個人クリニックの人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓個人クリニックの人間関係は
- ✓数人のスタッフが同じ空間で1日を過ごす構造から濃くなりがちです
- ✓院長や古株スタッフとの距離の取り方
個人クリニックの人間関係について調べている人の多くは、「病院より人数が少ないぶん、合わない人がいたら逃げ場がないのでは」という不安を抱えています。すでに働いていて、休憩室の空気に疲れている人もいるはずです。
結論から言うと、個人クリニックの人間関係が濃くなるのは、そこにいる人の性格より先に、職場の構造に原因があります。院長がそのまま経営者で、数人のスタッフが同じ部屋で朝から夕方まで過ごし、人事部も異動もありません。この構造を理解したうえで、「仕事の話は近く、私生活の話は少し遠く」という距離を意識すると、狭い職場でも消耗しにくくなります。
この記事では、個人クリニックという職場の中で何が起きているのかを、1日の流れと登場人物ごとに分解します。そのうえで、パワハラとの線引き、入る前に人間関係を見抜く方法、合わなかったときの選択肢までを順に書いていきます。
個人クリニックの人間関係が濃くなるのは、人数と構造のせい
最初に、個人クリニックという職場がどれくらいの数あり、どんな形で運営されているのかを押さえておきます。数字で見ると、「狭い職場」になる理由がはっきりします。
厚生労働省の医療施設調査によると、令和5年10月時点で活動中の一般診療所は104,894施設あります。開設者別に見ると、最も多いのは医療法人、次が個人です。
一般診療所は「医療法人」が 46,717 施設(一般診療所総数の 44.5%)と最も多く、次いで「個人」が 39,208 施設(同 37.4%)となっている。 出典: 厚生労働省 令和5年医療施設調査 結果の概要
求人で「個人クリニック」と呼ばれるのは、この個人開設の診療所に加えて、院長1人が理事長を兼ねる小規模な医療法人も含まれることが多いです。法人格があっても、実態は院長と家族が経営を握っている院が少なくありません。
こうした職場のスタッフ数は、無床の外来クリニックなら常勤と非常勤を合わせて5人から15人程度に収まるのが一般的です。看護師が2〜3人、受付・医療事務が2〜4人、診療科によっては臨床検査技師や放射線技師、リハビリ職が加わります。
この規模になると、次の3つが同時に起きます。
・院長が診療の責任者であり、給与や採用を決める経営者でもある ・人事部や労務担当がおらず、院長の家族(多くは配偶者)が事務長として管理を担う ・部署や異動がないため、合わない相手とも毎日同じ空間で働き続ける
病院では、看護部と医事課は別の組織で、困ったら師長や人事に相談でき、数年たてば配置換えもあります。個人クリニックにはこの「逃がす仕組み」がありません。人間関係がこじれたときに間に入る人がいない、というのが本質的な違いです。
もう1つ見落とされがちなのが、職種の境界の薄さです。人数が少ないので、看護師が受付の電話を取り、受付スタッフが器具の片付けを手伝う場面が日常的にあります。助け合いが回っているうちは居心地がよいのですが、「あの人は手伝わない」という不満が一度生まれると、職種をまたいで広がりやすくなります。
つまり、個人クリニックの人間関係は「良い人が集まっているかどうか」で決まる部分と、「こじれたときに逃がす仕組みがない」という構造で決まる部分の2層になっています。前者は運ですが、後者は事前に知っておけば対策が立てられます。
1日の流れの中で、人間関係がこじれやすい場面
個人クリニックの人間関係を具体的に考えるには、1日の中で「どの時間に、誰と、どれくらい近くにいるか」を見るのが近道です。内科や整形外科など、午前と午後に外来がある一般的な無床クリニックを例に追ってみます。
開院前の30分
8時半ごろに出勤し、着替え、電子カルテや検査機器の立ち上げ、待合室の準備をします。この時間は人数が少なく、誰が何を担当するかが暗黙のうちに決まっていることが多いです。新しく入った人がつまずきやすいのはここで、「誰も教えてくれないのに、やっていないと不機嫌になる人がいる」という形で最初の摩擦が起きます。
