保健師の志望動機をどう書くか|書き出しの型と、避けたい言い回し

長谷川 奈津
長谷川 奈津
保健師の志望動機をどう書くか|書き出しの型と、避けたい言い回し

この記事のポイント

  • 採用側が見ている3つの視点と4ステップの組み立て方から整理します
  • 行政・企業・学校といった応募先ごとの書き分け
  • 看護師からの転職や新卒の場合の書き方

保健師の志望動機が書けない。この相談、実は「書けない」のではなく「何を書けば評価されるのかが分からない」という状態であることがほとんどです。志望動機は作文ではありません。応募先が求めている人物像に対して、自分がどう当てはまるかを示す書類です。つまり、感想文ではなく提案書に近い。この記事では、志望動機を組み立てる4つのステップ、応募先ごとの書き分け方、そして避けたほうがよい言い回しを整理していきます。あわせて、書類を書くときに知っておくべき注意点も扱います。書類に何を書くかという話は、実は法的な意味も持っています。これ、知らない人が本当に多いんです。

採用する側が志望動機で見ている3つのこと

まず、読む側の視点に立ちます。ここを理解しないまま書き始めると、いくら丁寧に書いても評価されません。

1つ目。この人は、うちの仕事の中身を理解しているか。保健師という仕事は、職場によってやることがまったく違います。行政なら地域の全住民が対象で、企業なら従業員が対象です。どちらも保健師ですが、日々の業務は別物です。志望動機を読んで「この人はうちの業務を分かっていないな」と思われた時点で、選考は難しくなります。

2つ目。この人は、続けてくれそうか。採用には時間と費用がかかります。数か月で辞められると、その投資が無駄になる。だから、動機が表面的でないか、現実を分かって選んでいるかを見ています。「人の役に立ちたい」という言葉だけでは、この不安を消せません。

3つ目。この人と一緒に働けそうか。保健師の仕事は、単独で完結しません。行政なら他の職員や関係機関と、企業なら人事や産業医や現場の管理職と連携します。志望動機の書き方から、この人が相手の立場を想像できる人かどうかが透けて見えます。

この3つを言い換えると、「理解」「継続」「協働」です。志望動機の役割は、この3点について安心してもらうことです。

逆に言えば、これ以外の要素は優先度が下がります。文章がうまいかどうか、感動的なエピソードがあるかどうかは、決定的な要素ではありません。実際、公開されている相談の場には、志望動機の添削を求める投稿が数多く寄せられています。

保健師の志望動機について。地元の市で保健師として働きたいと思っており、2次試験の面接に向けて面接カードをあらかじめ提出します。そこで、客観的に内容を見てアドバイスをして頂ければと思います。『私は健康状態や年代に関係なく、地域で暮らす全ての住民と関わり、人々が健康で生き生きと過ごせるよう支えていけるという点に非常に魅力を感じ、保健師として働きたいと思うようになりました。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

この文章、内容としては真っ当です。ただ、読む側から見ると「どの自治体に出しても通用する文章」でもあります。地域で暮らす全ての住民に関わりたい、という動機は保健師を志す人の多くが持っているものです。つまり、他の応募者と差がつかない。

差をつけるのは、書き方の技術ではなく、その応募先について具体的に調べたことです。ここが出発点になります。

書き出しの型。4つのステップで組み立てる

志望動機は、感覚で書くと必ずぼやけます。順番を決めて組み立ててください。

ステップ1は、応募先を調べることです。行政であれば、その自治体が公表している保健事業の計画、健康増進の重点課題、人口構成の特徴。企業であれば、事業内容、従業員数、健康に関する取り組みの発信。学校であれば、学生の規模や特徴。ここで調べた具体的な内容が、志望動機の骨になります。

調べ方は難しくありません。自治体であれば公式サイトに保健事業の計画や統計が公開されています。企業であれば採用ページや、健康に関する取り組みを紹介したページを読みます。国が公表している統計や指針は厚生労働省のサイトで確認できますので、地域の課題を全国の傾向と比べる材料になります。

