簿記3級の講師・講座の仕事|オンライン講座と個人指導の始め方と値付け

前田 壮一
前田 壮一
簿記3級の講師・講座の仕事|オンライン講座と個人指導の始め方と値付け

この記事のポイント

  • 簿記3級 講師 副業を考えている人向けに
  • 使ってはいけない表現までを整理しました
  • 資格をすでに持っている人が最初の1講座を開くまでに必要なことだけをまとめています

まず、安心してください。簿記3級で人に教える仕事はできます。「3級で教えるなんておこがましい」と考えて手を止めている人が多いのですが、実際に受講者が求めているのは、上級者の知識ではなく、つまずいた場所を分かる人の説明です。3級を勉強したばかりの人にとって最も分かりやすい説明ができるのは、2級や1級の保有者ではなく、3級の学習過程を覚えている人だという場面は珍しくありません。

教える仕事のよいところは、在庫を持たず、単価を自分で決められることです。記帳代行やデータ入力は作業量と収入が比例しますが、講座は同じ内容を複数人に届けられます。一方で、集客ができなければ収入はゼロのままという厳しさもあります。ここは正直に書いておきます。この記事では、簿記3級を持っている皆さんが、教える場をどこに求めるのか、いくらで売るのか、最初の講座をどう作るのかを、順に整理していきます。

簿記3級を教える需要はどこにあるのか

簿記3級の受験者数は、日商簿記の中で最も多い層です。統一試験とネット試験の併用体制になり、受験のハードルが下がったこともあって、学習者の裾野は広がり続けています。この学習者のうち、独学だけで進める人は一定数いますが、途中でつまずいて誰かに聞きたくなる人がかなりの割合で出ます。

つまずきの場所は驚くほど共通しています。借方と貸方の意味が腹落ちしない、貸倒引当金の処理で混乱する、決算整理仕訳の順序が分からない、精算表の記入で手が止まる。この4つで大半を占めます。つまり、教える側が用意すべき説明の中心も、この4つになります。全範囲を網羅した講座を作る必要はありません。

簿記は、企業の経理業務に欠かせないスキルであり、副業でも多くの案件を見つけ活かす事ができます。 出典: brush-up.jp

副業として簿記を活かす方法を紹介する記事では、記帳代行や経理事務と並んで簿記講師が挙げられます。ただし、講師の項目だけは「どうやって始めるのか」がほとんど書かれていません。実際に始めるには、教える場を確保する具体的な手順が要ります。

学習者が講師に求めているもの

受講者が講師を選ぶとき、見ているのは合格実績だけではありません。実際のオンライン講座プラットフォームでは、講師のプロフィールにこうした情報が並んでいます。

わかりやすくかつ最短で合格へ導く簿記講師です。簿記講師としてこれまで3級合格者を7名、2級合格者を3名輩出しました。 出典: street-academy.com

こうした実績の書き方は、始めたばかりの人には真似できません。では実績ゼロの人は何を書くのか。答えは、自分がどこでつまずき、どう乗り越えたかを具体的に書くことです。受講者は「この人は自分と同じところで詰まった人だ」と分かると申し込みます。実績の数字は後からついてきます。

もう1つ受講者が重視するのが、聞きやすさです。オンライン講座のレビューを読むと、「質問しやすい雰囲気だった」という評価が繰り返し出てきます。知識の量ではなく、聞ける空気を作れるかどうか。これは経験の浅い講師でも今日から実行できる要素です。

教える場は4種類ある

教える場は、次の4つに分かれます。それぞれ集客の難しさと単価が違うので、自分の状況に合うものから始めてください。

1つ目は、オンライン講座プラットフォームです。ストアカのような単発講座を売る場や、動画教材を販売する場があります。集客の一部をプラットフォームが担ってくれるため、実績ゼロからでも受講者が付く可能性があります。手数料が引かれる点と、価格競争になりやすい点が弱点です。1回60分から90分の講座で、価格帯は2,000円から5,000円が中心です。

2つ目は、個人指導です。マンツーマンで教える形で、オンライン会議ツールを使えば場所を選びません。単価は1時間3,000円から6,000円程度が現実的な帯です。1対1なので受講者の満足度を上げやすく、継続とクチコミにつながります。始めやすい反面、時間を売る仕事なので上限があります。

