生前整理の仕事に就くには何が要るか、未経験から入る道と向き不向き

石井 ゆかり
石井 ゆかり
生前整理の仕事に就くには何が要るか、未経験から入る道と向き不向き

この記事のポイント

  • ✓生前整理の仕事に就くには
  • ✓資格よりも入り口の選び方と法律の理解が大切です
  • ✓未経験から入る4つの道

生前整理の仕事に興味を持ったものの、資格が必要なのか、どこで募集しているのか、未経験でも入れるのかが分からず、調べるほど迷ってしまう。生前整理の仕事を探す人の多くが、この段階で立ち止まっています。結論から言うと、生前整理の仕事に就くのに国家資格は要りません。必要なのは、どの入り口から入るかを選ぶことと、不用品の回収や買取に関わる法律の線引きを理解しておくことです。この記事では、仕事の中身、遺品整理との違い、未経験から入る4つの道、民間資格の中身、関わる法律、体を守る働き方、向き不向きまでを順に整理します。

生前整理の仕事が増えている背景

生前整理とは、本人が元気なうちに、自分の持ち物や財産、情報を整理しておくことです。住み替えや施設への入居をきっかけに家財を減らしたり、家族に負担を残さないよう身の回りを片付けたりする人が増え、それを手伝う仕事が生まれました。

背景には、高齢化と世帯のかたちの変化があります。内閣府の高齢社会白書(令和7年版)によれば、65歳以上の一人暮らしの人が65歳以上の人口に占める割合は、令和2年に男性15.0%、女性22.1%となり、今後も上がっていくと見込まれています。子どもが遠くに住んでいて、親の家の片付けを手伝えない家庭も少なくありません。本人だけでは運び出せない大きな家具、何十年分もたまった書類や写真、使わなくなった家電などを、誰かの手を借りて整理したいという需要が広がっています。

もう1つの背景は、片付けに対する考え方の変化です。かつては、亡くなった後に遺族が片付ける遺品整理が中心でした。いまは、本人が自分の意思で持ち物を選び、残したいものと手放すものを決める生前整理が、終活の一部として広く知られるようになりました。本人の意思を聞きながら進められるため、家族の間で「これは捨ててよかったのか」と迷うことが減るという利点もあります。

こうした需要に応えて、片付けや遺品整理を行う会社、リユースの会社、介護や福祉の事業者などが、生前整理のサービスを手がけるようになりました。それに合わせて、生前整理の現場で働く人の募集も増えています。

生前整理の仕事は何をするのか

生前整理の仕事は、片付けの作業だけではありません。大きく分けると、次の5つの仕事で成り立っています。

1つ目は、相談と聞き取りです。依頼者の家を訪ね、どの部屋を、いつまでに、どこまで片付けたいのかを聞き取ります。住み替えの予定、家族の意向、残したいものの希望などを確かめ、作業の範囲と見積もりを決めます。

2つ目は、仕分けです。家の中のものを「残すもの」「譲るもの」「売るもの」「処分するもの」に分けていきます。生前整理では本人が立ち会うことが多く、1つずつ本人に確かめながら進めます。思い出の品を前に手が止まる場面も多く、急かさずに待つ姿勢が求められます。

3つ目は、搬出と運搬です。処分するものや売るものを家から運び出し、トラックに積み込みます。大きな家具や家電を階段で下ろすこともあり、チームで協力して作業します。

4つ目は、買取やリユースの手配です。まだ使える家具や家電、着物、骨董品などは、買い取って再販したり、専門の業者に引き渡したりします。

5つ目は、清掃です。物がなくなった部屋を掃除し、引き渡しや住み替えに備えます。

会社によっては、写真のデジタル化、重要書類の整理、相続の専門家への橋渡しまで手がけるところもあります。どこまでを担当するかは職場によって違うので、求人を見るときは、仕事内容の欄を細かく読んでおきましょう。