ステップ2は、自分の経験の中から、その課題に関係するものを1つ選ぶことです。複数並べないでください。1つに絞ります。実習で見たこと、臨床で経験したこと、前職で担当したこと。何でも構いませんが、応募先の課題と接点があるものを選びます。

ステップ3は、その経験から何を学んだかを言葉にすることです。ここが最も重要で、最も抜けやすい部分です。経験を書いただけでは、単なる出来事の報告になります。その経験を通じて何に気づき、どういう考えを持つようになったのか。ここに、あなた固有の視点が現れます。

ステップ4は、その学びを応募先でどう活かすかを書くことです。ここで、ステップ1で調べた具体的な課題に戻ります。「御自治体が重点課題として挙げている〇〇に対して、私の△△という経験を活かしたい」という形になります。

この4つを順番に埋めると、志望動機の骨格ができます。文章の長さは、応募書類の欄の大きさに合わせて調整してください。面接カードのような限られた欄であれば、ステップ1と4を中心に、ステップ2と3を圧縮します。

体験を交えることの効果については、複数の情報源が同じ指摘をしています。

面接では、志望動機に自身の体験談を交えて語ることが重要です。例えば、「実習で高齢者宅を訪問した際、生活習慣の乱れから健康被害を受けている方を多く見て、予防の重要性を痛感しました」など、保健師を志したきっかけとなった具体的なエピソードを盛り込むとよいでしょう。 出典: co-medical.com

ここで注意点を1つ。体験談を「盛る」のは避けてください。実際にはなかった経験を作る、規模を大きく書く、担当していないことを担当したように書く。これらは応募書類における事実と異なる記載になります。採用の場面では、経歴に関する重大な虚偽が後から判明した場合、内定の取り消しや採用後の処分の理由になり得ます。つまり、盛った分だけリスクを背負うということです。書けることの中から選んでください。

応募先で、志望動機はどう変わるか

同じ保健師でも、応募先ごとに書くべき内容が変わります。ここを使い回すと、必ず見抜かれます。

行政(市町村や保健所)に応募する場合、押さえるべきは「地域全体を対象にする」という視点です。対象は乳幼児から高齢者まで、健康な人も含めた全住民です。だから、特定の人を治すという発想ではなく、地域の健康水準を上げるという発想が求められます。

書き方としては、その自治体の人口構成や健康課題に触れ、自分がどう関わりたいかを述べます。高齢化率が高い地域なら介護予防や在宅での療養支援、子育て世代が多い地域なら母子保健、といった具合に、地域ごとに重点が違います。ここを調べて書けているかどうかで、志望度が伝わります。

企業(産業保健)に応募する場合は、「働く人が働き続けられるようにする」という視点が中心になります。対象は従業員であり、多くは自分から相談に来る人ではありません。健診で引っかかったから呼ばれた、上司に言われて来た、という入口が普通です。だから、関係づくりの技能が求められます。

企業向けの志望動機では、その企業の事業内容や従業員の働き方に触れると具体性が出ます。交代制勤務がある業種なのか、デスクワーク中心なのか、在宅勤務が定着しているのか。働き方によって健康課題は変わります。

学校(大学や専門学校)に応募する場合は、若い世代を対象にする点が特徴です。生活リズムの乱れ、対人関係の悩み、進路の不安。健康の問題が学業や生活と絡み合って現れます。教職員との連携も業務に含まれます。

医療機関に応募する場合は、健診部門や地域連携部門など、配属先によって業務が変わります。応募の段階でどの部門なのかを確認し、その部門の役割に沿って書いてください。

産業保健の分野を志望するのであれば、その領域で何が求められているかを先に把握しておくと、志望動機の精度が上がります。看護師が産業保健師を目指すための資格と採用のポイント【2026年版】という記事では、産業保健の現場で必要とされる知識と、採用側が見ているポイントを整理しています。書く前に読んでおくと、調べる方向が定まります。

