CROの人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓CROの人間関係に悩んだときに知っておきたい
- ✓職場が狭く感じる理由と距離の取り方をまとめました
- ✓CRAの1日で誰と関わるのか
CROの人間関係で疲れてしまった。そんな気持ちで検索してくださったのかもしれません。
チームの人数は少ないのに、同じ人と何年も同じ試験を担当する。施設の先生にも、クライアントにも、社内の先輩にも気をつかう。在宅勤務でほとんど顔を合わせないのに、チャットの一言で気持ちが沈む。こういうお悩みは、実はとてもよく聞きます。
大丈夫ですよ。CROの人間関係がしんどく感じられるのには、職場の仕組みから来る理由があります。理由が分かれば、距離の取り方も見えてきます。
この記事では、CROという職場の中で、誰とどんなふうに関わっているのかを整理したうえで、場面ごとの距離の取り方をお伝えします。
CROの人間関係が「狭い」と感じられる理由
CRO(開発業務受託機関)は、製薬会社から治験の業務を請け負う会社です。会社全体では数百人、数千人が働いていても、日々の仕事で関わる人はごく限られています。
理由の1つは、仕事が「試験ごとのチーム」で動くことです。1つの試験には、プロジェクトマネージャー、リードCRA、何人かのCRA、データマネジメントの担当者などがつきます。この顔ぶれで、試験が終わるまで仕事をします。治験は数年単位で続くことも多いので、相性の合わない人がチームにいても、簡単には離れられません。
2つ目は、上司が2人いるような体制です。日々の仕事を指示するのはプロジェクトのリード、評価や育成を担当するのはラインマネージャー。このように分かれている会社がたくさんあります。2人の考えが違うと、どちらに合わせればいいのか迷ってしまいます。
3つ目は、業界そのものが狭いことです。CROの世界は人の行き来が多く、前の職場の先輩が別のCROにいたり、施設で出会ったCRCさんが別の会社に移っていたりします。「ここで揉めたら、どこかでまた会うかもしれない」という気持ちが、言いたいことを飲み込ませてしまいます。
4つ目は、外の人との関係が多いことです。社内だけでなく、医療機関の医師やCRC、治験事務局、クライアントである製薬会社の担当者とも、長い付き合いになります。社外の人には、社内の人以上に気をつかいますよね。
こうして並べてみると、CROで人間関係に疲れるのは、あなたの性格のせいではないと分かります。限られた顔ぶれと長く付き合い、社内と社外の両方に気を配り、しかも離れにくい。そういう職場なのです。
だからこそ、「みんなと仲良くしなければ」と考えるより、「どの人と、どのくらいの距離で付き合うか」を決めていくほうが、ずっと楽になります。距離は、冷たさではありません。長く一緒に働くための、ちょうどいい間合いのことです。
もう1つ付け加えると、CROの仕事は「間違いがないこと」が強く求められる仕事です。報告書の誤り、手順からの逸脱、記録の抜け。どれも見逃すわけにはいきません。だから、同僚の間でも指摘し合う場面が日常的にあります。指摘は仕事の一部なのですが、毎日のように「ここが違います」と言われ続けると、自分そのものを否定されているように感じてしまうこともあります。指摘されているのは書類であって、あなたではありません。この区別を心に置いておくだけでも、受け止め方は少し変わります。
CROの1日で、誰とどれくらい関わっているのか
距離の取り方を考える前に、自分が1日のうちに誰と関わっているのかを見てみましょう。ここでは、CROで最も多い職種であるCRA(臨床開発モニター)の1日を例にします。
朝、在宅でパソコンを開くと、まず社内のチャットとメールを確認します。リードCRAからの連絡、データマネジメントの担当者からの問い合わせ、クライアントからの依頼が並んでいます。この時点で、すでに3つの立場の人とやり取りが始まっています。
午前中に施設へ向かいます。治験事務局で書類を受け取り、CRCさんと症例の状況を確認し、外来の合間に治験責任医師と短く話します。医師と話せる時間は数分ということもあり、その数分のために1時間待つこともあります。
