工数の見積もりができないときの原因と、ずれを小さくする進め方


この記事のポイント
- ✓工数の見積もりができない
- ✓出した数字がいつも外れる
- ✓手戻りの数え漏れなどに分けて整理し
「この作業、何時間でできますか」と聞かれて、答えに詰まる。思い切って出した数字が、終わってみると倍近くかかっていた。工数の見積もりができないという悩みは、開発の仕事に限らず、デザイン、ライティング、事務の代行など、作業を時間で区切って引き受ける仕事の多くで見られます。
見積もりが外れる原因は、才能や経験の不足だけではありません。多くの場合、見積もる前に決めておくべきことが決まっていない、作業の分け方が粗い、実際に手を動かせる時間を多く見すぎている、といった「進め方」の問題です。この記事では、工数の見積もりができない原因を順に整理し、ずれを小さくするための手順、3点見積もりの計算例、相手への伝え方、そして実績を残して次の見積もりに生かす方法までを説明します。
工数とは何か、見積もりで何を決めるのか
工数とは、ある作業を終えるのに必要な人の手間を、「人数×時間」で表したものです。1人が8時間かかる作業は8人時、1人が1日かかる作業は1人日と書きます。2人で4時間ずつ取り組んでも、工数は同じ8人時です。
見積もりでよく混ざるのが、工数と工期の違いです。工期とは、作業を始めてから終わるまでのカレンダー上の期間のことです。工数が16人時の作業でも、1日に4時間しか割けなければ工期は4日になりますし、相手の確認待ちが2日入れば6日になります。「何時間かかるか」と「いつ終わるか」は別の問いで、見積もりができないと感じている人の多くは、この2つを同時に答えようとして混乱しています。
見積もりの対象は、大きく分けて次の4つです。
- 規模。作るものの量。画面の数、ページ数、記事の本数、データの件数など
- 工数。その量を作るのにかかる人の手間
- 工期。始めてから終わるまでの期間
- 費用。工数に単価を掛けた額に、外注費や道具の費用を加えたもの
この順番には意味があります。規模が決まらなければ工数は決まらず、工数が決まらなければ工期も費用も決まりません。見積もりができないと感じたら、まず規模、つまり「何をどれだけ作るのか」が決まっているかを確かめるのが出発点です。
情報処理推進機構(IPA)が公開しているソフトウェアの見積もりの解説資料でも、見積もりはプロジェクトにとって計画を立て、状況をつかみ、必要に応じて立て直すための基準だと位置づけられています。見積もりは、当てるための数字というより、後で「どこがずれたか」を確かめるための物差しだと考えると、向き合い方が変わります。
工数の見積もりができない8つの原因
見積もりが外れる、あるいはそもそも数字を出せないときは、次の8つのどれかに当てはまっていることがほとんどです。
原因1:作業の範囲が決まっていない
「ホームページを直してほしい」「資料を作ってほしい」のように、依頼の言葉があいまいなまま見積もると、頭の中で想定した範囲と相手が期待している範囲がずれます。直すのはトップページだけなのか、全ページなのか。資料は10枚なのか、30枚なのか。範囲が決まっていない状態で出した数字は、見積もりではなく推測です。
原因2:作業を大きな塊のまま見ている
「サイトの改修で40時間」のように、大きな塊のまま数字を出すと、中に含まれる細かい作業を数え漏らします。現状の確認、素材の受け取り、修正の作業、表示の確認、相手への報告、修正依頼への対応。分けて書き出すと、最初に頭に浮かんだ数字の1.5倍から2倍になることは珍しくありません。
原因3:初めての作業で、比べるものがない
初めて扱う技術や業務は、どのくらいかかるかの手がかりがありません。こういう作業を、他の作業と同じ精度で見積もろうとすること自体に無理があります。初めての作業は、調べる時間と試す時間を別の作業として切り出す必要があります。
原因4:1日に作業できる時間を多く見すぎている