看護師から保健師へ転職する場合の書き方

このパターンは相談が多いので、丁寧に扱います。

看護師から保健師への転職では、必ず聞かれることがあります。「なぜ看護師を辞めるのか」です。ここへの答え方が、志望動機の質を決めます。

やってはいけないのは、前職の否定から入ることです。夜勤がつらい、人間関係が悪かった、業務量が多すぎた。これらが事実だったとしても、志望動機の冒頭に置くと「不満で辞める人」という印象になります。読む側は「うちでも不満が出たら辞めるのでは」と考えます。

有効なのは、看護師としての経験を保健師の仕事にどう接続するかを示すことです。

看護師から保健師へ転職する際の志望動機では、看護師としての経験をどう保健師の仕事に活かせるかを伝えることが重要です。 出典: co-medical.com

具体的にどう接続するか。いくつか型を示します。

治療の現場で、もっと早い段階で関われていれば違ったのではないかと感じた経験。これは予防への関心につながります。ただし、抽象的に書かず、どの場面でそう感じたかを具体的に書いてください。

退院後の生活を支える仕組みが足りないと感じた経験。これは地域での支援や、療養と仕事の両立支援につながります。

患者さんの家族への説明で、生活の背景まで踏み込まないと伝わらないと感じた経験。これは相談や指導の技能につながります。

いずれの型でも、「臨床で得たものを捨てて別の仕事に移る」のではなく、「臨床で得たものを別の場所で使う」という書き方にしてください。この違いは、読む側にはっきり伝わります。

転職の方向を決めかねている段階であれば、病院看護師からの転職先|一般企業・保健師・訪問看護の選択肢という記事で、企業、保健師、訪問看護という3つの方向の違いを比較しています。志望動機を書く前に、自分がなぜその方向を選んだのかを言語化しておくと、書類の説得力が変わります。

履歴書全体の書き方については、看護師の転職用履歴書の書き方|志望動機と自己PRの例文という記事で、志望動機と自己PRの書き分けや、職務経歴の整理の仕方を扱っています。志望動機だけを磨いても、他の欄との整合が取れていなければ効果は半減します。

新卒や実務経験がない場合の書き方

実務経験がない状態で書く場合、材料は実習と学びの経験に限られます。それで問題ありません。読む側も、経験がないことは前提にしています。

見られているのは、経験の量ではなく、経験から何を引き出したかです。

実習で印象に残った場面を1つ選んでください。訪問した先での会話、健診の場で見たこと、指導の場面で感じたこと。そのとき何を思い、何を課題だと感じたか。そして、その課題に対して保健師という立場で何ができると考えたか。

ここで多い失敗が、感想で終わることです。「大変さを実感しました」「重要性を痛感しました」だけでは、次につながりません。実感したうえで、自分は何をしたいのかまで書いてください。

もう1つの失敗は、教科書的な言葉を並べることです。「地域包括ケアシステムの構築に貢献したい」といった言葉は、それ自体は正しいのですが、誰でも書けます。自分の経験と結びついていない専門用語は、かえって空虚に見えます。

新卒の応募で有効なのは、応募先について具体的に調べたことを1つ入れることです。その自治体の統計を見て気づいたこと、その企業が公表している健康に関する取り組みを読んで考えたこと。実務経験がない分、調べる姿勢で差をつけられます。

私自身、法律を学び始めた頃に、条文を正確に覚えることが理解だと思い込んでいた時期があります。試験には通っても、実際の相談では役に立たなかった。相談者が本当に困っているのは条文の中身ではなく、その状況で何をすればよいかだったからです。知識を持っていることと、それを相手の状況に当てはめられることは別の技能です。志望動機も同じで、正しい言葉を並べることと、相手に伝わる言葉で書くことは別です。

避けたい言い回しと、その直し方

失敗しやすい書き方を、直し方とセットで挙げます。

1つ目。「人の役に立ちたい」だけで終わる。これは動機として真っ当ですが、保健師を志す人のほぼ全員が持っている動機です。直し方は、どういう形で役に立ちたいのかを具体化することです。誰に、どの場面で、どう関わりたいのか。

