校閲者になるには何から始めるか|入り口と最初の仕事の取り方


この記事のポイント
- ✓校閲になるにはどこから手をつけるか
- ✓校正技能検定の級と日程
- ✓最初の仕事を取る5つの経路
「文章を読むのは好きなんです。ただ、校閲の仕事にどうやって入るのかが分かりません」。こういうご相談が、本当によく届きます。求人を検索しても経験者向けばかりで、資格の一覧を見ても何が本物か判断できない。そこで手が止まってしまう方が多いのです。
大丈夫ですよ。校閲は、入り口の順番がはっきり決まっている仕事です。順番を知らないまま求人に応募すると落ち続けますが、順番どおりに進めば未経験からでも入れます。年齢の制約も、ほかの職種よりずいぶん緩い分野です。
この記事では、まず校正と校閲の違いを整理し、学ぶ場所と最初にかかるお金、検定の仕組み、求人票の見方、最初の仕事を取る経路、報酬を時間あたりに直す計算までを順に並べます。学校や検定の日程と金額は、公式のページで今日時点の記載を確かめたものだけを載せています。
校閲と校正は、隣にある別の仕事です
最初にここを分けておきます。求人票の書き方がばらばらなので、違いを知らないまま応募すると、任される内容と自分の期待がずれます。
校正は、原稿とゲラ(印刷前の試し刷り)を突き合わせて、文字の間違いや組み方のずれを直す仕事です。原稿にあった文字がゲラに正しく入っているか、行の長さや字間がそろっているか、ルビや約物の位置が規則どおりかを見ます。突き合わせる相手がある作業なので、正解に近づける方向がはっきりしています。
校閲は、書かれている内容そのものを疑う仕事です。日付と曜日が合っているか、人名の表記がその人の公式の書き方と一致しているか、引用された数字が出どころの資料と同じか、前の章と後ろの章で言っていることが食い違っていないか。原稿の外にある資料を当たって確かめます。
実務では、この2つを1人が続けて行うことが多いです。求人票の職種名が「校正」でも内容の確認まで含む場合があり、逆に「校閲」と書かれていても文字の突き合わせが仕事の大半という場合もあります。だから、応募前に確かめるのは職種名ではなく、業務内容の欄に「原稿引き合わせ」と「事実確認」のどちらが書かれているかです。
日本エディタースクールは、校正の技能が出版界だけの話ではないと説明しています。
校正は,書籍や雑誌の内容を正しく不備のないものに仕上げるための重要な仕事です.出版界のみならず,文章作成・点検などの業務への信頼が求められる一般企業においても,活かすことのできる技能です.業務のデジタル化やDTP化にともない,文字や組方を見る目の確かさが,今まで以上に求められるようになりました. 出典: editor.co.jp
ここが大事なところです。校閲の技能を使う場所は、出版社と新聞社だけではありません。企業の広報物、通販サイトの商品説明、行政の広報誌、学術論文、医薬品の説明文書。文章に責任が生じる場所には、確かめる人が必要になります。入り口を出版社に限定してしまうと、募集の数が急に狭くなります。
校閲者の1日は、こんな順番で進みます
仕事の中身が見えていないと、学ぶべきものも決められません。1日の流れを具体的に並べてみます。
朝、担当する原稿とゲラが届きます。紙で届く現場と、PDFで届く現場があります。まず全体をざっと見て、分量と締め切りから、1時間あたりどれだけ進めればよいかを決めます。ここで配分を決めずに読み始めると、終盤の数ページが雑になります。
次に、文字の突き合わせをします。原稿を左に、ゲラを右に並べて、1字ずつ照らし合わせます。この段階では内容の是非を考えません。考えると目の速度が落ちて、抜けや重複を拾い損ねます。
その後、素読みに入ります。原稿を見ずにゲラだけを読み、日本語として通っているか、事実として疑うところがないかを見ます。ここが校閲の中心です。引っかかったところには、直しではなく「疑問」として鉛筆で書き添えます。「この日付は火曜日ですが、原稿では水曜となっています。ご確認ください」という書き方です。
確かめる作業が入ります。人名、社名、地名、法律の名前、数字、引用元。辞書と公式サイトと官公庁の資料を当たります。ここに一番時間がかかります。1つの固有名詞を確かめるために、公式サイトの会社概要と有価証券報告書を両方開くこともあります。
最後に赤字と鉛筆を整理して戻します。雑誌の現場では、1本の記事に3人以上が目を通す仕組みを取っているところもあります。日本エディタースクールが紹介している現役の校正者も、校正チームの中で担当が割り振られ、1つの記事に対して最低3名が目を通す仕組みだと語っています。1人で完璧を目指す仕事ではなく、複数で網をかける仕事だと考えると、気持ちがずいぶん楽になります。
