Web制作のRFP・提案依頼書の書き方|相見積もりで失敗しない発注準備ガイド 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
Web制作のRFP・提案依頼書の書き方|相見積もりで失敗しない発注準備ガイド 2026

この記事のポイント

  • Web制作のRFP(提案依頼書)の書き方を
  • 相見積もりで失敗しないための項目・サンプル・費用相場・依頼の流れを
  • 法務相談の現場から具体的にお伝えします

先日、あるEC事業者の方から相談を受けました。「制作会社3社に見積もりをお願いしたら、1社は80万円、もう1社は250万円、最後の1社は『要件がわからないので出せません』と言われた。同じサイトを作りたいだけなのに、なぜこんなに違うんですか」と。結論から言うと、これは提案依頼書、いわゆるRFPを用意していなかったことが原因です。つまり、各社が「発注者はこういうものを求めているだろう」と勝手に想像して見積もりを出したため、前提がバラバラになってしまったんです。こういうケース、実は本当に多い。だからこそ、RFPの書き方を知っておくことが、無駄な出費とトラブルを防ぐ最大の武器になります。

この記事では、Web制作を外注しようとしている個人事業主・中小企業のご担当者・店舗オーナー・EC事業者の方に向けて、RFP(提案依頼書)の書き方を発注者の立場から具体的に解説します。RFPに書くべき項目、そのままコピーして使えるサンプル構成、費用相場の目安、依頼から契約までの流れ、そして相見積もりで失敗しないコツまで、意思決定に必要な情報を全部お伝えします。読み終わるころには、「いくらで・どこに・どうやってWeb制作を発注すればよいか」を自分で判断できるようになっているはずです。

RFP(提案依頼書)とは何か|発注者が最初に知るべき基礎

RFPとは何か、まずここを押さえておきましょう。専門用語が出てきますが、難しくありません。

RFPとは「Request for Proposal」の略で「提案依頼書」を指します。企業がWebサイトの制作やシステム開発を行う際に、具体的な要件を提示して制作会社などに提案を要求する書類です。制作会社側はRFPに基づいた提案を行い、発注側は提案内容を見て実際に依頼する制作会社を決定します。

つまりRFPとは、「私たちはこういうサイトを、こういう目的で、これくらいの予算で作りたいので、御社ならどう作りますか?いくらでできますか?と各社に問いかけるための依頼書」のことです。これ、知らない人が本当に多いんですが、RFPは制作会社のためではなく、発注するあなた自身のために作る書類なんです。

なぜあなたのためになるのか。理由はシンプルで、RFPがあると複数の制作会社から「同じ土俵の上での提案」が集まるからです。前提条件をそろえた状態で各社の見積もりを比べられるので、金額の違いが「何をやるか・やらないか」の違いとして正しく見えてくる。冒頭の相談者のように80万円と250万円という3倍以上の開きが出るのは、多くの場合、発注者が要件を言語化できていないことに起因します。

RFPと要件定義書・見積書の違い

似た言葉が多くて混乱しやすいので、整理しておきます。RFP(提案依頼書)は発注者が制作会社に渡す「これを作ってほしい」という依頼書です。これに対して要件定義書は、発注が決まったあとに、作るものの仕様を細かく確定させる文書で、多くの場合は制作会社と一緒に作り込みます。見積書は制作会社が発注者に返す「この内容ならこの金額です」という回答書です。

順番で言えば、RFP(発注者が作る)→提案書・見積書(各社が返す)→発注先決定→要件定義書(発注後に詰める)という流れになります。つまりRFPは一連のプロジェクトの一番最初、しかも発注者が主導権を握れる唯一のタイミングで作る書類なんです。ここを丁寧にやるかどうかで、その後の数十万円から数百万円の使い方が決まると言っても大げさではありません。

個人・小規模事業者でもRFPは必要か

「うちは小さい店だから、そんな大層な書類はいらないのでは」と思う方もいます。結論から言うと、規模が小さくても、A4で2〜3枚程度の簡易版RFPは用意したほうがいい。むしろ予算が限られている小規模事業者ほど、無駄な出費を避けるためにRFPの効果が大きいんです。

大企業のような分厚いRFPを作る必要はありません。「何のために作るのか」「予算はいくらか」「いつまでに欲しいか」「絶対に外せない機能は何か」。この4点だけでも文書にして各社に渡せば、見積もりの精度は大きく変わります。実際、私が相談を受ける発注トラブルの多くは、この最低限の4点すら口頭でしか伝えていなかったことが発端になっています。