2つ目。「貴社の理念に共感しました」だけを書く。理念への共感は良いのですが、それだけだと調べた形跡が理念のページだけになります。直し方は、理念がどういう取り組みとして現れているかに触れることです。

3つ目。前職への不満から書き始める。前述のとおり、印象が悪くなります。直し方は、不満を「気づき」に変換することです。夜勤がつらかったのではなく、生活のリズムが崩れることが健康にどう影響するかを身をもって知った、という書き方にできます。

4つ目。待遇や勤務条件を志望理由の中心に置く。土日休みだから、残業が少ないから、というのは事実として重要ですが、志望動機の主題にすると「条件で選んでいる人」に見えます。直し方は、条件は面接での確認事項に回し、志望動機には仕事の中身を書くことです。

5つ目。応募先ごとの書き分けをしていない。使い回しは読む側に伝わります。直し方は、応募先固有の情報を最低1つ入れることです。

6つ目。自分の経験を並べすぎる。あれもこれも書くと、焦点がぼやけます。直し方は、1つに絞ることです。

7つ目。将来の展望を大きく書きすぎる。「地域の健康を変えたい」といった大きな話は、入職1年目の業務と距離があります。直し方は、当面何をしたいかを具体的に書き、その先に展望を短く添えることです。

そして、これは書き方の問題ではありませんが、記載内容の正確さについて注意点を添えておきます。学歴、職歴、資格の取得状況について事実と異なる記載をすることは避けてください。応募書類の記載は、採用の判断材料として扱われます。重大な虚偽が後で判明した場合、内定の取り消しや、採用後の処分の理由になり得ます。※個別の状況で判断に迷う場合は、労働問題を扱う弁護士や、行政の労働相談窓口に相談してください。

面接で志望動機を語るときのコツ

書類と面接では、伝え方が変わります。同じ内容でも、話し方の設計が必要です。

まず、書類に書いたことをそのまま暗記して読み上げるのは避けてください。書き言葉をそのまま話すと、不自然に聞こえます。それに、暗記した内容は途中で止まると立て直せません。

推奨するのは、要点を3つだけ覚えておくことです。応募先の課題、自分の経験、それをどう活かすか。この3つの順番だけ頭に入れておけば、言葉は毎回変わっても構いません。むしろ、その場の言葉で話したほうが伝わります。

想定される質問への準備も必要です。志望動機を述べたあと、必ず掘り下げの質問が来ます。「なぜその課題に関心を持ったのですか」「他の自治体ではなく、なぜここなのですか」「その経験から、具体的にどう活かせると思いますか」。これらに答えられるかどうかで、志望動機が本物かどうかが判定されます。

つまり、志望動機は文章として完成させるだけでなく、その背後にある考えを説明できる状態にしておく必要があります。ここが薄いと、掘り下げられた瞬間に崩れます。

話す長さは、1分から1分半を目安にしてください。それ以上長いと、聞く側の集中が切れます。短くまとめる練習として、要点を3つに絞って声に出して話し、時間を計ってみてください。

もう1つ、面接で効果があるのは、書類に書いた内容と話す内容の整合を取っておくことです。書類では地域の母子保健に関心があると書いたのに、面接では高齢者の介護予防の話を中心に語る。こうしたずれがあると、志望動機が場当たり的に見えます。提出した書類の控えを見返してから面接に臨んでください。控えを取っていない場合、この確認ができません。応募書類は必ずコピーを残しておくことをおすすめします。

そして、面接の終盤に設けられる質問の時間の使い方です。ここで何も聞かないのは、関心が薄いと受け取られる場合があります。かといって、休みの取りやすさだけを聞くと条件面ばかり気にしている印象になります。おすすめは、業務の中身に関する質問を1つ、働き方に関する質問を1つ、という組み合わせです。たとえば「昨年度、健診以外にどんな取り組みをされましたか」と「保健師は現在何名いらっしゃいますか」の2つであれば、仕事への関心と、現実的な確認の両方を示せます。