入り口は4つ。どこから入るかで学ぶ順が変わります
校閲の仕事に入る道は、大きく4つに分かれます。今の状況によって、選ぶべき道が変わります。
1つ目は、出版社や新聞社の校閲部門に正社員か契約社員として入る道です。安定していますが、募集の数がとても少なく、新卒と経験者に集まります。今すぐ未経験で狙うなら、この道を第1候補にしないほうが現実的です。
2つ目は、校正や制作を請け負う会社に入る道です。出版社から作業を請ける専門の会社があります。ここは未経験の募集が出ます。書籍、雑誌、広告、通販カタログなど、扱うものは会社ごとに違います。ここで数年働いてから独立する流れが、校閲では一番多い経路です。
3つ目は、一般企業の制作や広報の部署で、文章の点検を担当する道です。職種名は校閲ではなく、制作進行や広報や品質管理になります。ただし実務は校閲と重なります。ビジネス文書の書き方を体系的に押さえておくと入りやすい入り口で、ビジネス文書検定のように文書の作法と敬語、社内外の書式を測る検定を先に取っておくと、職務経歴書に書ける材料になります。
4つ目は、在宅の業務委託で受ける道です。1件ずつ請けて、締め切りまでに戻します。時間の自由が利きますが、いきなりここから始めると困ります。校閲は「どこまで疑えばよいか」の基準を現場で覚える仕事で、その基準を持たないまま在宅で受けると、確かめすぎて時間が溶けるか、見落として信頼を失うかのどちらかになります。
順番として現実的なのは、2つ目か3つ目でいったん中に入り、基準を体に入れてから4つ目に移ることです。日本エディタースクールが紹介している事例でも、一般企業に3年勤務したあとに校正者へ転職し、出版社で2年働いてからフリーの校正者になった方、40歳を過ぎてから学習と検定合格を経て在宅の校正者になった方が並んでいます。どちらも、中に入る期間を先に挟んでいます。
学ぶ場所と、最初にかかるお金
独学だけで校閲に入る方もいますが、遠回りになりやすいです。理由は、校正記号という業界共通の書き方があり、これを正しく使えないと最初の仕事が回ってこないからです。記号の書き方は本で読んでも身につきません。実際に赤を入れて、直されて、覚える種類の技能です。
いま国内で校正と校閲の講座を体系的に用意しているところとして、日本エディタースクールがあります。1966年から検定を実施している学校で、コースは通う形と通信の形に分かれています。
平日昼間の全日制は、校正者養成専門コースという名前で、訓練量が最も多い形です。2027年2月16日の開講分が受付中になっています。働きながら学ぶなら、平日夜間の夜間講座、土曜昼間の土曜講座、自宅で進める通信講座から選びます。土曜講座の校正教室は半年間でひととおりを終える形で、2027年3月6日開講分が受付中です。通信講座の校正コースについて、学校側は検定合格率で通学講座と差はないと説明しています。
いきなり数か月のコースに申し込むのが不安なら、1日だけの体験から始められます。校正1日教室という講座があり、通学版は9,370円にテキスト代500円を加えた金額(税込)で、2026年10月11日の日曜に12時から16時20分まで行われます。定員は32名で、最低実施人数は15名です。自宅で受ける通信版は随時受付で、受講料7,340円にテキスト代500円です。通信版はDVDやオンライン授業ではなく、通学版の授業を再現したノートと教材、その解答と解説が届く形です。
この1日教室には、受講後1年以内に常設の校正講座へ申し込むと受講料から5,000円が引かれる特典が付きます。まず1日だけ試して、向いていると感じたら本コースへ進む。この順番なら、最初に大きな金額を払わずに判断できます。
校正技能検定は、何を測る検定か
資格の話をすると、名前の似た民間の認定がいくつも出てきて、どれが実務で通じるのか分からなくなります。ここで基準になるのが校正技能検定です。
この検定は1966年から日本エディタースクールが主催と実施を行っており、学校側は「校正」の技能を認定する唯一の検定試験だと説明しています。級は初級、中級、上級の3つです。
初級は、日本エディタースクールで指定科目を修得した方を認定する形です。試験を受けて取るのではなく、学んだ結果として認定される級です。中級は統一試験で、実技試験と学科試験の2つがあります。年2回、夏と冬に行われます。上級は年1回、春に行われ、中級の合格者だけが受けられます。
