提案の段階で尺と修正回数を示すと、MV制作の案件の取り方が変わる

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
提案の段階で尺と修正回数を示すと、MV制作の案件の取り方が変わる

この記事のポイント

  • MV制作 案件の取り方を
  • 提案の中身から見直します
  • 尺と修正回数と納期を先に示すだけで返信率が変わる理由

MV制作の案件が取れない理由は、腕の問題ではないことがほとんどです。結論から言うと、提案の中身が足りていません。

具体的に言えば、尺(完成尺と対応可能な最大尺)、修正回数の上限、納期。この3つが提案文に書かれているかどうかで、依頼者から返信が来るかどうかが分かれます。逆に言えば、この3つを書いていない提案は、依頼者から見て「いくらかかるか分からない、いつ終わるか分からない相手」でしかありません。

正直なところ、多くの提案文が「丁寧に対応します」「クオリティには自信があります」といった、判断材料にならない言葉で埋まっています。依頼者はそれを読んで決めるわけではありません。決め手になるのは、条件が具体的に見えるかどうかです。

この記事では、MV制作の案件がどこから来るのか、どういう提案が通るのか、見積もりをどう組むのかを、順に整理します。

MV制作の案件は、大きく3つの経路から来る

まず、案件の入口を整理します。経路ごとに、求められる提案の形が違うからです。

経路 特徴 提案で効くもの
クラウドソーシング系プラットフォーム 案件数は多いが競合も多い。手数料が引かれる 条件の明示と評価の蓄積
業務委託マッチングサービス 直接取引が中心。手数料の扱いがサービスごとに違う 条件の明示と対応範囲の記述
音楽関係のつながり 単価が読みやすく継続しやすい。入口が狭い 過去の仕上がりと進行の安心感
制作会社からの外注 安定するが、仕様が細かい 納品形式への対応力

この4つのうち、最初に取り組みやすいのは上の2つです。ただし、性質はかなり違います。

プラットフォーム型は、案件が可視化されている代わりに、提案が並列で比較されます。依頼者は複数の提案を並べて読むので、読みやすさと条件の明確さが直接効きます。加えて、手数料が引かれる構造があります。年間の受注額が増えるほど、この差は無視できなくなります。

直接取引型は、比較される相手が少ない代わりに、そもそも見つけてもらう必要があります。プロフィールと過去の制作物が入口になるため、そこを整えておかないと提案の機会自体が来ません。

音楽関係のつながりは、入口としては狭いのですが、一度入ると継続しやすい特徴があります。アーティスト本人、レーベル、音楽制作のスタジオ、ライブハウス。ここから来る依頼は、単価の相場が読みやすく、仕様も安定しています。

制作会社からの外注は、案件の量が安定する一方で、納品形式や進行のルールが細かく決まっています。指定どおりに納品できるかが評価の中心になります。

評価が積み上がる構造を、最初に理解しておく

案件の取り方を考えるとき、多くの人が「良い提案文の書き方」から入ります。それも必要ですが、その前に押さえておくべき構造があります。

こういったシステムは「評価」というレビュー制度があるので、なるべく早いうちから始めて小さい案件でもきちっとこなしておくと良いです。 出典: monkeystudio.site

この指摘は的確です。評価の仕組みがあるサービスでは、初期に何をやったかが後から効いてきます。

ここで重要なのは「小さい案件でもきちっとこなす」という部分です。誤解されやすいのですが、これは「安い仕事を受けろ」という意味ではありません。規模の小さい案件を、大きい案件と同じ手順で進めろ、という意味です。

具体的には、次のような差が出ます。

小さい案件だからと、口頭やチャットの一言だけで進める。修正回数を決めない。納品形式を確認しない。この進め方をすると、案件そのものは終わっても、評価にはつながりません。依頼者の記憶に残るのは、仕上がりの良さではなく、やり取りの手触りだからです。

逆に、規模が小さくても、条件を書面で確認し、進行の連絡を入れ、期日に納品する。この積み重ねが評価として残り、次の依頼につながります。

MV制作の場合、この評価の蓄積が特に効きます。理由は、MVが「失敗できない案件」だからです。楽曲のリリースには日程があり、MVはその日程に紐づいています。依頼する側は、納期を守れる相手かどうかを最優先で見ています。過去に期日を守った記録があるかどうかが、金額より先に見られる場面は珍しくありません。

