仕訳に迷わない!事業主借事業主貸違いを1分で理解する図解と確定申告のNG例


この記事のポイント
- ✓事業主借事業主貸違いに悩む個人事業主向けに
- ✓行政書士の視点から仕訳の判断軸・具体例・確定申告時の注意点を解説
- ✓生活費引き出しやプライベートカード払いで迷わなくなる図解付きガイドです
先日、独立して2年目になるフリーランスのWebデザイナーさんから、こんな相談を受けました。「freeeで帳簿をつけているんですが、事業用口座から生活費を引き出したときの仕訳が、事業主借だったか事業主貸だったか、毎回ググっています。確定申告のたびにパニックになるんです」と。これ、知らない人が本当に多いんです。事業主借事業主貸違いは、個人事業主の青色申告でつまずきポイントのトップ3に入る論点ですが、判断軸はたった1つしかありません。本記事では、行政書士として年間100件超の個人事業主の相談を受けてきた立場から、事業主借事業主貸違いを1分で見分ける図解、よくある仕訳ミスのNG例、確定申告で慌てないための実務的なコツを丁寧に解説します。法律はあなたの味方です。落ち着いて読み進めてみてください。
事業主借事業主貸違いを理解する前に知っておくべきマクロな現状
国税庁が公表している統計によれば、令和の最新集計で個人事業主(事業所得を申告した人)はおよそ200万人超規模で推移しており、副業ブームとフリーランス保護新法の施行を背景に、新たに開業届を出す人が年々増えています。私の事務所への相談も、ここ2年で約1.8倍に膨らみました。そのうち体感で30%程度が「帳簿の仕訳が分からない」「事業主借と事業主貸の使い分けがあいまい」という声です。
なぜここまで多いのか。理由は明快で、個人事業主は「事業のサイフ」と「プライベートのサイフ」が法的には同一人物の財布だからです。法人なら会社と社長は別人格なので、社長個人の支出は会社の経費にしません。ところが個人事業主は同じ「あなた」が事業もプライベートも回しているため、帳簿上だけで「ここから先は事業」「ここから先は私生活」と線を引く必要があります。その境界線を引くために生まれたのが事業主借・事業主貸という勘定科目です。
つまり、事業主借事業主貸違いを理解することは、単なる簿記知識ではなく「青色申告65万円控除を守るための実務スキル」そのものです。青色申告特別控除は、複式簿記による正規の帳簿付けが要件のひとつ。事業主勘定の使い分けが雑だと、税務調査で否認されて10万円控除に格下げされたり、ひどいケースだと白色扱いに戻されることもあります。
ちなみに副業の場合も他人事ではありません。会社員の副業所得が年20万円を超えると確定申告が必要になり、所得区分が「事業所得」と認められれば、青色申告・事業主勘定の世界に入っていきます。副業ライターや在宅ワーカーの方は在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説で案件獲得のコツを押さえつつ、帳簿の知識も同時に身に着けておくと、開業後に慌てなくて済みます。
事業主借と事業主貸の違いを1分で理解する図解(結論ファースト)
まず結論から書きます。事業主借事業主貸違いは、「お金の流れの向き」を見れば一発で判定できます。
【判定式】
- 事業から自分(家計)へお金が出た → 事業主貸(じぎょうぬしかし)
- 自分(家計)から事業へお金が入った → 事業主借(じぎょうぬしかり)
これだけです。覚え方のコツは「主語は事業」だと意識すること。事業が貸したから「事業主貸」、事業が借りたから「事業主借」。事業視点で見るのがポイントで、自分視点で考えると混乱します。
| 取引内容 | お金の流れ | 使う勘定 | 借方/貸方 |
|---|---|---|---|
| 事業用口座から生活費5万円を引き出した | 事業→家計 | 事業主貸 | 借方 |
| 生活費の口座から事業の交通費1万円を立て替えた | 家計→事業 | 事業主借 | 借方 |
| 国民健康保険料を事業用口座から引き落とし | 事業→家計(私的支出) | 事業主貸 | 借方 |
| 預金利息が事業用口座に入金 | 家計(事業所得外)→事業 | 事業主借 | 貸方 |
| プライベートのクレジットカードで事務用品購入 | 家計→事業 | 事業主借 | 貸方 |
| 事業用クレジットカードで個人の買い物 | 事業→家計 | 事業主貸 | 借方 |
つまり、「事業が損するなら事業主貸、事業が得するなら事業主借」とも言い換えられます。事業のサイフから抜けていけば事業主貸、事業のサイフに入ってくれば事業主借。この感覚をつかめば、迷う場面が一気に減ります。