午後は、施設で原資料を確認する作業をしたり、在宅に戻って報告書を書いたりします。夕方には社内の定例会議があり、リードCRAやプロジェクトマネージャーに担当施設の状況を報告します。週に1回はクライアントとの会議もあります。
数えてみると、1日で関わる立場は、リードCRA、プロジェクトマネージャー、データマネジメント、ラインマネージャー、治験事務局、CRC、医師、クライアントと、8つほどになります。1つ1つのやり取りは短くても、相手ごとに言葉づかいや伝え方を切り替えているのです。
疲れの正体は、1人の苦手な人だけではなく、この「切り替え」の多さにあることが少なくありません。朝から晩まで違う立場の人に合わせ続けていたら、どなたでも疲れます。
一度、紙に自分の関係図を描いてみてください。真ん中に自分を置き、周りに関わる人を並べます。そして、それぞれの人との関係に「楽」「普通」「しんどい」と書き込みます。
こういう整理をすると、「全部がしんどい」と思っていたのに、実は「しんどい」は2人だけだった、ということがよくあります。反対に、施設の人とはうまくいっているのに社内だけがつらい、という偏りが見えることもあります。どこに手を打てばいいかが分かれば、気持ちはずいぶん軽くなります。
関わる人の数は、職種によっても変わります。データマネジメントの担当者は、施設の人と直接話すことは少なく、社内のCRAや統計解析の担当者とのやり取りが中心です。プロジェクトマネージャーは、社内のほぼ全員とクライアントの窓口を兼ねるので、関わる人の数はCRAよりさらに多くなります。メディカルライティングの担当者は、1人で集中する時間が長く、決まった数人とレビューのやり取りをする形です。
「人と関わること自体が負担」なのか、「特定の立場の人との関係が負担」なのか。関係図を描くと、この違いも見えてきます。前者なら関わる人の少ない職種へ、後者ならその立場の人との距離の取り方を工夫する、というように、次の一歩が変わってきます。
関係がこじれやすい4つの場面
CROの人間関係には、こじれやすい場面がいくつかあります。よく聞くものを4つご紹介します。
1つ目は、施設とクライアントの間に立つ場面です。クライアントからは「症例の登録を急いでほしい」と言われ、施設からは「これ以上は難しい」と言われる。どちらの気持ちも分かるのに、自分では決められません。両方にいい顔をしようとすると、どちらからも不満を向けられてしまいます。
2つ目は、リードCRAとの進め方の違いです。報告を細かく求めるリード、大まかな報告でいいリード、自分でやり方を決めてほしいリード。人によって求めることが違います。前の試験で褒められたやり方が、次の試験では注意される。こういう経験をすると、自分の何が悪いのか分からなくなってしまいます。
3つ目は、在宅勤務でのすれ違いです。チャットで「確認お願いします」とだけ送られてくると、怒っているのか、急いでいるのか、ただ短く書いただけなのか分かりません。顔が見えない分、悪いほうに受け取ってしまいがちです。
4つ目は、外部就労先での立場のあいまいさです。製薬会社に常駐して働くと、周りは製薬会社の社員ばかりです。会議に呼ばれなかったり、飲み会の誘いが自分にだけ来なかったりすると、どこにも居場所がないような気持ちになります。
こういう相談がよくあります。「リードの方からのチャットがいつも短くて、嫌われているのではと毎日気になる」というものです。よく話を聞いてみると、そのリードの方は複数の試験を掛け持ちしていて、誰に対しても短い文章で連絡していました。相手の事情が見えないとき、私たちは自分のせいだと考えてしまいやすいのです。
私自身も、以前の職場で似たことがありました。在宅勤務に切り替わった頃、上司からの返事がいつも一言で、何か失敗したのではと夜に何度もメッセージを読み返していました。思い切って打ち合わせのときに「文章だと温度感が分からなくて」と伝えたら、上司は驚いた顔で「急いで打っているだけで、何も気にしていない」と笑っていました。聞いてしまえば数秒で解ける不安を、何週間も抱えていたのです。
4つの場面に共通しているのは、「相手の事情が見えない」ことです。見えない部分を自分への評価だと受け取ってしまうと、関係はどんどん苦しくなります。次の章から、場面ごとに距離の取り方を見ていきましょう。
施設の医師やCRCとの距離の取り方
施設の人との関係は、CROの仕事の土台です。とはいえ、仲良くなることが目的ではありません。「この人になら安心して任せられる」と思ってもらえる距離を目指しましょう。