1日8時間働く人でも、メールの返信、打ち合わせ、ちょっとした相談、休憩をはさむと、ひとつの作業に集中できる時間は5時間から6時間程度に収まることが多くあります。工数を8人時と見積もっても、それを1日で終えられるとは限りません。
原因5:確認と手戻りを数えていない
作ったものを相手に見せ、意見をもらい、直す。この往復は、どの仕事にも必ず入ります。見積もりを作業の時間だけで組み、確認と修正の時間を入れていないと、ほぼ確実に足りなくなります。
原因6:人や物を待つ時間を入れていない
素材が届くのを待つ、相手の承認を待つ、他の担当者の作業が終わるのを待つ。待ちの時間は工数には入りませんが、工期には入ります。ここを見落とすと、「工数は合っていたのに締め切りに間に合わない」ということが起きます。
原因7:過去の実績が残っていない
前に似た作業をしたとき、実際に何時間かかったかが記録されていなければ、毎回ゼロから勘で数字を出すことになります。見積もりが上達しない一番の原因は、ここにあります。
原因8:数字を相手の希望に合わせてしまう
「来週までに」「予算はこのくらいで」と先に言われると、その枠に収まるように見積もりを削ってしまうことがあります。こうして出した数字は、作業の量から出したものではないので、外れて当然です。
見積もりがずれるのは避けられない
ここで押さえておきたいのは、見積もりは早い段階ほどずれが大きく、それ自体は避けられないという事実です。IPAが公開している見積もりの解説資料には、次のように書かれています。
細部が決まっていない状況で、見積りを行う場合が多い(予算決めなど早い段階) ⇒ 部分的な情報から、推測するしかない。 ⇒ 実際とぶれがでることは避けられない 出典: ipa.go.jp
同じ資料では、要件が固まる前の段階の規模の見積もりは、実際の4分の1から4倍までぶれうるという数値の例も示されています。つまり、ずれをゼロにすることを目標にするのではなく、ずれの幅を小さくすること、ずれたときに早く気づいて手を打てるようにすることが、見積もりの現実的な目標です。
この考え方に立つと、「見積もりができない」という悩みは、「1つの正確な数字を出せない」という悩みと言い換えられます。そして、1つの数字にこだわる必要はありません。後で説明するように、幅をもたせた数字と、その数字の前提を一緒に出せば、見積もりとして十分に役目を果たします。
ずれを小さくする見積もりの進め方
ここからは、見積もりのずれを小さくするための具体的な手順を、順番に説明します。
手順1:作るものと作らないものを書き出す
最初にやるのは、作業の範囲を文章にすることです。「やること」だけでなく、「やらないこと」も書きます。たとえば、Webサイトの改修であれば次のように書きます。
- やること。トップページと料金ページの文言とレイアウトの変更、スマホでの表示の確認
- やらないこと。写真の撮影、新しいページの追加、問い合わせフォームの改修
- 相手に用意してもらうもの。変更後の文章、差し替える画像
この3つを書いて相手に見せるだけで、見積もりのずれの大きな部分は防げます。範囲のずれは、見積もりのずれの中で一番大きく、一番防ぎやすいものです。
手順2:作業を小さく分ける
次に、範囲の中の作業を細かく分けます。作業を木の枝のように分けていく表を、WBS(作業分解構成図)と呼びます。難しく考える必要はなく、「何をするか」を動詞で書き出し、1つの作業が数時間から1日程度に収まるまで分ければ十分です。
分けるときの目安は、「その作業が終わったかどうかを、誰が見ても判断できるか」です。「デザインを考える」は終わりが分かりませんが、「トップページの案を2つ作り、相手に送る」なら終わりがはっきりします。
手順3:作業ごとに3つの数字を出す
分けた作業それぞれに、1つの数字ではなく、3つの数字を出します。
- 楽観値。うまく進んだ場合にかかる時間
- 最頻値。いちばんありそうな時間
- 悲観値。つまずいた場合にかかる時間