3つ目は、企業研修です。新入社員向けの経理基礎研修や、営業職向けの財務諸表の読み方研修といった案件です。1回あたりの報酬は3万円から10万円と大きくなりますが、法人相手なので実績と信頼が要ります。研修会社に登録するか、業務委託マッチングサービス経由で探すのが入口です。この領域の案件がどう募集されているかはITコンサルティング・講師のお仕事のカテゴリを見ると傾向がつかめます。研修講師の募集は、IT分野と並んでビジネススキル系がまとまって掲載されることが多いためです。

4つ目は、自主運営です。自分でオンライン講座を作り、SNSやブログから集客します。手数料がかからないため収益率は最も高くなりますが、集客をすべて自分で背負います。ここに最初から挑むのは、正直におすすめしません。1つ目や2つ目で受講者の反応を確かめてから移るほうが失敗が少ないです。

どの場から始めるべきか

会社員として働きながら副業で始める場合、時間の制約を最初に考えてください。企業研修は平日日中の開催が中心なので、会社員には難しいことが多いです。オンライン講座プラットフォームと個人指導は夜と土日に設定できるため、両立しやすい選択肢になります。

また、顔と本名を出せるかどうかも判断材料です。オンライン講座は基本的に顔出しが前提で、プロフィールに実名を書くケースが大半です。勤務先に知られたくない事情があるなら、就業規則の副業条項と住民税の納付方法を確認したうえで始めてください。教える仕事は名前が検索結果に残りやすいという性質があります。

値付けをどう決めるか

値付けで悩む人が非常に多いのですが、考え方はそれほど複雑ではありません。3つの軸で決めます。

第一に、準備時間を含めた時給です。90分の講座を1回開くのに、初回は資料作成で8時間かかることも珍しくありません。2回目以降は資料を使い回せるので30分の見直しで済みます。つまり、同じ講座を何回開けるかで実質時給が変わります。1回しか開かない講座に高い準備コストをかけるのは合理的ではありません。

第二に、比較対象の価格です。受講者は市販のテキストや動画講座と比べています。市販の3級テキストは1,500円前後、大手スクールの3級講座は1万5,000円から3万円程度です。個人の講座がこの間に位置づけられることを踏まえて価格を決めます。

第三に、提供する価値の種類です。知識だけを渡すなら市販教材に勝てません。質問できること、進捗を見てもらえること、自分の理解度に合わせてもらえること。この3つが個人講座の価値です。値付けは、この3つをどれだけ提供するかに応じて上げていきます。

安く始めて上げる方法

最初から高い価格を付けて受講者が来ないと、心が折れます。実務的におすすめしているのは、最初の3回をモニター価格で開き、その代わりに受講後のレビューを必ずもらうという進め方です。レビューは次の受講者にとって最も強い判断材料になります。

モニター期間が終わったら、価格を段階的に上げます。ここで大切なのは、値上げの理由を説明できるようにしておくことです。「資料を増やしました」「質問対応期間を延ばしました」といった具体的な変更とセットで上げると、受講者は納得します。何も変えずに価格だけ上げると、離脱が起きます。

最初の講座をどう作るか

講座作りで最も多い失敗は、範囲を広げすぎることです。「簿記3級の全範囲を教えます」という講座は、作るのに時間がかかり、受講者にとっても何が得られるか分かりにくい。最初は範囲を絞ってください。

具体的には、先ほど挙げた4つのつまずきポイントのうち1つを選び、それだけを扱う60分の講座を作ります。「決算整理仕訳だけを1時間で整理する講座」「精算表の書き方だけを徹底的に練習する講座」といった形です。狭いほど申し込みやすく、狭いほど満足度が上がります。

構成は次の順序が機能します。最初に、受講者が今どこで詰まっているかを確認します。次に、その論点の全体像を1枚の図で示します。続いて、最も基本的な例題を一緒に解きます。その後、応用の例題を受講者に解いてもらい、詰まったところを解説します。最後に、家に帰ってから解く練習問題を渡します。

この流れで重要なのは、講師が話す時間より受講者が手を動かす時間を長くすることです。簿記は手を動かさないと身につきません。説明を聞くだけの講座は満足度が上がらず、リピートにつながりません。

教材の準備で気をつけること

市販のテキストや過去問をそのままコピーして配ることは避けてください。著作権の問題があります。例題は自分で作るのが原則です。数字を変えるだけでは足りない場合もあるため、題材や設定から自分で作り直してください。

図解は投資する価値があります。借方と貸方の関係、費用と収益の対応、決算整理の流れ。この3つを自分の言葉で図にしておくと、あらゆる講座で使い回せます。図の作成に丸1日かけても、10回使えば十分に回収できます。

