商談で聞き漏らすと後から効く在宅写真の加工・レタッチの条件


この記事のポイント
- ✓写真の加工・レタッチの在宅案件で
- ✓商談時に聞き漏らすと後から効いてくる条件を12項目に整理しました
- ✓単価より先に確認すべきこと
まず、安心してください。在宅の写真の加工・レタッチで条件がこじれるのは、皆さんの交渉力が足りないからではありません。商談のときに聞く項目が決まっていないからです。
私は43歳でメーカーを辞めてフリーランスになりました。品質管理の仕事を長くやっていたので、条件を決めずに作業を始めることの怖さは身に染みています。それでも独立して最初の年、条件の確認が甘くて損をした案件がいくつもありました。単価の話ばかりして、修正の回数を決めていなかったんです。
在宅の仕事でいちばん多いトラブルは、単価が安いことではありません。単価は決めたのに、それ以外が決まっていないことです。修正が何回まで含まれるのか、素材はいつ届くのか、確認する人は何人いるのか。ここを聞き漏らすと、決めた単価が実質的に半分になります。
この記事では、商談で確認すべき12項目を、聞く順番も含めて整理します。あわせて、条件が合わないと分かったときの断り方も書きます。断ることは失礼ではありません。合わない条件で受けて途中で止まるほうが、はるかに迷惑がかかります。
商談の前に、相場の輪郭を持っておく
条件を決める前に、比較する基準を持っておきましょう。基準がないと、提示された金額が高いのか安いのか判断できません。
在宅の写真の加工・レタッチの単価は3層に分かれる
実務で見ていると、単価は作業の性質でおおむね3層に分かれます。
第1層は、機械的な処理です。背景の切り抜き、規定サイズへのリサイズ、明るさの一括調整。1枚あたり50円から300円程度。判断がほとんど入らない代わりに、点数をまとめて受ける形になります。
第2層は、判断が入る処理です。商品の色を実物に寄せる、複数点の統一感を出す、簡単な合成。1枚500円から2,000円程度。
第3層は、仕上がりの責任を持つ仕事です。人物レタッチ、広告ビジュアル、ブランドの世界観に合わせた制作。1件5,000円から2万円程度、案件によってはそれ以上になります。
実際の募集にも、この第3層の水準は現れています。
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同じ在宅の画像制作でも、第1層と第3層では単価が2桁違います。この差は技術の差だけではありません。任されている範囲の差です。作業を任されているのか、判断を任されているのか。
商談では、まず自分がどの層の話をしているのかを確認してください。層が違えば、聞くべき条件も変わります。
時給換算の基準線を持っておく
もうひとつ、比較の基準として時給の相場を知っておくと便利です。在宅の派遣や時給制の案件では、時給1,300円から1,900円あたりのレンジがよく出ます。
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業務委託で受ける場合、この時給水準を下回るなら、雇用より条件が悪いということになります。業務委託には有給も社会保険の事業主負担もありませんから、本来はこの水準を上回っていないと割に合いません。
商談で提示された条件を、この基準に当てて計算してみてください。「1枚150円で50枚」なら7,500円です。1枚7分で処理できるなら約6時間、時給換算で1,250円程度。ここに素材の整理と確認のやりとりを足すと、さらに下がります。
計算してから交渉するのと、感覚で交渉するのとでは、話の説得力がまったく違います。
商談で確認する12項目
ここからが本題です。順番も含めて書きます。順番が大事なのは、後半の項目ほど聞きにくくなるからです。前半で信頼を作ってから後半に入る、という組み立てにしています。
項目1 最終的な用途
最初に聞くのは金額ではありません。用途です。
EC商品ページなのか、SNS投稿なのか、印刷物なのか、広告なのか。用途によって、必要な解像度もカラープロファイルも仕上げの方向も変わります。
この質問には、もうひとつ効果があります。用途を聞ける人は仕事が分かっている、と相手に伝わることです。商談の最初でこれを示せると、その後の話がスムーズになります。
項目2 点数と、その内訳
