マツキヨでダブルワークをするときの条件|就業規則と申告の考え方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
マツキヨでダブルワークをするときの条件|就業規則と申告の考え方

この記事のポイント

  • マツキヨのダブルワーク条件を法務の視点で徹底解説
  • 求人票の「Wワーク可(条件あり)」の中身
  • 労働時間通算と割増賃金

「マツキヨの求人票に『Wワーク可(条件あり)』って書いてあるけど、この条件って結局なんなんですか」。この質問、本当によく受けます。そして、これを曖昧なまま面接に進んでしまい、採用後に「実は掛け持ちしていました」と言い出せなくなる方が、驚くほど多いんです。

結論から言います。マツキヨ(マツモトキヨシ/マツキヨココカラ&カンパニー)のダブルワーク条件は、大きく分けて4つに整理できます。同業他社での就業制限、労働時間の上限、事前申告の義務、そして扶養や学業に関する個別条件です。このうち法律上「絶対に守らないと違法」なのは労働時間の通算ルールだけで、残りは会社との契約(就業規則)の問題です。つまり、どこが法律の話で、どこが交渉できる話なのかを切り分けられれば、掛け持ちはかなりコントロールしやすくなります。

この記事では、行政書士として副業・兼業の相談を受けてきた立場から、求人票の「条件あり」の中身を分解し、労働基準法・税金・社会保険の3方向から実務的な対処法を整理します。あわせて、店舗でのダブルワークと在宅ワークを時間効率で比較し、どちらが自分の生活設計に合うかを判断できる材料も出します。

マツキヨのダブルワーク事情をマクロな視点で捉える

まず、個別の店舗ルールに入る前に、なぜドラッグストアが「条件付きでWワーク可」という中途半端に見える表記をするようになったのか、その背景を押さえておきましょう。ここが分かると、面接での交渉の勘所が変わります。

ドラッグストア業界の人手不足と副業解禁の流れ

ドラッグストア業界は、食品や日用品を扱う生活密着型の小売として店舗数を伸ばし続けてきた一方で、慢性的な人手不足を抱えています。日本チェーンドラッグストア協会が公表する市場規模は9兆円規模まで拡大しており、店舗数も全国で2万店舗を超える水準です。市場が伸びれば必要な人員も増えますが、労働力人口は増えません。だから、以前は「副業禁止」で一律に締めていた企業も、掛け持ち希望者を排除していては人が集まらない現実に直面しました。

もう一つの追い風が、国の政策です。厚生労働省は「モデル就業規則」から副業禁止規定を削除し、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という許可・届出型の条文に置き換えました。国が示すひな型が副業を前提にしたことで、これをベースに就業規則を作っている企業は自然と「条件付き容認」に寄っていきます。

労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、労働者の自由な時間の利用を制限してもやむを得ないと考えられる場合に限られる 出典: www.mhlw.go.jp

これ、知らない人が本当に多いんですが、副業を全面禁止する就業規則は、裁判所でもかなり限定的にしか有効と認められません。過去の裁判例では、副業が本業の労務提供に具体的な支障を与えている、あるいは企業秘密が漏れる危険がある、といった実害の立証を会社側に求める傾向があります。つまり、「規則に書いてあるから一律ダメ」は、法律の世界では通用しにくいんです。ただし、これは「黙って掛け持ちしていい」という意味ではまったくありません。ここは後で詳しく書きます。

「Wワーク可(条件あり)」という表記が増えた背景

求人票で「Wワーク可」とだけ書くと、応募者は「何をしてもOK」と受け取ります。しかし現場としては、同業他社で働かれると商品情報や販促計画が漏れる懸念があり、また労働時間を通算した際の割増賃金の負担も発生します。この2つのリスクを避けたいから、「可」と「条件あり」を並べて書くわけです。

実際、この表記の曖昧さは応募者側の混乱を生んでいます。ネット上のQ&Aサイトには、こうした戸惑いがそのまま書き込まれています。

マツキヨやココカラファインのバイト募集要項にWワーク可(条件あり)との記載がありますが、この条件について詳細わかる方いますか、、? 働いてる人など教えてください! 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