午前の外来
9時から12時半ごろまでは、患者の数に追われる時間です。内科なら1人の医師で午前に40人から60人を診る院もあります。院長の指示は短く速く、口調がきつくなる場面も出てきます。ここで起きる摩擦は「言い方」をめぐるものが中心です。忙しい時間の言葉を、昼休みまで引きずるかどうかで、その後の関係が変わります。
昼休み
個人クリニックの昼休みは、人間関係の濃さが最もはっきり出る時間です。休憩室は1部屋で、スタッフ全員がそこで弁当を食べるという院が多くあります。昼休みが2時間ほどある院では、会話の量も増えます。院長が同じ部屋で食べる院、院長夫人が顔を出す院、スタッフだけで過ごす院と、形はさまざまです。
ここで起きやすいのが、その場にいない人の話題です。悪口とまでいかなくても、「あの人、今日も遅かったね」という一言に同意するかどうかで、自分の立ち位置が決まってしまうことがあります。
午後の外来と締め
15時から18時半ごろまでの午後診が終わると、会計の締め、レセプトの確認、翌日の準備、清掃をします。締めの作業は全員が残るので、「誰が先に帰るか」が火種になります。子育て中のパートが定時で帰り、常勤が残って片付ける構図になると、不満がたまりやすくなります。
こうして見ると、個人クリニックの人間関係の摩擦は、「朝の暗黙のルール」「忙しい時間の言葉」「昼休みの会話」「締めの残り方」の4か所に集中しています。逆に言えば、この4か所で自分がどう振る舞うかを決めておけば、摩擦の多くは避けられます。
登場人物ごとに、距離の取り方を変える
個人クリニックの人間関係は、相手が誰かによって適切な距離が違います。全員と同じように仲良くしようとすると、かえって疲れます。
院長
院長は診療の責任者で、同時に雇い主です。病院の医師のように「指示を出す人」であるだけでなく、昇給や賞与、シフト、ときには雇用の継続まで握っています。
院長との距離で大切なのは、報告の型を決めておくことです。忙しい外来中は「結論から、短く」、昼休みや終業後に「気になっていることを1つずつ」と分けると、院長の機嫌に左右されずに必要なことを伝えられます。院長の口調がきつい院でも、報告の型が決まっているスタッフは叱られる回数が明らかに少なくなります。
一方で、院長と個人的に近くなりすぎるのは避けたほうが無難です。院長に気に入られていることが、ほかのスタッフからの反発につながるのは、個人クリニックでよく聞く話です。
院長の家族(事務長・院長夫人)
院長の配偶者が事務長や経理を担っている院は珍しくありません。この場合、実務上の管理者は院長夫人で、シフトや備品、スタッフの勤怠を見ています。
注意したいのは、院長夫人への相談は院長に筒抜けになる前提で話すことです。家族なので当然です。院長への不満を院長夫人に話すのは避け、業務の相談だけにとどめます。
古株のスタッフ
開院当初から働いているスタッフは、院のやり方を一番知っている人です。院長も頼りにしていて、実質的な現場のリーダーになっていることが多くあります。
新しく入った人がまず関係をつくるべき相手はこの人です。前の職場のやり方と違っても、最初の3か月は院のやり方に合わせ、「なぜこうしているのか」を質問する形で理解に努めます。やり方を変えたい提案は、信頼ができてからで遅くありません。
同僚・パートスタッフ
同じ職種の同僚とは、仕事の分担を明確にしておくことが一番の予防策です。パートスタッフは勤務時間や家庭の事情がそれぞれ違うので、「残る人」と「帰る人」の不公平感が出ないよう、締めの作業を役割表にしてしまう院もあります。自分から提案しにくい場合は、古株のスタッフに相談する形にすると角が立ちません。
私自身、少人数の職場で働いていた時期に、入って間もないころから休憩中の会話に積極的に加わりすぎて失敗したことがあります。ある人の家庭の事情を別の人から聞いてしまい、知らないふりをしきれずに気まずくなりました。それ以来、私生活の話は自分から聞かず、相手が話したことだけを受け止めるようにしています。狭い職場ほど、この線引きが効きます。
