フリーランスの廃業手続き

長谷川 奈津
長谷川 奈津
フリーランスの廃業手続き

この記事のポイント

  • 「フリーランスになりたいけど
  • 子どもがいるから無理」
  • 私がキャリア相談で一番よく聞く言葉です

「フリーランスになりたいけど、子どもがいるから無理」。これ、私がキャリア相談で一番よく聞く言葉です。でも実は、子育て中だからこそクラウドソーシングが向いている面もあるんです。私自身、娘が昼寝している2時間で記事を1本仕上げることもあります。完璧を目指さず、できる範囲で始める。それが長続きするコツですよ。

愛知県名古屋市の千種区でキャリア相談を受け持っている長谷川奈津です。今日は、少し切ない、でも新しい一歩のために大切な「フリーランスの廃業手続き」についてお話しします。

「廃業」と聞くと、なんだか失敗したような、後ろ向きなイメージを持ってしまうかもしれません。でも、私のクライアントのAさんは、育児と仕事のバランスを考え直して一度廃業届を出し、企業への再就職を選びました。彼女は今、「フリーランスを経験したからこそ、会社の福利厚生のありがたみが分かったし、効率的な働き方ができるようになった」と笑顔で話しています。

フリーランスを辞めるのは、失敗ではなく「キャリアの卒業」や「ライフステージに合わせた最適化」に過ぎません。ただ、開業した時と同じように、終わる時もしっかりとした手続きが必要です。特に開業届を出して青色申告をしていた方は、放っておくと数年後に面倒なことになりかねません。

この記事では、フリーランスの廃業手続きについて、いつ、どこで、何をすべきか、名古屋の温かい喫茶店で相談に乗っているような気持ちで詳しくお伝えします。


1. フリーランスが「廃業」を決めた時にまず考えること

廃業の手続きに入る前に、まずはご自身の状況を整理してみましょう。実は「完全に辞める」以外にも選択肢があるからです。

1-1. 本当に「廃業」が必要なケース 税務署に廃業届を出すべきなのは、以下のような場合です。

  • 会社員として再就職が決まり、副業としても事業を継続しない時
  • 完全に引退し、今後その事業で収入を得る見込みがない時
  • 結婚や出産、介護などで、当面の間は仕事ができない状態になる時

これらに当てはまるなら、しっかりと「廃業手続き」を行って、税金や社会保険の管理をリセットする必要があります。

1-2. 「休業」という選択肢もある 「今は忙しくてできないけど、1年後には再開したい」という場合は、無理に廃業届を出す必要はありません。開業届はそのままでも、収入がなければ確定申告で「0円」で申告する、あるいは休業状態にしておくことも可能です。

ただし、青色申告をしている場合は、2年連続で無申告や期限後申告になると青色申告の承認が取り消されてしまうため注意が必要です。まず小さく試すのがフリーランスの基本ですが、辞める時も「一旦止まる」のか「完全に閉じる」のかを慎重に選びましょう。


2. フリーランスの廃業手続きに必要な書類リスト

廃業を決めたら、提出すべき書類は主に4つあります。すべての人に必要なものと、条件によって必要なものに分かれます。

2-1. 【全員必須】個人事業の開業・廃業等届出書 これは、開業した時に出した書類と同じフォーマットです。「廃業」にチェックを入れて提出します。

  • 提出先:納税地の所轄税務署
  • 期限:廃業から1ヶ月以内

期限を過ぎても罰則はありませんが、早めに提出するのが安心です。手続きの内容や提出方法は、国税庁の案内で正確に確認しておくと安心です。

新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときの手続です。 国税庁「個人事業の開業・廃業等届出手続」

2-2. 【青色申告者のみ】所得税の青色申告の取りやめ届出書 青色申告をしていた方は、これを出し忘れると、翌年以降も「青色申告の準備ができている人」として扱われてしまいます。

  • 提出先:納税地の所轄税務署
  • 期限:廃業した年の翌年3月15日まで

2-3. 【消費税の課税事業者のみ】事業廃止届出書 売上が1,000万円を超えて消費税を納めていた方は、この届出が必要です。最近はインボイス制度で課税事業者になった方も多いはず。

  • 提出先:納税地の所轄税務署
  • 期限:速やかに

2-4. 給与支払事務所等の廃止届出書 家族を専従者として雇っていたり、従業員に給料を払っていたりした場合は、この書類も必要になります。

  • 提出先:納税地の所轄税務署
  • 期限:廃業から1ヶ月以内

これらの書類は、e-Taxを使えば自宅からスマートフォンやPCで提出できます。子育て中でなかなか外出できない時も、娘が寝ている隙間にポチッと送信できるのは助かりますよね。