この質問がなぜ生まれるかというと、条件の中身が求人票に書かれていないからです。そして重要なのは、条件の具体的な線引きは店舗や運営会社、雇用形態によって変わるという点です。マツキヨココカラ&カンパニーはマツモトキヨシとココカラファインの経営統合で生まれたグループで、傘下には複数の運営会社があります。同じ看板でも、採用主体が違えば就業規則も違う。だから「ネットで見た他の人の条件」を自分に当てはめるのは危険です。確認すべきは、応募先の店舗が交付する労働条件通知書と、その会社の就業規則そのものです。

「条件あり」の中身を分解する4つのハードル

ここからが本題です。求人票の「条件」として実際に設定されがちなものを、4つに分けて解説します。自分がどれに引っかかるかをチェックしながら読んでみてください。

同業他社での勤務を禁止する競業避止の条件

もっとも一般的な条件がこれです。「ドラッグストア、コンビニ、スーパーマーケットなど、競合する業態での就業は不可」といった書き方をされます。法律用語では競業避止義務と呼ばれますが、つまり「ライバル会社では働かないでください」という約束のことです。

ここで多くの人がつまずくのが、「同業他社」の範囲がどこまでかという点です。実際、こんな相談がQ&Aサイトにも上がっています。

バイトについて質問です。 今マツキヨで働いていて今度まいばすけっとと副業しようかと考えていたんですが、まいばすけっとが同業他社(コンビニ・スーパー・ドラッグストア・イオン系店舗)の勤務不可という条件で募集していてこれはイオン系列の店舗がダメなのか、普通にマツキヨとか違うお店もダメなのか教えて頂きたいです! 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

この質問への実務的な答えはこうです。「同業他社(コンビニ・スーパー・ドラッグストア・イオン系店舗)」と括弧書きで業態が列挙されているなら、その列挙が定義です。つまり、系列かどうかではなく業態で判断されます。ドラッグストアと明記されている以上、マツキヨでの就業は対象に含まれると読むのが自然です。

ただし、これは会社との契約の問題であって、犯罪ではありません。在職中の競業避止は、労働契約に付随する誠実義務から導かれる範囲で有効とされますが、その効力は「会社の正当な利益を害する行為」に限定されるのが判例の傾向です。レジ打ちや品出しの労務を提供するだけで、営業秘密にアクセスしないアルバイトについて、裁判所が広範な競業禁止を認める可能性は高くありません。とはいえ、規則に反していれば懲戒(多くは注意や減給、悪質なら解雇)の対象にはなり得ます。「法的に無効かもしれない」と「揉めても平気」はまったく別の話です。

※ 実際に競業避止を理由に解雇や損害賠償を通告された場合は、その時点で弁護士に相談してください。書面が出てくる段階になると、素人判断で返答するリスクが大きくなります。

労働時間の上限に関する条件

次に多いのが「合計で週◯時間まで」「月80時間まで」といった上限設定です。この数字がどこから来ているのか、疑問に思ったことはありませんか。実は、これには社会保険の加入基準と割増賃金の負担が関係しています。

Q&Aサイトには、こんな切実な質問もありました。

至急! マツキヨと他で掛け持ちしています。 マツキヨが80時間以上働いたらいけないらしく、もし合わせて80時間以上働いた場合はどうなるのですか? 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

80時間という数字は、週あたりに直すと約18.5時間です。社会保険(健康保険・厚生年金)の短時間労働者の加入基準が「週の所定労働時間20時間以上」であることを考えると、この数字は「社会保険の加入義務を発生させない範囲」に設定されていると読めます。会社としては、短時間のアルバイトを大量に抱えると社会保険料の事業主負担が跳ね上がるため、意図的に週20時間未満に抑える設計をすることがあります。