病院から移った人がつまずく「任され方」と資格の混在
人間関係の悩みの中には、実は「仕事の任され方の違い」から来ているものが少なくありません。病院から個人クリニックに移った看護師が戸惑いやすい点を整理します。
病院では、看護師の業務は看護部の中で標準化され、手順書やマニュアルがあります。個人クリニックでは、院長のやり方がそのまま手順です。採血の順番、点滴の準備、器具の置き場所まで院長の好みで決まっていて、文書になっていないことがほとんどです。前の職場の正しいやり方を持ち込むと、「ここではそうしない」と言われて衝突しがちです。
また、看護師資格を持っていても、個人クリニックでは受付の補助、電話対応、在庫管理、レセプトの確認の手伝いまで任されることがあります。これを「看護師なのに雑用をさせられる」と受け取るか、「少人数だから全員で回している」と受け取るかで、周囲との関係が大きく変わります。
資格の混在も、個人クリニックに特有の事情です。准看護師が働く場所として、診療所は病院と並ぶ大きな受け皿になっています。日本看護協会がまとめている統計資料では、令和5年末時点で就業している准看護師約25.7万人のうち、診療所で働く人は約9.4万人と、病院の約8.1万人を上回っています。看護師では就業者のうち診療所で働く人は2割弱なので、クリニックは准看護師の比率が高い職場だと言えます。
同じ部屋に看護師と准看護師、無資格の看護助手や受付スタッフが混在していると、「誰がどこまでやってよいのか」が曖昧になりやすくなります。日本看護協会も、資格ごとの業務の違いを整理する必要性を示しています。
看護師と准看護師において法律で定める業に即した業務分担、協働の推進に取り組む。 出典: 日本看護協会 准看護師制度の課題解決に向けた取組み
現場では、経験年数の長い准看護師が新しく入った看護師に仕事を教える場面もよくあります。資格の上下と経験の上下が逆になると、お互いに気を遣いすぎたり、逆に反発したりします。ここで大切なのは、資格の話を人間関係に持ち込まないことです。業務の範囲は院長の指示と法律で決まるもので、個人同士で競うものではありません。教わる場面では経験に敬意を払い、判断が必要な場面では院長に確認する、と分けて考えると衝突が減ります。
「きつい指導」と「パワハラ」の線引きを知っておく
個人クリニックでは、院長の口調が強い、古株のスタッフが仕切っている、という職場が一定の割合であります。どこまでが指導で、どこからがハラスメントなのかを知っておくと、我慢しすぎることも、過敏に受け取りすぎることも防げます。
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを3つの要素で定義しています。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。 なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。 出典: 厚生労働省 あかるい職場応援団
個人クリニックで見落とされがちなのは、「優越的な関係」が上司からだけではない点です。同じページでは、同僚や部下からの言動でも、その人が業務上必要な知識や豊富な経験を持っていて、協力を得なければ業務が回らない場合は、優越的な関係に当たり得ると説明されています。古株のスタッフが新人を無視し続ける、必要な情報をわざと伝えない、といった行為は、相手が上司でなくても問題になり得るということです。
厚労省は代表的な類型として、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6つを挙げています。個人クリニックで起きやすいのは、次のような形です。
・患者の前で人格を否定するような言葉で叱る(精神的な攻撃) ・新しく入った人だけ休憩室に呼ばない、話しかけても無視する(人間関係からの切り離し) ・経験を理由に、看護業務を一切させず掃除だけを続けさせる(過小な要求) ・家族構成や交際相手のことをしつこく聞き、ほかのスタッフに広める(個の侵害)
