自分史作成代行の仕事の中身と依頼の受け方|聞き取りから製本まで

@SOHO編集部
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自分史作成代行の仕事の中身と依頼の受け方|聞き取りから製本まで

この記事のポイント

  • ✓自分史作成代行の仕事を受けたい人向けに
  • ✓聞き取りから原稿づくり
  • ✓依頼の受け方と副業の税金までを整理しました

自分史作成代行は、依頼者の人生の話を聞き取り、一冊の本や冊子にまとめる仕事です。ライターや編集の経験を生かせる仕事として関心を持つ人が増えていますが、実際に受けてみると、文章を書く時間よりも、話を聞く時間、確認のやり取り、製本の手配に多くの手間がかかることに気づきます。

この記事では、自分史作成代行の仕事を受ける側に向けて、依頼してくる人の目的、聞き取りから製本までの流れ、聞き取りで使える質問の例、話し言葉を原稿に変える作業、料金の決め方、契約で決めておくこと、著作権の扱い、依頼の受け方、副業で受けるときの税金までを順に整理します。結論を先に書くと、自分史作成代行は「書く力」よりも「聞く力」と「段取りの力」で仕上がりが決まる仕事です。工程を細かく分け、どこまでを引き受けるのかを最初の見積もりで明確にすることが、依頼者との信頼を守る近道になります。

自分史作成代行とはどんな仕事か

自分史作成代行とは、本人に代わって、その人の生い立ちや仕事、家族、人生の転機などを文章にまとめ、冊子や本の形に仕上げる仕事です。依頼者が自分で原稿を書くのではなく、書き手が聞き取りを重ね、本人の言葉と記憶をもとに原稿をつくります。

この仕事の性格について、自分史の制作を手がける会社は次のように説明しています。

自分史作成代行は、本人の代わりに人生を作るサービスではなく、本人の中にある経験と言葉を、一冊の原稿として読者へ届けるサービスです。 出典: righting.co.jp

つまり、書き手の役割は、自分の文章力で物語をつくることではありません。依頼者が話した出来事と思いを、読む人に伝わる順番と言葉に整えることです。脚色しすぎると、本人が読んだときに「自分の話ではない」と感じてしまいます。かといって、話したことをそのまま文字にしただけでは、読みにくい記録になってしまいます。その間の加減を探るのが、この仕事の難しさであり、面白さでもあります。

書き手に求められる力

自分史作成代行で求められる力は、大きく分けて次の4つです。

・聞く力:相手の話を遮らず、記憶を引き出す質問を重ねる力
・構成する力:たくさんの話の中から、伝えるべき場面を選び、章立てを組む力
・書く力:話し言葉を、本人らしさを残したまま読みやすい文章に整える力
・段取りの力:聞き取り、原稿の確認、写真の整理、印刷の手配を期日までに進める力

ライターとしての経験がある人は書く力に自信があるかもしれませんが、実際の仕事では、聞く力と段取りの力のほうが仕上がりを大きく左右します。

依頼してくる人と、その目的

自分史作成代行を依頼してくる人の目的はさまざまです。目的によって、原稿の長さ、語り口、本の仕様が変わるので、最初の相談で必ず確かめておきましょう。

本人が自分の人生を残したい

退職や節目の年齢を迎えた人が、自分の歩みを振り返り、家族や友人に残したいと考えて依頼するケースです。本人が聞き取りに積極的に協力してくれることが多く、話の量も豊富です。

家族が親や祖父母の人生を残したい

子どもや孫が、親や祖父母の誕生日や長寿の祝いの贈り物として依頼するケースです。依頼者と話し手が別の人になるので、誰の意向を優先するのか、原稿の確認は誰が行うのかを最初に決めておく必要があります。話し手が高齢の場合は、聞き取りの回数や時間を体調に合わせて調整します。