そして、面接は評価される場であると同時に、こちらが職場を評価する場でもあります。逆質問の時間は、条件を確認する機会として使ってください。

志望動機とは別に、必ず確認しておく労働条件

ここは法務の視点から、必ず書いておきたい部分です。志望動機を磨くことに集中するあまり、条件の確認を後回しにする方が非常に多いんです。

採用の場面では、労働条件が明示されることになっています。賃金、労働時間、就業の場所、業務の内容、契約の期間などがその対象です。つまり、口頭で「詳細は入ってから」と言われて済ませてよいものではありません。書面などによる明示を求めることは、応募者として当然の行為です。制度の具体的な内容は改正で変わることがありますので、詳細は厚生労働省が公表している資料で確認してください。

確認しておきたい項目を挙げます。基本給と、そこに含まれる手当の内訳。賞与の実績。残業がどのくらい発生するか、その時間分がどう支払われるか。所定労働時間と休日の日数。試用期間の有無と、その間の条件。契約期間の定めがあるかどうか。

とくに注意したいのが、提示された金額に何が含まれているかです。月給の中に一定時間分の残業代があらかじめ含まれている形の場合、その時間数と、それを超えた分の扱いを確認してください。ここを聞かずに入職して、想定より手取りが少なかったという相談は少なくありません。

年収の水準を判断するには、比較の材料が必要です。当サイトでは職種別の相場を整理しており、ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように、賃金の分布と業務委託での単価の考え方を並べて確認できます。他職種の水準を知っておくと、提示された条件が相場の中でどのあたりにあるかを相対的に判断できます。

条件の確認をすると印象が悪くなるのではないか。そう心配される方がいますが、逆です。条件を明確にすることは、双方にとって後々のトラブルを防ぎます。確認を嫌がる職場のほうを警戒してください。法律はあなたの味方です。

書くための道具と、下調べの手順

志望動機を書く作業を、効率よく進める方法を整理します。

まず、情報を集める段階です。応募先の公式サイト、公表されている計画や報告書、採用ページ、そして可能であれば実際に働いている人の話。これらを読んで、気になった数字や表現をメモしておきます。この段階では文章にしなくて構いません。

次に、自分の経験を棚卸しします。これまでに担当した業務、印象に残った場面、そのときに考えたこと。時系列で書き出してみてください。人は自分の経験を過小評価しがちです。書き出すと、思っていたより材料があることに気づきます。

そして、集めた情報と自分の経験を突き合わせて、接点を探します。応募先の課題と、自分の経験の中で関係するもの。この組み合わせが見つかれば、志望動機の骨格は完成したも同然です。

書く道具としては、文書作成のソフトで下書きを作り、応募書類の欄の大きさに合わせて削るという手順が実務的です。最初から欄に合わせて書こうとすると、内容が痩せます。まず長めに書いて、あとから削るほうが密度の高い文章になります。

文章の型を体系的に身につけたい方には、ビジネス文書検定のような検定が入口になります。試験範囲には文書の構成や敬語の使い方が含まれており、応募書類だけでなく、入職後の報告書や案内文にも使える知識です。応募先とのやり取りをメールで行う機会も増えていますので、文書の型を持っていることは実務上の強みになります。

情報を扱う環境の知識という点では、CCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク分野の認定もあり、通信やデータの管理の仕組みを体系的に学べます。健康情報を扱う立場では、情報を守る仕組みを理解していること自体が信頼につながりますので、志望動機の中で技能として触れられる場合もあります。

例文は、そのまま使わずに型として使う

インターネット上には、保健師の志望動機の例文が数多く公開されています。これらをどう使うか。結論から言うと、内容ではなく構造を借りてください。

例文をそのまま提出するのは、明確に避けるべきです。理由は2つあります。

1つ目。採用の担当者は、同じ職種の応募書類を毎年何十通も読んでいます。公開されている例文の言い回しは、当然目にしています。似た表現が並んでいれば、どこから持ってきたかは見当がつきます。

