フリーランスの廃業届の出し方|会社員に戻るときの手続きと注意点

星野 ゆい
星野 ゆい
フリーランスの廃業届の出し方|会社員に戻るときの手続きと注意点

この記事のポイント

  • フリーランスが廃業届を出す方法と
  • 会社員に戻るときの手続きを完全解説
  • 再就職のコツまで網羅します

フリーランスを辞めること。これは「失敗」ではありません。

人生にはいろんなフェーズがあって、会社員に戻ることが最善の選択になることもあります。私の周りにも、一度フリーランスを経験してから会社員に戻り、「むしろフリーランス経験が強みになった」と活躍している人がたくさんいます。

でも、辞めるときの手続きを間違えると面倒なことになります。この記事では、フリーランスの廃業届の出し方から、会社員に戻るときの手続きまで、漏れなくお伝えします。

廃業届とは?

廃業届は、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。開業届と同じ用紙で、廃業の場合は「廃業」に丸をつけて提出します。

項目 内容
届出先 自宅住所の管轄税務署
届出期限 廃業から1ヶ月以内
届出方法 窓口・郵送・e-Tax
費用 無料
届出用紙 国税庁HPからダウンロード or 税務署で入手

廃業届の書き方

実際の記入ポイントを見ていきましょう。

記入するおもな項目

記入項目 内容
届出区分 「廃業」に○
廃業等届出の事由 「事業廃止」に○
廃業の事由が法人の設立に伴うものか 通常は「いいえ」
氏名・住所 現在の情報
職業・屋号 開業届と同じ内容
廃業日 実際に事業をやめた日

廃業日はいつにする?

最後の仕事が完了した日、または事業を終了すると決めた日を記入します。

注意点として、廃業日以降に発生した経費は原則として計上できません。ただし、廃業後に届いた請求書など、事業に関連する費用は「必要経費」として認められるケースもあります。

廃業届と一緒に出す書類

廃業届だけでなく、以下の届け出も必要な場合があります。

届出書 対象者 提出先
青色申告の取りやめ届出書 青色申告をしていた人 税務署
事業廃止届出書(消費税) 課税事業者 税務署
給与支払事務所等の廃止届出書 従業員を雇っていた人 税務署
予定納税の減額申請書 予定納税をしている人 税務署

青色申告の取りやめ届出書

青色申告をしていた方は必ず提出してください。

  • 提出期限:翌年3月15日まで(廃業年の確定申告期限と同じ)
  • 出し忘れると、青色申告の承認が残ったままになる

消費税の届出

課税事業者だった場合は「事業廃止届出書」も必要です。免税事業者(売上1,000万円以下)だった方は不要。

廃業年の確定申告

廃業した年も確定申告は必要です。 ここが見落としがちなポイント。

確定申告のポイント

項目 内容
確定申告の期限 翌年2月16日〜3月15日(通常通り)
対象期間 1月1日〜廃業日
青色申告特別控除 65万円控除は適用可能
経費 廃業日までの事業関連経費

在庫・備品の処理

事業用の在庫や備品がある場合、以下の処理が必要です:

  • 売却:売却金額を事業収入に計上
  • 自家消費:時価相当額を事業収入に計上
  • 廃棄:除却損として経費計上

パソコンなど、プライベートで引き続き使うものは「自家消費」扱いになります。

会社員に戻るときの手続き

廃業の手続きと並行して、再就職の準備も進めましょう。

社会保険の切り替え

項目 フリーランス時 会社員になったら
健康保険 国民健康保険 会社の健康保険(会社が半額負担)
年金 国民年金 厚生年金(会社が半額負担)
雇用保険 なし 加入(失業保険の対象に)

社会保険の切り替えは入社先の会社が手続きしてくれます。ただし、国民健康保険の脱退手続きは自分で市区町村の窓口に行く必要があります。

iDeCo・小規模企業共済の取り扱い

制度 会社員になった場合
iDeCo 継続可能(掛金上限が変わる)
小規模企業共済 解約が必要(受取方法を選択)
新NISA そのまま継続OK

小規模企業共済は、個人事業の廃止に伴い解約となります。加入期間が20年未満の場合、受取額が掛金合計を下回る(元本割れ)ことがあるので注意してください。

フリーランス経験を活かす再就職のコツ

フリーランス経験は、再就職で大きな強みになります。

アピールすべきスキル

  • 自己管理能力:スケジュール管理、タスク管理を自分でやってきた
  • 営業力:自分で仕事を獲得してきた経験
  • 幅広いスキル:経理、営業、実務をすべて一人でこなしてきた(経理・記帳代行のスキルは特に評価されやすい)
  • クライアントワーク:多様な業種・担当者との折衝経験