現場で使う道具と身につけたい技術

生前整理の現場では、いくつかの道具と技術が仕事の質を左右します。未経験で入ると最初は先輩の動きを見て覚えることになりますが、どんな技術が求められるかを先に知っておくと、覚えるのが早くなります。

道具でよく使うのは、段ボールや緩衝材などの梱包資材、家具を分解するための工具、台車や運搬用のベルト、床や壁を傷つけないための養生シートなどです。食器や美術品のように壊れやすいものは、1つずつ包んでから箱に詰めます。包み方が雑だと、譲る予定だったものや買い取る予定だったものを傷つけてしまうので、丁寧さが求められる作業です。

技術の面で最初に身につけたいのは、仕分けの判断の速さです。どれが売れるもので、どれが資源ごみで、どれが粗大ごみになるかを素早く見分けられると、作業全体の時間が短くなります。自治体によって分別のルールが違うので、よく行く地域のルールを覚えておくことも大切です。

次に、家具の搬出の技術です。大きなたんすや冷蔵庫を、壁や床を傷つけずに狭い廊下や階段から運び出すには、持ち方と運ぶ順番の工夫が要ります。こうした技術は経験の中でしか身につかないので、先輩の動きを注意深く見て、分からないことはその場で聞くようにしましょう。

査定の知識も、身につけておくと仕事の幅が広がります。家具や家電の型番から年式を読み取る、ブランドの着物や食器を見分ける、骨董品を専門の業者に回すべきかを判断する、といった知識があると、依頼者に「捨てる前に売れるものがある」と提案できます。依頼者にとっては処分の費用が減り、会社にとっても依頼者の満足が高まるという、双方にとってよい結果になります。

生前整理と遺品整理の違い

生前整理と遺品整理は、作業の中身が似ているため、同じ会社が両方を手がけていることがほとんどです。ただ、仕事の進め方には大きな違いがあります。

最大の違いは、本人がいるかどうかです。生前整理では、持ち主である本人がその場にいて、自分で残すものと手放すものを決めます。働く側は、本人の判断を手伝う立場です。一方、遺品整理では本人はすでに亡くなっていて、遺族の意向に沿って整理を進めます。

本人がいる生前整理では、会話の時間が長くなります。「これは母の形見だから」「これはもう使わないけれど捨てられない」といった話に耳を傾けながら、本人が納得して手放せるよう支えることが仕事の大事な部分です。作業の速さよりも、本人の気持ちに寄り添う姿勢が評価されます。

遺品整理では、限られた日数で家を明け渡す必要があることが多く、短期間で大量のものを処理する段取りの力が求められます。賃貸住宅の退去期限が迫っている場合などは、作業の速さが重要になります。

もう1つの違いは、作業の時期です。生前整理は本人の都合に合わせて、何回かに分けて少しずつ進めることもあります。1回で終わらせる遺品整理とは、仕事のリズムが違います。生前整理の仕事を選ぶなら、こうした違いを理解したうえで、自分に合う働き方かどうかを考えるとよいでしょう。

未経験から生前整理の仕事に入る4つの道

生前整理の仕事に就く道は、大きく4つあります。

1つ目は、遺品整理・生前整理の専門会社に就職する道です。最も直接的な入り口で、正社員、アルバイト、単発の作業スタッフなど、さまざまな形で募集があります。未経験歓迎の求人も多く、先輩と一緒に現場に入りながら仕事を覚えていきます。

2つ目は、不用品回収やリユースの会社に入る道です。買取や回収を主な事業としながら、生前整理のサービスも手がけている会社は少なくありません。家具や家電の査定、運搬の仕事を通じて、生前整理の現場に関わることができます。

3つ目は、介護や福祉の仕事から広げる道です。ケアマネジャーや訪問介護の仕事をしていると、利用者の住み替えや施設への入居に伴う片付けの相談を受けることがあります。介護の知識を持っていることは、高齢の依頼者と接するうえで大きな強みになります。介護の仕事を続けながら民間資格を取り、生前整理の相談に乗れるようになる人もいます。