超過した場合にどうなるかというと、まず所定を超えたシフトは店長裁量で組まれないのが普通です。それでも超過が続けば、社会保険の加入手続きが必要になるか、あるいはシフトを減らす調整が入ります。「即クビ」になることは通常ありませんが、会社の設計を崩す働き方なので、店側から敬遠されるのは事実です。掛け持ちを続けたいなら、この上限は自分から守る姿勢を見せたほうが結果的にシフトをもらいやすくなります。

事前申告と許可の条件

3つ目が、届出義務です。「他社で就業する場合は、事前に会社へ届け出ること」という条文が入っているケースが非常に多い。厚生労働省のモデル就業規則も、この届出型を採用しています。

ここで押さえておきたいのは、届出をしないことのリスクです。副業自体が問題ないケースでも、「申告しなかったこと」が服務規律違反として扱われる可能性があります。逆に言えば、正直に申告しておけば、多くの場合は問題になりません。私が相談を受けた中でも、トラブルになるのはほぼ例外なく「黙っていたのが後からバレた」パターンです。ダブルワークそのものより、隠していた事実のほうが信頼を大きく損ないます。

申告の際は、勤務先名、業種、週あたりの勤務時間、勤務曜日・時間帯の4点を伝えれば十分です。報酬額を聞かれることもありますが、労働時間の通算に必要な情報は時間であって金額ではありません。金額の申告義務が就業規則に明記されていない限り、無理に細かく答える必要はありません。

扶養・学業・在留資格に関する個別条件

4つ目は属性による追加条件です。配偶者の扶養に入っている方は、年収を一定額以下に抑える必要があるため、合計の勤務時間に制約が出ます。学生の方は、学業に支障が出ない範囲という条件が付くことがあり、試験期間中のシフト調整を求められる場合もあります。

留学生など在留資格に基づいて働く方は、資格外活動許可の範囲である週28時間以内という上限があります。これは会社のルールではなく法令上の上限で、複数の勤務先の時間を合算して判定されます。超えると在留資格そのものに影響するため、ここは絶対に守る必要があります。

法律の視点で見るダブルワークの限界線

ここまで会社のルールを見てきましたが、次は法律側の話です。会社のルールと法律のルールを混同すると、判断を誤ります。

就業規則の副業禁止規定はどこまで有効か

先に触れたとおり、勤務時間外の過ごし方は原則として労働者の自由です。したがって、副業を全面的に禁止する規定は、合理的な理由がある範囲でしか効力を持ちません。実務上、会社が禁止を正当化できるのは次のような場合です。

第一に、副業によって本業の労務提供に支障が出ている場合。深夜勤務の掛け持ちで日中に居眠りをする、遅刻が増える、といった具体的な支障です。第二に、企業秘密が漏洩する危険がある場合。仕入れ価格や販促計画にアクセスできる立場の人が競合で働くケースが該当します。第三に、会社の名誉や信用を損なう場合。第四に、競業により会社の利益を害する場合です。

つまり、これらに該当しない一般的なアルバイトの掛け持ちを、会社が一律に禁じることは難しい。ただし繰り返しますが、「無効を主張して戦う」のと「気持ちよく働き続ける」のは別問題です。実務としては、届出をきちんと出し、シフトに穴を開けないことのほうが、法的な主張よりずっと役に立ちます。

労働時間の通算ルールという法律上の絶対ライン

会社のルールは交渉の余地がありますが、労働基準法第38条第1項の通算ルールには例外がありません。条文は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。つまり、A社で5時間、B社で4時間働いたら、その日の労働時間は9時間として扱われます。

法定労働時間は1日8時間、週40時間です。上の例では1時間が法定時間外労働になり、25%以上の割増賃金が発生します。そして、この割増分を負担するのは、原則として「後から労働契約を結んだほうの会社」です。時間的に後に働いたかどうかではなく、契約締結の順番で決まるのがポイントです。