3. 廃業した年の「最後の確定申告」に注意

廃業届を出して終わり、ではありません。その年の1月1日から廃業日までの売上と経費について、翌年に「最後の確定申告」を行う必要があります。

3-1. 廃業後の経費も認められる? 実は、廃業した後に発生した片付け費用や、事業用PCの廃棄費用なども、一定の条件下でその年の経費として認められます。これを「事業を廃止した場合の必要経費の特例」と呼びます。最後まで領収書は捨てずに保管しておきましょう。

3-2. 青色申告特別控除はどうなる? 廃業した年であっても、青色申告の要件を満たしていれば、最高65万円(または55万円10万円)の控除を受けることができます。

最後の申告で損をしないよう、上記のような無料の解説動画などを参考に、丁寧に進めるのがコツです。


4. 社会保険と年金の切り替え

廃業して会社員に戻る場合や、家族の扶養に入る場合は、社会保険の手続きも忘れてはいけません。

4-1. 国民健康保険の脱退 会社に就職して厚生年金・健康保険に加入した場合は、自分で国民健康保険の脱退手続き(お住まいの市区町村役場)を行う必要があります。これを忘れると、新しい保険料と古い保険料が二重に請求されてしまうことも。

  • 必要書類:新しく作った健康保険証、マイナンバーカードなど
  • 期限:新しい保険に加入してから14日以内

また、廃業して会社員に戻らず自営も続けない場合は、国民年金の種別変更などの手続きが必要になります。年金の加入区分は働き方によって変わるため、日本年金機構の案内で自分のケースを確認しておきましょう。

国民年金には、職業などによって3種類の被保険者があります。 日本年金機構「国民年金の加入」

4-2. 扶養に入る場合 もし、しばらくお仕事を休んでパートナーの扶養に入る場合は、パートナーの会社を通じて手続きを行います。収入が一定額以下(一般的に130万円未満など)であることが条件になりますが、廃業届の控えがあれば「事業を辞めた証明」として受理されやすくなります。


5. 廃業のメリットとデメリットを前向きに捉える

キャリアコンサルタントとして、廃業の相談に来る方に必ずお伝えしている「前向きな捉え方」があります。

5-1. 廃業のメリット

  • 固定費の削減:商用ソフトのサブスクリプションや、バーチャルオフィスの維持費などがなくなります。
  • 精神的な解放:常に「次の案件を探さなきゃ」というプレッシャーから一旦離れ、リフレッシュできます。
  • 再スタートの準備:今の自分に何が足りなかったのか、次はどうしたいのかを見つめ直すチャンスです。

5-2. 廃業のデメリット

  • 社会的信用の変化:ローンやカードの審査において、フリーランスとしての実績が一度途切れます。
  • 再開時の手間:また始めようと思った時に、再度開業届を出す必要があります。

でも、デメリットは意外と少ないものです。一度開業した経験があるあなたは、ビジネスの回し方を知っています。それは再就職先でも必ず武器になります。

上記のようなスキルアップのコツを知っていることも、あなたの「稼ぐ力」の履歴の一部です。もし単価交渉に疲れて廃業を選ぶとしても、その交渉経験自体が貴重な財産なんですよ。


6. クライアント事例:Bさんの「前向きな廃業」

私のクライアント、30代後半のBさんの事例をご紹介します。彼女はWebデザイナーとして3年間活動していましたが、第2子の出産を機に廃業を決めました。

「せっかく軌道に乗ったのに、辞めるのはもったいない」と周囲は言いましたが、彼女は冷静でした。「今は子どもとの時間を100%楽しみたい。その代わり、完全に手を引くのではなく、たまに友人のサイトを無償で手伝う程度にして、腕が鈍らないようにする」と。

彼女は廃業届を出し、青色申告の取りやめも行いました。手続きをすべて終えた彼女は、「肩の荷が下りた」とすっきりした表情でした。そして2年後、下の子が保育園に入ったタイミングで、彼女は再び開業届を出しました。今度は「ママデザイナー」としてのブランディングを強め、以前より高い単価で受注できています。

廃業は、次のチャプターへ行くための「セーブポイント」のようなものだと考えてみてください。


7. よくある質問(FAQ)

Q1. 廃業届を出さないとどうなりますか?

