面談で聞き返す側に回る|在宅3Dモデリングの打ち合わせ

長谷川 奈津
長谷川 奈津
面談で聞き返す側に回る|在宅3Dモデリングの打ち合わせ

この記事のポイント

  • ✓3Dモデリングの在宅案件で面談に進んだのに決まらない人へ
  • ✓答えるだけの面談が落ちる理由
  • ✓こちらから確認すべき条件

在宅の3Dモデリング案件で面談まで進んだのに、その後の返事が来ない。あるいは、決まったはいいものの、始めてみたら聞いていた話とまるで違う。この2つの相談を、私は毎月のように受けています。

結論から言います。原因はどちらも同じで、面談で「答えるだけの側」に回っているからです。在宅の3Dモデリング案件の面談は、採用面接ではありません。業務委託であれば、法的には対等な当事者同士の条件交渉です。それなのに、質問されたことに答えて「よろしくお願いします」で終わらせてしまう。これでは、決まらないし、決まっても揉めます。

面談で聞き返す側に回ってください。何を聞き返せばいいのか、それを聞くと何が防げるのか。この記事では、実際に私のところに来たトラブル事例をもとに、具体的な質問文まで含めて書きます。これ、知らない人が本当に多いんです。

在宅3Dモデリングの面談は何を確かめる場なのか

まず、面談という場の性質を正確に理解しましょう。ここを取り違えたまま臨むと、準備の方向がずれます。

雇用の面接と業務委託の面談は別物

同じ「面談」という言葉でも、応募先が雇用契約を前提としているのか、業務委託を前提としているのかで、まったく性質が変わります。

雇用契約の場合は、労働基準法などの労働法が適用され、指揮命令を受けて働くことになります。面接では、企業側が採否を決める立場にあります。一方、業務委託の場合は、あなたは事業者です。取引条件を双方で合意する場であって、企業が一方的に選ぶ場ではありません。

ここが分かっていないと、業務委託の面談でも「選ばれなければ」という姿勢になり、条件を聞けなくなります。つまり、条件を確認しないまま契約に入り、後から不利な条件に気づく。私が受ける相談の大半が、この構造で発生しています。

在宅であることが条件を曖昧にする

在宅の案件では、オフィスに行かないぶん、口頭で交わされるやり取りが減ります。その代わり、チャットや通話での断片的なやり取りだけで話が進みがちです。

これは危険です。「だいたいこんな感じで」「細かいことは走りながら決めましょう」という進め方は、発注者にとっては柔軟に見えても、受け手にとっては範囲が無限になるということです。面談は、その範囲を固める最後のタイミングになります。ここで確認しなかったことは、後から確認しても「今さら」と言われます。

求人条件は面談で必ず裏を取る

募集要項に書かれている条件と、実際の運用が違うケースは珍しくありません。特に在宅・リモートの扱いは、要項の記載だけでは判断できないことが多い。

有名ゲーム制作会社でゲームデザイナーを募集しています。担当は、キャラクターモデラー、背景モデラー、エフェクトデザイナー、アニメーターのいずれかです。必須条件として、いずれかの経験が2年以上必要です。OJTがあるので、ゲーム業界未経験の方でも安心してスキルアップできます。研修期間中は出社ですが、その後はリモートワークが可能です。土日祝休み、残業は月10~20時間程度と少なめで、ワークライフバランスが取りやすい環境です。... 出典: 求人ボックス

この例のように「研修期間中は出社」と明記されている場合はまだ親切なほうです。多くの求人は「在宅勤務可」とだけ書いてあり、実際には週3日出社が原則だったり、繁忙期は全員出社だったりします。面談で「在宅の頻度は実際どのくらいですか」と聞かなければ、入ってから知ることになります。

面談で必ず聞くべき9つの質問

ここからが本題です。実際に使える質問文の形で書きます。丸暗記する必要はありませんが、この9つは必ず押さえてください。

質問1: 成果物の定義と検収の基準

「納品物として何をどの形式でお渡しすれば完了となりますか。また、検収はどなたがどの基準で判断されますか」

これが最重要です。3Dモデリングのトラブルの大半は、ここが曖昧なまま始まることから起きます。FBXだけでいいのか、Blenderのプロジェクトファイルも要るのか、テクスチャは何解像度で何枚か、命名規則はあるか。これらを聞かずに始めると、納品後に「これも必要でした」が延々と続きます。