この3つから見積もりの数字を出す方法を、3点見積もりと呼びます。計算の仕方は次の節で例を使って説明します。
手順4:確認、手戻り、連絡の時間を加える
作業そのものの時間とは別に、相手への確認、意見を受けての修正、打ち合わせや連絡にかかる時間を、独立した作業として加えます。修正の回数を「2回まで」のように決めておくと、見積もりにも契約にも書きやすくなります。
手順5:実際に作業できる時間で工期に直す
工数が出たら、1日に実際に作業へ充てられる時間で割って、工期に直します。1日に5時間なら、20人時の作業は4日です。ここに相手の確認待ちの日数を加えると、締め切りの見通しが立ちます。
手順6:前提を書いて、幅で伝える
最後に、見積もりの数字と一緒に、その数字が成り立つ前提を書きます。「素材が作業開始の前日までに届くこと」「修正は2回まで」などです。数字は1つではなく、「20時間から26時間」のような幅で伝えます。伝え方は後の節で詳しく説明します。
3点見積もりの計算例
3点見積もりの代表的な計算方法は、楽観値と悲観値に1、最頻値に4の重みを付けて平均する方法です。
見積もりの値 =(楽観値 + 最頻値×4 + 悲観値)÷ 6
ばらつきの目安は、悲観値から楽観値を引いて6で割って求めます。
小さな例で計算してみます。ある会社の採用ページの改修を、次の4つの作業に分けたとします。
| 作業 | 楽観値 | 最頻値 | 悲観値 | 見積もりの値 |
|---|---|---|---|---|
| 現状の確認と構成案の作成 | 2時間 | 3時間 | 6時間 | 約3.3時間 |
| ページのデザイン | 4時間 | 6時間 | 12時間 | 約6.7時間 |
| コーディングと表示の確認 | 5時間 | 8時間 | 14時間 | 約8.5時間 |
| 修正2回と相手への報告 | 2時間 | 3時間 | 7時間 | 約3.5時間 |
| 合計 | 13時間 | 20時間 | 39時間 | 約22時間 |
たとえば、ページのデザインの行は(4+6×4+12)÷6=40÷6で、約6.7時間になります。4つを合計すると約22時間です。
ここで注目したいのは、最頻値を足しただけの20時間と、3点見積もりの約22時間の差です。悲観値が楽観値より大きく離れている作業ほど、見積もりの値は最頻値より大きくなります。人は「いちばんありそうな時間」で考えがちですが、作業には「早く終わる余地」より「遅れる余地」のほうが大きいという性質があります。3点見積もりは、この偏りを数字に反映させるための方法です。
ばらつきの目安も計算してみます。ページのデザインなら、12から4を引いて6で割り、約1.3時間です。ばらつきが大きい作業は、見積もりの数字が外れやすい作業です。こうした作業は、相手に早めに途中の段階を見せる、調べる時間を先に取る、といった手当てを優先して考えます。
この例の見積もりを相手に伝えるなら、「22時間前後、つまずいた場合でも26時間程度」のように幅をもたせ、合わせて前提を書きます。全体の悲観値の39時間は、すべての作業が同時に最悪になった場合の数字なので、そのまま伝える必要はありません。
見積もりの手法は3つに分けられる
3点見積もりは、作業ごとの数字の出し方です。その前に、作業ごとの最頻値などをどう決めるかについて、代表的な考え方が3つあります。場面によって使い分けると、見積もりの手がかりが増えます。
類推見積もり:似た仕事と比べる
過去に終えた似た仕事を思い出し、「前回は10ページで30時間かかった。今回は15ページだから45時間前後」のように、比べて数字を出す方法です。早い段階で大まかな数字を出すときに向いています。ただし、前回と今回で条件が違う点、たとえば相手の確認の速さや素材のそろい方を見落とすと、大きく外れます。比べるときは、規模だけでなく、条件の違いも書き出します。
積み上げ見積もり:細かい作業を足し上げる
前の節で説明したように、作業を小さく分け、それぞれの時間を足し上げる方法です。手間はかかりますが、数え漏れに気づきやすく、相手に内訳を説明しやすいのが利点です。範囲がある程度決まった段階で使います。
