SEO記事作成の実績の見せ方|出せない仕事をどう伝えるか


この記事のポイント
- ✓SEO記事作成の実績の見せ方を
- ✓記名なし案件や秘密保持契約で公開できない仕事も含めて解説します
- ✓URLを出さずに力量を示す書式
SEO記事作成の実績の見せ方でつまずく人は、たいてい同じ壁に当たっています。書いた記事の大半が記名なしで、クライアント名も記事URLも外に出せない。手元には自信のある仕事が積み上がっているのに、応募フォームの実績欄に書けることが何もない。これ、知らない人が本当に多いんですが、公開できない仕事でも伝え方の型さえ持っていれば、発注者が知りたいことはほぼ全部渡せます。この記事では、契約上どこまで話してよいかの線引きから、URLを出さずに力量を示す具体的な書式、応募媒体ごとの使い分けまで、実務の手順として順番に整理します。
記事の実績が「出せない」のは例外ではなく標準
まず前提を揃えます。SEO記事作成の仕事において、書いた記事を実績として公開できないケースは、例外的な事故ではありません。むしろ標準的な状態です。ここを誤解したまま「自分だけ運が悪い」と思い込むと、対策の方向が丸ごとずれます。
記名なしの受注が主流になっている構造的な理由
企業がオウンドメディアや自社ブログに記事を載せるとき、記事の署名はたいてい社内の編集責任者や監修者、あるいは企業名そのものになります。外部ライターが書いたことを表に出さない運用が一般的です。理由は単純で、企業側にとって記事はコンテンツ資産であり、誰が書いたかよりも「この会社が発信した情報である」という体裁のほうが重要だからです。
さらに、SEO記事の場合は検索評価の観点も絡みます。企業は自社ドメインで発信する情報の一貫性を保ちたい。書き手が入れ替わるたびに署名が変わると、読者から見た発信主体がぶれます。だから記名なし、あるいは編集部名義で統一する。これは外注ライターを軽く見ているからではなく、メディア運営の設計としてそうなっているだけです。
つまり、記名なしで納品したこと自体は、あなたの評価が低いことを意味しません。ここを混同して「まだ名前を出してもらえるレベルじゃない」と自分を過小評価する人がいますが、名義の扱いは実力とは別の軸で決まっています。
秘密保持契約が実績公開に及ぼす範囲
もう一段厳しいのが、秘密保持契約が結ばれている場合です。NDA(エヌディーエー)を交わすと、案件で知り得た情報を第三者に開示できなくなります。ここで多くの人が悩むのが、「開示できない情報」の範囲がどこまでかという点です。
実務上、NDAの条項は大きく3つの層に分かれます。1つ目は業務上知った非公開情報そのもの、たとえば商品の未発表情報や社内の数値。2つ目は取引の存在自体、つまり「この会社と仕事をしている」という事実。3つ目は成果物、つまり納品した記事です。契約書によって、どこまでを秘密情報に含めるかが変わります。
先日、ある記事制作の受注者から相談を受けたケースでは、契約書に「本業務の内容および成果物」と書かれているだけで、取引の存在について触れていませんでした。つまり、記事の中身は言えないが、そのクライアントと取引していること自体は秘密にする義務が明示されていない。こういう条項の隙間は珍しくなく、確認せずに「全部だめだろう」と諦めている人が非常に多いです。
※契約書の解釈に迷う場面では、自己判断で公開せず、弁護士など専門家に確認してください。曖昧なまま出して指摘を受けると、その取引先を失うだけでなく、業界内での信用に響きます。
公開の可否は3段階で整理する
実績を扱うときは、案件ごとに次の3段階でラベルを付けておくと運用が楽になります。
第1段階は完全公開可。記事URLもクライアント名も出せる状態です。取材記事や、署名記事として掲載されたもの、あるいは発注者から明示的に許可を得たものが該当します。
第2段階は条件付き公開可。クライアント名は伏せるが、業界や記事のテーマ、担当範囲は語ってよい状態。実際にはこの層が最も厚くなります。
第3段階は完全非公開。取引の存在すら触れられない状態です。金融、医療、法務など、規制が厳しい業界や、上場前の企業案件でこの扱いになることがあります。
この3段階を案件管理表に持っておけば、応募のたびに「これは書いていいんだっけ」と迷う時間がなくなります。管理表そのものはスプレッドシート1枚で十分です。
実績を出す前に必ず踏む確認の手順
線引きを頭で理解しても、実際に確認を取る手順を持っていないと結局動けません。ここは受注後の実務として、順番を固定してしまうのが早いです。
