妻が扶養から外れると夫の収入はどう変わるか


この記事のポイント
- ✓妻が扶養から外れると夫の収入はどう変わるのかを
- ✓税の扶養と社会保険の扶養に分けて整理しました
- ✓配偶者控除が減って所得税と住民税が増える一方
妻の働く時間を増やそうという話が出たとき、まず心配になるのが「夫の収入が減るのではないか」という点です。まず、落ち着いて確かめてほしいことがあります。妻が扶養から外れても、夫の給与そのものは1円も減りません。変わるのは手取りの一部で、しかもその理由は3つに分けて説明できます。この記事では、妻が扶養から外れたときに夫の側で何が起きるのかを、税の話と社会保険の話に分けて整理し、世帯全体の手取りで見るとどう判断すればよいかまでを扱います。
先に結論。減るのは給与ではなく控除の分
妻が扶養から外れたときに夫の側で起きることは、次の3つだけです。
1つ目は、配偶者控除または配偶者特別控除が減ることです。これは所得から差し引ける金額が減るという意味なので、結果として所得税と住民税が増えます。増える金額は、控除が減った額に夫の税率を掛けたものになります。
2つ目は、会社が出している家族手当や配偶者手当が止まる場合があることです。これは法律の制度ではなく会社ごとの決まりなので、就業規則や給与規程を見ないと分かりません。金額としてはここがいちばん大きくなることもあります。
3つ目は、実は「変わらないこと」です。夫の給与から引かれる健康保険料と厚生年金保険料は、妻が扶養から外れても増えません。これらは夫本人の標準報酬月額と料率で決まるもので、扶養に入れている家族の人数は関係しないからです。扶養家族が1人減ったから保険料が上がる、ということは起きません。
つまり夫の手取りが減る要因は、税金と家族手当の2つだけです。そしてこの2つは、妻の収入がいくらになるかで決まる金額なので、先に見積もることができます。いっぽうで妻の側には、勤め先の社会保険に入るか、自分で国民健康保険と国民年金に入るかという新しい負担が発生します。世帯で判断するには、この両方を並べる必要があります。
税の扶養と社会保険の扶養は別の制度
話が混乱しやすいのは、「扶養」という言葉が2つの別々の制度で使われているからです。ここを分けないと、どの金額がどこに効くのかが見えません。
税の扶養とは、所得税と住民税を計算するときに、配偶者控除または配偶者特別控除を受けられるかどうかという話です。判定するのは1年間、つまり1月から12月までの所得です。基準は年単位で見るので、途中の月収が上下しても年末で決まります。
社会保険の扶養とは、妻が夫の健康保険の被扶養者になり、国民年金では第3号被保険者になるという話です。こちらは年単位ではなく、これから先の収入の見込みで判定します。月々の収入が基準を超える見込みになった時点で外れる、という考え方です。厚生労働省は「年収の壁」を次のように説明しています。
厚生年金保険及び健康保険においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(第3号被保険者)として、社会保険料の負担が発生しません。 こうした方の収入が増加して一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する方がいらっしゃいます。 出典: mhlw.go.jp
この2つは基準額も判定の時期も違います。税の扶養から外れても社会保険の扶養には残っている、という状態は普通にあります。逆に、社会保険の扶養から外れても税の配偶者特別控除は残っていることもあります。「扶養を外れた」と一言で言っても、どちらの話なのかで夫の手取りへの影響がまったく違うということです。
さらに言えば、夫の手取りに直接効くのは税の扶養のほうです。社会保険の扶養から外れても、夫の給与から引かれる保険料は変わりません。変わるのは妻の側の負担です。ここを取り違えて「妻が働くと夫の保険料が上がる」と思い込んでいる人が多いので、最初に押さえておいてください。
配偶者控除と配偶者特別控除は段階的に減る
税の側を具体的に見ていきます。配偶者控除は、妻の年間の合計所得金額が一定額以下のときに受けられます。国税庁は令和8年分について、控除対象配偶者の要件のひとつを次のように示しています。
年間の合計所得金額が62万円以下(注)(令和7年分は58万円以下、令和2年分から令和6年分までは48万円以下、令和元年分以前は38万円以下)であること。給与のみの場合は給与収入が136万円以下(令和7年分は123万円以下、令和6年分以前は103万円以下) 出典: nta.go.jp