検収の主体を聞くことも重要です。目の前の担当者ではなく、その先のクライアントが判断する構造だと、判断基準が見えないまま作り直しが発生します。「先方のご担当者様が確認される流れでしょうか」と一言聞いておくだけで、心構えが変わります。

質問2: 修正回数の上限

「初稿提出後の修正は、何回程度を想定されていますか。回数を超えた場合の扱いも先に決めておきたいのですが」

これを聞かないまま受注して、大変なことになった方がいます。キャラクターモデル3体を受注した方が、納品後に「もっとかわいく」という抽象的な指示で11回の作り直しを求められたケースです。契約書に修正回数の定めがなく、面談でも聞いていなかった。この状態だと、どこまでが契約範囲かを後から争うのが非常に難しくなります。

聞き方のコツは、相手を疑っている雰囲気にしないことです。「見積もりの精度を上げたいので」と前置きすれば、まったく角が立ちません。むしろ、この質問をする人は仕事に慣れていると評価されます。

質問3: 報酬の支払期日

「お支払いは納品から何日以内でしょうか。締め日と支払日を教えていただけますか」

ここには法的な裏付けがあります。2024年11月に全面施行されたフリーランス保護新法、正式には特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律では、発注事業者は成果物を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬支払期日を定め、その期日までに報酬を支払わなければならないと定められています。

つまり、「クライアントからの入金があってから払います」という運用は、原則として認められません。受領日を起点とした60日という上限は、発注者の先にいる会社の事情とは無関係に適用されます。面談でこれを聞いておけば、後から「入金待ちなので」と言われたときに、根拠を持って話ができます。

質問4: 契約条件の書面化

「業務委託契約書、または条件を記載した書面をいただけますか」

これも権利です。フリーランス保護新法では、発注事業者が業務委託をした場合、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務があります。つまり、条件を書いたものをもらうのは、お願いではなく法律上の建て付けです。

とはいえ、実務では出してこない発注者もいます。その場合は、面談の後に自分から送ってください。「本日伺った条件を整理しました。相違なければこの内容で進めさせていただきます」として、成果物、報酬、支払期日、修正回数を箇条書きにしたメールを送る。これで記録が残ります。揉めたときに、この一通があるかないかで結果がまるで違います。

質問5: 権利の帰属とポートフォリオ掲載

「納品物の著作権はどちらに帰属する契約でしょうか。また、実績としてポートフォリオに掲載することは可能ですか」

3Dモデルは著作物です。何も取り決めなければ著作権は制作者にありますが、業務委託契約では譲渡条項が入っていることがほとんどです。譲渡自体は普通のことなので、そこを争う必要はありません。問題は、掲載の可否です。

在宅で実績を積みたい人にとって、作品を見せられるかどうかは報酬と同じくらい重要です。掲載不可の案件ばかり受けていると、2年働いてもポートフォリオが増えません。面談で「公開時期以降であれば掲載可」といった条件を引き出せることもあるので、必ず聞いてください。

質問6: 進捗共有の頻度と手段

「進捗はどの頻度で、どのツールで共有するのがご都合よろしいですか」

在宅案件では、これを決めておかないと双方が不安になります。発注者は「進んでいるのか」と気を揉み、受け手は「連絡しすぎでは」と迷う。この摩擦が積み重なると、実力とは無関係に関係が悪化します。

こちらから提案する形にすると印象が良い。「2日おきにスクリーンショット付きで共有する運用を取っていますが、頻度のご希望があれば合わせます」。この一言で、自走できる人だと伝わります。

質問7: 稼働時間帯と連絡可能時間

「私の対応可能時間は平日19時以降と土日の日中です。緊急のご連絡には平日日中でも2時間以内に一次返信します。この体制で問題ないでしょうか」

副業として受ける場合、隠さないでください。隠して受けると、日中に連絡が取れないことが問題化します。先に伝えておけば、それを前提にスケジュールが組まれます。

逆に、発注者側の連絡可能時間も聞いてください。「確認をお願いしたいとき、どの時間帯であればご返答いただけますか」。ここが噛み合っていないと、こちらの作業が止まります。