これ、知らない人が本当に多いんですが、この仕組みこそが会社が掛け持ちを警戒する最大の理由です。後から採用した会社は、応募者がすでに他社でフルタイム近く働いていると、自社のシフトがほぼ全部割増になってしまう。だから求人票で「Wワーク可(条件あり)」と書き、条件の中身として時間の上限を設けるわけです。会社側の事情を理解しておくと、面接で「本業は週15時間なので、法定内に収まります」と説明できます。これは強い交渉材料になります。

労働時間を管理する責任は誰にあるか

通算の把握は、労働者からの自己申告に基づいて各社が行うのが原則です。厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインでも、労働者の申告により他社での労働時間を把握する枠組みが示されています。逆に言えば、申告しなければ会社は把握できません。ここで虚偽の申告をすると、割増賃金の未払いという法違反を会社に生じさせることになり、責任の所在が複雑になります。正直に申告することが、自分を守る最短ルートです。

税金の実務で押さえるべき3つのポイント

ダブルワークで一番相談が多いのが税金です。ここは仕組みを理解すれば難しくありません。

給与を2か所以上から受け取る場合の確定申告

よく「副業20万円以下なら申告不要」と言われますが、これは正確ではありません。この20万円ルールが適用されるのは、給与所得と退職所得以外の所得(つまり在宅ワークなどの雑所得・事業所得)が20万円以下の場合と、給与を2か所以上から受けていて、年末調整をされなかったほうの給与収入と他の所得の合計が20万円以下の場合です。

マツキヨと別の会社の両方から給与をもらう掛け持ちの場合、後者に当たります。年末調整をしていないほうの給与が年間20万円を超えるなら、確定申告が必要です。逆に20万円以下でも、源泉徴収されすぎている分を取り戻すために申告したほうが得になるケースは珍しくありません。実際、掛け持ち先の給与から乙欄で高めに源泉徴収されていて、申告したら還付になった、という例は多いです。詳しい判定基準は国税庁のサイトで確認できます。

年末調整は1社だけ、扶養控除等申告書の出し方

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、同時に2か所へ提出できません。主たる勤務先(収入が多いほう)に提出し、そちらで年末調整を受けます。提出していない会社では乙欄という高めの税率で源泉徴収され、年末調整も行われません。だから、掛け持ちしている人は原則として自分で確定申告して精算する、という流れになります。

ここでよくあるミスが、両方に申告書を出してしまうケースです。悪意がなくても過少徴収になり、後から追徴されます。掛け持ちを始めたら、どちらを主たる勤務先にするかを最初に決めて、もう一方には申告書を出さないことを明確にしておきましょう。

住民税と「会社にバレる」問題の実際

会社に掛け持ちが知られる典型的な経路が住民税です。住民税は前年の所得全体から計算され、主たる勤務先の給与から特別徴収(天引き)されます。そのため、給与額に対して住民税が不自然に高いと、経理担当者が気づく可能性があります。

確定申告書の住民税に関する事項で「自分で納付(普通徴収)」を選べば、副業分の住民税を自分で納められる場合があります。ただし、これは副業が給与所得以外の場合に有効な方法で、給与所得同士の掛け持ちでは自治体によって普通徴収を認めないことがあります。実務としては、居住地の市区町村の課税課に事前に確認するのが確実です。

そもそもの話として、届出をしている掛け持ちであれば「バレる」ことを気にする必要はありません。隠すために税務上の裏技を探すより、正面から申告して働くほうが、精神的にも実務的にもはるかに楽です。

社会保険の加入基準と二以上事業所勤務届

税金の次に複雑なのが社会保険です。ここは「合算するもの」と「合算しないもの」を区別するのがコツです。

健康保険・厚生年金の加入基準

社会保険の加入は、事業所ごとに判定されます。合算はしません。原則は週の所定労働時間および月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上であること。これに満たなくても、週の所定労働時間20時間以上、月額賃金88,000円以上、雇用期間2か月超見込み、学生でないこと、という短時間労働者の基準を満たせば加入対象になります。