なぜ「尺」と「修正回数」を先に示すのか

ここが本題です。提案文に何を書くかという話をします。

依頼者がMV制作を発注するとき、頭の中にある不安は3つです。いくらかかるか、いつ終わるか、途中で追加費用が発生しないか。

この3つに答えているのが、尺と修正回数と納期です。

尺を示すことの意味

MVの尺は、そのまま作業量に直結します。3分のMVと5分のMVでは、カット数もテロップの量も書き出し時間も変わります。にもかかわらず、提案の段階で尺の話をしない人が非常に多い。

尺を書くというのは、「この金額はこの尺に対する金額です」と宣言することです。これがないと、後から「実は6分あります」と言われたときに、増額の交渉が難しくなります。すでに合意した金額の中に含まれていると解釈されるからです。

提案文には、「本見積もりは完成尺5分までを想定しています。これを超える場合は別途お見積もりいたします」といった一文を入れます。これだけで、範囲が定まります。

修正回数を示すことの意味

修正は、MV制作でもっとも予測しにくい部分です。「もう少し明るく」「このカットを別のものに」「テロップのフォントを変えたい」。依頼者に悪気はありません。ただ、回数の上限がないと際限がなくなります。

回数を書くというのは、依頼者を縛るためではありません。むしろ逆で、依頼者にとっての目安になります。「3回まで」と書かれていれば、依頼者は1回目の確認で気になる点をまとめて出そうとします。回数が書かれていないと、思いついた順にバラバラと出てきます。結果として、修正の総量は回数を決めたほうが少なくなります。

書き方としては、「初稿提出後、修正は3回までを標準とします。4回目以降は1回あたり別途費用を申し受けます」といった形です。金額を明示するかどうかは案件によりますが、上限があること自体を書くのが重要です。

納期を示すことの意味

納期は、依頼者が日程を組むための情報です。楽曲の配信日、ライブの告知タイミング、SNSでの公開計画。MVは単体で存在するのではなく、リリース計画の一部です。

だから、「なるべく早く仕上げます」は最悪の回答になります。依頼者は日程を確定できません。「素材受領後14日で初稿、修正含めて21日で完成」と書けば、依頼者はそこから逆算して計画が立てられます。

この3つを書くだけで、提案の性質が変わります。「作業できます」という表明から、「この条件で契約できます」という提示に変わるからです。

通る提案文の構成

実際の提案文を、構成として整理します。長く書く必要はありません。むしろ短いほうが読まれます。

第1段落で、依頼内容を自分の言葉で要約します。「◯◯様のご依頼は、楽曲の世界観に合わせたリリックビデオの制作、完成尺は約4分、納期は来月中旬という理解でよろしいでしょうか」。この確認があるだけで、読んでいる依頼者の警戒が下がります。募集文を読んでいない提案が大量に届いているからです。

第2段落で、条件を提示します。尺、修正回数、納期、金額。箇条書きで構いません。というより、箇条書きのほうが読みやすい。

第3段落で、対応範囲を明示します。企画から入るのか、素材をもらって編集だけなのか。撮影は含むのか。音源のミックスには関与しないのか。ここを曖昧にすると、後から範囲が広がります。

第4段落で、過去の制作物を提示します。リンクを並べるだけでなく、「この案件では、素材の選定から書き出しまでを担当しました」と一言添える。担当範囲が分かると、依頼者は自分の案件に当てはめて考えられます。

第5段落で、進行の方法を書きます。連絡の手段、対応可能な時間帯、素材の受け渡し方法。特に副業として受ける場合、対応時間を先に書いておくことが後の摩擦を減らします。

これで全体が原稿用紙1枚から2枚分です。それ以上は読まれません。

見積もりをどう組むか

金額の話をします。MV制作の見積もりは、単純な時間単価では組めません。工程ごとに性質が違うからです。

見積もりを組むときは、まず作業を分解します。

企画・構成案の作成。素材の整理と選定。カット編集。テロップ・歌詞の配置。色調整。モーショングラフィックス。書き出しと納品。

このうち、時間が読めるのは書き出しと納品くらいです。編集は素材の量に左右され、企画は往復の回数に左右されます。だから、見積もりは工程ごとの想定時間を積み上げたうえで、想定が外れる部分に余白を持たせます。

