財務理論の勉強法|中小企業診断士の財務・会計の対策


この記事のポイント
- ✓中小企業診断士の第1次試験「財務・会計」と第2次試験の事例IVに向けて整理
- ✓会計とファイナンスの出題範囲
- ✓経営分析・損益分岐点・投資判断の解き方
財務理論の勉強法を調べている人の多くは、中小企業診断士の「財務・会計」で点が伸びず、何から手を付ければよいのか迷っています。結論から言うと、財務理論は「簿記で数字の流れをつかむ」「計算の型を少数に絞って反復する」「過去問で出題の癖を知る」の3段階で進めると、遠回りせずに得点が安定します。この記事では、試験の仕組みを公式の案内で確かめたうえで、出題範囲の分け方、勉強の順番、頻出の計算の解き方、第2次試験の事例IVへのつなげ方までを順に説明します。
財務理論の勉強法を考える前に試験の形を知る
財務理論は、中小企業診断士の第1次試験では「財務・会計」という科目名で出題されます。財務・会計とは、会社の数字を読む会計の知識と、お金の価値や投資の判断を扱うファイナンスの知識をまとめた科目のことです。試験を実施する一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会の案内によると、令和8年度の第1次試験は8月1日と2日の2日間で行われ、財務・会計は1日目の11時30分から12時30分までの60分、配点は100点でした。
第1次試験は全部で7科目あり、試験の方法は多肢選択式の筆記です。年齢や学歴による受験資格の制限はありません。財務・会計は1日目の2科目目に置かれていて、午前の経済学・経済政策を受けた直後に、計算の多い60分を解くことになります。
第2次試験は、第1次試験に合格した人が受ける記述式の試験です。令和8年度は10月25日に行われ、事例Iから事例IVまでの4つの事例をそれぞれ80分で解きます。このうち事例IVが財務・会計を土台にした事例で、第1次試験で学んだ経営分析や投資の判断を、文章で答える形で問われます。令和8年度からは第2次試験の口述試験が廃止され、筆記だけで合否が決まるようになりました。
つまり、財務理論の勉強は第1次試験の1科目で終わるものではなく、第2次試験の事例IVまで続く長い科目です。最初に覚えた計算の型が、そのまま第2次試験でも使えるように、土台を丁寧に作ることが大切です。
| 項目 | 第1次試験の財務・会計 | 第2次試験の事例IV |
|---|---|---|
| 試験の方法 | 多肢選択式の筆記 | 筆記(記述と計算) |
| 試験時間 | 60分 | 80分 |
| 配点 | 100点 | 100点 |
| 電卓 | 使えない | 使える |
| 令和8年度の試験日 | 8月1日 | 10月25日 |
この表のとおり、第1次試験では電卓が使えません。協会連合会のよくある質問でも、電卓は第2次試験のみ使用可と案内されています。第1次試験の財務・会計は、手で計算できる数字に調整された問題が出ますが、それでも計算の速さと正確さが点数を大きく左右します。
合格基準と科目合格の仕組み
財務・会計の勉強の量を決めるには、合格基準を正しく知っておく必要があります。協会連合会のよくある質問には、第1次試験の合格基準が次のように書かれています。
第1次試験の合格基準は、総点数の 60% 以上であって、かつ1科目でも満点の 40% 未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。 科目合格基準は、満点の 60% を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。 出典: jf-cmca.jp
言い換えると、7科目の合計で6割を取り、どの科目も4割を下回らなければ第1次試験に合格します。合計で6割に届かなかった場合でも、財務・会計で6割を取れば、その科目だけ「科目合格」になります。
科目合格した科目は、次の年度以降の試験で免除を申請できます。中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則では、科目合格した試験の行われた年度の初めから3年以内に第1次試験を受けるとき、申請によってその科目が免除されると定められています。たとえば令和8年度に財務・会計で科目合格すれば、令和9年度と令和10年度の試験では、財務・会計を受けずに残りの科目に集中できます。