つまり、A社で週15時間、B社で週15時間、合計30時間働いていても、どちらの事業所でも基準を満たさなければ社会保険には加入しません。この場合は国民健康保険と国民年金に自分で入ることになります。合計時間が多いのに保険が手薄になる、という逆転現象が起きるのがダブルワークの落とし穴です。

二以上事業所勤務届が必要になるケース

両方の勤務先で加入基準を満たした場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出します。提出期限は事実発生から10日以内です。主たる事業所を選択し、両社の報酬月額を合算して標準報酬月額を決定、各社の報酬額に応じて按分した保険料を各社が納付する仕組みになります。

この届出は本人が行うものですが、実際には会社の担当者に任せきりで漏れているケースがあります。届出が漏れると、保険料の計算が正しく行われず、将来の年金額にも影響します。掛け持ち先の両方で社会保険に入るなら、自分で提出状況を確認しておいたほうがいいです。手続きの詳細は日本年金機構で確認できます。

雇用保険と労災の扱い

雇用保険は、原則として主たる賃金を受ける1社でのみ加入します。ただし65歳以上の方については、2社の労働時間を合算して週20時間以上になれば加入できる制度が用意されています。

労災保険は、すべての勤務先で自動的に適用されます。そして2020年の法改正で、複数事業労働者の給付基礎日額は全勤務先の賃金を合算して算定されるようになりました。これは掛け持ちする人にとって非常に大きい改正です。以前は、事故が起きた側の会社の賃金だけで補償額が決まっていたので、掛け持ちの人は補償が薄くなっていました。今は合算されるので、実態に近い補償が受けられます。※ 労災申請で会社の協力が得られない場合は、労働基準監督署に直接相談してください。

メリットとデメリットを冷静に比較する

条件と手続きの話が続いたので、ここで「そもそもマツキヨでダブルワークをする価値があるのか」を整理します。

店舗ダブルワークの実務的なメリット

第一に、収入が読めることです。時給制なので、シフトが決まれば月の収入がほぼ確定します。成果報酬型の副業と違い、収入のブレがない。生活費の補填が目的なら、この予測可能性は大きな価値です。

第二に、社割です。ドラッグストアの社員割引は日用品と医薬品に適用されることが多く、日常的に使うものが安くなります。割引率は企業によりますが、生活必需品の支出が月3万円ある家庭なら、数パーセントの割引でも年間では無視できない額になります。

第三に、資格取得の道が開けることです。ドラッグストアでの実務経験は、登録販売者という国家資格に直結します。これは後述しますが、時給を構造的に上げる数少ないルートです。

第四に、スキルの汎用性です。接客、レジ、在庫管理、発注補助といった業務は、他の小売業でも通用します。特定企業でしか使えないスキルにならない点は、キャリアの選択肢を狭めません。

見落とされがちなデメリット

一方でデメリットも明確です。最大の問題は身体的な拘束時間です。店舗勤務は移動時間が発生します。片道30分なら往復1時間、これは無給です。4時間のシフトに1時間の移動が乗ると、実質的な時間効率は20%下がります。

次に、シフトの融通性です。掛け持ちを申告していると、優先度が下がることがあります。人手が必要な繁忙時間帯に入れない人より、フルに入れる人にシフトが優先的に割り振られるのは、店舗運営の合理として避けられません。結果として「思ったほど入れなかった」という事態が起きます。

そして、収入の天井です。時給制の労働は、時間を売る仕事なので、収入は時間×時給を超えられません。週18時間の上限があるなら、その範囲での上限は最初から見えています。時給が上がらない限り、収入は増えません。ここが、スキルの蓄積で単価が上がる仕事との決定的な差です。

さらに、体力面の負担があります。立ち仕事を本業の後に続けると、疲労が翌日に持ち越されます。本業のパフォーマンスが落ちれば、副業禁止規定の「本業への支障」に該当してしまう可能性すら出てきます。