医師との関係で大切なのは、相手の時間を大事にすることです。外来や手術の合間の数分しか話せないのですから、伝えることは1つか2つに絞り、紙1枚にまとめて持っていきます。「先生にお願いしたいことは2点です」と最初に言うだけで、話がすっと進みます。うまく話せなかった日があっても、それは先生があなたを嫌っているからではなく、忙しさのせいであることがほとんどです。
CRCさんとの関係は、もう少し近くなります。毎月のように顔を合わせ、症例の細かい状況を一緒に確認するからです。CRCさんは、被験者さんへの説明や来院の調整、たくさんの書類の準備を抱えています。こちらの依頼が増えるほど、CRCさんの仕事も増えます。
距離の取り方のコツは、依頼をまとめて出すことです。気づいたことをその都度メールするのではなく、訪問の前に一覧にして、優先順位をつけて伝えます。「今回は必ず対応をお願いしたいのがこの2つ、次回まででよいのがこの3つです」と分けるだけで、相手の負担はずいぶん変わります。
施設とクライアントの板挟みになったときは、自分が決める人ではないことを、言葉にして伝えるのが大切です。施設には「ご事情はそのままクライアントに伝えます。判断はクライアントが行いますので、結果が出たらすぐにお知らせします」と話します。クライアントには、施設の状況を事実として報告し、自分の気持ちや推測は分けて伝えます。
自分がすべてを解決しなければと思うと、両方の気持ちを背負い込んでしまいます。あなたの役割は「正確に伝えること」です。決めることまでは、背負わなくていいのです。
施設の人と仲良くなりすぎることにも、少しだけ注意が必要です。親しくなると、手順から外れた頼みごとを断りにくくなることがあります。治験には守るべきルールがあるので、断るべきことは断らなければなりません。「個人的にはお力になりたいのですが、ルール上どうしてもできないんです」と、気持ちとルールを分けて伝えると、関係を壊さずに済みます。
担当者が交代するときの関係にも、気を配っておきたいところです。CROでは、異動や退職、アサインの変更で、施設の担当CRAが変わることがよくあります。施設の人にとっては、やっと慣れた担当者がいなくなるのは不安なものです。引き継ぐときは、前の担当者と一緒に訪問して挨拶し、施設ごとの事情、たとえば先生と話しやすい時間帯やCRCさんが大切にしている段取りを、きちんと受け継ぎましょう。「前の担当の方から、こういうやり方がよいと伺っています」と一言添えるだけで、施設の人は安心してくれます。
社内のリードや上司との距離の取り方
社内の関係で一番悩みが多いのは、リードCRAや上司との関係です。距離の取り方のポイントは、「相手が何を気にしているか」を先に知ることです。
リードCRAは、試験全体の進み具合と、クライアントへの報告に責任を持っています。リードが報告を細かく求めるのは、あなたを信用していないからではなく、クライアントから細かく聞かれているからかもしれません。新しい試験に入ったら、最初の打ち合わせで「報告はどのくらいの細かさ、どのくらいの頻度がよいですか」と聞いてしまいましょう。
聞くことは、失礼ではありません。むしろ、相手に合わせようとしている姿勢として受け取ってもらえます。最初に決めておけば、後から「報告が足りない」と言われることも減ります。
上司が2人いる体制で困ったときは、情報を2人に同じように届けておくことが大切です。リードからの指示と、ラインマネージャーの考えが違うとき、片方にだけ相談すると、もう片方が知らないまま話が進んでしまいます。「リードからはこう言われていて、自分はこう考えています」と、ラインマネージャーとの面談で事実を共有しておきましょう。
評価面談は、関係を整える機会にもなります。ラインマネージャーは、日々の仕事を直接見ていないことが多いものです。面談の前に、自分がこの期間に何をしたかを短くまとめて渡すと、相手も評価しやすくなります。見えていないことを見える形にするのは、自分を守る方法でもあります。
苦手な先輩や上司がいるときは、仕事のやり取りだけに絞る、という距離の取り方もあります。雑談に無理に加わる必要はありません。挨拶と、仕事に必要な連絡、お礼の一言。この3つがきちんとしていれば、職場の関係としては十分です。