一方で、患者の安全に関わるミスを強い口調で注意された、忙しい時間に説明なしで指示された、というだけではパワハラに当たらないことが多いです。言い方が不快でも、業務上必要な指導の範囲に収まっている場合があります。
個人クリニックの難しいところは、事業主が院長本人なので、院内に相談先がないことです。法律上、事業主にはハラスメント防止の措置が求められていますが、小規模な院では相談窓口が院長夫人だけ、ということもあります。院内で相談しにくい場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーのような外部の窓口を使えます。相談する前に、日時、場所、言われた言葉、そばにいた人をメモに残しておくと、話がスムーズに進みます。
狭い職場で消耗しないための、具体的な振る舞い
ここからは、毎日の働き方の中でできる距離の取り方を、具体的な行動に落とします。どれも特別な技術ではありませんが、個人クリニックでは効果が大きいものです。
挨拶とお礼は全員に同じ量で
少人数の職場では、誰に挨拶をして誰にしなかったかが目立ちます。院長にだけ丁寧、仲の良い同僚にだけ「ありがとう」を言う、という差は、思っている以上に見られています。挨拶とお礼を全員に同じ量で渡すことは、どの派閥にも属さないという意思表示にもなります。
昼休みの過ごし方を決めておく
昼休みを休憩室で過ごすかどうかは、院によって事実上の決まりがあることもあります。全員で食べる習慣がある院なら、最初は加わりつつ、会話では聞き役に回るのが無難です。その場にいない人の話題になったら、同意も否定もせず、仕事の話に戻すか、話題が変わるのを待ちます。昼休みが長い院では、途中で外に出る、車で休むといった自分の時間を少しずつ確保している人もいます。
業務の依頼と引き継ぎは記録に残す
「言った、言わない」は人間関係のもつれの大きな原因です。院内の連絡ノートや電子カルテのメモ機能、業務用のチャットがあれば、依頼や引き継ぎはそこに書く習慣をつけます。記録があれば、ミスの責任を押し付けられることも減り、感情的なやり取りを避けられます。
スタッフのLINEグループとの付き合い方
個人クリニックでは、業務連絡をスタッフ全員のLINEグループで回している院も少なくありません。休日の連絡にすぐ返信しないと気まずい、雑談が夜遅くまで続く、といった負担が出やすい部分です。返信は業務に関わるものだけにする、スタンプで既読を示す、と自分のルールを決めておくと気が楽になります。
飲み会や院長主催の食事会
年に数回、忘年会や院長主催の食事会がある院もあります。参加が任意なら、最初の1回は顔を出し、以降は都合に合わせる程度で十分です。参加しないことで評価が下がるような雰囲気がある場合、それ自体が職場の性質を表しています。
仕事の話は近く、私生活の話は遠く
最後に、全体を通した原則です。業務の相談、患者の情報共有、手技の確認は、遠慮せずに近い距離で行います。一方で、家庭、恋愛、お金、健康の話は自分から深く出さず、聞かれても答えられる範囲にとどめます。狭い職場では、私生活の情報が一度広まると取り消せません。この線引きを入職初日から守るだけで、人間関係の消耗は大きく減ります。
診療科と院の規模で、人間関係の出方は変わる
同じ個人クリニックでも、診療科と規模によって人間関係の悩みの種類が変わります。応募先を選ぶときや、今の職場の悩みを整理するときの目安にしてください。
内科・小児科などの一般外来
患者数が多く、午前と午後の外来の回転が速い職場です。悩みの中心は「忙しい時間の言葉」と「締めの残り方」になりやすい傾向があります。インフルエンザや発熱外来の時期は負荷が一気に上がり、普段は穏やかな人の余裕がなくなる時期でもあります。繁忙期の空気だけで職場を判断しないことが大切です。
整形外科・リハビリがある院