質問8: 使用環境とデータの受け渡し方法

「使用予定のソフトウェアとバージョン、データの受け渡し方法を教えてください」

バージョン違いで開けない、という事故は実際に起きます。特にBlenderは更新が速いので、指定がある場合は先に聞いておくべきです。

データの受け渡し方法も重要です。大容量のアセットをやり取りする場合、指定のストレージを使う必要があるのか、VPN接続が必要なのか。VPN経由での作業が必須の案件では、回線環境が要件になることもあります。ここを面談で確認しないと、契約後に「うちの環境では作業できません」となりかねません。

質問9: NDAとセキュリティ要件

「NDA(エヌディーエー、秘密保持契約)の締結は必要でしょうか。データの保管方法に指定はありますか」

公開前のゲームや映像に関わる案件では、ほぼ必ずNDAが出てきます。こちらから聞くことで、法務まわりに慣れている印象を与えられます。

また、セキュリティ要件が厳しい案件では、私物PCでの作業が禁止されていたり、支給PCでの作業が必須だったりします。在宅でそれをどう運用するのかは、面談で確認しておくべきです。

トラブル事例から学ぶ、面談で防げたはずのこと

ここからは、実際に私が相談を受けた事例をもとに書きます。すべて匿名化していますが、構造は現実そのものです。

「イメージと違う」で報酬を払われなかったケース

キャラクターモデルを納品した方が、発注者から「イメージと違う」と言われて報酬を支払ってもらえなかった事例です。仕様書には「ファンタジー系の女性キャラクター、等身は7頭身」としか書かれておらず、制作物はそれに完全に沿っていました。

結論から言うと、これは受領拒否や報酬減額にあたる可能性が高い行為です。フリーランス保護新法では、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに受領を拒む、報酬を減額する、返品するといった行為が禁止されています。つまり、仕様通りに作ったものを主観的な理由で突き返すのは、発注者側のルール違反です。

では面談で何を聞いておけば防げたか。2つあります。1つは検収基準の確認、もう1つは「テイストのすり合わせをどの段階で行うか」の確認です。ラフの段階で合意を取るプロセスがあれば、「イメージと違う」という主張の根拠が消えます。※すでに支払いを拒まれている場合は、公正取引委員会や厚生労働省が案内している相談窓口を利用してください。個別の請求については弁護士に相談することをお勧めします。

無償の追加作業が積み上がったケース

モデリングのみで受注したはずが、リギング、ウェイト調整、表情シェイプの作成まで求められ、当初見積もりの2.5倍の工数がかかった事例です。

これは、面談で「担当工程の範囲」を確認していなかったことが原因です。3Dモデリングという言葉は範囲が広く、発注者と受け手で認識が一致していないことが日常的にあります。「モデリングのみか、リギング以降も含むか」を面談で切り分けておけば、追加分は別途見積もりとして交渉できました。

聞き方はこうです。「今回はモデリングとテクスチャまでという理解でよろしいでしょうか。リギング以降が必要な場合は、別途お見積りをご相談させてください」。この一文を面談で言えるかどうかで、受注後の数十時間が変わります。

支払いが先延ばしにされ続けたケース

納品後、「クライアントの検収がまだ」という理由で4ヶ月支払いが止まった事例です。

前述の通り、受領日から60日を超える支払期日の設定は、法律上認められていません。この方の場合、面談でも契約書でも支払期日を明示していなかったため、いつが期限なのかを主張する根拠が弱くなっていました。

面談で「締め日と支払日」を聞き、その後のメールで「月末締め翌月末払いと伺いました」と一文残しておく。これだけで立場が変わります。法律はあなたの味方ですが、記録がなければ味方であることを証明できません。