経営者が会社の歩みとともに残したい

会社の創業者や経営者が、自分の人生と会社の歩みを重ねて残したいと考えるケースです。社員や取引先に配ることもあり、会社の資料や写真の確認が必要になります。個人の自分史と会社の記録の境目があいまいになりやすいので、何を中心に書くのかを最初に決めておきます。

終活の一環として残したい

自分の人生の記録を、家族への手紙のような形で残したいという依頼もあります。部数は少なく、家族だけが読む前提のことが多いので、語り口は親しみやすく、内容は家族に向けたものになります。

仕事の流れ:聞き取りから製本まで

自分史作成代行の仕事は、おおむね次のような流れで進みます。

段階 主な作業
1. 相談 目的、読者、原稿の長さ、本の仕様、予算、期日を聞く
2. 見積もりと契約 作業の範囲と費用、修正の回数、支払いの時期を決める
3. 事前の準備 年表や写真、資料を集めてもらい、質問を組み立てる
4. 聞き取り 録音しながら、時代ごとに話を聞く
5. 構成 話の中から場面を選び、章立てを組む
6. 執筆 話し言葉を原稿に整える
7. 本人確認と修正 原稿を読んでもらい、事実や表現を直す
8. 編集とデザイン 写真の配置、表紙、文字の組み方を決める
9. 印刷と製本 印刷会社に入稿し、仕上がりを確かめる
10. 納品 完成した本を届ける

すべての工程を一人で引き受ける書き手もいれば、聞き取りと執筆だけを引き受け、編集や印刷は依頼者や印刷会社に任せる書き手もいます。最初は聞き取りと執筆に絞り、慣れてから製本までを引き受けるほうが、無理なく始められます。

聞き取りの準備と進め方

自分史作成代行の仕事で、もっとも大切なのが聞き取りです。限られた時間の中で、本の材料となる話をどれだけ引き出せるかで、原稿の質が決まります。

事前に集めてもらうもの

聞き取りの前に、依頼者に次のようなものを用意してもらうと、話が進みやすくなります。

・簡単な年表(生まれた年、学校、就職、結婚、引っ越し、子どもの誕生など)
・昔の写真(時代ごとに数枚ずつ)
・卒業証書、表彰状、手紙、日記などの資料
・話したい出来事のメモ

年表は完璧でなくてかまいません。大まかな年代が分かれば、聞き取りのときに話の順番を組み立てやすくなります。写真は記憶を呼び起こすきっかけになり、聞き取りの場に持ってきてもらうと話が広がります。

聞き取りの時間と回数

聞き取りの時間と回数は、原稿の長さと話し手の体力によって決めます。自分史の制作を手がける会社の中には、1回3時間の取材を2回、合計6時間を標準とし、4万字から8万字程度の原稿に仕上げるとしているところがあります。個人で受ける場合も、1回の聞き取りは2時間から3時間を目安にし、話し手が疲れているようなら早めに切り上げましょう。高齢の話し手の場合は、1回1時間程度に短くして回数を重ねるほうが、落ち着いて話してもらえます。

録音と記録

聞き取りは、必ず話し手の了解を得てから録音します。録音しておけば、聞き取りの最中にメモをとることに追われず、相手の表情や話の流れに集中できます。録音の機材は2台用意し、どちらかが止まっても困らないようにしておくと安心です。

聞き取りの最中は、録音とは別に、話に出てきた人の名前、地名、年代を簡単にメモしておきます。あとで原稿を書くときに、録音を聞き直す手間が減ります。

聞き取りで使える質問の例

聞き取りの質問は、年代順に組み立てると、話し手も答えやすくなります。次のような質問を用意しておくと、話を引き出しやすくなります。

子どものころ

・生まれた土地はどんなところでしたか
・家族は何人で、どんな暮らしをしていましたか
・子どものころによく遊んだ場所や遊びは何でしたか
・忘れられない先生や友だちはいますか