リハビリ室を持つ整形外科は、理学療法士や柔道整復師、リハビリ助手などが加わり、スタッフ数が20人を超えることもあります。人数が増えるぶん、職種ごとのグループができやすく、「リハビリ側」と「外来側」の間で連絡の行き違いが起きやすくなります。一方で、1人と合わなくても別の人と働ける余地があり、小さな院より逃げ場は多くなります。
皮膚科・眼科・耳鼻科など処置の多い科
処置や検査の流れが院長の手順で細かく決まっている科では、「院長の好みを覚えるまで」が最初の山になります。手順を覚えた古株のスタッフの発言力が強くなりやすく、新しく入った人が教わる相手との関係が働きやすさを左右します。
院長1人とスタッフ数人の小さな院
医師が院長1人、スタッフが5人前後という院では、院長の人柄がそのまま職場の空気になります。院長と合えば非常に働きやすく、合わなければどうにもならない、という振れ幅の大きい職場です。見学や面接で院長と話す時間を必ず取り、指示の出し方や質問への答え方を自分の目で確かめておくことをおすすめします。
分院のある医療法人
同じ院長が複数の分院を持つ場合、スタッフが院の間を応援で行き来することがあります。人間関係が1つの院に閉じないぶん風通しは良くなりますが、院ごとにやり方が微妙に違い、応援先で戸惑うこともあります。「個人クリニック」と書かれていても実態は小さなグループ経営ということもあるので、求人票の法人名と所在地を確認しておきます。
入る前に人間関係を見抜く:求人票・見学・面接で確かめること
人間関係は入ってみないと分からない部分がありますが、事前に手がかりを集めることはできます。個人クリニックの場合、見るべき場所ははっきりしています。
求人票で見る点
まず、求人が出ている頻度です。同じ院が年に何度も同じ職種を募集している場合、定着していない可能性があります。求人サイトで院の名前を検索し、過去の掲載履歴を見るだけでも傾向がつかめます。
次に、スタッフ構成の書き方です。「アットホームな職場」「スタッフ仲が良い」という表現は、どの院も書くので判断材料になりません。それよりも、「看護師3名、医療事務4名」のように人数が具体的に書かれているか、平均勤続年数が示されているかを見ます。数字で書けるのは、書いても困らない実態がある院です。
また、令和6年4月からは、募集の段階で業務内容や就業場所の変更の範囲を示すことが求められるようになりました。求人票に書かれた業務の範囲が曖昧なら、面接で具体的に確認します。受付や清掃も含まれるのかを入る前に知っておけば、「聞いていなかった」という不満を防げます。
見学で見る点
見学ができる院なら、できれば外来の時間帯に行きます。見るべきなのは次の点です。
・スタッフ同士が患者のいないところでどんな言葉を交わしているか ・院長がスタッフに指示を出すときの口調 ・新しいスタッフや若いスタッフが質問しやすそうか ・受付と診察室の間で、連絡が滞っていないか
忙しい時間に一瞬ピリッとするのは普通です。見たいのは、そのあと空気が戻るかどうかです。
面接で聞き返す質問
面接の最後に質問の機会があれば、人間関係に関わる実態を聞いておきます。聞き方の例を挙げます。
・「今いらっしゃる看護師の方は、どれくらいの年数お勤めですか」 ・「今回の募集は増員ですか、それとも欠員の補充ですか」 ・「入職後はどなたに仕事を教えていただく形になりますか」 ・「締めの作業は、どのように分担されていますか」
欠員補充の場合、前任者がなぜ辞めたのかを直接聞くのは難しいですが、「どれくらいの期間お勤めだった方の後任ですか」と聞けば、ある程度の見当がつきます。質問に対して院長や事務長が具体的に答えてくれるかどうか自体が、職場の風通しを表しています。
それでも合わないときの選択肢と、次の働き方の考え方
十分に気をつけていても、合わない職場はあります。個人クリニックには異動がないので、選択肢は「院の中で状況を変える」か「職場を変える」かのどちらかになります。
院の中で状況を変える
業務の分担や締めの残り方など、仕組みの問題が原因であれば、院長や事務長に改善を提案する余地があります。感情ではなく「締めの作業に毎日30分の差が出ている」のように事実で伝えると、聞いてもらいやすくなります。特定の人との関係が原因なら、シフトの組み方で一緒になる時間を減らせないか相談する方法もあります。