また、公認会計士や税理士の資格を持つ人は、申請によって財務・会計が免除されます。これも同じ規則に書かれている他資格等による免除の1つです。会計の専門職がすでに持っている知識を、もう一度試験で問わない仕組みになっています。
この仕組みから、財務・会計の戦略は2通りに分かれます。1つは、得意科目にして6割を大きく超える点を取り、ほかの科目の不足を補う方法です。もう1つは、苦手でも4割を割らない点を確実に取り、ほかの得意科目で合計を6割に乗せる方法です。会計や数字に慣れている人は前者、文系で計算に不安がある人は後者を目安に計画を立てると、勉強の時間配分を決めやすくなります。
財務・会計が難しいと言われる理由
財務・会計は、受験生の間で特に差がつく科目だと言われます。協会連合会が公表した令和8年度第1次試験の統計資料では、財務・会計の科目受験者数は17,474人、科目合格者数は3,378人でした。この科目合格者数には、7科目すべてで第1次試験に合格した人は含まれていません。単純に割ると、試験全体には合格しなかった人のうち、財務・会計で6割を取れた人はおよそ2割ということになります。
難しく感じる理由は、主に3つあります。
1つ目は、出題範囲が広いことです。簿記の仕訳から財務諸表の読み方、原価計算、経営分析、損益分岐点、投資の判断、資本コスト、株式や債券の価格、デリバティブまで、会計とファイナンスの両方から出題されます。大学で学ぶなら複数の授業にまたがる内容が、1つの科目にまとめられています。
2つ目は、電卓なしで計算しなければならないことです。正しい式を立てられても、筆算で途中の数字を間違えれば点になりません。60分という時間の中で、計算に時間を取られすぎると、後半の理論問題に手が回らなくなります。
3つ目は、用語の意味をあいまいにしたまま進むと、どこかで必ずつまずくことです。たとえば「キャッシュフロー」とは、一定期間に会社に実際に出入りしたお金の流れのことですが、利益との違いを理解していないと、投資の判断の問題で何を計算すべきかが分からなくなります。財務理論の問題は、用語の定義そのものを問う形で出ることも多いため、言葉の理解が点数に直結します。
逆に言えば、この3つに順番に手を打てば、財務・会計は得点を安定させやすい科目でもあります。暗記中心の科目と違い、一度身につけた計算の型は忘れにくく、毎年似た形の問題が出るからです。
出題範囲を会計とファイナンスに分けて全体像をつかむ
財務理論の勉強を始めるときは、まず出題範囲を大きく2つに分けて眺めると全体像がつかめます。会計は過去の数字を正しく記録して読む分野、ファイナンスはこれからのお金の価値を考えて判断する分野です。
| 分野 | 主な単元 | 何ができるようになるか |
|---|---|---|
| 会計 | 簿記の基礎、財務諸表、原価計算、税効果会計、連結会計 | 会社の数字がどう作られるかを説明できる |
| 会計 | 経営分析、損益分岐点分析 | 会社の強みと弱みを数字で説明できる |
| 会計とファイナンスの橋渡し | キャッシュフロー計算書 | 利益とお金の動きの違いを説明できる |
| ファイナンス | 投資の判断(正味現在価値、回収期間、内部収益率) | 設備投資をすべきかを判断できる |
| ファイナンス | 資本コスト、企業価値、株式と債券の価格 | 会社や資産の値打ちを計算できる |
| ファイナンス | ポートフォリオ理論、デリバティブ | リスクの減らし方を説明できる |
この表で上にある単元ほど、下の単元の土台になります。財務諸表が読めなければ経営分析はできませんし、キャッシュフローが分からなければ投資の判断の問題は解けません。勉強の順番も、基本的には表の上から下へ進めるのが効率的です。
もう1つ意識しておきたいのは、会計の分野は「ルールを覚える」勉強、ファイナンスの分野は「考え方を理解する」勉強だということです。会計は仕訳や表示のルールが決まっているので、繰り返し手を動かして覚えます。ファイナンスは、なぜ将来のお金を割り引くのか、なぜ分散するとリスクが減るのかといった理屈を理解すると、初めて見る問題にも対応できます。同じ科目の中でも、勉強の仕方を切り替える必要があります。
