フリーランスの国民年金|免除・猶予制度と将来の受給額シミュレーション


この記事のポイント
- ✓フリーランスの国民年金の免除・猶予制度を詳しく解説
- ✓免除を受けた場合の将来の受給額シミュレーション
- ✓付加年金やiDeCoでの上乗せ方法も紹介します
フリーランスとして独立したばかりの時期は、収入が不安定で国民年金の保険料月額16,980円(2026年度)が重く感じることがあります。「払えないから放置しよう」と思う方もいるかもしれませんが、それだけは避けてください。
私が会計事務所で担当していたフリーランスのプログラマーKさんの話です。独立直後の8ヶ月間、年金を未納のまま放置していました。「どうせもらえないから」が理由です。でも、その8ヶ月の未納が後から響きました。障害年金の受給資格を確認したとき、未納期間があることで受給資格ギリギリだったんです。もし免除申請をしていれば、受給資格期間にカウントされて何の問題もなかった。「知っていれば申請していたのに」というKさんの言葉が、今でも忘れられません。
未納と免除はまったく違います。未納は将来の年金額がゼロになるだけでなく、障害年金や遺族年金の受給資格まで失う可能性があります。一方、免除は正式な手続きを経た「合法的な保険料の軽減」で、将来の年金にもちゃんと反映されます。
この記事では、フリーランスが使える国民年金の免除・猶予制度と、将来の年金額への影響、そして老後の備え方について具体的な数字でお伝えします。
国民年金の免除・猶予制度の種類
保険料免除制度
前年の所得が一定基準以下の場合に利用できます。免除の割合は4段階あります。
| 免除区分 | 所得基準(単身の場合) | 年金への反映率 |
|---|---|---|
| 全額免除 | 67万円以下 | 1/2 |
| 3/4免除 | 88万円以下 | 5/8 |
| 半額免除 | 128万円以下 | 6/8 |
| 1/4免除 | 168万円以下 | 7/8 |
※扶養家族がいる場合は基準額が上がります
全額免除でも年金額の2分の1が保障される点がポイントです。これは国庫負担(税金)で賄われる部分が反映されるからです。
NG例/OK例:年金保険料が払えないとき
NG例: 「どうせ年金なんてもらえないから」と未納のまま2年間放置。将来の年金額がゼロになるだけでなく、万が一のときの障害年金の受給資格も失う。しかも2年を過ぎると追納すらできなくなる。
OK例: 免除申請を行い、全額免除が承認。将来の年金額は1/2が保障され、障害年金・遺族年金の受給資格も維持。10年以内に追納すれば満額に戻すことも可能。
2026年10月からは育児中のフリーランスも国民年金保険料が免除される新制度がスタートします。子育て中の方は要チェックです。
納付猶予制度
50歳未満のフリーランスが利用できる制度です。所得基準は全額免除と同じ67万円以下ですが、免除と異なり年金額には反映されません。受給資格期間(10年)にはカウントされるので未納よりは確実にマシですが、後から追納しないと年金が減ったままになります。
退職(失業)による特例免除
会社員からフリーランスに転身した直後なら、この特例が使えます。退職を証明する書類(離職票や雇用保険受給資格者証)があれば、前年の所得に関係なく免除が認められるケースが多いです。
独立1年目は特に収入が読めませんから、ここを知っているかどうかで手元資金に大きな差が出ます。
こうした現実的な数字を知ったうえで、免除制度と上乗せ制度を組み合わせるのが賢い選択です。
将来の受給額シミュレーション
「免除を受けると、将来もらえる年金はどうなるのか」。これが一番気になるところだと思います。
2026年度の老齢基礎年金の満額は年間約81万6,000円(月額約6万8,000円)です。40年間すべて納付した場合にこの金額を受け取れます。
免除期間がある場合の年金額
| パターン | 納付期間 | 免除期間 | 年間受給額の目安 |
|---|---|---|---|
| 40年全額納付 | 40年 | なし | 約81.6万円 |
| 35年納付+5年全額免除 | 35年 | 5年 | 約76.5万円 |
| 30年納付+10年全額免除 | 30年 | 10年 | 約71.4万円 |