ただし注意点が1つ。「事業が得した」と言っても、本業の売上ではないケースです。たとえば預金利息は事業所得ではなく利子所得なので、事業の収益にしてはいけません。「事業所得じゃないけど事業用口座に入ってきたお金」は事業主借で処理します。これ、知らない人が本当に多いんです。
事業主貸として処理する具体的なケース10選
ここからは事業主貸の典型的な仕訳例を、相談現場で頻出する順に10個解説します。すべての仕訳例は借方/貸方を明示するので、お手元の会計ソフトで再現してみてください。
1. 事業用口座から生活費を引き出した
最も基本のパターンです。事業用口座に振り込まれた売上の中から、5万円を生活費としてATMで引き出したケースを考えます。
(借方)事業主貸 50,000 / (貸方)普通預金 50,000
このとき、「給料を払った」と考えて給料賃金で計上するのは厳禁です。個人事業主は自分に給与を払えません(青色事業専従者給与は別の話)。あくまで事業のサイフから家計のサイフへ「資金を移動させた」だけなので、事業主貸で処理します。
引用元の説明も明快なので併せて確認してください。
なお、事業資金をプライベートで使うときは、「事業主貸を借方(左側)にして処理する仕訳」が基本です。
(例1)事業用の普通預金口座から生活費5万円を引き出した場合
2. 事業用クレジットカードで個人的な買い物をした
事業用のクレジットカードで1万円分の個人的な買い物をしたケースです。
(借方)事業主貸 10,000 / (貸方)未払金 10,000
未払金はクレジットカード会社への支払い義務を表す科目で、後日引き落としされたタイミングで未払金を消し込みます。間違っても消耗品費や雑費に入れないこと。プライベート支出は1円も経費にできません。
3. 所得税・住民税を事業用口座から納付した
所得税と住民税は事業の経費ではなく、個人にかかる税金です。事業用口座から引き落とされても、必ず事業主貸で処理します。
(借方)事業主貸 100,000 / (貸方)普通預金 100,000
ここを租税公課に入れると、税務調査で100%否認されます。租税公課に計上できるのは個人事業税、消費税(税込経理の場合)、固定資産税の事業使用部分など、事業に関係する税金だけです。
4. 国民健康保険料・国民年金保険料を事業用口座から支払った
国民健康保険料も国民年金保険料も「個人」にかかる社会保険料です。経費にはできず、確定申告書の「社会保険料控除」で所得控除する仕組みになっています。
(借方)事業主貸 30,000 / (貸方)普通預金 30,000
法定福利費に入れる方を時々見かけますが、これは従業員を雇っている場合の科目です。1人事業の段階では使いません。
5. 国民健康保険料を口座振替ではなくクレジットカードで自動払いにした
最近、自治体が国保のクレジットカード払いに対応するケースが増えました。事業用カードで国保を払うと、こうなります。
(借方)事業主貸 30,000 / (貸方)未払金 30,000
カード引き落とし時にさらに普通預金を減らす処理が入ります。
6. 生命保険料・地震保険料・iDeCoの掛金を事業用口座から支払った
これらも全部、個人の支出です。生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除として確定申告で別枠で控除する建付けなので、帳簿上は事業主貸で処理します。
(借方)事業主貸 20,000 / (貸方)普通預金 20,000
iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」に該当し、満額所得控除になるので節税効果が大きい制度です。事業主貸で正しく処理した上で、確定申告書の控除欄に金額を転記してください。
7. ふるさと納税を事業用クレジットカードで払った
ふるさと納税は寄付金控除(厳密にはふるさと納税は税額控除)の対象で、事業の経費ではありません。
(借方)事業主貸 50,000 / (貸方)未払金 50,000
ワンストップ特例を使う方も、青色申告で確定申告するなら必ず寄附金控除として申告書に記載してください。
8. 事業用クレジットカードのポイントで個人の買い物をした
これは応用編。事業用カードのポイントは原則として課税されません(少額の値引きとして扱う処理が一般的)。ただし家計で使う品を買ったなら、金額は0円のままでも「私的利用した事実」を備忘録として残しておくと安全です。
9. 自宅兼事務所の家賃・電気代の家事使用分
家賃や電気代は「家事按分」で事業使用割合だけを経費にします。たとえば家賃10万円のうち事業使用割合30%なら、3万円を地代家賃に、7万円を事業主貸に振り分けます。