日程は公表されています。中級は第176回が2026年7月19日、第177回が2026年12月13日の予定です。上級は第175回が2026年3月29日に実施済みで、合否通知は2026年5月中旬に発送されています。募集は各回、試験実施日の約2か月前から始まります。つまり、受けたい回が決まったら、その2か月前に募集要項が出ているかを見に行く流れです。
古い情報を見て混乱する方がいるので、1つ補っておきます。以前は四級や三級という呼び方でした。学校のサイトに残っている在宅校正者の体験談にも「校正検定〈四級〉に合格したところで」という記述があります。いまの初級と中級と上級は、この旧い級名を置き換えたものです。求人票に旧い級名が書かれていることもあるので、応募先に確認して差し支えありません。
検定の採点について、学校は解答用紙の氏名や受験番号をマスキングして採点し、試験結果だけを合否の基準としており、受験者の年齢、性別、経歴やその他の属性が合否に影響しないと明記しています。年齢が気になって足が止まっている方は、ここを読んでおいてください。
検定を持っていれば必ず採用される、という話ではありません。ただ、未経験で応募するときに、書類の段階で「基準を学んだ人」と見てもらえる材料になります。試験対策として、日曜集中の校正検定訓練〈中級〉が2026年11月8日開講で受付中、関西では2026年11月22日に大阪で1日の対策講座が予定されています。
検定の前に用意する道具と辞書
学び始める前に、手元の道具をそろえてください。ここを軽く見ると、学習の効率が落ちます。
筆記具は、赤ペン、鉛筆、消しゴムです。赤は「直してください」という指示、鉛筆は「疑問があります」という問いかけ。この使い分けが校閲の基本の作法です。直すべきか迷ったものを赤で入れてしまうと、書き手の意図を壊すことがあります。迷ったら鉛筆で問う、と覚えてください。校正1日教室の持ち物も、赤ペンと鉛筆と消しゴムです。
辞書は、国語辞典と漢和辞典に加えて、用字用語集が必要になります。用字用語集は、新聞社や通信社が出している「この語はこう書く」という取り決め集です。同じ言葉でも、媒体によって「行う」と「行なう」のどちらを採るかが違います。校閲は自分の好みを通す仕事ではなく、その媒体の決まりに合わせる仕事です。だから、担当する媒体がどの用語集を基準にしているかを最初に聞きます。
事実を確かめるための当たり先も決めておきます。人名と社名は公式サイト、法律の名前と条文はe-Govの法令検索、統計の数字は出している省庁のページ、地名は国土地理院。ネットの二次情報だけで確かめたことにしないのが、この仕事の線です。
引く順番も決めておきます。疑問が出たら、まず原稿の中でその語が他の場所にどう書かれているかを見て、次に媒体の用語集、次に辞書、最後に一次資料。この順番を決めておくと、1つの疑問にかける時間が読めるようになります。
学習を始めたばかりの方から「調べ始めると終わらない」という相談をよく受けます。これは順番がないからです。当たり先の順番と、1件あたりの上限時間を決めておく。それだけで、同じ作業が半分の時間で終わるようになります。
求人票のどこを見れば、未経験でも入れる募集か分かります
求人を検索して「経験者のみ」ばかりだと感じるのは、見る欄が職種名と経験年数に偏っているからです。校閲の募集は、次の3か所を見ると判断が変わります。
1つ目は、業務内容の欄に「原稿引き合わせ」「素読み」「赤字照合」のどれが書かれているかです。赤字照合だけの募集は、前の工程で入った赤が正しく反映されたかを見る作業で、未経験でも入れることが多いです。ここから入って、素読みを任されるようになる流れがあります。
2つ目は、扱う媒体です。書籍と学術系は、正確さの要求が高いぶん未経験の枠が狭いです。通販カタログ、パンフレット、広報誌、Webの記事は、量が多く回転も早いので、未経験の募集が出やすいです。入り口としてはこちらから当たります。
3つ目は、勤務の形です。在宅と書かれていても、初回の打ち合わせと納品のために出社が必要な条件が付くことがあります。完全に自宅で完結するのか、月に何回か通うのかを応募前に確かめてください。ここを曖昧にしたまま進むと、受かってから断ることになります。
応募書類では、経験がない代わりに、確かめる手順を書けるかどうかが差になります。「文章を読むのが好きです」では通りません。「用語集と辞書と一次資料を、この順番で当たります」「疑問は赤ではなく鉛筆で入れます」と書ける方は、中身を分かっている人として読まれます。
未経験の応募で有利になるのは、前職で文章に触れていた経験です。事務で社内文書を作っていた、広告代理店で印刷物に関わっていた、学校で論文の点検をしていた。校閲と地続きの経験は、思っているより広い範囲にあります。書き出してみてください。
