マクラメ作家として得られる収入の実際|販売先ごとの単価と続け方 2026

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
マクラメ作家として得られる収入の実際|販売先ごとの単価と続け方 2026

この記事のポイント

  • マクラメ作家の収入は「制作時間の長さ」をどう値付けに織り込むかで決まります
  • 販売先ごとの単価と手取り
  • レッスン収入との組み合わせ方

結論から言います。マクラメ作家の収入は、作品が売れるかどうかよりも「1本の紐を結ぶのに何時間かかったか」を価格に織り込めているかで決まります。マクラメは手芸のなかでも突出して制作時間が長いジャンルです。同じ3,000円の作品でも、レジンのアクセサリーなら硬化待ちを除いた実作業は30分程度で終わるのに対し、天然石を包むマクラメペンダントは丁寧に組めば3時間を超えることも珍しくありません。この差を価格に反映しないまま販売数だけを増やすと、売れれば売れるほど時間あたりの収入が下がるという逆転が起きます。

この記事では、マクラメ作家の収入を「販売」と「レッスン」の2本立てで捉え直します。販売先ごとの単価と手取りの差、制作時間から逆算する値付けの手順、そしてレッスン収入をどう組み合わせると年間の収入が安定するのか。正直なところ、マクラメを扱う記事の多くは「作家になるには」で止まっていて、収入の内訳まで踏み込んだものがほとんどありません。ここでは数字の側から書きます。

マクラメ作家の収入は「販売額」ではなく「時間単価」で見る

マクラメ作家の収入を語るとき、多くの人はまず「月にいくら売れたか」を数えます。ところがこの見方は、マクラメというジャンルに限っては実態を大きく歪めます。理由は制作時間の長さにあります。

販売額から時間単価を逆算すると何が見えるか

仮に、天然石を編み込んだマクラメペンダントを4,500円で販売したとします。ここから引くべきものを順に並べます。天然石ルースの仕入れが800円、マクラメ糸が150円、金具と付属パーツで200円、梱包資材とラッピングで250円。ここまでで材料費と梱包費が1,400円です。さらにハンドメイドマーケットプレイスの販売手数料が10%前後かかるとすると450円、送料を作家負担にしていればネコポス相当で350円程度が消えます。

残るのは2,300円です。この作品の制作に3時間かかっていたら、時間単価は766円。デザインを考えた時間、撮影と商品ページの作成、問い合わせ対応を足せば、実質はさらに下がります。2026年時点で全国の最低賃金の加重平均が1,100円前後まで上がってきていることを踏まえると、この水準は「趣味の延長」の域を出ません。

ここで多くの人が「もっとたくさん作って売ろう」と考えます。しかしマクラメは工程を機械化できません。結び目の数だけ手を動かす必要があるので、生産量は物理的な作業時間で頭打ちになります。仮に1日6時間を制作に充てられたとしても、月22日132時間、ペンダント換算で44点が上限です。全部売れたとしても手残りは10万円前後にしかなりません。しかも実際には全点は売れません。

「売上」ではなく「1時間あたりの手残り」を管理指標にする

したがって、マクラメ作家が収入を上げようとするなら、追うべき指標は売上額ではありません。1時間あたりにいくら手元に残るか、これ一本です。この指標を持つと打ち手が明確になります。単価を上げるか、制作時間を短くするか、材料費と手数料を減らすか、あるいは制作時間に依存しない収入源を持つか。この4つしかありません。

そして制作時間の短縮には限界があります。熟練すれば同じデザインの制作時間は短くなりますが、初心者が3時間かかる作品を熟練者が2時間に縮めるのがせいぜいで、30分にはなりません。材料費の削減も、天然石のグレードを下げれば作品の魅力そのものが落ちます。現実的に残る打ち手は「単価を上げる」と「制作時間に依存しない収入を持つ」の2つです。後半で詳しく扱うレッスン収入が重要になるのは、まさにこの構造上の制約が理由です。