学生のころから社会に出るまで

・どんな学校生活を送りましたか
・将来の仕事を決めたきっかけは何でしたか
・初めて働いた日のことを覚えていますか

仕事と家族

・仕事でいちばん苦労したことは何でしたか
・その苦労をどうやって乗り越えましたか
・家族を持ったとき、どんな気持ちでしたか
・子育てで大切にしてきたことは何ですか

人生の転機と今の思い

・人生の分かれ道だったと思う出来事は何ですか
・もう一度やり直せるとしたら、何をしますか
・家族や読む人に伝えたいことは何ですか

質問のコツは、「はい」「いいえ」で終わる質問ではなく、場面を思い出してもらう質問をすることです。「楽しかったですか」と聞くより、「そのとき、どんな景色が見えていましたか」と聞くほうが、具体的な話が出てきます。話し手が答えた内容に「それはなぜですか」「そのとき、どう感じましたか」と重ねて聞くと、出来事の裏にある思いが引き出せます。

話し手が高齢のときの聞き取りの工夫

自分史の話し手は、70代や80代、さらに上の年代であることも少なくありません。高齢の話し手から話を聞くときは、次のような工夫をすると、落ち着いて話してもらえます。

場所と時間を話し手に合わせる

聞き取りの場所は、話し手が住み慣れた自宅や、なじみのある場所を選びます。慣れない場所では緊張して、記憶が出てきにくくなります。時間帯は、話し手の体調がよい午前中や昼食後の落ち着いた時間を選び、食事や服薬の時間と重ならないようにしましょう。

家族に同席してもらう

家族が同席すると、話し手が安心して話せるうえ、話し手が思い出せない部分を家族が補ってくれることがあります。ただし、家族が話を先回りして答えてしまうと、本人の言葉が出てこなくなります。同席してもらう場合は、最初に「本人の言葉を聞きたいので、補足は最後にお願いします」と伝えておくと進めやすくなります。

写真や昔の品物を手がかりにする

記憶を引き出すいちばんの手がかりは、写真や昔の品物です。「この写真はどこで撮ったものですか」「このとき一緒に写っている人は誰ですか」と聞くと、写真をきっかけに次々と話が出てくることがあります。話が途切れたときに写真を見せると、場の空気が和らぎます。

同じ話が繰り返されても遮らない

高齢の話し手は、同じ話を何度も繰り返すことがあります。繰り返される話は、本人にとって大切な出来事であることが多いので、遮らずに聞きましょう。繰り返しの中に、前回は出なかった細かい場面が含まれていることもあります。

話し言葉を原稿に変える作業

聞き取りが終わったら、録音をもとに原稿をつくります。この作業は、文字起こしをそのまま並べることではありません。

文字起こしから場面を選ぶ

まず録音を文字に起こし、話の中から本に入れる場面を選びます。数時間の聞き取りでは、同じ話の繰り返し、話題の飛躍、本人にしか分からない固有名詞がたくさん出てきます。その中から、読む人に伝えたい場面を選び、時代や話題ごとに分けていきます。

章立てを組む

選んだ場面を、章に分けて並べます。年代順に並べる方法が一般的ですが、「仕事」「家族」「趣味」のように話題ごとに分ける方法もあります。目的と読者に合わせて選びましょう。章立ては、執筆に入る前に依頼者に見てもらい、了解を得ておくと、あとで大きな直しが出にくくなります。

語り口を決める

自分史の語り口には、本人が語る形の一人称と、書き手が本人を紹介する形の三人称があります。一人称は本人の声が伝わりやすく、家族が読んで「本人が話しているようだ」と感じられます。三人称は客観的な記録に向いており、会社の歩みと重ねる自分史などで使われます。最初の相談で、どちらにするかを決めておきましょう。

本人らしさを残す

原稿を整えるときに気をつけたいのは、本人の口ぐせや言い回しを消しすぎないことです。方言や決まり文句は、読みやすさを損なわない範囲で残すと、本人らしさが伝わります。きれいに整えすぎると、誰の自分史なのか分からなくなってしまいます。