面接でよく聞かれること

「なぜフリーランスをやめるのですか?」

正直に答えつつ、ポジティブに言い換えましょう。

  • NG:「稼げなかったから」
  • OK:「チームで大きなプロジェクトに取り組みたいと思ったから」

「またフリーランスに戻りませんか?」

  • OK:「フリーランスの経験を通じて、組織で働く価値を再認識しました。御社で長期的にキャリアを築きたいと考えています」

再就職先の探し方

  • 転職エージェント:フリーランス経験者に強いエージェントもある
  • 前職の人脈:出戻りや紹介
  • フリーランス時代のクライアント:「うちで働かない?」と声をかけてもらえることも

廃業しても「再開」はいつでもできる

一度廃業しても、また独立したくなったら開業届を出せばフリーランスに戻れます

実際、「会社員→フリーランス→会社員→フリーランス」という人は少なくありません。フリーランス時代の経験とスキルは消えないので、再開時はよりスムーズにスタートできます。

私の失敗談:廃業届を出さずに放置した

実は私、一度フリーランスを辞めて会社員に戻ったことがあります。そのとき、廃業届を出し忘れて1年以上放置してしまいました。

結果、翌年に「事業所得の確定申告がされていません」と税務署から連絡が来て、慌てて対応することに。大きなペナルティはなかったものの、余計な心配とストレスを抱えました。

辞めると決めたら、手続きは速やかに。 先延ばしにして良いことはひとつもありません。

廃業後に届く請求書・売掛金はどう扱うか

廃業届を出したあとも、しばらくは「事業に関係するお金の出入り」が続きます。最後の案件の入金が翌月以降になる、サブスクの解約が間に合わずカード請求が来る、年払いで前払いしていたツールの返金がある——こうした「廃業日をまたぐお金」の処理は、確定申告のときに必ず問題になります。結論を先に書くと、廃業日時点で「請求権」または「支払義務」が確定していたものは、廃業年の事業所得として処理するのが原則です。

よくあるケースと処理方法

ケース 処理
廃業日前に納品済みで、入金が廃業日後 廃業年の売上に計上(売掛金として認識)
廃業日後に届いた事務用品・通信費の請求 事業に関連する分は必要経費に算入可能
年払いで前払いしたサーバー・ツール代の未経過分 廃業日までの按分分のみ経費、残りは私用扱い
廃業日後に取引先からのキャンセル違約金を受け取った 雑所得として翌年申告

国税庁は、廃業後に生じた費用の扱いについて次のように示しています。

個人事業を廃止した後において、その事業に係る費用又は損失で、その事業を廃止しなかったとしたならばその年分以後の各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、その金額は、その者のその事業を廃止した日の属する年分又はその前年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する 出典: www.nta.go.jp

つまり、廃業後に届いた請求書も「廃業しなければ経費だったもの」なら、廃業年の経費に入れられるということ。慌てて廃業日を後ろにずらす必要はありません。

売掛金の貸倒れに備える

最後の取引先から入金がなかなか来ない、というケースもあります。廃業から1年以上経っても回収できない売掛金は、貸倒損失として処理できる可能性があります。ただし、貸倒の認定には「相手の倒産」「弁済不能」など客観的な根拠が必要です。「連絡が取れない」だけでは認められないので、最後の取引はできるだけ廃業前にクリーンに精算しておくのが鉄則です。

廃業後の国民健康保険・年金の「空白期間」を作らない

会社員に戻るまでに数週間〜数ヶ月のブランクが空く人は意外と多いものです。「来月から入社だから、もう国保は止めていい」と勘違いすると、無保険期間が発生し、その間に病気やケガをすると医療費が全額自己負担になります。

切り替えのベストな順番

タイミング やること
入社日が確定 会社に保険証の発行スケジュールを確認
入社初日 会社で健康保険・厚生年金の加入手続き
新しい保険証が手元に届く 旧保険証を持って市区町村窓口で国保脱退手続き
14日以内 国民年金の第1号→第2号被保険者の切り替え(通常は会社が代行)

国民健康保険は「脱退届を出した月の前月まで」遡って精算されます。入社日以降の保険料は二重払いになるので、必ず脱退手続きをしてください。脱退手続きを忘れると、国保の請求書が届き続けます。