収入が伸びない作家に共通する「小物地獄」

私が編集の仕事で複数のハンドメイド系メディアを見てきた経験のなかで、いちばん多く見かける失敗がこれです。売れないから価格を下げる、価格を下げると利益が出ないから小さい作品を増やす、小さい作品は単価が低いから点数を売らないといけない、点数を増やすと制作と発送に時間を取られてデザインを考える余裕がなくなる。この循環に入ると抜け出すのに時間がかかります。

以前、取材でお会いした作家さんが「ミサンガとブレスレットばかり60点作った月がいちばんしんどかった」と話していたのが記憶に残っています。売上は上がったのに、梱包と発送で1日が終わってしまい、大型のタペストリー作品を作る時間が消えた。翌年その方は小物の点数を半分に減らし、代わりに壁掛けとレッスンに時間を移して、労働時間を減らしながら手残りを増やしていました。点数を減らす判断のほうが、収入面では正解だったわけです。

制作時間の長さを前提にした値付けの手順

マクラメの値付けは「材料費の3倍」のような業界慣行をそのまま当てはめると必ず破綻します。材料費に対して労働投入量が大きすぎるからです。順を追って組み立てます。

ステップ1:目標時間単価を先に決める

一般的なハンドメイドの原価計算は材料費から積み上げますが、マクラメでは逆から入ります。まず「自分の時間をいくらで売るか」を決めます。副業として週末だけ活動するなら地域の最低賃金を下限に置き、専業を目指すなら2,000円以上を目標に設定します。専業で年間300万円の所得を得たいなら、経費や社会保険料を考慮して年商で450万円前後が必要になり、制作可能時間を年1,500時間と置けば必要時間単価は3,000円という計算になります。この数字を見て「そんな価格では売れない」と感じるなら、それは販売のみで専業を成立させる設計に無理があるという答えです。

ステップ2:制作時間を実測する

感覚で「だいたい2時間くらい」と見積もっている人がほとんどですが、実測するとほぼ例外なく想定より長くかかっています。糸を測って切る、焼き止めをする、石を仮止めする、結ぶ、ほつれを整える、末端処理をする。この工程をスマートフォンのタイマーで記録すると、思っていた時間の1.5倍程度になるのが普通です。デザイン検討、撮影、商品説明文の作成、SNSへの投稿もすべて作品にひもづく作業時間なので、1点あたりに按分して足します。

ステップ3:材料費に廃棄分を上乗せする

マクラメ糸は使う長さの見積もりを誤ると途中で足りなくなり、作品を最初からやり直すことになります。この失敗分は必ず一定割合で発生するので、材料費には15%程度の余裕を見込んでおきます。天然石も、仕入れたルースのすべてが作品に使えるわけではありません。クラックが入っていた、思ったより色が沈んでいた、といった理由で使わないまま残る石が出ます。仕入れ額をそのまま原価に置くのではなく、実際に作品化できた割合で割り戻すのが正確です。

ステップ4:販売手数料と送料を先に引く

価格を決めてから手数料を引くのではなく、手数料と送料を含んだうえで手残りが目標に届く価格を逆算します。この順番が逆になっている作家は非常に多いです。特に「送料無料」を掲げる場合、送料は実質的に値引きなので、その分を最初から上乗せしておかないと利益が消えます。

作品タイプ別の制作時間と価格帯の目安

以下は、標準的な習熟度の作家を想定した目安です。地域や作風、使う石のグレードによって変動します。

作品タイプ 制作時間の目安 材料費の目安 販売価格帯の目安
ミサンガ・シンプルブレスレット 30分〜1時間 100〜300円 1,000〜2,500円
天然石ペンダント(小) 2〜3時間 800〜1,500円 4,000〜8,000円
天然石ペンダント(大・複雑) 5〜10時間 2,000〜5,000円 12,000〜30,000円
プラントハンガー 1〜2時間 300〜600円 2,000〜4,000円
壁掛けタペストリー(小) 4〜8時間 1,500〜3,000円 8,000〜18,000円
壁掛けタペストリー(大) 20〜40時間 5,000〜15,000円 40,000〜120,000円