係数を使う見積もり:規模に単位あたりの時間を掛ける
「記事1本あたり3時間」「画面1つあたり8時間」のように、単位あたりの時間を決めておき、規模に掛けて工数を出す方法です。同じ種類の作業を繰り返す仕事に向いています。単位あたりの時間は、自分の実績から出すのが一番確かです。IPAの解説資料でも、規模と工数の関係を過去のデータから求め、そこから見積もりの基準をつくる考え方が紹介されています。過去の実績と、経験者の知恵の両方を使って見積もりの式を組み立てる方法を、実際の現場で試した結果は、IPAの先進的見積り手法の調査報告書にまとめられています。
実際の仕事では、早い段階で類推見積もりで大まかな幅を出し、範囲が固まってから積み上げ見積もりで内訳を作る、という組み合わせがよく使われます。2つの数字が大きく違うときは、どちらかに数え漏れか、思い込みがあると考えて見直します。
仕事の種類ごとの見積もりのつまずき方
見積もりが外れる場所は、仕事の種類によって違います。自分の仕事に近いものを確かめておくと、どこに余裕を持たせればよいかが見えてきます。
開発の仕事
開発の仕事では、作る機能そのものより、動作の確認と不具合の修正で時間が膨らむことが多く見られます。外部のサービスとつなぐ部分や、初めて使う道具を使う部分は、ばらつきが大きくなりやすいので、調べる時間を先に取ります。
デザインの仕事
デザインの仕事では、案を作る時間より、相手の意見を受けて直す時間が読みにくくなります。最初に案をいくつ出すか、修正を何回まで受けるかを決め、見積もりに書いておきます。方向性の確認を早い段階で一度入れると、大きな手戻りを防げます。
文章を書く仕事
文章を書く仕事では、書く時間より、調べる時間と、相手の表記の決まりに合わせて直す時間が読み違えやすい部分です。1本目は調べる時間が多くかかり、2本目以降は短くなる傾向があるので、続く仕事なら1本目だけ別に見積もる方法もあります。
事務の代行の仕事
データの入力や書類の整理のような事務の仕事では、作業そのものは単純でも、元の資料の状態で時間が大きく変わります。手書きの資料が読みにくい、形式がばらばら、といった条件は、最初に少量を試して時間を測ってから全体を見積もると、ずれを抑えられます。
遅れに早く気づくための進め方
見積もりがずれること自体は避けられないので、ずれに早く気づく仕組みを作っておくことが大切です。
1つ目は、作業ごとに「終わったかどうか」を記録することです。全体の何割が終わったかを感覚で判断すると、8割まではすぐ進んだように見えて、残りの2割で時間がかかる、ということが起きます。小さく分けた作業ごとに終わったかどうかを記録すれば、進み具合を数で確かめられます。
2つ目は、見積もりに対して実際にかかった時間を、作業が終わるたびに書き残すことです。最初の数個の作業で、見積もりより1.5倍かかっているなら、残りも同じ傾向で遅れる可能性が高いと判断できます。この時点で相手に知らせれば、範囲を絞る、締め切りを動かす、といった手を打つ余地が残ります。
3つ目は、週に一度など、見直しの日を決めておくことです。毎日見直す必要はありませんが、決まった日に進み具合と残りの見積もりを確かめる習慣があれば、締め切りの直前に慌てることは減ります。
余裕の持たせ方で、見積もりの使い勝手が変わる
見積もりに余裕を持たせることを、バッファと呼びます。バッファの持たせ方には、作業ごとに少しずつ上乗せする方法と、全体の最後にまとめて確保しておく方法があります。
作業ごとに上乗せする方法は分かりやすい反面、余裕があると分かっている作業ほど取りかかりが遅くなり、結局その余裕を使い切ってしまうという問題があります。締め切りの直前まで手をつけない、という経験に覚えがある人は多いはずです。
