開業1年目の国民年金は失業による特例免除で乗り切る|免除・猶予と受給額 2026

織田 莉子
織田 莉子
開業1年目の国民年金は失業による特例免除で乗り切る|免除・猶予と受給額 2026

この記事のポイント

  • 会社を辞めて開業した1年目は
  • 国民年金の失業による特例免除で保険料負担を大きく軽減できます
  • 前年所得に関係なく審査される条件と必要書類

フリーランスとして独立したばかりの時期は、収入が不安定で国民年金の保険料月額16,980円(2026年度)が重く感じることがあります。「払えないから放置しよう」と思う方もいるかもしれませんが、それだけは避けてください。未納にする前に使える正式な制度、特に会社を辞めて開業した人のための「失業による特例免除」があるからです。

開業して会社を辞めたフリーランスは「失業による特例免除」を使える?

結論から言うと、使えます。会社を退職してフリーランスとして開業した場合でも、離職票や雇用保険受給資格者証などの退職を証明する書類があれば、前年の所得に関係なく国民年金保険料の免除審査を受けられます。開業届を出して個人事業主になっていることは、この特例の妨げになりません。

通常の免除審査は「前年の所得」で判定されるため、会社員時代にしっかり給料をもらっていた人は、独立直後に収入が激減していても審査に通りにくいという問題があります。失業による特例免除は、この退職者本人の前年所得を除外して審査してくれる仕組みです。会社員からフリーランスに転身した1年目にとって、まさに使うために用意された制度と言えます。

対象期間は、退職した月の前月から翌々年の6月までです。申請先はお住まいの市区町村の国民年金担当窓口または年金事務所で、マイナポータルからの電子申請にも対応しています。制度の詳細は日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」で確認できます。

フリーランスと発注者のマッチングを20年以上運営してきた@SOHO編集部の実感として、独立1年目の資金繰りを圧迫するのは、実は仕事の受注そのものより社会保険料の支払いです。国民健康保険と国民年金の請求は、収入がゼロの月でも容赦なくやってきます。この特例免除を知らずに貯金を取り崩して満額納付を続けた人と、申請して浮いたお金を事業の立ち上げに回した人とでは、独立初年度の安定感がまるで違います。使える制度は堂々と使ってください。

未納と免除はまったく違う

私が会計事務所で担当していたフリーランスのプログラマーKさんの話です。独立直後の8ヶ月間、年金を未納のまま放置していました。「どうせもらえないから」が理由です。でも、その8ヶ月の未納が後から響きました。障害年金の受給資格を確認したとき、未納期間があることで受給資格ギリギリだったんです。もし免除申請をしていれば、受給資格期間にカウントされて何の問題もなかった。「知っていれば申請していたのに」というKさんの言葉が、今でも忘れられません。

未納は将来の年金額がゼロになるだけでなく、障害年金や遺族年金の受給資格まで失う可能性があります。一方、免除は正式な手続きを経た「合法的な保険料の軽減」で、将来の年金にもちゃんと反映されます。日本年金機構も、保険料を未納のままにしておくと年金が受け取れなくなる場合があるとして、経済的に納付が難しいときは免除・納付猶予制度の利用を公式に案内しています。

この記事では、フリーランスが使える国民年金の免除・猶予制度と、将来の年金額への影響、そして老後の備え方について具体的な数字でお伝えします。

国民年金の免除・猶予制度の種類

保険料免除制度

前年の所得が一定基準以下の場合に利用できます。免除の割合は4段階あります。

免除区分 所得基準(単身の場合) 年金への反映率
全額免除 67万円以下 1/2
3/4免除 88万円以下 5/8
半額免除 128万円以下 6/8
1/4免除 168万円以下 7/8

※扶養家族がいる場合は基準額が上がります

全額免除でも年金額の2分の1が保障される点がポイントです。これは国庫負担(税金)で賄われる部分が反映されるからです。

NG例/OK例:年金保険料が払えないとき

NG例: 「どうせ年金なんてもらえないから」と未納のまま2年間放置。将来の年金額がゼロになるだけでなく、万が一のときの障害年金の受給資格も失う。しかも2年を過ぎると追納すらできなくなる。

OK例: 免除申請を行い、全額免除が承認。将来の年金額は1/2が保障され、障害年金・遺族年金の受給資格も維持。10年以内に追納すれば満額に戻すことも可能。

2026年10月からは育児中のフリーランスも国民年金保険料が免除される新制度がスタートします。子育て中の方は要チェックです。

納付猶予制度

50歳未満のフリーランスが利用できる制度です。所得基準は全額免除と同じ67万円以下ですが、免除と異なり年金額には反映されません。受給資格期間(10年)にはカウントされるので未納よりは確実にマシですが、後から追納しないと年金が減ったままになります。