(借方)地代家賃 30,000 / (貸方)普通預金 100,000
(借方)事業主貸 70,000
「事業使用割合の決め方が分からない」と相談されることが多いんですが、業務時間/総時間、使用面積/総面積など、合理的な根拠があればOKです。30%とした理由を1行メモで残しておけば、税務調査でも説明できます。
10. 事業用口座の残高を年末に家計口座へ移した
「今年は儲かったから、生活費に200万円移しておこう」というケースです。
(借方)事業主貸 2,000,000 / (貸方)普通預金 2,000,000
この処理を「役員報酬」や「給料賃金」と書いてしまう方が時々います。個人事業主には役員報酬の概念がないので、すべて事業主貸です。
※このケースで事業主借事業主貸違いの判断に迷うことが続く場合、税理士に一度相談してください。年間の事業規模が大きくなると、法人化したほうが税負担が下がるラインも見えてきます。
事業主借として処理する具体的なケース8選
次は事業主借の典型例です。
1. プライベートのクレジットカードで事業の経費を立て替えた
たとえば私用カードで5,000円分の書籍(事業用)を購入したケース。
(借方)新聞図書費 5,000 / (貸方)事業主借 5,000
「事業のお金が出ていないのに経費にしていいの?」と聞かれますが、立て替えた事業主に対して事業が借りた、と考えるので問題ありません。
2. 家計のサイフから事業用の交通費を支払った
電車代やタクシー代を現金で支払い、レシートだけ事業用に保管したケース。
(借方)旅費交通費 1,500 / (貸方)事業主借 1,500
毎回仕訳を切るのが大変なら、月末に「現金小口」としてまとめて事業主借で計上してもOKです。
3. 事業用口座に預金利息が付いた
預金利息は事業所得ではなく利子所得です(厳密には源泉徴収ですでに完結している)。
(借方)普通預金 80 / (貸方)事業主借 80
数十円なので「無視していい?」と聞かれますが、青色申告の正規の簿記なら必ず計上します。1円単位で帳尻を合わせるのが複式簿記の原則です。
4. 事業用口座に株式配当金や副収入が入金された
株式配当や副業の雑所得など、本業以外の収入が事業用口座に振り込まれた場合は事業主借で処理します。
(借方)普通預金 50,000 / (貸方)事業主借 50,000
これを売上に計上してしまうと、事業所得を過大計上することになり、別枠で計上すべき配当所得・雑所得を二重計上する恐れがあります。
5. 個人事業主が自分の貯金から事業に元手を追加した
「資金繰りが厳しいから、個人の貯金を100万円事業用口座に入れた」というパターンです。
(借方)普通預金 1,000,000 / (貸方)事業主借 1,000,000
「元入金」と仕訳したくなるかもしれませんが、元入金は期首に1回だけ動かす科目です。期中の追加投入はすべて事業主借で処理し、決算後の振替仕訳で元入金にまとめる流れになります(後述)。
6. プライベートカードで事業用ソフトのサブスクを払った
freeeやマネーフォワードのクラウド会計ソフト、Adobeなどのサブスク料金を私用カードで払っているケースです。
(借方)通信費(または支払手数料) 1,980 / (貸方)事業主借 1,980
ちなみに、私用カードと事業用カードを分けるだけで仕訳の手間は半減します。これから開業届を出す方は最初にカードを分けてください。手数料0%で口座やカードを開設できる金融機関も増えているので、初期コストを気にせず実行できます。
7. プライベートで保有していたパソコンを事業用に転用した
「もともと家で使っていたパソコンを、開業後に事業用にも使うようにした」というケース。これは「事業主借」で固定資産計上します。
(借方)工具器具備品 100,000 / (貸方)事業主借 100,000
転用時の評価額は、新品で買った日からの減価償却を引いた未償却残高か、市場の中古相場が目安です。10万円未満なら消耗品費で一括計上できます。
8. 事業用口座への入金者が誰か分からない(送金者不明)
「身に覚えのない3万円が事業用口座に入っていた」というケースもあります。原因が判明するまでは仮受金で処理しますが、しばらく経っても判明しない場合は事業主借に振り替えて打ち切る対応もあり得ます。
(借方)普通預金 30,000 / (貸方)事業主借 30,000(または仮受金)
ただしこのケースは安易に処理すると詐欺事案や犯罪収益関連で巻き込まれることもあるので、※高額の場合は弁護士・警察に相談してください。
事業主借事業主貸違いを間違えやすい5つのポイントとNG例
