クラウド受発注システムの導入効果|脱アナログで生まれる時間の使い道

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
クラウド受発注システムの導入効果|脱アナログで生まれる時間の使い道

この記事のポイント

  • クラウド受発注システムの導入効果を発注者目線で徹底解説
  • FAX・電話・Excel運用から脱却して生まれる時間の使い道
  • 外注との組み合わせ方まで

結論から言います。クラウド受発注システムとは、FAX・電話・メール・Excelに散らばっていた注文のやり取りを、ブラウザ上の1画面にまとめる仕組みです。発注側が商品マスタから選んで発注ボタンを押すと、取引先の画面に同じデータがそのまま届く。転記も復唱も要らなくなります。費用の帯は、小規模なら月額数千円から1万円台、中規模で1万円から5万円台、大企業向けの高機能なもので月額10万円超。初期費用は0円のサービスも珍しくありません。

この記事は「受発注システム クラウド」「発注管理システム クラウド」で調べている、発注する側の担当者に向けて書いています。どんなタイプがあるのか、いくらかかるのか、何ができるのか、選ぶときの比較軸、導入の進め方、稟議の通し方、取引先への依頼文、契約前の確認項目まで、実務でそのまま使える形で整理します。導入効果の話は後半に置きました。まず「何を選べばいいか」から読めるようにしています。

クラウド受発注システムとは何か|最初の3分で掴む全体像

クラウド受発注システムとは、注文を受ける(受注)・注文を出す(発注)という取引のやり取りを、インターネット上のシステムで一元管理する仕組みです。自社にサーバーを置かず、提供会社のサーバーをブラウザ経由で使います。

何ができるのか|標準的にできることの一覧

サービスによって差はありますが、クラウド受発注システムで一般的にできることは次の通りです。ここに載っていない機能は「その製品の売り」か「オプション扱い」のどちらかだと考えて構いません。

できること 発注側にとっての意味
商品マスタからの発注 品番の書き間違い、数量の桁間違いが起きにくい
発注履歴からの再発注 定期発注が数クリックで終わる
発注書・注文書の自動生成 書式を作る作業と印刷が消える
取引先別の単価登録 発注時に金額が自動計算され、後から請求額と食い違わない
納期・出荷ステータスの表示 「あの発注どうなった」の電話確認が要らない
承認フロー(ワークフロー) 一定金額以上に上長承認を挟み、無駄な発注を止める
発注データのCSV出力 会計ソフトや基幹システムに流し込める
スマホ・タブレット対応 現場や外出先から発注できる
権限管理(部署別・拠点別) 拠点ごとの発注を分けて集計できる
電子帳簿保存法に沿った保存 紙の伝票を探し回らなくてよくなる

費用はいくらか|規模別の帯

金額はサービスと取引規模で大きく変わります。ここでは検討の初期段階で予算感を掴むための帯として示します。実際の金額は必ず各社の公式サイトの料金ページを確認してください。

規模 初期費用の帯 月額の帯 主な料金の考え方
小規模(取引先10社前後、月数十件) 0円から数万円 数千円から1万円台 月額固定、または無料プランあり
中規模(取引先数十社、月数百件) 数万円から10万円台 1万円台から5万円台 月額固定+ユーザー数課金
中堅・大規模(取引先100社超、月数千件) 10万円台から数十万円 5万円から10万円超 従量課金、または拠点数課金
EDI型・個別開発を含むもの 数十万円から 個別見積 回線費用・接続先ごとの費用が別途

無料プランを持つサービスもあります。一定の取引件数までは無料で、超えたら有料に移行する形です。まず無料で始めて業務に合うか確かめる進め方ができます。

「COREC(コレック)」は、株式会社ラクーンコマースが提供するBtoB向けクラウド受発注システムです。 出典: media.conct.jp

「高額な投資が必要」という先入観で検討を止める必要はありません。まず小さく試すのが賢明です。

なぜクラウド型が主流になったのか

従来の受発注システムには、自社サーバーにソフトを設置するオンプレミス型もありました。しかし今の主流は完全にクラウド型です。理由は3つあります。

1つ目は初期投資の小ささです。オンプレミス型はサーバー購入やシステム構築で初期費用が数百万円単位になることも珍しくありませんでした。クラウド型は月額料金だけで使い始められます。

