フリーランス新法の違反相談窓口|発注者側が是正を求められた時の対応 2026

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
フリーランス新法の違反相談窓口|発注者側が是正を求められた時の対応 2026

この記事のポイント

  • フリーランス新法の違反相談窓口の仕組みと
  • 発注者が是正を求められた場合の具体的な対応手順を解説します
  • 申出から是正までの流れ

「フリーランス新法 相談窓口 対応」と検索してこのページにたどり着いた方の多くは、すでに何らかの取引トラブルを抱えているか、外注先とのやり取りに不安を感じている発注者だと思います。結論から言うと、相談窓口は違反した発注者を即座に処罰する場所ではなく、まず事実確認と是正のあっせんを行う機関です。慌てず段階を踏めば、多くのケースは是正勧告の前段階で収束します。

フリーランス新法と相談窓口を取り巻く現状

2024年11月1日にフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されて以降、発注者側の義務は明確に法制化されました。書面等での取引条件明示、報酬の60日以内の支払い、不当な減額や返品の禁止など、これまで慣習や口約束で済ませていた部分が法的義務に変わっています。

施行から時間が経つにつれ、フリーランス側の法律への理解も進み、「これは新法違反ではないか」と相談窓口に持ち込むケースが増加傾向にあります。厚生労働省が委託する「フリーランス・トラブル110番」には、報酬未払い、契約条件の一方的変更、ハラスメントなど多岐にわたる相談が寄せられており、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の3省庁が申出の受け皿になっています。

近年、個人の働き方が多様化し、雇用関係によらないさまざまな働き方が増えています。これらの方は、フリーランス、個人事業主、クラウドワーカーなどと呼ばれ、労働基準法上の労働者ではないとされています。フリーランス・トラブル110番は、まさにこのような働き方をする方のための相談窓口です。フリーランス法が2024年11月1日に施行されました。フリーランス法違反と考えられる場合に、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省へ申出をする際のアドバイスも受け付けています。 出典: freelance110.mhlw.go.jp

発注者側にとって重要なのは、この法律が「フリーランスを保護する」ことを目的にしている一方で、正しい取引実務を行っている発注者を不当に不利にする制度ではないという点です。書面明示・期日内支払い・業務範囲の明確化という基本を守っていれば、相談窓口を通じたやり取りに発展すること自体がほとんど起きません。逆に言えば、口頭発注や曖昧な業務範囲のまま進める発注慣行が残っている企業ほど、リスクにさらされやすい状況にあります。

フリーランス新法の相談窓口とは何か

フリーランス・トラブル110番の位置づけ

フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省委託事業として第二東京弁護士会が運営する相談窓口です。フリーランスとして働く個人からの相談を受け付け、弁護士による助言、和解あっせん手続き、そして法律違反が疑われる場合の行政庁への申出支援までを行います。

ここで発注者側が誤解しやすいのは、「相談窓口=行政処分の窓口」ではないという点です。相談窓口はまず事実関係の整理と当事者間の対話を促す役割を担っており、いきなり企業名が公表されたり罰則が科されたりするわけではありません。

このようなトラブルが起こっても、どうすればいいかわからなかったり、裁判をしても勝てそうにないと感じて泣き寝入りしてしまうというフリーランスの皆さんが多くいます。 出典: freelance110.mhlw.go.jp

この記述からもわかる通り、相談窓口が本来想定しているのは「泣き寝入りせず正当な権利を主張できる場」の提供です。発注者側としては、フリーランスから相談窓口への相談を切り出された時点で敵対視するのではなく、取引条件の見直しを求められていると捉えるほうが建設的です。

相談から申出、和解あっせんまでの流れ

相談窓口を利用するフリーランス側の一般的な流れは、次の通りです。

まず電話やWebフォームで相談を申し込み、弁護士が事実関係をヒアリングします。次に、単なる助言で解決できる案件か、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省への「申出」が必要な案件かを振り分けます。申出が行われると、各省庁が発注企業に対して報告徴収や立入検査を行う場合があります。

和解あっせん手続きに進む場合は、弁護士が間に入って両者の合意形成を図ります。この段階では強制力はなく、あくまで話し合いによる解決を目指す仕組みです。ただし、発注者側が誠実に対応しない場合や、明らかな法令違反が確認された場合には、行政指導や勧告、さらには企業名の公表という段階に進む可能性があります。

Web(ビデオ通話)でのご相談もお受けすることもできますが、完全予約制です。まずはお問い合わせフォームから申し込みしてください。直接、フリーランス・トラブル110の相談窓口にお越しになられてもご対応できません。 出典: freelance110.mhlw.go.jp

相談窓口の運用が予約制かつ書面中心であることからも、感情的な即断即決の場ではなく、事実確認を丁寧に積み上げる仕組みであることがわかります。発注者側にとっては、この段階的なプロセスを理解しておくこと自体が、無用な焦りを避ける第一歩になります。