契約書のどこを読むか
契約書を開いたら、次の項目を順に探します。秘密保持条項、成果物の権利帰属条項、そして競業避止や実績公表に関する条項です。
秘密保持条項では「秘密情報の定義」を見ます。「本契約に関して開示された一切の情報」のように広く書かれているなら、取引の存在も含まれると読むのが安全です。逆に「本件商品に関する未公開の技術情報」のように限定されていれば、範囲は狭くなります。
権利帰属条項では、著作権が発注者に譲渡されるかどうかと、著作者人格権の不行使が約束されているかを見ます。著作権が譲渡されていても、それは記事を利用する権利の話であって、「あなたが書いた事実」まで消えるわけではありません。つまり、権利譲渡と実績公開の可否は別の論点です。ここを混同して「著作権を渡したから実績にも使えない」と思い込む人がいますが、必ずしもそうではありません。
実績公表条項が明示的に入っている契約書もあります。「乙は本業務の受託の事実を第三者に公表してはならない」と書いてあれば、そこは動かせません。逆に「甲の事前の書面による承諾を得た場合はこの限りでない」と続いているなら、承諾を取りに行く道が残っています。
発注者に確認を取るときの伝え方
確認は口頭ではなく、必ずテキストで残します。メールかチャットで、後から遡れる形にしてください。これ、トラブルになったときに効きます。
依頼文は短くて構いません。次のような形が使いやすいです。
「〇〇様、いつもお世話になっております。□□です。今後の営業活動で実績をご案内する機会があり、その際の記載範囲について確認させてください。御社名と記事URLは出さず、『EC業界のオウンドメディアで、キーワード設計から執筆までを担当』という粒度での記載を想定しています。この範囲での記載が可能かどうか、ご教示いただけますと幸いです。難しい場合はその旨お知らせいただければ、記載いたしません。」
ポイントは3つあります。1つ目は、こちらから記載案を先に出すこと。相手に判断の材料を渡さずに「実績に使っていいですか」とだけ聞くと、面倒がられて保留にされます。2つ目は、断りやすい逃げ道を最後に添えること。相手が断りやすい文面のほうが、かえって返事が早く返ってきます。3つ目は、記事の中身ではなく担当範囲の話にとどめること。
確認が取れなかったときの扱い
返事が来ない、あるいは明確に断られた場合は、その案件を第3段階に置きます。ここで無理をしない判断が長期的には効きます。
ただし、完全非公開の案件でも使える情報が1つ残ります。それは「その仕事を通じて自分が何をできるようになったか」という能力の記述です。案件を特定せずに、身につけた工程や扱えるようになったツールを書くことは、秘密情報の開示には当たりません。この使い方は次の章で具体化します。
記事URLを出さずに力量を示す5つの方法
ここからが本題です。実績を「出せない」状態のまま、発注者に必要な判断材料を渡す方法を5つ挙げます。どれか1つではなく、組み合わせて使ってください。
方法1 ジャンルと担当範囲の粒度で書く
最も基本的で、最も効果が高いのがこれです。クライアント名と記事URLを外し、代わりに次の3要素で1件を記述します。
1つ目は業界とメディアの種類。「BtoBのSaaS企業のオウンドメディア」「地域密着型の工務店のコラム」といった粒度です。2つ目は検索意図の種類。「導入検討層向けの比較記事」「顕在層向けのハウツー記事」など。3つ目は担当した工程。「キーワード選定、構成案作成、執筆、初稿修正まで」のように書きます。
この3要素が揃うと、読んだ発注者は「うちの案件に近い」「この工程まで任せられる」と判断できます。逆に言えば、記事URLを見せられても、発注者はこの3つを確認しているだけです。だからURLがなくても情報量はほとんど落ちません。
書式としては次のような形になります。
「BtoB向けSaaSのオウンドメディア/導入検討層向けの機能比較記事/キーワード選定から構成案、執筆、公開後のリライト提案まで担当」
これを何件か並べるだけで、実績欄として成立します。
方法2 工程を手順書として見せる
記事そのものを出せないなら、記事を作る過程を出す手が使えます。自分がどういう手順でSEO記事を組み立てているか、その工程を文書化して提出資料に含めるやり方です。
たとえば、キーワードを受け取ってから納品までの流れを段階に分けて書きます。検索結果の上位ページを何ページ分読み、どの観点で差分を探すのか。構成案の段階で発注者と何を合意しておくのか。執筆時に一次情報をどう当たるのか。校正では何をチェックするのか。