なぜRFPを作るのか|発注者が得られる5つのメリット

RFPを作る目的とメリットを、発注者の視点で具体的に見ていきましょう。「面倒そう」という第一印象を、「これは自分を守るための作業だ」という認識に変えていただきたいと思います。

まず大前提として、RFPを作る作業そのものが、あなたの頭の中を整理してくれます。「なぜサイトを作り直すんだっけ」「本当に必要な機能はどれだっけ」と自問しながら書くことになるので、発注前に社内の認識をそろえられる。これだけでも作る価値があります。

メリット1:見積もりを正しく比較できる

最大のメリットはこれです。前述の通り、RFPがあれば各社が同じ前提で見積もりを出すので、金額を横並びで比較できます。RFPがないと、A社は「トップページと5ページだけ」で見積もり、B社は「20ページ+予約システム込み」で見積もり、というように見ている範囲がバラバラになる。これでは安いのか高いのか判断できません。

RFPで「作るページ数」「必要な機能」「対応してほしい範囲」を明示しておけば、各社の見積もりは同じ土俵に乗ります。仮にA社が100万円、B社が150万円だったとして、その差が「B社はスマホ最適化とSEO初期設定を含んでいるから」だと分かれば、それは正当な差だと納得して選べる。この「差の理由がわかる」状態こそが、賢い発注の第一歩です。

メリット2:認識のズレによるトラブルを防げる

冒頭で紹介した「イメージと違うから払わない」というトラブルは、発注者と制作会社の認識のズレから生まれます。RFPで「こういうサイトにしたい」を文書化しておけば、完成物が想像と違ったときに「RFPにはこう書いてありましたよね」と立ち返る根拠になります。

これ、法務の観点でも非常に重要です。口約束だけで進めたプロジェクトが揉めると、「言った・言わない」の水掛け論になり、解決に時間もお金もかかります。RFPという文書が残っていれば、後から契約書や要件定義書に落とし込む際の土台にもなる。トラブルを未然に防ぐという意味で、RFPは一種の保険なんです。※ただし、実際に報酬未払いや契約解除などの深刻なトラブルに発展した場合は、RFPだけで解決しようとせず、早めに弁護士に相談してください。

メリット3:制作会社の「本気度」を見極められる

RFPを渡すと、制作会社の対応の質が見えてきます。しっかりした会社は、RFPを読み込んだ上で「この部分はこう解決できます」「ここは予算的にこうしたほうがいい」と踏み込んだ提案をしてくれます。一方で、RFPをほとんど読まずにテンプレート的な見積もりだけ返してくる会社もある。

この差は、発注後のパートナーとしての姿勢そのものです。RFPという「発注者からの本気の問い」に対して、どれだけ真剣に向き合ってくれるか。ここを見れば、その会社と気持ちよく仕事ができそうかどうかが、契約前に相当わかります。RFPは、制作会社を選別するリトマス試験紙としても機能するんです。

メリット4:社内の合意形成がスムーズになる

会社で発注する場合、上司や他部署の承認が必要になることが多いですよね。RFPがあれば、「なぜこのサイトを作るのか」「いくらかかるのか」「何が得られるのか」を一枚の文書で説明できるので、社内稟議が通りやすくなります。

口頭で「サイトをリニューアルしたいんです」と言うより、目的・予算・スケジュール・期待効果が整理されたRFPを見せたほうが、決裁者は判断しやすい。結果として、発注のスピードも上がります。RFP作成は一見遠回りに見えて、実はプロジェクト全体を速く進める効果があるんです。

メリット5:発注後の進行がスムーズになる

RFPで最初に方向性を固めておくと、発注後の制作進行で手戻りが減ります。要件が曖昧なまま走り出すと、途中で「やっぱりこうしたい」という変更が頻発し、追加費用や納期遅延の原因になる。

私が見てきた限りでは、発注後のトラブルの多くは「最初に決めていなかったことを、途中で決めようとした」ことから生まれます。RFPで大枠を固めておけば、制作会社も安心して作業を進められますし、あなたも「これは最初の話と違う追加要望だから別料金だな」と冷静に判断できる。長い目で見ると、RFP作成にかけた数時間が、後の何十時間もの調整を節約してくれます。