発注者が是正を求められた時の具体的な対応

最初にやるべきこと:事実関係の記録整理

フリーランスから相談窓口を通じて連絡が来た、あるいは行政庁から報告徴収の通知が届いた場合、まず着手すべきは事実関係の時系列整理です。発注時のメールやチャットのやり取り、契約書や発注書、報酬の支払い記録、業務内容の変更履歴を一つのファイルにまとめます。

このとき重要なのは、都合の悪い記録を削除・改ざんしないことです。行政庁への申出が行われた場合、後から記録の不備が発覚すると、単なる法令違反以上に「隠蔽の意図があった」と評価されるリスクが高まります。正確な記録をありのまま整理し、どの部分が新法の要件を満たしていなかったのかを客観的に把握することが先決です。

書面明示義務違反への対応

フリーランス新法で最も相談件数が多いのが、取引条件の書面明示義務違反です。口頭発注のみで業務を依頼し、報酬額や納期、業務内容を明確な書面(電子メールやチャットでの明示も可)で示していなかったケースが該当します。

このケースで是正を求められた場合、まずは該当する業務についてただちに書面での確認を行い、以後の取引でも標準化された発注書フォーマットを整備することが基本対応になります。過去分について遡って書面を作成することはできませんが、今後の是正措置として発注プロセスを改善したことを示す姿勢は、あっせん手続きにおいても評価される要素です。

報酬支払い遅延への対応

60日以内の報酬支払い義務に違反していた場合、まず未払い分があれば速やかに全額支払いを行うことが最優先です。支払いが完了した事実、支払いが遅延した理由(資金繰りの都合か、検収プロセスの遅れかなど)を整理し、再発防止策として支払いサイクルの見直しを行った記録を残します。

支払い遅延は金額の多寡にかかわらず法令違反として扱われるため、「少額だから問題ない」という認識は禁物です。相談窓口や行政庁とのやり取りでは、遅延の事実を認めた上で、速やかな是正と再発防止策を提示する誠実な対応が、事態の早期収束につながります。

不当な減額・やり直し要求への対応

成果物の受領後に発注者側の一方的な都合で報酬を減額したり、契約範囲を超えるやり直しを無償で要求したりする行為も、フリーランス新法が規制する典型的な違反類型です。是正を求められた場合は、当初の契約内容(業務範囲、報酬額、修正回数の上限など)を明文化していたかどうかがまず問われます。

契約時に修正回数や追加作業の扱いを明確にしていなかった場合、今後は業務委託契約書のひな型に修正範囲・追加費用の条項を必ず盛り込む形に改めるべきです。既に発生した減額分については、フリーランス側と協議の上で追加支払いに応じるケースが一般的な着地点になります。

相談窓口対応にかかる時間とコストの相場

是正対応そのものに直接的な費用が発生するわけではありませんが、社内対応工数と外部専門家への相談費用は無視できません。相談窓口を通じたあっせん手続きへの対応には、事実関係整理から合意形成まで1〜3か月程度を要するケースが一般的です。

顧問弁護士に対応を依頼する場合、スポット相談で3万円〜10万円程度、継続的な代理対応まで含めると20万円〜50万円程度が相場です。社労士や中小企業診断士に発注プロセスの見直しを依頼する場合は、コンサルティング費用として10万円〜30万円程度を見込んでおく必要があります。

ここで見落とされがちなのが、こうしたコストは「トラブルが起きてから」発生する事後対応費用だという点です。発注段階で契約書や発注書のフォーマットを整備し、支払いサイクルを厳守する運用を最初から敷いておけば、こうした事後対応コストの大部分は不要になります。予防のためのコストは、事後対応の10分の1以下で済むことがほとんどです。

直接依頼と仲介経由でトラブル対応力に差が出る理由

フリーランス新法対応において、発注者が仲介会社(代理店やエージェント)を経由するか、フリーランスに直接依頼するかは、実務上のリスク管理にも影響します。仲介経由の場合、契約条件の明示や支払い管理を仲介会社が担うことが多く、発注者自身が法令を意識せずに済む反面、仲介手数料として報酬総額の20%〜30%程度が上乗せされるのが一般的です。

一方で、フリーランスへ直接依頼する場合は中間マージンが発生しないため、同じ予算でより多くの業務を依頼できるか、あるいは同じ業務をより低いコストで依頼できます。ただし、その分、取引条件の明示・支払い管理・契約書の整備といった新法対応の実務は発注者自身が担う必要があります。

正直なところ、「仲介に丸投げすれば安心」という考え方は半分正解で半分は誤解です。仲介会社を使っていても、実際の契約当事者が発注企業である以上、フリーランス新法の義務主体になるケースは十分にあり得ます。直接取引か仲介経由かにかかわらず、発注者自身が新法の要件を理解し、標準化された発注プロセスを持っておくことが最も確実なリスク対策です。