「何枚ですか」だけでは足りません。内訳を聞きます。
同じ100枚でも、同一商品の色違い100枚と、まったく違う商品100枚では、作業量が倍以上違います。前者は設定を使い回せますが、後者は毎回判断が要ります。
聞き方は「100枚は、同じ商品の色違いやアングル違いを含みますか、それとも全部別の商品でしょうか」で十分です。
項目3 素材の状態
これは見積もりの精度を大きく左右します。
撮影済みの写真をそのままもらうのか、すでに一度加工されたものを修正するのか。背景は白背景で撮影されているのか、雑多な背景から切り抜く必要があるのか。解像度は十分か。
サンプルを3枚もらうのがいちばん早いです。「見積もりの精度を上げたいので、代表的な素材を3枚ほど拝見できますか」と頼めば、まず断られません。
実務でよく起きるのは、話を聞いた印象で見積もって、素材を見たら想定の倍の手間だった、というケースです。私も独立初年度にこれをやりました。話だけで受けて、届いた写真が暗所で撮られたぶれ気味のもので、想定の3倍の時間がかかりました。相手に悪意はなく、単に私が確認しなかっただけです。
項目4 素材の到着時期
納期の起点を決める項目です。
「金曜納品」と言われて受けたのに、素材が水曜の夜に届く。これが在宅の案件では本当に多い。
対策は、納期をカレンダーの日付ではなく「素材受領からの営業日数」で握ることです。「素材をいただいてから5営業日での納品とさせてください」と、こちらから提案します。
これを最初に決めておくと、素材の遅れをこちらが被る構造がなくなります。相手にとっても、いつ素材を出せば間に合うかが明確になるので、実は喜ばれます。
項目5 納期と、その先の予定
納期そのものより、「その納品物が次に何に使われるか」を聞きます。
翌週の撮影に使うので金曜まで、なのか。来月の販売開始に間に合えばよい、なのか。前者は動かせませんが、後者ならこちらから余裕のある日程を提案できます。
実務上、後者のケースのほうが多いのですが、「金曜まで」とだけ言われてそのまま受けてしまう人が非常に多い。ひとこと聞くだけで、数日の余裕が生まれることがあります。
項目6 修正の回数
ここから条件の核心に入ります。
修正が何回まで料金に含まれるかを、必ず数字で決めてください。「常識の範囲で」は決めていないのと同じです。
実務的な落としどころは2回です。1回目は全体の方向修正、2回目は細部の調整。3回目以降は追加費用、という形にしておくと、双方が納得しやすい。
そして、修正の依頼期限も決めます。「納品後3営業日以内にご依頼ください」。これがないと、1か月後に「やっぱりここを」と来ることがあります。
項目7 確認する人の数
見落とされがちですが、修正回数を決める最大の要因はこれです。
確認者が1人の案件と、3人以上の案件では、修正の発生率が体感で3倍違います。担当者が承認し、その上司が見て、さらにクライアント側が見る。この構造だと、修正は必ず複数回発生します。
聞き方は「最終的にご確認いただく方は何名くらいでしょうか。人数が分かれば、修正の想定回数を含めてご提案できます」です。
3人以上と答えられたら、修正の含まれる回数を多めに設定するか、単価を上げるかのどちらかを提案してください。ここを甘く見積もると、後から効いてきます。
項目8 納品形式
解像度、ファイル形式、カラープロファイル、ファイル名の付け方、フォルダ構成。
ここを決めずに納品すると、内容は正しいのに「形式が違う」という理由で作り直しになります。作り直しは修正回数にカウントされないことが多いので、純粋な損失になります。
決まっていない場合は、こちらから提案してください。「一般的にはこの形式で納品しておりますが、ご指定がなければこちらで進めます」と書いておくと、後から違うと言われても根拠になります。
項目9 単価と、その計算方法
ようやく金額です。ここまでの8項目が決まっていると、金額の話はむしろ簡単になります。作業量が確定しているからです。
確認するのは、単価そのものだけではありません。1枚あたりなのか、1式なのか。追加が発生した場合の単価はどうなるか。修正の追加費用はいくらか。
「1枚150円、追加分も同単価、3回目以降の修正は1枚あたり50円」のように、全部の場合を決めておきます。
項目10 支払いの時期と方法
