は、公的年金等に係る雑所得として扱われることがあり、公的年金等控除の対象になります。
一時金は退職所得控除を使いやすい
一時金受け取りの大きな特徴は、退職所得控除を使える可能性があることです。勤続年数が長く、退職所得控除額が大きい人は、一時金で受け取ることで税負担を抑えられる場合があります。まとまった資金を住宅ローンの繰上返済、老後資金の確保、教育費、生活防衛資金に回せる点もメリットです。一方で、まとまったお金が入ると、投資、保険、不動産、金融商品などの営業を受けやすくなります。
一時金は自由度が高い分、管理の責任も大きくなります。退職金を受け取った直後に高額な保険や投資商品を契約し、あとで資金繰りに困る人もいます。保険は保障が必要な人には役立ちますが、退職金の預け先として勧められた商品が、自分の目的に合うとは限りません。契約前に、解約返戻金、手数料、保障内容、運用リスク、税務上の扱いを確認します。急がされる契約は、いったん持ち帰るのが基本です。
年金形式は長生きリスクに備えやすい
年金形式で受け取るメリットは、長期にわたって定期収入を確保しやすいことです。退職金を一度に使いすぎる不安がある人や、公的年金が始まるまでのつなぎ収入を作りたい人には合う場合があります。ただし、年金形式では毎年の雑所得として扱われ、他の公的年金や給与、事業所得と合算して税金や社会保険料に影響することがあります。
どちらが有利かは、退職金の額、勤続年数、企業年金の制度、他の所得、家族構成、健康状態、住宅ローン、相続予定によって変わります。税額だけでなく、資金管理のしやすさも判断材料です。一時金の方が税務上有利に見えても、浪費や不適切な投資で減らしてしまっては意味がありません。年金形式の方が税負担が少し増えても、家計管理が安定するなら、その人にとって合理的な選択になることがあります。
転職・早期退職・フリーランス独立時の注意点
定年退職だけでなく、転職、早期退職、希望退職、フリーランス独立でも退職金を受け取ることがあります。この場合、税金だけでなく、退職後の収入空白、社会保険、年金、住民税、事業資金をセットで見ます。特に中高年の転職や独立では、退職金を「一時的な安心材料」として見すぎると危険です。退職金は次の生活を整えるための資金であり、当面の不足を埋めるだけのお金にしてはいけません。
転職時は次の収入までの期間を読む
転職で退職金を受け取る場合、次の会社の入社日、初回給与日、賞与の有無、試用期間の条件を確認します。退職月と入社月の間が空くと、その期間の国民健康保険料や国民年金保険料が発生することがあります。住民税の納付方法も、退職時に一括徴収されるのか、普通徴収へ切り替わるのかで資金繰りが変わります。退職金の手取り額だけでなく、支出のタイミングをカレンダーに落とすことが大切です。
外資系ITやコンサルへの転職を検討している人は、給与水準だけでなく、成果評価、試用期間、退職金制度、ストック報酬、英語要件なども確認したいところです。転職市場の見方を整理するには、年収2000万超えを狙う!外資系IT・コンサルに強いエージェント5選のような記事で、エージェントごとの得意領域や選び方を比較するのも参考になります。ただし、高年収の見出しだけで判断せず、自分の職歴と家庭のリスク許容度に合うかを冷静に見ます。
独立前は退職金を生活費と事業費に分ける
フリーランス独立を考える人は、退職金を生活費、税金・社会保険料、事業準備費、予備費に分けて管理すると安定します。私も退職を決めたとき、気持ちとしてはすぐに新しい仕事へ全力で進みたかったのですが、現実には家計表を何度も見直しました。住宅費、教育費、保険料、通信費、車関連費、税金を並べると、想像より固定費が重い。勢いだけで退職していたら、かなり苦しかったと思います。
副業や独立の準備では、@SOHOのようなフリーランス・副業プラットフォームを使って、退職前から小さく実績を作る方法があります。AI活用や業務改善に関心がある人は、企業の現場課題にどう関わるかを整理したAIコンサル・業務活用支援のお仕事が参考になります。マーケティング、セキュリティ、SNS運用など複数領域を横断した案件を知りたい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で仕事内容の幅を確認できます。大事なのは、退職金を取り崩す前提ではなく、収入の柱を少しずつ作ることです。
退職後の働き方と税金の関係
退職金への税金を考える時、退職後に働くかどうかも重要です。退職後に再就職する、業務委託で働く、個人事業主になる、年金を受け取りながら働く。それぞれ所得の種類が変わり、確定申告や社会保険の扱いも変わります。退職金だけを切り離して考えるより、退職後1年から3年の収入と支出を見通す方が、判断を誤りにくくなります。