参考になる考え方として、隣接する職種の報酬水準を物差しにする方法があります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では、在宅で成立する技術職の報酬水準を職種分類ベースで確認できます。専門技能を時間で提供する仕事の水準感が掴めるので、自分の作業時間に単価を掛けるときの下限の目安になります。

企画書や歌詞テロップといった文章仕事が案件に含まれる場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も参照する価値があります。MV制作は映像だけの仕事に見えて、実際には文章と進行管理がかなりの比重を占めます。この部分を無償で引き受けている人は多いのですが、見積もりに入れるべき工程です。

もう1つ、金額を考えるうえで見落とされがちなのが、手数料の存在です。プラットフォーム経由で受注すると、報酬から一定割合が引かれます。同じ10万円の案件でも、手数料が乗る経路と乗らない経路では、手元に残る額が変わります。これは値引きに応じるかどうかの判断にも影響します。手数料が引かれる前提であれば、提示額を上げなければ実質的な報酬が下がるからです。

案件の内容を知ってから提案する

提案の精度を上げるいちばん確実な方法は、その分野でどういう依頼が実際に発生しているかを知ることです。

MV制作・BGM付き映像のお仕事では、MVやBGM付き映像の依頼がどんな形で出てくるのか、どこまでの範囲が求められるのかが整理されています。依頼文の書かれ方の傾向が分かると、自分の提案でどこを補えばいいかが見えます。

音そのものを扱う依頼については、作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事が参考になります。MV制作を受けていると、効果音の追加やBGMの調整まで相談されることがあります。自分でやるか外部に振るかは別として、隣の仕事の相場を知っておくと、提案の中で「ここは対応範囲外です」と言い切れます。

近年は、映像がプロモーション施策の一部として発注される流れが強まっています。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、その領域でどんな業務が動いているかを確認できます。純粋な作品としてのMVだけでなく、SNSでの拡散や広告運用と紐づいた映像案件が増えているという傾向は、提案の切り口にも影響します。

断るべき案件を見分ける

案件の取り方を語るとき、獲得の話だけをするのは片手落ちです。取ってはいけない案件を見分けるほうが、実は収益に直結します。

第1に、予算が書かれていない案件。「ご相談ください」とだけ書かれている募集は、依頼者側に予算の目安がないケースが多い。提案してから金額を伝えると、そこで話が止まります。時間の損失が大きいので、先に予算感を確認します。

第2に、素材の状態が不明な案件。撮影済みなのか、これから撮るのか、誰が撮るのか。ここが決まっていない案件は、着手の見通しが立ちません。

第3に、「まずは安く、次から単価を上げます」という提示。正直なところ、これはどうかと思います。次の案件が来る保証はどこにもありませんし、一度決めた単価が上がった例は多くありません。実績づくりのために意図的に受けるなら別ですが、その場合も期間や本数を自分で区切っておくべきです。

第4に、権利関係の説明が曖昧な案件。使用する楽曲や映像素材の権利を誰が持っているのか、答えられない依頼者がいます。公開後に問題が起きたとき、制作者側が説明を求められる可能性があります。この点は依頼を受ける前に文書で確認しておくのが安全です。

第5に、支払い条件を明示しない案件。フリーランスとして業務委託を受ける場合、発注者には給付を受領した日から起算して60日以内の支払期日を定める義務があります。2024年11月に施行されたフリーランス保護新法で明確化された点です。制度の詳細は公正取引委員会の案内で確認できます。この条件に触れたがらない依頼者は、それ自体が判断材料になります。

資格とスキルは、案件獲得にどう効くか

MV制作の受注に直結する資格は、率直に言って存在しません。判断材料は制作物です。

ただし、案件を取るという文脈では、映像の腕とは別の部分が効いてきます。提案文、見積書、進行の連絡、請求書。案件獲得の過程で発生するのは、ほとんどが文書のやり取りです。ここが整っているかどうかは、依頼者の判断に確実に影響します。

ビジネス文書検定は、こうした書面の基本を体系的に確認できる資格です。取得そのものが受注につながるわけではありませんが、学習内容は提案文と見積書の質に直結します。フリーランスの提案文を数多く見ていると、内容以前に文書として読みにくいものが少なくありません。