締め日と支払日を確認します。「月末締め翌月末払い」なのか、「納品後30日以内」なのか。
在宅で複数の取引先がある方は、支払サイトの違いで手元の資金繰りが変わります。長いサイトの取引だけを増やすと、作業はしているのに入金がない期間が続きます。
なお、業務委託の取引では、発注者側に取引条件を明示する義務や、報酬を期日までに支払う義務が定められています。制度の内容は公正取引委員会の情報で確認できます。条件を書面やメールで示してもらえない場合は、その時点で慎重になったほうがいいです。
項目11 素材と成果物の扱い
預かった素材をいつまで保管するか、終了時に削除するか。そして、制作した画像を自分の実績として見せてよいか。
後者は特に確認しておいてください。無断で載せると契約違反になる場合があります。逆に、最初に「実績として掲載してよいか」を聞いておけば、許可がもらえることもあります。許可があれば、次の商談で使える材料になります。
項目12 継続の可能性と、月あたりの上限
継続の可能性があるかを聞きつつ、こちらの上限も伝えます。
「月20点程度まで対応可能です」と先に言っておくと、増えたときに自然に相談できます。上限を言っていないと、増やされたときに断りにくくなります。
上限を伝えることで消極的に見えると心配する方がいますが、逆です。管理している人だと受け取られます。
12項目を、どうやって聞くか
項目は分かっても、聞き方が分からないという声をよくいただきます。ここも具体的に書きます。
一度にまとめて送る
1項目ずつ質問すると、やりとりが12往復になります。相手も面倒ですし、こちらの時間も奪われます。
受注の意思を示したうえで、まとめて送るのが現実的です。文面の例を書きます。
「ご依頼ありがとうございます。お受けできますので、進め方の確認をさせてください。まず、今回の画像の最終的な用途をお教えください。あわせて、点数の内訳(同一商品の色違いを含むか)、素材のご送付時期、最終的にご確認いただく方の人数を教えていただけますと、修正の想定を含めた日程をご提案できます。当方からの提案としては、素材受領から5営業日での納品、修正は2回まで料金内、ご依頼は納品後3営業日以内、という形を基本としております。納品形式は解像度とカラープロファイルのご指定があればお知らせください。ご指定がなければ一般的な形式で進めます」。
長く見えますが、これで7項目が片付きます。残りは金額と支払い条件のやりとりの中で自然に決まります。
聞きにくい項目は、理由とセットで
確認者の人数や修正回数は、聞きにくいと感じる方が多いようです。理由を添えると聞きやすくなります。
「修正の想定を含めた日程をご提案したいので」「確実に間に合う日程を出すために」。相手のためになる理由を添えると、質問が交渉ではなく協力に見えます。
相手の反応で、その取引の質が分かる
これは長くやっていると分かってくることですが、12項目への反応で、その取引が続けられるかどうかはかなり判別できます。
素直に答えてくれる相手は、社内でもスケジュールを管理している相手です。無理な依頼は基本的に来ません。
「そこまで決まっていないので、とりあえず始めてください」と言われたら要注意です。決まっていない状態で始めると、決まった瞬間に条件が変わります。
「細かいですね」と言われたら、正直に言って、その取引は見送ることも検討したほうがいい。条件確認を細かいと感じる相手は、後の修正やスケジュール変更でも同じ感覚で接してきます。
商談でよくある3つのパターンと、その対処
実際の商談で起きやすい場面を、対処とセットで書いておきます。
パターン1 単価を先に聞かれる
「おいくらでできますか」と最初に聞かれることがあります。
ここで即答すると不利になります。作業量が確定していないからです。
返し方は「用途と点数の内訳、素材の状態を拝見してからお見積もりします。代表的な素材を3枚ほど拝見できますか」です。これは値切り回避のテクニックではなく、実際に正確な見積もりを出すために必要な手順です。
それでも「だいたいでいいので」と言われたら、幅で答えます。「素材の状態によりますが、1枚あたり100円から300円程度が目安です。詳細は素材を拝見してから確定させてください」。幅で答えると、後から上方向に調整する余地が残ります。
パターン2 相場より明らかに低い金額を提示される