2つ目。例文の内容は、あなたの経験と一致しません。実習で経験していないことを書けば、面接で掘り下げられた瞬間に答えられなくなります。書類は通っても、面接で崩れます。

では、どう使うか。例文を読むときは、内容ではなく構造に注目してください。どういう順番で書かれているか。導入は何行か。経験はどのくらいの分量で書かれているか。締めくくりはどうなっているか。この骨組みだけを取り出して、中身を自分の材料に入れ替えます。

具体的な手順を示します。まず、例文を1つ選んで、各文が何の役割を果たしているかを書き出します。1文目は動機の提示、2文目は経験の紹介、3文目は学び、4文目は応募先での活用、といった具合です。次に、その役割に沿って自分の材料を当てはめます。この作業をすると、例文の言い回しは残らず、構造だけが残ります。

もう1つ、例文を読むときに確認してほしいことがあります。その例文が、どの応募先を想定して書かれているかです。行政向けの例文を企業に出すと、対象や業務の前提が合いません。読む側から見ると「うちの仕事を分かっていない」という印象になります。

私が法務の相談で受ける書類の中にも、雛形をそのまま使ったせいで実態と合わなくなっているものが少なくありません。契約書でも応募書類でも、同じ現象が起きます。雛形は考える手間を省いてくれますが、自分の状況に合わせる作業を省いてよいという意味ではありません。ここを飛ばすと、あとで必ず食い違いが出ます。

例文を参考にするのは効率的な方法です。ただし、参考にするのは形であって中身ではない。この線引きだけは守ってください。

保健師としての経験は、他の分野でどう見られるか

志望動機を書く過程で、自分の経験を棚卸しすることになります。その作業をしていると、思っていたより幅広い技能を使っていたことに気づく方が多いです。ここは、長い目で見たときに効いてくる話なので触れておきます。

保健師の業務には、専門的な相談対応のほかに、データを扱う仕事、企画を立てる仕事、関係者を調整する仕事が含まれています。健診結果を集計して傾向を読む、その結果をもとに施策を提案する、複数の部門と日程や役割を調整する。これらは、医療や健康の分野の外でも通用する技能です。

たとえば、企業の業務改善を支援する仕事では、現場の状況を把握し、課題を特定し、改善案を提示するという流れが基本になります。当サイトのガイドではAIコンサル・業務活用支援のお仕事で、専門知識を持つ人が企業の業務をどう支援しているかを解説していますが、この流れは保健師が健康施策を組み立てる過程とよく似ています。

データを扱う技能をさらに伸ばしたい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、情報を整理して意思決定につなげる仕事の成り立ちを整理しています。健診データの分析や、施策の効果測定は、この領域の考え方をそのまま使う業務です。

システムを作る側の視点を知りたい方にはアプリケーション開発のお仕事が参考になります。健康管理のシステムやオンライン面談の仕組みを作る現場では、実際に使う専門職の意見が求められています。使う側としてだけでなく、作る側の会話に入れる立場になると、社内で任される仕事の幅が変わってきます。

なぜこの話を志望動機の記事で扱うのか。理由は2つあります。

1つ目。自分の技能を棚卸しすると、志望動機に書ける材料が増えるからです。「相談対応ができます」だけでなく、「データを整理して課題を示し、関係部署と調整して施策を実施した」と書けるなら、後者のほうが具体的で強い。

2つ目。応募先を選ぶときの視野が広がるからです。保健師の求人だけを見ていると選択肢が限られますが、健康に関わる企画や、データを扱う職種にも接点があると分かれば、探す範囲が変わります。

志望動機を書く作業は、応募先に向けた文章を作る作業であると同時に、自分が何をしてきたかを整理する作業でもあります。この整理は、今回の応募が終わっても手元に残ります。

20年この市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から、選ばれ続ける人の共通点を2つお伝えします。

