個人事業主 配偶者控除|青色事業専従者にした方が得になる売上ライン

前田 壮一
前田 壮一
個人事業主 配偶者控除|青色事業専従者にした方が得になる売上ライン

この記事のポイント

  • 個人事業主の配偶者控除と青色事業専従者給与
  • 社会保険の130万円ライン
  • 専従者にした方が有利になる売上水準を実例で解説します

まず、安心してください。「個人事業主だと配偶者控除は受けられないのでは」と検索された皆さん、結論から言えば、個人事業主でも配偶者控除はしっかり使えます。サラリーマンと制度の中身は同じです。違うのは、控除を受ける手段が「年末調整」ではなく「確定申告」になること、それだけです。

私自身、43歳でメーカーを辞めてフリーランスになりました。住宅ローンはまだ20年残っていて、子どもは中学と小学校。妻は看護師のパートで働いています。独立直後に一番悩んだのが、まさにこの「配偶者控除を取り続けられるのか」「妻を専従者にした方が得なのか」という問題でした。所得が読みにくい1年目は、税金の判断ひとつで手取りが10万円単位で変わります。

この記事では、個人事業主の配偶者控除の正確な要件と金額、青色事業専従者給与との損益分岐、社会保険の130万円の壁、そして「結局どちらを選ぶべきか」を、最新の税制(2025年改正反映)と数値シミュレーションで整理していきます。

個人事業主と配偶者控除の関係|まず制度の地図を持つ

「扶養」と一口に言っても、税法上の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)と社会保険上の扶養(健康保険・年金)はまったく別物です。ここを混ぜて理解している方が多く、私も独立当初は混乱しました。

税法上の扶養は所得税と住民税が軽くなる制度で、年単位(1月〜12月)で判定されます。社会保険上の扶養は、配偶者の健康保険証で医療を受けられたり、国民年金保険料を払わずに済む(第3号被保険者)制度で、こちらは年単位ではなく「向こう1年間の見込み年収」で判定されます。

個人事業主が配偶者控除を考えるときは、必ずこの2つを切り分けて検討してください。たとえば「税法上の扶養には入っているが社会保険の扶養からは外れている」という状態は普通に起こりえます。逆もまたしかりです。

総務省・国税庁の各種統計を見ると、日本の個人事業主(フリーランス含む)は2024年時点で約462万人。そのうち配偶者がいる世帯は半数超とされています。つまり、「配偶者控除をどう設計するか」は、フリーランスの皆さんにとって、節税の中で最もインパクトが大きいテーマのひとつです。

個人事業主が扶養家族となる可否は、売上ではなく合計所得金額(=収入-必要経費等)で見ます。青色申告の承認を受けていれば、青色申告特別控除も適用でき、合計所得金額の判定に影響します。したがって、青色申告をしていても、合計所得金額が58万円以下なら配偶者控除の枠内に収まるケースがあります。

ここが本記事の出発点です。「売上」ではなく「合計所得金額」で見る。この一文の意味を、これから順を追って解説します。

個人事業主が配偶者控除を受けるための要件【2026年版】

配偶者控除の要件は、所得税法第83条に定められています。難しく書かれていますが、実務上の判定ポイントは次の4つに集約されます。

  1. 民法上の配偶者であること(内縁関係は対象外)
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. 配偶者の合計所得金額が58万円以下であること(給与のみなら年収123万円以下に相当)
  4. 配偶者が青色事業専従者として給与を受けていない、または白色事業専従者でないこと

特に個人事業主の皆さんが押さえるべきは3番と4番です。

「合計所得金額58万円」の正しい計算方法

2025年の税制改正で、配偶者控除の所得要件は従来の48万円から58万円へ引き上げられました(基礎控除の引き上げに連動)。この58万円という数字は、給与所得者と個人事業主では計算方法がまったく違います。

給与所得者(パート・アルバイト)の場合は、給与収入から65万円の給与所得控除を差し引いた残りが所得です。つまり給与収入123万円までなら所得58万円に収まります(123万円-65万円=58万円)。これがいわゆる「123万円の壁」です。

自営業や個人事業主の場合、配偶者控除の基準となる「合計所得金額58万円」は、パートやアルバイトの「給与収入123万円(給与所得控除65万円を引くと所得58万円)」とは計算方法が異なります。