文章の仕事全般の相場感を先に知っておきたい方は、Webライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップのように、単価の決まり方と上げ方を整理した記事も参考になります。書く側の単価の仕組みが分かると、点検する側の単価の位置も見えてきます。
最初の仕事を取る5つの経路
学んだあと、最初の1件をどう取るか。ここでつまずく方が一番多いところです。経路を5つに分けます。
第1は、学校の就職相談です。校正の講座を持つ学校には、出版社や制作会社からの求人が直接届きます。日本エディタースクールの事例でも、スクールでの受講を終えたあと就職相談室を通して出版社で校正者として働き始めた方、スクールへの求人から在宅校正の仕事を見つけた方が紹介されています。この経路が強いのは、募集側が「この学校の修了者なら記号は使える」と分かっているからです。
第2は、制作会社の直接応募です。出版社ではなく、出版社から作業を請ける会社を狙います。社名で検索しても出てきにくいので、手元の本や雑誌の奥付を見てください。制作や校正を担当した会社名が書かれていることがあります。
第3は、求人検索サイトです。「校正」「校閲」「赤字照合」「原稿整理」の4語で検索します。「校閲」だけで検索すると、募集の多くを取り落とします。
第4は、業務委託のマッチングサービスです。1件ずつ請ける形で、実績がない段階でも受けられる案件が出ます。ここで気をつけるのは、単価より先に「フィードバックがもらえるか」を見ることです。戻された赤字に対して何も言われない現場では、基準が身につきません。
第5は、人からの紹介です。校閲は紹介で回る比率が高い分野です。理由は、任せて安心な人を探すコストが高いからです。前の職場の知り合いから仕事が入る、講座で一緒に学んだ人から声がかかる、校正者同士の交流から話が来る。学校の事例にも、この形が繰り返し出てきます。
最初の1件は、金額で選ばないでください。基準を教えてくれる相手、締め切りに余裕がある案件、量が少ない案件。この3つを満たすものから始めると、2件目以降が続きます。逆に、初回で単価の高い大量の案件を受けてしまうと、間に合わせるために確かめる工程を省き、そこで評価が決まってしまいます。
報酬の数え方と、時間あたりに直す計算
お金の話に入ります。ここは数え方を知らないと判断できません。
校閲の報酬の数え方は、大きく3つあります。1つは時間で数える形で、社員や派遣、常駐の場合です。2つ目は分量で数える形で、1ページあたり、1本あたり、400字詰め原稿用紙1枚あたりといった単位が使われます。3つ目は1案件いくらの形で、書籍1冊を通しで請けるときなどに使われます。
在宅で受けるときに大事なのは、どの数え方でも最後に時間あたりへ直して比べることです。計算は単純です。受け取る金額を、実際にかかった時間で割ります。たとえば1本5,000円の案件に6時間かかったなら、時間あたり833円です。これは考えるための計算例で、案件ごとに変わります。
なぜ時間あたりに直すか。分量あたりの単価が高く見える案件でも、確かめる箇所が多ければ時間が伸びて、結果として割に合わないことがあるからです。逆に単価が低く見える案件でも、同じ媒体の繰り返しで手が慣れると、時間あたりが上がります。
比べる目安として、お住まいの都道府県の最低賃金を持っておくと便利です。厚生労働省が公表している令和7年度の地域別最低賃金は、全国の加重平均が1,121円、最も高い東京都が1,226円、最も低い地域が1,023円です。業務委託には最低賃金が適用されませんが、時間あたりに直した金額がこの水準を大きく下回るなら、単価か作業手順のどちらかを見直す合図として使えます。
職種としての報酬の位置を知りたい方は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように、統計をもとに職種ごとの年収と単価の相場をまとめたページを見ておくと、求人票の金額が高いのか低いのかを判断しやすくなります。校閲は統計の上でこの分類に入ります。
もう1つ、経験の浅いうちは「調べた時間」が長くなるのが当たり前です。時間あたりが低く出ても、それは腕の問題ではなく段階の問題です。同じ媒体を3回担当すると、確かめる箇所の勘が働いて時間が縮みます。最初の数件の時間あたりで、この仕事の採算を判断しないでください。
在宅で校閲を続けるための環境