登録販売者という時給を上げる選択肢

デメリットで挙げた「収入の天井」を破る現実的な方法が、資格です。ドラッグストアで働くなら、登録販売者が最有力です。

登録販売者は、一般用医薬品のうち第2類・第3類を販売できる公的資格です。都道府県が実施する試験に合格すれば取得でき、受験に学歴や実務経験の要件はありません。ただし、資格を取っただけでは「研修中」の扱いで、直近5年間で通算2年以上かつ月80時間以上の実務経験を積んで初めて、正規の登録販売者として一人で店舗管理ができるようになります。

ここで先ほどの月80時間という数字が別の意味で効いてきます。実務経験としてカウントされる要件が月80時間以上なので、ダブルワークで時間を抑えていると、経験の積み上げが進まない可能性があります。資格を取って時給を上げる戦略を取るなら、本業側との時間配分を先に設計しておく必要があります。

資格手当の相場は、企業や地域によって幅がありますが、時給換算で50円から200円程度の加算が一般的なレンジです。仮に時給100円アップ、月70時間勤務なら月7,000円の増加です。金額としては大きくありませんが、同じ時間で得られる額が構造的に上がる点に意味があります。

資格で単価を上げるという発想は、店舗の仕事に限りません。デスクワーク系の副業でも同じ構造が使えます。たとえばビジネス文書検定は事務・ライティング系の業務で書類作成の基礎能力を示す指標として使われますし、IT分野に進むならCCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク系の認定が単価交渉の材料になります。資格ガイドではそれぞれの試験概要と活かし方をまとめているので、方向性を決める段階で目を通しておくといいでしょう。

店舗ダブルワークと在宅副業を時間効率で比較する

「マツキヨでダブルワーク」を検討している方の多くは、実は「収入を増やしたい」のであって「ドラッグストアで働きたい」わけではないはずです。だとすれば、選択肢は店舗勤務だけではありません。ここで在宅ワークと比較しておきます。

拘束時間と可処分時間の違い

店舗勤務は、シフトの時間帯に必ずその場所にいなければなりません。移動時間も含めると、4時間のシフトのために5時間以上を拘束されます。一方、在宅ワークは移動がゼロで、時間帯の自由度も高い。深夜に2時間だけ、朝の1時間だけ、という細切れの使い方ができます。

この差は、本業がフルタイムの人ほど効いてきます。平日夜に店舗シフトを入れるのは体力的に厳しくても、在宅で1時間のデータ入力や記事執筆なら続けられる、という人は多い。細切れ時間の活用については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで、短時間で成果を出すための具体的な手法をまとめています。集中の設計次第で、細切れ時間の生産性は大きく変わります。

家庭と両立させる場合の時間の組み方は、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開が参考になります。子どもの生活リズムに合わせて作業時間を配置する実例が載っているので、シフト勤務との比較材料として読んでみてください。

単価の伸び方が違う

時給制の店舗勤務は、時給が上がらない限り収入が増えません。対して、在宅の業務委託は実績とスキルによって単価が変動します。たとえばライティング系なら、文字単価0.5円からスタートして、専門分野の実績を積むと3円以上のレンジに乗る人もいます。開発系ならさらに幅が大きい。

具体的な相場感は職種によってまったく違うので、データで確認するのが早いです。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では開発職の報酬レンジを、著述家,記者,編集者の年収・単価相場ではライティング・編集系の水準を職種別にまとめています。自分の持っているスキルがどのレンジに位置するかを知ってから動くと、遠回りが減ります。

どんな仕事があるかを具体的に知りたいなら、お仕事ガイドが手っ取り早いです。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は生成AIの業務導入を支援する比較的新しい職種、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事はマーケティングやセキュリティ領域を横断する案件、アプリケーション開発のお仕事は受託開発の実務内容を、それぞれ必要スキルと合わせて解説しています。

在宅ワークの探し方と注意点

ただし、在宅ワークには店舗勤務にない固有のリスクがあります。報酬未払い、契約内容の一方的な変更、そして高額な情報教材を購入させる求人詐欺です。募集要項を見る段階でのチェックポイントは在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説にまとめてあります。特に、応募前に費用を求める案件は例外なく避けるべきです。

