BGMの利用範囲と著作権の扱い|商用利用・二次利用を依頼前に確認する


この記事のポイント
- ✓BGMの著作権と利用範囲を発注者向けに解説
- ✓店舗・動画・広告での商用利用
- ✓費用相場までまとめました
BGMを店舗や動画、広告で使いたいが、著作権の利用範囲がどこまでなのか判断がつかない。そう感じている発注者は多いはずです。結論から言うと、BGMの著作権は「作った人の権利(著作権)」と「演奏・伝達する権利(演奏権など)」が別々に存在し、利用範囲は用途(店舗BGM・動画・広告・イベント)ごとに許諾の取り方が変わります。この記事では、発注者が音楽制作者や制作会社に依頼する前に確認すべき利用範囲の考え方、費用相場、失敗しない発注の進め方を整理します。
BGM著作権をめぐる市場動向とマクロ視点
まず全体像を把握しておきましょう。日本国内では音楽著作権の管理を担う団体としてJASRAC(日本音楽著作権協会)が最大手ですが、それ以外にもNexTone等の管理事業者が存在します。店舗・施設でBGMを流す場合、多くは音源提供事業者(有線放送やBGM配信サービス)が著作権使用料を一括で処理しているケースが大半です。ただし、CD音源をそのまま流す、あるいは自作のプレイリストを流すといった形になると、事業者側の許諾範囲から外れ、店舗側が個別に著作権処理をしなければならないケースが出てきます。
近年は動画コンテンツの需要拡大に伴い、YouTubeやSNS向けのBGM制作依頼も急増しています。動画制作会社やフリーランスの作曲家に「オリジナルBGMを1曲作ってほしい」と依頼するケースが増えていますが、このとき問題になるのが「利用範囲」です。制作者に依頼して納品されたBGMを、当初想定していた1本の動画だけでなく、広告出稿や複数チャンネルへの転用、二次利用にまで使えるのかどうかは、契約時に明確にしておかないと後々トラブルになります。
著作権使用料の相場感としては、店舗向けBGM配信サービスの月額利用料が数千円〜1万円台、オリジナルBGM制作の外注費用は1曲あたり1万円から10万円程度と幅があります。用途の広さ(店舗限定か、広告やSNS展開まで含むか)によって料金が変わる点は、発注者が最初に理解しておくべきポイントです。
音楽著作権に関する基本的な仕組みについては、以下のような解説があります。
商用利用における著作権の利用手続きには、いくつかステップがあります。例えば使いたいCDがある場合、著作権管理事業者であるJASRACに申請。受理や支払いが済んで、実際にCDがBGMとして使えるようになるまで、2週間程度かかります。 出典: otoraku.jp
この引用からも分かる通り、著作権処理には一定の日数がかかります。イベント直前や動画公開の直前に慌てて申請するのではなく、余裕を持ったスケジュールで進めることが大切です。
BGM著作権の基本構造を理解する
著作権と著作隣接権は別物
BGMの著作権を考えるうえで、まず整理しておきたいのが「著作権」と「著作隣接権」の違いです。作曲家や作詞家が持つのが著作権、演奏者(実演家)やレコード会社が持つのが著作隣接権です。市販のCD音源を利用する場合、この両方の権利処理が必要になるケースがあります。一方、フリーランスの作曲家にオリジナルBGMを依頼する場合は、著作権(作曲家の権利)のみを契約でクリアにすれば済むことが多く、既存楽曲を使うより権利関係がシンプルになる傾向があります。
発注者としては「既存の有名楽曲を使いたいのか、それともオリジナルで作ってもらうのか」を最初に決めることが、その後の手続きの複雑さを大きく左右します。既存楽曲の利用は権利者(著作権者・著作隣接権者)への許諾取得が必要で、手続きも煩雑になりがちです。オリジナル制作であれば、発注者と制作者の間の契約書だけで利用範囲を明確化できます。
演奏権とBGM使用料の関係
店舗でBGMを流す行為は「演奏権」に関わります。これは音楽を公に演奏(再生も含む)する権利で、著作権者に専有される権利の一つです。JASRAC等の著作権管理事業者と包括的な契約を結んでいる有線放送サービスやBGM配信サービスを使えば、店舗側が個別に申請する必要はありません。しかし、私物のCDやサブスクリプションサービスの個人アカウントで再生する場合は、この演奏権の処理が別途必要になることがあります。
