健康保険と国民健康保険はどう違うか

丸山 桃子
丸山 桃子
健康保険と国民健康保険はどう違うか

この記事のポイント

  • 運営者・保険料の決まり方・扶養・給付の4点で整理しました
  • 令和8年度の協会けんぽ料率と市区町村の国保料の実額
  • 切り替え手続きの期限まで公的資料で確認しています

健保と国保の違いを調べている人の多くは、制度の勉強がしたいわけではありません。退職する、独立する、扶養から外れる、パートの働き方を変える。そういう場面で「どっちに入るのが正しいのか」「いくら払うことになるのか」を知りたいのだと思います。

この記事では、健康保険と国民健康保険の違いを、運営している主体、保険料の決まり方、扶養の扱い、受けられる給付という4つの軸で分解します。令和8年度の実際の料率と保険料額を使って比べるので、自分の場合にいくらになるかを計算できる形で整理します。

結論から。違いは4点に集約できる

先に答えを書きます。健康保険と国民健康保険の違いは、次の4つです。

第一に、運営している主体が違います。健康保険は勤務先を通じて加入する制度で、全国健康保険協会か企業の健康保険組合が運営します。国民健康保険は市区町村が運営します。

第二に、保険料の決まり方と負担者が違います。健康保険は給与をもとに計算した保険料を会社と本人で半分ずつ払います。国民健康保険は世帯の所得と人数で計算し、全額を自分で払います。

第三に、扶養の扱いが違います。健康保険には被扶養者という仕組みがあり、条件を満たす家族は保険料の追加負担なしで加入できます。国民健康保険にはこの仕組みがありません。

第四に、もらえる給付が違います。病気で働けないときの傷病手当金と、出産で休んだときの出産手当金は、健康保険にはあって国民健康保険には実質的にありません。

窓口での自己負担が3割であることや、医療費が高額になったときの高額療養費制度は、どちらも同じです。違うのは払い方と、休んだときの所得の補償です。

そもそも公的な医療保険は何種類あるのか

健保と国保という2つだけで語られることが多いのですが、実際にはもう少し細かく分かれています。整理しておくと、自分がどこに属するのかが分かります。

会社員が入るのが健康保険です。中小企業を中心に全国健康保険協会が運営する協会けんぽと、大企業が単独または共同で設立する健康保険組合の2つがあります。公務員と私立学校の教職員は共済組合に入ります。制度の名前は違いますが、勤務先を通じて入り、保険料を労使で分け合うという構造は同じです。

自営業の人、無職の人、退職して次の勤務先が決まっていない人、勤務先の社会保険に入らないパートやアルバイトの人が入るのが国民健康保険です。市区町村が運営する国民健康保険のほかに、同じ業種の人が集まって設立した国民健康保険組合もあります。建設業や飲食業、医師や文筆の分野など、業種ごとに存在します。

そして75歳になると、それまで何に入っていたかに関係なく、全員が後期高齢者医療制度に移ります。

この記事で扱う健保と国保の違いは、主に会社員が入る健康保険と、市区町村の国民健康保険の比較です。

違い1: 保険料の決まり方がまったく別の計算

いちばん金額に響く違いがここです。計算の考え方そのものが違います。

健康保険は給与の一定割合を労使で折半

健康保険の保険料は、標準報酬月額という区分に当てはめた金額に、都道府県ごとの保険料率を掛けて計算します。標準報酬月額とは、毎月の給与を区切りの良い等級に当てはめた金額のことです。

全国健康保険協会が公表している令和8年度の都道府県単位保険料率は、東京都が9.85%、最も低いのが沖縄県の9.44%、最も高いのが佐賀県の10.55%です。40歳から64歳の人は、これに全国一律の介護保険料率1.62%が加わります。さらに令和8年4月分からは、全国一律の子ども・子育て支援金0.23%も加わります。

重要なのは、この保険料を会社と本人で半分ずつ負担するという点です。

保険料率は、各都道府県によりますが10%前後です。社会保険は「労使折半」なので、保険料の半分は会社が負担します。なお、40歳になった月からは、上記の保険料に介護保険料が加算されるようになります。 出典: manekomi.tmn-anshin.co.jp