この手順書は、記事URLよりも雄弁なことがあります。上位表示された記事を1本見せられても、それが偶然なのか再現性のある工程の結果なのか、発注者には判断できません。工程が言語化されていれば、再現性があると読み取れます。
実際、記事制作の発注側が外注先を選ぶとき、判断材料として重視されるのは制作フローの明確さです。ある記事制作支援の解説では、成果につながる制作の流れを段階に分けて整理する重要性が示されています。
ここからは、実際に検索上位を獲得し、成果を生み出すためのSEO記事制作フローを7つのステップで解説します。 出典: atoj.co.jp
発注側がフローを言語化して発信しているということは、受注側にもフローの説明が求められているということです。
方法3 公開できるサンプル記事を自分で用意する
守秘義務のある納品物の代わりに、誰にも権利が縛られていない記事を自分で書いて置いておく方法です。これは実績が浅い段階でも、豊富な段階でも有効です。
ただし、闇雲に書いても意味がありません。サンプルは、受注したい案件と同じ条件で作ります。狙いたい業界のキーワードを1つ選び、実際の案件と同じ工程を踏んで、同じ分量で書く。そして、そのサンプルに構成案とキーワード選定の根拠を添付します。
添付する根拠のほうが、実は本体より重要です。「なぜこのキーワードを選んだか」「なぜこの見出し順にしたか」「競合の何を外し、何を足したか」を書き添えると、発注者は思考の質を評価できます。記事だけ渡すと文章力の評価しかできませんが、根拠を添えるとSEO設計の力まで伝わります。
サンプルの置き場所は、自分のブログでもnoteでもGoogleドキュメントの共有リンクでも構いません。重要なのは、応募時に即座に渡せる状態にしておくことです。
方法4 数字ではなく判断の理由を書く
順位や流入数を出せない案件は多いです。数値の公開を禁じる契約は珍しくありません。しかしSEO記事作成において、発注者が本当に知りたいのは数字そのものではなく、「なぜその判断をしたか」です。
たとえば「検索1位を獲得しました」と書く代わりに、「上位ページが網羅していなかった導入後の運用コストに触れる構成にした」と書く。「流入が伸びました」の代わりに、「初稿公開から3か月後に検索クエリを見直し、想定外に集まっていた語を見出しに追加した」と書く。
判断の理由には、たいてい機密情報が含まれません。だから公開しやすい。そして発注者からすると、数字より判断のほうが自分の案件への転用可能性を測りやすい。この置き換えは、非公開案件を実績として語る際の中心的な技術です。
方法5 第三者の言葉を借りる
自分で自分の質を語ると、どうしても説得力が落ちます。そこで、他人の評価を実績欄に組み込みます。
一番手軽なのは、取引先から受け取った評価コメントの引用です。案件終了時に「今回の進行についてご感想をいただけますか」と一言添えると、短いコメントをもらえることがあります。もらった文章を、社名を伏せた形で掲載する許可まで併せて取っておきます。
もう1つは資格や検定です。文書作成の基礎力を客観的に示す手段として、ビジネス文書検定のような検定は、文章の型や敬語の正確さを第三者基準で証明できます。SEO記事作成そのものを直接証明する資格ではありませんが、記名実績が出せない状況では、外部基準による裏付けが相対的に重くなります。
実績一覧の書式と、直すべき悪い書き方
方法が分かっても、書式が崩れていると伝わりません。実際の記載例で整理します。
1件あたりに書く5項目
実績1件につき、次の5項目を固定します。
1つ目、業界とメディア種別。2つ目、記事の種類と想定読者。3つ目、担当した工程。4つ目、記事の分量帯。5つ目、期間または継続性。
このうち4つ目と5つ目を落としている人が多いです。分量帯を書くと、長文記事の経験があるかどうかが分かります。継続性を書くと、単発で終わったのか継続契約になったのかが分かる。発注者は「長く任せられる相手か」を見ているので、継続性の情報は効きます。
記載例は次の通りです。
「人材業界の採用オウンドメディア/転職検討層向けの職種解説記事/構成案から執筆、公開後のリライトまで/1本8,000字前後/継続契約で複数本を担当」
悪い書き方とその直し方
よく見る失敗を3つ挙げます。
1つ目は、工程を書かずにジャンルだけ並べるパターン。「金融、医療、IT、教育のジャンルで執筆経験があります」とだけ書くと、幅広いように見えて、実は何も伝わりません。発注者は自分の業界に合うかを見ているので、ジャンルの列挙だけでは判断できない。ジャンルは絞り、工程を足します。
