労働者性の判断基準|業務委託でも雇用と扱われる境目の見方

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労働者性の判断基準|業務委託でも雇用と扱われる境目の見方

この記事のポイント

  • ✓労働者性の判断基準を厚生労働省の一次資料で整理します
  • ✓使用従属性の2つの基準と補強要素
  • ✓諾否の自由や拘束性の見方

契約書の題名は「業務委託契約書」なのに、毎朝決まった時間に始業の連絡を入れ、仕事の進め方も細かく指示され、他社の仕事は受けないようにと言われている。こういう状態に置かれている人が、労働者性の判断基準を調べにたどり着きます。

まず落ち着いてください。この問題には、40年前から使われている明確な判断の枠組みがあります。契約の題名で決まるのではなく、実際の働き方の実態で決まります。しかも厚生労働省は、自分で当てはめられるチェックリストまで公開しています。この記事では、労働基準法9条の条文から昭和60年の労働基準法研究会報告までを一次資料で追い、どこを見れば境目が判断できるのかを具体的に整理します。

労働者性とは何か。労働基準法9条の定義から始める

出発点は条文です。労働基準法9条は、この法律が適用される「労働者」を、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定めています。短い定義ですが、ここに2つの要素が入っています。1つは「使用される」こと、もう1つは「賃金を支払われる」ことです。

厚生労働省は、この規定から導かれる判断の枠組みをこう説明しています。

労働基準法第9条では、「労働者」を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と規定しています。労働基準法の「労働者」に当たるか否か、すなわち「労働者性」は、この規定に基づき、以下の2つの基準で判断されます。 労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか 報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか 出典: mhlw.go.jp

この2つをまとめた呼び方が「使用従属性」です。日常の言葉に置き換えると、他人の指示で働いていて、その働きに対してお金をもらっているかどうか、ということです。

そして決定的に重要な一文が続きます。使用従属性が認められるかどうかは、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から、個別の事案ごとに総合的に判断されると書かれています。つまり契約書の題名は判断材料の1つにすぎません。実態が雇用なら労働者として扱われます。

判断の骨組みは2つの基準と2つの補強要素

具体的な当てはめの手順は、労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)で整理されました。40年前の報告ですが、厚生労働省は今日においても労働基準法の「労働者」の判断における具体的基準として用いられていると明記しています。

骨組みは次の形です。

まず「使用従属性」に関する判断基準として、(1)指揮監督下の労働であること、(2)報酬の労務対償性があること、の2つを見ます。(1)はさらに4つに分かれていて、仕事の依頼や業務従事の指示に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、拘束性の有無、代替性の有無(これは指揮監督関係を補強する要素)です。

次に「労働者性」の判断を補強する要素として、(1)事業者性の有無、(2)専属性の程度、(3)その他を見ます。こちらは、使用従属性だけでは判断が難しい境目の事例で使われます。

合計すると見る箇所は8つほどです。ここで大事なのは、8つのうち何個当てはまれば労働者、という点数の足し算ではないことです。報告書は総合判断という言葉を使っています。ある要素が強く出ていれば、他が弱くても労働者とされることがあります。

諾否の自由。仕事を断れるかどうか

最初の分かれ目です。発注する側から具体的な仕事の依頼を受けたとき、断る自由があるかどうかを見ます。

昭和60年報告は、諾否の自由を有していれば他人に従属して労務を提供するとは言えず、対等な当事者間の関係となるため指揮監督関係を否定する重要な要素になると述べています。逆に、拒否する自由を持たない場合は、指揮監督関係を推認させる重要な要素になります。

ただし報告書は、ここに慎重な留保を付けています。包括的な仕事の依頼を先に受けている場合、その一部である個々の依頼を断る自由は契約上当然に制限されることがあります。また専属下請のように、事実上断れないという場合もあります。こうしたケースでは直ちに指揮監督関係を肯定できず、事実関係だけでなく契約内容も勘案する必要があると書かれています。