控除額は、夫の合計所得金額によって変わります。夫の合計所得金額が900万円以下なら38万円、900万円超950万円以下なら26万円、950万円超1,000万円以下なら13万円です。夫の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除は受けられません。
そして重要なのが、この基準を超えたとたんに控除がゼロになるわけではないという点です。配偶者特別控除という受け皿があり、妻の合計所得金額に応じて段階的に減っていきます。令和8年分以降の金額は次のとおりです。
| 妻の合計所得金額 | 夫の所得900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 |
|---|---|---|---|
| 62万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
| 100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
| 105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
| 110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
| 115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
| 120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
| 125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
| 130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
この表の読み方でいちばん大事なのは、妻の合計所得金額が95万円以下であれば、配偶者控除と同じ38万円が受けられるという点です。つまり配偶者控除の基準を少し超えたくらいでは、夫の税金は1円も変わりません。控除が減り始めるのは95万円を超えてからで、そこから5万円刻みで少しずつ減り、133万円を超えたところでゼロになります。
「103万円の壁」という言葉が長く使われてきましたが、制度改正で基準が引き上げられ、しかも段階的に減る仕組みになっているため、その一線で手取りが崖のように落ちることはありません。夫の税金を理由に働く時間を抑える必要は、税の側にはほとんどないと言えます。
夫の所得税と住民税はいくら増えるのか
控除が減ったとき、実際に増える税額の出し方はとても単純です。減った控除額に、夫の所得税の税率を掛けます。所得税の税率は課税される所得金額によって7段階に分かれています。
| 課税される所得金額 | 税率 |
|---|---|
| 1,000円から1,949,000円まで | 5パーセント |
| 1,950,000円から3,299,000円まで | 10パーセント |
| 3,300,000円から6,949,000円まで | 20パーセント |
| 6,950,000円から8,999,000円まで | 23パーセント |
| 9,000,000円から17,999,000円まで | 33パーセント |
| 18,000,000円から39,999,000円まで | 40パーセント |
| 40,000,000円以上 | 45パーセント |
たとえば夫の課税所得が400万円なら税率は20パーセントです。配偶者控除38万円がまるごとなくなった場合、増える所得税は38万円の20パーセントで7万6,000円になります。控除が38万円から26万円に減っただけなら、差は12万円なので、増える所得税は2万4,000円です。ここに復興特別所得税が上乗せされます。
住民税にも配偶者控除と配偶者特別控除があり、所得税とは控除額が違います。住民税の所得割の税率は多くの自治体で10パーセントなので、控除の差額に1割を掛けたものが目安になります。正確な金額は住んでいる自治体の基準で決まるため、市区町村のページか課税明細書で確認してください。