2つ目は、抽象的な形容詞で埋めるパターン。「読者に寄り添った、質の高い記事を執筆します」という文は、誰でも書けます。書けるということは差別化にならないということです。形容詞を消して、動詞と工程に置き換えます。
3つ目は、守秘義務を理由に何も書かないパターン。「守秘義務のため詳細は記載できません」の一文で終わっている実績欄を見かけますが、これは最も損です。守秘義務があること自体は伝えたうえで、話せる粒度で必ず何かを書く。「守秘義務のため媒体名は伏せますが、以下の範囲でご説明できます」と続ければ、誠実さと情報量を両立できます。
正直なところ、3つ目の書き方をしている人が一番多い。もったいないです。
提出媒体ごとの分量の使い分け
実績の書き方は、提出先によって長さを変えます。
応募フォームの短い入力欄には、3件から5件を各1行で並べます。詳細は書かず、業界と工程だけ。ここで長文を貼ると読まれません。
提案書やポートフォリオページには、詳細版を置きます。1件あたり5項目を全部書き、加えて工程の説明とサンプル記事へのリンクを添えます。
面談や打ち合わせの場では、1件を深掘りして話します。事前に「どの案件をどこまで話すか」を決めておくと、口が滑って機密に触れる事故を防げます。話してよい範囲を先に決めておく。これは受注後の実務として習慣にしてください。
発注側は実績のどこを見ているか
視点を反転させます。発注者が実績欄を読むとき、実際にチェックしているのは次の4点です。
自社の案件と条件が近いか
第一に見るのは、業界とコンテンツの種類が自社に近いかどうかです。同じ業界の経験があれば、前提知識の説明を省ける。同じ種類の記事の経験があれば、構成の勘所が分かっている。この2つが揃うと、発注側の教育コストが下がります。
だから実績欄では、狙う案件に近い経験を上に置きます。全部を時系列で並べるのではなく、応募先に合わせて順番を入れ替える。この一手間で通過率は変わります。
どの工程まで任せられるか
第二に、担当できる範囲です。執筆だけなのか、構成案から作れるのか、キーワード選定まで踏み込めるのか。上流工程を担える人材は、発注側の手間を大きく減らします。
内製化の難しさを抱える企業ほど、上流から任せられる相手を探しています。この構造は業界の解説でも指摘されています。
SEO記事制作の内製化は中長期的な視点で見ると理想的ですが、専任担当者を置けない場合や、SEOの経験・ノウハウがない場合、リソース不足で制作が滞ってしまったり、時間と労力だけが浪費して成果につながらなかったりといった事態に陥りやすいと言えます。 出典: atoj.co.jp
つまり、リソース不足を埋めてくれる相手が求められている。実績欄に工程を書くべき理由はここにあります。
進行がスムーズかどうか
第三に、意外と重視されるのがコミュニケーションの安定性です。納期を守るか、修正のやり取りが噛み合うか、連絡が途切れないか。これは実績欄に直接書きにくい要素ですが、書き方で滲ませることはできます。
継続契約であったこと、公開後のリライトまで担当したこと、修正回数の取り決めを事前にしていたこと。こうした記述は、進行の安定性を間接的に示します。
長く任せられるか
第四に、継続性です。1本書いて終わる相手より、メディアの方針を理解して長く走れる相手のほうが、発注側の総コストは下がります。
継続案件の記述を実績に入れると、この点が伝わります。継続契約であること自体は機密性が低い情報なので、多くの場合は書けます。
実績がまだ薄い段階での埋め方
ここまでは「実績はあるが出せない」場合の話でした。実績そのものが少ない段階の人に向けて、埋め方を整理します。
自主制作を実績の形式に揃える
サンプル記事を書いたら、それを実績と同じ書式で記載します。「自主制作」と明記したうえで、業界、記事種別、工程、分量、制作期間を書く。受注案件と同じ書式で並べると、読み手は同じ基準で評価できます。
ここで「自主制作だからバレると印象が悪いのでは」と隠す人がいますが、逆です。隠して後から発覚するほうが致命的です。明記したうえで質で勝負するほうが、はるかに安全で効果的です。
隣接領域の経験を翻訳する
前職や別の仕事で培った経験を、SEO記事作成の文脈に翻訳します。営業経験があるなら、顧客の疑問を先回りして構成に落とし込める。事務職の経験があるなら、指示書の読解と締切管理が正確にできる。技術職なら、専門ジャンルの一次情報を読めます。