資格そのものの位置づけを受講者に説明する場面もあるので、日商簿記3級の資格ガイドで出題範囲と実務での使われ方を確認しておくと、質問に答えやすくなります。受講者からは「3級を取ったら何ができますか」という質問が必ず出ます。ここに具体的に答えられるかどうかで、講師としての信頼が決まります。

つまずきの4か所をどう説明するか

講座の中身を決めるうえで、学習者が詰まる4か所への説明を用意しておくことは避けて通れません。ここが講師としての実力そのものになります。

1か所目は、借方と貸方です。多くのテキストは「左が借方、右が貸方」と覚えさせますが、これでは記憶の負担が大きく、応用がききません。現場で機能しているのは、資産が増えたら左、減ったら右という1つの軸だけを先に固定し、あとはその対称として説明する方法です。負債や純資産は資産の逆側に置く。費用は資産の増加と同じ側、収益はその逆。この整理で覚える量が大きく減ります。

2か所目は、貸倒引当金です。ここでつまずく理由は、まだ起きていない損失を先に計上するという考え方に馴染めないからです。処理の手順を教える前に、なぜ先に計上するのかという目的を説明する必要があります。売上を計上した期と、回収不能が判明する期がずれると、その期の業績が実態からずれる。だから見積もって先に対応させる。この理由を先に置くと、差額補充法の計算も自然に入ります。

3か所目は、決算整理仕訳です。個々の処理は理解できているのに、どれをどの順番でやるのかが分からないという相談が多い領域です。ここは順序をリスト化して渡すのが最も効果的です。現金過不足の整理、売上原価の算定、貸倒引当金の設定、減価償却、経過勘定の処理。この順序を紙1枚にして渡すだけで、受講者の手が動き出します。

4か所目は、精算表です。精算表は、決算整理を横方向に展開して見せる表なので、決算整理そのものが分かっていないと書けません。つまり精算表で詰まっている人の多くは、実は3か所目で詰まっています。ここを見抜いて前に戻す判断ができる講師は、受講者から強く信頼されます。

この4か所について、それぞれ図1枚と例題2問を用意しておけば、講座としては十分に成立します。逆に言えば、この準備さえあれば教える側に回れるということです。

本業と両立させる時間の作り方

会社員として働きながら講師を続けるには、時間設計を先に決めておく必要があります。ここを曖昧にすると、準備に追われて本業に影響が出ます。

現実的な配分としては、月に開講する回数を最初から決めてしまうことです。月2回と決めれば、開講日は土曜の午前と日曜の午前というように固定できます。固定すると受講者も予定を合わせやすくなり、リピートが起きやすくなります。開講日が毎回変わる講座は、継続受講につながりにくいという傾向があります。

準備時間は、初回に集中投下して以降を軽くするのが定石です。初回に8時間かけて資料と例題を作り込めば、2回目以降は30分の見直しで開けます。逆に、毎回新しいテーマの講座を作ると準備時間が減りません。同じ講座を繰り返し開くことを前提に設計してください。

質問対応の範囲も先に決めます。「講座後7日間はメッセージで質問を受け付けます」といった形で期限を切っておかないと、いつまでも対応が続いて時間が読めなくなります。期限を切ることは冷たい対応ではなく、続けるための条件です。

集客と実績の作り方

集客について、正直に書きます。最初の受講者を集めるのが一番難しく、ここで大半の人が止まります。

現実的な手順は3段階です。第1段階は、プラットフォームの検索に載せることです。ストアカのような場では、講座を公開しただけで一定のアクセスが発生します。タイトルに「決算整理仕訳」「精算表」といった具体的な語を入れると、目的を持って探している人に届きます。

第2段階は、発信の蓄積です。SNSやブログで、簿記の論点を1つずつ解説していきます。ここで重要なのは、講座の宣伝ではなく、解説そのものを出すことです。「この人の説明は分かりやすい」と思われた結果として、講座に人が来ます。順序を逆にすると届きません。

第3段階は、受講者からの紹介です。満足した受講者が同じ勉強仲間を連れてくる流れができると、集客の負担が大きく減ります。この流れを作るには、講座の最後に「同じところで困っている人がいたら教えてあげてください」と一言添えるだけで違います。