低い金額を提示されたとき、すぐに断る必要はありません。まず理由を確認します。
予算が本当に限られている場合と、単に相場を知らない場合があります。後者なら、根拠を示せば通ることがあります。
「この作業量ですと、1枚あたり平均7分程度かかります。ご提示の金額ですと時間あたり700円程度となり、お受けするのが難しい状況です。点数を減らすか、処理の範囲を切り抜きのみに限定していただければ、ご予算内で対応可能です」。
大事なのは、断るのではなく代替案を出すことです。金額を下げられないなら、作業量を減らす。この提案ができる人は、交渉が上手いというより、自分の作業を数字で把握している人です。
パターン3 途中で条件が変わる
作業を始めてから「やっぱりこの形式で」「点数を追加で」と言われることがあります。
このとき、無償で受けるかどうかが分かれ目です。1回受けると、それが基準になります。
対処は、断るのではなく、条件を再提示することです。「承知しました。形式の変更に伴い、既に処理した30点の再書き出しが必要になります。追加で〇円、納期は〇日となりますが、よろしいでしょうか。もしくは、変更前の形式で一旦納品し、次回制作分から新形式に切り替える方法もございます」。
選択肢を2つ出すのが要点です。相手はどちらかを選べばよいので、断られたという感触になりません。
オンラインの商談で、印象を落とさないための実務
在宅の案件では、商談自体がビデオ会議かチャットで行われます。対面と勝手が違うので、ここも整理しておきます。
ビデオ会議のときに準備しておくもの
準備は3つです。
ひとつ、12項目を書いたメモを画面の横に置く。手元の紙でも構いません。聞き漏らしはほぼこれで防げます。会議中に思い出そうとすると、必ずどれかが抜けます。
ふたつ、素材のサンプルを開いておく。話しながら「このような状態の写真でしょうか」と確認できると、見積もりの精度が一気に上がります。
みっつ、自分の作例を1つ、すぐ出せる状態にしておく。話の流れで技術の話になったとき、口で説明するより1枚見せたほうが速い。
私は独立した最初の頃、これを準備せずに商談に入って、後から確認のメールを4往復させたことがあります。相手の時間を奪いましたし、こちらの印象も良くなかったはずです。準備は10分で済みます。
チャットだけで進む商談では、返信の速度が評価される
在宅の案件では、商談がチャットのみで完結することも珍しくありません。この場合、内容と同じくらい返信の速度が見られています。
理想は当日中、遅くとも翌営業日午前です。すぐ答えられない質問が来たときも、「確認して本日中にご返信します」と一報を入れておく。この一報があるかどうかで、印象がかなり変わります。
そして、チャットでの商談は記録がそのまま残るという利点があります。決めた条件があとから確認できるので、実は口頭より安全です。ビデオ会議で決めた場合は、必ず後からチャットかメールで整理し直してください。
相手が個人か法人かで、確認の重心が変わる
法人が相手なら、社内の承認プロセスがあるので確認者の人数と決裁の流れを聞きます。支払いも規定通りに行われることが多い。
個人事業主やごく小規模な事業者が相手の場合は、支払いの確実性を先に確認してください。悪意があるという意味ではなく、資金繰りの都合で遅れることが実際にあるからです。初回は点数を絞って受ける、あるいは分割で納品して分割で支払ってもらう、といった形にしておくと安全です。
初回の取引で全量を先に納品して、支払いだけが残る状態を作らない。これは在宅の仕事全般に共通する原則です。
条件が合わないときの、断り方
合わない条件を無理に受けると、途中で止まるか、赤字になるか、体調を崩すかのどれかになります。断るのは失礼ではありません。
断りの文面は短く、代替案を添える
理由を長々と書く必要はありません。
「ご依頼ありがとうございます。今回の点数と納期ですと、現在の稼働状況では品質を保った対応が難しく、お受けできません。〇月以降でしたら対応可能ですので、次の機会がございましたらお声がけください」。
これで十分です。理由は「稼働状況」で足ります。単価が理由でも、そう書く必要はありません。単価を理由にすると値上げ交渉と受け取られて、話が長引きます。
断った相手から、後で依頼が来ることがある
これは実務でよくあることなのですが、丁寧に断った相手から、数か月後に条件を改善した依頼が来ることがあります。