2つ目は保守の外部化です。バージョンアップ、セキュリティパッチ、障害対応を提供会社が担います。社内にIT担当がいない企業ほど効きます。

3つ目は取引先を巻き込みやすいことです。受発注は自社だけで完結しません。クラウド型なら取引先はブラウザやスマホでログインするだけで参加できます。相手に高価なソフトを買わせずに済むのは、現場では決定的な利点です。

クラウド受発注システムの5つのタイプ|どれを選ぶかで話が変わる

「受発注システム」とひとくくりに検索しても、実際には性格の違う5つのタイプが混ざっています。ここを分けずに比較表を眺めても、自社に合うものは選べません。

タイプ 得意なこと 費用帯の傾向 向いている会社
受発注特化型 発注・受注のやり取りに機能を絞り、操作が軽い。取引先を招待して使わせやすい 低め(月額数千円から数万円) 取引先とのやり取りをまず紙から剥がしたい会社
販売管理一体型 受発注に加えて在庫・出荷・請求・売上まで一気通貫。二重入力が消える 中(月額数万円から) 受注も発注も自社で回していて、基幹の入れ替えを考えている会社
EDI型(Web-EDI含む) 大手取引先の指定フォーマットに合わせてデータ連携する。件数が多くても耐える 高め(個別見積になりやすい) 大手チェーンや大手メーカーと定型の大量取引がある会社
業種特化型 飲食、アパレル、建設、医療など業界の商習慣に合わせた初期設定済み 中(業界標準の価格帯) その業界の商習慣が強く、汎用型だと設定が地獄になる会社
汎用ツールで代替 入力フォーム、ワークフロー、スプレッドシートの組み合わせで擬似的に運用 低(既存契約の範囲内で済むことも) 取引先が数社、月の発注が数十件以下の会社

業界特化型の例として、飲食業界向けに設計されたサービスがあります。

「BtoBプラットフォーム 受発注」は株式会社インフォマートが提供するクラウド受発注システムです。飲食業界の受発注業務効率化に最適化されており、外食企業向け・卸企業向けにそれぞれパッケージが用意されています。 出典: media.conct.jp

汎用ツールで代替できるかの判断ライン

いきなり専用システムを契約する前に、社内のフォームツールやワークフローツールで足りるかを検討する価値はあります。判断のラインはこうです。

・取引先が5社以下、月の発注が50件以下、品番が数十点まで。これなら汎用ツールで回る可能性があります ・取引先が10社を超える、品番が数百点ある、取引先ごとに単価が違う。ここからは専用システムのほうが安く付きます ・納期回答や出荷ステータスを相手から返してもらう必要がある。汎用フォームは一方通行なので、ここが必要なら専用型に進みます

汎用ツールで組んだ運用は、作った人が辞めた瞬間に誰も直せなくなるという弱点も抱えます。属人化を減らすために入れるはずが、別の属人化を生むことがあるので注意してください。

受注管理システムと発注管理システムの違い

検索していると「受注管理システム」「発注管理システム」「受発注システム」と似た言葉が並んで混乱しがちです。整理しておきます。

受注管理システムは注文を受ける側の業務、つまり注文の受付・在庫確認・出荷指示・請求までを管理します。発注管理システムは注文を出す側、つまり仕入れ・発注書作成・納期管理・支払い予定の把握を担います。受発注システムは、この両方を1つのプラットフォームで扱い、発注側と受注側が同じデータを共有する仕組みです。

自社が仕入れる側なのか、注文を受ける側なのか、あるいは両方なのかで選ぶべきものが変わります。多くの中小企業は「取引先に発注もするし、顧客から受注もする」という両面を持っているため、受発注を統合したシステムが現実的な選択肢になります。