勉強の順番は簿記から入る
財務理論の勉強で最初にやるべきなのは、簿記の基礎です。簿記とは、会社のお金やモノの出入りを、決まったルールで帳簿に記録する方法のことです。財務・会計の問題は、簿記の考え方を知っている前提で作られているため、ここを飛ばして経営分析やファイナンスに進むと、途中で必ず戻ることになります。
簿記で押さえるべき点は、次の4つです。
- 仕訳の考え方。取引を「借方」と「貸方」の2つの面から記録する理由を理解する
- 貸借対照表の構造。資産、負債、純資産の関係と、それぞれに入る主な項目を覚える
- 損益計算書の構造。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益の順に、何を引いて何が残るのかを説明できるようにする
- 決算整理。減価償却、貸倒引当金、売上原価の計算など、期末に行う調整の意味を知る
減価償却とは、何年も使う設備の購入費を、使う年数に分けて少しずつ費用にしていく考え方のことです。これは後で学ぶキャッシュフローや投資の判断でも何度も出てくるので、早い段階で理解しておくと後が楽になります。
簿記を学ぶ方法としては、日本商工会議所の簿記検定の3級や2級のテキストを使う人が多くいます。検定を受けるかどうかは別として、商業簿記の範囲を一通り終えておくと、財務・会計の会計分野の大半を読み解けるようになります。すでに経理の仕事をしている人や簿記の資格を持っている人は、この段階を短く済ませて、次の経営分析に進んで構いません。
簿記の次は、経営分析と損益分岐点分析に進みます。この2つは第1次試験でも第2次試験でも毎年のように出題される重要な単元で、ここで得点源を作ると、財務・会計全体の点数が安定します。その後にキャッシュフロー計算書、投資の判断、資本コストと企業価値の順で進め、最後に連結会計やデリバティブのような出題数の少ない単元を扱う流れが、時間を無駄にしにくい順番です。
経営分析の指標は意味から覚える
経営分析とは、財務諸表の数字を組み合わせて、会社の収益力や安全性を測ることです。指標の数は多いですが、丸暗記するより「何と何を比べているのか」から覚えると、試験の場で式を思い出せます。
| 観点 | 代表的な指標 | 式の考え方 |
|---|---|---|
| 収益性 | 売上高総利益率、売上高営業利益率 | 売上のうち利益として残った割合 |
| 収益性 | 総資本経常利益率 | 使っている資本全体でどれだけ稼いだか |
| 効率性 | 総資本回転率、売上債権回転率、棚卸資産回転率 | 資産が1年に何回売上に変わったか |
| 安全性(短期) | 流動比率、当座比率 | 1年以内に払うお金を、1年以内に現金になる資産で払えるか |
| 安全性(長期) | 自己資本比率、固定比率、固定長期適合率 | 長く使う資産を、返さなくてよいお金や長期のお金でまかなえているか |
たとえば流動比率は、流動資産を流動負債で割った値です。流動資産とは1年以内に現金になる資産、流動負債とは1年以内に支払う負債のことなので、この比率が高いほど短期の支払いに余裕があると読めます。当座比率は、流動資産のうち在庫のように現金化に時間のかかるものを除いた当座資産で計算するため、より厳しめに支払い能力を見る指標です。
経営分析の問題を解くときのコツは、指標を計算したら必ず「良いのか悪いのか」と「その理由」を一言で言えるようにしておくことです。第1次試験では計算結果を選ぶだけですが、第2次試験の事例IVでは、同業他社と比べて劣っている指標を選び、その原因を文章で説明させる問題が定番です。計算と説明をセットで練習しておくと、第2次試験でそのまま使えます。
覚え方としては、指標を観点ごとに表にして、分子と分母を自分の手で書き出す練習が効果的です。総資本回転率なら分子が売上高で分母が総資本、総資本経常利益率なら分子が経常利益で分母が総資本というように、分母がそろっている指標をまとめると混乱が減ります。
損益分岐点分析は1つの式から広げる