退職(失業)による特例免除の申請ポイント

冒頭で触れた特例免除について、実務でつまずきやすいポイントを補足します。

  1. 退職を証明する書類が必須:雇用保険被保険者離職票、雇用保険受給資格者証などのコピーを申請書に添付します。会社を辞めるときに離職票は必ず受け取っておいてください。
  2. 開業届を出していても申請できる:「個人事業主になったら失業扱いにならないのでは」と心配する方が多いのですが、この特例は退職の事実に基づいて前年所得を除外する仕組みなので、開業後でも対象です。
  3. 世帯の所得は審査される:除外されるのは退職した本人の前年所得です。配偶者や世帯主に一定以上の所得がある場合は、全額免除にならず一部免除にとどまることがあります。
  4. さかのぼって申請できる:申請時点から2年1ヶ月前までの期間はさかのぼって申請可能です。すでに数ヶ月未納にしてしまった人も諦めずに申請してください。

独立1年目は特に収入が読めませんから、この特例を知っているかどうかで手元資金に大きな差が出ます。なお、各制度の最新の所得基準や申請方法は、日本年金機構の公式サイトで必ず確認するようにしてください。

将来の受給額シミュレーション

「免除を受けると、将来もらえる年金はどうなるのか」。これが一番気になるところだと思います。

2026年度の老齢基礎年金の満額は年間約81万6,000円(月額約6万8,000円)です。40年間すべて納付した場合にこの金額を受け取れます。

免除期間がある場合の年金額

パターン 納付期間 免除期間 年間受給額の目安
40年全額納付 40年 なし 約81.6万円
35年納付+5年全額免除 35年 5年 約76.5万円
30年納付+10年全額免除 30年 10年 約71.4万円
20年納付+20年全額免除 20年 20年 約61.2万円

5年間の全額免除で年金が年間約5万円減ります。月額にすると約4,200円の差です。開業直後の数年だけ特例免除や全額免除を使い、事業が軌道に乗ってから追納で取り戻す、という使い方なら影響は最小限に抑えられます。

追納のメリットと判断基準

免除や猶予を受けた期間の保険料は、10年以内であれば後から納めること(追納)ができます。

追納すれば年金額は満額に近づきますが、追納にはコストがかかります。ここは費用対効果を冷静に計算するべきです。

追納の損益分岐点

全額免除1年分を追納する場合を考えます。

  • 追納額:約20万円(1年分)
  • 年金の増加額:年間約1万円
  • 損益分岐点:追納から約20年

65歳から受給開始として85歳以上生きれば元が取れる計算です。平均寿命を考えると追納のメリットはありますが、そのお金をiDeCoやNISAで運用した方が有利になるケースもあります。なお、追納した保険料は全額が社会保険料控除の対象になるため、所得が増えた年にまとめて追納すると節税効果も得られます。

年金を増やす4つの上乗せ方法

1. 付加年金

月額400円を追加で納めると、将来「200円×納付月数」が年金に上乗せされます。

例えば20年間(240ヶ月)付加年金を納めた場合、追加の納付額は合計9万6,000円。もらえる上乗せ額は年間4万8,000円。たった2年で元が取れる計算で、日本の公的年金制度の中で最もリターンが高い仕組みと言われており非常にお得な制度です。ただし保険料免除を受けている期間は付加保険料を納められないため、免除から抜けたタイミングで加入を検討しましょう。

2. iDeCo(個人型確定拠出年金)

フリーランスは月額最大68,000円まで拠出できます(付加年金加入者は67,000円)。

確定拠出年金は、拠出した掛金とその運用収益の合計をもとに給付額が決まる年金制度で、制度の位置づけは厚生労働省「確定拠出年金制度」で解説されています。

iDeCoには強力な3つのメリットがあります。

  1. 掛金が全額所得控除:年間最大81.6万円の控除となり、所得税や住民税、さらに国民健康保険料の節約にもつながります。
  2. 運用益が非課税:通常約20%かかる税金がゼロになります。
  3. 受取時も控除あり:退職所得控除や公的年金等控除が使えます。

一方で、「原則60歳まで引き出せない」「運用リスクがある(元本割れの可能性)」「口座管理料などの手数料がかかる」といったデメリットもあるため、無理のない範囲で始めることが大切です。国民年金保険料の免除を受けている期間はiDeCoに拠出できない点にも注意してください。

3. 国民年金基金

iDeCoと掛金の上限を共有しますが、受給額が確定している(確定給付型)のが特徴で、終身年金を確保できるのがメリットです。運用リスクを取りたくない人に向いています。付加年金との併用はできません。iDeCoと国民年金基金のどちらかに全振りするか、分散するかはご自身の考え方次第です。

4. 小規模企業共済

フリーランスの「退職金制度」のようなものです。月額1,000〜70,000円を積み立て、廃業時や65歳以上の退職時に一括または分割で受け取れます。

掛金は全額所得控除、受取時は退職所得控除が適用されます。事業資金の貸付制度もあるため、フリーランスのセーフティネットとしても優れています。

免除申請の手続き方法

申請に必要なもの

  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書(年金事務所またはネットで入手可)
  • 年金手帳、基礎年金番号通知書、またはマイナンバーカード
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 退職特例を使う場合:離職票や雇用保険受給資格者証のコピー