全体の最後にまとめて余裕を持たせる方法では、作業ごとの見積もりは最頻値に近い数字で組み、全体の後ろに「予備の時間」を1つ設けます。どの作業で遅れても、その予備の時間から使っていくので、遅れの量が予備の時間の何割を使ったかで見えるようになります。予備の時間の半分を使った時点で相手に知らせる、と決めておけば、知らせる時期にも迷いません。
余裕の大きさは、作業のばらつきで決めます。3点見積もりで悲観値と楽観値の差が大きかった作業が多いほど、予備の時間を大きく取ります。反対に、何度も繰り返してきた作業ばかりなら、予備の時間は小さくて済みます。一律に「2割増し」とするより、作業の性質を見て決めるほうが、相手にも根拠を説明しやすくなります。
なお、予備の時間を相手に見せるかどうかは、契約の形によります。時間で請求する仕事なら、予備の時間も含めた幅を見せたほうが、相手は予算を組みやすくなります。固定の報酬で受ける仕事なら、予備の時間は自分の側の計算に含めておき、相手には範囲と前提をはっきり伝えるほうが話が進めやすくなります。
見積もりを相手に伝えるときの書き方
見積もりの中身が良くても、伝え方で誤解が生まれることがあります。相手に見積もりを出すときは、次の4つをそろえて書きます。
1. 数字は幅で書く
「20時間」ではなく、「20時間から26時間」と書きます。幅をもたせることで、ずれた場合にも説明がしやすくなります。固定の金額で受ける仕事でも、社内向けの計算では幅で考えておくと、安く受けすぎる失敗を防げます。
2. 範囲を書く
手順1で書き出した「やること」「やらないこと」を、見積もりの書面にそのまま載せます。後から「これも含まれていると思っていた」という話になったときに、立ち返る場所になります。
3. 前提を書く
素材の届く日、相手の確認にかかる日数、修正の回数など、見積もりが成り立つ条件を書きます。前提が崩れたときは見積もりを出し直す、と一文添えておくと、相手も事情を理解しやすくなります。
4. 見直す時点を書く
大きな仕事では、最初の見積もりを確定させず、「構成案が固まった時点で見積もりを出し直します」のように、見直す時点を決めておきます。最初に大まかな数字を出し、段階ごとに精度を上げていく進め方は、早い段階の見積もりがぶれるという性質に合った進め方です。
書面で見積もりを出すとき、文章の組み立てに迷う人は少なくありません。結論、つまり数字と期間を先に書き、その後に範囲、前提、見直しの時点を箇条書きで並べると、相手が読み違えにくい見積書になります。経営や業務の改善を体系的に学ぶ資格として知られる中小企業診断士の学習範囲にも、経営資源をどう見積もり、配分するかという考え方が含まれています。見積もりを業務の計画とつなげて考えたい人には参考になります。
業務委託で工数を見積もるときに気をつけること
会社の中での見積もりと、業務委託やフリーランスとして外から仕事を受けるときの見積もりでは、気をつける点が少し違います。
契約の形で、見積もりの意味が変わる
業務委託の報酬の決め方には、作業した時間に応じて支払う形と、成果物1つにいくらと決めて支払う形があります。時間で支払う形なら、見積もりは「おおよその目安」として扱われ、実際の時間で請求できます。一方、成果物ごとの固定の報酬で受ける場合は、見積もりが外れて時間が多くかかっても、報酬は原則として変わりません。固定の報酬で受けるときほど、範囲と前提を書面に残す意味が大きくなります。
早く終わったときと、遅くなったときの扱いを決めておく
時間で見積もって固定の金額で受けた仕事が、予定より早く終わった場合と、予定より遅くなった場合にどう扱うかは、相手との取り決め次第です。早く終わっても約束どおりの報酬を受け取る、範囲が広がった分は追加の費用を相談する、といった扱いを、契約の前に話しておくとトラブルを防げます。個別の契約の扱いは、契約の内容や事情で変わるため、迷うときは契約書の文言を確かめ、必要に応じて専門家に相談してください。
自分の単価と時間の関係を知っておく