RFP作成の事前準備|書き始める前にそろえる情報

いきなりRFPを書き始めようとすると、必ず手が止まります。まずは材料集めからです。ここを丁寧にやるほど、RFP本体はスムーズに書けます。

現状の課題と目的を言語化する

最初にやるべきは、「なぜWeb制作・リニューアルをするのか」を言葉にすることです。「なんとなく古くなったから」では制作会社も提案のしようがありません。「問い合わせが月3件しか来ないのを月15件に増やしたい」「スマホで見づらいという声が多い」「採用応募を増やしたい」など、具体的な課題と、それをどう変えたいかを書き出します。

ここで役立つのが「誰の・どんな行動を・どう変えたいのか」という問いです。たとえば「新規顧客に・問い合わせフォームから連絡してもらう回数を・増やしたい」のように、対象者と期待する行動をセットで考えると、目的が鮮明になります。この目的が、RFP全体の背骨になります。

予算とスケジュールの上限を決める

次に、予算とスケジュールの「上限」を自分の中で決めておきます。RFPには予算を書くべきか迷う方が多いのですが、結論として、予算は書いたほうがいいです。「予算を書くと足元を見られて高くされるのでは」と心配する人がいますが、実際は逆で、予算がわからないと制作会社は提案の粒度を決められず、的外れな見積もりが返ってくるだけです。

予算は「100万円ちょうど」のようにピンポイントで書く必要はなく、「80万円120万円」のような幅で示せば十分です。スケジュールも「◯月の展示会までに公開したい」のように、なぜその時期かという理由もあわせて書くと、制作会社が優先順位を判断しやすくなります。

参考にしたいサイトを集める

言葉だけでイメージを伝えるのは難しいので、「こういう雰囲気にしたい」という参考サイトを3〜5個ほど集めておきます。競合他社のサイトでも、まったく別業種のサイトでも構いません。「このサイトのこの部分が好き」「この配色が理想」と、具体的にどこが良いのかもメモしておくと、デザインの方向性が伝わりやすくなります。

逆に「こういうのは避けたい」という反面教師サイトも用意しておくと、なお良いです。デザインの好みは言葉にしにくいので、具体例で示すのが一番確実。この作業を発注前にやっておくだけで、完成後の「イメージと違う」トラブルが大幅に減ります。

社内の意思決定者と担当窓口を決める

意外と見落とされがちなのが、社内体制の整理です。「最終的に誰がGOを出すのか」「制作会社とのやり取りの窓口は誰か」を先に決めておかないと、制作の途中で「その決定は社長に確認しないと」と止まってしまい、納期が延びます。

窓口が複数いて、それぞれが違うことを言うのも制作会社を混乱させる典型パターンです。担当窓口は原則1人に絞り、その人に決定権をある程度委ねておく。これだけで進行速度が変わります。RFPには、この窓口担当者の連絡先も明記しておきましょう。

RFPに記載すべき項目|そのまま使える構成テンプレート

ここからが本題です。RFPに何を書けばいいのか、項目を順番に解説します。この構成をそのままなぞれば、抜け漏れのないRFPが作れます。競合上位の制作会社が公開しているサンプルも、おおむねこの構成に沿っています。

最後に、弊社ではこれまで多くの企業様の提案コンペに参加してまいりました。発注企業側としても、サイト制作の提案依頼を行うケースもありましたので、それらの経験をふまえ、提案依頼書(RFP)のサンプルをご用意しました。

1. 発注者の基本情報とプロジェクト概要

冒頭には、あなたの会社・事業の基本情報を書きます。会社名(屋号)、事業内容、担当者名と連絡先、そして「何を作りたいのか」の一文サマリーです。「当社コーポレートサイトの全面リニューアル」「新規ECサイトの立ち上げ」のように、プロジェクトの正体が一目でわかる書き出しにします。

制作会社は、あなたの事業を知らない状態から提案を始めます。だから、事業内容やターゲット顧客層をここで簡潔に説明しておくと、提案の的中率が上がります。「地域密着型の工務店で、40〜60代の戸建てリフォーム検討層が主なお客様」のように、業態と顧客像を数行で伝えるだけで、制作会社はぐっとイメージしやすくなります。

2. プロジェクトの背景と現状の課題

なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか、その背景と課題を書きます。事前準備で言語化した「なぜ作るのか」を、ここで文章にします。「現在のサイトは10年前に制作したもので、スマホ対応しておらず、月間の問い合わせが3件程度と低迷している」のように、現状の数字を交えて書くと説得力が出ます。