仕訳の判断軸は明快なのに、なぜ多くの方がつまずくのか。ここでは私が相談現場で見てきたNG例を5つ紹介します。
NG例1: 「事業主借」と「借入金」を混同する
「事業主借」は事業主個人と事業の間のお金の出入りに使う科目。「借入金」は金融機関や第三者から借りたお金です。日本政策金融公庫から500万円借りた場合は借入金です。
(借方)普通預金 5,000,000 / (貸方)借入金 5,000,000
これを事業主借にすると、自己資金で5,000,000円入れた扱いになり、後で利息支払いの仕訳が合わなくなります。
NG例2: クレジットカード払いで「未払金」を飛ばす
クレジットカード払いは「カード会社に対して未払金(または買掛金)が発生する」のがポイント。引き落とし日に普通預金が減るタイミングで未払金を消し込む2段階仕訳が原則です。
購入時:(借方)消耗品費 5,000 / (貸方)未払金 5,000
引落時:(借方)未払金 5,000 / (貸方)普通預金 5,000
「引き落とし日に消耗品費で計上」してしまうと、購入日と費用認識日がずれるので、年末をまたぐ取引で経費の計上漏れが起きやすくなります。
NG例3: 国保や年金を「法定福利費」にしてしまう
繰り返しになりますが、個人事業主自身の国保・国民年金は法定福利費ではなく事業主貸です。法定福利費は従業員にかかる社会保険料の事業主負担分専用の科目です。
NG例4: 家事按分を雑に「全額経費」にしてしまう
自宅家賃や光熱費・通信費を全額経費にする方が時々います。完全な事業使用でない限り、必ず家事按分が必要です。税務調査でツメられる典型箇所なので、按分根拠(業務時間/総時間、使用面積/総面積、回線使用量など)を必ず文書化してください。
NG例5: 「事業主貸」を経費だと思っている
事業主貸は経費ではありません。必ず覚えてほしいのですが、事業主貸と事業主借はどちらも貸借対照表(BS)の科目で、損益計算書(PL)には一切影響しません。つまり、いくら事業主貸が積み上がっても、事業所得は1円も減らないのです。「事業主貸で計上したから節税になる」というのは完全な誤解です。
ここで一度、確定申告に強い会計ソフトのリソースを紹介します。
1時間以上の充実の内容を無料で公開しております。はじめて確定申告を行う方はもちろん、ご経験者の方にも参考になる内容です。
確定申告での事業主借・事業主貸の取り扱い方法
事業主借・事業主貸は期末(12月31日時点)で残高が確定し、翌期首(1月1日)に「元入金」へ振り替えるのが正規の処理です。
期末残高の意味
たとえば事業主貸の年末残高が300万円、事業主借の年末残高が50万円の場合、その差額250万円は「事業から個人に流出した正味の金額」を意味します。利益から250万円を生活費・税金・保険料などで取り崩した、と解釈できます。
翌期首の振替仕訳
12月31日に決算を確定させたあと、1月1日に次の仕訳を切ります(実際は会計ソフトが自動でやってくれます)。
(借方)元入金 ××× / (貸方)事業主貸 ×××
(借方)事業主借 ××× / (貸方)元入金 ×××
(借方)元入金 ××× / (貸方)青色申告特別控除前所得 ×××(黒字の場合)
つまり、事業主貸・事業主借は単年限りの一時的な口座で、毎年リセットされる仕組みです。前年から残高が繰り越されることはありません。
確定申告書(決算書)での記載
青色申告決算書の貸借対照表(4枚目)には、12月31日時点の事業主貸・事業主借の残高をそのまま転記します。マネーフォワードクラウド確定申告やfreee会計、弥生会計などのクラウドソフトを使っていれば、ボタン1つで決算書に反映されます。
確定申告そのものの段取りについては、e-Taxの公式情報も併せて確認すると安心です。国税庁が提供するe-Taxでは、スマホからのマイナンバーカード読み取りで確定申告書を提出できる仕組みが整っています。
注意点:事業主貸と事業主借は相殺しない
たまに「年末に事業主貸と事業主借を相殺してしまえばラクなのでは?」という質問を受けますが、原則として相殺はせず、両建てで残します。会計ソフトの期首振替仕訳で自動的に元入金に統合されるので、利用者が手で相殺する必要はありません。手動で消すと、貸借対照表の左右が合わなくなる事故が起きます。
事業主借事業主貸違いを間違えるとどうなる?税務調査の現場から
「ちょっと事業主借と事業主貸を取り違えたくらいで、追徴課税になりませんよね?」と聞かれることが多いんですが、答えはケースバイケースです。
ケースA: 単なる科目間違い(PLに影響なし)