会社員に戻る場合のポイント
退職後すぐに再就職する場合、次の会社で年末調整を受けられることがあります。ただし、前職の給与所得の源泉徴収票を提出する必要があります。退職金の源泉徴収票とは別なので、書類を混同しないようにします。退職金については、退職所得として前職で処理されていれば、給与の年末調整とは別に整理されます。
再就職後に副業を続ける場合は、副業所得が20万円を超えるかどうか、住民税の申告が必要かどうかも確認します。技術職の人であれば、アプリケーション開発のお仕事を見て、業務委託案件の内容やスキル要件を把握できます。収入相場を知るには、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のようなデータも参考になります。退職金の節税だけに目を向けず、退職後の稼ぐ力をどう維持するかが大切です。
ライティングや講座開業で働く場合
中高年の方には、これまでの経験を文章や講座に変える働き方もあります。技術文書、業務マニュアル、品質管理資料、社内研修資料などは、長年の現場経験が価値になりやすい領域です。文章で仕事をするなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で相場感を確認し、ビジネス文書検定で文書作成の基礎を点検するのもよい方法です。
オンライン講座に関心がある人は、経験を教材化する流れをシニアのオンライン講座開業|Udemyやストアカで教える方法で確認できます。専門経験を助言業務へ広げたい人は、シニアのコンサルティング副業|長年の業界経験を高額案件に変えるのような切り口もあります。ただし、退職直後に高額な講座制作費や広告費をかけるのは慎重に判断してください。まずは小さく試し、需要を確かめる方が堅実です。
ITスキルは退職後の選択肢を広げる
退職後も働くつもりなら、ITスキルの有無で選べる仕事が変わります。ネットワーク、セキュリティ、AI、業務効率化、データ整理などは、年齢に関係なく需要があります。特に社内の非効率を言語化し、改善手順に落とす力は、中高年の実務経験と相性がよいです。基礎から学びたい人は、ネットワーク知識を体系的に確認できるCCNA(シスコ技術者認定)も候補になります。
ここで強調したいのは、退職金を増やすために無理な投資をするより、支出を把握し、働き方の選択肢を増やす方が安定しやすいということです。退職金への税金を正しく理解することは大切ですが、それだけで老後資金の不安がすべて消えるわけではありません。家計、働き方、社会保険、税金、資産運用を一体で考える必要があります。
退職金を受け取る前の実務チェック
退職金を受け取る前には、税額の概算だけでなく、書類、入金日、住民税、社会保険、保険契約、住宅ローン、家族への説明まで確認します。退職前後は判断することが多く、疲れている時期です。だからこそ、チェックリストにして機械的に確認する方が安全です。退職金は人生の中でも大きな入金になりやすく、少しの見落としが数年後の家計に影響します。
会社に確認する書類
会社に確認したい書類は、退職金の支給明細、退職所得の源泉徴収票、退職所得の受給に関する申告書、給与所得の源泉徴収票、離職票、健康保険資格喪失証明書などです。退職金の支給予定日、税引前額、控除額、税引後額、勤続年数の計算、住民税の扱いも確認します。特に勤続年数に端数がある人、休職期間がある人、グループ会社への出向や転籍がある人は、勤続年数の扱いを確認しておくと安心です。
人事部に聞くのを遠慮する人もいますが、税金は遠慮で片づくものではありません。「退職所得控除の計算に使う勤続年数は何年ですか」「退職所得の受給に関する申告書は提出済みですか」「退職所得の源泉徴収票はいつ受け取れますか」と具体的に聞けば十分です。聞き方を具体化すると、相手も答えやすくなります。
家計で確認する数字
家計で確認する数字は、生活費の月額、住宅ローン残高、教育費、保険料、税金、社会保険料、車の維持費、親の介護費、緊急予備費です。退職金が入ると気持ちが大きくなりやすいですが、退職後は毎月の給与が止まる、または減る可能性があります。大きな支出を決める前に、最低でも12か月分の資金繰り表を作ることをおすすめします。
保険の見直しもこのタイミングで行いやすいです。ただし、「退職金を活用しましょう」と提案される貯蓄型保険や外貨建て保険は、保障、手数料、為替リスク、解約時の元本割れリスクを確認します。必要な保障は家族構成で変わります。子どもが独立に近い家庭と、まだ教育費が多く残る家庭では、必要な死亡保障も医療保障も違います。退職金を預ける先を探す前に、保険の目的を「保障」なのか「運用」なのか分けて考えます。