翻訳のコツは、職種名ではなく行動で書くことです。「経理を5年」ではなく「数字の裏付けを確認してから文章にする習慣がある」と書く。行動で書くと、発注者は記事制作の工程に置き換えて読めます。
学習の記録を可視化する
資格や講座の受講歴も、実績が薄い段階では材料になります。ネットワークやサーバーの基礎を扱うCCNA(シスコ技術者認定)のような技術資格は、IT分野の記事を書く際の理解の裏付けになります。専門領域の記事を狙うなら、その領域の資格や学習歴は素直に効きます。
また、職種ごとの仕事の中身を把握しておくことも準備になります。マーケティングやセキュリティ領域の案件がどういう業務内容で構成されているかは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で職種別の解説が整理されています。狙う分野の業務像を掴んでおくと、提案時の語彙が変わります。
実績を溜め続けるための運用の型
実績の見せ方は、応募の直前に考えるものではありません。案件が動いている最中に材料を溜めておき、応募時には並べ替えるだけにするのが正しい運用です。ここを仕組みにしておくと、営業のたびに資料をゼロから作る負担が消えます。
案件管理表に持たせる列
スプレッドシート1枚で足ります。列は次の通りに揃えます。案件の識別名、業界、メディア種別、記事の種類、担当工程、分量帯、開始月と終了月、継続の有無、公開可否ラベル、確認を取った日付、確認のやり取りの保存先。
このうち忘れられがちなのが、確認を取った日付と保存先です。実績の記載範囲について発注者と合意した記録は、時間が経つと曖昧になります。担当者が変わった後に「そんな許可は出していない」と言われたとき、日付とスレッドの場所が分かれば話が早い。逆にここが残っていないと、こちらが折れるしかなくなります。
公開可否ラベルは、前述の3段階を数字で入れます。実績を書く場面では、まずこの列でフィルタをかける。完全公開可の案件だけを抜き出し、次に条件付き公開可を粒度を落として足す。この順番を固定しておけば、書いてはいけない情報が紛れ込む事故が起きません。
案件終了時にやる作業
納品して請求が終わったら、その週のうちに次の3つを済ませます。
1つ目、契約書の秘密保持条項を読み返して公開可否ラベルを確定する。契約の締結時ではなく終了時に読み返すのがコツです。実際に何を扱ったかが分かった後のほうが、判断が正確になります。
2つ目、担当工程を1行で書き留める。記憶が新しいうちにやります。半年後に思い出そうとすると、構成案まで作ったのか執筆だけだったのかが曖昧になります。
3つ目、可能であれば発注者に記載範囲の確認を取る。案件終了直後は関係が良好で、返信ももらいやすいタイミングです。時間が空くほど、こちらから連絡する心理的な障壁が上がります。
半年ごとの棚卸し
半年に1度、実績一覧を上から読み直します。狙う案件の方向が変わっていれば、並び順を組み替える。古すぎて技術的な前提が変わってしまった案件は、下に落とすか外す。
このとき、工程の記述も見直します。当時は上流工程まで担っていなかった案件でも、後から同じクライアントで範囲が広がっていることがあります。実績は書いた時点で固定されるものではなく、関係が続く限り更新されるものです。
現場を見てきた立場からの観察
20年この市場を運営してきた立場から言うと、実績の出し方で伸びる人と伸びない人の差は、記事の本数ではありません。差が出るのは、非公開案件をどう扱っているかです。
長く続いている受け手は、案件が終わるたびに小さな作業を1つ入れています。契約書の秘密保持条項を読み返して公開可否のラベルを付け、担当工程を1行で書き留め、可能なら発注者に記載範囲の確認を取る。この作業は1件あたり数分で終わります。それを毎回やっているかどうかで、半年後の実績欄の厚みがまったく変わります。逆に、案件が終わった瞬間に次へ走る人は、いざ営業する段になって「何を書いていいか分からない」状態から資料を作り始めることになる。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、中間マージンが乗らない直接取引の場では、実績の伝え方がそのまま関係の質に直結します。仲介が入る取引では、実績の評価をプラットフォーム上の評価点や取引回数が肩代わりしてくれます。ところが直接取引では、発注者はあなたの言葉だけを見て判断する。だから実績の書き方の巧拙が、そのまま受注の可否になります。一方で、そこを乗り越えると関係は強い。手数料0%の直接取引では、同じ予算でも依頼側はより多くを頼め、受け手には手取りが厚く残ります。この構造があるからこそ、両者とも関係を切りたがらず、長い付き合いになりやすい。実績を丁寧に言語化して最初の1件を取ることの見返りが、仲介前提の取引よりも大きくなるのは、この構造のためです。