個人事業主の配偶者の場合、計算式はこうなります。

売上 − 必要経費 − 青色申告特別控除(最大65万円) = 合計所得金額

ここがポイントです。配偶者自身が青色申告をしていて、e-Taxで申告して帳簿要件を満たしていれば、65万円の青色申告特別控除を引けます。仮に配偶者の事業の「売上-経費」が120万円だったとしても、青色申告特別控除65万円を引いて所得は55万円。これは58万円以下なので、配偶者控除の対象に収まります。

つまり、配偶者がフリーランスで売上100万円超でも、経費と青色申告特別控除を駆使すれば配偶者控除内に収められるケースがある、ということです。私が独立1年目に税理士の方に相談したとき、まさにこの仕組みを教えてもらい、妻の副業収入の組み立て方を全面的に見直しました。

納税者本人の所得制限|1,000万円超は対象外

もうひとつ大事な要件があります。控除を受ける側(つまり個人事業主の皆さん本人)の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除そのものが使えません。年収ベースだと事業所得で1,000万円超なので、独立して数年の方は気にしなくても良いケースが多いですが、軌道に乗ってきたら必ず再チェックしてください。

控除額は本人の合計所得金額に応じて3段階に分かれます。

本人の合計所得金額 配偶者控除(一般) 配偶者控除(老人控除対象)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超 950万円以下 26万円 32万円
950万円超 1,000万円以下 13万円 16万円
1,000万円超 0円 0円

老人控除対象配偶者とは、その年12月31日時点で70歳以上の配偶者を指します。

配偶者特別控除|58万円を超えても段階的に控除あり

配偶者の所得が58万円を超えた瞬間に控除がゼロになる、というわけではありません。58万円を超えても133万円までは「配偶者特別控除」が段階的に受けられます。これは2018年の改正で大きく広がった部分で、現在もこの上限が維持されています(2025年改正で内訳は微調整されました)。

控除額の概要は次の通りです(本人の合計所得が900万円以下の場合)。

配偶者の合計所得金額 配偶者特別控除額
58万円超 95万円以下 38万円
95万円超 100万円以下 36万円
100万円超 105万円以下 31万円
105万円超 110万円以下 26万円
110万円超 115万円以下 21万円
115万円超 120万円以下 16万円
120万円超 125万円以下 11万円
125万円超 130万円以下 6万円
130万円超 133万円以下 3万円
133万円超 0円

配偶者が個人事業主の場合、95万円までは満額(38万円)の控除が受けられます。「58万円を1円でも超えたら損」という思い込みで売上をセーブしている方をたまに見かけますが、それは古い知識です。95万円までは控除額が変わらないので、無理にセーブする必要はありません。

詳しい計算式と最新の控除額は国税庁のNo.1191(配偶者控除)およびNo.1195(配偶者特別控除)で確認できます。年に1回は必ず原典に当たるクセをつけてください。私は確定申告期に毎年必ずチェックしています。

個人事業主が配偶者を扶養に入れる手続きと書き方

ここからは実務的な話をします。会社員なら年末調整で扶養申告書に書くだけですが、個人事業主は確定申告書で自分で記載する必要があります。

確定申告書「第一表」の「配偶者(特別)控除」欄に控除額を、「第二表」の「配偶者や親族に関する事項」に配偶者の氏名・生年月日・マイナンバー・所得金額を記入します。e-Taxで申告するなら、配偶者の情報を入力していけば控除額は自動計算されます。e-Taxを使えば、紙の申告書よりミスが格段に減ります。

配偶者がパート勤務で年末調整を受けている場合

妻が会社員(パート含む)として勤務先で年末調整を受け、夫が個人事業主、というケースは非常に多いです。私の家もこのパターンです。妻の勤務先には妻自身の扶養状況だけを書き、夫(個人事業主側)の確定申告で配偶者控除を申告します。妻の源泉徴収票を1枚もらっておくと、所得金額の確認に便利です。

なお、夫婦どちらも個人事業主の場合は、所得の多い方が配偶者控除を申告します。少ない方は自分の所得から基礎控除(58万円)を引いて、残った所得に税金がかかる形になります。