ここで伝えたいのは、金額の大きさよりも構造です。控除が減っても、増えるのはその一部だけです。控除が38万円減ったからといって、38万円が手取りから消えるわけではありません。税率が20パーセントなら、増えるのは所得税と住民税を合わせてもおよそ11万円です。いっぽう妻の収入は、扶養の範囲を超えて働けば数十万円単位で増えます。この比較を数字でしてみると、判断が変わることが多いはずです。
なお、税務の個別の取り扱いは、所得の中身や他の控除の有無によって結論が変わります。ここに書いた計算は仕組みを理解するための目安なので、実際の金額は源泉徴収票を持って税務署か勤務先の担当者に確認してください。
夫の社会保険料は増えない。家族手当は別の話
ここが誤解のいちばん多いところです。夫の給与から引かれる健康保険料と厚生年金保険料は、夫本人の標準報酬月額に料率を掛けて計算します。扶養に入れている家族が何人いても、この金額は変わりません。妻が扶養から外れて被扶養者が1人減っても、夫の保険料は下がりませんし、上がりもしません。
つまり社会保険の扶養から妻が外れたときに世帯の負担が増えるのは、妻の側に新しく保険料が発生するからです。夫の負担が増えるからではありません。この区別がついていないと、世帯の試算が二重に厳しくなります。
いっぽうで、金額として無視できないのが家族手当です。多くの会社が、扶養している配偶者がいる社員に対して月額いくらという形で手当を出しています。その支給条件に「配偶者の年収が一定額以下であること」と書かれていることが多く、妻の収入がその線を超えると手当が止まります。
この手当は法律の制度ではないので、条件も金額も会社ごとにばらばらです。扶養の基準と同じ金額を使っている会社もあれば、独自の線を引いている会社もあります。妻の働き方を変える前に、夫の勤務先の就業規則か給与規程を確認してください。人事や総務に聞けば教えてもらえます。月1万円の手当なら年12万円で、これは税金の増加分より大きいことがあります。家族手当の有無を確かめずに試算すると、いちばん大きな要素を落とすことになります。
もうひとつ、会社によっては配偶者を健康保険の被扶養者にしているかどうかを手当の条件にしている場合があります。この場合、税の扶養から外れる前の段階、つまり社会保険の扶養を外れた時点で手当が止まります。判定の基準がどちらなのかを確認しておくと、時期の見通しが立ちます。
妻の側に発生する負担を見る
世帯の手取りを考えるなら、妻の側に何が発生するのかも並べる必要があります。ここは妻の勤め先の状況で2つに分かれます。
勤め先の社会保険に入る場合、健康保険料と厚生年金保険料が給与から引かれます。この保険料は労使折半で、半分は会社が負担します。負担は増えますが、その代わり将来の老齢厚生年金が増え、病気で働けないときの傷病手当金や、出産のときの出産手当金といった給付の対象になります。国民年金だけのときにはなかった保障が加わるという点は、金額の損得とは別に押さえておきたいところです。
勤め先の社会保険に入れない場合は、自分で市区町村の国民健康保険と国民年金に加入します。国民年金の保険料は令和8年度で月額17,920円です。年間ではおよそ21万5,000円になります。国民健康保険料は前年の所得と住んでいる市区町村で決まるため、窓口か公式サイトで試算してもらう必要があります。この2つを合わせた金額が、扶養を外れたことで新たに発生する負担です。
判定の基準は2つあります。ひとつは勤め先の社会保険に入る条件です。厚生労働省は、従業員50人超の企業に週20時間以上で勤務する場合、所定内賃金が月額8.8万円以上、年収換算でおよそ106万円になると厚生年金保険などに加入すると説明しています。もうひとつが、被扶養者でいられる収入の基準で、年収換算でおよそ130万円という線です。この2つが、いわゆる年収の壁と呼ばれているものです。
どちらに当たるかで負担の中身が変わります。勤め先の社会保険に入れるなら労使折半で会社が半分を持ちますが、入れないまま130万円を超えると、国民健康保険料と国民年金保険料を全額自分で払うことになります。同じ「扶養を外れる」でも、後者のほうが負担は重くなります。妻の勤め先の従業員数と、週の労働時間を先に確認しておいてください。
具体的な金額で確かめる3つのケース
仕組みだけでは実感がわかないので、夫の課税される所得金額が400万円、つまり所得税の税率が20パーセントの世帯を例に、妻の合計所得金額を変えて並べてみます。住民税は所得割を10パーセントとして概算します。