損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上高のことです。損益分岐点分析はCVP分析とも呼ばれ、費用を売上に比例して増える変動費と、売上に関係なくかかる固定費に分けて考えます。
基本になる式は1つだけです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
限界利益とは売上高から変動費を引いた額のことで、限界利益率はそれを売上高で割った割合です。たとえば、売上高が1,000万円、変動費が600万円、固定費が300万円の会社なら、限界利益は400万円、限界利益率は40%です。損益分岐点売上高は300万円を0.4で割って750万円になります。
この1つの式から、試験に出る問題の多くが解けます。目標の利益を出すのに必要な売上高は、固定費に目標の利益を加えて限界利益率で割れば求められます。上の例で100万円の利益を出したいなら、400万円を0.4で割って1,000万円です。損益分岐点比率は損益分岐点売上高を実際の売上高で割った値で、上の例では75%になり、この値が低いほど売上が落ちても赤字になりにくい会社だと読めます。
損益分岐点分析でつまずきやすいのは、費用を変動費と固定費に分ける部分です。問題文に「売上原価は全額変動費、販売費及び一般管理費は全額固定費とする」のような条件が書かれていることが多いので、まず条件を確かめてから式に当てはめる習慣をつけてください。第2次試験では、2期分の売上と費用から変動費率と固定費を逆算させる問題もよく出ます。2つの期の売上高の差と費用の差から変動費率を出す方法も、あわせて練習しておくと安心です。
投資の判断は時間の価値を理解してから
投資の判断の単元では、設備投資などをすべきかどうかを数字で判断する方法を学びます。中心になる考え方は、今日の100万円と1年後の100万円は値打ちが違うという「お金の時間価値」です。今日の100万円は、銀行に預けて利息を得たり、事業に使って利益を生んだりできるので、1年後に受け取る100万円より価値が高いと考えます。
この考え方を使った代表的な方法が、正味現在価値法です。正味現在価値とは、投資によって将来得られるキャッシュフローを、今の価値に割り引いて合計し、そこから最初の投資額を引いた値のことです。この値がプラスなら投資する価値があり、マイナスなら見送るべきだと判断します。
簡単な例で考えます。今100万円を投資すると、1年後に60万円、2年後に60万円のキャッシュフローが入るとします。割引率を10%とすると、1年後の60万円の現在価値は60万円を1.1で割って約54.5万円、2年後の60万円は1.1を2回かけた1.21で割って約49.6万円です。合計は約104.1万円で、投資額の100万円を引くと正味現在価値は約4.1万円のプラスになるので、この投資は行う価値があると判断できます。
試験では、割り引くための係数が問題文の表に示されることがほとんどです。電卓がない第1次試験では、係数とキャッシュフローの掛け算を正確に速く行う力が問われます。
ほかの方法として、回収期間法と内部収益率法も覚えておきます。回収期間法は、投資額を何年で回収できるかを見る方法で、分かりやすい反面、お金の時間価値を考えない点が弱点です。内部収益率とは、正味現在価値がちょうどゼロになる割引率のことで、この値が会社の資本コストを上回れば投資する価値があると判断します。3つの方法の長所と短所を比べさせる理論問題も出るので、計算だけでなく特徴も言葉で説明できるようにしておきます。
投資の判断で最も間違えやすいのが、キャッシュフローの計算です。利益と違い、減価償却費はお金が出ていかない費用なので、税引後の利益に減価償却費を加え戻してキャッシュフローを求めます。また、減価償却費が費用になる分だけ税金が減る効果、いわゆる節税効果も計算に入れます。この部分は簿記の減価償却の理解がそのまま問われるところで、簿記から勉強を始める理由の1つでもあります。
ファイナンス理論は図と言葉で理解する
ファイナンス理論の単元は、計算より考え方を問う問題が多く、ここを苦手にする人が少なくありません。おもな単元は、資本コスト、企業価値、ポートフォリオ理論、デリバティブです。