| 20年納付+20年全額免除 | 20年 | 20年 | 約61.2万円 |
5年間の全額免除で年金が年間約5万円減ります。月額にすると約4,200円の差です。
追納のメリットと判断基準
免除や猶予を受けた期間の保険料は、10年以内であれば後から納めること(追納)ができます。
追納すれば年金額は満額に近づきますが、追納にはコストがかかります。ここは費用対効果を冷静に計算するべきです。
追納の損益分岐点
全額免除1年分を追納する場合を考えます。
- 追納額:約20万円(1年分)
- 年金の増加額:年間約1万円
- 損益分岐点:追納から約20年
65歳から受給開始として85歳以上生きれば元が取れる計算です。平均寿命を考えると追納のメリットはありますが、そのお金をiDeCoやNISAで運用した方が有利になるケースもあります。
年金を増やす4つの上乗せ方法
1. 付加年金
月額400円を追加で納めると、将来「200円×納付月数」が年金に上乗せされます。
例えば20年間(240ヶ月)付加年金を納めた場合、追加の納付額は合計9万6,000円。もらえる上乗せ額は年間4万8,000円。たった2年で元が取れる計算で、日本の公的年金制度の中で最もリターンが高い仕組みと言われており非常にお得な制度です。
2. iDeCo(個人型確定拠出年金)
フリーランスは月額最大68,000円まで拠出できます(付加年金加入者は67,000円)。
iDeCoには強力な3つのメリットがあります。
- 掛金が全額所得控除:年間最大81.6万円の控除となり、所得税や住民税、さらに国民健康保険料の節約にもつながります。
- 運用益が非課税:通常約20%かかる税金がゼロになります。
- 受取時も控除あり:退職所得控除や公的年金等控除が使えます。
一方で、「原則60歳まで引き出せない」「運用リスクがある(元本割れの可能性)」「口座管理料などの手数料がかかる」といったデメリットもあるため、無理のない範囲で始めることが大切です。
3. 国民年金基金
iDeCoと掛金の上限を共有しますが、受給額が確定している(確定給付型)のが特徴で、終身年金を確保できるのがメリットです。運用リスクを取りたくない人に向いています。付加年金との併用はできません。iDeCoと国民年金基金のどちらかに全振りするか、分散するかはご自身の考え方次第です。
4. 小規模企業共済
フリーランスの「退職金制度」のようなものです。月額1,000〜70,000円を積み立て、廃業時や65歳以上の退職時に一括または分割で受け取れます。
掛金は全額所得控除、受取時は退職所得控除が適用されます。事業資金の貸付制度もあるため、フリーランスのセーフティネットとしても優れています。
免除申請の手続き方法
申請に必要なもの
- 国民年金保険料免除・納付猶予申請書(年金事務所またはネットで入手可)
- 年金手帳、基礎年金番号通知書、またはマイナンバーカード
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 退職特例を使う場合:離職票や雇用保険受給資格者証のコピー
申請先
お住まいの市区町村の国民年金担当窓口、または年金事務所。郵送やマイナポータルからの電子申請も可能です。
申請のタイミング
免除の承認期間は7月〜翌年6月の1年単位です。毎年申請が必要ですが、「継続審査」にチェックを入れておけば翌年度以降は自動審査されます。
まとめ
国民年金の免除制度は「払えない人のための救済措置」であると同時に、フリーランスの資金繰りを助ける正当な制度です。特に独立直後は退職特例免除を忘れずに申請してください。
フリーランスの年金の基本は、会社員との違いを理解することから始まります。
| 項目 | 会社員(厚生年金) | フリーランス(国民年金) |
|---|---|---|
| 保険料 | 給料の約18.3%(会社と折半) | 月額16,980円(定額) |
| 受給額(月額目安) | 14〜15万円 | 約6.8万円(満額) |
| 支払い方法 | 給料から天引き | 自分で納付 |
| 扶養制度 | 配偶者は第3号被保険者(保険料なし) | なし(各自で加入) |