なお、税法上の扶養は、個人事業主同士の夫婦でも利用できます。夫婦の一方の所得が1,000万円以下、もう一方の所得が58万円以下であれば、「1」に該当する人が、確定申告で配偶者控除を申告しましょう。また、所得税や住民税には「配偶者特別控除」と呼ばれる制度もあります。

社会保険上の扶養|130万円の壁は税法とは別物

ここが多くの方がつまずく部分です。社会保険上の扶養(健康保険・厚生年金)は、夫が会社員でなければそもそも存在しません。

個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入するため、家族を「扶養」に入れる仕組みがありません。家族全員がそれぞれ国保・国民年金の保険料を払うことになります。「健康保険の扶養に入れて保険料を浮かせる」は、夫が会社員(健康保険組合または協会けんぽ)の場合だけ可能です。

つまり、夫が個人事業主の場合、妻が看護師パートで年収130万円未満であっても、社会保険上は「夫の扶養」には入れません。妻は妻自身でパート先の社会保険か、国保・国民年金に加入することになります。私の妻もこの形で、看護師の勤務先(協会けんぽ)に直接加入しています。

逆のパターン、つまり妻が会社員で夫が個人事業主、というケースなら、夫が妻の社会保険の扶養に入ることは可能です。要件は次の2つです。

  1. 個人事業主としての所得(売上-必要経費)が130万円未満
  2. 妻(被保険者)の年収の2分の1未満

この「130万円」は健康保険組合によって解釈が異なる場合があります。たとえば「青色申告特別控除を引く前」で判定する組合もあれば、「引いた後」で判定するところもあります。経費の範囲(減価償却費を引いてよいかなど)も組合次第です。必ず加入している健康保険組合に直接問い合わせてください。

詳細な扶養認定基準は厚生労働省の告示と各健保組合の運用に基づきます。

国民健康保険料は世帯合算

国保は世帯単位で計算され、世帯主が代表で納付します。妻が個人事業主、夫も個人事業主の場合、世帯所得を合算した上で「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分」を計算します。配偶者控除のように所得を58万円以下に抑えても、世帯所得そのものに国保料はかかります。

ここは盲点になりやすいので注意してください。「配偶者控除を取れば税金が安くなる」は事実ですが、国保料は別ロジックで計算されるので、節税と社会保険料は分けて考えるクセをつけましょう。

青色事業専従者給与|配偶者控除との二者択一

個人事業主の節税で必ず検討するのが、配偶者を青色事業専従者にする選択肢です。これは「配偶者を従業員として給与を払い、その全額を経費に落とす」制度で、配偶者控除との二者択一になります(両方は使えません)。

青色事業専従者にできる要件は次の通りです。

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者または親族
  2. その年の12月31日時点で15歳以上
  3. その年に6ヶ月超、その事業に専従していること
  4. 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出済み

届出書は事業開始から2ヶ月以内、または専従者にした年の3月15日までに税務署へ提出する必要があります。期限を過ぎると、その年は専従者給与を経費にできません。

給与は妥当な金額に設定する

「経費にできるなら、年収1,000万円の専従者給与にすればいい」とは、残念ながら問屋が卸しません。給与は「事業の規模・専従の実態・労務の内容に照らして妥当な金額」でなければなりません。明確な上限はないのですが、税務署の調査でよくチェックされるのが次の3点です。

  1. 実際にその業務に従事した時間・内容の記録(タイムシート等)
  2. 同業他社・同職種の相場(事務員なら年収300万円程度が目安)
  3. 事業の利益規模との整合性(赤字なのに年収600万円の専従者給与は不自然)

実態のない給与を払ったり、過大な金額を設定すると、否認されて追徴課税になります。私の知人で広告代理店を個人で営んでいる方は、税理士のアドバイスで「妻に経理・スケジュール管理・SNS運用で月20万円」という設定にしていますが、これも業務日報をしっかり残しているからこそです。

専従者給与の社会保険・住民税

専従者給与は給与所得として課税されるため、配偶者本人にも所得税・住民税が発生します。月額88,000円を超えると源泉徴収義務が発生し、年末調整も必要です。「給与を払う」とは、事業主としての労務管理が増えるということでもあります。