4つ目は、片付けのアドバイザーとして独立する道です。整理収納の知識を生かし、依頼者の家で片付けの進め方を助言したり、一緒に作業したりします。ただし、不用品の運搬や買取まで自分で行うには、後で触れる許可が必要になるため、許可を持った業者と連携して仕事を進めるのが一般的です。

未経験から始めるなら、1つ目か2つ目の道で現場の経験を積み、その後に独立や資格の取得を考える順番が現実的です。現場を知らないまま独立すると、見積もりの立て方や作業の段取りが分からず、依頼者に迷惑をかけることになりかねません。

介護や福祉の経験を生かして入る道

生前整理の仕事は、介護や福祉の経験を持つ人にとって、経験を生かしやすい分野です。

生前整理を頼む人の多くは高齢者です。足腰が弱っている人、耳が遠い人、物忘れが出始めている人と接する場面も少なくありません。介護の現場で身につけた声のかけ方、ゆっくりとした話し方、体調の変化に気づく観察の力は、生前整理の現場でもそのまま役に立ちます。作業の途中で本人が疲れていないか、水分をとっているかに気を配れる人は、依頼者からも家族からも信頼されます。

また、施設への入居や住み替えに伴う生前整理では、ケアマネジャーや施設の相談員と連絡をとる場面があります。介護保険の仕組みや、施設に持ち込めるものの決まりを知っていると、依頼者に的確な助言ができます。

介護の仕事から生前整理の仕事に移る場合、いきなり転職するのではなく、まずは単発のアルバイトで現場を体験してみる方法もあります。介護の仕事を続けながら休日に生前整理の現場で働けば、自分に合う仕事かどうかを確かめられます。民間資格の講座で、片付けの進め方や関連する法律を学んでおくのも、移る前の準備として役に立ちます。

反対に、生前整理の仕事を続けるうちに、介護の分野に関心を持つ人もいます。生前整理の現場で高齢者の暮らしの困りごとに触れたことをきっかけに、介護の資格を取り、両方の知識を持って高齢者を支える仕事に広げていく人もいます。

資格は必要か:民間資格の中身

生前整理の仕事に、国家資格はありません。資格がなくても働けますが、民間の団体がいくつかの資格を設けており、知識を体系的に学ぶ手段として使われています。

代表的なものに、一般社団法人生前整理普及協会の資格があります。同協会は、入門となる生前整理アドバイザーの講座を基礎に、相談、作業、診断などの段階ごとの資格を設けています。たとえば、相談の窓口となる資格について、協会は次のように説明しています。

生前整理相談士は身近で悩みを抱えている方々の相談窓口として活動するための基礎知識を学んでいただくために新たに開設し、実際に相談を受けて、相談者に少しでも早く安心していただける環境を導くための心強い存在になります。 出典: seizenseiri.net

協会のページによれば、生前整理相談士は1日の研修で講義料金は24,800円(税別)、依頼者の家に出向いて作業を手伝う生前整理認定作業士は1日の研修で80,000円(税別)です。どちらも、受講の対象は生前整理アドバイザー2級講座を受講した人以上とされています。講座の内容や料金は改定されることがあるので、受講を考えるときは協会の最新の案内を確かめてください。

遺品整理の分野では、一般財団法人遺品整理士認定協会が「遺品整理士」の資格を認定しています。同協会は、遺品整理業の健全化を目的に養成講座と認定試験を運営しており、関連する法令の順守についても学べるとしています。生前整理と遺品整理は同じ会社が手がけることが多いため、遺品整理の資格を持っていることが生前整理の現場でも評価される場合があります。

民間資格を取るかどうかは、働き方によって判断が分かれます。会社に勤めて現場で働くなら、まずは資格よりも経験が重視されます。独立して自分で依頼を受けるなら、資格は依頼者に知識を示す材料の1つになります。いずれの場合も、資格を取っただけで仕事が来るわけではないことは理解しておきましょう。