この表で注目してほしいのは、時間単価が最も高くなるのが「小物」ではないという点です。ミサンガは1時間2,000円の売価でも、材料と手数料を引けば手残りは1,400円前後。一方、30時間かけた大型タペストリーが80,000円で売れれば、材料費10,000円を引いても時間単価は2,300円に届きます。ただし大型作品は売れるまでの期間が長く、在庫として資金が寝る点は考慮が必要です。

値上げに踏み切れない人へ

「この価格では買ってもらえない」という不安は当然ですが、マクラメの購入者層は価格だけで比較していません。同じ石でも巻き方の密度、末端処理の丁寧さ、糸の色の選び方で仕上がりはまったく違います。安く売ることでしか差別化できていない状態は、作品の質ではなく価格で選ばれているということです。値上げして売れなくなる作品は、そもそも時間単価が成立していなかった作品だと割り切るほうが、長期的には健全です。

販売先ごとの単価と手取りの違い

同じ作品でも、どこで売るかによって手元に残る金額と、そもそもつけられる価格が変わります。主要な販売チャネルを整理します。

ハンドメイドマーケットプレイス

国内の主要なハンドメイド系マーケットプレイスでは、販売手数料が10%前後、決済手数料を含めて10〜12%程度が一般的です。集客をプラットフォーム側が担ってくれるため、開始のハードルはいちばん低いチャネルです。

一方で、出品作家数が非常に多く、検索結果で埋もれやすいという弱点があります。特に「マクラメ ペンダント」のような一般的な検索語では競合が数千点規模になるため、価格が高い作品は比較で不利になりやすい。結果として、このチャネルでは3,000〜8,000円のゾーンに価格が収束しがちです。30,000円を超える大型作品をここだけで売るのは難しいと考えたほうがいいでしょう。

自身のオンラインショップ

ショップ作成サービスを使えば、無料プランでも決済手数料3.6%前後、サービス利用料を含めて6〜10%程度で運営できます。月額課金型のプランを選ぶと手数料率はさらに下がります。手数料の面ではマーケットプレイスより有利ですが、集客を自力で行う必要があります。SNSでフォロワーを育てられているかどうかで、成否が完全に分かれるチャネルです。

現実的な運用としては、マーケットプレイスで新規の購入者と出会い、リピーターを自身のショップに誘導する二段構えが機能しやすい。同じ作品を両方に並べるのではなく、限定色やオーダー品を自身のショップ限定にするなど、移動する理由を作る必要があります。

対面イベント・マルシェ

出店料が3,000〜15,000円程度かかりますが、販売手数料はかかりません。実物を手に取ってもらえるため、写真では伝わりにくい結び目の密度や糸の質感を評価してもらいやすく、オンラインより高い価格でも成約します。特に天然石を扱う場合、石の色や透明感は現物のほうが圧倒的に伝わります。

ただし、1日拘束される点は時間単価の計算に必ず入れてください。準備、移動、設営、接客、撤収で10時間以上を消費するのが普通で、その日の売上が30,000円だとしても、出店料と交通費を引いた後に労働時間で割ると意外に低い数字になります。イベントの価値は当日の売上より、その場で得られる顧客との接点とオーダーの獲得にあると考えたほうが実態に合います。

委託販売・セレクトショップ

雑貨店やカフェ、ギャラリーに作品を置いてもらう形式です。委託手数料は20〜40%と高めですが、日常的に店舗へ足を運ぶ層の目に触れるため、まったく新しい顧客層に届きます。手数料が高い分、委託向けには販売価格を上乗せして設定するのが通例です。

正直なところ、委託は「置いてもらえた」で満足してしまうと在庫が滞留するだけになります。どの店舗でどの作品が動いたかを記録し、回転しない店からは引き上げる判断が必要です。

オーダーメイド受注

収入面で最も伸びしろがあるのがこの形態です。既製品を並べて待つのではなく、顧客が持ち込んだ石を包む、指定のサイズで壁掛けを作る、といった受注制作を受けます。制作前に代金が確定するため在庫リスクがなく、既製品より20〜50%高い価格設定が受け入れられやすい。

