完全在宅で働ける正社員の探し方

前田 壮一
前田 壮一
完全在宅で働ける正社員の探し方

この記事のポイント

  • ✓完全在宅正社員の求人は探し方で見つかる数が変わります
  • ✓フルリモートと在宅勤務可の違い
  • ✓求人票で確かめる就業場所の変更の範囲

完全在宅正社員という働き方を探している人からは、ほぼ同じ相談が届きます。求人サイトで「フルリモート」と書かれた募集に応募したのに、面接で「週2日は出社です」と言われた。応募先が見つからないのではなく、見つかったと思ったものが違っていた。まず、安心してください。完全在宅で働ける正社員の枠は、たしかに存在します。ただし数は限られていて、求人票の言葉づかいがそろっていないために、探し方を知らないと目の前を通り過ぎてしまいます。この記事では、完全在宅正社員の求人がいま実際にどれくらいあるのか、求人票のどこを読めば出社の有無が分かるのか、どの職種に枠が残っているのか、そして未経験から届く順路はどう引けばよいのかを、公的な調査の数字をもとに順に整理します。

完全在宅の正社員はいまどれくらいあるのか

最初に市場の現在地を押さえておきます。テレワークは、コロナ禍のピークを過ぎてから静かに縮んでいます。総務省の令和6年通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業の割合は47.3%で、前年に続いて減少しました。企業の半分弱は何らかの形でテレワークを制度として持っている、という読み方になります。

ただしこの数字は「制度がある企業の割合」であって、「働く人のうち在宅で働いている人の割合」ではありません。働く人の側から見た数字は、国土交通省が毎年出しているテレワーク人口実態調査にあります。令和6年度調査では、雇用されて働く人のうちテレワークをしたことがある人の割合は全国で24.6%、前年度から0.2ポイントの減少でした。国土交通省はこれを「下げ止まり傾向」と評価しています。

今年度調査における雇用型テレワーカーの割合は、昨年度調査から0.2ポイント減少し、24.6%となりました。 出典: 国土交通省

同じ調査で、首都圏に限れば約4割の水準が保たれていること、テレワークをしている人の1週間あたりの平均日数が2.1日であることも示されています。ここが重要な点です。平均2.1日ということは、テレワークをしている人の多くが出社と在宅を組み合わせたハイブリッド型で働いているということになります。つまり「テレワーク可の会社」は4社に1社の働き手が経験していても、「出社が一度もない完全在宅」はそのさらに一部にとどまります。完全在宅正社員が見つかりにくいと感じるのは、探し方が悪いからではなく、実際に母数が小さいからです。

この事実を押さえておく意味は2つあります。1つは、見つからないときに自分を責めなくてよいということ。もう1つは、母数が小さい以上、探す範囲を広げるより「絞り込みの精度を上げる」ほうが効くということです。

フルリモートと在宅勤務可は同じ意味ではない

求人票の言葉は、法律で統一されているわけではありません。同じ「リモート」という語でも、会社によって指す範囲がまるで違います。応募前にこの違いを見分けられるかどうかで、面接まで進んでから落胆する回数が変わります。よく使われる表現を整理すると、おおむね次の4つに分かれます。

求人票の表現 実際に想定されていること
完全在宅/フルリモート 原則として出社なし。ただし入社研修や年数回の全社会議だけ出社という条件付きが多い
フルリモート可 一定の条件(試用期間の終了、評価、職種、居住地)を満たした人だけが選べる
在宅勤務可/リモート併用 週の一部が在宅。残りは出社。日数は上司や部署の裁量で決まることが多い
在宅勤務制度あり 制度として存在するだけ。実際に使っている人が少ない場合がある

やっかいなのは2段目の「フルリモート可」です。求人票の見出しには「フルリモート」と大きく出ていても、本文の労働条件欄を読むと「入社後6か月は出社、その後本人の希望と業務状況により在宅勤務可」と書かれていることがあります。表現としては嘘ではありませんが、完全在宅を前提に生活を組む人にとっては別物です。

もうひとつ紛らわしいのが「リモートワーク中心」「原則在宅」という書き方です。原則という語が入っている場合、例外の運用が会社の裁量に委ねられていると読むのが安全です。逆に、完全在宅の実態がある会社の求人票は、居住地を問わないこと、出社が必要な回数、通信費や光熱費の扱いまで具体的に書いていることが多くなります。曖昧さの少ない求人票ほど、運用が固まっている証拠だと考えてよいでしょう。