そろえておきたい道具

自分史作成代行を始めるときに、そろえておきたい道具は次のとおりです。高価な機材は必要ありませんが、聞き取りの録音と原稿の管理には気を配りましょう。

・録音の機材:ICレコーダーとスマートフォンなど、2台あると安心です
・文字起こしの道具:音声を文字にする道具を使うと、作業の時間を短くできます。ただし、固有名詞や方言は誤って文字になることが多いので、必ず録音を聞き直して直します
・文章を書く道具:ワープロソフトや文章の管理の道具で、章ごとにファイルを分けておくと修正しやすくなります
・写真を取り込む道具:スキャナーや、スマートフォンのスキャンの機能で、古い写真を画像にします
・データの控え:録音、原稿、写真は、パソコンとは別の場所にも控えを保存しておきます

特に大切なのが、データの控えです。聞き取りの録音は、話し手が亡くなったあとには二度と取り直せない、かけがえのない記録です。録音の扱いについては、納品のあとに依頼者に渡すのか、書き手の手元で削除するのかも、契約のときに決めておきましょう。個人の人生にかかわる情報なので、保管の方法と期間を依頼者に説明しておくと、安心して任せてもらえます。

本人確認と修正の進め方

原稿ができたら、依頼者と話し手に読んでもらい、事実の誤りや表現の違和感を直します。この工程は、思った以上に時間がかかります。

確認の回数を決めておく

原稿の確認と修正の回数は、契約の段階で決めておきます。回数を決めずに始めると、修正が何度も続き、期日に間に合わなくなることがあります。たとえば「原稿の確認は2回まで、それ以上は追加の費用」のように決めておくと、依頼者も確認に集中してくれます。

事実の確認

年代、地名、人の名前、会社名などの事実は、話し手の記憶違いがあることもあります。原稿を確認してもらうときに、特に事実の部分に印を付けておき、間違いがないかを重点的に見てもらいましょう。

家族の確認

依頼者と話し手が別の場合や、家族が登場する場合は、家族の誰が原稿を確認するのかを決めておきます。家族の間で記憶や受け止め方が違うこともあり、確認する人が増えるほど修正の意見がまとまりにくくなります。最終的に誰の判断で決めるのかを、最初に決めておくことが大切です。

実在の人物が出てくるときの配慮

自分史には、家族、友人、仕事の仲間など、実在の人物がたくさん登場します。家族だけが読む本であっても、本が人の手に渡れば、思わぬ人が読む可能性があります。

特に気をつけたいのは、次のような内容です。

・特定の人の悪口や、相手を傷つける出来事
・他人の病気や家庭の事情など、知られたくない情報
・会社の内部の事情や、取引先との争い

こうした内容を書くときは、名前を伏せる、表現をやわらげる、本人に了解を得るなどの配慮が必要です。書き手として不安を感じる内容があれば、依頼者と相談し、本に入れるかどうかを決めましょう。法的な問題があるかどうかの判断は、内容によって変わるので、必要に応じて専門家に相談してください。

製本と印刷の選び方

原稿が完成したら、本の形に仕上げます。製本と印刷の選び方で、費用と仕上がりは大きく変わります。

部数

家族や親しい人に配るだけなら、数部から数十部で足ります。少ない部数なら、必要な部数だけを印刷するオンデマンド印刷を使うと、費用を抑えられます。

判型と製本

本の大きさは、文庫本の大きさ、単行本の大きさ、写真集のような大きな判型などから選びます。表紙が硬い上製本は見た目が立派で長持ちしますが、費用は高くなります。表紙がやわらかい並製本は、費用を抑えたいときに向いています。

写真の扱い

写真を多く入れる場合は、カラー印刷にするか、白黒印刷にするかで費用が変わります。古い写真は、スキャンして明るさや傷を整えると見やすくなります。写真に写っている人の了解も、可能な範囲でとっておきましょう。