法的な罰則はありませんが、青色申告をしている場合、申告がないまま放置すると承認が取り消されたり、役所から「事業はどうなっていますか?」と確認の連絡が来たりすることがあります。また、収入がないのに予定納税の通知が届いてしまうなどのトラブルも。手間はかかりませんので、出しておくことをおすすめします。

Q2. 廃業日(日付)はいつにすればいいですか?

明確な決まりはありませんが、一般的には「最後の売上が発生した日」や「事務所を引き払った日」、「自分で『今日で終わり』と決めた日」で大丈夫です。月またぎになる場合は、キリの良い月末にする方が、その後の社会保険の手続きなどがスムーズになることがあります。

Q3. 小規模企業共済に入っているのですが、廃業したらどうなりますか?

廃業は、共済金を受け取ることができる正当な事由の一つです。廃業届の控えを持って手続きを行えば、積み立ててきた掛金を「共済金(退職金)」として受け取ることができます。これはフリーランスが頑張ってきた証ですね。

Q4. 廃業届を出した後でも、また開業できますか?

もちろんです。何度でも再開できます。過去に廃業したことが不利になることもありません。むしろ「一度事業を経験して、整理して、また始めた」という経験は、経営的な視点を持っていることの証明になります。


8. 廃業手続き後のキャリア支援について

廃業届を提出し、ひと段落ついた後に「次はどうしよう」と悩むこともあるでしょう。もし会社員に戻ることを考えているなら、ハローワークで失業保険(受給要件を満たしている場合)の相談をしたり、キャリアカウンセリングを受けたりするのも一つの方法です。

最近では、専門的なスキルを磨いて再就職を目指す方のための「教育訓練給付金」という制度もあります。IT系や専門職の講座を受講すると、費用の一部が国から支給されるものです。

教育訓練給付金の対象講座一覧はこちら

このような制度を知っておくだけでも、心の余裕が違いますよね。


9. まとめ:廃業手続きを済ませて、新しい風を感じよう

フリーランスの廃業手続きについて解説してきました。

大切なポイントをまとめます。

  1. 廃業届は廃業から1ヶ月以内に税務署へ出す。
  2. 青色申告をしていた人は、取りやめの届出も忘れずに。
  3. 廃業した年までの確定申告が、最後の仕上げ。
  4. 健康保険や年金の切り替えは迅速に行う。
  5. 廃業は「失敗」ではなく、人生の選択肢の一つである。

手続きを一つひとつこなしていくうちに、不思議と心が整理されていくはずです。開業した時のワクワクした気持ちを、今度は新しい未来に向けてみてください。

なお、各種手続きの最新の様式や提出方法は、国税庁や日本年金機構の公式サイトで必ず確認してください。

名古屋の街も、季節ごとに風の色が変わります。今のあなたにとって、廃業という選択が「自分を大切にするための決断」であるなら、それは大正解です。少し休んで、また歩き出したくなった時、そこにはまた新しい道が広がっていますよ。

よくある質問

Q. フリーランスの廃業手続きには、具体的にどのような書類が必要ですか?

主に管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。また、青色申告を行っていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、消費税の課税事業者であれば「事業廃止届出書」も必要です。提出期限は原則として廃業日から1ヶ月以内と定められているため、早めの準備をおすすめします。

Q. 廃業手続きに費用はかかりますか?また、オンラインでも手続き可能ですか?

廃業届の提出自体に手数料などの費用は一切かかりません。また、マイナンバーカードと対応スマートフォンがあれば、国税庁のe-Taxを利用してオンラインで書類を提出することが可能です。税務署の窓口へ行く手間が省け、自宅からいつでも手続きできるため、子育てや家事で忙しい方にもおすすめです。

Q. 子育てなどの理由で一時的に休業する場合でも、廃業手続きは必要ですか?

1年程度の短期間の休業であれば、必ずしも廃業手続きをする必要はありません。しかし、数年単位で事業を再開する見込みがない場合や、毎年の税務申告の手間を省きたい場合は、一度廃業手続きを行い、状況が落ち着いた再開時に改めて開業届を出す方が安心です。ご自身のライフスタイルに合わせて選択してください。

Q. 廃業後に再就職やスキルアップを目指す場合、何か活用できる制度はありますか?

廃業後の新たなキャリア構築には「教育訓練給付金」制度の活用が大変おすすめです。過去の雇用保険の加入期間など一定の条件を満たせば、国が指定する講座の受講費用の最大70%が支給されます。子育てしながら在宅で働きやすいスキルを学び直す良い機会ですので、ぜひ記事内の対象講座一覧を確認してみてください。

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長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津

行政書士・元企業法務

企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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