見積もりの時間に単価を掛ければ、報酬の目安が出ます。職種ごとの単価の相場は、デザイナーの年収・単価相場のような年収データベースで確かめられます。相場と自分の見積もりの時間を掛け合わせて、極端に安い金額になっていないかを確かめておくと、見積もりを相手の希望に合わせて削ってしまう失敗を防げます。
開発の仕事は、とくに見積もりの難しさが問題になりやすい分野です。画面の数や機能の数で規模をつかみ、作業に分けて見積もる進め方は、アプリやシステムの開発の仕事で広く使われています。どのような案件があるかは、アプリケーション開発のお仕事で確かめられます。
実績を残して、次の見積もりに生かす
見積もりの精度を上げる一番確かな方法は、見積もった数字と、実際にかかった時間を並べて残しておくことです。前の節で挙げた8つの原因のうち、原因7の「過去の実績が残っていない」を解消すると、他の原因にも手が打てるようになります。どの種類の作業で見積もりが外れやすいか、確認と手戻りに実際どのくらいかかっているかが、記録から見えてくるからです。
記録の仕方は、紙のノートでも表計算ソフトでもかまいません。1人で仕事をしているなら、作業名、見積もった時間、実際の時間、ずれた理由の4列があれば十分です。月に一度見返して、ずれが大きかった作業の傾向を探します。
記録の例を挙げます。
| 作業 | 見積もり | 実際 | 実際÷見積もり | ずれた理由 |
|---|---|---|---|---|
| 構成案の作成 | 3時間 | 3.5時間 | 約1.2 | 参考資料の読み込みに時間がかかった |
| デザイン | 6時間 | 9時間 | 1.5 | 方向性の確認が遅れ、1案を作り直した |
| コーディング | 8時間 | 8時間 | 1.0 | 予定どおり |
| 修正と報告 | 3時間 | 5時間 | 約1.7 | 修正の依頼が3回に分けて届いた |
「実際÷見積もり」の列を見ると、どの作業で見積もりが甘くなりやすいかが分かります。この例なら、デザインと修正の見積もりを次から1.5倍程度に見ておく、方向性の確認を早めに入れる、修正の依頼はまとめて受け取る取り決めにする、といった手が打てます。こうした記録が数件たまるだけで、次の見積もりは勘ではなく、自分の実績にもとづいた数字になります。
その場で数字を求められたときの答え方
打ち合わせの席や電話で、「だいたいでいいので、何日くらいですか」と聞かれることがあります。こういうときに、その場で1つの数字を答えてしまうと、その数字が後々まで約束として扱われがちです。
その場で答えを求められたときは、次のように答えると、相手の求めに応じながら、見積もりの精度も守れます。
- 「似た仕事では2週間から3週間でした。内容を確かめて、明日までに正式な見積もりをお送りします」のように、幅と、正式な見積もりを出す時点を一緒に伝える
- 「素材がそろっている前提なら」のように、その数字が成り立つ条件を添える
- 範囲がまだ決まっていないなら、「どこまで含めるかで大きく変わるので、範囲を確かめさせてください」と、決めるべきことを先に示す
大まかな数字を言うこと自体は悪いことではありません。避けたいのは、条件も幅もない1つの数字が独り歩きすることです。「正式な見積もりは後で出す」と一言添えるだけで、後のずれの説明がずっと楽になります。
一方、チームで仕事をしている場合や、複数の案件を同時に回している場合は、表計算ソフトの記録では追いつかなくなることがあります。誰がどの作業を担当していて、どこまで進んでいて、見積もりに対してどのくらいかかっているかを、チーム全員が同じ画面で確かめられると、遅れに早く気づけます。
その選択肢の1つが、Pinateca(ピナテカ)です。公式サイトによると、カンバン、ガントチャート、カレンダー、リスト、リソースなど8種類のボードがあり、カードに「見積工数」のような項目をカスタムフィールドとして自由に追加できます。ガントチャートのボードでは、カードの期間が横棒で並び、今日の線で遅れている作業が分かるようになっています。リソースのボードでは、人やチームごとの負荷の偏りを確かめられます。業務委託の稼働を0.5時間刻みで記録し、担当者別・案件別に集計する稼働タイムシートも、追加のオプションとして用意されています。