機能チェックリスト|資料請求の前にこれを埋める

各社の営業資料を読み比べる前に、自社に必要な機能を先に決めてください。順番が逆になると、提案された機能が全部良く見えて予算が膨らみます。

確認項目 必須か 自社の要件
商品マスタの登録件数の上限 必須 品番◯点まで登録できるか
取引先ごとの単価設定 必須に近い 相手ごとに違う値段を出せるか
発注の承認フロー 金額管理が要るなら必須 ◯円以上は上長承認
分納・一部納品の扱い 資材や食材なら必須 一部だけ届いた状態を記録できるか
納期回答の入力 相手に返してほしいなら必須 取引先側が納期を入れられるか
発注データのCSV出力とAPI 必須 会計や基幹に流せるか
電子帳簿保存法に沿った保存 必須 検索要件を満たす形で保存されるか
インボイス制度対応 必須 登録番号を保持し帳票に出せるか
権限管理・拠点別の閲覧制御 拠点が複数なら必須 他拠点の発注が見えない設定にできるか
スマホからの発注 現場発注があるなら必須 専用アプリが要るか、ブラウザで足りるか
取引先の招待人数の上限 必須 取引先を何社まで無料で招待できるか
ログの保持期間 あると安心 何年分の履歴が残るか

「必須」に◯が付いた項目だけを持って問い合わせると、比較が一気に楽になります。あれば嬉しい機能は、必須が満たされた候補が2社以上残ってから比べれば十分です。

選定の比較項目シート|候補3社を横に並べる

候補が絞れたら、次のシートを埋めて比較します。営業担当に聞けば全部答えが返ってくる項目だけを並べました。

比較項目 A社 B社 C社
タイプ(特化・一体型・EDI・業種特化)
初期費用
月額費用(自社の想定利用者数で)
課金単位(ユーザー数・取引件数・拠点数)
取引先側の費用負担の有無
取引先側に必要な準備(アプリ導入の要否)
無料トライアルの期間
会計・基幹との連携方法(API・CSV)
電子帳簿保存法とインボイスの対応状況
サポート窓口(電話・メール・チャット)
導入支援の有無と費用
契約期間の縛りと解約条件
解約時のデータ返却方法
稼働率の実績と障害時の連絡手段

選定の5つの軸

シートを埋めるときの判断基準を、軸として5つに整理します。

軸1は自社の取引形態に合っているかです。業界特化型を選ぶと初期設定が楽になります。汎用型は自由度が高い反面、自社に合わせた設定に手間がかかります。取引件数が月数十件なのか数千件なのかでも、選ぶべき規模帯が変わります。

軸2は取引先の導入負担が小さいかです。取引先が使えなければ意味がありません。専用ソフトのインストールが不要か、スマホで完結するか。無料トライアルがあれば、取引先の1社に試してもらってから本格導入を判断できます。

軸3は既存システムと連携できるかです。会計ソフトや在庫管理システムと連携できないと、結局データを二重入力することになり、効率化の効果が半減します。API連携やCSV連携に対応しているかを具体的に確認してください。連携開発が必要になる場合はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、専門スキルを持つ人材への外注も検討の余地があります。

軸4はサポート体制です。導入初期は必ず疑問やトラブルが発生します。ITに詳しい担当者が社内にいない会社ほど、サポートの手厚さが効きます。

軸5は料金体系が取引量に見合うかです。月額固定、取引件数従量、ユーザー数課金など様々です。安さだけで選ぶと機能不足で後悔し、機能で選ぶと使いこなせず持て余します。

私が見た「安さだけで選んで失敗した」事例

以前、あるEC事業者の外注をサポートしたとき、その事業者は初期費用0円・月額最安のシステムを選んでいました。ところが運用を始めると自社の商品カテゴリに合わず、商品マスタの登録に膨大な手間がかかり、しかも会計ソフトと連携できませんでした。結局、受注データを毎回手作業で会計ソフトに転記することになり、効率化のために入れたのにかえって手間が増えた、と嘆いていました。