契約書の一方的な条項に気づかなかったケース

契約書に「発注者が不適当と判断した場合、報酬を減額できる」という条項が入っていた事例です。署名してから相談に来られました。

こうした条項は、法律に反する内容であれば効力が制限される可能性がありますが、争うには時間と労力がかかります。面談の段階で「契約書の雛形を事前に拝見できますか」と聞き、署名前に読む時間を確保するのが現実的な防御です。その場で署名を求められたら、「一度持ち帰って確認させてください」と言ってください。まともな発注者なら断りません。断る相手は、その時点で警戒対象です。

危険な発注者を面談で見分ける方法

すべての案件を受ける必要はありません。面談は、こちらが相手を選ぶ場でもあります。

条件の質問に即答できない相手

成果物の形式、修正回数、支払日。この3つを聞いて、どれも「確認します」「まだ決まっていません」と返ってくる場合、その案件は社内で整理されていません。始まってから条件が二転三転する確率が高い。

必ず断れというわけではありませんが、その場合は着手前に条件を書面で固めることを強く求めてください。それを嫌がるなら、見送る判断も合理的です。

「やる気」や「熱意」を条件の代わりに持ち出す相手

報酬や納期の話を避けて、「一緒に良いものを作りましょう」「熱意のある方と組みたい」という話ばかりする相手は要注意です。条件を詰めない理由が、条件が悪いことであるケースが少なくありません。

判定は簡単です。「素晴らしいですね。ところで報酬の支払日はいつになりますか」と、具体的な質問に戻してください。まともな相手なら普通に答えます。答えをはぐらかす相手は、そこが弱点です。

テスト課題を無償で大量に出してくる相手

スキル確認のために簡単な課題を出すこと自体は、業界の慣行として存在します。問題は分量です。実務レベルのモデルを1体丸ごと無償で作らせるような課題は、実質的にただ働きです。

面談で「課題の想定作業時間はどのくらいでしょうか」と聞いてください。2時間から3時間程度なら妥当です。10時間を超える課題を無償で求める場合は、その成果物が実際に使われる可能性を疑ってください。

契約形態を曖昧にする相手

業務委託と言いながら、勤務時間を指定し、作業場所を指定し、細かい指揮命令をしてくる。この状態は、実態として雇用に近いにもかかわらず、労働法の保護を受けられないという最も不利な形です。

面談で「契約形態は業務委託でよろしいでしょうか」「作業時間の指定はありますか」と確認してください。矛盾がある場合は、その場で指摘するのではなく、条件を持ち帰って検討する形にするのが賢明です。

面談の準備と当日の進め方

聞くべきことが分かったところで、実際の運用に落とし込みます。

事前に質問を紙に書き出す

オンライン面談では、画面の横にメモを置いても相手からは見えません。必ず質問を書き出してから臨んでください。緊張すると、聞くつもりだったことを丸ごと忘れます。

優先順位も決めておきます。時間が足りなくなった場合に、成果物の定義、修正回数、支払期日の3つだけは必ず聞く。残りは後日メールで確認する、という運びにしてください。

相手の制作物を1つ見てから臨む

これは受注確度に直結します。発注元の実績を1つ見て、技術的な観察を1点用意しておく。「公開されている作品を拝見しましたが、テクスチャの解像度を抑えつつ質感を出す設計をされているように見えました。今回も同様の方針でしょうか」。この質問は、確認であると同時に技術力の証明になります。

環境と回線を確認しておく

在宅の面談は、その環境自体が評価対象です。通話が途切れる、音が悪い、背景が散らかっている。これらは「在宅で仕事ができる環境なのか」という疑念につながります。

大容量データの扱いが前提の職種なので、回線について聞かれることもあります。「有線1Gbps回線を使用しています」と即答できるようにしておいてください。ネットワーク周りの基礎的な語彙を持っておきたい方には、CCNA(シスコ技術者認定)が扱う範囲が参考になります。取得が必須というわけではありませんが、リモート前提の現場では環境の説明が早く済みます。

面談後24時間以内に確認メールを送る

これが最も効きます。面談で合意した内容を箇条書きにして、その日のうちに送ってください。

書式は簡潔で構いません。件名に案件名を入れ、本文に成果物、報酬、支払期日、修正回数、納期を並べ、「相違があればご指摘ください」と締める。この一通が、後々の証拠になります。文書の型や敬語の基準に自信がない方は、ビジネス文書検定が扱う書式の考え方を押さえておくと、こうした確認メールの品質が安定します。