同僚どうしの関係にも、CROならではの難しさがあります。同じ試験のCRAどうしは、担当施設の登録の進み具合を並べて比べられることがあります。自分の施設だけ登録が遅れていると、会議のたびに肩身が狭く感じるかもしれません。けれど、登録の進み具合は、施設の患者さんの数や診療科の事情に大きく左右されます。あなたの努力だけで決まるものではありません。
比べられる環境で自分を守るには、施設ごとの事情を具体的に記録しておくことです。「対象になる患者さんの来院が月に何人程度」「医師の外来日が週に1日」など、事実を積み重ねておけば、会議でも落ち着いて説明できます。同僚とは、競う相手ではなく、うまくいった工夫を分け合う仲間として付き合えると、チームの空気も和らぎます。
もし、人格を否定するような言葉を言われたり、ほかの人の前で繰り返し強く責められたりしているなら、それは距離の取り方で解決する問題ではありません。社内の相談窓口や人事、ハラスメントの窓口に相談してください。あなたは一人じゃありません。記録を残しておくと、相談するときに役立ちます。
在宅とチャット中心の職場で、すれ違いを減らす
CROでは在宅勤務が広がり、社内のやり取りの多くがチャットやメールになりました。移動の負担が減った一方で、人間関係の悩みの形は変わっています。
チャットのすれ違いを減らすには、自分の文章に「温度」を少しだけ足すことです。「確認お願いします」ではなく、「お手すきのときに確認お願いします。今日中でなくて大丈夫です」と書く。期限と、急ぎかどうかを添えるだけで、受け取る側の不安はぐっと減ります。
受け取る側のときは、短い文章を「怒っている」と読まないことを、自分との約束にしてみてください。相手が短く書くのは、忙しいから、そういう書き方の人だから、ということがほとんどです。気になったときは、すぐに返事を書かず、数分置いてから読み直すだけでも、受け取り方が変わります。
どうしても気持ちが引っかかるときは、文字でのやり取りをやめて、短いオンライン会議や電話に切り替えましょう。「少しだけお話しできますか。5分で済みます」と声をかけると、たいていの人は応じてくれます。声で話すと、文字では伝わらなかった相手の事情が見えてきます。
在宅勤務のもう1つの悩みは、孤立感です。誰とも雑談しないまま1日が終わり、チームの中で自分だけが取り残されているように感じる。こういう気持ちは、在宅で働く人にとても多いものです。
対策としては、自分から小さな接点をつくることです。定例会議の最初の1分に近況を話す、同じ時期に入社した人と月に1回オンラインでお茶をする、チームのチャットに業務以外の話題を少しだけ書く。大きなことをしなくていいのです。小さな接点が、困ったときに相談できる関係の土台になります。
反対に、チャットの通知が気になって休めない人もいます。業務時間外は通知を切る、休みの日はアプリを開かない、と自分でルールを決めておくことをおすすめします。緊急の連絡が必要な試験では、会社として連絡の方法が決められているはずですので、それ以外は翌営業日の対応で問題ありません。
オンライン会議にも、少しだけ工夫の余地があります。カメラをオフにする文化のチームでは、発言のタイミングがつかみにくく、黙っているうちに会議が終わってしまうことがあります。話したいことがあるときは、会議の前にチャットで「最後に1点だけ共有させてください」と伝えておくと、発言の場を確保できます。自分の話す番が決まっているだけで、会議中の緊張がやわらぎます。
外部就労先での人間関係
CROの社員として、製薬会社に常駐して働く外部就労では、人間関係の形がまた変わります。人材紹介の立場から、CROでの経験の違いについて次のように説明されています。
CROといっても、内資・外資、大手・中堅によって経験できる領域やキャリアパス、働き方には違いがあります。アポプラスステーションでは、あなたの経験や希望をもとに、どのような環境がキャリアに合うのか、CROや外部就労先の選択肢について無料でご相談いただけます。 出典: cra-recruit.com
同じCROでも、社内で働くか外部就労先で働くかで、関わる人がまったく違います。外部就労先では、毎日一緒に働くのは製薬会社の社員です。一方、あなたの評価をするのは、ほとんど顔を合わせないCROの上司です。