失業給付は原則もらえない

「フリーランスを廃業したから失業給付がもらえる」と誤解している人がいますが、雇用保険に加入していなかった期間は失業給付の対象外です。フリーランス時代は雇用保険料を払っていないので、当然ながら失業保険は出ません。

ただし、過去に会社員だった期間が直近2年以内にあり、その雇用保険被保険者期間が通算12ヶ月以上ある場合は、受給資格が残っている可能性があります。ハローワークで「受給期間延長」の手続きをしておけば、最大4年まで受給期間を延ばせます。フリーランスを始める前に会社員だった人は、念のため確認しておく価値があります。

取引先・クライアントへの「廃業の伝え方」

意外と見落とされがちなのが、取引先への通知です。これを怠ると、後々トラブルになります。

伝えるタイミングと順序

  1. 継続案件があるクライアント:廃業の2〜3ヶ月前に直接連絡。後任者の紹介や引き継ぎ期間を設ける
  2. スポット取引のクライアント:未請求分の精算と合わせて1ヶ月前に連絡
  3. 税理士・記帳代行業者:確定申告のスケジュールがあるので早めに
  4. 銀行・クレジットカード会社:事業用口座・カードの解約タイミングを相談

通知メールのテンプレート

○○様

いつもお世話になっております。

私事で恐縮ですが、○月○日をもちまして個人事業を廃業し、
○月○日より会社員として勤務することとなりました。

つきましては、現在ご依頼いただいております案件について、
○月○日までに納品完了させていただき、それ以降の新規ご依頼は
お受けできません。

ご迷惑をおかけいたしますが、後任として△△様(連絡先:◯◯)を
ご紹介させていただきます。

これまでのご厚情に心より感謝申し上げます。

インボイス登録番号の失効

インボイス(適格請求書発行事業者)に登録していた方は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」の提出も必要です。提出しないと登録番号が有効なまま残り、取引先が誤って取引相手として認識し続ける可能性があります。廃業届と同じタイミングで税務署に出しておくのがスムーズです。

よくある質問

Q. 廃業届を出すのに費用や手数料はかかりますか?

廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出自体には、費用や手数料は一切かかりません。税務署の窓口で用紙をもらって提出するか、国税庁のホームページからダウンロードして郵送やe-Taxで提出することができます。ただし、郵送で提出する場合は切手代が、e-Taxの場合はマイナンバーカードや対応スマートフォンが必要になります。手続き自体は完全無料ですので安心してください。

Q. 廃業届はいつまでに提出する必要がありますか?期限を過ぎたらどうなりますか?

廃業届は、原則として「廃業した日から1ヶ月以内」に所轄の税務署へ提出する必要があります。万が一期限を過ぎてしまっても、罰則や罰金が発生することはありません。しかし、提出せずに放置していると税務署から事業を継続しているとみなされ、確定申告の案内が届き続けるなどの手間が増えます。また「青色申告の取りやめ届出書」の提出にも影響するため、忘れずに早めの提出をおすすめします。

Q. 会社員に戻る場合、健康保険や年金の切り替え手続きはどうすればいいですか?

会社に就職して会社の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する場合、加入手続き自体は会社側が行ってくれます。しかし、これまで加入していた「国民健康保険」と「国民年金」の脱退手続きは、自分で市区町村の役所窓口で行う必要があります。この脱退手続きを忘れると保険料の請求が続き、二重払いになってしまうため、会社から新しい健康保険証を受け取ったらなるべく早く手続きを済ませましょう。

Q. 年度の途中で廃業して会社員になった場合、その年の確定申告はどうなりますか?

年の途中で廃業して会社員になった場合でも、1月1日から廃業日までに得たフリーランスとしての「事業所得」がある場合は、翌年の確定申告時期(2月16日〜3月15日)に自分で確定申告を行う必要があります。就職先の会社で行う年末調整はあくまで「給与所得」のみが対象です。会社から発行される源泉徴収票と、事業を行っていた期間の帳簿や控除証明書を合わせて申告するため、書類は必ず保管しておきましょう。

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星野 ゆい

この記事を書いた人

星野 ゆい

元会社員のフリーランスライター

大手メーカーで営業職として5年間勤務した後、フリーランスライターとして独立。クラウドソーシングで人生が変わった経験をもとに、初心者向けの記事を中心に執筆しています。

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