以下の引用は、店舗BGMの演奏使用料についての解説です。
各事業所が演奏装置を通じてBGMを再生演奏することにより発生する使用料、いわゆる「演奏使用料」は、実際に演奏使用する事業所が負担する著作権使用料ですから、キー局の著作権処理対象には含まれておりません。したがって市販CD、BGM用貸出録音テープなどを利用する店舗やホテルでは、BGM事業者と契約している場合はそのBGM事業者が、契約していない場合はそれぞれの店舗やホテルが演奏使用料を支払うことになります。 出典: bgm.or.jp
つまり「誰が使用料を負担するか」は契約形態によって変わります。BGM事業者を通していない場合、発注者(店舗側)自身が使用料の支払い義務を負う可能性がある点は見落とされがちです。
利用範囲を決める3つの軸
BGMの利用範囲を検討する際は、次の3つの軸で整理すると分かりやすくなります。
第一に「場所」です。実店舗のみで使うのか、複数店舗展開するのか、オンラインでの配信も含むのかによって必要な許諾範囲が変わります。第二に「媒体」です。店舗内BGM、動画コンテンツ、テレビCMやWeb広告、それぞれで求められる利用許諾の種類が異なります。第三に「期間」です。単発イベントでの利用なのか、継続的に使い続けるのかで、契約書に定める期間条項が変わってきます。
発注時にこの3軸を明確に伝えられないと、制作者側も見積もりを出しにくく、後から「想定外の使い方をされた」というトラブルにつながります。
BGM外注時に確認すべき利用範囲の実務
オリジナルBGM制作を依頼する場合の権利関係
フリーランスの作曲家やBGM制作会社に依頼する場合、契約書または発注書に「著作権の帰属」と「利用範囲」を明記することが最も重要です。多くのケースでは、著作権(作曲家としての権利)は制作者に残したまま、発注者には「利用許諾(ライセンス)」を与える形が一般的です。この場合、契約書に記載のない用途での二次利用はできません。
例えば「1本の企業紹介動画のBGMとして利用する」契約で納品されたBGMを、後から別の広告動画やSNS投稿にも流用したい場合は、追加の許諾または追加料金が発生することがほとんどです。発注段階で「今後、複数の動画や広告展開で使う可能性がある」と伝えておけば、包括的な利用許諾(バイアウト契約)として見積もりを出してもらえることもあります。
私自身、初めて動画制作会社にBGMを含めた案件を発注したとき、見積もり比較だけに気を取られて利用範囲の条項を読み飛ばしたことがあります。納品後に別のプロモーション動画でも同じBGMを使いたくなったのですが、契約書には「本件動画1本限りの使用」としか書かれておらず、追加費用を払う羽目になりました。安さだけで発注先を選び、契約内容の細部を確認しなかった結果です。この経験から、見積もり金額だけでなく「利用範囲がどこまで含まれているか」を必ず契約前に確認するようになりました。
既存楽曲を使いたい場合の許諾フロー
既存の市販楽曲やアーティストの楽曲を店舗BGMや動画に使いたい場合は、権利処理がより複雑になります。まずJASRACやNexToneといった著作権管理事業者に申請し、著作権使用料を支払う必要があります。加えて、レコード音源(原盤)を使う場合は原盤権者(多くはレコード会社)への許諾も必要になるケースがあります。
動画に既存楽曲を使う場合、YouTubeなどの動画プラットフォームは包括契約を結んでいることが多く、個人が投稿する範囲であれば著作権使用料の処理が自動化されている場合もあります。ただし、企業の公式チャンネルでの利用や、広告として楽曲を使う場合は別途許諾が必要になることが一般的です。この判断は自己流で進めず、専門知識を持つ制作会社や著作権に詳しい担当者に確認しながら進めることをおすすめします。
二次利用・転用のパターン別チェックリスト
発注者が特に見落としやすいのが「二次利用」の範囲です。以下のようなケースは、当初の契約に含まれているかどうかを個別に確認する必要があります。
まず、動画をSNS(Instagram、TikTok、X等)に転載する場合。次に、動画広告として出稿する場合。さらに、複数の店舗・拠点で同じBGMを流す場合。そして、BGMを別のコンテンツ(展示会用映像、採用動画など)に流用する場合です。これらはすべて「当初の利用範囲を超える」可能性があり、契約書に明記がなければ制作者への確認と追加合意が必要になります。