また、専従者となった配偶者は社会保険上の扶養から外れます。これも重要なポイントです。

配偶者控除と専従者給与、どちらが得か|売上ライン別シミュレーション

ここからが本記事の核心です。「配偶者控除(38万円)」と「青色事業専従者給与」、どちらが得になるのかを、売上規模別にシミュレーションしてみます。

ケース1:事業の年間利益200万円の場合

夫の事業利益(売上-経費、青色申告特別控除前)が200万円とします。妻は専業主婦で他に収入なし。

【選択肢A:配偶者控除を使う】

  • 妻:所得ゼロ → 配偶者控除38万円
  • 夫の課税所得:200万円 − 65万円(青色申告特別控除)− 58万円(基礎控除)− 38万円(配偶者控除)= 39万円
  • 所得税+住民税の概算:約5.9万円

【選択肢B:妻に専従者給与 月8万円(年96万円)】

  • 配偶者控除:使えない
  • 妻の給与所得:96万円 − 65万円(給与所得控除)= 31万円 → 基礎控除58万円以下なので所得税ゼロ、住民税のみ
  • 夫の課税所得:200万円 − 65万円 − 96万円 − 58万円 = −19万円 → 課税所得0
  • 妻の住民税:約1万円程度
  • 世帯合計税負担:1万円程度

この規模だと、専従者給与の方が世帯トータルで明らかに有利です。差額は約5万円。年間利益200万円水準でも、専従者にした方が手元に残る現金が増えます。

ケース2:事業の年間利益500万円の場合

【選択肢A:配偶者控除を使う】

  • 夫の課税所得:500万円 − 65万円 − 58万円 − 38万円 = 339万円
  • 所得税+住民税:約58万円

【選択肢B:妻に専従者給与 年120万円】

  • 配偶者控除:使えない
  • 妻の給与所得:120万円 − 65万円 = 55万円 → 課税ベース所得は0(基礎控除58万円以下)、住民税のみ少額
  • 夫の課税所得:500万円 − 65万円 − 120万円 − 58万円 = 257万円
  • 夫の所得税+住民税:約42万円
  • 妻の住民税:約2万円程度
  • 世帯合計税負担:約44万円

差額は約14万円。専従者にした方が年間14万円ほど手取りが増える計算です。

ケース3:事業の年間利益1,000万円の場合

利益1,000万円規模になると、夫の所得税率は20%(一部23%)に乗ります。専従者給与でこの税率の所得を妻側に移すと、節税効果はさらに大きくなります。

【選択肢A:配偶者控除を使う】

  • 夫の課税所得:1,000万円 − 65万円 − 58万円 − 38万円 = 839万円
  • 所得税+住民税:約200万円超

【選択肢B:妻に専従者給与 年240万円(月20万円)】

  • 妻の給与所得:240万円 − 86万円(給与所得控除)= 154万円
  • 妻の課税所得:154万円 − 58万円(基礎控除)= 96万円
  • 妻の所得税+住民税:約14万円
  • 夫の課税所得:1,000万円 − 65万円 − 240万円 − 58万円 = 637万円
  • 夫の所得税+住民税:約130万円
  • 世帯合計:約144万円

差額は約56万円。ただしこの規模だと妻が社会保険の扶養から外れ、国民健康保険や国民年金の負担が増える可能性もあります。トータルで見るには社会保険料込みのシミュレーションが必須です。

損益分岐点の目安

ざっくりした目安として、私が独立後に税理士から教わったのは次のラインです。

年間事業利益 推奨アクション
〜200万円 配偶者控除でも専従者給与でも大差なし。手間を考えると配偶者控除が楽
200〜400万円 専従者給与(月5〜8万円)が若干有利
400〜800万円 専従者給与(月8〜15万円)が明確に有利
800万円超 専従者給与(月15〜25万円)が大幅に有利、ただし社会保険料も検討

ただし、配偶者が外で働きたい、子育てが大変で専従できない、という事情があるなら、無理に専従者にする必要はありません。「妻が事業に実態として関わっているか」が最重要です。実態のない専従者給与は否認されるので、形だけ整えるのはNGです。

個人事業主が扶養に入る場合の注意点

ここまでは「配偶者を扶養する側」の話をしてきましたが、逆に皆さんが個人事業主として配偶者の扶養に入るケースも考えられます。たとえば、副業として個人事業を始めたが本業は配偶者(会社員)の収入、というパターンです。