筆者自身、以前に外注先の選定で見積もりの比較だけに気を取られ、契約条件の書面化を後回しにしてしまい、業務範囲の認識違いから追加作業の扱いで揉めた経験があります。安さだけで判断せず、発注時点で業務範囲・納期・報酬・修正回数を書面に落とし込んでおくことの重要性を、身をもって痛感しました。

失敗しない外注先の選び方と発注プロセスの整備

業務範囲を最初に明文化する

フリーランス新法対応の第一歩は、業務範囲を発注前に明文化することです。「SNS運用代行」といった大枠だけでなく、投稿本数、画像制作の有無、コメント返信の対応範囲、月次レポートの有無まで具体的に書面化しておくことで、後からの「やり直し要求」や「範囲外作業の無償対応」を巡るトラブルを未然に防げます。

例えばAIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、業務範囲が案件ごとに大きく異なる領域では、発注時点での業務範囲の明文化が特に重要になります。逆にアプリケーション開発のお仕事のような開発案件では、要件定義書や仕様書を契約書に添付する形で明示するのが一般的です。

報酬相場を把握してから発注する

新法違反の背景には、発注者側が相場を把握しないまま報酬額を決めてしまい、結果的に「買い叩き」と評価されるケースも含まれます。発注前には該当する職種の年収・単価相場を確認し、著しく低い水準での発注を避けることがトラブル予防につながります。

例えばソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場のようなデータベースを参照することで、市場水準からかけ離れた発注条件を避けやすくなります。

支払いフローを標準化する

60日以内の支払い義務を確実に守るためには、検収から支払いまでのフローを標準化し、社内の経理担当者やシステムに落とし込んでおくことが有効です。検収期限、支払いサイト、振込処理のタイミングをあらかじめ決めておけば、繁忙期でも支払い遅延が発生しにくくなります。

@SOHOのデータから見る発注者と受注者の関係構築

20年近くこのフリーランス・在宅ワーク市場を運営してきた立場から見ると、フリーランス新法への対応で相談窓口に持ち込まれるケースの多くは、悪意ある搾取よりも「発注実務の未整備」に起因しています。書面を残さない、業務範囲を口頭合意だけで済ませる、支払いサイクルを場当たり的に運用するといった慣行が、結果的に法令違反に発展しています。

長く安定して外注先と付き合っている発注者ほど、単発の作業依頼ではなく「次も安心して任せられる関係」を築くことに時間をかけている傾向があります。契約条件を丁寧に明示し、期日通りに支払うという基本を守ることが、結果的にフリーランス側からの信頼を得て、優秀な人材との継続的な関係につながっています。

中間マージンが発生しない直接取引の構造は、発注者側の予算をより多くの業務に充てられるだけでなく、受注者側の手取りも厚くなるという、双方にとって合理的な仕組みです。手数料0%で直接つながる関係は、単に安く済むというだけでなく、発注者が業務範囲や条件を明確に伝え、受注者がそれに誠実に応える、健全な取引関係の土台になります。相談窓口への相談が発生する前段階で、こうした健全な発注プロセスを整備しておくことこそが、最も確実なフリーランス新法対応だと言えます。

新法対応を単なる「守るべき規制」として捉えるのではなく、良質な外注先との長期的な関係を築くための土台と捉え直すことで、発注者側にとっても取引全体の質が向上していきます。実際、フリーランス新法(2024年施行)の実務対応ガイド|2026年最新の注意点では、施行後の実務対応で押さえておくべきポイントをさらに詳しく解説していますので、あわせて確認しておくことをおすすめします。

また、業務委託と並行して人材採用を検討している企業であれば、2026年の最低賃金引上げに対応|中小企業が使える「業務改善助成金」の活用法のような周辺制度も、コスト管理の観点から参考になります。フリーランス新法への対応は単発の作業ではなく、発注プロセス全体を見直す機会と捉えて取り組むことが、長期的な取引の安定につながります。

よくある質問

Q. フリーランス新法の相談窓口に相談されたら、必ず行政処分を受けますか?

必ずしもそうではありません。相談窓口はまず事実確認とあっせんによる解決を優先します。誠実に是正対応を行えば、行政指導や勧告に至らず収束するケースが多くあります。

Q. 是正を求められた場合、最初に何をすべきですか?

発注時のやり取りや契約書、支払い記録を時系列で整理することが最初のステップです。事実関係を正確に把握した上で、該当する違反類型に応じた是正措置を講じます。

Q. 相談窓口対応にかかる費用の相場はどのくらいですか?

顧問弁護士へのスポット相談で3万円〜10万円程度、継続的な代理対応を含めると20万円〜50万円程度が一般的です。発注プロセスの見直しコンサルティングは10万円〜30万円程度が目安です。

Q. 仲介会社を使っていれば新法対応の義務は仲介会社が負いますか?

契約当事者が発注企業である場合、仲介会社を使っていても発注者自身が義務主体になるケースがあります。直接取引・仲介経由にかかわらず、発注者自身が新法の要件を理解しておく必要があります。

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この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月10日最終更新:2026年7月31日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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