在宅で受けるなら、環境の作り方が仕事の質に直結します。会社の校閲部と違って、確かめる資料も静けさも自分で用意することになります。
机は広さが要ります。紙のゲラで受ける場合、原稿とゲラを並べられる奥行きが必要です。PDFで受ける場合も、画面を2つ使えると突き合わせが楽になります。1つの画面で切り替えながら照合すると、行を飛ばす頻度が上がります。
照明は、手元に影が落ちない角度にします。校閲は細かい記号と小さな字を長時間見るので、明るさが足りないと目が先に疲れます。疲れた目は、抜けを拾えません。
音は、遮れる時間帯を作ってください。素読みの工程は、頭の中で文章を追う作業です。ここに話し声が入ると、読んだつもりで読めていない状態になります。家族と暮らしている場合、素読みの時間だけは静かにしてもらう、と先に伝えておくと衝突が減ります。
資料の並べ方も決めておきます。よく引く辞書と用語集は手を伸ばせば届く棚に並べ、案件ごとの指示書はすぐ開けるフォルダに保存できます。指示書を探す時間は、報酬に乗りません。
そして休み方です。校閲は集中の質で成果が変わる仕事なので、長く座り続けるほど精度が落ちます。50分読んだら数分立つ、という区切りを作っている方が多いです。目を閉じて遠くを見るだけでも、そのあとの拾い率が変わります。
在宅で働く形そのものの収入の考え方については、Webデザイナー 年収のリアル:30代フリーランスが語る稼ぎ方とキャリアパスのように、在宅で続けている人の収入の組み立て方を扱った記事も合わせて読むと、単発の仕事を積む段階から定期の仕事へ移る流れがつかめます。
向いている人と、つらくなりやすい人
向き不向きの話は、慎重に書きます。性格で決まる話ではなく、続けやすい条件があるという話です。
続けやすいのは、確かめることそのものが面白い方です。この日付は本当に火曜日か、この会社の正式な表記は株式会社が前か後か。こうした問いを追うのが楽しい方は、この仕事の中心が楽しい作業になります。
もう1つは、自分の意見を差し込まずにいられる方です。校閲は、書き手の文章を自分の好みに寄せる仕事ではありません。読みにくいと感じても、その媒体の決まりと書き手の意図に沿っているなら、通します。ここで我慢が利かないと、赤字が増えて現場でぶつかります。
逆に、つらくなりやすい条件が2つあります。1つは、見落としを自分の人格の問題として受け取ってしまう場合です。校閲に見落としはゼロになりません。だから現場は複数人で網をかけます。1件の見落としで「向いていない」と結論を出す方が多いのですが、それは仕事の仕組みを一人で背負おうとしている状態です。
もう1つは、人と話す機会が急に減る場合です。在宅で校閲を始めると、朝から晩まで誰とも話さない日が続きます。この状態が長引くと、判断に自信が持てなくなって、確かめる時間がどんどん伸びます。対策は単純で、週に1回でも人と話す予定を決めておくことです。同じ仕事をしている人との集まりでも、家族との食事でもかまいません。これは気持ちの問題ではなく、作業速度に効く実務の話です。
年齢については、心配しすぎなくて大丈夫です。日本エディタースクールも、校正は一度技能を身につければ経験と年齢とともに力が深まるので、仕事の依頼でとくに年齢が制約されることはないと書いています。40代から始めて在宅の校正者になった方の事例も公開されています。
AIの校正ツールが入ってきて、何が変わったか
この分野の将来性を心配して調べている方が多いので、いま起きていることを整理します。
変わったのは、機械が得意な工程です。文字の打ち間違い、送り仮名のゆれ、用語集との照合、二重敬語、数字の桁。ここは自動で拾えるようになりました。だから、この工程だけを担当していた仕事は減っています。
減っていないのは、原稿の外に当たる工程です。引用された統計が本当にその年の数字か、人名がその人の公式の表記と一致しているか、前の章と後ろの章で主張が食い違っていないか。ここは資料を探して読む判断が入るので、機械の出力をそのまま採用できません。
そして増えているのが、機械が作った文章を点検する仕事です。生成された文章は、日本語として整っているのに事実が違うという形で間違います。表面が整っているぶん、読み流されやすい。内容を疑う訓練を受けた人の出番が、ここで増えました。
つまり、校閲の仕事は縮んだのではなく、中身が事実確認のほうへ寄りました。これから入る方にとっては、むしろ追い風の変化です。学ぶ順番も、記号の作法を押さえたあとは、確かめる手順に時間を使うのが正解になります。