仕事に関わる法律と許可を押さえる

生前整理の仕事で最も注意したいのが、不用品の回収や買取に関わる法律です。資格は要らなくても、事業として行うには許可が必要な作業があります。

1つ目は、廃棄物の収集・運搬です。家庭から出る不用品を処分のために運ぶことは、一般廃棄物の収集・運搬に当たります。廃棄物処理法は、これを業として行うには市町村長の許可が必要だと定めています。

一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。 出典: e-Gov法令検索(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)

許可なく業として行うと、5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金、またはその両方の対象になります。許可は市町村ごとに出され、新しく取るのは簡単ではありません。そのため、生前整理の会社の多くは、許可を持つ業者に処分を委託したり、依頼者が自治体の粗大ごみ収集を使えるよう手配したりしています。働く側としては、自分の職場がどの方法で処分しているかを知っておくことが大切です。

2つ目は、買取です。依頼者から中古品を買い取って売る仕事は、古物営業法により、都道府県公安委員会の許可が必要です。許可を受けた事業者は、許可番号をサイトや店舗に表示することになっています。

3つ目は、依頼者の家での買取の進め方です。事業者が店舗以外の場所で物品を買い取る「訪問購入」には、特定商取引法のルールがかかります。勧誘を頼まれていない人への飛び込みの勧誘は禁じられ、契約の書面を受け取った日から8日以内なら、売った人は契約を解除できます。生前整理の現場で買取を行うときも、こうしたルールに沿った説明と書面の交付が必要です。

これらの法律は、働く人個人ではなく事業者が守るべきものです。ただ、現場で「これも持っていってほしい」「これを買い取ってほしい」と頼まれたときに、自分の判断で引き受けてよいかどうかを見分けるために、働く人も知っておくべき知識です。

求人の読み方:雇用の形と給与の決まり方

生前整理の求人を探すと、雇用の形も給与の決まり方もさまざまです。応募する前に、次の点を確かめておきましょう。

まず、雇用の形です。正社員、契約社員、アルバイト、単発の作業スタッフ、業務委託など、同じ会社でも複数の形で募集していることがあります。単発のアルバイトは、自分の都合のよい日だけ働けるので、仕事の中身を体験してみたい人に向いています。業務委託の場合は、雇われるのではなく個人事業主として仕事を受ける形になり、けがをしたときの補償や交通費の扱いが雇用とは違うので注意が必要です。

次に、給与の決まり方です。時給や日給で決まる求人のほかに、成約の件数や売上に応じた歩合が加わる求人もあります。とくに相談や見積もり、買取の営業を担当する仕事では、歩合の比率が高いことがあります。歩合が大きい求人は、成果が出れば収入が増える一方で、経験が浅いうちは収入が安定しにくいことを理解しておきましょう。

求人票では、仕事内容の欄にも目を通してください。「生前整理アドバイザー」という名前の求人でも、実際の中身は訪問営業が中心ということがあります。現場の作業をしたいのか、相談や営業をしたいのかを自分で整理したうえで、仕事内容が合っているかを確かめましょう。

求人を探す場所としては、一般の求人サイトのほか、ハローワーク、遺品整理や片付けの会社の採用ページがあります。求人サイトで探すときは「生前整理」だけでなく、「遺品整理」「片付け」「不用品回収」「整理収納」などの言葉でも検索すると、同じ種類の仕事が見つかりやすくなります。地域の会社は求人サイトに載せず、自社のサイトだけで募集していることもあるので、住んでいる地域の会社を調べて直接問い合わせるのも1つの方法です。

最後に、会社が法律に沿って事業をしているかも確かめておきたい点です。古物商の許可番号がサイトに書かれているか、処分の方法について説明があるかを見ておくと、安心して働ける職場かどうかの判断材料になります。