技術面では、リモートでの素材受け渡しや作業環境の構築が案件対応力に関わります。CCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク認定は本来技術者向けですが、大容量ファイルの扱いや通信環境の切り分けといった知識は、映像を扱ううえで実務的に効きます。MV制作のために取るものではありませんが、持っている人は環境面の不安が少ないという特徴があります。

在宅で成立する仕事と資格の関係を全体像として押さえたい場合は、在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるが職種別に整理しています。資格から仕事を探すのではなく、仕事から必要な要素を逆算する順番を勧めます。

作業環境の面では、回線の質が案件の回し方に影響します。大容量の素材を受け取り、書き出したファイルを納品する。この往復が案件ごとに発生します。在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方で回線種別の向き不向きを比較しておくと、納期の見積もりに現実味が出ます。

長時間の編集作業を継続する集中の維持については、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックが複数のアプローチを紹介しています。案件を複数抱えると、切り替えのコストが効いてきます。

初回のやり取りで確認しておく項目

提案が通ったあと、着手前に確認しておくべき項目があります。ここを飛ばすと、後の工程で必ず戻ります。案件の取り方の一部として、着手前の確認までを含めて考えるべきです。

確認する項目は次のとおりです。

楽曲の最終音源が確定しているか。ミックスやマスタリングの調整が続いている段階だと、尺が動きます。編集を進めてから尺が変わると、タイミング合わせがやり直しになります。確定していない場合は、確定予定日を聞きます。

素材の総量と形式。撮影データの容量、解像度、フレームレート、コーデック。ここが分からないまま日程を組むと、受け取りだけで数日かかる事態が起きます。

素材の権利処理を誰が行っているか。楽曲、映像素材、写真、フォント。使用するものすべてについて、利用許諾が取れている前提で進めてよいかを確認します。

出演者の肖像の扱い。公開範囲、二次利用の可否、期間の制限。制作側が直接出演者とやり取りすることは少ないので、依頼者を通じて条件を文書で受け取ります。

納品形式。解像度、フレームレート、ファイル形式、音声チャンネル数、ファイル名の規則。納品先がSNSなのか、大型ビジョンなのか、テレビ番組内なのかで要求が変わります。

確認と修正の窓口が誰か。依頼者が複数いる案件では、意見が割れます。誰の判断が最終かを最初に決めておかないと、修正回数の上限が意味を失います。

支払い条件と時期。金額、支払期日、請求書の宛先と締め日。

公開予定日。MVは楽曲のリリース計画に紐づいています。公開日が先に決まっているなら、そこから逆算した工程になります。

この8項目を、着手前にメールで確認します。書面で残ることが重要です。口頭で合意した内容は、後から食い違います。

納品後に、次の案件へつなげる

案件の取り方を考えるうえで、もっとも効率が良いのは、既存の依頼者から次の依頼をもらうことです。新規獲得にかかる労力と比べると、桁違いに軽い。

納品後にやっておくと効くことが3つあります。

1つ目は、納品時に素材の扱いを伝えること。「お預かりした素材は納品後3か月保持し、その後削除します。再編集のご要望があればその間にご連絡ください」。この一文があると、依頼者は追加の依頼を出しやすくなります。素材が残っていると分かっているからです。

2つ目は、公開後の反応を聞くこと。MVは公開されて初めて結果が出ます。「公開後の反応はいかがでしたか」と一言送るだけで、次の相談につながることがあります。営業をかけているわけではなく、成果に関心を持っている姿勢が伝わるだけです。

3つ目は、対応できる範囲を伝えておくこと。MVを納品した相手は、たいてい別の映像も必要としています。ライブ映像の編集、SNS向けの短尺版、告知用の静止画。「短尺版の切り出しも承れます」と伝えておくと、そのまま次の発注になります。

ここで注意したいのは、押しつけないことです。納品直後に営業を並べると、印象が悪くなります。あくまで、必要になったときに思い出してもらえる状態を作るだけです。

継続の依頼が入るようになると、提案文を書く回数が減ります。案件の取り方として最終的に目指すのは、提案しなくても声がかかる状態です。そこに至る道筋は、派手な営業ではなく、条件を守って納品した記録の蓄積です。