この二重の関係で起こりやすいのは、「どちらにも本音を話せない」状態です。常駐先の人には会社の事情を話しにくく、CROの上司には常駐先の不満を言いにくい。気づくと、誰にも相談できないまま抱え込んでしまいます。
距離の取り方として大切なのは、CROの上司との定期的な連絡を、自分から途切れさせないことです。月に1回でも、常駐先での仕事の様子を短く報告しておきましょう。何か困ったことが起きたとき、日頃から様子を知っている上司なら、すぐに動いてくれます。
常駐先の人とは、「一緒に試験を進める仲間」としての距離を目指します。社員と同じように振る舞おうとして無理をする必要はありません。任された仕事を丁寧に行い、分からないことは早めに聞く。それだけで、信頼は少しずつ積み上がります。会議に呼ばれないことが続くなら、「この会議の内容は私の担当にも関わるので、参加してもよいですか」と、仕事の必要として伝えてみてください。
常駐先で指示を受ける範囲や、困ったときの相談先は、契約の形によって変わります。自分がどの形で働いているのか分からないときは、CROの上司に確認しておくと安心です。
外部就労先では、同じCROから来ている仲間や、別のCROから来ている人と一緒に働くこともあります。所属が違う人どうしでも、「常駐している」という同じ立場の人とは、悩みを分かち合いやすいものです。ただし、それぞれの会社の事情や、クライアントに関する情報の扱いには気をつけましょう。休憩中の雑談で、別の試験の話をうっかり口にしないように、話す内容は働き方の悩みにとどめておくと安心です。
常駐の期間が長くなると、常駐先の社員から「うちの社員にならないか」と声をかけられることもあります。関係が良好な証拠でもありますが、CROとの契約や就業規則との関係もあるので、その場で返事をせず、まずは落ち着いて考える時間を取りましょう。
距離を取っても苦しいときの選択肢
ここまでの方法を試しても、どうしても苦しい。そういうときもあります。そんなときは、自分を責めずに、環境を変える選択肢を考えましょう。
まず、試験が変わるのを待つという方法があります。CROでは、試験が終わるとチームの顔ぶれが入れ替わります。今の試験が終わる時期が見えているなら、それまでをどう乗り切るかに気持ちを向けるだけで、少し楽になることがあります。
次に、アサインや部署の変更を相談することです。ラインマネージャーとの面談で、「今の体制では力を出しにくい」と伝えます。個人の悪口として話すのではなく、「報告の進め方で行き違いが続いていて、業務に影響が出ている」と、仕事への影響として伝えるのがコツです。データマネジメントや品質管理など、関わる人の数が少ない職種に移るのも1つの方法です。
それでも難しいときは、転職も考えてよいと思います。人間関係で辞めることは、決して逃げではありません。ただ、次の職場で同じことを繰り返さないように、何がつらかったのかを整理してから動きましょう。関わる人の多さがつらかったのか、特定の人との関係だったのか、上司が2人いる体制だったのか。整理ができていれば、面接で確かめるべきことも見えてきます。
医療の現場に戻ることを考える方もいます。CROには看護師や薬剤師の資格を持つ方が多く働いていますから、自分の資格で働く場合の水準を知っておくと、選択肢を冷静に比べられます。看護師の年収・単価相場では病棟やクリニック、企業など勤務先ごとの水準がまとまっていますし、薬剤師の年収・単価相場でも同じように勤務先ごとの違いを確認できます。
眠れない、食欲がない、朝になると涙が出る。そんな状態が2週間以上続いているなら、職場の選択より先に、心と体を休めることを優先してください。産業医や社内の相談窓口、心療内科など、話を聞いてくれる場所はあります。会社の外で相談したいときは、厚生労働省が案内している働く人のための相談窓口もあります。
休むことに罪悪感を持つ方は、とても多いです。担当施設に迷惑をかける、チームに負担をかける、と考えてしまうのですね。けれど、CROの仕事はチームで引き継げるように手順が整えられています。あなたが休んでも、試験は止まりません。反対に、無理を重ねて長く休むことになるほうが、ご自身にもチームにも影響が大きくなります。早めに休むことは、責任を果たす1つの形です。
人との距離を上手に保つ人が、CROの外でも続けていること