勤め先を選ぶときに見ておきたい会社の姿勢

生前整理の会社は、規模も事業の中身もさまざまです。長く安心して働くために、勤め先を選ぶときは次の点を見ておきましょう。

1つ目は、法律に沿った事業をしているかどうかです。古物商の許可番号がサイトに書かれているか、処分の方法について、許可を持つ業者への委託など適正な方法をとっていると説明しているかを確かめます。法律を守らない会社で働くと、知らないうちに違法な作業に関わってしまう恐れがあります。

2つ目は、料金の示し方です。見積もりの内訳を依頼者に丁寧に説明している会社は、作業の現場でも依頼者とのトラブルが起きにくく、働く人も安心して作業できます。反対に、当日になって大幅な追加料金を求めるような売り方をしている会社では、現場の働く人が依頼者の不満を直接受けることになりかねません。

3つ目は、教育の仕組みです。未経験で入る人にとって、最初の数週間に誰がどう教えてくれるかは重要です。先輩との同行の期間、搬出の安全な方法の研修、依頼者との接し方の指導があるかを、面接で聞いておきましょう。

4つ目は、働く人の安全への配慮です。運搬の道具がそろっているか、夏場の作業で休憩や水分補給の時間が確保されているか、けがをしたときの労災保険の扱いが明確かを確かめます。

こうした点は、求人票だけでは分からないことが多いので、面接の場で遠慮せずに質問してください。質問に丁寧に答えてくれる会社は、依頼者にも丁寧に対応している会社だと考えてよいでしょう。

現場の1日の流れ

生前整理の現場の仕事を、ある1日の流れとして並べてみます。実際の流れは会社や依頼の規模によって変わります。

  • 8時:会社に集合し、その日の現場の情報と作業の分担を確認する。トラックに道具と梱包資材を積み込む
  • 9時:依頼者の家に到着し、あいさつと作業範囲の最終確認をする。本人や家族と一緒に、残すものの印を確かめる
  • 9時30分から12時:部屋ごとに仕分けを進める。迷うものは本人に確かめ、写真を撮って記録を残す
  • 12時から13時:休憩
  • 13時から15時:処分するものを梱包して運び出し、トラックに積み込む。家具は分解してから運ぶこともある
  • 15時から16時:物がなくなった部屋を掃除し、作業の結果を本人と一緒に確認する
  • 16時30分:会社に戻り、積み荷の処理と作業報告をして終了

生前整理では、本人と話しながら進めるため、計画どおりに作業が進まない日もあります。思い出話が始まったら、その時間も仕事の一部と考えて耳を傾けることが、本人の満足につながります。

体を守る働き方を身につける

生前整理の仕事は、体を使う仕事です。重い家具を運び、何度もしゃがんで箱を詰め、階段を上り下りします。長く続けるためには、体を守る働き方を最初から身につけておくことが欠かせません。

一番気をつけたいのは腰です。床から重いものを持ち上げるとき、膝を伸ばしたまま腰だけを曲げると、腰に大きな負担がかかります。荷物にできるだけ近づき、膝を曲げて腰を落としてから、脚の力で持ち上げるのが基本です。体をひねりながら持ち上げる動きも、腰を痛める原因になります。向きを変えるときは、足を動かして体ごと向きを変えましょう。

運動指導の現場でよく言われるのは、体を使う仕事でけがをする人の多くが、作業の前に体を温めていないということです。作業を始める前に、股関節を大きく回す、太ももの前と裏を伸ばす、肩を回すといった簡単な準備運動を5分だけでも行うと、けがの予防につながります。作業が終わった後は、腰や太ももをゆっくり伸ばして、その日の疲れを翌日に残さないようにしましょう。

重いものは1人で持たないことも大切です。大きな家具は2人以上で運ぶ、台車や運搬用のベルトを使う、無理だと思ったら周りに声をかける。こうした基本を守っている職場ほど、けがが少なく、長く働く人が多い傾向があります。面接では、運搬の道具がそろっているか、重いものを運ぶときの決まりがあるかを聞いておくと、働く環境を見極める材料になります。