提案を送る前に、自分の側の条件を固めておく

もう1つ、提案の質を安定させる方法があります。案件ごとに条件を考えるのをやめて、自分の標準条件をあらかじめ決めておくことです。

決めておく項目は、標準の完成尺、標準の修正回数、標準の納期、最低受注金額、対応可能な曜日と時間帯、対応しない範囲の6つです。

これを一度書き出しておくと、提案文を書く時間が大幅に減ります。案件ごとに変えるのは、金額と納期の微調整だけになるからです。

そして、標準を決めておくことには別の効果があります。条件を外れた案件に気づけるようになる。「この依頼は納期が標準の半分しかない」「修正回数の指定が5回になっている」と、判断の基準ができます。基準がないと、目の前の案件に流されます。

標準条件は、一度決めたら固定するものではありません。受注が続いて手が回らなくなったら最低金額を上げる、逆に空きが続くなら納期を短くして対応力で勝負する。四半期に一度見直す程度の運用で十分です。

標準条件を持っている人は、提案の返信も速くなります。募集を読んで、当てはめて、送る。この一連が数分で終わるからです。案件の取り方において、返信の速さは軽視できない要素です。依頼者は複数の提案を待つのではなく、最初に条件が合った相手と話を進めることが多いためです。速く返せる仕組みを持っているかどうかが、獲得数の差になって現れます。

運営者から見た、案件が続く人の提案

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、継続して案件が入っている人の提案の特徴を述べます。

まず、条件を先に出す人は、断られる回数も多いという特徴があります。尺の上限、修正回数、納期を明示すると、条件が合わない依頼者は最初の段階で離れます。その結果、提案の通過率だけを見ると下がることがあります。

ところが、受注後の展開がまったく違います。条件を先に出して合意した案件は、途中で揉めません。範囲が広がらず、追加の無償作業が発生せず、期日どおりに終わる。だから次の依頼が来ます。運営者として見てきた限りでは、案件が途切れない人は、この「揉めない案件を積み重ねる」構造を持っています。

もう1つ。長く続く人ほど、単発の受注ではなく「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っています。提案の段階で条件を整理して見せるという行為は、その第一歩です。依頼者から見ると、自分が考えなければならないことを先に整理してくれる相手だからです。技術力の差より、この安心感の差のほうが、次の依頼を決めています。

最後に、手取りの構造について触れます。中間マージンが乗らない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側は手取りが厚くなります。年間の受注額が同じでも、手数料が引かれるかどうかで残る金額は違います。手数料0%の価値は、単価が上がることではなく、働いた分がそのまま手元に残るという質にあります。案件の取り方を考えるなら、獲得の技術と同じくらい、どの経路で受けるかを設計しておくべきです。

よくある質問

Q. 提案文には最低限、何を書けばよいですか?

尺の上限、修正回数の上限、納期、金額の4つです。依頼者が発注時に抱える不安は「いくらかかるか」「いつ終わるか」「追加費用が出ないか」の3点で、この4項目がそのまま答えになります。加えて、対応範囲(企画から入るのか編集だけか、撮影を含むか)を明示すると範囲の拡大を防げます。

Q. 修正回数を決めると依頼者に嫌がられませんか?

実際には逆に働きます。回数の上限があると依頼者は1回目の確認で気になる点をまとめて出すため、修正の総量はむしろ減ります。「初稿提出後、修正は3回までを標準とし、4回目以降は別途費用」といった形で、上限があること自体を提案文に書いておくのが有効です。

Q. 実績が少ない段階でも案件は取れますか?

取れますが、規模の小さい案件を大きい案件と同じ手順で進めることが前提になります。条件を書面で確認し、進行の連絡を入れ、期日に納品する。評価制度のあるサービスでは、この積み重ねが記録として残り、次の依頼につながります。安さで勝負するより確実です。

Q. 受けないほうがよい案件の見分け方は?

予算が書かれていない、素材の状態が不明、権利関係の説明が曖昧、支払い条件を明示しない。この4つのいずれかに当てはまる案件は着手の見通しが立ちません。「まずは安く、次から単価を上げます」という提示も、次の案件が来る保証がないため慎重に判断すべきです。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月12日最終更新:2026年8月25日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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