事業主貸を事業主借に書き間違えた、というレベルの取り違えは、貸借対照表の左右が逆になるだけで損益計算書には影響しません。税務調査では「修正してください」と指摘されるくらいで、追徴課税にはならないことが多いです。
ケースB: プライベート支出を経費に紛れ込ませた
問題はこちら。たとえば、私的なクレジットカード払いを「会議費」「接待交際費」として計上していた場合、これは経費の過大計上に該当します。
修正申告すると、所得税の追徴+過少申告加算税(10〜15%)+延滞税(年利7〜8%相当)がかかります。額が大きく、悪質と判断されれば重加算税(35〜40%)になることも。
実例として、私が見たケースでは、フリーランスの方が「家族との旅行費用30万円」を打ち合わせ目的の出張として計上していたのが税務調査で否認され、3年遡って計約120万円の追徴になっていました。これ、知らない人が本当に多いんですが、税務調査は最大7年遡れます。
ケースC: 青色申告特別控除の取り消し
正規の簿記要件を満たさない(事業主勘定の取り扱いが雑、複式簿記になっていない等)と判断されると、65万円控除が取り消されて10万円控除に格下げ、最悪の場合は青色取り消し(白色扱い)になります。
55万円分の所得控除が消えれば、所得税率10%でも住民税10%+αで、ざっくり10万円超の税負担増です。
※このような重大な事案では、自己判断せず必ず税理士・弁護士に相談してください。修正申告は早ければ早いほど加算税が軽くなります。
マイナーケース:事業主借事業主貸違いで判断に迷う応用パターン
ここからは応用編。私の事務所で実際に相談を受けた、判断が難しいケースを紹介します。
1. ポイントサイトのキャッシュバックが事業用口座に入った
事業用カードを使った結果としてポイントサイトから現金キャッシュバックされた場合、原則として「雑収入」(事業所得の収入金額)に計上します。事業の利用で得たキャッシュバックなので、事業主借ではなく事業の収入です。
(借方)普通預金 3,000 / (貸方)雑収入 3,000
ただし、私的利用と事業利用が混在している場合は、按分する必要があります。
2. 持続化給付金・各種補助金が入金された
国や自治体からの給付金・補助金は、原則として事業所得(雑収入)に算入します。
(借方)普通預金 1,000,000 / (貸方)雑収入 1,000,000
ただし、補助金の種類によっては「圧縮記帳」で課税繰延ができる制度もあります。判断が難しいので、※高額の補助金を受給した場合は税理士に相談してください。
3. 家族への給料を支払った(青色事業専従者給与)
「妻に事務を手伝ってもらっているので、毎月10万円給料を払いたい」というケース。これは青色事業専従者給与の届出を事前に出していれば、給料賃金で計上できます。
(借方)給料賃金 100,000 / (貸方)普通預金 100,000
届出を出していない場合は経費にならず、事業主貸(家族への私的な仕送り扱い)になります。
4. 開業前に支払った経費がある
開業前に書籍購入や名刺作成、勉強会参加で出ていったお金は「開業費」として繰延資産計上できます。
(借方)開業費 50,000 / (貸方)事業主借 50,000
開業日以降に好きなタイミングで償却できるので、初年度の利益が大きい場合は開業費として温存しておくのが定石です。
5. 個人事業主の海外送金や為替差損益
海外クライアントから外貨で報酬を受け取り、円換算した時に為替差益・差損が出るケース。為替差益は雑収入、為替差損は雑損失で処理します。これは事業主借・事業主貸とは別のロジックなので混同しないように。
事業主借事業主貸違いを正しく処理するためのおすすめツール
事業主借事業主貸違いの判断は、慣れれば一瞬ですが、開業1〜2年目は会計ソフトに頼るのが正解です。代表的なツールは以下です。
- freee会計: 取引明細を自動取得して、AIが仕訳候補を提案。プライベート支出の場合は「事業主貸/事業主借」のフラグを立てるだけで完結
- マネーフォワードクラウド確定申告: 同様に自動仕訳機能あり。銀行・クレカ連携の対応金融機関が幅広い
- 弥生会計オンライン: 老舗の安心感。サポート体制が手厚い
どのソフトも月額1,000円前後で、青色申告特別控除65万円を狙うなら投資対効果は十分です。マネーフォワードクラウド確定申告の入門コンテンツでは、確定申告の流れを動画で解説していて、初学者にもわかりやすいと評判です。
ちなみに、フリーランスや個人事業主の単価相場を知りたい方は著述家,記者,編集者の年収・単価相場やソフトウェア作成者の年収・単価相場を参考にしてみてください。職種ごとの市場相場を把握しておくと、事業計画の解像度が一気に上がります。