料金表の「月額いくら」だけを比較して選ぶと、こういうことが起きます。導入前の無料トライアルは、面倒でも必ず使ってください。

契約前に必ず確認する項目|ここを飛ばすと後で身動きが取れなくなる

クラウドサービスは「入るとき」より「出るとき」に問題が出ます。契約書と利用規約で次の点を確認してください。

・データのエクスポート可否。発注履歴、商品マスタ、取引先情報を、CSVなど汎用形式で自分で出せるか。画面表示だけで出力機能がないサービスも実在します ・API提供の有無と条件。APIが上位プランのみだったり、別料金だったりすることがあります。将来の連携予定があるなら初回の見積時に確認します ・電子帳簿保存法への対応範囲。タイムスタンプ、訂正削除の履歴、検索要件のどこまでを満たすか。「対応済み」の一言で片付けず、要件ごとに聞きます ・インボイス制度への対応。適格請求書発行事業者の登録番号を保持し、帳票に出力できるか。取引先の登録状況を管理できるか ・アカウント課金の考え方。ユーザー数課金なら、パートやアルバイトの分まで数えるといくらになるか。閲覧のみのアカウントが無料かどうかで総額が変わります ・取引先アカウントの費用負担。取引先の招待が無制限なのか、社数で課金されるのか。取引先に費用が発生する設計だと、切り替えの交渉が一気に難しくなります ・契約期間と自動更新。年間契約の縛りがあるか、途中解約に違約金があるか ・解約時のデータの扱い。解約後何日間ダウンロードできるか、その後どのタイミングで消去されるか。ここは口頭ではなく書面で確認します ・障害時の連絡方法と稼働率の実績。受発注が止まると出荷が止まります。ステータスページがあるか、過去の障害履歴が公開されているかを見ます

アナログ受発注が奪っている「見えないコスト」

ここからは、導入によって何がどれだけ変わるかの話に移ります。効果を測るには、まず今のアナログ運用がどれだけのコストを生んでいるかを直視する必要があります。多くの経営者は、このコストを費用として計上していません。だからこそ改善の余地が大きいのです。

FAX・電話・Excelが生む3つの損失

1つ目は転記の時間です。FAXで届いた注文書をExcelや基幹システムに手入力する作業。1件あたり数分でも、1日50件あれば数時間が消えます。この時間は何も生み出しません。データを右から左に移しているだけです。

2つ目はミスの修正コストです。手書きFAXの読み間違い、電話での聞き間違い、転記時の打ち間違い。誤発注が1件起きると、返品・再発送・謝罪・在庫調整と、本来不要だった作業が連鎖します。

3つ目は属人化のリスクです。「あの取引先の発注はベテランの田中さんじゃないと分からない」という状態。田中さんが休んだ日、急に退職した日、業務が止まります。アナログ運用は特定の人の頭の中に手順が蓄積されるため、組織としては極めて脆い構造です。

「時間がない」の正体は受発注業務だったという話

私が以前、ある小売店の外注案件をサポートしたとき、店主が「新商品の企画をやりたいのに時間がない」と繰り返していました。よく話を聞くと、1日の労働時間のうち相当な割合が、卸への発注電話とFAX確認、そして納品書の照合に消えていたのです。

正直なところ、これはよくある勘違いです。「時間がない」の正体は、多くの場合「受発注のアナログ作業に時間を奪われている」ことです。企画や営業や接客といった売上を生む仕事の時間がないのではなく、売上を生まない作業に時間が食われている。

稟議に出す効果試算の書き方|削減時間を金額に直す計算式

社内の稟議を通すには、感覚ではなく数字が要ります。次の4ステップで作れば、決裁者が判断できる形になります。

ステップ1は現状の作業時間を数えることです。1週間だけでいいので、担当者に次の項目を記録してもらいます。

作業 1件あたりの時間 1日の件数 1日の合計
発注書の作成・送信
電話・FAXでの内容確認
受領データの転記
納品書と発注内容の照合
誤発注の手戻り対応

ステップ2は金額に直すことです。計算式はこうです。

削減時間(月)= 1日の合計削減分数 × 稼働日数 削減金額(月)= 削減時間(時間換算) × 人件費単価(時給換算)