実務で見てきた限り、ここが最も判断の分かれる箇所です。「断っても構わないと言われているが、断ると次の依頼が来なくなるので実際には断れない」という状態を、どう評価するか。報告書の書き方からすれば、契約の建前と運用の実際の両方を見ることになります。断った実例があるかどうか、断ったあとに取引が続いたかどうかは、記録に残しておく価値があります。

業務遂行上の指揮監督。やり方まで指示されているか

2番目は、仕事の内容と進め方について具体的な指揮命令を受けているかどうかです。報告書は、これを指揮監督関係の基本的かつ重要な要素と位置づけています。

ここも程度の問題です。報告書は、通常注文者が行う程度の指示等に止まる場合には指揮監督を受けているとは言えないと明記しています。何をいつまでに作るかという指示は、業務委託でも当然あります。それだけでは労働者になりません。

境目になるのは、作り方や進め方まで細かく決められているかどうかです。使う道具を指定される、手順書どおりに作業することを求められる、進捗を1日単位で報告させられる。こうした指示が積み重なると、指揮監督を受けていると評価される方向に傾きます。

もう1つ、報告書が「重要な要素」として挙げているのが追加業務です。発注する側の命令や依頼により、通常予定されている業務以外の業務に従事することがある場合は、一般的な指揮監督を受けているとの判断を補強する重要な要素になるとされています。契約書に書かれていない雑務を頼まれて断れない状態は、この項目に当たります。

拘束性。場所と時間を決められているか

3番目は勤務場所と勤務時間です。報告書は、勤務場所および勤務時間が指定され管理されていることは一般的には指揮監督関係の基本的な要素だとしています。

ここにも注意書きがあります。業務の性質上(たとえば演奏)、安全を確保する必要上(たとえば建設)、必然的に勤務場所と勤務時間が指定される場合があります。報告書は、その指定が業務の性質等によるものか、業務の遂行を指揮命令する必要によるものかを見極める必要があると書いています。

在宅で働く人にとっては、この項目の解釈が近年変わってきている実感があります。場所の拘束がなくても、常時ビデオ会議に接続していることを求められる、勤務時間中の離席を報告させられる、といった運用は時間の拘束に当たります。物理的に同じ場所にいなくても、拘束性は成立します。

逆に、締切だけ決まっていて作業する時間帯は自由、という働き方であれば拘束性は弱いと評価されます。契約を結ぶ段階で、作業時間の裁量が自分にあることを書面に残しておくと、後から実態を説明しやすくなります。

代替性。代わりの人を立てられるか

4番目は代替性です。本人に代わって他の者が労務を提供することが認められているか、また本人が自らの判断で補助者を使うことが認められているかを見ます。

報告書は、代替性を指揮監督関係そのものに関する基本的な判断基準ではないと位置づけつつ、労務提供の代替性が認められている場合には指揮監督関係を否定する要素のひとつになると述べています。つまり補強材料です。

具体例で考えます。体調を崩したときに、別のフリーランスに引き継いで納品しても契約上問題ないなら代替性があります。一方で、必ず本人が作業することを求められ、下請けに出すことを禁じられているなら代替性はありません。契約書の再委託条項がここに直結します。

報酬の労務対償性。時間で決まっているか成果で決まっているか

使用従属性の2本目の柱です。労働基準法11条は、賃金を、名称の如何を問わず労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものと定めています。

報告書はここで論理の順序に注意を促しています。報酬が賃金であるかどうかによって逆に使用従属性を判断することはできない、という指摘です。賃金の定義が労働の対償を前提にしているので、循環になってしまうからです。

そこで実際に使われるのは、報酬の決まり方です。報告書が挙げている例は3つあります。報酬が時間給を基礎として計算されるなど労働の結果による差が少ないこと。欠勤した場合に応分の報酬が控除されること。残業をした場合に通常の報酬とは別の手当が支給されること。これらに当たる場合は、報酬の性格が一定時間労務を提供していることに対する対価と判断され、使用従属性を補強することになります。

言い換えると、時間で払われているなら雇用に近く、成果や出来高で払われているなら業務委託に近いという整理です。月額固定の報酬でも、稼働時間の下限が決められていて、足りなければ減額されるなら時間給に近い扱いになります。