注意点は打ち合わせ工数です。デザインの擦り合わせ、色の相談、サイズ確認のやり取りに1〜2時間を要することがあり、これを制作時間に含めずに見積もると赤字になります。オーダー料としてデザイン費を別立てで3,000円前後もらう形にしている作家もいます。

企業案件・空間装飾

店舗やホテル、住宅展示場の装飾としてマクラメ作品を納入する仕事です。単価は個人向けと桁が変わり、10万円を超える案件も出てきます。ただし請求書の発行、納期管理、設置対応、修正対応といった法人取引の作法が求められ、作家というより事業者としての振る舞いが必要になります。

こうした受発注の形は、Web制作やデザインの業務委託とほぼ同じ構造です。相場感を掴む参考として、業務委託の職種別の単価がどう決まるかを整理した著述家,記者,編集者の年収・単価相場のページでは、成果物単位の仕事がどう値付けされているかを職種横断で確認できます。マクラメの企業案件も、実質的には「制作物の納品」という同じ枠組みで見積もりを立てることになります。

レッスン収入がマクラメ作家の収入を安定させる理由

ここからが本題です。マクラメ作家の収入を制作時間の制約から解放する唯一の現実的な方法が、教える収入を持つことです。

販売とレッスンの決定的な違い

販売は「1時間の制作が1つの作品にしかならない」構造です。対してレッスンは、同じ2時間を使っても参加者が6人いれば収入が6倍になります。しかも教える内容は一度作れば繰り返し使えるので、2回目以降の準備時間は大幅に減ります。この非線形性が、収入の天井を押し上げます。

さらに、レッスンは前払いが基本なので入金が読めます。販売は「今月いくら売れるか」が読めませんが、レッスンは開催枠が埋まった時点で収入が確定します。この予測可能性は、活動を続けるうえで想像以上に効きます。

対面ワークショップの収入構造

カフェや公民館、コミュニティスペースを借りて開催する形式が一般的です。参加費は3,000〜6,000円、所要時間は2時間前後、定員は4〜8名というのが標準的なレンジです。

参加費4,000円6名の会を開くと売上は24,000円。ここから会場費5,000円、材料キット500円×6名で3,000円を引くと16,000円が残ります。準備と移動を含めて拘束時間を5時間とすれば時間単価は3,200円。ペンダントを1点作って売るより、はるかに効率が良いことがわかります。

ただし、初回から定員を埋めるのは簡単ではありません。集客が読めないうちは、カフェのイベント枠やカルチャースクールの講座枠に乗せてもらい、集客を先方に任せる形から始めるのが現実的です。この場合、講師料として1回あたり8,000〜15,000円という固定額になることが多く、単独開催より手残りは減りますが集客リスクを負わずに済みます。

オンラインレッスンとその制約

オンライン形式は会場費と移動時間がゼロになるため、対面よりも収益性が高くなります。参加費は対面よりやや低い2,500〜4,500円が相場ですが、経費がほぼ材料キットの送付だけなので手残りは変わらないか、むしろ良くなります。

制約もあります。マクラメは手元の細かい動きを見せる必要があるため、カメラを手元に固定するアングルの工夫が必須です。参加者側の手元が見えないと、結び目がねじれていることに気づけないまま進んでしまい、最後に大きく崩れます。定員は対面より少なめの4名程度に抑え、画面越しでも一人ひとりの手元を確認できる体制にしている講師が多い印象です。

キット販売と動画教材

レッスンの派生として、材料キットと解説動画をセットにして販売する形態があります。これは制作時間からも講師の拘束時間からも完全に切り離された収入源です。キット単価2,500〜5,000円のうち材料原価が600〜1,200円程度で、動画は一度撮れば追加コストがかかりません。

ただし、動画教材は撮影と編集に相応の初期投資が必要です。手元のクローズアップ、俯瞰、糸の張り具合がわかるアングルを切り替えながら撮る必要があり、自分で編集するなら1本あたり10〜20時間を見込んでおくべきでしょう。編集を外注する選択肢もあり、その場合の相場感は動画編集者の年収・収入|副業とフリーランスの違いを解説で扱っている単価レンジが参考になります。作家自身が編集まで抱え込むより、制作と講師に集中して編集は任せたほうが時間単価が上がるケースは多いです。