開業届を出しても扶養から外れない

「開業届を出すと自動的に扶養から外れるのでは」と心配する方が多いですが、開業届と扶養はまったく関係ありません。判定はあくまで「所得金額」です。事業所得が58万円以下なら税法上の扶養はキープできます。

ただし、ひとつ落とし穴があります。健康保険組合によっては「開業届を出した時点で扶養から外す」というルールを設けているところがあります。これは健保組合ごとの裁量で、法律で決まっているわけではありません。組合員のしおりや問い合わせで必ず確認してください。

失業給付との関係

退職して個人事業主として独立する皆さんが見落としがちなのが、失業給付(雇用保険の基本手当)です。失業給付は税法上の所得には含まれませんが、社会保険の扶養判定では「収入」として扱われます。日額3,612円(年収換算で130万円)を超える失業給付を受けている期間は、配偶者の社会保険の扶養に入れません。

私が独立する際、退職後すぐにフリーランスとして再開業したので失業給付は受けませんでしたが、もし退職後しばらく休む予定なら、失業給付と社会保険扶養のタイミングは事前にシミュレーションしておくべきです。

売上が伸びてきたときの「外れ方」

副業から始めて売上が伸び、扶養を外れるタイミングは慎重に。年の途中で扶養を外すと、その年の確定申告で「配偶者控除なし」になり、配偶者側の税負担が一気に増えます。一般的には次のような順序になります。

  1. 副業所得が58万円を超えそうな段階 → 翌年から税法上の扶養を外れる準備
  2. 所得が130万円を超えそうな段階 → 社会保険の扶養を外れる手続き
  3. 所得が133万円を超えた段階 → 配偶者特別控除もゼロに

「いつ扶養を外れるか」を意識しながら売上を組み立てると、計画的に独立への助走ができます。

私の体験|独立1年目に選んだ「ハイブリッド戦略」

少しだけ私自身の話をさせてください。43歳でメーカーを辞めて個人事業主になった1年目、年間利益は約450万円でした。妻は看護師パート(年収約180万円)で、社会保険は妻の勤務先の協会けんぽに入っています。

このとき税理士に相談して取った戦略は、次のようなものでした。

  1. 妻は専従者にしない(看護師パートが本業なので「専従」要件を満たさない)
  2. 妻の所得は給与所得控除後で約115万円 → 配偶者特別控除(約21万円)を申告
  3. 私(夫)の事業ではなく、別途立ち上げた家族管理用の口座で経費を整理
  4. 青色申告特別控除65万円をフルに取るためe-Taxで電子申告

このパターンだと、配偶者控除そのものではなく「配偶者特別控除」を使うことになります。妻には妻の本業があるので、形だけ専従者にすると税務リスクが高い。だから「妻は外で働き、夫は青色申告で控除を最大化する」という整理にしました。

正直、独立する前は「妻を専従者にして節税」というイメージが強かったのですが、実態を整理してみると、わが家のように配偶者が外で働いている家庭は配偶者特別控除+青色申告特別控除のセットの方が現実的だと気づきました。

「専従者にすれば必ず得」というのは間違いです。家庭ごとに正解は違います。

たとえば著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、副業ライターの中央値は月収5〜10万円のレンジで、年間60〜120万円程度。これは合計所得金額で見れば、必要経費(PC・通信費・書籍代)を差し引いて配偶者控除の枠内に収まりやすい水準です。妻がライターで月8万円稼ぐ、というのは税制上きれいに「配偶者控除内」に収まる典型例といえます。

一方、ソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、副業エンジニアの稼働単価は時給4,000〜8,000円。月20時間稼働でも8〜16万円、年間100〜200万円規模になります。配偶者控除の枠を超え、配偶者特別控除のゾーンに入りやすい仕事です。

もし配偶者が新しく副業を始めるなら、最初の3ヶ月は「実際にいくら稼げそうか」を観察し、年単位での着地予測を立ててから扶養設計を決めるのが現実的です。アプリケーション開発のお仕事のように単価が高い分野では、扶養を外れる前提で「むしろ130万円を超えた方が将来年金が増えてトータルでプラス」という選択肢も視野に入ります。

資格取得を経て副業の単価を上げたい方は、ビジネス文書検定のように比較的短期間で取得でき、ライティング・事務系副業の信用補強になる資格を狙うのもひとつ。エンジニア・IT系ならCCNA(シスコ技術者認定)などのインフラ系資格が単価交渉力を高めます。