人件費単価は、月給に法定福利費を含めた総額を月間所定労働時間で割って出します。年収400万円クラスの社員なら、社会保険料の会社負担を含めた総額を所定労働時間で割り、時給換算でおよそ2,500円前後になる会社が多いはずです。自社の給与規程から実際の数字を出してください。

ステップ3は削減率を控えめに置くことです。導入初日から作業がゼロになることはありません。転記作業は8割減、確認電話は5割減、照合は3割減、といった具合に項目ごとに率を分けます。全部を9割減で計算した稟議書は、決裁者に疑われます。

ステップ4は回収期間を出すことです。

回収期間(月)=(初期費用 + 導入作業の人件費)÷(月額削減金額 - 月額利用料)

たとえば削減金額が月12万円、月額利用料が3万円、初期費用と導入工数の合計が30万円なら、30万円 ÷ 9万円 で、およそ3.4か月で回収する計算になります。

金額に乗らない効果も、稟議書には別枠で1行ずつ書いておきます。担当者が休んでも止まらないこと、在宅勤務でも発注できること、電子帳簿保存法とインボイスへの対応が同時に進むこと、誤発注による取引先からの信用低下を防げること。これらは数字にしにくいものの、決裁者が気にする論点です。

IT導入補助金という選択肢

見逃してはいけないのが、IT導入補助金です。国は中小企業のIT化を後押しするため、業務効率化に資するITツールの導入に補助金を出しています。クラウド受発注システムも対象になることがあり、導入費用の一部が補助されます。制度の詳細と対象ツールは年度で変わるため、必ず最新の公式情報を確認してください。FAXからの脱却と補助金活用の具体的な進め方は、受発注システムのクラウド化2026|FAXから脱却してIT導入補助金を活用する方法で詳しく解説しています。

導入ステップの工程表|検討開始から本稼働まで

進め方を工程に分けて示します。取引先が10社から30社の規模で、おおむね3か月から4か月が現実的な線です。

期間 やること 完了の目安
第1週から第2週 現状の受発注フローを書き出す。取引先別に手段(FAX・電話・メール)と件数を一覧化 取引先一覧と件数表ができている
第3週から第4週 機能チェックリストを埋め、候補を3社に絞って資料請求 必須機能が確定している
第5週から第6週 無料トライアルで実業務を流す。取引先1社に協力してもらう 現場担当が触った感想が出ている
第7週 比較シートを埋め、効果試算を添えて稟議 決裁が下りている
第8週から第9週 商品マスタと取引先マスタの登録。既存データのCSV整形 マスタ登録が9割終わっている
第10週 社内マニュアル作成と操作研修。承認フローの設定 担当者が見なくても発注できる
第11週から第12週 取引先へ案内。まず主要3社から開始 3社が実運用に入っている
第13週以降 対象取引先を段階的に拡大。並行運用を終了 FAXの受信件数が目に見えて減っている

一斉に全取引先を切り替えないでください。協力的な数社で運用の穴を潰してから広げるほうが、結果的に早く終わります。並行運用の期間は1か月程度を見込み、期限を切らないとFAXが永久に残ります。

マスタ登録でつまずかないために

導入作業の山場は、ほぼ間違いなく商品マスタの登録です。品番、品名、規格、入数、単価、取引先。この整備が終わっていない状態でシステムを開けても、誰も発注できません。既存のExcelから移す場合、表記ゆれ(全角と半角、スペースの有無、旧品番の混在)を先に潰しておくと後が楽になります。件数が数千点あるなら、この工程だけ外部に委託するのも現実的な判断です。開発や周辺作業をどこまで頼めるかはWeb・業務システム開発のお仕事で、依頼内容の具体的なイメージが掴めます。

取引先へ切り替えを依頼する案内文のひな形

導入の成否を分けるのは、システムの性能ではなく取引先の協力です。文面はそのまま使える形にしておきます。相手に発生する負担と、いつから始めるかを最初に書くのが要点です。

