デザインデータ(Figma・PSD)の納品を依頼する範囲|レイヤー分けまで指定するか 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
デザインデータ(Figma・PSD)の納品を依頼する範囲|レイヤー分けまで指定するか 2026

この記事のポイント

  • デザインデータ納品でFigma発注時にトラブルになりやすいのは業務範囲の曖昧さです
  • レイヤー分け・PSD形式・修正範囲をどこまで契約書に書くべきか
  • 費用相場と依頼の流れを行政書士の視点で解説します

先日、あるスタートアップの担当者から相談を受けました。「Figmaでデザインを納品してもらったのに、レイヤーがぐちゃぐちゃで、開発チームがコーディングできない」と。結論から言うと、これは業務委託契約でよくある「納品物の定義の曖昧さ」が原因です。デザインデータ納品でFigma発注をする際、多くの発注者が「完成品の画面」だけを見て契約してしまい、レイヤー構造やコンポーネント設計まで指定していません。つまり、見た目のデザインは完成していても、実務で使えるデータになっていないケースが本当に多いんです。この記事では、デザインデータの納品範囲をどこまで指定すべきか、費用相場から契約書の書き方まで、発注者目線で具体的に解説していきます。

デザインデータ納品でFigma発注が増えている背景

デザインデータの納品形式として、FigmaがPhotoshop(PSD)やIllustratorに代わって主流になりつつあります。理由はシンプルで、ブラウザ上でリアルタイムに共同編集ができ、開発者がコードに変換しやすい構造化データを直接確認できるからです。

これまでPSD形式で納品を受けていた企業も、開発チームとの連携をスムーズにするためにFigmaへの移行を進めています。とくにWebサービスやSaaSプロダクトを開発する企業では、デザインから実装までの受け渡しコストを下げる目的でFigma発注が標準になりつつあります。

一方で、この移行期特有の問題も起きています。発注者側がFigmaの仕組みを十分理解しないまま「とりあえずFigmaで納品してください」と依頼してしまい、結果として「ページは完成しているがコンポーネント化されていない」「レイヤー名がバラバラで検索性がない」といった、実務で使いにくいデータを受け取ってしまうケースです。

中小企業庁の調査でも、業務委託における「成果物の定義の不明確さ」がトラブルの主要因として挙げられています。デザイン領域は感覚的な合意で進みやすい分、契約書に落とし込む段階で範囲を具体化しておく必要があります。

この運用は、この案件の規模感とスピード感かつ、デザイン作業者が1人、レビュワーが1人という体制だから上手くいっている可能性が高い。実際は、忙しくて定期的にマスターにマージしてる暇がない!絵文字とかステータスとかいちいち変えてられないわ!複数人のデザイナーが触っていてなんだかよくわからん!なんてことがほとんどだと思う。なので、この運用が必ずしも上手くいくとは言い切れないが、僕たちは現状こんな運用をしているよ〜というお話でした。 出典: note.com

この引用が示すように、Figmaのファイル運用は「その現場の体制」に強く依存します。だからこそ、発注者側が「うちの体制ではどんな運用ルールが必要か」を最初に整理し、それを納品条件に落とし込むことが欠かせません。

業務範囲をどこまで指定するか|3つの納品レベル

デザインデータ納品の範囲は、大きく分けて3つのレベルで考えると整理しやすくなります。

レベル1:完成画面のみ(プレゼンテーション用)

クライアントへの提案資料や、社内での確認用として画面イメージだけが必要な場合です。この場合、レイヤー構造やコンポーネント設計は求めず、見た目が完成していれば十分です。費用は最も安く、1画面あたり5,000円〜2万円程度が相場です。

ただし、このレベルで納品を受けたデータは、後から開発に使おうとすると作り直しが必要になることがほとんどです。「とりあえず安く」で依頼した結果、二度手間になるケースをよく見ます。

レベル2:実装可能な構造化データ

開発チームがそのままコーディングに使えるレベルです。レイヤー名の統一、コンポーネント化(ボタンやカードなどの再利用パーツをコンポーネントとして登録)、オートレイアウトの設定(余白や配置を自動調整する機能)まで含みます。費用は1画面あたり1万円〜4万円程度で、レベル1より作業工数がかかる分、単価も上がります。

実装を前提とするなら、このレベルを最低ラインとして依頼するべきです。見た目だけの納品では、結局デザイナーとエンジニアの間で認識のすり合わせが何度も発生し、かえってコストがかさみます。