資本コストとは、会社が資金を集めるためにかかる費用のことです。銀行から借りれば利息がかかり、株主から集めれば株主が期待する見返りに応える必要があります。この2つを、借入と株式の割合で重み付けして平均したものが加重平均資本コストで、英語の頭文字からWACCと呼ばれます。投資の判断の割引率には、このWACCがよく使われます。
株主が期待する見返りを求める方法として、CAPMという考え方が出題されます。CAPMとは、安全な資産の利回りに、市場全体の動きに対してその株がどれだけ大きく動くかを表すベータと、市場全体の上乗せの利回りを掛けたものを加えて、株式の期待収益率を求める式のことです。式そのものは短いので、ベータが1より大きい株は市場より値動きが大きい、という意味と合わせて覚えます。
ポートフォリオ理論は、複数の資産に分けて持つとリスクが下がる理由を説明する理論です。2つの資産の値動きの関係を表す相関係数が1より小さければ、組み合わせることでリスクを下げられます。この単元は図で問われることが多いので、テキストの図を自分で書き写して、どの点が最もリスクが小さい組み合わせなのかを確かめる練習が効果的です。
デリバティブとは、株や為替、金利などの値動きをもとに作られた取引のことで、先物、オプション、スワップが代表的です。中小企業の為替の変動への備えとして、為替予約や通貨オプションの損益を問う問題が出ます。損益を表す図を見て、どの取引の図なのかを見分けられるようにしておくと、得点につながります。
ファイナンス理論は、最初は抽象的で分かりにくく感じますが、「お金の時間価値」と「リスクとリターンの関係」という2つの考え方が全体を貫いています。この2つを軸にして単元どうしのつながりを意識すると、ばらばらの知識が1つの体系として頭に入ります。
過去問の回し方と60分の時間配分
財務・会計の勉強で最も効果が高いのは、過去問の反復です。協会連合会は第1次試験の問題と正解、配点を中小企業診断士試験のページで公表していて、過去の年度の問題も同じサイトから見られます。無料で使える一次資料なので、市販の問題集と合わせて必ず使ってください。
過去問の回し方は、次の3段階がおすすめです。
- 単元別に解く。テキストで1つの単元を読んだら、その単元の過去問を複数年度分まとめて解き、出題の形をつかむ
- 年度別に解く。単元が一通り終わったら、1年度分を60分で通して解き、時間配分を確かめる
- 間違えた問題だけを解き直す。間違えた理由を「知識不足」「計算ミス」「時間切れ」に分けて記録し、原因ごとに対策を変える
時間配分では、計算に時間がかかる問題を後回しにする判断が大切です。財務・会計の問題は、用語の正誤を問う問題と、計算が必要な問題が混ざっています。最初の一巡で知識だけで解ける問題を先に片付け、計算問題は見通しが立つものから解き、時間がかかりそうな問題は印を付けて飛ばす。この流れを年度別の演習で何度も試し、自分に合った順番を決めておくと、本番で焦らずに済みます。
もう1つ大切なのが、毎年似た形で出る単元を優先することです。経営分析、損益分岐点、投資の判断、キャッシュフロー計算書、資本コストは、ほぼ毎年何らかの形で出題されます。連結会計や会計基準の細かい論点のように出題がまれな単元は、深追いせず、基本の問題が解ける程度にとどめるのが現実的です。限られた時間で6割を取る科目なので、全部を完璧にする必要はありません。
電卓なしの計算力を鍛える練習
第1次試験では電卓が使えないため、筆算の速さと正確さが点数を左右します。計算力は、短時間の練習を毎日続けることで確実に伸びます。
効果のある練習は、次のとおりです。
- 割り算を掛け算に直す習慣をつける。0.4で割る計算は2.5を掛ける計算と同じというように、よく出る数字の逆数を覚えておくと速くなる
- 単位をそろえてから計算する。千円単位と百万円単位が混ざった問題では、最初に単位をそろえるだけで桁の間違いが大きく減る
- 選択肢から逆算する。計算の途中で大まかな値を見積もり、選択肢のどれに近いかを確かめると、細かい計算を省ける問題がある
- 途中の式を省略しない。暗算で済ませた部分の間違いは、見直しで見つけにくい