ひとつ。長く仕事が続く人は、自己アピールが上手いのではなく、相手が何に困っているかを先に把握しています。依頼する側は、優秀な人を探しているというより、自分の課題を解決してくれる人を探している。だから、自分の強みを並べる提案より、相手の課題に触れた提案のほうが通ります。志望動機もまったく同じ構造です。運営者として見てきた限りでは、この違いを理解している人は、業種を問わず選ばれています。

もうひとつ。額面の条件より、手取りの厚さと働き方の持続性を見て選んでいる人のほうが、結果的に長く続いています。仲介が何段階も入る取引では、依頼者が支払った金額と受け手に届く金額の間に差が生まれ、その差は誰の仕事にもなっていません。これが手数料0%の直接取引になると、同じ予算で依頼する側はより多くを頼めるようになり、受ける側の手取りは厚くなります。双方が得をする構造です。就職や転職でも同じで、月給の額面だけを見るのではなく、そこから何が引かれ、どれだけの時間を使うことになるのかまで見る人のほうが、入職後の後悔が少なくなります。

この視点は、志望動機を書く段階から持っておいてください。条件を見ずに志望動機だけを磨いても、入職後に条件が合わなければ続きません。志望動機は「入りたい理由」ですが、同時に「続けられる理由」でもあるべきです。

志望動機を、入職後に使える形にしておく

最後に、書いたあとの話をします。

志望動機は、提出したら終わりの書類ではありません。入職後、業務に迷ったときに立ち返る材料になります。自分は何をしたくてここに来たのか。その答えが書いてあるのが志望動機です。

だから、提出した志望動機は必ず手元に控えを残しておいてください。数年後に読み返すと、自分の考えがどう変わったかが見えます。変わっていること自体は問題ではありません。変わったことに気づけるかどうかが大切です。

そして、志望動機を書く過程で調べたことは、入職後の資産になります。その自治体の統計、その企業の事業内容、地域の健康課題。これらは業務が始まってから必要になる情報です。応募のために調べたことが、そのまま仕事の準備になっています。

書けないと悩んでいる方へ。書けない理由は、たいてい文章力ではなく材料不足です。応募先について調べることと、自分の経験を書き出すこと。この2つをやれば、材料は集まります。あとは順番に並べるだけです。

そして、その順番も、すでにこの記事で示したとおりです。応募先の課題、自分の経験、そこから得た学び、それをどう活かすか。この4つを埋めてください。完璧な文章を書こうとしなくて構いません。読む側が知りたいのは、あなたが応募先を理解しているかどうか、続けてくれそうかどうか、一緒に働けそうかどうか。その3つだけです。

よくある質問

Q. 保健師の志望動機は、どういう順番で書けばよいですか?

4つのステップで組み立ててください。まず応募先を調べて課題を特定し、次に自分の経験からその課題に関係するものを1つ選び、その経験から何を学んだかを言葉にし、最後にその学びを応募先でどう活かすかを書きます。経験は複数並べず、必ず1つに絞ってください。焦点がぼやけると印象が薄くなります。

Q. 看護師から保健師へ転職する場合、退職理由はどう書けばよいですか?

前職への不満から書き始めるのは避けてください。夜勤がつらかった、業務量が多かったといった事実があっても、そのまま書くと不満で辞める人という印象になります。臨床で得たものを別の場所で使うという書き方に変換してください。もっと早い段階で関われていればと感じた経験は、予防への関心として自然につながります。

Q. 実務経験がない新卒でも、志望動機は書けますか?

書けます。読む側も経験がないことは前提にしています。見られているのは経験の量ではなく、実習などの経験から何を引き出したかです。印象に残った場面を1つ選び、そこで何を課題だと感じ、保健師として何をしたいと考えたかまで書いてください。感想で終わらせないことが重要です。

Q. 面接で志望動機を話すとき、暗記していったほうがよいですか?

書類の文章をそのまま暗記するのは避けてください。書き言葉を読み上げると不自然に聞こえますし、途中で止まると立て直せません。応募先の課題、自分の経験、どう活かすかという3つの要点だけ覚えておき、その場の言葉で話してください。長さは1分から1分半を目安にします。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月20日最終更新:2026年9月12日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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