1つ目は、妻の合計所得金額が90万円のケースです。配偶者特別控除の表では62万円超95万円以下の行に入るので、控除額は38万円のままです。配偶者控除を受けていたときと同じ金額なので、夫の所得税も住民税も変わりません。増えるものは何もない代わりに、社会保険の扶養は年収の見込みで別に判定されるので、そちらの基準は改めて確認する必要があります。
2つ目は、妻の合計所得金額が110万円のケースです。表では105万円超110万円以下の行に当たり、控除額は26万円になります。38万円から12万円減ったので、増える所得税は12万円の20パーセントで2万4,000円です。住民税は控除の差額の1割が目安なので、おおむね1万2,000円ほど増えます。合わせて年間でおよそ3万6,000円です。妻の収入がこの水準まで増えていることを考えると、増税分は小さく収まっています。
3つ目は、妻の合計所得金額が140万円のケースです。133万円を超えているので配偶者特別控除はゼロになります。38万円がまるごと消えるため、所得税は7万6,000円、住民税はおよそ3万8,000円、合わせて年間でおよそ11万4,000円増えます。ここに家族手当の停止が重なると、月額1万円の手当なら年12万円が加わり、合計はおよそ23万円になります。
この3つを見比べると、税金だけを理由に働く時間を抑える意味がほとんどないことが分かります。控除がまるごと消えるところまで行っても、夫の手取りの減少は年10万円台です。金額として無視できないのは家族手当のほうで、しかもそれは会社ごとの決まりなので、計算する前に条件を確かめないと試算そのものが成り立ちません。
いっぽう、社会保険の扶養から外れたときに妻の側で発生する保険料は、これらより大きくなることがあります。国民健康保険と国民年金を自分で払う形になると、国民年金だけで年間およそ21万5,000円です。世帯の手取りで判断するなら、夫の税金より妻の保険料のほうを先に見積もるのが正しい順番です。
世帯の手取りで見ると、どこで逆転するか
ここまでの要素をまとめると、世帯の手取りは次のように動きます。妻の収入が増えるにつれて世帯の手取りも増えますが、社会保険の扶養を外れる地点で一度落ち込み、その後また増えていきます。落ち込みの深さは、新たに発生する保険料の年額で決まります。
大事なのは、この落ち込みが一時的なものだという点です。保険料が発生したあとも妻の収入がさらに増えれば、どこかで扶養に入っていたときの世帯手取りを追い越します。追い越す地点は、勤め先の社会保険に入れるかどうかで変わります。労使折半で会社が半分を負担してくれる場合のほうが、早く追い越せます。
判断の順番としては、次のように考えると整理できます。まず、妻の勤め先の社会保険に入れるかを確認する。入れるなら、その条件を満たすところまで働く時間を増やすほうが、中途半端に抑えるより世帯の手取りが伸びやすくなります。入れないなら、130万円の手前で抑えるか、国民健康保険料と国民年金保険料を払っても残る水準まで一気に増やすかの二択になります。
夫の側の税金と家族手当は、この判断に対して脇役です。税金の増加分は控除の減少額に税率を掛けた一部でしかなく、しかも妻の合計所得金額が95万円以下なら1円も増えません。家族手当だけは金額が大きくなり得るので、条件と金額を確認したうえで、妻の収入の増加分と比べてください。
将来の年金にも触れておきます。厚生年金保険に加入した期間は、国民年金だけの期間より将来の年金額が増えます。扶養の範囲に収めることで目先の負担は避けられますが、その期間は第3号被保険者として老齢基礎年金の分しか積み上がりません。短期の手取りと長期の年金は別の話なので、どちらを優先するかは世帯で話し合うところです。
一時的に超えてしまったときの扱い
扶養の判定は将来の収入の見込みで行うため、想定外の残業や人手不足で一時的に年収が基準を超えてしまうことがあります。この場合に扶養から外れてしまうと働きにくくなるため、救済の仕組みが用意されています。
厚生労働省は、被扶養者の認定のときに、人手不足による労働時間の延長などで一時的に年収が130万円以上になった場合について、過去の課税証明書や給与明細書、雇用契約書などに加えて、一時的な収入である旨の事業主の証明を添付する取り扱いを示しています。つまり、恒常的に増えたのではなく一時的な増加だと勤め先が証明すれば、扶養にとどまれる可能性があるということです。
この取り扱いを使えるかどうかは、加入している健康保険の判断になります。健康保険組合によって運用が違うため、まず夫の勤務先を通じて加入先に確認してください。証明の書式も加入先が指定していることがあります。