過去問を解くときも、計算用紙に途中の式を残しておくと、間違えた原因を後から確かめられます。計算ミスが多い人は、どの段階で間違えたのかを記録すると、自分の癖が見えてきます。割り算の小数点の位置を間違えやすい人もいれば、符号の向きを取り違えやすい人もいて、癖が分かれば見直す場所を絞れます。
一方、第2次試験の事例IVでは電卓が使えます。ただし、計算の量は第1次試験より多く、80分の中で経営分析、損益分岐点、投資の判断を続けて解くことが多いため、電卓を使っても式を立てる速さが求められます。第1次試験の段階で式を立てる練習を十分にしておくと、第2次試験の準備がそのまま楽になります。
第2次試験の事例IVにつなげる勉強
第1次試験の財務・会計に合格した後は、第2次試験の事例IVに向けた準備に進みます。事例IVは、ある中小企業の財務諸表と経営の状況を読み、経営分析、損益分岐点、投資の判断などを記述と計算で答える試験です。
第1次試験との一番の違いは、答えを自分で書かなければならないことです。選択肢がないため、式を立てる段階から自分で組み立てる必要があります。また、計算の結果だけでなく、その結果が会社にとって何を意味するのかを文章で説明する問題も出ます。
事例IVの準備で意識したいのは、次の3点です。
- 経営分析は、指標の名前と値だけでなく、なぜその指標が良いのか悪いのかを、事例の文章の中から根拠を探して書く練習をする
- 損益分岐点と投資の判断は、第1次試験より複雑な条件で出るので、条件を整理する表を自分で作ってから計算する
- 計算の過程を書かせる問題があるので、途中の式を他人が読んでも分かる形で書く練習をする
第2次試験の受験資格は、その年度か前の年度に第1次試験に合格した人に限られます。令和8年度の第2次試験なら、令和8年度か令和7年度の第1次試験の合格者が受けられます。第1次試験の合格から第2次試験までは約2か月半しかないため、事例IVの準備は第1次試験の勉強と並行して少しずつ始めておくと、時間の不足に悩まずに済みます。
第2次試験の合格基準も、総点数の60%以上で、かつ1つの事例でも満点の40%未満がないことを基準としています。事例IVで大きく崩れると、ほかの事例が良くても不合格になりうるため、財務の力は最後まで安定させておく必要があります。
独学か講座か、無料で使える教材
財務理論を独学で進めるか、講座を使うかは、会計の経験と使える時間で決めるのが現実的です。
独学に向いているのは、簿記の知識がすでにある人や、経理や財務の仕事をしている人です。こうした人は会計の分野の多くを知っているので、ファイナンスの単元と過去問の演習に時間を集中できます。市販のテキストと問題集を1冊ずつに絞り、過去問を繰り返せば、講座を使わずに得点を伸ばせる人も多くいます。
講座が役に立つのは、会計の知識がほとんどない人や、勉強の計画を自分で立てるのが苦手な人です。財務・会計は、どこでつまずいているのかを自分で見つけにくい科目なので、質問できる環境があると遠回りを減らせます。通信講座やオンライン講座には、無料の体験講義を用意しているところも多いので、申し込む前に説明の分かりやすさを確かめてください。
無料で使える教材としては、次のものがあります。
- 協会連合会が公表している過去の試験問題と正解。最も信頼できる一次資料
- 中小企業庁の中小企業診断士の関連情報のページ。制度の概要や登録の手続きを確かめられる
- 金融機関や公的機関が公開している財務諸表の読み方の解説。経営分析の考え方を補える
どの方法を選んでも、勉強の中心は過去問であることは変わりません。テキストを読み込む時間より、問題を解いて間違える時間を長く取るほうが、財務・会計の点数は伸びます。
財務理論の知識を仕事に生かす
財務理論の知識は、試験に合格した後も幅広い仕事に生かせます。中小企業診断士として登録するには、第2次試験に合格した後、実務補習を受けるか、診断や助言の実務に従事するかして、その日数の合計が15日以上になる必要があります。中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則に定められた条件で、登録の申請は試験の合格から3年以内に行います。
登録の前でも、財務の知識は仕事の場面で役立ちます。会社の決算書を読んで取引先の状況をつかむ、事業計画の数字を作る、補助金の申請書の収支計画を整える、といった仕事は、財務・会計で学んだ内容そのものです。在宅の業務委託でも、経理の補助、事業計画書の作成支援、財務に関する記事の執筆など、財務の知識を求める仕事は多くあります。
財務の知識を記事にする仕事では、用語を正しく説明できる力が強みになります。数字を扱う記事は、誤りがあると読者の判断を誤らせるため、根拠を確かめて書ける書き手が求められます。文章の書き方そのものを整えたい人は、ビジネスの文章の基本を問うビジネス文書検定の内容も参考になります。報告書や提案書の構成、敬語の使い方といった、財務の説明を相手に届けるための書き方を体系立てて学べます。
財務の分析や調査の仕事を広げたい人は、研究や調査を本業とする人たちの収入の目安を知っておくと、自分の仕事の値付けを考える材料になります。研究者の年収・単価相場では、研究職の年収の目安や、調査や分析を業務委託で受ける場合の単価の相場がまとめられています。
運営者として見てきた財務の知識の生かされ方
@SOHO編集部は2004年から在宅ワークとフリーランスの仲介を続けてきましたが、その中で感じるのは、財務の知識を持つ人ほど、仕事の相手から長く頼られる傾向があることです。決算書の数字から「この会社は今、何に困っているのか」を読み取れる人は、単発の作業ではなく、継続した相談の相手として選ばれやすくなります。
また、資格の名前だけで仕事が来ることは少なく、実際に頼まれた作業を正確に仕上げることが次の依頼につながっています。財務理論の勉強で身につけた「根拠を確かめてから数字を書く」習慣は、試験の点数以上に、仕事の信頼を支える力になります。仲介の手数料が乗らない直接の取引なら、依頼する側は同じ予算でより多くの相談を頼め、受ける側は手元に残る報酬が厚くなります。財務の知識を生かした仕事は、こうした継続の関係と相性がよい分野です。
業務の中でAIを使った分析や資料作りを支援する仕事も広がっています。財務の数字を読む力にAIの使い方を組み合わせたい人は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で、どのような依頼があり、どのような準備が求められるのかを確かめてみてください。財務理論の勉強は、試験の合格だけでなく、その先の仕事の幅を広げるための土台になります。
よくある質問
Q. 財務・会計は簿記の資格がなくても合格できますか?
簿記の資格がなくても合格はできます。ただし、財務・会計の問題は簿記の考え方を知っている前提で作られているため、資格の有無にかかわらず、仕訳、貸借対照表、損益計算書、減価償却といった基礎は最初に学んでおく必要があります。簿記検定の3級や2級のテキストで商業簿記を一通り終えてから、経営分析や投資の判断に進むと理解が早くなります。
Q. 財務・会計の勉強時間はどのくらい見込めばよいですか?
必要な時間は、会計の経験によって大きく変わります。経理の仕事をしている人や簿記の知識がある人は、ファイナンスの単元と過去問に絞れるので短く済みます。会計の知識がほとんどない人は、簿記の基礎から始める分だけ長くかかります。まずテキストの1単元と過去問を解いてみて、自分の進む速さを測ってから全体の計画を立てると現実的です。
Q. 第1次試験で電卓は使えますか?
第1次試験では電卓は使えません。日本中小企業診断士協会連合会のよくある質問でも、電卓は第2次試験のみ使用可と案内されています。財務・会計の計算は筆算で行うため、割り算を掛け算に直す、単位を先にそろえる、選択肢から逆算するといった工夫を、毎日の短い練習で身につけておくことが大切です。
Q. 財務・会計で科目合格した場合、いつまで免除されますか?
科目合格した科目は、合格した試験の行われた年度の初めから3年以内に第1次試験を受けるとき、申請によって免除されます。たとえば令和8年度に科目合格すれば、令和9年度と令和10年度の試験で免除を申請できます。免除は自動ではなく、受験の申し込みのときに申請が必要なので、手続きの入力を忘れないように注意してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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