実績データから読み取れる傾向
在宅ワーク市場の職種データを横断して眺めると、記事制作に関わる職種は、実績の提示方法が受注可否に与える影響が特に大きい領域だと分かります。設計や開発の職種であれば、成果物のコードや設計書がなくても、扱える言語やフレームワークの一覧が実力の代替指標になります。ところが記事制作では、「日本語が書ける」ことは前提条件であって差別化にならない。だから何を書いたか、どう考えて書いたかを説明するしかありません。
職種ごとの仕事の中身と報酬構造を眺めると、この違いはさらにはっきりします。文章を扱う職種の全体像は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に整理されており、開発系のソフトウェア作成者の年収・単価相場と比べると、評価の軸が定量化しにくい構造が見えてきます。定量化しにくいということは、言語化の巧拙で差がつくということです。
また、AI活用が広がったことで、実績の意味合いが変わりつつあります。文章を生成すること自体の希少性は落ちました。その分、キーワード設計や構成判断、一次情報の当たり方といった上流の工程に評価が移っています。企業側でAI活用の設計を支援する仕事がどう成立しているかは、AIコンサル・業務活用支援のお仕事の解説が参考になります。この流れを踏まえると、実績欄に書くべきは「何本書いたか」ではなく「どの工程を判断できるか」だと分かります。
海外案件に目を向ける場合も、考え方は同じです。言語が変わっても、発注者が実績から読み取ろうとする4点は変わりません。海外プラットフォームでの実績の作り方はUpworkの使い方ガイドにまとまっていますが、そこでも求められているのは、担当工程と再現性の説明です。
出せない仕事は、伝え方を持っていないから出せないだけです。契約を読み、線を引き、話せる粒度に落とし込む。この3手順を回せば、非公開案件の山は、そのまま提案材料の山に変わります。
よくある質問
Q. 秘密保持契約を結んだ案件は、実績として一切触れられないのですか?
契約書の条文次第です。秘密情報の定義が「業務上知り得た情報」に限られていれば、取引の存在や担当工程まで禁じられているとは限りません。ただし解釈に迷う場合は自己判断で公開せず、発注者にテキストで確認を取るか、専門家に相談してください。確認が取れなければ、業界とメディア種別を伏せた粒度で工程だけを記載する形に留めます。
Q. 記事URLを出せないとき、実績欄には何を書けばよいですか?
業界とメディア種別、記事の種類と想定読者、担当した工程、分量帯、期間または継続性の5項目を1件ごとに書きます。「BtoB向けSaaSのオウンドメディア/導入検討層向けの比較記事/構成案から執筆とリライトまで担当」といった粒度で十分伝わります。発注者が確認したいのはこの3点なので、URLがなくても情報量はほとんど落ちません。
Q. 実績がまだない状態では何を用意すればよいですか?
狙う業界のキーワードを1つ選び、実案件と同じ工程と分量でサンプル記事を作ります。記事本体だけでなく、キーワードを選んだ理由と構成の意図を添えるのが重要です。自主制作であることは隠さず明記し、受注案件と同じ書式で並べてください。隠して後から発覚するほうが信用を損ないます。
Q. 発注者に実績掲載の許可を取るとき、どう伝えれば返事をもらいやすいですか?
こちらから記載案を先に提示し、断りやすい一文を添えます。「御社名と記事URLは出さず、業界と担当工程のみを記載する想定です。難しい場合はその旨お知らせいただければ記載いたしません」という形です。相手に判断材料を渡すと返信が早くなります。やり取りは必ずメールやチャットなど後から遡れる形で残してください。
Q. 順位や流入数を公開できない場合、成果はどう説明すればよいですか?
数字を判断の理由に置き換えます。「上位ページが触れていなかった導入後の運用コストを構成に入れた」「公開から3か月後に検索クエリを見直して見出しを追加した」のように、何を考えてどう手を打ったかを書きます。判断の記述には機密が含まれにくく、発注者にとっても自社案件への転用可能性を測りやすい材料になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