職場を変える
ハラスメントに当たる言動が続いている、体調に影響が出ている、という場合は、無理に続ける必要はありません。個人クリニックは数が多く、同じ診療科でも院が変われば職場の空気はまったく違います。次を探すときは、この記事で挙げた求人票と見学のポイントを使って、同じ失敗を繰り返さないようにします。
転職を考えるときは、今の給与が相場のどのあたりにあるかを確認しておくと、条件を比べやすくなります。看護職全体の年収の水準や年齢による推移は看護師の年収・単価相場にまとまっているので、個人クリニックの提示額と病院やほかの施設との差を見る材料になります。
1人で考えていると、「自分が悪いのか、職場が悪いのか」の判断がつかなくなることがあります。そういうときは第三者に話を聞いてもらうのも1つの方法です。職場・転職・キャリア相談のお仕事ではキャリア相談を担う人がどんな相談に乗っているのかが紹介されていて、職場の悩みを誰に話せばよいかの見当をつけるのに役立ちます。相談を受ける側の資格や学ぶ内容に興味があれば、キャリアコンサルタントのページで資格の概要を確認できます。
職場の外にも居場所を持つ
個人クリニックの人間関係で疲れる人の多くは、生活の中で職場の比重が大きくなりすぎています。職場以外にもう1つ、自分の経験を使える場を持っておくと、休憩室での一言に振り回されにくくなります。看護の経験を在宅で活かす仕事の種類や始め方は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で紹介されています。副業を始める場合は、勤務先の就業規則で副業が認められているかを先に確認してください。
働く人と職場の組み合わせを長く見てきた運営者の立場から言えば、少人数の職場で長く続く人ほど、全員と仲良くなろうとはしていません。仕事の約束をきちんと守り、私生活の話では一歩引いている人が、結果として誰からも頼られる存在になっています。反対に、入ってすぐに誰かと親しくなり、その人と一緒に孤立していくケースも見てきました。個人クリニックの人間関係は、近づくことより、ちょうどよい距離を保ち続けることのほうが大切です。
よくある質問
Q. 個人クリニックは病院より人間関係が悪いのですか?
悪いとは限りませんが、こじれたときに逃がす仕組みがないのは確かです。人数が少なく、異動も人事部もないため、合わない相手と毎日同じ空間で働くことになります。院によって空気は大きく違うので、求人の掲載頻度や見学時のスタッフの様子を見て判断するのが現実的です。
Q. 院長の口調がきついのはパワハラに当たりますか?
口調がきついだけでは、業務上必要な指導の範囲に収まる場合があります。人格を否定する言葉を繰り返す、患者の前で侮辱する、特定の人だけ無視するといった言動が続くなら、パワハラに当たる可能性があります。日時や言われた言葉をメモに残し、労働局の総合労働相談コーナーなど外部の窓口に相談できます。
Q. 昼休みに休憩室で一緒に過ごさないと浮きますか?
全員で食べる習慣がある院では、最初から完全に離れると目立つことがあります。はじめは加わって聞き役に回り、慣れてきたら外に出る日をつくるなど、少しずつ自分の時間を確保するのが無難です。その場にいない人の話題には同意も否定もしないことを意識してください。
Q. 入職前に人間関係を見抜く方法はありますか?
求人の掲載頻度、スタッフの人数や勤続年数が具体的に書かれているか、見学時にスタッフ同士や院長の口調がどうかを確認します。面接では、今回の募集が増員か欠員補充か、誰に仕事を教わるのかを聞くと、職場の実態が見えやすくなります。具体的に答えてくれる院ほど風通しが良い傾向があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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