ほこりやカビの多い部屋で作業することもあるので、マスクや手袋、動きやすい作業着の用意も欠かせません。夏場の作業では、こまめな水分補給と休憩を意識してください。

働き始める前に準備しておくこと

生前整理の仕事に応募すると決めたら、働き始める前に準備しておきたいことがあります。

まず、運転免許です。現場への移動や荷物の運搬にトラックを使う会社が多く、普通自動車の運転免許があると担当できる仕事が広がります。免許の取得時期によって運転できる車の大きさが違うので、自分の免許で運転できる車の種類を確かめておきましょう。

次に、体の準備です。前の節で触れたように、重いものを運び、しゃがんだり立ち上がったりを繰り返す仕事なので、働き始めの数週間は筋肉痛になる人が多いです。応募を決めた段階から、毎日の散歩や階段の上り下り、スクワットなどで脚の力をつけておくと、最初の数週間がずっと楽になります。

さらに、地域の分別のルールに目を通しておくことも役に立ちます。自分が住む市区町村のごみの出し方や粗大ごみの申し込み方法を調べておくと、現場で仕分けの判断をするときの基礎になります。

最後に、気持ちの準備です。生前整理の現場では、依頼者の人生の思い出に触れる場面が多くあります。長年連れ添った配偶者の遺品が残っていることもあれば、子どもの頃の写真が出てくることもあります。そうした場面で、依頼者の気持ちを受け止めながら、仕事として作業を進める心構えを持っておくと、戸惑わずにすみます。

向いている人、向いていない人

生前整理の仕事に向いているのは、人の話を聞くことが苦にならない人です。持ち主が目の前にいる生前整理では、片付けの技術以上に、本人の気持ちに寄り添う力が求められます。「これは捨てられない」という本人の言葉を否定せず、どうすれば納得して手放せるかを一緒に考えられる人は、依頼者から信頼されます。

段取りを考えるのが好きな人も向いています。どの部屋から手をつけるか、何人で何時間かかるか、トラックは何台必要か。こうした計画を立てて、そのとおりに進めることに喜びを感じる人には、やりがいのある仕事です。

体を動かすことが好きな人にも合っています。一日中机に向かう仕事とは違い、現場ごとに違う家で、体を使って成果が目に見える仕事です。

一方で、向いていないかもしれないのは、急かされると焦ってしまう人、細かい確認を面倒に感じる人です。本人に確かめずに処分してしまったものは、取り返しがつきません。1つひとつ丁寧に確かめる姿勢がないと、大きなトラブルにつながります。

また、ものに対する思いの強い依頼者と接するため、感情の動きに敏感すぎる人は、気持ちが疲れてしまうこともあります。仕事として一定の距離を保ちながら寄り添う、という切り替えができるかどうかも、長く続けるうえで大切な点です。

生前整理の仕事で起こりやすいトラブルと防ぎ方

生前整理の現場で起こりやすいのは、「捨ててほしくなかったものを処分してしまった」というトラブルです。

ある現場で働いていた人から聞いた話に、こんなものがあります。依頼者の本人から「この棚の中は全部処分してよい」と言われ、そのとおりに作業したところ、後日、遠方に住む娘さんから「中に父の手紙が入っていたはずだ」と連絡があったというのです。本人の了承は得ていましたが、家族の間で話がついていなかったため、会社が間に入って説明することになりました。その会社では、それ以来、処分の前に家族の了承の範囲も確かめ、迷うものは写真に撮って記録してから一時保管するようにしたといいます。

こうしたトラブルを防ぐためには、次の手順を習慣にしておくことが大切です。

  • 作業の前に、処分の判断をする人が誰なのかを確かめる
  • 貴重品、書類、写真、手紙などは、処分の前に必ず本人に見せる
  • 迷うものは捨てずに「保留」の箱に入れ、最後にまとめて確かめる
  • 処分するものは写真で記録を残す