レベル3:デザインシステム構築込み

複数画面・複数機能にまたがるサービス全体で、色・タイポグラフィ・コンポーネントのルールを統一した「デザインシステム」まで構築するレベルです。中長期的にプロダクトを育てていく前提の企業向けで、費用は30万円〜100万円以上とプロジェクト規模によって大きく変動します。

どのレベルを依頼すべきかは、「このデータを誰が・いつ・どう使うか」で決まります。発注前にこの3レベルのどこに当てはまるかを明確にし、見積もり依頼の段階で伝えることが重要です。

レイヤー分けまで指定すべきか

これは発注者から最も相談を受ける論点です。結論から言うと、開発に使うデータであれば、レイヤー分けのルールは契約段階で必ず指定してください。

なぜレイヤー分けの指定が必要なのか

Figmaは自由度が高いツールなので、デザイナーによって命名規則やグループ化の仕方が大きく異なります。あるデザイナーは「Frame 1」「Frame 2」といった初期値のまま納品し、別のデザイナーは「header/nav/button-primary」のように階層的に命名します。

開発チームがこのデータをコードに変換する際、レイヤー名がそのままクラス名や変数名の参考になることが多いため、命名規則が統一されていないと変換作業に余計な時間がかかります。

指定すべき具体的な項目

発注時に伝えるべき項目は次の通りです。

・レイヤー命名規則(英語表記か日本語表記か、ケバブケースかキャメルケースか) ・コンポーネント化の範囲(ボタン、カード、フォーム部品などをコンポーネントとして登録するか) ・オートレイアウトの使用有無 ・カラースタイル・テキストスタイルの登録(色や文字サイズを個別指定でなく、スタイルとして一元管理するか) ・アセットの書き出し設定(アイコンや画像をどの形式・解像度で書き出すか)

これらを口頭やチャットだけで伝えると、後から「言った・言わない」のトラブルになりやすいので、発注時のドキュメントや契約書の別紙に箇条書きで明記しておくことをおすすめします。

PSD形式で依頼する場合の注意点

まだPSD形式での納品を求める企業も一定数存在します。印刷物のデザインや、既存システムがPhotoshopベースの運用になっている場合です。PSDの場合はレイヤーの整理に加えて、スマートオブジェクト化の範囲、フォントのアウトライン化の有無、解像度(dpi)の指定が必要になります。

とくに解像度の指定を忘れると、Web用の72dpiで納品されたデータを印刷用途に転用できず、作り直しになるケースが発生します。用途を明確に伝えたうえで発注することが大切です。

依頼から納品までの流れ

実際にデザインデータ納品を依頼する際の標準的な流れを整理します。

ステップ1:要件定義と参考資料の準備

まず、依頼する画面数、対象デバイス(PC・スマートフォン・タブレット)、参考にしたい既存サイトやアプリのURLを整理します。この段階で曖昧なまま発注すると、後の修正回数が増える原因になります。

ステップ2:見積もり依頼と業務範囲の確認

複数のデザイナーやデザイン会社に見積もりを依頼する際、単に「Figmaで納品してください」ではなく、上記で説明したレベル1〜3のどれに該当するかを明記して依頼してください。同じ「Figma納品」でも、業者によって想定している成果物の粒度が大きく異なります。

ステップ3:契約書の締結

業務委託契約書には、納品物の形式(Figmaファイル、PSDファイル等)、レイヤー分けのルール、修正回数の上限、著作権の帰属先を明記します。とくに著作権については、発注者が「当然自分のものになる」と思い込んでいるケースが多いのですが、契約書に明記がなければ著作者であるデザイナー側に権利が残ることが原則です。これは民法・著作権法上の基本ルールなので、必ず契約書に権利譲渡の条項を入れてください。

ステップ4:中間確認とフィードバック

いきなり完成品を待つのではなく、ワイヤーフレーム段階、デザインカンプ段階など、複数回の中間確認ポイントを設けます。Figmaはリアルタイムで共同編集・コメントができるため、この中間確認のしやすさもFigmaを選ぶメリットの一つです。

ステップ5:最終納品とデータ検収

納品されたFigmaファイルは、単に見た目を確認するだけでなく、実際にレイヤーパネルを開いてコンポーネント化の状況、命名規則が事前の指定通りかを検収してください。ここで問題が見つかった場合、修正依頼を出せるよう、契約書に検収期間と修正対応の条項を入れておくことが望ましいです。