退職金の使い道を決める順番
退職金の使い道は、税金を引かれた後の手取り額を見てから考えるのでは少し遅いです。額面、概算税額、手取り、翌年の住民税、社会保険料、生活費、ローン、事業資金を並べたうえで、使う順番を決めます。おすすめは、まず現金の生活防衛資金を確保し、次に高金利の借入や必要な支出を整理し、その後に運用や事業投資を検討する流れです。
生活防衛資金を先に確保する
退職後の生活防衛資金は、会社員として働き続ける場合より厚めに見ておく方が安全です。再就職先が決まっていても、試用期間や体調不良、家族事情で予定が変わることがあります。フリーランスや副業中心で働く場合は、入金遅れや案件終了のリスクがあります。生活費の6か月から12か月分は、すぐ使える預金で残しておくと安心です。
資産運用を始める場合も、生活防衛資金を確保した後です。退職金を受け取った直後は、銀行、証券会社、保険会社から提案を受けることがあります。提案を聞くこと自体は悪くありませんが、全額を一度に動かさないでください。税金や社会保険料の支払い予定が見えてから、少しずつ判断する方が失敗しにくいです。
退職金は事業資金にもなり得る
退職後に個人事業を始める場合、退職金の一部を事業資金にする選択もあります。ただし、事業資金と生活費を同じ口座で管理すると、利益が出ているのか、生活費を取り崩しているのか分からなくなります。開業するなら、事業用口座、会計ソフト、領収書管理、請求書管理を早めに整えます。AI、ライティング、開発、コンサルティングなどは初期費用を抑えやすい一方で、学習時間と営業活動が必要です。
私の体験では、退職前に小さく案件を受けておいたことが精神的な支えになりました。ただ、最初は見積もりが甘く、想定より修正対応が多くて時給換算が下がった案件もあります。この失敗から、業務範囲、納期、修正回数、検収条件を事前に書面で残すようになりました。退職金を事業の助走に使うなら、収入見込みだけでなく、契約条件と作業時間を冷静に見積もることが必要です。
退職金への税金で押さえるべき結論
退職金への税金は、退職所得控除、原則2分の1課税、分離課税という仕組みによって、給与よりも負担が抑えられやすい制度です。勤続年数が長い人は控除額が大きく、退職金が控除額以下なら原則として退職所得は発生しません。一方で、短期退職、役員退職金、申告書の未提出、複数回の退職金、年金形式での受け取りでは、計算や手続きが変わります。
皆さんに実務的におすすめしたいのは、退職前に3つの数字を確認することです。退職金の額面、退職所得控除額、税引後の手取り予定額です。そのうえで、退職後1年分の住民税、社会保険料、生活費を別に見積もります。税金を少なくすることだけを目的にせず、退職後の生活が安定する受け取り方と使い方を選ぶ。それが、退職金を守るための一番堅実な方法です。
よくある質問
Q. 退職金への税金は全額にかかりますか?
全額にそのまま税率がかかるわけではありません。退職所得控除を差し引き、原則として残額の2分の1を退職所得として税額を計算します。
Q. 退職金が非課税になるのはどんな場合ですか?
退職金の額面が退職所得控除額以下であれば、原則として退職所得は発生しません。勤続年数が長いほど控除額は大きくなります。
Q. 退職金を受け取ったら確定申告は必要ですか?
退職所得の受給に関する申告書を会社へ提出し、会社が正しく源泉徴収していれば、退職金だけを理由に確定申告する必要は原則ありません。申告書未提出や医療費控除などがある場合は申告を検討します。
Q. 一時金と年金ではどちらが税金面で有利ですか?
一時金は退職所得控除を使えるため有利になる場合がありますが、年金形式は長期の定期収入を作りやすい利点があります。税額だけでなく、家計管理や社会保険料への影響も含めて判断します。
Q. 退職金を受け取った翌年の税金は増えますか?
退職所得に対する税金は支払い時に精算されることが多いですが、翌年には前年の給与所得などに基づく住民税の納付が続く場合があります。退職後の収入が減っても支払いが残るため、資金繰り表を作っておくと安心です。

この記事を書いた人
前田 壮一
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師
看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師
薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理