もう1つ起こりやすいのが、料金をめぐる行き違いです。見積もりのときにはなかったものが当日に出てきて、追加の料金が必要になることがあります。追加が出そうなときは、作業を進める前に本人に説明し、了承を得てから進めるのが基本です。働く側としても、こうした説明の手順が会社で決まっているかを、入社前に確かめておくと安心です。

生前整理の経験を広げる働き方

生前整理の現場で経験を積むと、仕事の広げ方はいくつもあります。現場の作業から、相談や見積もりの担当になる人、整理収納のアドバイザーとして独立する人、介護や相続の専門家と組んで高齢者の住み替えを支える人などです。

フリーランス・在宅ワーク市場を20年見てきた立場から言えば、地域の現場で働く仕事と、自宅でできる仕事を組み合わせる人も増えています。たとえば、現場で得た知識をもとに、片付けや終活に関する記事を書く仕事です。生前整理の現場の実感を言葉にできる人は少ないので、経験者の書く文章には一定の需要があります。書く仕事の単価を上げていく道筋はWebライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップで紹介しています。

運営者として見てきた実感として、仲介の手数料が乗らない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側の手取りも厚くなります。手数料0%で直接取引できる場を使えば、現場の仕事の合間に受ける在宅の仕事でも、手元に残る額を確保しやすくなります。書く仕事の相場を知りたいときは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で公的統計をもとにした年収の目安を確かめられます。

生前整理の仕事に就くまでの手順を整理すると、まず4つの入り口のどこから入るかを決め、求人票で雇用の形と仕事の中身を確かめ、現場で経験を積みながら、必要に応じて民間資格で知識を補う、という流れです。廃棄物の運搬や買取に許可が必要なことを知っておけば、現場で判断に迷う場面も減ります。体を守る働き方を最初から身につけて、依頼者の人生の節目を支える仕事を長く続けていきましょう。

よくある質問

Q. 生前整理の仕事に資格は必要ですか?

国家資格は必要ありません。未経験歓迎の求人も多く、現場で先輩と一緒に働きながら仕事を覚えられます。民間の団体が生前整理アドバイザーや遺品整理士などの資格を設けており、知識を体系的に学ぶ手段として使われています。独立して依頼を受ける場合は、資格が知識を示す材料の1つになります。

Q. 生前整理の仕事を個人で始めるときに必要な許可はありますか?

家庭から出る不用品を処分のために運ぶことを業として行うには、市町村長の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。中古品を買い取って売るには、古物営業法による都道府県公安委員会の許可が必要です。許可を取るのが難しい場合は、許可を持つ業者と連携して進めるのが一般的です。詳しくは市町村や警察署の窓口で確認してください。

Q. 生前整理と遺品整理の仕事はどう違いますか?

生前整理は持ち主の本人が立ち会い、本人の判断を手伝いながら進めます。遺品整理は本人が亡くなった後に、遺族の意向に沿って進めます。作業の中身は似ていますが、生前整理では本人との会話の時間が長く、気持ちに寄り添う姿勢がより求められます。同じ会社が両方を手がけていることがほとんどです。

Q. 体力に自信がなくても生前整理の仕事はできますか?

重い家具の運搬や長時間のしゃがみ作業があるため、一定の体力は必要です。ただし、相談や見積もり、仕分けの補助など、体の負担が比較的少ない仕事もあります。面接で、担当する作業の範囲や、運搬の道具がそろっているかを確かめておくと安心です。作業前の準備運動と正しい持ち上げ方を身につけることも大切です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月8日最終更新:2026年10月6日
石井 ゆかり

この記事を書いた人

石井 ゆかり@SOHO編集部

フリーランスフィットネストレーナー

大手フィットネスクラブでトレーナーを務めた後、オンラインフィットネスで独立。在宅ワーカーの健康管理やウェルネス系のコンテンツを手がけています。

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