追加費用の相場としては、利用範囲の拡大1件あたり数千円から数万円程度が目安ですが、著名なアーティストの楽曲を使う場合や、テレビCM等の大規模利用になると金額が大きく跳ね上がることもあります。事前に「将来的にどこまで使う可能性があるか」を洗い出し、包括的な契約にしておくほうが、結果的にコストを抑えられるケースも少なくありません。
依頼時に契約書へ盛り込むべき項目
BGM制作やBGM利用を外注する際、契約書または発注書には最低限、次の項目を盛り込んでおくべきです。利用媒体(店舗内、動画、広告、SNS等)の明記。利用地域(国内限定か海外展開も含むか)。利用期間(単発か継続か、期間の定めがあるか)。著作権の帰属(制作者に残すか、買い取りにするか)。二次利用・改変の可否。これらを曖昧にしたまま契約を進めると、後になって「そんな使い方は想定していなかった」という水掛け論になりかねません。
見積もり比較の段階で、この契約条項のテンプレートを提示してくれる制作会社や、質問に丁寧に答えてくれるフリーランスかどうかも、発注先を選ぶ判断材料になります。価格の安さだけで選んでしまうと、契約書の整備が甘く、後からトラブルになるリスクが高まる傾向があります。
BGM外注の費用相場と発注先選びの考え方
費用相場の目安
BGM制作・利用に関する費用は、依頼内容によって幅があります。店舗向けBGM配信サービスの月額利用料は数千円から1万円台が一般的です。オリジナルBGM制作をフリーランスの作曲家に依頼する場合、シンプルな楽曲であれば1曲1万円台から、編曲や複数バリエーションを含む場合は5万円から10万円程度になることもあります。既存楽曲を使う場合の著作権使用料は、利用形態(店舗BGM、動画、広告)によって大きく変動し、数千円から数十万円まで幅広いのが実情です。
制作会社に依頼すると、これらの費用に加えてディレクション費や仲介手数料が上乗せされることがあります。一方、フリーランスの作曲家へ直接依頼すれば、仲介マージンが発生しない分、同じ予算でより手厚い制作(複数パターンの提案、修正回数の増加など)を依頼できる可能性があります。
制作会社と直接依頼、どちらが向いているか
制作会社に依頼する最大のメリットは、契約書の整備や権利処理のノウハウが蓄積されている点です。特に既存楽曲を使う複雑な権利処理が必要な案件では、制作会社のサポートが安心材料になります。一方で、仲介手数料が上乗せされる分、費用は割高になりがちです。
フリーランスの作曲家に直接依頼する場合は、費用を抑えられる一方、契約書の整備や利用範囲の明確化は発注者自身が主導する必要があります。オリジナルBGMを1本の動画のために作ってもらうような、比較的シンプルな案件であれば、直接依頼のほうがコストパフォーマンスに優れるケースが多いといえます。
依頼先を探す際に確認したいポイント
発注先を選ぶ際は、過去の制作実績(特に自分が依頼したい用途に近い実績があるか)、契約書のひな形を提示してくれるか、著作権や利用範囲についての質問に明確に答えてくれるかを確認しましょう。曖昧な回答しか返ってこない相手には、権利トラブルのリスクを感じて慎重になるべきです。
作曲・編曲やBGM制作を専門とするフリーランスを探す場合、作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事のような専門職種の情報を参照すると、どのようなスキルを持つ人材がこの分野で活動しているかの理解が深まります。また、映像作品にBGMを組み合わせて制作したい場合は、MV制作・BGM付き映像のお仕事のように、映像とBGMを一体で依頼できる人材を探す選択肢もあります。楽器演奏やSE(効果音)まで含めて依頼したい場合は楽器演奏・BGM・SEのお仕事も参考になります。
運営者の一次観察と@SOHO独自データの考察
20年この市場を見てきた立場から言えば、BGM制作や著作権処理に関する相談は、動画コンテンツ需要の拡大とともに年々増えている印象があります。特に印象的なのは、依頼者側が「著作権の話は難しそうだから制作者に任せておけば大丈夫だろう」と考えがちな点です。しかし実際には、利用範囲の取り決めは発注者自身が主体的に確認しなければ、後になって「想定外の使い方」で揉めるケースが少なくありません。