Figmaの基本を学びたいけれど「リファレンスは細切れで、実際どう進めるのかわからない」「メニューを探すのに時間がかかる」と感じたことはありませんか? 出典: skillhub.jp

発注者自身がFigmaの基本操作を理解していないと、納品データの良し悪しを判断できません。最低限、レイヤーパネルの見方とコンポーネントの概念だけでも把握しておくと、検収の精度が大きく上がります。

費用相場と料金の内訳

デザインデータ納品の費用は、画面数・業務範囲・依頼先によって幅があります。目安として次のように整理できます。

・ランディングページ1ページ:3万円〜15万円 ・コーポレートサイト(5〜10ページ):15万円〜50万円 ・Webアプリ・SaaS画面(1画面あたり):1万円〜4万円 ・デザインシステム構築:30万円〜

これらの料金には、修正回数(一般的には2〜3回まで無料、それ以降は追加料金)が含まれることが多いですが、業者によって条件が異なるため、見積もり段階で必ず確認してください。

仲介経由と直接依頼のコスト差

デザイン会社や制作会社を通して発注する場合、仲介手数料やディレクション費用が上乗せされ、フリーランスに直接依頼する場合と比べて総額が20%〜40%程度高くなる傾向があります。

一方で、フリーランスへ直接依頼する場合は中間マージンが発生しないため、同じ予算でより多くの作業を依頼できる、あるいは同じ品質をより安く依頼できるというメリットがあります。求人マッチングサービスを使って業務委託契約を結ぶ方法であれば、業務委託契約書テンプレート|発注者向けチェックリスト付き【2026年版】を参考に、契約条件を整理したうえで直接依頼を進めることができます。

ただし、直接依頼の場合は発注者自身がディレクションを担う必要があるため、要件定義やレイヤー分けの指定を自分で明確にする力が求められます。この記事で解説した「業務範囲の3レベル」を発注時に伝えられるかどうかが、直接依頼を成功させる分かれ目になります。

失敗しない依頼先の選び方

デザインデータ納品を依頼する相手を選ぶ際、次のポイントを確認してください。

ポートフォリオでFigmaの構造まで確認する

見た目のデザインだけでなく、可能であればポートフォリオのFigmaファイルを共有してもらい、レイヤー構造やコンポーネントの整理具合を確認してください。デザインセンスがあっても、構造化データの作り方が雑なデザイナーは一定数存在します。

過去の開発連携経験を聞く

エンジニアと連携した経験があるかどうかも重要な判断材料です。デザイナー単独での制作経験しかない場合、実装を意識したレイヤー構造やオートレイアウトの設計に慣れていないことがあります。

コミュニケーションの取りやすさ

Figmaはコメント機能を使ったやり取りができるため、レスポンスの速さや説明のわかりやすさも見ておくべきポイントです。中間確認の段階で認識のズレが見つかった際、すぐに調整できる相手かどうかが、最終的な納品品質を左右します。

似た観点で、アプリケーション開発のお仕事を依頼する場合も、デザインと開発の橋渡しができる人材かどうかがプロジェクトの成否を分けます。デザインだけでなく実装まで見据えた依頼先選びを意識してください。

よくあるトラブルと注意点

私自身、以前クライアントとして初めてデザインを外注した際、複数の見積もりを比較して一番安い業者を選んだところ、納品されたFigmaファイルがレイヤー未整理で、結局自分で整理し直す羽目になったことがあります。安さだけで選ぶと、見えないコストが後から発生することを痛感しました。この経験から、見積もり比較では金額だけでなく、業務範囲の明記があるかを必ず確認するようにしています。

トラブル事例:修正範囲の認識違い

ある発注者は「細かい色味の調整くらいは無料修正の範囲だろう」と考えていましたが、依頼先は「レイアウト変更を伴わない微調整も1回の修正としてカウントする」という認識でした。契約書に修正の定義(何を1回とカウントするか)を明記していなかったため、双方の認識がすれ違い、追加費用の請求でトラブルになりました。

つまり、修正回数だけでなく「何をもって1回の修正とするか」まで契約書に書いておく必要があるということです。曖昧な合意は、必ずと言っていいほど後でトラブルの種になります。

※このようなケースで金額の折り合いがつかない場合は、弁護士や行政書士に相談し、契約書の見直しを依頼することをおすすめします。

著作権と二次利用の範囲

納品されたデザインデータを、将来別のプロジェクトで流用したい場合、その旨も契約時に伝えておく必要があります。著作権の譲渡範囲を「本プロジェクトのみ」と限定する契約もあれば、「全面譲渡」とする契約もあり、これによって将来の利用可能性が変わってきます。