事業者性。道具は誰のもので報酬はいくらか

ここから補強要素に入ります。1つ目は事業者性です。労働者は機械、器具、原材料といった生産手段を持たないのが通例ですが、高価な機材を自分で用意して働く人もいます。そういう場合は、事業者としての性格の有無も併せて総合判断するのが適当だとされています。

報告書が挙げる観点は3つです。第1に機械や器具の負担関係で、本人が所有する機械が著しく高価な場合は、自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う事業者としての性格が強く、労働者性を弱める要素になります。第2に報酬の額で、同様の業務に従事している正規従業員に比べて著しく高額である場合は、賃金ではなく事業者に対する代金の支払と認められ、労働者性を弱めます。第3にその他として、業務遂行上の損害に対する責任を負うことや、独自の商号使用が認められていることが、事業者としての性格を補強する要素とされた裁判例があります。

逆に読むと、会社のパソコンを貸与され、ソフトのライセンスも会社が用意し、報酬は同じ仕事をしている社員と同程度か経費を引くと下回る。この状態は事業者性が弱く、労働者性を肯定する方向に働きます。

専属性。他社の仕事を受けられるか

2つ目の補強要素は専属性です。報告書は、特定の企業に対する専属性の有無は直接に使用従属性の有無を左右するものではないと前置きしたうえで、判断を補強する要素のひとつと考えられるとしています。

具体的には2つの観点です。第1に、他社の業務に従事することが制度上制約され、また時間的余裕がなく事実上困難である場合は、専属性の程度が高く、経済的にその企業に従属していると考えられます。第2に、報酬に固定給部分がある、業務の配分等により事実上固定給となっている、その額も生計を維持しうる程度のものであるなど、報酬に生活保障的な要素が強いと認められる場合も、労働者性を補強します。

注意したいのは、専属性がないことをもって労働者性を弱めることにはならないと明記されている点です。複数の取引先を持っていても、1社との関係が雇用の実態を備えていれば、その1社との関係について労働者と判断される可能性があります。

そのほかに裁判所が見てきた5つの事情

報告書の「その他」には、裁判例が労働者性を肯定する補強事由としてきた事情が5つ並んでいます。いずれも、発注する側が本人を自らの労働者と認識していたと推認させる事情です。

第1に、採用や委託の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること。第2に、報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること。第3に、労働保険の適用対象としていること。第4に、服務規律を適用していること。第5に、退職金制度や福利厚生を適用していることです。

この5つは、書類を見れば分かるものが多く、当てはめやすいのが特徴です。とくに源泉徴収の区分は決定的な材料になります。業務委託なら報酬から源泉徴収される税額は原則10.21%で、支払調書が出ます。給与として源泉徴収され源泉徴収票が出ているなら、発注した側自身が雇用として処理していたことになります。面接が社員の採用と同じ流れだった、社員向けの服務規定を守るよう言われた、社員食堂や健康診断を使えた、といった事情も記録に残しておいてください。

厚生労働省の自己診断チェックリストで自分の働き方を測る

ここまでの基準を、厚生労働省が一般の人向けに8つの質問へ落とし込んだものが「働き方の自己診断チェックリスト」です。フリーランス向けのリーフレットに載っていて、令和6年10月の版が公開されています。

質問は、諾否の自由、指揮監督、拘束性、代替性、報酬の労務対償性、資機材等の負担、報酬の額、専属性の8点です。それぞれAとBの選択肢があり、Aに該当する場合は労働者性を否定する方向に働く事情、Bに該当する場合は労働者性を肯定する方向に働く事情とされています。

たとえば報酬の額の質問はこうです。同種の仕事に従事する正規従業員と比較した場合、報酬の額はどうですかという問いに対して、Aは正規従業員よりも高額である、Bは正規従業員と同程度か経費負担を引くと同程度よりも低くなる、という二択です。経費負担を引いた後で比べるという視点が入っているのが実務的です。

リーフレットの本体は厚生労働省で公開されています。8問のうちBが多いなら、自分の働き方は労働者に当たる可能性があると考えて動き出す材料になります。もっと踏み込んで調べたい人は、平成24年以降の代表的な裁判例で使われた事情を並べた参考資料集も公開されています。