運営者として見てきた限りでは、長く付き合いが続く発注者と制作者の関係には共通点があります。それは、初回の発注時点で利用範囲を細かく詰めておき、その後の追加依頼もスムーズに進められる関係を築いていることです。単発の値段交渉だけに終始する発注者よりも、「今回はこの用途、将来的にはこういう展開も考えている」と見通しを共有する発注者のほうが、制作者側も柔軟な提案をしやすくなります。
また、中間マージンが乗らない直接取引には、金額面以上の効用があります。同じ予算であれば、依頼者はより手厚い制作(バリエーション提案や修正対応)を依頼でき、受け手である制作者も手取りが厚くなるため、結果的に丁寧な仕事につながりやすい構造があります。手数料0%で直接つながる仕組みは、単に「安い」というだけでなく、双方にとって関係の質を高める土台になっていると、長年この市場を見てきた実感として言えます。
著作物としての音楽の権利保護については、次のような整理が参考になります。文化庁の著作権制度の解説等を見ても、著作物は創作者の権利を保護しつつ、社会全体の文化的発展にも資するべきという基本理念があります。BGMの利用範囲を考えるときも、この「権利者の利益」と「利用者の利便性」のバランスを意識しておくと、契約交渉がスムーズに進みやすくなります。
なお、著作権に関する知識は音楽だけでなく、映像制作全般でも必要になります。動画制作を外注する際の著作権トラブル防止についてはフリーランスの著作権ガイド|納品物の権利トラブルを防ぐ実務知識で詳しく解説しています。また、近年増えているAI生成コンテンツの商用利用ルールについてはMidjourney×商用利用|AI画像を仕事に使う際の著作権ルールも併せて確認しておくと、コンテンツ制作全般の権利関係への理解が深まります。BGM制作を専門とする在宅ワーカーの働き方について知りたい場合は楽器演奏・BGM制作の在宅ワーク|音楽家のオンライン副業も参考になります。
BGMの利用範囲は、店舗・動画・広告のどの媒体で使うか、単発利用か継続利用か、著作権を制作者に残すか買い取るかによって、必要な手続きも費用も大きく変わります。発注者として大切なのは、依頼前に「どこまで使う可能性があるか」を洗い出し、契約書に利用範囲を明記してもらうことです。曖昧なまま進めてしまうと、後から追加費用や権利トラブルに発展するリスクが高まります。制作会社に依頼するか、フリーランスに直接依頼するかは、案件の複雑さと予算のバランスで判断するのが合理的です。
よくある質問
Q. BGMを店舗で流す際、必ず著作権使用料を払う必要がありますか?
市販CDや個人契約のサブスクを直接再生する場合は演奏権の処理が必要です。ただしBGM配信事業者と契約している場合は、事業者側が包括的に著作権処理をしているため、店舗側の個別申請は不要なケースが多いです。
Q. オリジナルBGMを外注した場合、著作権は誰のものになりますか?
契約内容によります。多くの場合、著作権は制作者(作曲家)に残り、発注者は契約書で定めた範囲での利用許諾(ライセンス)を得る形になります。買い取りを希望する場合は契約時にその旨を明記する必要があります。
Q. 動画用に依頼したBGMを、後から広告にも使いたい場合はどうすればよいですか?
契約書に「動画1本限定」等の利用範囲が明記されている場合、追加の許諾または追加料金が必要です。将来的な二次利用の可能性がある場合は、発注時点で包括的な利用許諾として見積もりを依頼しておくとスムーズです。
Q. 制作会社とフリーランス、BGM制作はどちらに依頼するのが良いですか?
権利処理のノウハウを求めるなら制作会社、費用を抑えたいシンプルな案件ならフリーランスへの直接依頼が向いています。いずれの場合も契約書で利用範囲・著作権の帰属を明確にすることが重要です。
無料で案件を掲載する
入力は3分ほど。掲載料も取引手数料も0円です。@SOHOに登録しているフリーランス・副業ワーカーから、早ければ当日中に最初の応募が届きます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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