見込みで判定するという点は、逆の方向にも働きます。年の途中で妻が仕事を辞めた場合、その時点から先の収入の見込みで判定するので、その年の年収がすでに基準を超えていても、辞めた時点から扶養に入れることがあります。年単位で見る税の扶養とは考え方が違うところです。手続きが遅れると、その間の医療費や年金の扱いが面倒になるので、状況が変わったら早めに勤務先に伝えてください。
制度が動いている最中であることを踏まえる
年収の壁をめぐる制度は、いま変更の途中にあります。厚生労働省は、令和7年の年金制度改正法によって、所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件が最低賃金の状況を踏まえて令和7年6月から3年以内に撤廃されること、従業員50人超の企業を対象とする企業規模要件が段階的に縮小・撤廃されることを示しています。
これが意味するのは、いま勤め先の社会保険に入れない人も、数年のうちに入れるようになる可能性があるということです。入れるようになれば、保険料は労使折半になり、将来の年金も増えます。130万円の手前で働く時間を抑え続ける意味は、今後さらに薄れていく方向です。
税の側も同じように動いています。配偶者控除の基準は令和6年分までの合計所得金額48万円以下から、令和7年分は58万円以下、令和8年分は62万円以下へと引き上げられてきました。給与収入で言えば103万円から136万円へと広がっています。数年前の記事に書かれている金額をそのまま使うと、判断を誤ります。
こうした改正は年単位で動くため、判断のたびに国税庁と厚生労働省の公式ページで最新の金額を確かめるのが確実です。制度の名前で検索すると解説記事が大量に出てきますが、改正前の数字のまま残っているものが多く見られます。数字を扱うページほど、一次資料に当たる価値があります。
手続きと、扶養から外れるときにやること
実際に扶養から外れることになったら、やることは多くありません。順番に並べておきます。
社会保険の扶養から外れる場合、夫の勤務先に届け出ます。健康保険被扶養者異動届という書類を通じて手続きが進み、妻は勤め先の社会保険に入るか、市区町村で国民健康保険と国民年金の手続きをします。国民年金では第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更が必要です。この届出を忘れると、あとからまとめて保険料を求められることがあります。妻が使っていた保険証やマイナ保険証の資格情報は使えなくなるので、切り替えの時期を空けないようにしてください。
税の扶養については、夫の年末調整で調整します。給与所得者の配偶者控除等申告書に、妻の見込みの合計所得金額を書く欄があります。ここを実態に合わせて書けば、年末調整で正しい控除額が反映されます。見込みが外れて実際の所得が違っていた場合は、確定申告で修正します。
家族手当については、夫の勤務先の規程に従って届け出ます。条件を満たさなくなったことを申告せずにもらい続けると、あとから返還を求められることがあります。金額が大きいだけに、条件の確認と同時に届出のタイミングも聞いておくと安心です。
確認しておきたい書類も挙げておきます。夫の側は、直近の源泉徴収票と、給与明細の控除欄、そして勤務先の給与規程です。源泉徴収票を見れば課税される所得金額のおおよその位置が分かり、どの税率の帯にいるかが判断できます。給与明細の控除欄には健康保険料と厚生年金保険料の額が載っているので、これらが扶養の人数と関係ないことを自分の目で確かめられます。給与規程では家族手当の条件と金額を見ます。妻の側は、直近の給与明細と雇用契約書、勤め先の従業員数が分かるものです。週の所定労働時間と月額の所定内賃金が書かれていれば、勤め先の社会保険に入れるかどうかの見当がつきます。
扶養から外れる時期を自分で選べる場合は、年の区切りを意識すると手続きが楽になります。税の扶養は1月から12月で判定するので、年の後半に働く時間を増やすと、その年の判定に影響する所得が少なくて済みます。ただし社会保険の扶養は見込みで判定するため、月々の収入が基準を超えた時点で外れます。2つの制度の時間軸が違うことを、ここでも思い出してください。
市場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、扶養の範囲で働き方を決めている世帯ほど、仕事の選び方が「時給いくらで何時間まで」という形に固定されがちです。時間で区切る働き方は、収入の上限が労働時間で決まってしまうため、壁の手前で止まる以外の選択肢が出てきません。