認定講師制度をどう見るか

マクラメには複数の民間団体が運営する認定講師制度があります。受講料は10万円を超えるものもあり、取得すべきか迷う人は多いはずです。

冷静に見ると、資格そのものが収入を生むわけではありません。ただし、教える立場に立つときの説明の型を短期間で身につけられる点、同じ制度の講師同士のつながりからイベント情報や委託先の紹介が回ってくる点には実利があります。「資格がないと教えてはいけない」という制約はないので、独学で活動している作家も多数います。

この点について、独学からレッスン開催まで至った作家の言葉が的確なので引用します。

結論から言います。マクラメ作家になるには、”わたしはマクラメ作家です”と名乗るだけです。以上。って感じです。え?と思わせてしまっていたらごめんなさい。事実本当にそれだけです。認定講師のような資格はあります。でも必ずしも必要ではありません。そんなわたしも独学です。それでも販売したりオーダーを受けたり、レッスンを開催できています。お仕事にだってできます。 出典: note.com

資格取得を検討するなら、「受講料を回収するのに何回レッスンを開けばいいか」で判断するのが健全です。12万円の講座なら、手残り16,000円のワークショップを8回開催すれば回収できます。年に8回開ける見込みがあるなら投資として成立し、見込みがないなら先に集客の土台を作るほうが先です。

販売とレッスンをどう組み合わせるか

ここまでの数字を踏まえて、実際の収入設計に落とし込みます。

副業レベルのモデル

平日は別の仕事があり、週末に活動する場合を想定します。月の稼働を30時間とすると、制作に20時間、レッスンとその準備に10時間という配分が現実的です。

制作20時間でペンダント7点を作り、うち5点が売れたとすると手残りは11,500円前後。レッスンを月2回開催して32,000円。合計で月43,500円程度になります。この構成の重要な点は、収入の7割以上がレッスン由来になることです。副業として月4万円前後を目指すなら、販売中心よりレッスン中心のほうが到達が早い。

専業を視野に入れるモデル

月の稼働を140時間とし、制作70時間、レッスン関連40時間、事務と撮影とSNS運用に30時間という配分を想定します。

制作70時間のうち40時間をオーダーと大型作品に充て、残りを既製品に回す。オーダーは在庫リスクがなく単価も高いため、この配分で月12万円前後の手残りが見えてきます。レッスンは月6回開催で9万円前後、キットと動画教材で3万円を足すと、月商ベースで24万円前後。ここから経費と社会保険料を引くのが実際の生活費になります。

この試算からわかるのは、専業でマクラメだけで生活するには、販売単独ではまず届かないということです。レッスン、キット、企業案件を組み合わせて初めて成立します。「マクラメ作家の年収」という言葉で検索して具体的な数字が出てこない理由もここにあります。収入源の構成比が人によって違いすぎるため、平均値がほとんど意味を持ちません。

季節変動を埋める設計

ハンドメイドの販売は季節でぶれます。母の日、クリスマス、年末年始のギフト需要期は売上が伸び、1月下旬から3月、そして夏場は落ち込むのが典型です。この落ち込む時期にレッスンを厚めに入れると、年間の収入が平準化されます。

逆にギフト需要期はレッスンを減らして制作に集中する。この切り替えを意図的にやっている作家は、年間を通した収入のブレが小さい傾向があります。何も設計せずに「売れる月と売れない月がある」と嘆いている状態から抜け出すには、この時期別の配分だけでも効果があります。

税金・扶養・確定申告で押さえるべき境界線

収入が出始めると必ず直面する論点です。ここは感覚で判断すると後で困ります。

確定申告が必要になるライン

会社員として給与を受け取りながら副業でマクラメ販売をしている場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要になります。ここで言う所得は売上ではなく、売上から必要経費を引いた金額です。材料費、送料、梱包資材、出店料、講座受講料、撮影機材の一部などが経費として計上できます。

なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になります。この点を見落として後から市区町村から問い合わせが来るケースは少なくありません。制度の詳細は国税庁の案内を確認するのが確実です。

専業や個人事業として活動する場合は、所得が48万円(基礎控除額)を超えると申告が必要になります。青色申告承認申請を出しておけば、複式簿記による記帳を条件に最大65万円の控除が使えるため、収入が増えてきた段階で検討する価値があります。

扶養の範囲で活動する場合

配偶者の扶養に入りながら活動する人も多いジャンルです。税制上の扶養と社会保険上の扶養は基準が別なので、混同しないよう注意が必要です。

税制上は、事業所得が一定額を超えると配偶者控除や配偶者特別控除の適用に影響します。社会保険上の扶養は、収入見込みが年130万円を超えると被扶養者から外れるのが原則で、この判定における「収入」の扱いが給与とは異なる点に注意が必要です。事業所得の場合、健康保険組合によって経費として認める範囲が違うため、加入している保険者に直接確認するのが確実です。

こうした「損しない働き方」への関心は、ハンドメイド作家に限らず在宅で収入を得ようとする層に共通しています。実際、公開されているQ&Aサイトにもこの種の相談が多数投稿されています。

61歳で、主人の会社の役員の肩書きで月4万円、年間48万円の収入があります。経済的に収入が必要になりパートに出たいのですが、社会保険の 関係で損しない働き方をしたいですがわかりません。是非教えてください。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

この手の相談で共通しているのは、判断基準が複数あって整理できていない点です。マクラメ作家の場合、販売とレッスンで収入の性質が違う(レッスン講師料が給与扱いになるケースもある)ため、さらに複雑になります。カルチャースクールから講師料を受け取る場合、契約形態によって給与所得になるか事業所得になるかが分かれるので、契約書の確認は必ずしてください。

記帳を後回しにしない

材料費のレシートは、買った時点でまとめておかないと確定申告の時期に再現できません。会計ソフトを使えば銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込めるので、月末に分類するだけで済みます。無料プランでも基本的な記帳はできるサービスがあるので、収入が出始めた段階で導入しておくと後が楽です。

20年この市場を見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークのマッチングを長く運営してきた立場から、ハンドメイド作家の収入について気づいたことを2つ書いておきます。

1つは、長く続いている人ほど「作品を売る」より「関係を作る」ことに時間を使っているという点です。単発の販売を積み上げている人は、常に新規の購入者を探し続けることになり、疲弊していきます。一方、レッスンの受講生がオーダーの顧客になり、その人が知人を連れてきて、やがて店舗の装飾を頼まれるという流れができている人は、営業に使う時間が年々減っていきます。マクラメは制作時間が長いジャンルだからこそ、営業に割く時間を減らせる関係性の価値が大きい。

もう1つは、手取りの厚さが継続可能性を決めるという点です。同じ10万円の仕事でも、中間に手数料が乗る取引と、依頼者と直接やり取りする取引とでは、受け手に残る金額がまったく違います。運営者として見てきた限りでは、中間マージンが乗らない直接取引のほうが、依頼者は同じ予算でより多くを頼めて、受け手は手取りが厚くなる。手数料0%という条件が意味を持つのは、金額そのものよりも「同じ労力に対して残る額が厚い」という質の部分です。マクラメのように1点あたりの投入時間が長い仕事では、この差が積み重なって年間の収入に直結します。

企業案件や店舗装飾の依頼が来るようになった段階では、この取引構造を意識してください。仲介を経由すると条件は安定しますが、その分が引かれます。直接の取引先を1社でも持てているかどうかが、専業として成立するかの分かれ目になっている例を何度も見てきました。

業務委託の相場データから見るマクラメ作家の位置づけ

最後に、マクラメの収入を在宅ワーク市場全体のなかに置いてみます。

在宅で完結する仕事の職種別データを見ると、成果物単位で報酬が決まる職種は、投入時間が長いほど時間単価が下がりやすいという共通の傾向があります。たとえば著述家,記者,編集者の年収・単価相場のデータでは、文字単価で受注する仕事は取材や調査の時間を織り込めないと時間単価が急落することが確認できます。マクラメの「制作時間を価格に織り込めない」問題と、構造がまったく同じです。