求人票のどこを読むと出社の有無が分かるか

言葉の印象で判断せずに済む、確実な読み方があります。2024年4月から、労働条件の明示ルールが変わりました。すべての労働契約を結ぶとき、雇い入れ直後の就業場所と業務内容に加えて、その「変更の範囲」を書面で示すことが必要になっています。変更の範囲とは、契約期間中にその人の勤務場所や仕事がどこまで動きうるか、という幅のことです。

この改正は労働条件通知書に対するルールなので、求人票の段階で必ず書いてあるわけではありません。しかし内定後に受け取る労働条件通知書には必ず書かれます。就業場所の変更の範囲に「自宅」とだけ書かれていれば完全在宅、「本社および自宅」「会社の定める事業所」と書かれていれば出社を求められる可能性がある、という読み分けができます。ここを確認しないまま入社を決めるのは危険です。詳しい運用は厚生労働省のサイトで確認できます。

求人票の段階でも、確かめられる項目はあります。順に挙げます。

  • 勤務地欄の書き方。「在宅(自宅)」とだけ書かれているか、都道府県名や本社住所が併記されているか
  • 募集対象の居住地に制限があるか。「全国どこでも可」なら完全在宅の運用が固まっている可能性が高い
  • 通勤手当の扱い。完全在宅の会社は通勤手当を実費精算にしているか、そもそも支給していないことが多い
  • 在宅勤務手当や通信費補助の有無。金額まで書いてある会社は、在宅を制度として設計し終えている
  • 試用期間中の勤務形態。ここが空欄なら面接で必ず聞く

応募前の段階でこの5点をチェックするだけで、面接で条件が食い違う確率はかなり下がります。書かれていない項目は、面接の逆質問で埋めていくのが確実です。

完全在宅の枠が残りやすい職種

完全在宅が成立するかどうかは、意欲や交渉力より、仕事の性質でほぼ決まります。総務省の同じ調査では、テレワークを導入しておらず導入予定もない企業に理由を聞いたところ、「テレワークに適した仕事がないから」が77.2%で最も高く、次いで「業務の進行が難しいから」が33.6%でした。職種のえり好みではなく、職種選びそのものが完全在宅への最短距離になります。

成果物がデータで完結し、進捗がテキストで共有でき、顧客との接点をオンラインに寄せられる仕事ほど完全在宅と相性が良くなります。具体的には次のような職種です。

  • ソフトウェア開発、Webアプリケーション開発、保守運用。設計から納品まで画面の中で完結する
  • データ分析、機械学習まわりの実装。扱うデータの持ち出し制限があるため、環境が整っている会社に限られる
  • Webライティング、編集、校正。取材が入る案件はオンライン取材に置き換えられるかどうかで分かれる
  • カスタマーサポート、テクニカルサポート。電話とチャットの比率で在宅可否が変わる
  • 経理、労務、法務などのバックオフィス。電子化が進んだ会社ほど在宅で回る
  • Webデザイン、UI設計、動画編集。素材の受け渡しがクラウドで完結する

逆に、物や人に触れる工程が一度でも挟まる仕事は完全在宅にしづらくなります。現物の検品、来客対応、紙での押印、物理的なサーバー作業などがそれにあたります。募集の中身を見るときは、その職種の1日の流れの中に「画面の外に出る作業」がいくつあるかを数えてみてください。ゼロに近いほど、完全在宅の運用が続く可能性が高くなります。仕事の中身から入って職種を選びたいなら、アプリケーション開発のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、業務の内容と求められる技能を職種単位で整理した資料に目を通しておくと、求人票の用語が読み取りやすくなります。

求人票の例から読み取れること

実際の募集文には、その会社が在宅をどう設計しているかが出ます。求人検索サービスに掲載されている完全在宅の募集には、たとえば次のような書き方があります。

【この仕事のやりがい】フルリモート 月給24万~ 年間休日125日 未経験歓迎...完全在宅ワークなので移動時間なし 具体的な仕事内容は、・データ入力 ・データ集計 ・資料作成 ・電話対応 など 出典: 求人ボックス

この一文から読み取れることが3つあります。1つ目は、業務が「データ入力、データ集計、資料作成、電話対応」と具体的に並べられていること。作業単位まで書き下せている募集は、在宅でどう回すかを考えた形跡があります。2つ目は、電話対応が入っていること。在宅で電話を受けるにはクラウド型の電話システムが要るので、その仕組みがある会社だと推測できます。3つ目は、未経験歓迎と月給が同時に示されていること。未経験歓迎の完全在宅求人は、入社後の研修設計が勝負になります。研修がオンラインで完結するのか、最初の数週間だけ出社なのかは、応募前に確認したい点です。

募集文が抽象的な会社ほど、入社後の運用が固まっていない傾向があります。「柔軟な働き方」「自由な社風」という語だけで在宅の中身が書かれていない場合、実態は上司ごとの判断になっていることが少なくありません。

年収は在宅で下がるのか

完全在宅を選ぶと年収が下がるのではないか、という不安はよく聞きます。結論から言えば、在宅だから下がるのではなく、職種と等級で決まります。ただし、金額の見え方が変わる要素が3つあります。

1つ目は通勤手当です。完全在宅では通勤定期代が支給されなくなるか、出社した日の実費精算に切り替わります。月2万円前後の定期代が前提だった人は、額面が同じでも手取りの感覚が変わります。2つ目は在宅勤務手当です。通信費と光熱費の補助として月3,000円から5,000円程度を支給する会社があります。金額は小さいものの、支給の有無は会社の本気度を測る材料になります。3つ目は地域別の賃金設定です。居住地を問わない会社の中には、勤務地に関係なく全社一律の賃金テーブルを使うところと、居住地域に応じて調整するところがあります。地方に住んで首都圏の賃金で働けるかどうかは、ここで決まります。

見落とされやすいのが、社会保険と税金の扱いです。正社員である以上、完全在宅でも健康保険と厚生年金は会社と折半で負担します。住民税は住んでいる自治体に納めるので、勤務先が都市部にあっても、税額は自分の住む市区町村の基準で決まります。地方に移り住んで首都圏の会社に勤める場合、賃金が据え置きなら生活費と住民税の差がそのまま手元に残る形になります。逆に、会社が居住地に応じて賃金を調整する制度を持っている場合は、移住によって年収が下がることもあります。入社前に、勤務地変更の届出が必要かどうか、賃金テーブルが居住地で変わるかどうかを必ず確認してください。

自分の職種の相場を先に知っておくと、提示された金額が妥当かどうかを落ち着いて判断できます。たとえば開発職であればソフトウェア作成者の年収・単価相場、文章を扱う職種であれば著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように、職種ごとの分布を確認できる資料に当たっておくと、交渉の土台ができます。相場より低い提示を受けたときに、その差が在宅という条件の対価なのか、単に等級が低いだけなのかを切り分けられるようになります。

未経験から完全在宅の正社員に届く順路

未経験から完全在宅の正社員をいきなり狙うのは、母数の小ささを考えると分の悪い戦い方です。ただし、遠回りに見える順路のほうが結果的に早く着くことがあります。よく機能しているのは次の3つです。

1つ目は、いまの会社で在宅の実績を作ってから動く方法です。現職でテレワークを週2日でも使っておけば、職務経歴書に「在宅で成果を出した経験」を書けます。完全在宅の採用でいちばん警戒されるのは、目の届かない場所で自走できるかという点なので、この一行の有無は効きます。

2つ目は、副業で在宅の実務経験を作る方法です。業務委託で小さな案件を受け、納期を守って納品した記録を残していきます。仲介を挟まない直接取引のサービスを使うと、報酬から差し引かれるものが少なく、同じ時間で残る手取りが厚くなります。手数料0%で受発注が完結する仕組みがあるのは、この点で意味があります。実績として提示できるのは金額ではなく、何を、どの期間で、どう納めたかという中身です。

3つ目は、出社ありの会社に入って職種を変えてから在宅に移る方法です。完全在宅が成立しやすい職種に移ること自体が、完全在宅への近道になります。営業職から内勤の分析職へ、事務職からWeb制作へ、といった社内異動は、未経験採用より通りやすいことがあります。

どの順路を選ぶにしても、提出する書類の精度が入口になります。在宅での成果を言語化できていない書類は、対面の職場より不利に働きます。書き方の基本は職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】にまとまっているので、応募前に一度整えておくことを勧めます。

資格とスキルの証明をどう組み立てるか

完全在宅の選考では、対面の面接で伝わる「人柄」の情報量が減ります。その分、客観的に確かめられる証拠の比重が上がります。証拠は大きく3種類に分けられます。

1つ目は成果物です。開発職ならコード、デザイン職なら制作物、ライティング職なら署名記事。守秘義務で出せないものは、同等の内容を自作して置き換えます。2つ目は運用記録です。何人のチームで、どんなツールを使い、どういう頻度で報告していたか。在宅で働く人を採る側は、この運用のしかたを知りたがります。3つ目が資格です。

資格は万能ではありませんが、未経験や職種転換のときは「基準を満たしていることを短時間で示す手段」として役に立ちます。ネットワークやインフラの領域を目指すならCCNA(シスコ技術者認定)のように、出題範囲が公開されていて実務との対応が取りやすい認定が使えます。事務職やサポート職で応募する場合は、ビジネス文書検定のように文章で正確に伝える力を示せるものが、在宅前提の職場では評価されやすくなります。在宅の仕事は、口頭で補えない分だけ書く力がそのまま仕事の質になるためです。

ただし資格は、取得そのものより「取ったあとに何をしたか」のほうが見られます。学んだ内容を使って小さくても動くものを作り、その過程を記録に残す。ここまでやって初めて、書類の一行が面接の話題になります。

面接で必ず確かめておく5つのこと

完全在宅の求人で失敗が起きるのは、ほとんどが確認不足によるものです。逆質問の時間に必ず聞いておきたい項目を挙げます。

  • 出社が必要になる場面と頻度。入社研修、全社会議、顧客訪問、機材の受け取りなど、想定される場面を具体的に挙げてもらう
  • 勤務時間の管理方法。コアタイムの有無、勤怠システム、業務中の在席確認の仕組み
  • 機材と通信環境の負担区分。パソコン、モニター、椅子、通信回線のうち、どこまでを会社が用意するか
  • 評価のしかた。在宅で成果をどう測るか。プロセスを見る仕組みがあるか、成果物だけで判断するか
  • 制度が変わる可能性。過去に在宅の方針が変わったことがあるか、今後の方針はどうか

最後の項目は言いにくいかもしれませんが、いちばん大事です。大手企業を中心に、いったん広げた在宅勤務を縮める動きは続いています。国土交通省の調査が示す減少傾向は、その積み重ねの結果です。「いまは完全在宅ですが、方針が変わる可能性はありますか」と率直に聞いて、言葉を濁されるか、明確な考えが返ってくるかで、その会社の姿勢が分かります。

聞き方にもこつがあります。条件を確かめる質問は、疑っている印象を与えないよう「入社後の働き方を具体的に想像しておきたいので」と前置きしてから尋ねます。答えが曖昧だった項目は、内定承諾の前に書面で確認します。口頭の説明と労働条件通知書の記載が食い違っていた場合、後で効力を持つのは書面のほうです。特に就業場所の変更の範囲は、入社後に出社を求められるかどうかを左右する項目なので、ここだけは必ず文字で確認してください。

リスクは正直に見ておいたほうがよいものです。完全在宅で採用されても、会社の方針転換で出社に戻る可能性はゼロではありません。だからこそ、住む場所や家族の予定を在宅前提で固めきってしまう前に、方針が変わった場合の選択肢を1つ持っておくと安心できます。

完全在宅で働き続けるための生活面の設計

採用されたあとの話も、探し方と同じくらい重要です。完全在宅は通勤時間がゼロになる代わりに、仕事と生活の境目が消えます。長く続けている人に共通する工夫が3つあります。

1つ目は、時間ではなく場所で区切ることです。作業する場所を1か所に決め、そこを離れたら仕事をしないと決めている人ほど、勤務時間が伸びにくくなります。2つ目は、朝のうちに外に出ることです。通勤がなくなると1日の活動量が落ち、夕方の集中力に響きます。3つ目は、雑談の代わりを意図的に作ることです。オンラインで短い会話の機会を持たない人は、半年ほどで孤立を感じやすくなります。

費用の面も見落とされがちです。通信費、電気代、机や椅子、空調。会社の補助がなければ自己負担になります。在宅勤務手当がない求人と、月5,000円の手当がある求人では、年間で6万円の差になります。応募先を比べるときは、額面の月給だけでなく、こうした負担の差も並べて比べてください。

家族との関係も設計の対象です。家にいる時間が長くなると、家族からは「手が空いている人」に見えます。勤務時間を家族と共有しておくこと、仕事中は声をかけない時間帯を決めておくこと。この2つを最初に決めておくだけで、余計な摩擦が減ります。

完全在宅の求人を効率よく探す手順

母数が小さい求人を探すときは、量を増やすより経路を分けるほうが効きます。完全在宅の募集にたどり着いている人は、だいたい次の4つの経路を並行して使っています。

1つ目は、求人検索サービスでの絞り込みです。「完全在宅」「フルリモート」「在宅勤務」「リモートワーク」と、表記のゆれをすべて別々に検索します。検索条件を1つに固定すると、同じ意味の募集を丸ごと取りこぼします。あわせて勤務地を「全国」や「在宅」に設定できるサービスでは、その条件も併用します。新着の通知をメールで受け取る設定にしておくと、掲載から日が浅いうちに応募できます。完全在宅の枠は応募が集中しやすいため、早さがそのまま通過率に響きます。

2つ目は、会社の採用ページを直接見に行く方法です。完全在宅を前提に組織を作っている会社は、求人媒体に出す前に自社サイトへ掲載することがあります。すでに在宅の制度が整っている会社を数社リストにして、月に一度まとめて確認する習慣を作ると、媒体では見つからない募集に当たります。

3つ目は、人づての紹介です。在宅で働いている知人に、自分が探していることを具体的に伝えておきます。職種と希望条件を一文で言えるようにしておくと、相手が思い出したときに話が回ってきます。

4つ目は、業務委託の入口から入る方法です。最初は正社員ではなく業務委託で関わり、実績を作ったうえで正社員の枠に切り替わる例は珍しくありません。特に人手が足りていない領域ほど、この経路が開きやすくなります。どの領域に需要が集まっているかを把握しておきたいなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、依頼の中身と必要な技能が具体的に書かれた資料を読んでおくと、応募先の見当がつきやすくなります。

応募の前にそろえておく環境と書類

完全在宅の選考では、働く環境そのものが評価の対象になります。面接で「自宅の作業環境を教えてください」と聞かれることは珍しくありません。準備しておきたいものを整理します。

まず通信回線です。オンライン会議が業務の中心になるため、上りと下りの速度が安定しているかどうかを事前に測っておきます。集合住宅の共用回線で夜間に遅くなる場合は、面接時に「日中は安定している」と具体的に説明できる材料を持っておくと安心です。次に作業場所です。背後に生活空間が映り込まない場所を1か所確保しておくと、会議のたびに背景を気にせずに済みます。音の環境も見られます。家族の生活音が入る時間帯があるなら、その時間を避けて会議を設定できるかどうかを説明できるようにしておきます。

書類の準備も、対面前提の転職とは力点が変わります。職務経歴書には、担当した業務の一覧だけでなく、どんな手段で誰とやり取りしていたかを書き添えます。使っていたチャットツール、タスク管理ツール、会議の頻度。これらは在宅で働くときの再現性を示す材料になります。文章で状況を過不足なく伝える力も、書類の書きぶりから判断されます。読み手が質問したくなる箇所を残さない書き方ができているかどうかは、そのまま在宅での報告の質と重なって見られます。

面接の練習も、画面越しを前提にしておきます。対面より表情と声の情報が減るので、結論から話す、一文を短くする、相づちを言葉で返す、といった調整が要ります。当日になって慣れないツールに戸惑わないよう、使われるオンライン会議ツールは事前に一度試しておきます。

完全在宅で起きやすいつまずきと対処

入社後につまずく場面は、ある程度決まっています。あらかじめ知っておけば避けられるものがほとんどです。

最も多いのが、最初の1か月で質問ができなくなる状態です。出社していれば隣の人に一言で聞けることが、在宅では文章にして送る手間に変わります。その手間を惜しんでいるうちに、聞くタイミングを逃して手が止まります。対処は単純で、入社直後に「質問を投げてよい場所と、返事を待ってよい時間の目安」を上司と決めてしまうことです。ここが決まっていれば、遠慮せずに聞けます。

次に多いのが、成果が伝わっていないと感じる状態です。在宅では作業している様子が見えないので、終わった仕事しか相手に届きません。途中経過を短く共有する習慣がないと、実際には働いていても「何をしているか分からない人」になります。日報や週報が制度としてなくても、自分から週に一度、着手したことと終わったことを3行でまとめて送る。それだけで評価の見え方が変わります。