申請先

お住まいの市区町村の国民年金担当窓口、または年金事務所。郵送やマイナポータルからの電子申請も可能です。

申請のタイミング

免除の承認期間は7月〜翌年6月の1年単位です。毎年申請が必要ですが、「継続審査」にチェックを入れておけば翌年度以降は自動審査されます。ただし失業による特例免除を使った場合は継続審査の対象外となるため、翌年度も引き続き免除を受けたいときは改めて申請が必要です。

まとめ

国民年金の免除制度は「払えない人のための救済措置」であると同時に、フリーランスの資金繰りを助ける正当な制度です。特に会社を辞めて開業した直後は、前年所得に関係なく審査される失業による特例免除を忘れずに申請してください。

フリーランスの年金の基本は、会社員との違いを理解することから始まります。

項目 会社員(厚生年金) フリーランス(国民年金)
保険料 給料の約18.3%(会社と折半) 月額16,980円(定額)
受給額(月額目安) 14〜15万円 約6.8万円(満額)
支払い方法 給料から天引き 自分で納付
扶養制度 配偶者は第3号被保険者(保険料なし) なし(各自で加入)

会社員は厚生年金に加入しており、給料から天引きされる一方、フリーランスは国民年金に加入し、自分で納付します。また、扶養親族の存在により、会社員は配偶者が保険料を負担しない場合があるのに対し、フリーランスは各自で加入する必要があります。

フリーランスの最大の課題は、もらえる年金が少ないこと。国民年金だけでは月約6.8万円。これだけで生活するのは現実的ではありません。だからこそ、早い段階で「上乗せの仕組み」を作ることが重要です。

国民年金の保険料は2026年度で月額16,980円。年額にすると203,760円です。まとめて前納すると以下の通り割引が受けられます。

前納期間 割引額(口座振替の場合)
6ヶ月前納 約1,160円お得
1年前納 約4,270円お得
2年前納 約16,590円お得

2年前納を口座振替にすると約16,590円の割引。資金に余裕があればやらない理由がないですね。

フリーランスの年金を考えるための判断フローは以下の通りです。

  1. 会社を辞めて開業した直後か?
    • はい → 失業による特例免除を申請(離職票を添付) → 収入が安定したら追納
    • いいえ → 次へ
  2. 国民年金の保険料を払えるか?
    • はい → 付加年金(月400円)に加入 → iDeCoまたは国民年金基金を検討
    • いいえ → 免除・猶予を申請 → 収入が安定したら追納

最低限やるべきアクションは以下の3つです。

  1. 国民年金保険料をきちんと払う(あるいは未納にせず免除申請を行う。可能なら2年前納で割引を受ける)
  2. 付加年金に加入する(市区町村役場で手続き。月400円で2年回収)
  3. 余裕があればiDeCoや小規模企業共済を始める

年金や税金の知識は、フリーランスにとって必須のスキルです。当サイトの資格ガイドでは、FP3級の取得方法が紹介されています。FP3級はお金の基礎知識を体系的に学べる国家資格で、合格率は約80%。学習期間は1〜2ヶ月で、フリーランスなら絶対に知っておくべき「年金」「保険」「税金」「投資」の知識が身につきます。

フリーランスの年金は、放置すると老後に大きな差がつくテーマです。年金制度は複雑ですが、基本を押さえておけば将来の不安は確実に軽減されます。わからないことがあれば、ねんきんネットで加入状況を確認したり、年金事務所やFPに相談してみてください。

よくある質問

Q. 免除を申請すると、将来の受給額はどれくらい減りますか?

平成21年4月以降の全額免除期間については、将来受け取る老齢基礎年金の額が、保険料を全額納めた場合の2分の1として計算されます。例えば、免除期間が1年間ある場合、満額の年金額から見ると「半年分」が減るイメージです。これを防ぐには追納が必要です。

Q. 家族と同居している場合、親の所得が高くても免除されますか?

「保険料免除制度」は世帯主の所得も審査対象となるため、同居している親の所得が高い場合は承認されにくいです。ただし、50歳未満であれば「納付猶予制度」を利用できます。こちらは世帯主の所得は問わず、本人と配偶者の所得のみで審査されます。

Q. 過去に未納だった期間も、今から免除申請できますか?

免除の申請は、申請時点から2年1ヶ月前まで遡って行うことができます。これを「遡及(そきゅう)申請」と呼びます。未納のまま放置していた過去分がある方は、今からでも窓口で相談する価値があります。

Q. 免除期間中も付加年金に加入できますか?

残念ながら、保険料の免除(一部免除を含む)や納付猶予を受けている期間は、付加保険料(月額400円)を納めることはできません。また、国民年金基金への加入も制限されます。

Q. 申請してから結果が出るまでどれくらいかかりますか?

通常、申請から承認・却下の通知が届くまで、おおむね2ヶ月から3ヶ月程度かかります。その間は振込用紙が届くことがありますが、結果が出るまでは大切に保管しておいてください。

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この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月1日最終更新:2026年7月29日
織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子@SOHO編集部

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

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