電子書籍

紙の本のほかに、電子書籍の形で残す方法もあります。遠くに住む家族にも配りやすく、印刷の費用がかかりません。紙の本と電子書籍の両方をつくる依頼もあります。

料金の決め方

自分史作成代行の料金は、作業の範囲と原稿の長さで大きく変わります。参考として、自分史の制作を手がける会社の中には、執筆の料金を100字1,500円(税別)を目安とし、取材から印刷までを一括で行う自費出版の費用を平均約150万円としているところがあります。ただし、これは一社の例であり、会社や個人の書き手によって料金の考え方は大きく違います。

個人で受ける場合は、次のような要素ごとに作業の時間を見積もり、自分の時間あたりの単価をかけて料金を決めると、赤字になりにくくなります。

・聞き取りの時間と回数(移動の時間も含める)
・文字起こしの時間
・構成と執筆の時間
・原稿の確認と修正の時間
・写真の整理とデザインの時間
・印刷会社とのやり取りの時間

見落としやすいのが、文字起こしと修正の時間です。録音1時間分を文字に起こすには、その数倍の時間がかかることがあります。文字起こしの道具を使っても、固有名詞や方言の直しには手間がかかります。見積もりの段階で、こうした時間を必ず含めておきましょう。

印刷の費用は、部数や仕様によって大きく変わるので、執筆の料金とは分けて見積もるのが一般的です。印刷会社から見積もりを取り、その金額を依頼者に示すようにすると、料金の内訳が分かりやすくなります。

期日と工程表の組み方

自分史作成代行は、相談から納品までに数か月かかることが多い仕事です。誕生日や長寿の祝いに合わせて依頼される場合は、渡したい日から逆算して工程表を組む必要があります。

工程表を組むときは、次のような順に期日を決めていきます。

  1. 本を渡したい日を確かめる
  2. 印刷と製本にかかる日数を印刷会社に確かめ、入稿の期日を決める
  3. 編集とデザインの日数を見込み、原稿の確定日を決める
  4. 原稿の確認と修正の日数を見込み、初稿を渡す日を決める
  5. 執筆の日数を見込み、聞き取りを終える日を決める

見落としやすいのが、依頼者の確認にかかる日数です。依頼者は原稿をじっくり読み、家族と相談してから返事をすることが多いので、1回の確認に2週間程度かかることも珍しくありません。確認の期日を工程表に書き入れ、依頼者と共有しておくと、全体の遅れを防げます。

また、話し手が高齢の場合は、体調の変化で聞き取りが延期になることもあります。工程表には余裕を持たせ、渡したい日に間に合わない可能性がある場合は、早めに依頼者に伝えて相談しましょう。

よくあるつまずきと防ぎ方

自分史作成代行の仕事で、初めての書き手がつまずきやすい点と、その防ぎ方をまとめておきます。

原稿が長くなりすぎる

聞き取りの話をすべて入れようとすると、原稿が予定より大幅に長くなり、印刷の費用も上がります。章立ての段階で各章の文字数の目安を決め、入れきれない話は依頼者と相談して削りましょう。

修正が終わらない

確認する人が増えるほど、修正の意見が出続けます。契約で決めた修正の回数と、最終的に判断する人を、修正の依頼を受けるたびに確かめておくと、際限のない修正を防げます。

依頼者の期待と仕上がりがずれる

依頼者が思い描いていた本と、書き手が仕上げた本がずれてしまうことがあります。最初の相談で、似た雰囲気の本や見本を一緒に見ておくと、仕上がりのイメージを共有できます。原稿の一部を早めに読んでもらい、語り口や文章の雰囲気を確かめてもらうのも効果的です。