キャリア形成の相談を受ける機会も増えるため、教える仕事と相談業を組み合わせる人もいます。相談系の案件がどう募集されているかはキャリア・副業・人生相談のお仕事のカテゴリで傾向がつかめます。資格の学習支援から、キャリア全般の相談に広げていく道筋は現実的な選択肢です。同じように資格を軸に相談業へ展開した事例としてはキャリアコンサルタント資格の活かし方|副業・独立ガイド【2026年版】が参考になります。

オンラインで教えるときの環境

オンライン講座を開くとき、機材と環境は思っているより結果に影響します。受講者が離脱する理由の上位は、内容ではなく音声の聞き取りにくさです。

必要なものは3つだけです。有線接続のインターネット環境、外付けのマイク、画面共有できるパソコン。カメラの画質は優先度が低く、マイクのほうがはるかに重要です。数千円のUSBマイクを1本用意するだけで、受講者の集中の持続がはっきり変わります。

画面共有では、手書きができる環境を用意しておくと説明の質が上がります。タブレットとペン、あるいはパソコンに接続する板タブレットがあれば、仕訳をその場で書きながら説明できます。簿記は書きながら見せることが理解の助けになる科目なので、ここは投資に値します。

録画の扱いも先に決めてください。受講者は復習のために録画を求めることが多い一方、録画があると当日の集中が下がるという面もあります。「講座本編のみ録画して7日間視聴可能」といった条件を最初に示しておくと、双方の期待がずれません。

表現と線引きで気をつけること

教える仕事には、書き方に注意が要る領域があります。

まず、合格を保証する表現は使えません。「必ず合格できます」「絶対に受かります」といった表現は、景品表示法上の優良誤認にあたる可能性があります。合格率を実績として書く場合も、母数と算定方法を明示してください。「合格者7名」のように実数で書くのは問題ありませんが、「合格率90%」と書くなら、何名中何名かを併記する必要があります。

次に、資格の名称です。日商簿記は民間の検定であり、税理士や公認会計士のような国家資格ではありません。「会計の専門家」「税務のプロ」といった肩書きは、有資格者だと誤解されるおそれがあります。プロフィールには「日商簿記3級」と資格名をそのまま書くのが最も安全です。

そして、税務相談との線引きです。講座の中で受講者から「自分の確定申告ではどうすればよいか」と聞かれる場面が必ず出ます。特定の事実関係に対して具体的な税額や課税上の判断を答える行為は、税理士法が定める税務相談に該当する可能性があります。簿記の一般的な処理の説明にとどめ、個別の判断は税理士に確認するよう案内してください。この線引きは、講座の案内文にあらかじめ書いておくと、当日の対応が楽になります。

許認可や書類作成の代理が絡む相談に発展した場合も同様です。他士業の独占業務に触れる可能性があるため、行政書士などの関係する資格の業務範囲を確認したうえで、必要に応じて専門家を案内する姿勢が必要です。ここを曖昧にすると、講師本人が法的なリスクを負います。

教える仕事から広がる先

講師の仕事は、それ単体で大きな収入になるまでに時間がかかります。ただし、他の仕事への広がりが大きいという特徴があります。

1つは、教材制作です。講座を作った経験があると、スクールや出版社から教材制作の依頼が来ることがあります。動画教材の台本、練習問題の作成、解説文の執筆。いずれも講座作りの副産物として作れるものです。執筆まわりの単価水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種全体の相場を確認できます。

もう1つは、企業向けの研修です。個人向けの講座で実績を作ると、法人案件に手が届くようになります。単価が一桁違うため、収入の柱にできる可能性があります。

3つ目は、学習支援サービスの運営です。講座を継続的に開いていると、受講者から「毎月まとめて見てほしい」という要望が出ることがあります。月額制の学習サポートという形にすると、収入が安定します。1人あたり月3,000円から8,000円程度の設定で、10人集まれば副収入としては十分な規模になります。ただし、この形は毎月の対応義務が生じるため、本業の繁忙期を含めて年間で回せるかを確認してから始めてください。

4つ目は、オンラインでの情報発信そのものが仕事になる道です。解説の蓄積がまとまると、Web媒体からの執筆依頼や、動画プラットフォームでの解説配信につながります。技術系の分野で同じ構造の展開をしている例としてはWordPressカスタマイズで稼ぐ|副業エンジニアの実践法【2026年版】が参考になります。教える力と発信の蓄積が、そのまま仕事の入口になるという構造は分野を問いません。