課題を書くときのコツは、「症状」だけでなく「困っている理由」まで書くことです。「スマホ対応していない(症状)ので、若い層の顧客を取りこぼしている(理由)」というふうに。制作会社は課題の根っこを理解できると、表面的な対処ではなく、本質的な解決策を提案してくれます。

3. プロジェクトの目的とゴール

このプロジェクトで達成したいゴールを、できるだけ数値で書きます。「問い合わせ数を月3件から15件へ」「資料請求のコンバージョン率を1%から3%へ」のように、達成したい状態を具体的な指標で示します。

数値目標を出すのが難しい場合は、「採用ページを新設し、応募のハードルを下げる」「ブランドイメージを一新し、高価格帯の商品を扱えるサイトにする」といった定性的なゴールでも構いません。大切なのは、制作会社が「この発注者は何をもって成功と考えているのか」を理解できることです。ゴールが共有されていれば、制作会社もそこに向けた提案をしてくれます。

4. 提案依頼範囲(スコープ)

どこからどこまでを依頼したいのか、範囲を明確にします。ここが曖昧だと見積もりがブレる最大のポイントです。「デザインだけ」「デザインとコーディング」「サーバー契約や保守運用まで一括」など、依頼したい工程を具体的に列挙します。

さらに、「ロゴは既存のものを使う」「原稿は自社で用意する」「写真撮影は制作会社にお願いしたい」のように、誰が何を担当するのかも書いておくと親切です。原稿や写真素材を誰が用意するかは、費用と納期に大きく影響します。ここを曖昧にしたまま進めると、「原稿はそちらで用意するものと思っていた」というすれ違いが起きやすいので、必ず明記してください。

5. サイトの要件(機能・ページ構成・デザイン)

作りたいサイトの中身を具体的に書きます。想定するページ構成(トップ、会社概要、サービス紹介、お問い合わせなど)、必要な機能(問い合わせフォーム、予約システム、ブログ更新機能、多言語対応、EC機能など)、そしてデザインの方向性です。

機能要件は「必須」と「できれば」に分けて書くのがコツです。予算内で全部は無理でも、「必須のものは確実に、余裕があれば追加のものも」という優先順位が伝われば、制作会社は予算に合わせた現実的な提案をしてくれます。デザインの方向性は、前述の参考サイトを添えて「このような雰囲気で」と伝えると、認識のズレが減ります。

6. 予算とスケジュール

事前準備で決めた予算とスケジュールを記載します。予算は幅で、スケジュールは「◯月末公開希望、その理由は展示会に間に合わせたいため」のように理由も添えて書きます。理由があると、制作会社は「その時期は難しいが、優先順位の高いページだけ先行公開する方法もある」といった代替案を出しやすくなります。

ここで注意したいのは、あまりに短い納期を無理に要求しないことです。品質とスピードはトレードオフの関係にあり、急ぎすぎると品質が犠牲になるか、特急料金で費用が跳ね上がります。一般的なコーポレートサイトなら、要件定義から公開まで2〜4ヶ月程度が標準的な目安です。この相場感を頭に入れて、現実的なスケジュールを設定しましょう。

7. 提案してほしい内容と選定基準

制作会社に「何を提案してほしいか」を明示します。デザイン案なのか、サイト構成案なのか、集客施策の提案なのか。あわせて、「どういう基準で発注先を選ぶか」の選定基準も書いておくと、各社が力を入れるポイントを合わせてくれます。

選定基準の例としては、「提案内容の的確さ」「費用」「制作実績」「担当者との相性」「公開後の保守体制」などがあります。これらを重視する順に並べて示しておくと、制作会社は「この発注者は費用より提案の質を重視しているな」と読み取り、それに沿った提案を返してくれます。選定基準を開示するのは、双方の時間を節約する意味でも有効です。

8. 提案期限と提出方法・各種条件

最後に事務的な条件を書きます。提案書の提出期限、提出方法(メール、対面プレゼンなど)、質問の受付方法、契約に関する条件(機密保持契約を結ぶか等)です。複数社に依頼する「相見積もり(コンペ)」であることも、正直に伝えておくのがマナーです。

秘密情報を渡す場合は、NDA(機密保持契約)の締結を検討してください。事業計画や顧客データなど、外部に漏れると困る情報を制作会社に共有する際は、NDAを結んでおくと安心です。※NDAの内容に不安がある場合は、行政書士や弁護士に一度チェックしてもらうことをおすすめします。ひな型をそのまま使うと、自社に不利な条項が入っていることもあるので注意が必要です。