契約で決めておくこと

自分史作成代行は、依頼者と長い期間やり取りが続く仕事です。トラブルを防ぐために、契約の段階で次のことを書面にして決めておきましょう。

・作業の範囲(聞き取り、執筆、編集、デザイン、印刷のどこまでか)
・原稿の長さの目安
・聞き取りの回数と時間
・原稿の確認と修正の回数
・料金の総額と、支払いの時期(着手金と残金に分けるなど)
・追加の費用が発生する条件
・期日
・途中で取りやめになったときの扱い
・著作権の扱い

著作権の扱い

自分史の原稿の著作権を誰が持つのかは、意外と見落とされがちです。著作権法では、著作物を創作した人が著作者となります。書き手が聞き取りをもとに原稿を書いた場合、話の内容は依頼者のものでも、文章の表現については書き手が著作者となる場合があります。

著作権は譲渡できます。著作権法第61条には次のように定められています。

著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。 出典: e-Gov法令検索 著作権法

依頼者が本を自由に増刷したり、家族が内容を使ったりできるようにするには、契約で著作権を依頼者に譲ることを決めておくのが一般的です。ただし、著作権法第59条により、著作者人格権(作品の名前の表示や内容の改変に関する権利)は譲渡できません。そのため、契約で「書き手は著作者人格権を行使しない」と取り決めることが多く行われています。著作権の扱いは個別の事情で変わるので、不安があれば専門家に相談してください。

書き手の名前を出すかどうか

自分史は、本人の名前で出すのが一般的で、書き手の名前は出さないことが多くあります。書き手の名前を奥付に「構成」「聞き書き」などの形で入れるかどうかも、契約のときに決めておきましょう。自分の実績として紹介してよいかどうかも、あわせて確かめておきます。

個人が相手のときに気をつけること

自分史作成代行の依頼者は、会社ではなく個人であることがほとんどです。ここで知っておきたいのが、フリーランスを守るための法律の扱いです。

2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法は、事業者からフリーランスへの業務の委託について、取引条件の明示や報酬の支払い期日などを定めた法律です。しかしこの法律は、事業者同士の取引を対象としており、公正取引委員会は、消費者を相手に取引をしている場合は、この法律のフリーランスには当たらないと説明しています。個人から自分史の依頼を受ける場合は、この法律の保護を前提にできません。法律の概要は、厚生労働省のフリーランスとして業務を行う方への案内でも確かめられます。

だからこそ、契約の内容を自分で書面にし、依頼者と取り交わしておくことが大切です。特に支払いの時期は、着手のときに一部を受け取り、納品のときに残りを受け取る形にしておくと、途中で取りやめになったときの損失を抑えられます。

依頼の受け方

自分史作成代行の依頼は、どうやって集めればよいのでしょうか。主な経路は次のとおりです。

知人や家族の紹介

最初の依頼は、知人や家族の紹介から生まれることが多くあります。自分史は、完成した本を見た人が「自分の親の分もつくりたい」と考えるきっかけになります。1冊目を丁寧に仕上げることが、次の依頼につながります。

地域の講座や集まり

公民館や地域の集まりで、自分史の書き方の講座を開くと、自分で書くのは難しいと感じた参加者から依頼を受けることがあります。講座そのものが、書き手としての信頼を得る機会になります。

自分のホームページや作品の見本

制作の流れ、料金の考え方、見本の原稿を載せたホームページを用意しておくと、依頼を検討している人が安心して問い合わせられます。見本の原稿は、依頼者の了解を得たものか、自分や家族の話で作ったものを使いましょう。

仲介サイトや在宅の仕事の募集

仲介サイトで、聞き書きや代筆の仕事を探す方法もあります。会社が受けた自分史の制作の一部を、外部の書き手に委託することもあり、聞き取りや執筆だけを担当する仕事が募集されることがあります。

副業で受けるときの税金

会社員が副業として自分史作成代行を受ける場合は、税金の扱いも確かめておきましょう。国税庁によると、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる人は、給与以外の所得の合計額が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。ここでいう所得とは、売上から必要経費を引いた額のことです。