その場では成立しなくても、「条件をきちんと確認する人」という印象は残ります。発注する側から見ると、そういう相手は信頼できます。
だから、断るときこそ丁寧に。これは道徳の話ではなく、実務の話です。
相手を選ぶことは、長く続けるための条件
40代でフリーランスになって痛感したのは、仕事を選ばずに受けていた時期がいちばん消耗したということです。
来た依頼を全部受けていると、条件の悪い案件が時間を占領して、条件の良い案件が来たときに受けられなくなります。断る余裕を持っていることが、結果的に良い案件を受けられる状態を作ります。
在宅で長く続けるための健康面の工夫は、在宅ワーカーのメンタルヘルスケア|孤独・燃え尽きを防ぐ5つの習慣【2026年版】にも整理があります。条件交渉は技術の話であると同時に、自分を守る仕組みの話でもあります。
商談の記録を、次の交渉材料にする
商談は1回で終わりではありません。記録を残すと、次の交渉が楽になります。
決めた条件を、必ず文字で残す
口頭で決めた条件は、必ずメールやチャットで確認してください。
「本日お打ち合わせいただいた内容を整理いたします。点数100点、素材受領から5営業日で納品、修正2回まで料金内、納品形式はJPEG解像度2000ピクセル、単価は1枚150円、月末締め翌月末払い。以上の内容でお間違いないでしょうか」。
この1通があるかどうかで、後から認識がずれたときの結果がまったく変わります。相手を疑っているのではなく、双方が同じ理解でいることを確認する作業です。
実績の数字を蓄積する
商談で強いのは、経験年数ではなく数字です。
案件の種類、点数、実作業時間、修正回数、納期を守った率。この5つを記録しておくと、次の商談で「1枚あたり平均7分、修正率は8%程度です」と言えます。
これが言えると、単価交渉の根拠になります。「速くて正確です」は主観ですが、数字は客観です。
なお、業務委託の報酬が一定額を超えると確定申告が必要になります。副業として受ける場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると申告の対象です。手続きの詳細は国税庁の情報で確認してください。記録をつけていれば、この作業もずっと楽になります。
単価を上げるタイミング
継続案件の単価を上げるなら、次の3つのタイミングが現実的です。
ひとつ、作業範囲が広がったとき。最初は切り抜きだけだったのが、色調整や統一作業まで含むようになったなら、単価の見直しを提案できます。
ふたつ、点数が増えたとき。増やしてほしいと言われたタイミングは、条件を見直す自然な機会です。
みっつ、契約の更新時。年度替わりや契約期間の区切りは、双方が条件を見直す前提の時期です。
いずれの場合も、記録した数字を根拠にしてください。「作業範囲が増えたので上げてください」より、「切り抜きのみのときは1枚4分でしたが、色調整と統一作業を含めて平均9分になっております。単価の見直しをご相談させてください」のほうが通ります。
自分の水準を客観的に測りたい方は、職種別のソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のようなデータで、隣接職種と比較してみるといいでしょう。
市場を長く見てきた立場からの観察
在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、商談で条件を詰められる人と、そうでない人の差は、性格ではありません。準備の差です。
条件を詰められない人は、聞く項目を決めていません。だから商談の流れに乗せられて、金額の話だけして終わります。項目を紙に書いて手元に置いている人は、性格が控えめでも全部聞けます。
もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、長く続く人は「この人に頼むと確認の手間が減る」という状態を作っています。条件を先に整理してくれる、進捗の連絡が来る、遅れる前に相談が来る。この3つが揃うと、発注する側は他を探さなくなります。探し直されない相手は、値下げの圧力からも距離ができます。