Web制作の費用相場|RFPに書く予算の決め方

RFPに予算を書くには、まず相場を知らないといけません。ここでは発注者が最低限おさえておきたい費用相場を、サイトの種類別に整理します。あくまで一般的な目安ですが、予算感を持つ材料にしてください。

サイト種類別の費用相場

小規模なコーポレートサイト(5〜10ページ程度)なら、30万円80万円が一つの目安です。標準的なコーポレートサイト(10〜20ページ、問い合わせフォームやブログ機能付き)だと80万円250万円程度。ランディングページ(1ページの縦長サイト)は10万円60万円が相場です。

ECサイトは扱う商品数や決済・在庫管理の仕組みによって幅が大きく、既製のショッピングカートを使うなら30万円100万円、独自機能を作り込むと100万円500万円以上になることもあります。予約システムや会員機能などを組み込む場合も、その分費用は上がります。まずは自分が作りたいサイトがどの種類に当たるかを見極め、相場のレンジを把握しましょう。

費用の内訳を理解する

見積書を正しく読むには、費用の内訳を知っておく必要があります。Web制作費は大きく、企画・ディレクション費、デザイン費、コーディング(実装)費、システム開発費、そして写真撮影やライティングなどの素材制作費に分かれます。このほか、公開後のサーバー・ドメイン費用や保守運用費が別途かかります。

「このサイト一式◯◯円」とだけ書かれた見積書は要注意です。何にいくらかかっているのかが見えないと、後から「それは別料金です」と追加請求される余地が生まれます。RFPで「見積もりは項目ごとに内訳を明記してください」と依頼しておくと、各社が細かく分けて出してくれるので、比較もしやすく、追加費用のリスクも減らせます。

依頼先による費用差|制作会社・フリーランス・直接取引

同じサイトでも、どこに頼むかで費用は大きく変わります。大手の制作会社は品質や体制が安定している一方、間接コストが乗るため費用は高めです。中小の制作会社はその中間。そして、フリーランスや個人の制作者に直接依頼すると、相対的に費用を抑えられる傾向があります。

ここで知っておきたいのが、仲介の仕組みです。制作会社や代理店を経由すると、実際に手を動かすデザイナーやエンジニアの報酬に加えて、仲介する会社の管理費やマージンが上乗せされます。これに対して、フリーランスへ直接依頼すれば中間マージンが発生しない分、同じ品質でも費用を抑えられることが多い。近年は、発注者とフリーランスを直接つなぐ業務委託マッチングサービスも増えていて、手数料をかけずに直接取引できる仕組みが整ってきています。もちろん、直接取引には相手の見極めという責任も伴いますが、コスト面のメリットは大きいと言えます。

RFP作成から契約までの流れ|発注者が踏むべき手順

RFPを書いたあと、実際にどう進めていくのか。発注から契約までの手順を時系列で解説します。全体像を掴んでおくと、今どの段階にいるのかが分かり、落ち着いて進められます。

ステップ1:RFPを作成し、依頼先候補を選ぶ

まずRFPを完成させます。次に、そのRFPを渡す制作会社やフリーランスの候補を選びます。候補の探し方は、検索、知人の紹介、制作実績サイト、フリーランスのマッチングサービスなど様々です。いきなり1社に絞らず、3〜5社程度に声をかけるのが相見積もりの基本です。

候補を選ぶ段階で、各社の制作実績を見ておきましょう。自社と近い業種・規模の制作実績があるか、デザインのテイストが好みに合うか。実績を見れば、その会社が得意とする領域が見えてきます。RFPを渡す前に、明らかに方向性が合わない会社を外しておくと、後の比較がスムーズになります。

ステップ2:RFPを配布し、質疑応答に対応する

選んだ候補にRFPを配布します。真剣な制作会社ほど、RFPを読んで疑問点を質問してきます。この質問の質が、実は制作会社の実力を測る材料になります。的確な質問をしてくる会社は、プロジェクトを深く理解しようとしている証拠です。

質疑応答は、できれば全社に同じ回答を共有する形で進めると公平です。ある社にだけ有利な情報を与えると、比較の前提が崩れます。この段階で、担当者の反応の速さや説明の分かりやすさもチェックしておきましょう。契約後、長くやり取りする相手になるので、コミュニケーションの相性は想像以上に重要です。