関連する税務トピックも合わせて押さえておいてください。住宅ローンと事業所得の関係をまとめた個人事業主 住宅ローン 審査 通りやすい、フリーランス向けの節税策をまとめた個人事業主 節税 2026 テクニック、節税の鉄板であるふるさと納税の上限を解説したふるさと納税 上限額 個人事業主も併読すると、世帯トータルの最適化がイメージしやすくなります。

1点目は、配偶者の副業所得が「年収100万円〜120万円帯」に集中していることです。これは配偶者控除(所得58万円以下)を意識しつつ、必要経費+青色申告特別控除を最大限活用して「ぎりぎり枠内」を狙う層が増えているサインです。経費計上の知識がついた個人事業主が、配偶者の副業設計まで戦略的に行う時代になってきたといえます。

2点目は、「配偶者を専従者にしないが、青色申告は配偶者側も別途行う」という二重申告パターンが増えていることです。これは夫婦それぞれが個人事業主として独立した事業を持つケースで、リスク分散と社会保険最適化の観点から合理的です。私の周囲のフリーランス仲間でも、夫婦別建ての青色申告で運用している家庭が3割を超えています。

3点目は、配偶者特別控除のゾーン(所得58〜133万円)に意識的に着地させる人が増えていること。「58万円の壁」だけを意識して所得をセーブする時代から、「133万円までは段階的に控除がある」ことを理解して、トータルで世帯手取りを最大化する設計が広がっています。

最後に、もうひとつ大事な視点を共有しておきます。配偶者控除や専従者給与の「節税額」は確かに重要ですが、それ以上に重要なのが「本人が稼げる力」です。妻が副業で年収100万円稼げるようになれば、控除額の差分(数万円〜数十万円)よりも、その稼ぐ力そのものの方がはるかに大きな資産になります。

準備さえすれば、40代からでも遅くありません。配偶者控除の知識は、その準備の第一歩です。

よくある質問

Q. 専従者給与の金額を途中で変えてもいいですか?

届出書に記載した「上限額」の範囲内での減額であれば、特段の手続きは不要です。しかし、上限額を超える増額を行う場合は、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく提出する必要があります。

Q. 専従者給与は毎月支払わなければなりませんか?

届出書に記載した支給期日に基づいて支払う必要があります。毎月の支払いが一般的ですが、資金繰りの都合で変更したい場合は、原則として事前に届出内容の変更が必要です。ただし、現金を直接渡すのではなく、専従者名義の口座に振り込みを行い、証拠(通帳の記録)を確実に残しておくことが税務調査対策として極めて重要です。

Q. 個人事業主登録後の確定申告は白色と青色のどちらがよいですか?

帳簿づけに対応できるなら、控除や赤字繰越などのメリットがある青色申告を選ぶ人が多いです。期限内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。

Q. 個人事業主の場合、「年収」を聞かれたら確定申告書のどこを見ればいいですか?

場面によって答え方が異なりますが、住宅ローン審査や保育園の入園申請などで公的に「年収(所得)」を求められた場合は、第一表の「所得金額等 ⑧(事業 営業等)」の金額が基準となります。ただし、青色申告をしている場合はこの金額からすでに青色申告特別控除額(最大65万円など)が差し引かれているため、実質的な年収を算出するには「所得金額等 ⑧ + 青色申告特別控除額」を加算した金額で答えるのが実務的です。

Q. 個人事業主の国民健康保険料は所得がいくらくらいから高くなりますか?

お住まいの市区町村によって計算式が異なりますが、所得(売上から経費と青色申告特別控除を引いた金額)が300万円〜400万円を超えてくると、会社員時代の自己負担分よりも高くなるケースが一般的です。国保は会社負担がなく全額自己負担となるため、事前に自治体のシミュレーター等で試算しておくことをおすすめします。

@SOHOでキャリアと年収を見直そう

職種別の年収データベースやお仕事ガイドで、あなたの市場価値を客観的に把握できます。@SOHOは手数料無料で直接案件とつながれるプラットフォームです。

@SOHOで関連情報をチェック

お仕事ガイド

年収データベース

資格ガイド

前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師

看護師

看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師

薬剤師

薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド