副業の確定申告のやり方|会社員が知るべき手順と節税テクニック

織田 莉子
織田 莉子
副業の確定申告のやり方|会社員が知るべき手順と節税テクニック

この記事のポイント

  • 会社員が副業で確定申告を行う手順を解説
  • 20万円ルールの正しい理解
  • 副業が会社にバレない方法

毎年2月になると、DMやLINEで同じ質問が飛んでくる。「副業っていくらから申告するの?」「会社にバレたくないんだけど、どうしたらいい?」

会計事務所で5年やってきた身としては、確定申告は「正しく理解すれば難しくない。知らないと損する」の典型だと思っています。

私が事務所で担当していたリクさん(仮名・32歳)のケース。クラウドソーシングで副業の年収80万円。ちゃんと稼いでいたのに、経費を一切計上していなかった。パソコン代15万円、通信費3.6万円(月3,000円×12ヶ月の按分)、書籍代2万円。合計20.6万円の経費を丸ごとスルーしていたんです。所得税率20%で計算すると、約4万円余分に税金を払っていた。レシートを捨てなければ防げた損失です。

「なんか怖いからとりあえず全額で申告した」と言っていたリクさんの表情、今でも覚えています。怖いのは無知のほうなんですよね。

確定申告が必要になるライン

会社員の副業で確定申告が必要になるのは、副業の所得(収入から経費を引いた金額)が年間20万円を超えたとき。

ここで多くの人が混同するのが「収入」と「所得」の違いです。

用語 意味
収入 もらったお金の総額 50万円
経費 仕事に使ったお金 15万円
所得 収入 − 経費 35万円

収入が50万円でも経費が35万円なら所得は15万円。この場合、所得税の確定申告は不要です(ただし住民税の申告は必要。ここ忘れがち)。

「20万円以下なら申告不要」の落とし穴

この20万円ルール、所得税の話だけです。住民税にはこの免除がない。副業の所得が1円以上あれば、住民税の申告は必要です。

お住まいの市区町村に「住民税申告書」を出す必要がありますが、正直これが面倒。確定申告をすれば住民税も自動で処理されるので、20万円以下でも確定申告してしまうのが一番ラクです。私のまわりの副業会社員も、ほとんどそうしています。

「払わなくていい税金を払っている」。これ、本当に多い。確定申告は「取られる」手続きじゃなくて、「取り戻す」手続きでもあるんです。

副業が会社にバレないようにする方法

バレるルートの大半は「住民税の増加」。会社が従業員の住民税を特別徴収(給与天引き)で処理する際に、副業分の住民税が上乗せされて「あれ、この人収入多いな?」と気づかれるパターンです。

普通徴収にチェックを入れる

確定申告書の第二表に「住民税の徴収方法」を選ぶ欄があります。ここで「自分で納付(普通徴収)」にチェック。副業分の住民税は自宅に届く納付書で払うことになり、会社には通知されません。

この方のやり方がまさに王道です。freee(フリー株式会社が運営、東証グロース上場のクラウド会計ソフト)で仕訳を自動化して、マイナカードで電子申請すれば、申告作業は5分程度で終わります。

ただし注意点として、自治体によっては普通徴収を認めないケースもあります。事前に市区町村の窓口に確認しておくと安心です。

雑所得と事業所得、どっちで申告する?

ここの判断を間違えると、節税で数十万円の差が出ることもあるので要注意。

項目 雑所得 事業所得
青色申告特別控除 使えない 最大65万円
赤字の繰越 できない 3年間可能
損益通算 できない 給与所得と通算可能
帳簿義務 なし(収支内訳書は必要) 複式簿記(青色の場合)

事業所得として認められれば65万円の控除は大きい。2022年の国税庁通達で基準が明確化されて、副業であっても以下を満たせば事業所得として申告できます。

  • 帳簿を作成・保存している
  • 反復継続して行っている
  • 社会通念上、事業と認められる規模

年間収入300万円超なら認められやすい。それ以下でも帳簿をきちんとつけていれば可能ですが、税務署から指摘されるリスクはゼロではありません。

判断を誤ったケース

知人のアオイさん(仮名・27歳)の話。副業の年間収入50万円で帳簿はつけておらず、レシートも捨てていた。なのに「事業所得」で申告して65万円の青色申告特別控除を適用した。翌年の税務調査で「雑所得」に修正され、過少申告加算税まで課されてしまった。

NG例: 帳簿なし・レシートなしで事業所得として申告する。

OK例: freeeやマネーフォワード(マネーフォワード株式会社運営、東証プライム上場)で複式簿記の帳簿をつけ、レシートを保管。開業届と青色申告承認申請書を提出した上で「事業所得」として申告。

この「帳簿があるかないか」の差だけで、結果がまるで違ってくるんです。

確定申告の具体的な手順

ステップ1:書類を集める

  • 会社の源泉徴収票
  • 副業の収入がわかる資料(振込明細、支払調書など)
  • 経費の領収書・レシート
  • 各種控除証明書(医療費、ふるさと納税など)

確定申告の準備で最初にやるべきは源泉徴収票の確認。これがないと申告は進まない。 — 出典: 副業の確定申告で会社にバレない方法(nomad-girls.com)

ステップ2:所得を計算する

副業の「収入」から「経費」を引いて「所得」を出す。

たとえば、クラウドソーシングで年間80万円の収入。パソコン代15万円、通信費3万円、書籍代2万円の経費があれば: 所得 = 80万円 − 20万円 = 60万円

ステップ3:申告書を作成する

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で無料で作成できます。会社の源泉徴収票を入力して、副業の所得を追加するだけ。

ステップ4:提出する

e-Tax(マイナンバーカード方式)で提出するのが一番手軽。提出期限は翌年の3月15日まで。

会社員が使える節税テクニック

ふるさと納税の上限が上がる

副業で所得が増えると、ふるさと納税の控除上限も上がります。年末調整で受けていた控除に加え、確定申告でふるさと納税の寄附金控除を追加可能。

経費をきちんと計上する

パソコン、ソフトウェア、書籍、通信費、セミナー参加費。副業に使ったものは経費になります。レシートをこまめに取っておく習慣をつけるだけで年間数万円の差になる。リクさんのように4万円損する人にならないでください。

医療費控除

年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告で控除を受けられます。年末調整では処理されないので、確定申告のタイミングでまとめて申告しましょう。

副業の収入が安定してきたら

フリーランスとして独立する選択肢も見えてくるかもしれません。@SOHOの年収データベースでは、職種別のフリーランス年収の中央値を公開しています。「独立したらどの程度稼げるのか」の現実的なイメージを持っておくと、判断材料になります。

→ 職種別のフリーランス年収データを見る

副業のジャンル別・経費にできるもの一覧

「経費って具体的に何が認められるの?」という質問、本当に多いです。会計事務所時代、お客さんと一緒にレシートの山を仕分けながら「これは経費、これは家事費」と判断していた経験から、副業のジャンル別に「経費にしていいもの」を整理しておきます。

Webライター・ブロガー系

経費項目 計上の可否 注意点
パソコン代 〇(10万円未満は全額、以上は減価償却) 副業でも私用兼用なら按分が必要
通信費 〇(按分) 仕事で使う割合を合理的に説明できること
取材交通費 領収書または交通系ICの利用履歴を保存
書籍・資料費 仕事に関連すると説明できる範囲
サーバー・ドメイン代 〇(全額) ブログ運営に必須なら全額OK
カフェ代 「打ち合わせ」「執筆作業場所」など用途明記

特に按分の考え方は重要。たとえば自宅の通信費月8,000円のうち、副業に使う時間が全体の30%なら、月2,400円×12ヶ月=年28,800円を経費計上する。この「30%」の根拠を聞かれたときに答えられる材料(作業時間の記録など)を残しておくのが安全です。

エンジニア・デザイナー系

ソフトウェアのサブスク代(Adobe Creative Cloud、JetBrains、Figmaなど)、勉強会・カンファレンス参加費、技術書、GitHub Copilotなどの開発支援ツール代。これらは全額経費として計上できます。

私が担当していたエンジニア副業のソウタさん(仮名・34歳)は、年間でAdobe CC約7.2万円、技術書代8万円、AWS料金6万円、合計約21万円を経費計上していました。所得税率20%・住民税10%の30%で計算すると、年間で約6.3万円の節税。「サブスクは惰性で払いがちだけど、経費になると思えば心理的にも楽」と話していたのが印象的でした。

物販・せどり系

仕入れ代、梱包資材、発送費、Amazonや楽天への手数料、撮影用機材。在庫がある場合は「期末棚卸し」で残った在庫を経費から除外する必要があります(売れていないものを経費にはできない)。この計算ミスで税務署に指摘されるケース、年に何件か見ました。

税務調査が来るリスクと対策

副業で税務調査が来る可能性、ゼロではありません。会計事務所にいた頃、副業会社員のお客さん2件で実際に調査が入ったことがあります。

国税庁が公表しているデータを見てみましょう。

令和4事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について、実地調査の件数は63,000件、申告漏れ等の非違件数は52,000件、追徴税額は1,368億円となった。 出典: www.nta.go.jp

実地調査は数で言うと全申告者の0.1%未満なので、確率としては高くない。ただし、副業に絞ると確率が上がる傾向があります。理由は、副業者の申告ミスが構造的に多いから。

調査対象になりやすいパターン

  • 副業収入が1,000万円を超えているのに事業所得として申告していない
  • 経費の割合が収入に対して異常に高い(例: 収入100万円で経費80万円など)
  • 同業他者と比較して所得率が極端に低い
  • 連続して赤字申告している
  • 開業届を出していないのに事業所得で申告

特に注意したいのは「経費の割合」。たとえばWebライターの場合、業界平均の所得率は70〜85%程度。あなたが収入100万円で所得20万円(所得率20%)だと、税務署のシステム上「異常値」として目立ちます。

調査が来たときの対応

レシート・領収書を年度別にファイリングしておく。クラウド会計ソフトの仕訳データを最低7年間保存する(青色申告の場合)。これだけでも十分な備えになります。

私が担当した副業会社員のミナトさん(仮名・39歳)は、調査当日に紙の領収書をA4ファイル3冊分用意して提示。「ここまで揃っているなら問題なし」と1日で終わりました。逆に、レシートを捨てていた別のお客さんは、調査が1週間続いて追徴課税28万円を支払うことに。差は「記録を残しているか」だけです。

副業の確定申告でよくある勘違い3つ

最後に、現場でよく見かける勘違いを3つだけ紹介します。これを知っているだけで、来年の申告がぐっと楽になるはずです。

勘違い1: 「源泉徴収されているから申告不要」

クラウドソーシングサイトや業務委託先で、報酬から10.21%の源泉所得税が引かれているケース。「もう税金は払ったから申告いらないよね?」と思いがちですが、これは前払いに過ぎません。

確定申告で正しい税額を計算し直すと、源泉徴収された金額のほうが多いケースがほとんど。つまり、申告すれば還付を受けられる可能性が高いんです。リクさんのケースで言えば、源泉徴収された約8.2万円のうち、適正な税額を超えた分が戻ってくる計算でした。

勘違い2: 「ふるさと納税のワンストップ特例が使える」

会社員でふるさと納税のワンストップ特例を使っている人、要注意です。確定申告をすると、ワンストップ特例の効果は無効になります。ふるさと納税分も含めて、確定申告書に寄附金控除として記載し直す必要があります。

これを忘れて「ふるさと納税の控除が反映されていない!」と税務署に駆け込む人、毎年数人見ます。ワンストップ特例の申請をしていても、確定申告に切り替わるので忘れずに記載しましょう。

勘違い3: 「赤字なら申告しなくていい」

副業が赤字(経費>収入)の場合、所得がマイナスなので所得税は発生しない。だから申告不要、と思いがちですが、事業所得として申告する場合は赤字でも申告すべきです。

なぜなら、給与所得との損益通算ができるから。給与所得500万円・副業赤字50万円なら、合算した課税所得は450万円に下がる。所得税率20%なら、約10万円の還付になります。

ただし、雑所得では損益通算できないので注意。事業所得として認められる規模・形態であることが前提です。「事業所得 vs 雑所得」の判断は前述の表を参考に、慎重に。

よくある質問

Q. 副業が会社に絶対バレない方法はありますか?

「絶対にバレない」と保証する方法はありません。しかし、住民税を普通徴収にし、SNSで副業を公開せず、同僚に話さなければ、バレるリスクは大幅に低減できます。最もバレやすいのは住民税の経路と、人づてに広まるパターンです。

Q. 副業の所得が20万円以下でも住民税の申告は本当に必要ですか?

はい、必要です。所得税の「20万円ルール」は所得税の確定申告のみに適用され、住民税には適用されません。副業の所得がいくらであっても、市区町村への住民税の申告は必要です。申告しないと、後から追加徴税されるリスクがあります。

Q. 副業の確定申告をしないとどうなりますか?

税務署に把握された場合、延滞税(年利7.3〜14.6%)や無申告加算税(15〜20%)がかかります。クラウドソーシングの報酬は支払調書を通じて税務署に把握されているため、「申告しなくてもバレない」ということはありません。

Q. 副業を事業所得にするための条件は?

2022年の通達改正により、年間収入300万円以下の副業は原則として雑所得とされています。ただし、帳簿を適切に作成・保存していれば事業所得として認められる可能性があります。税理士に相談することをおすすめします。税金全般についてはフリーランスの税金完全ガイドもご覧ください。

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織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

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