ステップ3:提案・見積もりを受け取り、比較検討する

各社から提案書と見積書が届いたら、比較検討に入ります。ここでRFPの効果が最大限に発揮されます。同じRFPに対する回答なので、各社の提案の違い、費用の違いが、正しく比較できるはずです。金額だけでなく、提案の的確さ、担当者の熱意、保守体制なども含めて総合的に判断します。

このとき、一番安い見積もりに飛びつくのは危険です。極端に安い場合は、必要な工程が抜けていたり、後から追加請求される前提だったりすることがあります。逆に高すぎる場合も、その金額の根拠を確認すべきです。RFPの選定基準に沿って、費用対効果で判断してください。ここでの数時間の吟味が、その後の数ヶ月の満足度を左右します。

ステップ4:発注先を決定し、契約を結ぶ

発注先を決めたら、契約を結びます。ここは法務の観点で最も重要なステップです。契約書には、業務範囲、金額、支払い条件、納期、著作権の帰属、修正回数、そして万一トラブルが起きたときの取り決めを明記します。口約束で済ませず、必ず書面(電子契約含む)を残してください。

特に注意したいのが、2024年に施行されたフリーランス保護新法です。フリーランスや個人事業主に業務を委託する場合、発注者には取引条件を書面で明示する義務があります。つまり、あなたが発注者として個人の制作者に依頼するなら、業務内容・報酬額・支払期日などを明示する法的な義務があるということです。これ、発注する側の義務なので、知らなかったでは済みません。※契約書の作成やチェックに不安がある場合は、行政書士や弁護士に相談することを強くおすすめします。法律はあなたの味方ですが、正しく使うには専門家の力を借りるのが確実です。

ステップ5:要件定義・制作・納品へ進む

契約後は、要件定義書を制作会社と一緒に詰め、実際の制作フェーズに入ります。RFPで大枠を固めているので、ここでの詰めもスムーズに進むはずです。制作中は、定期的に進捗を確認し、認識のズレがないかチェックします。

納品時には、事前に決めた要件を満たしているかを検収します。この検収をきちんとやることが、後のトラブル防止につながります。そして、フリーランス保護新法では、発注者は成果物を受け取った日から原則60日以内に報酬を支払う義務があります。「イメージと違う」は支払いを拒否する正当な理由にはなりません。修正が必要なら、契約で決めた修正回数の範囲で依頼し、それを超える大幅な変更は追加費用として協議する。これが健全な発注者の姿勢です。

相見積もりで失敗しないためのポイントと注意点

RFPを作って相見積もりを取っても、進め方を誤ると失敗します。ここでは発注者が陥りやすい失敗と、その回避策をお伝えします。

失敗しやすいパターンとその対策

Webサイト制作でよくある失敗を、実際の相談事例から整理してみます。

webサイト制作・リニューアルで起こりがちな失敗、制作会社への依頼時に発注企業側が抱える課題と気をつけるべきこと、こうした点を事前に把握しておくことで、多くのトラブルは未然に防げます。

最も多い失敗は、目的が曖昧なまま発注してしまうことです。「なんとなく古いから作り直したい」という動機だけで進めると、完成しても効果が出ず、「お金をかけたのに何も変わらなかった」という結果になりがちです。対策は、これまで述べてきた通り、RFPで目的とゴールを数値で言語化することです。

二つ目は、安さだけで発注先を選ぶこと。私が相談を受けたある店舗オーナーは、最安値の業者に頼んだところ、公開後の修正はすべて別料金、しかも連絡がつきにくく、結局サイトを作り直す羽目になりました。安さには理由があります。見積もりの内訳と、公開後のサポート体制を必ず確認してください。三つ目は、担当窓口を決めずに社内の複数人がバラバラに要望を出すこと。これは制作会社を混乱させ、手戻りの温床になります。窓口は1人に絞りましょう。

発注者としての私の失敗談

正直に打ち明けると、私自身も事務所のサイトを初めて外注したとき、見積もりの比較で失敗しました。当時はRFPという概念すら知らず、「行政書士事務所のサイトを作りたい」とだけ口頭で伝えて、3社から見積もりをもらったんです。ところが、A社は40万円、B社は120万円と大きく開いていて、どちらが妥当なのか全く判断できませんでした。