20万円以下で所得税の確定申告が要らない場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。必要経費には、聞き取りのための交通費、録音の機材、文字起こしの道具の利用料、印刷の見本の費用などが含まれる場合があります。経費の扱いは事情によって変わるので、迷ったら税務署に確かめてください。

自分史作成代行に向いている人

自分史作成代行に向いているのは、次のような人です。

・人の話を聞くことが好きで、相手のペースに合わせられる
・長い話の中から大切な部分を選び、まとめることが得意
・高齢の人とも落ち着いて話ができる
・期日を守り、細かいやり取りを丁寧に続けられる

一方で、自分の文章の表現にこだわりが強い人は、本人の言葉を優先する場面で戸惑うことがあります。自分史の主役はあくまで依頼者です。書き手は、依頼者の言葉を引き立てる黒子に徹する姿勢が求められます。

また、人の人生の話を聞く仕事なので、つらい出来事や家族の別れの話を聞くこともあります。相手の感情に寄り添いながらも、自分が引きずられすぎない落ち着きがあると、長く続けやすくなります。

文章の仕事を長く続けるために

フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、自分史作成代行のように、一人の依頼者と長く向き合う仕事を手がける書き手は、依頼者との信頼関係が次の依頼を生むという点で、ほかの文章の仕事とは違う強みを持っています。完成した本を手にした家族が、親戚や友人に書き手を紹介してくれるからです。

一方で、自分史の依頼は時期によって波があります。普段は記事やコラムを書く仕事で収入の土台をつくり、自分史の依頼が来たときに時間を割くという組み合わせをしている書き手も少なくありません。ライターの仕事で単価を上げていく道筋は、Webライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップにまとめられています。

文章の仕事は、仲介の手数料が少ない場で依頼主と直接つながると、同じ報酬でも手元に残る額が厚くなります。運営者として見てきた限りでも、手数料0%で直接取引できる場所で小さな仕事を積み重ねてきた書き手ほど、依頼主との関係が長く続いています。

自分史作成代行は、聞く力と段取りの力を磨けば、長く続けられる仕事です。見積もりや契約書、依頼者への案内文を分かりやすく書く力も、信頼を得るために欠かせません。文書の型を学び直したい人には、ビジネス文書検定の学習が役立ちます。最初の1冊を丁寧に仕上げることから始めてみてください。

よくある質問

Q. 自分史作成代行は未経験でも受けられますか?

資格は必要ありませんが、聞き取りと原稿づくりの経験がないと、最初は時間がかかります。家族や知人の話を聞いて短い冊子をつくってみるなど、小さな作品で練習してから受けるのがおすすめです。見本の原稿があると、依頼を検討している人にも仕上がりのイメージを伝えやすくなります。

Q. 聞き取りは何時間くらい必要ですか?

原稿の長さと話し手の体力で変わります。1回3時間の取材を2回行い、4万字から8万字程度の原稿に仕上げることを標準としている会社もあります。高齢の話し手の場合は、1回1時間程度に短くして回数を重ねるほうが、落ち着いて話してもらえます。

Q. 自分史の原稿の著作権は誰のものになりますか?

書き手が聞き取りをもとに文章を書いた場合、文章の表現については書き手が著作者となる場合があります。依頼者が自由に本を使えるよう、契約で著作権を依頼者に譲ることを決めておくのが一般的です。著作者人格権は譲渡できないため、行使しないことを取り決めることが多く行われています。

Q. 料金はどのように決めればよいですか?

聞き取り、文字起こし、執筆、修正、写真の整理などの作業ごとに時間を見積もり、自分の時間あたりの単価をかけて決めると赤字になりにくくなります。印刷の費用は部数や仕様で大きく変わるので、執筆の料金とは分けて見積もり、印刷会社の見積もりを依頼者に示すと分かりやすくなります。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年2月23日最終更新:2026年10月12日
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