面談力を支える周辺知識

面談で聞き返せるようになるには、業界の構造を知っておく必要があります。知らないことは質問できないからです。

開発工程の全体像を把握する

3Dモデリングの案件は、開発チームの一部として動きます。前工程が誰で、後工程が誰かを知っていると、面談での質問が具体的になります。「エンジンへの実装は御社内で行われますか、それとも私の側で確認まで行いますか」。この質問は、工程を知らないと出てきません。

開発案件がどういう職種と工程で構成されているかは、アプリケーション開発のお仕事で整理されています。自分の担当がどこに位置するかを把握しておくと、範囲の交渉がしやすくなります。

相場を知っておく

報酬交渉で最も強いのは、相場を知っていることです。ソフトウェア作成者の年収・単価相場で技術職の報酬レンジを確認しておくと、提示額が妥当かを判断できます。

面談で金額を提示されたとき、その場で受けるか持ち帰るかの判断は、相場を知らないとできません。安すぎる案件を受け続けると、単価が上がらないまま時間だけが過ぎます。

文書系の仕事の相場も知っておく

3Dモデリングと並行して技術文書やマニュアル作成を受ける方は少なくありません。制作の現場を知っている人が書く文書には需要があります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場で文書系の報酬水準を把握しておくと、複合的な提案ができるようになります。

AI活用の話題に対応できるようにしておく

面談で「AIツールは使っていますか」と聞かれる場面が増えています。ここで否定的に答えると、変化に適応しない人と見られることがあります。

「ラフ形状の生成やテクスチャのバリエーション出しに試験的に使い、最終調整は手作業で行う前提で工程に組み込んでいます」。この程度で十分です。AI活用の支援が仕事としてどう成立しているかはAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、マーケティングやセキュリティを含む広い領域のAI関連職種はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとまっています。制作職でも、この動きは無関係ではありません。

面談で答えにくい質問をされたときの返し方

こちらから聞くことばかり書いてきましたが、相手からの質問に詰まって落ちる方も多いので、頻出のものを挙げておきます。

「経験年数はどのくらいですか」と聞かれたとき

実務が浅い場合、正直に答えたうえで、期間ではなく密度で補ってください。「実務としては1年ですが、その間に背景アセットを通算80点、上限ポリゴン数の制約下で制作しています」。年数は動かせませんが、規模と条件は語れます。年数だけを答えて黙ってしまうのが一番もったいない返し方です。

「他にどこを受けていますか」と聞かれたとき

正直に社数だけ答えれば十分です。会社名を挙げる義務はありません。「同じ職種で数社お話を進めています」で問題ありません。ここで「御社だけです」と答えると、かえって市場価値を疑われることがあります。

「単価はいくらでできますか」と先に聞かれたとき

範囲で返し、条件で絞る形にしてください。「作業範囲によりますが、モデリングとテクスチャまでで1点5,000円から12,000円が標準です。点数と修正回数が固まれば一括でのお見積りも出せます」。即答で単一の数字を出すと、そこが上限として固定されます。

「いつから稼働できますか」と聞かれたとき

余裕を持った日付を答えてください。現在の案件が終わる予定日に、3日から5日を足した日を伝える。前倒しは喜ばれますが、遅延は信頼を失います。着手日は、こちらが唯一完全にコントロールできる約束なので、ここを外さないことが後の評価につながります。

面談を重ねる中で見えてくること

最後に、市場全体を見てきた立場からの観察を書きます。

在宅可の3DCG求人を横断して見ると、条件の細かさに大きなばらつきがあります。研修や勤務条件を丁寧に書いている募集もあれば、職種名と「在宅可」しか書かれていない募集もあります。

大型プロジェクトのコアメンバーとして、3DCGコンテンツ制作に携わるデザイナーを募集します。アニメ、ゲーム、配信など多様な媒体で、世代を超えて心に残る作品を共に創り上げていきましょう。モデラーまたは3Dアニメーターとして、得意分野を活かしつつ、様々な経験を積んで成長できる環境です。基礎的な画力やPCスキル、プロフェッショナルなマインドをお持ちの方を歓迎します。在宅勤務も可能です。週休2日制(土・日)、祝日、年次有給休暇、その他相談に応じます。... 出典: 求人ボックス