一方で、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のように、成果物ではなく専門性そのものに値段がつく職種は、投入時間と報酬の関係が緩やかです。この違いを生んでいるのは「代替可能性」で、誰でも作れるものは価格競争になり、その人にしか作れないものは時間から切り離されます。

マクラメ作家が収入を伸ばす道筋も、この一般則から外れません。誰でも作れる小物を安く量産する方向は、構造的に時間単価が上がりません。逆に、独自の結びの技法、特定の石に特化した作風、教える技術といった「代替しにくい要素」を積み上げた作家は、価格を自分で決められる側に回れます。

在宅ワークの求人情報を見ると、ハンドメイド関連の業務委託は、作品の納品だけでなく「作り方を教える」「ワークショップを企画する」「商品撮影をする」といった周辺業務にも需要があることがわかります。制作スキルを持つ人が、その周辺のスキルを1つ足すだけで受けられる仕事の幅は大きく広がります。たとえばAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱われているようなSNS運用や商品ページ作成の案件は、自身のショップ運営で身につけたスキルがそのまま活かせる領域です。

副業として何かを始めた人が、その周辺スキルで収入源を増やしていく流れは他ジャンルでも共通しています。ドローン副業の始め方|資格・収入・案件の種類をまとめて解説では、機体を飛ばす技術だけでなく撮影後の編集や測量データ処理まで受けられる人ほど収入が安定していくと整理されていますが、マクラメも同じで、結ぶ技術に「教える」「見せる」「企画する」を足せるかが分岐点になります。

また、語学のように専門性で価格が決まる職種の構造は翻訳者の年収・収入|在宅フリーランスの稼ぎ方と単価相場で詳しく扱われていますが、そこで示されている「単価は交渉で決まり、実績が交渉力を作る」という原則は、マクラメのオーダー価格にもそのまま当てはまります。過去の制作事例を記録として残し、提示できる状態にしておくことが、次の価格交渉の材料になります。

まとめると、マクラメ作家の収入は次の3つの数字で管理できます。1つめは1時間あたりの手残り、2つめは販売とレッスンの収入比率、3つめは年間を通した収入のブレ幅です。この3つを記録し続けている作家は、どこに時間を移せば収入が増えるかを自分で判断できます。感覚で「売れない」「忙しい」と言っている段階から、数字で語れる段階に移ること。それがマクラメ作家として収入を安定させる最初の一歩です。

よくある質問

Q. マクラメ作家の収入は月にどれくらいが現実的ですか?

活動時間と収入源の構成で大きく変わります。週末のみ月30時間程度の副業なら、販売とレッスンを組み合わせて月4万円前後が一つの目安です。専業として月140時間稼働する場合でも、販売だけでは届きにくく、オーダー、レッスン、キット販売を組み合わせて月商20万円台というのが現実的な水準です。

Q. マクラメの作品はどう値付けすればいいですか?

材料費の何倍という計算ではなく、目標時間単価から逆算します。制作時間を実測し、材料費に廃棄分15%を上乗せし、販売手数料と送料を先に引いたうえで、残る金額が目標時間単価に届く価格を設定します。制作時間が長いマクラメでは、この順番を逆にすると赤字になります。

Q. レッスンを開くのに資格は必要ですか?

必須ではありません。独学で作品販売からレッスン開催まで行っている作家は多数います。認定講師制度は教え方の型を短期間で学べる点と講師同士のつながりに実利がありますが、受講料10万円前後を回収できる開催頻度が見込めるかで判断するのが合理的です。

Q. 収入がいくらから確定申告が必要になりますか?

会社員の副業なら、売上から経費を引いた所得が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。専業や個人事業なら所得48万円を超えた場合が目安になります。所得税の申告が不要な場合でも住民税の申告は別途必要になるため、金額にかかわらず記帳は続けてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月16日最終更新:2026年9月7日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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