会社員は厚生年金に加入しており、給料から天引きされる一方、フリーランスは国民年金に加入し、自分で納付します。また、扶養親族の存在により、会社員は配偶者が保険料を負担しない場合があるのに対し、フリーランスは各自で加入する必要があります。
フリーランスの最大の課題は、もらえる年金が少ないこと。国民年金だけでは月約6.8万円。これだけで生活するのは現実的ではありません。だからこそ、早い段階で「上乗せの仕組み」を作ることが重要です。
国民年金の保険料は2026年度で月額16,980円。年額にすると203,760円です。まとめて前納すると以下の通り割引が受けられます。
| 前納期間 | 割引額(口座振替の場合) |
|---|---|
| 6ヶ月前納 | 約1,160円お得 |
| 1年前納 | 約4,270円お得 |
| 2年前納 | 約16,590円お得 |
2年前納を口座振替にすると約16,590円の割引。資金に余裕があればやらない理由がないですね。
フリーランスの年金を考えるための判断フローは以下の通りです。
- 国民年金の保険料を払えるか?
- はい → 付加年金(月400円)に加入 → iDeCoまたは国民年金基金を検討
- いいえ → 免除・猶予を申請 → 収入が安定したら追納
最低限やるべきアクションは以下の3つです。
- 国民年金保険料をきちんと払う(あるいは未納にせず免除申請を行う。可能なら2年前納で割引を受ける)
- 付加年金に加入する(市区町村役場で手続き。月400円で2年回収)
- 余裕があればiDeCoや小規模企業共済を始める
年金や税金の知識は、フリーランスにとって必須のスキルです。当サイトの資格ガイドでは、FP3級の取得方法が紹介されています。FP3級はお金の基礎知識を体系的に学べる国家資格で、合格率は約80%。学習期間は1〜2ヶ月で、フリーランスなら絶対に知っておくべき「年金」「保険」「税金」「投資」の知識が身につきます。
フリーランスの年金は、放置すると老後に大きな差がつくテーマです。年金制度は複雑ですが、基本を押さえておけば将来の不安は確実に軽減されます。わからないことがあれば、ねんきんネットで加入状況を確認したり、年金事務所やFPに相談してみてください。
よくある質問
Q. 免除を申請すると、将来の受給額はどれくらい減りますか?
平成21年4月以降の全額免除期間については、将来受け取る老齢基礎年金の額が、保険料を全額納めた場合の2分の1として計算されます。例えば、免除期間が1年間ある場合、満額の年金額から見ると「半年分」が減るイメージです。これを防ぐには追納が必要です。
Q. 家族と同居している場合、親の所得が高くても免除されますか?
「保険料免除制度」は世帯主の所得も審査対象となるため、同居している親の所得が高い場合は承認されにくいです。ただし、50歳未満であれば「納付猶予制度」を利用できます。こちらは世帯主の所得は問わず、本人と配偶者の所得のみで審査されます。
Q. 過去に未納だった期間も、今から免除申請できますか?
免除の申請は、申請時点から2年1ヶ月前まで遡って行うことができます。これを「遡及(そきゅう)申請」と呼びます。未納のまま放置していた過去分がある方は、今からでも窓口で相談する価値があります。
Q. 免除期間中も付加年金に加入できますか?
残念ながら、保険料の免除(一部免除を含む)や納付猶予を受けている期間は、付加保険料(月額400円)を納めることはできません。また、国民年金基金への加入も制限されます。
Q. 申請してから結果が出るまでどれくらいかかりますか?
通常、申請から承認・却下の通知が届くまで、おおむね2ヶ月から3ヶ月程度かかります。その間は振込用紙が届くことがありますが、結果が出るまでは大切に保管しておいてください。
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この記事を書いた人
織田 莉子
FP2級・フリーランス経理サポーター
会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。
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