労働組合法の労働者は労働基準法より範囲が広い

ここで1つ、混乱しやすい点を整理します。「労働者」という言葉は法律ごとに定義が違います。

労働基準法9条は、事業に使用される者で賃金を支払われる者と定めています。「使用される」という要素が入っているのがポイントです。一方、労働組合法3条はこう定めています。この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。条文を並べると違いが見えます。労働組合法には「使用される」という要素がなく、収入によって生活しているかどうかだけを見ています。

この違いから、労働組合法上の労働者のほうが範囲が広いと解されています。実際に、労働基準法の労働者ではないと判断された働き方の人が、労働組合法上は労働者と認められ、団体交渉に応じることを会社に義務づけた例があります。

何が意味を持つかというと、使える手段が変わるという点です。労働基準法の労働者に当たらなくても、労働組合法上の労働者に当たれば、労働組合を通じて条件の交渉を申し入れられます。会社が交渉を拒めば不当労働行為になります。条文の原文はe-Gov法令検索で確認できます。個人で交渉する体力がないときの選択肢として、頭に入れておく価値があります。

偽装請負との違いを押さえておく

もう1つよく混ざるのが「偽装請負」です。こちらは労働者性とは別の論点です。

偽装請負は、形式上は請負契約や業務委託契約だが、実際には発注した側が作業者に直接指揮命令している状態を指します。労働者派遣に当たる実態があるのに、派遣の手続きを取っていないことが問題になります。つまり、問われるのは誰が雇用主なのかという点です。

労働者性の論点は、そもそもこの人は労働者なのかという点です。偽装請負の場面では、作業者が自分の所属先に雇われた労働者であることは前提になっています。両者は重なることもありますが、見ている場所が違います。

自分がどちらの問題に当たっているかを見分ける目印は、間に会社が入っているかどうかです。発注する会社と自分の2者だけなら労働者性の問題です。自分を雇う会社が別にあって、その会社が客先へ送り出す形なら偽装請負の問題が出てきます。相談する窓口も変わるので、最初にここを整理してから動いてください。

裁判例では何が決め手になってきたのか

厚生労働省は、平成24年以降の代表的な裁判例で判断に用いられた事情を並べた参考資料集を公開しています。令和6年10月時点の版で、労働関係の当事者にどのように労働者性の判断がされるかについて理解を促す目的で作られたものです。

裁判例を通して見えてくる傾向を挙げます。第1に、契約書の文言よりも運用の実際が重く扱われます。再委託を禁じていない契約でも、実際に本人以外が作業した例がなく、会社もそれを想定していなかった場合は、代替性がないと評価されやすくなります。

第2に、時間の管理が入っているかどうかが強く効きます。出退勤の記録を取っていた、遅れたら連絡を求めていた、といった運用は拘束性の証拠になります。

第3に、会社側の内部文書が決め手になることがあります。社内の組織図に名前が入っていた、社員向けの連絡を同じ経路で受けていた、といった事情は、会社自身がその人を労働者と認識していた推認材料になります。こうした資料は自分の手元にはないことが多いので、争いになった段階で開示を求める形になります。だからこそ、自分の手元に残せる記録は最初から残しておくことが大事です。

労働者と判断されると何が変わるのか

判断基準の話に入る前に、そもそも何が変わるのかを押さえておくと、調べる意味がはっきりします。

労働者に当たると、労働基準法をはじめとする労働関係法令の保護が及びます。具体的には、最低賃金を下回る報酬は認められません。1日8時間、1週40時間を超えて働いた分には割増賃金が発生します。6か月続けて働き、所定労働日の8割以上出勤していれば年次有給休暇が発生します。一方的に契約を打ち切るには、解雇として客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要になり、少なくとも30日前の予告か予告手当が要ります。

保険の扱いも変わります。労働者なら労災保険が強制的に適用され、業務中や通勤中のけがは全額が給付の対象です。雇用保険の要件を満たせば、離職後に基本手当を受け取る道もできます。健康保険と厚生年金保険の対象になれば、保険料の半分は会社が負担します。

業務委託のままでも労災の道が全く無いわけではありません。厚生労働省は、令和6年11月から労災保険の特別加入の対象が広がり、特定受託事業に従事する方が新たに対象になったと案内しています。ただし特別加入は自分で申し込み、保険料も自分で払う制度です。強制適用とは前提が違います。

フリーランス法があっても労働者性の問題は消えない

令和6年11月1日に、フリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されました。個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対して、取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備などが義務づけられています。

この法律ができたことで守られる範囲は広がりました。ただし、これは業務委託を前提とした法律です。実態が雇用である人を業務委託として扱ってよいことにする法律ではありません。厚生労働省も、フリーランスであっても働き方によっては労働者に当たる可能性があると案内しています。

つまり順序はこうです。まず自分が労働者に当たるかを見る。当たるなら労働基準法の保護を求める。当たらないなら、フリーランス法と契約に基づいて条件を主張する。この2つは別の道具なので、片方だけを見ていると取りこぼしが出ます。法律の内容は厚生労働省の解説ページに一次資料としてまとめられています。

相談先はどこか。労働基準監督署の専用窓口

自分で判定するのには限界があります。最終的に判断するのは行政と裁判所です。

厚生労働省は、フリーランス法の施行に合わせて、令和6年11月1日から全国の労働基準監督署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設置しました。自らの働き方が労働者に該当する可能性があると考えるフリーランスからの相談に対応する窓口です。受付時間は平日の8時30分から17時15分までです。

相談に行くときは、次の書類を持っていくと話が早く進みます。契約書と発注書。報酬の振込記録と支払調書または源泉徴収票。業務の指示が残っているチャットやメールの記録。勤務時間を記録していたもの。契約を打ち切られたなら、その連絡の記録です。

契約の解除や報酬の未払いが絡む場合は、労働基準監督署とは別の道もあります。報酬の回収そのものを進めるなら、費用の見通しと手続きの流れを先に把握しておくほうが判断を誤りません。弁護士に依頼する場合の着手金と成功報酬、支払督促という簡易な手続きの使い分けは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に整理されています。

判定を左右する書類を自分で残しておく

労働者性の判断は実態で決まります。そして実態を示すのは記録です。争いになってから集めようとすると、相手のシステムに残っているデータには手が届きません。

残しておく価値が高いものを挙げます。第1に、業務の指示が書かれたチャットやメール。とくに進め方や時間の指定が含まれるもの。第2に、依頼を断ったやりとり、あるいは断れないと言われたやりとり。第3に、実際に働いた時間の記録。自分で表に付けたものでも根拠になります。第4に、報酬の計算根拠。時間で計算されているなら明細を保存します。第5に、契約書と、契約書に書かれていない業務を頼まれた記録です。

契約を結ぶ段階で確かめる項目を決めておくと、後の負担が減ります。発注書と契約書に何を書いてもらうべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形で並んでいます。契約の入口で条件を書面にしておけば、労働者性の判断が必要になる状況そのものを避けられることも多いです。

業務委託のまま条件を整えるときに手当てする4点

労働者としての保護を求めるのではなく、業務委託として続ける判断をする人もいます。その場合に自分で手当てしておく項目を4つ挙げます。

第1に、けがと病気への備えです。業務委託では労災保険が強制適用されません。特定受託事業に従事する人向けの特別加入が令和6年11月から使えるようになったので、加入できる団体を探して申し込みます。これは自分で保険料を払う制度です。加入していない期間の事故は自己負担になります。

第2に、働けない期間の収入です。会社員なら健康保険から傷病手当金が出ますが、国民健康保険には傷病手当金がありません。所得補償の保険に自分で入るか、生活費の何か月分を現金で確保しておくかのどちらかで備えます。

第3に、老後の備えです。厚生年金の対象から外れると、将来の年金は基礎年金だけになります。国民年金基金、確定拠出年金、小規模企業共済といった仕組みで上積みを作れます。どれも掛金が所得控除になるので、税の負担も軽くなります。