株式会社◯◯ ご担当者様

平素より大変お世話になっております。株式会社△△の(担当者名)です。

このたび弊社では、発注業務のクラウド化を進めております。つきましては、貴社への発注につきましても、◯月◯日より「(システム名)」を通じたご注文に切り替えさせていただきたく、ご案内申し上げます。

貴社にご負担いただく費用はございません。ご準備いただくのは、インターネットに接続できるパソコンまたはスマートフォンのみで、専用ソフトのインストールは不要です。

切り替え後の流れは次の通りです。

・弊社より、ご担当者様のメールアドレス宛に招待メールをお送りします ・メール内のURLからパスワードをご設定ください(所要5分程度) ・以降、弊社からの発注は同システムの画面に表示されます ・納期のご回答も同じ画面から入力いただけます

◯月◯日から◯月◯日までは、従来のFAXと並行して運用いたします。この期間中に操作にお慣れいただければと存じます。

操作方法のご説明はオンラインでも対応いたします。ご不明な点、ご懸念などございましたら、遠慮なく(担当者名・連絡先)までお知らせください。

何卒よろしくお願い申し上げます。

送るタイミングは、招待メールの1週間前が目安です。同時に送ると、案内文を読む前に招待メールが届いて相手が混乱します。相手がITに不慣れな小規模事業者の場合は、この文面に加えて、画面のスクリーンショットを2枚から3枚付けた1枚もののPDFを添えると通りが良くなります。

導入前に知っておくべきデメリットと失敗パターン

フェアに書きます。クラウド受発注システムは万能ではありません。ここを飛ばしてメリットだけを見て導入すると失敗します。

取引先の協力が不可欠という壁

最大の壁は取引先を巻き込めるかどうかです。自社がシステムを導入しても、取引先が「うちはFAXでしか受け付けない」と言えば、その取引だけアナログのまま残ります。相手が高齢の経営者だったり、ITに不慣れな小規模事業者だったりすると、依頼そのものがハードルになります。

対策は、取引先の負担が最小のシステムを選ぶことです。相手はブラウザで見るだけ、スマホで注文を確認するだけ、という手軽なものなら受け入れられやすい。導入時には「相手に何をしてもらう必要があるか」を必ず確認してください。

ランニングコストと運用定着の問題

クラウド型は月額課金です。使い続ける限りコストがかかります。月額1万円のシステムでも年間で12万円。導入効果がこのコストを上回るかを見極める必要があります。取引量が少ない事業者だと費用対効果が合わないこともあります。

もう1つは運用が定着しないリスクです。せっかく導入しても、現場が「やっぱりFAXの方が早い」と元に戻ってしまう。これは操作が複雑すぎるシステムを選んだときに起きがちです。導入初期の混乱を乗り越える教育とサポート体制がないと、宝の持ち腐れになります。

正直なところ、システムを入れただけで自動的にうまくいくと思っているなら、それはどうかと思います。システムは道具であって、使いこなす運用設計があって初めて効果が出ます。

よくある失敗の型

・全取引先を一斉に切り替えようとして、問い合わせが集中して現場が止まる ・並行運用の終了日を決めず、FAXが1年経っても残る ・マスタ整備を後回しにしてトライアルを始め、「使いにくい」という誤った評価が現場に定着する ・会計ソフトとの連携可否を確認せず契約し、転記作業が別の場所に移動しただけになる ・現場担当を選定に入れず、決裁者だけで決めて、誰も使わないシステムが残る

導入で得られるもの|発注側の視点で整理する

発注側の最大のメリットは発注ミスの激減です。商品マスタから選んで発注するため、品番の書き間違いや数量の桁間違いが起きにくくなります。過去の発注履歴からの再発注機能があれば、定期発注の手間が数クリックで終わります。

次に発注状況の可視化です。誰が・いつ・何を・いくつ発注したかがシステムに残るため、「あの発注どうなった」という確認作業が不要になります。承認フローを設定すれば、一定金額以上の発注に上長承認を挟み、無駄な発注を防げます。

そして価格と納期の透明化です。取引先ごとの単価が登録されていれば、発注時に金額が自動計算されます。納期もシステム上で確認できるため、「いつ届くか分からない」という不安がなくなります。月次の仕入額が発注時点で見えるので、予算管理も締め日を待たずに回せます。