「その他相談に応じます」という書き方をしている募集は、面談で条件を詰める前提になっているということです。つまり、聞かなければ何も決まりません。逆に言えば、聞けば決められる余地があるということでもあります。

20年この市場を運営者として見てきて分かったのは、条件交渉ができる人ほど長く続いている、ということです。ここで言う交渉は、値上げを迫ることではありません。曖昧なところを明確にする作業のことです。範囲が明確な仕事は、終わりが来ます。終わりが来る仕事を積み重ねられる人が、続いていきます。

もう1つ、運営者として見てきた実感があります。長く仕事が続いている方は、単発の案件を取ることより「この人に任せると楽だ」と思われる関係を作ることに時間を使っています。面談で丁寧に条件を確認する行為は、実は相手にとっても楽なんです。後から揉めないことが分かっているからです。だから、質問することは失礼ではなく、むしろ信頼の材料になります。

そして、中間マージンが乗らない直接取引の場では、この関係がそのまま条件に返ってきます。仲介手数料が差し引かれないぶん、依頼する側は同じ予算でより多く頼めるようになり、受け手は手数料0%で手取りが厚くなる。金額の話というより、続けたときに手元に残るものの質が変わってきます。

在宅で長く続けるためには、案件そのものだけでなく、自分の状態を保つことも必要です。面談を重ねて断られ続ける時期は、想像以上に消耗します。孤独や燃え尽きを防ぐ具体的な習慣については、在宅ワーカーのメンタルヘルスケア|孤独・燃え尽きを防ぐ5つの習慣【2026年版】にまとまっています。案件が薄い時期に文書系の仕事を組み合わせて収入を安定させる方法は、ビジネス文書検定で文書作成の副業力アップ|在宅ライティング案件が参考になります。専門職が在宅でどう働いているかの他分野の事例としては、法律事務所のパラリーガルの働き方|在宅・時短勤務の現状【2026年版】も、条件交渉と専門性の証明という共通課題を考えるうえで示唆があります。

面談は、選ばれる場ではなく、確かめる場です。聞き返す側に回ってください。法律はあなたの味方ですが、味方であることを引き出すのは、あなたの質問です。

よくある質問

Q. 在宅3Dモデリングの面談で、最低限これだけは聞くべき項目は何ですか?

成果物の定義と検収基準、修正回数の上限、報酬の支払期日の3つです。この3点が曖昧なまま始まると、納品後の追加作業や支払い遅延といったトラブルの大半が発生します。時間が足りない場合はこの3つを優先し、残りは面談後のメールで確認してください。聞き方は「見積もりの精度を上げたいので」と前置きすれば角が立ちません。

Q. 条件を細かく質問すると、面倒な人だと思われませんか?

むしろ逆で、仕事に慣れている人だと評価されます。発注者にとっても、後から揉めないことが分かるほうが楽だからです。ただし詰問調にならないよう、質問の前に目的を添えてください。条件の質問に答えをはぐらかす相手は、その時点で警戒すべき発注者だと判断する材料にもなります。

Q. 納品後に「イメージと違う」と言われた場合、報酬は請求できますか?

仕様通りに制作している場合、フリーランス保護新法が禁じる受領拒否や報酬減額にあたる可能性があります。発注者には成果物の受領日から60日以内に報酬を支払う義務があり、先方のクライアント都合は理由になりません。予防策として面談でラフ段階の合意プロセスと検収基準を確認してください。被害が出ている場合は公的な相談窓口や弁護士への相談を検討してください。

Q. 面談で提示されたテスト課題が重い場合、断ってもよいですか?

断って構いません。想定作業時間が2時間から3時間程度なら業界の慣行として妥当ですが、実務レベルのモデルを1体丸ごと無償で作らせる課題は実質的な無償労働です。面談で「課題の想定作業時間はどのくらいでしょうか」と確認し、10時間を超えるようであれば有償化を打診するか、その案件を見送る判断も合理的です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月12日最終更新:2026年9月16日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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