さらに、コンサルティング的な仕事に広がるケースもあります。中小企業の経理担当者に対して、記帳の方法や月次のまとめ方を指導する仕事です。教えることと実務を代行することの中間にある領域で、継続契約になりやすいのが特徴です。士業の資格を持つ人が同じ構造で仕事を広げている例はマンション管理士の副業|管理組合のコンサルティング【2026年版】にも見られます。教える力を持つ人が、その延長で助言業務に入っていく流れは分野を問わず共通しています。

運営者として見てきた講師業の現実

在宅ワークの仲介を20年運営してきた立場から言うと、教える仕事で長く続く人と、数回で辞める人の差ははっきりしています。続く人は、最初の講座を小さく作っています。範囲を絞り、時間を短くし、価格を抑えて、まず1回開く。そこで受けた質問を材料に次の講座を改善する。この回転を止めない人が残ります。

逆に辞める人は、完璧な講座を作ろうとして準備期間が長くなり、開講前に力尽きます。あるいは最初から高い価格を付けて受講者が来ず、需要がないと結論づけてしまいます。需要はあります。届け方と価格の問題であることがほとんどです。

運営者として見てきた限り、教える仕事の本質は関係づくりです。1回きりの講座で終わる人と、同じ受講者が2級の勉強でも戻ってくる人とでは、年間の収入が大きく変わります。「この人に聞けば分かる」という状態を作れるかどうか。これは知識の量ではなく、聞きやすさと反応の速さで決まります。

金額の面でも構造の違いがあります。プラットフォーム経由の講座は手数料が引かれますが、直接依頼の形になれば手数料0%で受け取れます。同じ受講料でも手元に残る額が変わり、依頼する側も同じ予算でより長い時間を確保できます。継続的に教える関係になるほど、この差は積み上がっていきます。

もう1点、40代以降で教える仕事を始める人に伝えておきたいことがあります。この分野では、年齢がマイナスに働く場面がほとんどありません。むしろ社会人経験がある人のほうが、簿記の内容を実務の文脈で説明できるため、受講者の理解が速くなります。売掛金の説明をするときに、実際の請求と入金のずれを例に出せる人と、教科書の定義しか言えない人とでは、伝わり方がまったく違います。職歴が長いこと自体が教材になるという点は、この仕事の大きな利点です。

また、受講者の層も幅広く、学生から定年後の方までいます。相手の背景に合わせて説明の入口を変えられる人が結果を出しています。経理職を目指す人には実務での使われ方を、投資のために学ぶ人には財務諸表の読み方を、家業を継ぐ人には自社の帳簿の見方を。同じ内容でも入口を変えるだけで満足度が変わります。

簿記3級を持っている人が教える側に回るとき、必要なのは追加の資格ではありません。自分がどこで詰まったかを覚えていること、そしてそれを人に説明できる形に整理することです。最初の1回を小さく開くところから始めてください。

よくある質問

Q. 簿記3級だけで講師の仕事はできますか?

できます。受講者の多くは3級の合格を目指す初学者で、求めているのは上級者の知識ではなく、つまずいた場所を分かる人の説明です。ただし合格を保証する表現は景品表示法上の問題があるため使えません。肩書きは「日商簿記3級」と資格名をそのまま書き、「会計の専門家」のような誤解を招く表現は避けてください。

Q. 簿記講座の値付けはどのくらいが適正ですか?

オンライン講座プラットフォームでは60分から90分の講座で2,000円から5,000円が中心帯です。マンツーマンの個人指導は1時間3,000円から6,000円程度、企業研修は1回3万円から10万円と幅があります。市販テキストが1,500円前後、大手スクールの3級講座が1万5,000円から3万円という水準を踏まえて位置づけを決めます。

Q. 最初の講座はどう作ればよいですか?

範囲を絞ってください。全範囲を扱う講座ではなく、決算整理仕訳だけ、精算表だけといった1論点に限定した60分の講座から始めます。構成は、現状確認、全体像の図示、基本例題を一緒に解く、応用例題を受講者が解く、練習問題を渡す、という順序が機能します。講師が話す時間より受講者が手を動かす時間を長くすることが重要です。

Q. 講座の中で税金の質問をされたらどう答えればよいですか?

簿記の一般的な処理の説明にとどめ、個別の判断は税理士に確認するよう案内してください。特定の事実関係に対して具体的な税額や課税上の判断を答える行為は、税理士法が定める税務相談に該当する可能性があります。講座の案内文にあらかじめ「個別の税務相談は扱いません」と書いておくと、当日の対応が楽になります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月20日最終更新:2026年8月30日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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