機械と人の役割分担を仕事として設計する領域も広がっています。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、AIを業務に組み込む側の案件がどういう内容で募集されているかを見ておくと、点検の工程を自分の役割として提案する言葉が見つかります。
注意点も1つあります。ツールの出力を根拠に「ここが間違っています」と書かないことです。ツールは辞書に載っていない固有名詞や、業界の慣用表記を誤りとして出します。出力はあくまで候補で、採否を決めるのは人です。この線を守れる方が、現場で信頼されます。
20年この市場を見てきた立場からの観察
最後に、フリーランスと在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から見えていることを書きます。
校閲で長く続いている方に共通しているのは、指摘の精度ではありません。差が出るのは、疑問の伝え方です。続いている方は、疑問を鉛筆で書くときに、根拠と当たった資料を短く添えます。「原稿では水曜ですが、その年の暦では火曜です」と書いてある鉛筆は、受け取った編集者がそのまま判断できます。根拠のない「要確認」だけの鉛筆は、編集者の手間を増やします。同じ量の指摘でも、次に頼まれるかどうかがここで分かれます。
20年この市場を見てきた限り、依頼が続く方は「この人に任せると自分の手が空く」という状態を作っています。校閲という仕事は、発注する側から見れば安心を買う行為です。安心の中身は、見落としの少なさだけではなく、確認のやりとりが短く済むことも含みます。
もう1つ、額面と手取りの話をしておきます。仲介の手数料が乗る取引では、依頼した側が出した予算の一部が途中で抜けていきます。中間のマージンが乗らない直接取引なら、同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の意味は、金額の大小ではなく、双方が得をする構造にあります。1件の金額が大きくない校閲の仕事では、この差が毎月の生活にそのまま出ます。
市場の方向としては、紙の出版物の点検は横ばいから緩やかな減少、Webと企業の文書の点検は増加、という流れが続いています。募集の出口も、出版社の求人欄から、制作会社と一般企業と業務委託のマッチングへ広がっています。だから「出版社の募集が出ていないから道がない」と受け取らないでいただきたいのです。探す場所を変えるだけで見つかることが、この分野では本当に多いのです。
そして、最初の一歩は小さくてかまいません。1日だけの体験講座に申し込む、手元の雑誌の奥付で制作会社の名前を調べる、求人検索サイトで4つの語を入れてみる。どれも今日できることです。ゆっくりで大丈夫ですよ。
よくある質問
Q. 校閲と校正はどちらから学べばよいですか?
校正から入るのが順番です。校正記号の使い方と原稿引き合わせは業界共通の作法で、これができないと最初の仕事が回ってきません。内容を疑う校閲の力は、媒体の決まりと確かめる順番を現場で覚えながら伸ばしていく部分が大きいです。求人票も職種名ではなく、業務内容の欄に原稿引き合わせと事実確認のどちらが書かれているかで判断してください。
Q. 未経験でも入れる募集はありますか?
あります。赤字照合だけを担当する募集、通販カタログやパンフレット、広報誌、Webの記事を扱う制作会社の募集は、未経験の枠が出やすいです。書籍と学術系は正確さの要求が高く枠が狭いので、入り口としては後回しにしてください。応募書類では、用語集と辞書と一次資料を当たる順番を書けることが差になります。
Q. 校正技能検定はどんな仕組みですか?
日本エディタースクールが1966年から主催している検定で、級は初級、中級、上級の3つです。初級は同校で指定科目を修得した方を認定する形、中級は実技と学科の統一試験で年2回(夏と冬)、上級は年1回(春)で中級合格者だけが受けられます。募集は各回の実施日の約2か月前から始まるので、受けたい回の2か月前に要項を確認してください。
Q. まず何にお金をかけるべきですか?
数か月のコースに申し込む前に、1日だけの体験講座で向き不向きを確かめる順番をおすすめします。日本エディタースクールの校正1日教室は、通学版が受講料9,370円にテキスト代500円(税込)、自宅で受ける通信版が7,340円に500円です。受講後1年以内に常設の校正講座へ申し込むと5,000円が引かれる特典が付くので、試してから本コースへ進む形が無駄になりません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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