取引先側のメリットも把握しておく|これが説得材料になる

切り替えをお願いする以上、相手にとっての利点も説明できる必要があります。取引先(受注する側)にとっては、電話対応やFAX確認の手間が消え、注文内容が文字データとして正確に残るため「頼んだものと違う」というトラブルが減ります。

そこで、操作性に優れたクラウド受発注システム「CO-NECT」を導入。発注データをシステム上で一元管理できるようになり、確認作業の手間が減少。トラブルが解消され、対応時間は大幅に短縮されました。 出典: media.conct.jp

案内文にこの点を1行入れておくと、相手にとっても「やらされる話」ではなくなります。

共通して効くもの|ペーパーレスと法対応

紙のFAX用紙、印刷代、保管スペースが不要になります。クラウド型は場所を選ばないため、在宅勤務でも受発注業務が回ります。担当者が出社しなくても業務が止まらないのは、事業継続の観点でも重要です。

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も見逃せません。取引データが電子的に残るため、法制度への対応がしやすくなります。紙の伝票を探し回る必要がなくなるのは、経理担当者にとって大きな負担軽減です。

導入で「生まれた時間」を何に使うか

機能や費用を説明してきましたが、本当に大事なのはここからです。受発注業務が効率化され、時間が生まれた。その時間を何に使うかで事業の成長が決まります。

選択肢1:本来やるべきコア業務に回す

生まれた時間を売上を生む仕事に回すのが王道です。新商品の企画、新規顧客の開拓、既存顧客との関係構築、接客の質向上。受発注は事業の心臓ではありますが、それ自体は付加価値を生みません。心臓を自動化して、頭と手を創造的な仕事に使う。これが導入効果を最大化する考え方です。

選択肢2:さらなる業務を外部に委託する

もう1つの選択肢が、生まれた時間で「他の業務も見直し、外部に委託する」ことです。受発注をシステム化して見えてきた「まだアナログな業務」を、今度は外注で軽くする。経理、データ入力、SNS運用、カスタマーサポートなど、社内でやらなくてもよい業務は意外と多いものです。

ここで知っておいてほしいのが、依頼先の選び方です。同じ業務を外注するにも、代理店や仲介会社を通すルートと、フリーランスに直接依頼するルートがあります。代理店経由は間に管理会社が入る分、中間マージンが上乗せされます。発注する側から見ると、支払った金額のうち一定割合が仲介手数料に消え、実際に手を動かす人に届く分はその残りになります。フリーランスへ直接依頼すれば、同じ予算でより多くの作業を頼めます。相場感は、システムコンサルタント・設計者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場といった職種別のデータで確認できます。予算を組むときは、まずこの相場に対して自社が支払える上限を決めてから募集をかけると、条件のすり合わせが速く終わります。

発注側から見た直接取引の意味

フリーランス・在宅ワーク市場を20年運営してきた立場から言えば、長く良い関係が続く発注者と受注者には共通点があります。それは、間に余計な中間業者を挟まず、直接やり取りをしていることです。

中間マージンが乗らない直接取引は、発注する側にとって「同じ予算でより多く頼める」ことを意味します。運営者として見てきた限りでは、手数料が乗らない構造が効くのは、単に安いからではありません。支払った金額がそのまま相手に届くからこそ、相手が本気で向き合ってくれる。発注者は「この人に任せると楽だ」という信頼関係を築けます。長く続く発注者ほど、単発の作業依頼ではなく、この「任せられる関係づくり」に時間を使っています。受発注システムで生まれた時間を、良い外注パートナー探しに投じるのは、理にかなった時間の使い方だと思います。

独自データから見える「効率化の先」の傾向

在宅ワーク・フリーランス市場を長く運営してきた立場から、受発注業務の効率化に取り組む事業者の動きを整理します。

システム化の次に外注が来るという流れ

私たちが見てきた傾向として、受発注をクラウド化した事業者は、その後さらに他業務の外注化に進むケースが目立ちます。理由は明確で、一度「この作業は自社でやらなくてもいい」という発想を持つと、他の業務にも同じ目が向くからです。受発注のシステム化は、業務を見直す最初のきっかけになります。