第4に、契約が急に終わるリスクへの備えです。フリーランス法16条は、一定の期間以上続いている業務委託(法律では継続的業務委託と呼びます)の契約を解除しようとする場合、契約期間の満了後に更新しない場合も含めて、少なくとも30日前までに予告しなければならないと定めています。さらに、予告された日から契約が満了する日までの間に理由の開示を求めれば、発注した側は遅滞なく開示する義務があります。どの期間から継続的業務委託に当たるかは政令で決まっているため、自分の契約が該当するかは期間を数えて確認してください。それでも1社に依存していれば収入は止まります。取引先の数を増やしておくことが、結局いちばん強い備えになります。

境目に立たない働き方を選ぶという考え方

編集部が在宅ワークの市場を20年にわたって見てきた立場から言えば、労働者性が問題になる案件には共通の形があります。発注する側が人手として頭数を確保したいのに、社会保険料と解雇の制約を避けたくて業務委託の形にしている、という構図です。受ける側から見れば、雇用の不自由さと業務委託の不安定さの両方を負う最も不利な位置です。

この位置から抜け出す方向は2つです。1つは労働者としての保護を求めること。もう1つは、成果で評価される仕事に軸を移し、本当の意味での業務委託として単価を上げていくことです。どちらを選ぶかは、家族の状況とローンの残りによって変わります。40代で住宅ローンが残っている人が、保護のない状態で単価だけを追うのは勧められません。

後者を選ぶなら、まず自分の仕事の相場を知ることから始まります。文章を書く仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、開発系の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で、公的統計に基づく金額と幅を確認できます。自分の報酬が同じ仕事をする社員と同程度なのか、それより低いのかを知ることは、労働者性の判断材料そのものにもなります。

受ける仕事の種類を広げたい場合、相談に近い形の業務は時間拘束が生じにくく、成果で評価されやすい領域です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、この分野で求められる前提と業務の進み方がまとめられています。周辺分野まで含めて見るならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発の受託を検討するならアプリケーション開発のお仕事が入口になります。書類のやりとりを自分で整える力を形にしておきたい人にはビジネス文書検定が出発点になります。

中間の手数料が乗らない直接取引では、同じ予算で依頼する側はより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。運営者として長く見てきた限り、境目の位置から抜け出せた人は、単価の交渉が上手だったというより、任せると楽だと思われる関係を1社ずつ積み上げていました。指示されなくても回る状態を作れれば、そもそも指揮監督を受ける必要がなくなります。それが、労働者性という論点から自由になる最も確実な道です。

よくある質問

Q. 契約書の題名が業務委託契約書なら労働者にはなりませんか?

なりません。厚生労働省は、使用従属性が認められるかどうかは請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容や労務提供の形態、報酬その他の要素から個別に総合的に判断されると明記しています。題名は判断材料の1つにすぎず、実態が雇用なら労働者として扱われます。

Q. 労働者性はどの項目を何個満たせば認められますか?

点数で決まる仕組みではありません。労働基準法研究会報告は総合判断という言葉を使っており、使用従属性に関する2つの基準を中心に、事業者性や専属性といった補強要素を併せて個別に判断します。ある要素が強く出ていれば、他の要素が弱くても労働者と判断されることがあります。

Q. 自分の働き方が労働者に当たりそうなとき、どこに相談すればよいですか?

全国の労働基準監督署に、令和6年11月1日から「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」が設置されています。受付時間は平日の8時30分から17時15分までです。契約書、報酬の振込記録、業務の指示が残るチャットやメール、勤務時間の記録を持参すると話が早く進みます。

Q. フリーランス法ができたので労働者性は関係なくなりましたか?

関係は残ります。フリーランス・事業者間取引適正化等法は業務委託を前提とした法律で、取引条件の明示や原則60日以内の報酬支払などを発注側に義務づけるものです。実態が雇用の人を業務委託として扱ってよいことにする法律ではありません。まず労働者に当たるかを見て、当たらない場合にこの法律と契約で条件を主張する順序になります。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年2月15日最終更新:2026年9月27日
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