3つ目は、働きすぎです。通勤がないぶん始業が早まり、終業が遅くなります。残業の申請がしづらい雰囲気があると、記録に残らない労働が積み上がります。勤務時間の記録は自分のためにも残し、所定の時間を超えたら正規の手続きで申請してください。会社の勤怠システムに乗らない働き方が常態化している職場は、在宅かどうかにかかわらず注意が必要です。

4つ目は、キャリアの見通しが立てにくくなることです。在宅では社内の人間関係が狭くなり、他部署の仕事が見えにくくなります。半年に一度、自分が次に何をしたいかを上司に伝える機会を自分から作ると、異動や役割変更の話が届くようになります。待っているだけでは、情報は届きません。

市場を20年見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、完全在宅で長く働き続けている人には、技能の高さとは別の共通点があります。それは、頼む側の不安を先回りして消していることです。

在宅の働き手に仕事を任せる側がいちばん不安に思うのは、成果の質ではありません。「いま何が起きているか分からない」という状態です。だから、長く続く人ほど、進捗の共有をこまめにしています。指示された報告のタイミング以外にも、詰まったこと、方針を変えたこと、想定より早く終わりそうなことを短く伝える。この習慣がある人は、出社する人より状況が見えやすいとさえ言われます。完全在宅の選考で「自走できるか」を問われたとき、本当に見られているのはこの部分です。

もうひとつ、運営者として見てきた限りで言えることがあります。在宅で働く人の満足度を決めるのは、額面の報酬ではなく、手元にどれだけ残るかと、次の仕事がどれくらい見通せるかの2点です。仲介手数料が重なる経路で仕事を受けると、同じ働きでも残る金額が薄くなり、その薄さを埋めるために件数を増やし、結果として在宅の利点だったはずの時間の自由が消えていきます。逆に、間に引かれるものが少ない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手取りが厚くなります。この双方が得をする構造にたどり着いた人は、無理な件数を抱えずに済み、1件あたりに時間をかけられるので、結果として関係が長く続きます。

完全在宅正社員を探している人にとって、この観察は遠回りに見えるかもしれません。しかし、正社員の完全在宅枠が限られている以上、業務委託で在宅の実務を積みながら機会を待つ人は多く、その期間をどう設計するかが最終的な着地点を左右します。焦って数を打つより、1つの取引先と信頼を作るほうが、職務経歴書に書ける中身は濃くなります。完全在宅の正社員採用で問われるのは、在宅で働いた年数ではなく、在宅で信頼を積み上げた記録のほうです。そして、その記録は待っていても増えません。今週から1つ、手を動かして残せるものを作ることが、いちばん確実な近道になります。

よくある質問

Q. 完全在宅の正社員求人はどのくらいの割合で存在しますか?

総務省の令和6年通信利用動向調査ではテレワーク導入企業が47.3%、国土交通省の令和6年度調査では雇用されて働く人のテレワーカー割合が24.6%です。ただし1週間あたりの平均テレワーク日数は2.1日で、多くは出社と併用するハイブリッド型です。出社が一切ない完全在宅はさらに限られると考えてください。

Q. 求人票で「フルリモート可」と書かれていたら完全在宅ですか?

「可」が付く場合は条件付きのことが多く、試用期間の終了や評価、職種や居住地の制限を満たした人だけが選べる運用が一般的です。内定後に受け取る労働条件通知書の「就業場所の変更の範囲」を確認すると確実です。自宅だけが記載されていれば完全在宅、事業所名が併記されていれば出社を求められる可能性があります。

Q. 完全在宅にすると年収は下がりますか?

在宅であること自体が賃金を下げるわけではなく、職種と等級で決まります。ただし通勤手当が支給されなくなること、在宅勤務手当の有無、居住地域に応じて賃金を調整する会社があることの3点で手取りの感覚は変わります。応募前に職種ごとの相場を調べ、提示額が条件の対価なのか等級の差なのかを切り分けてください。

Q. 未経験から完全在宅の正社員を目指すには何から始めればよいですか?

いきなり狙うより、現職でテレワークの実績を作る、業務委託で在宅の納品実績を積む、出社ありの会社で在宅に向く職種へ移るという3つの順路が現実的です。いずれの場合も、何を、どの期間で、どう納めたかを書類に書けるようにしておくことが選考で効きます。金額ではなく仕事の中身を記録してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月4日最終更新:2026年9月23日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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