システム連携やカスタマイズが必要になると、自社にエンジニアがいない中小企業は外部に頼ることになります。ここで、クラウドインフラの知識を持つ人材への需要が高まります。クラウド関連スキルの証明としてAWS認定クラウドプラクティショナーCCNA(シスコ技術者認定)といった資格を持つ人材は、受発注システムの導入・連携支援でも活躍しています。発注者としては、こうした資格を外注先を絞り込むときの目安にできます。

セキュリティへの意識が導入の分かれ目になる

もう1つの傾向は、クラウド化に伴ってセキュリティへの関心が高まることです。取引データをクラウドに預ける以上、情報漏洩やシステムの脆弱性は無視できません。特に取引先の情報を扱う受発注システムでは、セキュリティ対策の有無が信頼に直結します。

システムを導入する際は提供会社のセキュリティ体制を確認するのが基本ですが、自社で開発したり大幅にカスタマイズしたりする場合は、セキュリティ診断も検討すべきです。診断の費用感についてはシステム・Webサイトのセキュリティ診断費用|格安プランと本格診断の違いで相場を確認できます。安さだけで選んだシステムがセキュリティに穴を抱えていた、というのは避けたい事態です。

外注する際の見極め方

生まれた時間を使ってオンラインで外注先を探す場合、相手をどう見極めるかが問われます。クラウドソーシングやマッチングサイトでは、評価やレビューが重要な判断材料になります。良い外注先を見つけるコツは、クラウドソーシングの評価システム|高評価を得る5つのコツ【2026年版】で解説している評価の仕組みを理解することです。評価の背景を読み解けると、発注者としても失敗が減ります。

最後に、発注者として肝に銘じておいてほしいことがあります。身元が不明な相手や、着手前に高額な前払いを要求してくる相手には注意が必要です。作曲・編曲といったクリエイティブ系の外注でも同じで、作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事のように専門性の高い分野ほど、実績と信頼を確認したうえで直接取引に進むのが安全です。受発注をクラウド化して効率化を実現し、生まれた時間で賢く外注を組み立てる。この2つが噛み合ったとき、事業は本当に軽くなります。

よくある質問

Q. クラウド受発注システムの費用相場はどれくらいですか?

初期費用は0円〜数十万円、月額費用は小規模向けで数千円〜1万円、中規模で1万円〜5万円が目安です。取引量が少なければ無料プランを提供するサービスもあります。IT導入補助金を使えば実質負担をさらに減らせるため、まず無料トライアルで自社に合うか確かめてから有料化するのが賢明です。

Q. 取引先がITに不慣れでも導入できますか?

できますが、取引先の導入負担が小さいサービスを選ぶことが鍵です。相手がブラウザやスマホから注文するだけで完結する手軽なシステムなら、ITに不慣れな取引先でも受け入れられやすくなります。専用ソフトのインストールが不要か、操作がシンプルかを事前に確認し、まず1社に試してもらってから本格導入すると失敗しにくいです。

Q. クラウド受発注システムを導入する一番のメリットは何ですか?

最大のメリットは、FAX・電話・Excel転記に奪われていた時間が戻ることです。発注ミスの激減、受注処理の自動化、業務の属人化解消、ペーパーレス化も実現します。生まれた時間を新規開拓や企画などのコア業務、あるいはさらなる業務の外注化に回すことで、事業全体の生産性が大きく向上します。

Q. システム導入と外注はどちらを先にすべきですか?

まず受発注のシステム化から始めるのが王道です。日々発生する定型業務を自動化すれば、確実に時間が生まれます。その時間で「社内でやらなくてよい業務」を洗い出し、経理やデータ入力などを外注へ回します。外注は代理店経由より、中間マージンのないフリーランスへの直接依頼のほうが同じ予算で多く頼めるため、コスト効率が高くなります。

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公開:2026年2月10日最終更新:2026年8月26日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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