東京都で標準報酬月額が30万円、40歳未満の人の場合、保険料の総額は30万円×9.85%に子ども・子育て支援金分を加えた額になり、本人の負担はその半分です。給与明細に載っているのは、この半分の金額だけです。

国民健康保険は世帯の所得と人数で計算

国民健康保険料は、世帯ごとに計算して世帯主が納めます。市区町村ごとに料率が違うため、全国一律の金額はありません。名古屋市が公表している令和8年度の数字を例にします。

区分 均等割(1人あたり年額) 所得割の率 上限額
医療分 50,591円 8.83% 67万円
支援金分 15,784円 2.58% 26万円
介護分(40歳から64歳) 16,120円 2.34% 17万円
子ども分 1,771円 0.26% 3万円

所得割の計算に使う所得は、前年の総所得金額等から住民税の基礎控除額を引いた金額です。基礎控除額は前年の合計所得金額が2,400万円以下なら43万円になります。

構造の違いがはっきり出るのは、均等割の存在です。健康保険では家族が何人いても保険料は本人の給与で決まりますが、国民健康保険では加入者の人数分だけ均等割が積み上がります。名古屋市の例では、40歳以上の人が1人増えるごとに年間84,358円が加わる計算になります。

前年の所得で決まるか、今の給与で決まるか

もうひとつの大きな違いが、計算に使う所得の時点です。健康保険は今の給与で決まるため、給与が下がれば保険料も下がります。国民健康保険は前年の所得で決まるため、収入が落ちた年に前年の高い所得で計算された保険料が届きます。

退職した翌年に国民健康保険料の高さに驚く人が多いのは、この時間差が理由です。在職中の給与をもとに計算されるうえ、会社が払ってくれていた半分もなくなります。

違い2: 扶養という仕組みがあるかないか

金額の差が最も大きく出るのが、家族がいる場合です。

健康保険には被扶養者という仕組みがあります。収入が一定以下の配偶者や子どもを被扶養者として届け出れば、その家族は保険料の追加負担なしで健康保険に加入できます。

社会保険の被扶養者になれる条件は、年間収入130万円未満(60歳以上または障害厚生年金該当なら180万円未満)です。また、扶養認定日が令和7年10月1日以降で、扶養認定を受ける人が19歳以上23歳未満の場合は、年間収入150万円未満となります。もし家族個人の収入が130万円以上になると、その人は扶養から外れます。 出典: manekomi.tmn-anshin.co.jp

一方、国民健康保険には扶養という概念がありません。世帯の加入者全員が被保険者で、それぞれに均等割がかかり、所得のある人にはそれぞれ所得割がかかります。

この違いは、家族の人数が増えるほど大きくなります。会社員の夫が扶養に入れている妻と子ども2人の世帯が、夫の退職で全員国民健康保険に移ると、4人分の均等割が一気にかかります。名古屋市の例で計算すると、18歳未満の子どもは子ども分の均等割が全額減額される扱いがあるものの、大人2人分だけでも年間16万円を超える均等割が発生します。

パートで働く人が意識する「壁」との関係

扶養に入っている人が働く時間を増やすと、ある水準で扶養から外れます。年間収入130万円という基準が広く知られていますが、勤務先の規模によってはそれより手前で本人が社会保険に入る形になります。

厚生労働省の社会保険適用拡大の枠組みでは、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業に勤める短時間労働者は、すでに加入の対象です。この対象範囲は段階的に広がる予定で、36人から50人の企業は2027年10月、21人から35人は2029年10月、11人から20人は2032年10月、1人から10人は2035年10月に対象となります。

扶養から外れること自体は、悪いことばかりではありません。自分が健康保険の被保険者になれば、後述する傷病手当金と出産手当金の対象になり、厚生年金にも加入するため将来の年金額が増えます。手取りだけで判断せず、保障の厚みも合わせて考える必要があります。

違い3: 働けないときの補償があるかないか

制度の差がいちばん深刻な形で表れるのがここです。

傷病手当金は健康保険にしかない

傷病手当金とは、業務外の病気やけがで働けない間、健康保険から生活費を補う給付のことです。全国健康保険協会の説明によると、支給額は支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2にあたる額が1日あたり支給されます。支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。連続する3日間を含んで4日以上仕事に就けなかったこと、休業した期間について給与の支払いがないことが条件になります。

国民健康保険では、傷病手当金は任意給付という扱いです。条例で定めれば実施できるものの、一般の被保険者向けに実施している市区町村はほとんどありません。つまり国民健康保険に入っている人が長期の療養に入ると、収入はその時点で止まります。

出産手当金も健康保険にしかない

出産のために仕事を休んだ期間の所得を補償する出産手当金も、健康保険の給付です。国民健康保険にはありません。

ただし、出産育児一時金はどちらにもあります。金額は1児につき50万円で、産科医療補償制度に加入していない医療機関での出産や妊娠22週未満の出産の場合は48万8千円です。出産そのものにかかる費用の補助は共通で、休んだ期間の所得補償だけが違うと理解してください。

埋める手段はある

国民健康保険に移る場合、この所得補償の穴をどう埋めるかが現実的な課題になります。民間の就業不能保険や所得補償保険が選択肢になりますが、必要な保障額は家族構成と貯蓄の状況で変わります。設計の考え方は30代の生命保険おすすめ|子育て世代の保障設計生命保険おすすめ比較【2026年版】|年代別の選び方で、年代別の考え方を確かめてから判断してください。

共通している部分は、思っているより多い

違いばかりを並べましたが、共通点も押さえておくと不安が減ります。

窓口での自己負担割合は、小学校入学から70歳未満まで3割で共通です。就学前は2割になります。

高額療養費制度も共通です。この制度は令和8年8月に見直されており、古い金額の情報が残っているので注意してください。厚生労働省によれば、令和8年8月からの制度では70歳未満で年収約370万円から約510万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円まで抑えられます。さらに令和8年8月からは月単位の上限に加えて、8月から翌年7月までを単位とする年間上限が新設されました。直近12か月のうち3か月以上高額療養費に該当した場合に4か月目から限度額が下がる多数回該当の金額は、今回の見直しでも据え置かれています。

所得区分の判定の仕方だけは違います。健康保険は標準報酬月額で、国民健康保険は旧ただし書き所得という基準で判定します。判定の入口が違うだけで、上限額の表そのものは共通です。

このほか、治療用装具を作ったときの療養費、緊急の移送にかかった費用の移送費、亡くなったときの埋葬費や葬祭費も、名称の違いはあるもののどちらにもあります。

切り替えの手続きと期限

制度の違いを理解したら、次は手続きです。期限が短いものがあるので、順番に確認してください。

会社を辞めて次の勤務先が決まっていない場合、選択肢は3つあります。国民健康保険に入る、勤務先の健康保険を任意継続する、家族の健康保険の被扶養者になる、の3つです。

任意継続被保険者とは、退職前に一定期間加入していた人が、退職後も最長2年間その健康保険に残れる仕組みのことです。保険料の会社負担がなくなるため在職中の倍額になりますが、上限があります。全国健康保険協会の令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は32万円です。これは令和7年9月30日時点の全被保険者の標準報酬月額の平均額318,100円が第23級の32万円にあたることから決まっています。

手続きの期限は次のとおりです。国民健康保険への加入は、退職日の翌日から14日以内に市区町村へ届け出ます。任意継続は退職日の翌日から20日以内が申請期限で、これを過ぎると選べなくなります。家族の被扶養者になる場合は、家族の勤務先を通じて手続きします。

どれを選ぶかの判断軸

扶養に入れる家族が多い人は、人数分の均等割がかからない任意継続が有利になりやすくなります。単身で前年の所得が低い人は、所得に応じて計算される国民健康保険のほうが安くなりやすい傾向があります。収入の見込みが被扶養者の条件を満たすなら、家族の健康保険に入るのが最も負担が軽くなります。

どれが安いかは前年の所得と家族の人数で変わるため、市区町村の窓口と年金事務所の両方で試算してもらい、金額を並べて比べるのが確実です。判断に迷う場合は、金額や事情で結論が変わるので窓口で相談してください。

間違えやすいところを先に潰しておく

手続きで実際につまずきやすい点を挙げます。

ひとつめは、二重加入です。就職して勤務先の健康保険に入った後も、国民健康保険をやめる届け出をしないと加入が続いた扱いになり、保険料の請求が来ます。就職したら、市区町村に国民健康保険の資格喪失の届け出が必要です。これは自動では処理されません。

ふたつめは、空白期間です。退職日の翌日から次の保険に入るまでのあいだに空白を作ると、その期間の医療費は全額自己負担になります。国民健康保険は退職日の翌日にさかのぼって加入する扱いになるため、届け出が遅れても保険料はその日から発生します。早く届けても遅く届けても払う額は変わらないので、早めに手続きするほうが得です。

みっつめは、保険証の返却です。退職時に健康保険の資格を失った後も古い保険証で受診すると、医療費の返還を求められます。退職後は使わないでください。

よっつめは、国民健康保険料の軽減を受けるための申告です。世帯の所得が一定以下なら均等割が7割、5割、2割のいずれかで軽減されます。この判定は住民税の申告内容をもとに自動的に行われるため、所得がない年でも住民税の申告をしていないと軽減が適用されません。収入がない年こそ申告してください。

また、倒産や解雇、雇止めで離職した人には、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する軽減があります。対象となるのは雇用保険の離職理由コードが特定受給資格者または特定理由離職者にあたる人で、離職日時点で65歳未満であることが条件です。対象期間は離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までです。この軽減は自動では適用されないため、離職票を持って市区町村の窓口で申請してください。

ケース別に、どちらに入ることになるか

制度の説明だけでは自分の場合が判断できないので、よくある場面ごとに整理します。

会社を辞めて、すぐには働かない

国民健康保険、任意継続、家族の被扶養者の3つから選びます。退職の理由が倒産や解雇であれば、前年の給与所得を100分の30とみなす軽減が使えるため、国民健康保険が大幅に安くなる可能性があります。自己都合の退職ではこの軽減の対象外です。

会社を辞めて、独立する

原則として国民健康保険に入ります。任意継続を選んでも最長2年で終わるため、いずれは移ることになります。独立直後の2年間だけ任意継続を使い、その後に国民健康保険へ移るという選び方もできます。前年の所得が高かった人ほど、この順番が有利になりやすい傾向があります。

配偶者の扶養に入る

年間収入が被扶養者の条件を満たすなら、これが最も負担の軽い選択です。保険料の追加負担なしで健康保険に加入できます。ただし事業所得がある場合、被扶養者の収入の判定方法は健康保険組合ごとに違うことがあります。必要経費として差し引ける範囲が税金の計算とは異なる場合があるため、配偶者の勤務先を通じて事前に確認してください。

パートやアルバイトで働く

勤務先の規模と働く時間によって、自分が健康保険の被保険者になるか、扶養に入るか、国民健康保険に入るかが分かれます。週の所定労働時間が正社員の4分の3以上なら、企業の規模にかかわらず健康保険の被保険者になります。それ未満の場合は、適用拡大の対象企業かどうかで変わります。

転職して、間に空白がある

前の会社の資格喪失日と、次の会社の資格取得日のあいだが数日でも空くと、その期間は無保険になります。1日でも空くなら国民健康保険に入るのが原則です。実際には空白期間に受診しなければ問題が表面化しないことが多いものの、手続き上は加入義務があります。

実際の金額で比べてみる

考え方だけでは判断できないので、令和8年度の数字で試算します。東京都の協会けんぽの料率9.85%と、名古屋市の国民健康保険料を使います。いずれも概算で、実際の金額は等級や自治体で変わります。

単身で、前年の給与収入が400万円だった人

給与収入400万円は、給与所得控除を引くと所得はおよそ276万円です。住民税の基礎控除43万円を引くと233万円が所得割の計算のもとになります。40歳未満なら医療分と支援金分と子ども分の合計で所得割率は11.67%、均等割は68,146円。所得割が約272,000円、合計で約34万円です。月に直すと2万8千円ほどになります。

在職中に東京都の協会けんぽで標準報酬月額が30万円だった場合、本人負担は月額およそ1万5千円でした。国民健康保険に移ると、この倍以上になる計算です。会社が払っていた半分がなくなるうえ、計算の基礎も変わるためです。

夫婦と子ども2人の4人世帯

夫が会社員で、妻と子ども2人が被扶養者だった世帯が、全員国民健康保険に移る場合を考えます。健康保険では家族が何人いても夫の給与で保険料が決まっていましたが、国民健康保険では大人2人分と子ども2人分の均等割が加わります。18歳未満の子どもは子ども分の均等割が全額減額されますが、医療分と支援金分の均等割はかかります。大人2人と子ども2人で、均等割だけで年間25万円前後になる計算です。

この差が、扶養という仕組みの金額的な意味です。家族が多い世帯ほど、健康保険から国民健康保険に移ったときの負担増が大きくなります。

前年の所得がゼロだった人

所得割はかかりませんが、均等割は人数分かかります。ただし世帯の所得が一定以下なら、均等割が7割、5割、2割のいずれかで軽減されます。7割軽減が適用されれば、名古屋市の例では1人あたりの負担が年間2万5千円程度まで下がります。この軽減を受けるには住民税の申告が必要です。

保険証の形は変わったが、手続きの中身は変わっていない

現在は、マイナンバーカードを健康保険証として使う仕組みに移行しています。カードを持っていない人や利用登録をしていない人には、資格確認書が交付されます。

形が変わっても、加入と喪失の届け出が必要であることは変わりません。会社を辞めたら市区町村で国民健康保険の加入手続きをする、就職したら国民健康保険の資格喪失を届け出る。この2つは自動では処理されないので、必ず自分で行ってください。

特に見落とされやすいのが、就職したときの資格喪失の届け出です。マイナンバーカードを保険証として使っていると、新しい勤務先の健康保険の情報が自動で反映されるため、国民健康保険をやめたつもりになりがちです。しかし市区町村の国民健康保険は届け出がないと継続した扱いになり、保険料の請求が続きます。後から重複分が還付されるとしても、手間と時間がかかります。

高額療養費の限度額認定も、入っている制度ごとに申請する

医療費が高額になることが分かっている場合、事前に限度額適用認定証を取得しておくと、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。マイナンバーカードを保険証として使っている場合は、この認定証がなくても窓口で限度額が適用される仕組みになっています。申請先は入っている制度ごとに違い、健康保険なら全国健康保険協会または健康保険組合、国民健康保険なら市区町村です。切り替えの前後では、どちらに申請するのかを間違えやすいので注意してください。

年金の扱いも一緒に切り替わる

健康保険と国民健康保険の違いを調べているときに、見落とされがちなのが年金です。医療保険と年金は別の制度ですが、切り替えのタイミングは同じです。

会社員は厚生年金保険に加入しており、保険料は健康保険と同じく会社と本人で折半しています。会社を辞めると厚生年金の資格を失い、20歳以上60歳未満の人は国民年金の第1号被保険者になります。令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円で、全額が自己負担です。

配偶者の扶養に入っていた人にも影響があります。会社員に扶養されている配偶者は国民年金の第3号被保険者にあたり、保険料の負担がありません。しかし配偶者が会社を辞めると、この第3号の資格も失われ、本人も第1号被保険者として保険料を納めることになります。夫婦2人分で月額35,840円、年間で43万円を超える負担が発生します。

医療保険の切り替えだけを考えて年金を忘れると、後から未納が判明して驚くことになります。国民健康保険の手続きに行く際に、国民年金の種別変更も同じ窓口で済ませてください。

年金保険料が払えないときの制度も確認する

国民年金には、所得が少ない場合の免除制度と納付猶予制度があります。免除を受けた期間は年金を受け取る資格期間に算入され、老齢基礎年金の額にも一部が反映されます。未納のまま放置すると障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れなくなる場合があるため、払えないときは必ず申請してください。

また、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間は産前産後の免除が受けられ、この期間は保険料を納めたものとして年金額に反映されます。令和8年10月からは、子が1歳になるまでの保険料を所得に関係なく免除する育児免除制度も始まります。

数字で見たときの、判断の勘どころ

在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の立場から、ひとつ観察を書きます。

独立や転職のタイミングで健保と国保の違いを調べる人は、たいてい「どちらが安いか」だけを比べます。しかし後から効いてくるのは、金額よりも傷病手当金の有無です。働けなくなったときに1年6か月にわたって所得の3分の2が補われるかどうかは、数万円の保険料差よりはるかに大きい。運営者として見てきた限りでは、独立してから体調を崩して事業をたたむ人の多くが、この穴を埋めないまま走り出しています。

もうひとつ、収入の作り方の話をします。国民健康保険料は前年の所得で決まるため、収入の波が大きいほど翌年の家計が読みにくくなります。継続して依頼が来る関係をいくつか持っている人ほど、保険料の積み立てを計画しやすい。金額の大きさよりも、来月も同じ依頼がある状態のほうが、この制度とは相性が良くなります。

そして手取りの話です。仲介が何段も入る仕事の受け方では、依頼側が払った金額と働き手が受け取る金額のあいだに大きな差が生まれます。中間の手数料が乗らない直接の取引なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受け取る側は同じ仕事でも手取りが厚くなります。手数料0%という条件が意味するのは、金額の大小ではなく、この双方が損をしない構造のことです。

独立を考えている人が先に決めておくこと

国民健康保険に移る前提で独立を考えるなら、次の3つを先に決めておくと後が楽になります。

ひとつめは、初年度の保険料の原資を確保することです。退職前の給与で計算された保険料が独立1年目に届きます。所得の1割強は翌年の保険料のために残す、という感覚を持っておいてください。

ふたつめは、所得補償の手段を決めることです。民間の保険で埋めるのか、貯蓄で持つのか。どちらでもよいのですが、決めないまま始めるのが最も危険です。保険料を経費にできるかという論点は誤解が多いので、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で仕訳の扱いを確かめておくと、申告で困りません。

みっつめは、収入の見通しを立てることです。どの職種でどれだけ稼げるのかが分からないと、保険料の試算もできません。継続的な依頼が生まれやすい仕事の中身はAIコンサル・業務活用支援のお仕事アプリケーション開発のお仕事で確かめられます。報酬の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、職種ごとの相場を把握できます。健保と国保の違いは、最終的に「手取りからいくら引かれるか」の話に行き着きます。引かれる額を知ったうえで、いくら稼ぐ必要があるかを逆算するのが、いちばん確実な順序です。

よくある質問

Q. 健保と国保では、どちらの保険料が高くなりますか?

一概には言えません。健康保険は給与の一定割合を会社と折半するのに対し、国民健康保険は世帯の前年所得と加入人数で決まり全額自己負担です。扶養家族が多い人は健康保険のほうが有利になりやすく、単身で前年の所得が低い人は国民健康保険が安くなることもあります。窓口で試算して比べてください。

Q. 国民健康保険には扶養の仕組みがないと聞きましたが本当ですか?

本当です。国民健康保険では世帯の加入者全員が被保険者となり、1人ずつに均等割がかかります。名古屋市の令和8年度では40歳以上の人1人あたり年間84,358円が均等割の合計です。ただし18歳未満の子どもについては、令和8年度に新設された子ども分の均等割が全額減額される扱いになっています。

Q. 国民健康保険でも傷病手当金はもらえますか?

国民健康保険では傷病手当金は任意給付の扱いで、一般の被保険者向けに実施している市区町村はほとんどありません。健康保険なら支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2が、通算1年6か月まで支給されます。国保に移る場合は民間の保険や貯蓄で補う設計が必要です。

Q. 退職後の健康保険の手続きに期限はありますか?

あります。国民健康保険への加入は退職日の翌日から14日以内、勤務先の健康保険の任意継続は退職日の翌日から20日以内が申請期限です。任意継続は期限を過ぎると選べなくなります。国民健康保険は届け出が遅れても退職日の翌日にさかのぼって加入となるため、早めに手続きするほうが有利です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月24日最終更新:2026年9月23日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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