運営者として見てきた限りでは、在宅の仕事で収入を伸ばしている人は、時間ではなく成果物で契約する形に移っています。同じ作業でも、慣れれば短い時間で仕上がります。時給で受けていると、早くなったぶん収入が減ります。成果物で受けていると、早くなったぶん手元に時間が残り、次の仕事を受けられます。この違いが、扶養の壁を越えるかどうかの現実的な分かれ目になっていると感じます。
仲介手数料の話も無関係ではありません。中間マージンが引かれない直接取引なら、同じ予算を持つ依頼者はより多く頼め、受ける側は手数料0%のぶん手取りが厚くなります。壁を越えた直後の落ち込みを早く埋められるかどうかは、1件あたりの手取りがどれだけ残るかで変わります。額面の単価だけを見て選ぶと、この差を見落とします。
具体的な職種の見当をつけたい人は、市場の相場から逆算するのが早道です。文章の仕事であれば著述家,記者,編集者の年収・単価相場が、技術系であればソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になります。伸びている分野に寄せたいなら、企業の業務にAIを組み込む支援を扱うAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、納品後も運用が続きやすいアプリケーション開発のお仕事が候補になります。事務や文書作成から入るなら、ビジネス文書検定のような資格が、実務経験の浅い時期の裏づけになります。
保険の見直しについても一言だけ。妻が扶養から外れて勤め先の社会保険に入ると、傷病手当金など新しい給付の対象になります。世帯で加入している民間保険と重なる部分が出てくるので、保障の範囲を一度並べてみる価値があります。年代ごとの考え方は生命保険おすすめ比較【2026年版】|年代別の選び方が参考になります。
最後にもう一度だけ整理します。妻が扶養から外れても、夫の給与は減りません。夫の社会保険料も増えません。増えるのは控除が減ったぶんの税金と、条件を満たさなくなった場合の家族手当の停止分です。そして妻の側には新しい保険料が発生します。この4つを紙に書き出して足し引きすれば、働く時間をどうするかは自分たちで決められます。
よくある質問
Q. 妻が扶養から外れると夫の社会保険料は上がりますか?
上がりません。夫の健康保険料と厚生年金保険料は、夫本人の標準報酬月額と保険料率で決まります。扶養に入れている家族の人数は計算に影響しないため、被扶養者が1人減っても金額は変わりません。世帯の負担が増えるのは、妻の側に新しく保険料が発生するからです。夫の手取りに効くのは税金と家族手当の2つだけです。
Q. 夫の税金はどのくらい増えますか?
減った控除額に夫の所得税の税率を掛けた金額です。税率は課税される所得金額によって5パーセントから45パーセントの7段階に分かれています。課税所得400万円なら税率20パーセントなので、配偶者控除38万円がなくなると所得税は7万6,000円ほど増えます。住民税は所得割が多くの自治体で10パーセントなので、控除の差額の1割が目安になります。
Q. 妻の収入がいくらまでなら夫の控除は減りませんか?
令和8年分では、妻の合計所得金額が95万円以下であれば配偶者特別控除で38万円が受けられ、配偶者控除と同額です。つまり配偶者控除の基準である62万円を超えても、95万円までは夫の税金は変わりません。95万円を超えると5万円刻みで段階的に減り、133万円を超えるとゼロになります。夫の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用されません。
Q. 一時的に年収130万円を超えてしまったら扶養から外れますか?
人手不足による労働時間の延長などで一時的に超えた場合は、課税証明書や給与明細書、雇用契約書などに加えて、一時的な収入である旨の事業主の証明を添えることで扶養にとどまれる取り扱いがあります。判断するのは加入している健康保険なので、夫の勤務先を通じて確認してください。健康保険組合によって運用や必要な書式が違います。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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