フリーランス保護新法の施行以降、業務委託契約における条件明示の義務がより重視されるようになりました。発注者側も、口頭合意だけで進めず、書面(電子契約含む)で条件を残す習慣をつけることが、双方にとってのトラブル回避につながります。

画像のような外に張り出したトゲと内側の湾曲の吹き出しで、またその枠線の角の先端は細く、湾曲部分の線は太いようなラインの吹き出しはどうやって作るかご存知の方いらっしゃるでしょうか? figmaとイラレの学習をしています。画像のようなバナーのトレースを行っていますが、こういう吹き出しがよく使われているようですがイマイチ作り方がわかりません。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

このような細かい表現の作り込みも、発注時の参考資料として画像や既存デザインを共有しておくことで、認識のズレを減らせます。テキストだけの指示では伝わりにくい部分こそ、視覚的な資料を用意することが有効です。

独自データ考察|発注者が見落としがちなポイント

20年この市場を見てきた立場から言えば、デザインデータ納品でトラブルになる発注者の多くは、「デザインは感覚的なものだから、細かく指定しすぎると逆に良いものができない」という思い込みを持っています。しかし実際には、構造やルールを明確に指定することと、デザインの創造性を尊重することは矛盾しません。むしろ、レイヤー分けやコンポーネント化のルールが明確な現場ほど、デザイナーは表現そのものに集中できる傾向があります。

運営者として見てきた限りでは、長く付き合いが続く発注者と受注者の関係には共通点があります。それは、発注者が最初の依頼時点で「この後の工程で誰がどう使うか」を丁寧に伝えていることです。単発の作業として発注するのではなく、次の工程まで見据えて情報を共有する発注者ほど、結果的に手戻りが少なく、双方にとって効率の良い取引になっています。

額面だけを見て「安い方がいい」と判断しがちですが、中間マージンが乗らない直接取引には別の価値もあります。同じ予算であれば、仲介手数料が乗らない分、依頼者はより充実した業務範囲を頼めますし、受け手であるデザイナー側も手取りが厚くなります。手数料0%の直接取引は、単に「安く済む」という金額の話ではなく、双方が納得感を持って長期的な関係を築ける仕組みだという点に価値があります。

また、デザインデータの品質を左右するのは、実は依頼先のスキルだけでなく、発注者側の情報整理力でもあります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場を参考にすると、開発職の単価はスキルレベルによって幅がありますが、デザイナーも同様に、構造化データを作れる技術力の高い人材ほど単価が上がる傾向にあります。安さだけで選ばず、業務範囲に見合った適正価格を見極める視点が、発注者には求められています。

受発注のフローそのものをデジタル化し、FAXや紙ベースのやり取りから脱却したいと考えている企業には、受発注システムのクラウド化2026|FAXから脱却してIT導入補助金を活用する方法も参考になります。デザインデータの受け渡しだけでなく、業務委託全体のフローを見直すことで、無駄なコミュニケーションコストを削減できます。

デザインデータ納品の範囲を明確に指定することは、一見すると手間が増えるように感じるかもしれません。しかし、この最初の一手間が、後の手戻りや追加費用、トラブルを防ぐ最大の対策になります。法律はあなたの味方です。契約書に業務範囲を明記し、双方が納得できる形で取引を進めてください。

よくある質問

Q. デザインデータ納品でFigmaとPSD、どちらを指定すべきですか?

開発チームがそのまま実装に使う場合はFigmaがおすすめです。印刷物用途や既存システムがPhotoshopベースの場合はPSDでも構いませんが、解像度やフォントのアウトライン化まで指定してください。

Q. レイヤー分けを指定しないとどうなりますか?

命名規則やコンポーネント化がバラバラなデータが納品され、開発チームが実装時に整理し直す手間が発生します。事前に命名規則やコンポーネント化の範囲を契約書に明記することをおすすめします。

Q. 修正回数の上限はどう決めればよいですか?

一般的には2〜3回までを無料修正とする業者が多いですが、「何を1回の修正とカウントするか」まで契約書に明記しないと、微調整の扱いを巡ってトラブルになりやすいです。

Q. 著作権はどちらに帰属しますか?

契約書に明記がなければ、著作権は原則として制作したデザイナー側に残ります。将来の二次利用を想定する場合は、権利譲渡の範囲を契約書に具体的に記載してください。

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この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月28日最終更新:2026年7月31日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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