そして手取りの話をしておきます。仲介手数料が引かれる経路だけで受けていると、同じ作業でも残る金額が変わります。手数料0%で直接やりとりできる経路を持っている人は、依頼する側も同じ予算でより多く頼めるので、双方が得をする構造になります。額面が同じでも、1年続けたときに手元に残るものが違ってくる。長く続けている方の多くは、この経路を1本は確保しています。
条件交渉というと、相手から多く取ることだと思われがちですが、実際は違います。双方が予測できる状態を作る作業です。予測できる関係は長く続き、続く関係は結果として条件が良くなっていきます。
条件は、作業を始める前にしか決められません
最後に、独自の視点から見えていることを書きます。
在宅の案件を横断して見ていると、トラブルの大半は「決めていなかったこと」から起きています。決めた条件が悪くて揉めるケースより、決めていない部分でずれるケースのほうが、はるかに多い。
そして条件は、作業を始める前にしか決められません。始めてしまうと、こちらの立場が弱くなります。すでに時間を投入しているので、降りにくくなるからです。
だから、商談の段階で12項目を確認する。この15分から30分が、その後の数十時間を守ります。
在宅で専門性を武器にする働き方の考え方は、法律事務所のパラリーガルの働き方|在宅・時短勤務の現状【2026年版】や税理士試験合格者の在宅ワーク事情|科目合格が武器になる理由【2026年版】にも整理があります。分野は違いますが、条件を明確にして受ける、という原則は共通しています。
文書のやりとりに苦手意識がある方は、ビジネス文書検定のような形で連絡文の型を整えるのも有効です。この記事で書いた確認の作業は、結局のところ文面の技術です。IT分野に軸足を移すことを考えているならCCNA(シスコ技術者認定)のような資格の位置づけも確認しておくといいでしょう。
案件の幅を広げたい方は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、AIツールを前提とした業務の組み立て方がまとまっています。画像生成ツールを日常的に触っている方なら、思ったより距離は近いはずです。技術寄りを視野に入れるならアプリケーション開発のお仕事で必要な技術の範囲を確認できます。
商談で条件を全部聞くのは、慣れるまで気が重いかもしれません。私も最初はそうでした。でも、聞いた案件と聞かなかった案件で、その後の疲れ方がまったく違います。皆さんには、私が損をして覚えたことを、最初から使ってほしいと思っています。
よくある質問
Q. 在宅の写真の加工・レタッチの商談で、最初に聞くべきことは何ですか?
金額ではなく用途です。EC商品ページ、SNS投稿、印刷物、広告のどれかで、必要な解像度もカラープロファイルも仕上げの方向も変わります。次に点数の内訳、素材の状態、素材の到着時期を確認してください。ここが確定してから金額の話に入ると、作業量が見えているので見積もりの精度が上がり、交渉も短く済みます。
Q. 修正が無限に続く案件を避けるには、どうすればいいですか?
2つ決めてください。修正の回数と、修正依頼の期限です。実務的な落としどころは料金内2回、依頼は納品後3営業日以内です。あわせて確認者の人数を必ず聞いてください。確認者が3人以上いる案件は1人の案件より修正発生率が体感で3倍高くなるため、その場合は含まれる修正回数を増やすか単価を上げる提案が必要です。
Q. 提示された単価が相場より低いとき、どう返せばいいですか?
断る前に代替案を出してください。「この作業量ですと1枚平均7分かかり、ご提示の金額では時間あたり700円程度になります。点数を減らすか、処理を切り抜きのみに限定していただければご予算内で対応可能です」という形です。金額を下げられないなら作業量を減らす、という提案ができると、交渉が決裂しにくくなります。
Q. 商談で決めた条件は、どう残しておくべきですか?
必ずメールやチャットに文字で残してください。点数、納期の起点と日数、修正回数と依頼期限、納品形式、単価と追加時の単価、支払いの締め日と支払日を1通にまとめ、「以上の内容でお間違いないでしょうか」と確認します。この1通があるかどうかで、後から認識がずれたときの結果が大きく変わります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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