法務の観点で1点だけ補足します。2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、発注者には書面等による取引条件の明示義務と、物品等を受領した日から60日以内の報酬支払義務が課されました。つまり、「納品したのに払ってもらえない」という状況に対して、法律上の明確な根拠を持って請求できるようになったということです。在宅で業務委託を受ける場合は、この法律が自分を守ってくれることを知っておいてください。※ 実際に未払いが発生した場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口、または弁護士への相談を検討してください。

面接と申告で失敗しないための実務的なコツ

条件を理解したら、次は実際の進め方です。ここは経験則の話になります。

面接で掛け持ちを伝えるタイミングと言い方

隠さないでください。これが最大のコツです。面接の段階で「現在、別の会社で週15時間ほど勤務しています。業種は飲食で、シフトは平日の日中です」と具体的に伝えます。ポイントは、業種・時間・時間帯の3点をセットで出すことです。

なぜこの3点かというと、採用側が知りたいのは「競合かどうか」「割増賃金が発生するか」「シフトが埋められるか」だからです。この3つの不安を先回りして解消すれば、掛け持ちはむしろ「自己管理ができる人」という印象になります。逆に、曖昧にごまかすと「何か隠している」と受け取られます。

私が相談を受けた中で印象的だったのが、掛け持ちを隠して採用され、半年後にシフトの重複が発覚して気まずくなったという事例です。本人は「言ったら落とされると思った」と話していましたが、実際にはその会社の就業規則は届出制で、申告していれば何の問題もなかった。隠したことで、規則違反という別の問題を自分で作ってしまったわけです。これ、本当によくあります。

労働条件通知書と誓約書の読み方

内定後に交付される労働条件通知書は、必ず保管してください。ここに所定労働時間、賃金、契約期間が書かれています。そして、就業規則は事業場に備え付けられていて、労働者はいつでも閲覧できる状態にしておく義務が会社にあります(労働基準法第106条)。「就業規則を見せてください」と言うのは、法律で保障された権利です。

誓約書に署名を求められた場合は、競業避止条項の文言を必ず確認してください。「在職中および退職後2年間、同業他社に就業しない」といった退職後の制限が入っていることがあります。アルバイトに退職後の競業避止を課すのは合理性に乏しく、無効と判断される可能性が高いですが、署名してしまうと後で争点になります。疑問があれば、その場で署名せず持ち帰って構いません。※ 内容に納得できない条項がある場合は、署名前に弁護士や労働相談窓口に確認してください。

掛け持ちを続けるためのシフト管理

実務的には、カレンダーアプリで両方のシフトを一元管理するのが基本です。そのうえで、月の合計時間を自分で集計します。週40時間、1日8時間のラインを超える日がないかを、シフト確定の段階でチェックする。これを怠ると、後から割増賃金の処理で会社に迷惑をかけることになります。

もう一つ、意外と効くのが「連続勤務日数」の管理です。労働基準法上、週1日または4週4日の法定休日を与える義務が各社にありますが、掛け持ちだと結果的に14日連続勤務のような状態が発生し得ます。これは違法ではありませんが、身体が壊れます。月に最低4日は完全休養日を確保する、という自分ルールを決めておくことを強く勧めます。

現場を長く見てきた立場からの観察

在宅ワークとフリーランスの市場を20年運営してきた立場から、掛け持ちを考えている方に伝えたいことが2つあります。

1つ目は、時間を売る仕事と成果を売る仕事の比率を、意識的に設計してほしいということです。運営者として見てきた限りでは、収入を安定させながら伸ばしていく人は、必ずこの2種類を組み合わせています。店舗のシフトのように「入れば確実に入る収入」を土台にしつつ、成果報酬型の仕事で単価が上がるレーンを並走させる。片方だけだと、前者は天井が来て、後者は収入が読めずに生活が不安定になります。マツキヨでのダブルワークを「土台」と位置づけるなら、それは非常に合理的な選択です。ただし、土台だけで終わらせないことが重要です。