最後に、働き方の広がりと、人との関係を長く保つ人の共通点についてお話しします。
CROで身につけた力は、会社の中だけで使うものではありません。医師やCRCへの伝え方、立場の違う人の間で情報を正確に届ける力、チャットで誤解を生まない書き方。こうした力は、医療系の文章の仕事や、治験に関わる書類のチェック、医療に関する翻訳など、業務委託の仕事でもそのまま活きます。一人で働く形を選ぶと、関わる人の数を自分で決められるので、人間関係に疲れやすい方には合う場合もあります。
とはいえ、一人で働くと、今度は相談できる人がいないという別の寂しさが出てきます。会社員として働きながら、小さな業務委託の仕事を少しずつ試してみる。そうすると、自分にとって心地よい人との距離がどのくらいなのかが、実際の感覚として分かってきます。在職中に試すときは、会社の副業の決まりと、仕事で知った情報を使わないことだけは、しっかり守ってくださいね。
20年この市場を見てきた立場から言えば、業務委託で長く仕事が続く人ほど、依頼する側と「この人に頼むと安心」という関係を丁寧に育てています。連絡の返事が早い、分からないことを早めに聞く、約束を守る。特別な技術より、こうした小さな積み重ねが関係を支えています。そして、間に仲介の手数料が入らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側の手取りも厚くなります。手数料0%の良さは、金額そのものより、お互いに無理のない関係を長く続けられるところにあります。
人の悩みを聞いてもらいたいとき、あるいは、自分の経験を活かして誰かの話を聞く側に回りたいと感じたときは、どんな形の相談の仕事があるのかを知っておくのもよいと思います。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、職場や転職の悩みにのる仕事の中身が紹介されています。学びを深めたい方は、キャリアコンサルタントの資格ガイドで受験資格や学ぶ内容を確認できます。
CROの人間関係は、狭くて、長くて、離れにくいものです。けれど、誰とどのくらいの距離で付き合うかは、あなたが選べます。全部の人と近くなくていい。仕事に必要な信頼と、自分を守る間合い。その両方を大切にしてくださいね。
よくある質問
Q. CROの人間関係は、他の業界と比べて難しいのですか?
難しさの種類が少し違います。CROでは試験ごとの少人数チームで数年単位の付き合いになり、社内のリードや上司に加えて、医療機関の医師やCRC、クライアントとも長く関わります。業界が狭く転職しても再会することがあるため、言いたいことを飲み込みやすい傾向があります。仕組みを知ったうえで、相手ごとに距離を決めると楽になります。
Q. リードCRAと進め方が合わないときは、どうすればよいですか?
まず、報告の細かさや頻度について、リードがどのくらいを求めているかを直接聞いてみてください。求める内容が分かれば、行き違いの多くは解消します。それでも合わない場合は、ラインマネージャーとの面談で、個人への不満ではなく業務への影響として事実を伝えます。人格を否定される言葉が続く場合は、社内の相談窓口やハラスメントの窓口に相談してください。
Q. 在宅勤務で孤立感があるときの対処法はありますか?
自分から小さな接点をつくることが効果的です。定例会議の最初に近況を一言話す、同時期に入社した人と月に1回オンラインで話す、チームのチャットに業務以外の話題を少し書くといった方法があります。反対にチャットの通知で休めない場合は、業務時間外は通知を切るなど自分のルールを決めておくと、気持ちの切り替えがしやすくなります。
Q. 人間関係が理由でCROを辞めるのは、転職で不利になりますか?
人間関係を理由に辞めること自体は珍しくなく、それだけで不利になるとは限りません。大切なのは、何がつらかったのかを整理し、面接では次の職場で実現したい働き方として伝えることです。例えば、関わる人の多さが負担だったなら、少人数で集中して取り組める職種を選んだ理由として話すと、同じ理由で辞めるのではという懸念を持たれにくくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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