公的機関・関連参考情報
本記事の内容に関連する公的機関や信頼できる情報源は以下の通りです。最新情報は公式サイトで確認してください。
よくある質問への補足解説
「これだけは聞いておきたい」と相談現場で頻出する質問にもう少し踏み込んで答えておきます。
Q. 事業主借と事業主貸、どちらが多いと税金が増えるの?
どちらも貸借対照表科目で、損益計算書には影響しないため、税金額そのものは変わりません。ただし、事業主貸が極端に多い場合は「事業で稼いだお金をどんどんプライベートに引き出している=資金繰りが苦しい」と読み取られ、融資審査で不利になる場合があります。一方、事業主借が多すぎる場合は「個人の貯金を事業に投入し続けている=事業として黒字化していない」と見える可能性も。バランスシート上の見え方として、業績を評価する人が読むことを意識して整えておくとよいです。
Q. 事業主借と事業主貸、最初は混在していてもあとから直せる?
直せます。会計ソフトであれば仕訳の編集機能で科目を入れ替えれば、決算書も自動で再集計されます。確定申告書を提出済みの場合は、修正申告で正しい貸借対照表に直してください。修正申告は提出から5年以内(更正の請求は5年以内)が原則です。
Q. 「事業主借」「事業主貸」を期中にゼロにしてもよい?
期中の任意のタイミングで両科目を相殺してゼロにすることは、原則として推奨しません。月次・四半期での経営分析の精度が落ちます。期首振替仕訳で自動的に元入金に集約されるので、期中はそのまま積み上げておくのが正解です。
Q. 副業の年20万円ルールと事業主勘定の関係は?
会社員の副業所得が年20万円以下なら所得税の確定申告は不要、というルールがありますが、住民税の申告は必要です。また、20万円以下でも青色申告を選んでいるなら帳簿付け=事業主勘定の処理は必要になります。「20万円以下だから帳簿なし」は青色申告では通用しません。
特に最近相談が増えているのは、AI関連の業務をフリーランスで請け負う方々です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、企業のAI導入支援を個人事業として提供するスタイルが急増しており、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のような複合領域の案件も増えています。こうした新興分野では、書籍やオンライン学習の自己投資、ツールのサブスク料金が経費として頻繁に発生するため、事業主借(プライベートカード払い分の経費計上)の処理頻度が他職種より明らかに高い傾向にあります。
また、アプリケーション開発のお仕事で活躍するエンジニア層は、サーバー代やドメイン代、SaaS利用料を事業用カードで一括管理しているケースが多く、私的利用との混在は少なめ。一方でWebデザイナーやWebライター層は、私生活と仕事の境界があいまいになりやすく、事業主貸・事業主借の出番が多い印象です。
主婦業との両立で在宅ワークをしている方は、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開にあるように、家事の合間に仕事をする働き方が一般的で、自宅家賃や光熱費の家事按分が必須になります。子どもの長期休みなど集中力が削がれる時期もありますが、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで紹介されているテクニックを活用しつつ、帳簿付けは月1回まとめてやる「月次締め」スタイルに切り替えると負担が減ります。
資格取得への投資も、事業主借の頻出シーンです。たとえばビジネス文書検定やCCNA(シスコ技術者認定)のような業務関連資格は、受験料も研修費も事業の研修費として経費計上できます。私的カードで受験料を払った場合は「研修費/事業主借」の仕訳で計上し、領収書を保管してください。
事業主借事業主貸違いは、最初の1〜2回は迷っても、3回目以降は反射的に手が動くようになります。慌てず、1取引ずつ「お金の流れの向き」を確認しながら、確実に進めてください。法律はあなたの味方です。正しい知識さえあれば、確定申告も税務調査も怖くありません。
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この記事を書いた人
長谷川 奈津
行政書士・元企業法務
企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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