2つ目は、手取りの厚さという視点です。仲介事業者が入る仕事は、報酬から手数料が引かれます。20%の手数料がかかれば、10万円の仕事の手取りは8万円です。これに対して、依頼者と受け手が直接つながる形の取引は中間マージンが乗りません。手数料0%という構造は、単に受け手の取り分が増えるという話ではないんです。依頼者側も同じ予算でより多くを頼めるようになるため、継続的な関係が生まれやすい。長く続けている方を見ていると、単発の作業を数多くこなすより、「この人に任せると楽だ」という信頼関係を数社と築いて、その関係の中で仕事が回っている。額面の高さより手取りの厚さ、そして関係の継続性が、結果的に年間の収入を決めています。この構造は、店舗のアルバイトでも実は同じです。店長から「この人はシフトに穴を開けない」と思われている人には、良い時間帯のシフトが回ってきます。

条件を整理して自分の掛け持ち設計を作る

ここまでの内容を、判断の順序として組み直します。

最初に確認すべきは、応募先の業態が現在の勤務先の競業避止条項に触れないかどうかです。触れるなら、その時点で選択肢から外すか、現在の勤務先に事前確認します。次に、合計の労働時間を計算します。1日8時間、週40時間を超えるかどうかで、割増賃金の扱いが変わり、採用のハードルも変わります。

3番目に、社会保険の加入基準に触れるかを見ます。週20時間、月額88,000円のラインをどう扱うかで、手取り額が変わります。扶養に入っている方は、ここが最重要の判断ポイントになります。4番目が税金です。年末調整をしないほうの給与が20万円を超えるなら確定申告が必要になるので、その手間を織り込んでおきます。

そして最後に、時間効率です。移動時間を含めた実質時給を計算してみてください。時給1,200円4時間のシフト、往復1時間の移動なら、実質時給は960円です。この数字を、在宅で同じ5時間を使った場合と比べる。職種別の単価相場は年収データベースで確認できるので、感覚ではなくデータで比較してください。

掛け持ちは、うまく設計すれば生活の安定と成長の両方を得られる働き方です。逆に、条件を確認せずに始めると、就業規則違反、税務の未申告、社会保険の手続き漏れという3つのリスクを同時に抱えることになります。ここまで読んで「面倒だ」と感じたかもしれませんが、最初に一度整理してしまえば、あとは同じルールで運用するだけです。そして、条件を正しく理解して申告している限り、法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. マツキヨの「Wワーク可(条件あり)」の条件とは具体的に何ですか?

主に4つです。ドラッグストアやコンビニなど同業他社での就業禁止、月80時間などの労働時間上限、他社就業の事前申告義務、扶養や学業・在留資格に応じた個別条件です。ただし線引きは運営会社や店舗で異なるため、労働条件通知書と就業規則を必ず自分で確認してください。

Q. 掛け持ちで合計80時間を超えたらどうなりますか?

即解雇になることは通常ありません。月80時間は社会保険の加入基準(週20時間)を意識した会社側の設計であることが多く、超過するとシフト調整か社会保険の加入手続きが入ります。ただし1日8時間・週40時間を超えた分は法定時間外となり、後から契約した会社に25%以上の割増賃金の支払い義務が生じます。

Q. ダブルワークの収入は確定申告が必要ですか?

年末調整をしていないほうの給与収入と他の所得の合計が年間20万円を超えるなら必要です。20万円以下でも、乙欄で多めに源泉徴収されている場合は申告すると還付になることがあります。扶養控除等申告書は2か所に同時提出できないため、主たる勤務先を先に決めておいてください。

Q. 店舗の掛け持ちと在宅副業はどちらが効率的ですか?

収入の安定性なら店舗、時間効率と単価の伸びしろなら在宅です。店舗は移動時間が無給で実質時給が下がり、時給以上に収入が増えません。在宅は移動ゼロで細切れ時間を使え、実績次第で単価が上がります。店舗を土台にしつつ在宅を並走させる組み合わせが現実的です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月18日最終更新:2026年9月5日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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