公式の料金ページでは、フリープランは5人まで、ボード10個までで、8種類のボードやチャット、カスタムフィールドを含む機能を使えると書かれています。有料のプランと稼働タイムシートの料金も、料金ページに掲載されています。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
道具を変えるだけで見積もりが当たるようになるわけではありません。大切なのは、見積もりを出したら必ず実績と並べて見返す習慣です。その習慣を続けやすい形を選ぶ、という視点で道具を選んでください。
見積もりの力は、仕事の信頼につながる
在宅ワークとフリーランスの仲介を20年以上運営してきた立場から見ると、長く仕事が続く人は、見積もりが必ず当たる人ではありません。見積もりの前提を最初に伝え、ずれそうだと分かった時点で早めに知らせる人です。依頼する側にとって一番困るのは、見積もりが外れることより、締め切りの直前になって遅れが分かることだからです。
また、見積もりを幅で出し、範囲と前提を書面にする人は、依頼する側から見て「任せやすい人」として扱われる傾向があります。最初の見積もりで細かく範囲を詰めてくる人ほど、次の仕事も同じ人に頼もうという関係が生まれやすくなります。仲介の手数料が乗らない直接の取引であれば、同じ予算で依頼する側はより多くの作業を頼め、受ける側の手取りも厚くなります。見積もりの精度は、その関係を支える土台です。
見積もりの考え方は、開発やデザインに限らず、データの整理、調査、業務の改善の支援など、作業を時間で区切る仕事に共通して役立ちます。AIを使った業務の見直しのように、まだ相場や作業の型が定まっていない分野では、とくに作業の分解と前提の明示が大切になります。こうした分野の仕事の内容は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で整理しています。調査や分析の仕事で時間を見積もる場合は、研究者の年収・単価相場も、報酬の目安を考える材料になります。
よくある質問
Q. 工数と工期は何が違いますか?
工数は作業に必要な人の手間を「人数×時間」で表したもので、工期は始めてから終わるまでのカレンダー上の期間です。工数が16人時でも、1日に4時間しか作業できなければ工期は4日になり、相手の確認待ちが入ればさらに延びます。見積もりでは、まず工数を出し、作業できる時間と待ちの日数を加えて工期に直します。
Q. 初めての作業はどう見積もればよいですか?
初めての作業は比べる手がかりがないため、調べる時間と試す時間を別の作業として切り出し、先に見積もります。少し手を動かしてから本体の作業を見積もり直すと、ずれが小さくなります。相手には、調べた後に見積もりを出し直すことを最初に伝えておくと、誤解を防げます。
Q. 3点見積もりはどのように計算しますか?
作業ごとに楽観値、最頻値、悲観値の3つを出し、(楽観値+最頻値×4+悲観値)÷6で見積もりの値を求めます。たとえば楽観4時間、最頻6時間、悲観12時間なら約6.7時間です。遅れる余地のほうが大きい作業ほど、最頻値より大きな数字になります。
Q. 見積もりより時間がかかりそうなときはどうすればよいですか?
ずれそうだと分かった時点で、早めに相手に知らせることが大切です。どの作業でずれが出ているか、範囲や前提が変わったのかを整理し、残りの作業の見積もりを出し直して伝えます。範囲が広がったことが原因なら、追加の扱いを相談します。契約の扱いは内容によって変わるため、契約書の文言を確かめてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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