後から分かったのは、A社は「テンプレートに文字を入れるだけ」の提案で、B社は「オリジナルデザイン+原稿作成+公開後3ヶ月のサポート込み」という、まったく中身の違う提案だったということ。私が範囲を指定していなかったから、各社が勝手に想像して見積もっていたんです。つまり、私が発注者として要件を言語化していなかったことが、混乱の原因でした。この経験から、発注者側の準備がいかに大事かを痛感しました。あなたには、同じ失敗をしてほしくありません。

追加費用と著作権に関する注意

契約前に必ず確認すべきなのが、追加費用の発生条件と、成果物の著作権の扱いです。「修正は何回まで無料か」「ページを追加したらいくらか」「写真素材は誰が用意するのか」。これらを曖昧にすると、後で想定外の請求が来ます。RFPや契約書の段階で、追加費用のルールを明文化しておきましょう。

著作権も見落とされがちです。デフォルトでは、制作した成果物の著作権は制作者側に残ることが多い。将来サイトを自分で改修したり、別の会社に引き継いだりしたい場合は、著作権を発注者に譲渡する旨を契約に入れておく必要があります。これ、知らない人が本当に多いんですが、著作権が制作会社に残っていると、後から「うちで作ったものなので勝手に改変しないでください」と言われることもあるんです。※著作権譲渡の条項は専門的なので、契約書に盛り込む際は行政書士や弁護士に確認してもらうと安心です。

保守運用まで見据えて発注する

サイトは作って終わりではありません。公開後の更新、不具合対応、セキュリティ対策など、保守運用が続きます。RFPの段階で「公開後の保守はどうするか」も検討し、各社に運用体制を提案してもらいましょう。自社で更新できるようにしたいのか、月額で保守を任せたいのか、方針を決めておきます。

保守費用は、月額5,000円5万円程度が一般的な相場です。金額の幅は、対応範囲(サーバー監視だけか、コンテンツ更新まで含むか)によります。初期制作費だけを見て安い会社を選んでも、保守費用が高かったり、そもそも保守に対応していなかったりすると、長期的には割高になることも。発注は、公開後の運用まで含めたトータルコストで判断するのが賢明です。

Web制作の発注に役立つ関連情報と、外注先の選び方

ここまでRFPの書き方を中心に解説してきましたが、実際に発注先を探し、選ぶ段階でも知っておくと役立つ情報があります。発注者が意思決定するための客観的な材料として、いくつかの視点を補足します。

外注先の候補と、それぞれの相場感

Web制作の外注先は、大きく制作会社とフリーランス・個人事業主に分かれます。どちらを選ぶかは、予算・規模・求める品質によります。大規模で複雑なサイトや、公開後も手厚いサポートが必要なら制作会社、予算を抑えたい小〜中規模のサイトならフリーランスへの直接依頼、という選び分けが一つの目安です。

フリーランスに直接依頼する場合、報酬相場を知っておくと交渉がスムーズです。Web制作を担うエンジニアやデザイナーの単価相場は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のデータが参考になります。職種ごとの相場感を把握しておけば、提示された見積もりが妥当かどうかを判断する物差しになります。原稿作成を外注したい場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も見ておくと、ライティング費用の目安がわかります。

発注前に知っておきたい関連知識

RFP作成やビジネス文書の作成に自信がない方は、文書作成の基礎を体系的に学ぶという手もあります。提案依頼書や契約書などのビジネス文書を正しく作れるスキルは、Web制作の発注に限らず役立ちます。ビジネス文書検定のような資格の学習範囲は、こうした文書作成の基礎を押さえるのに参考になります。

また、Web制作の技術的な中身をある程度理解しておくと、制作会社との会話がスムーズになります。たとえばWordPressで作るのか、独自開発なのかで費用も保守方法も変わります。発注者として最低限の技術知識を持っておきたいなら、Web制作 WordPressの全手順!2026年最新の作り方と案件獲得術で、WordPress制作の全体像を掴んでおくと、提案内容を読み解く助けになります。ネットワークやサーバーの基礎に興味があれば、CCNA(シスコ技術者認定)の学習範囲がインフラ理解の入り口になります。

発注データから見える傾向

発注者と受注者を直接つなぐ業務委託マッチングサービスの動向を見ると、Web制作関連の依頼は継続的に高い需要があります。特に、コーポレートサイトの制作・リニューアル、ランディングページ制作、WordPressのカスタマイズといった案件が多く、発注者側は「品質を保ちつつ、仲介マージンを抱えずに費用を抑えたい」というニーズを持っています。

こうしたニーズに応える形で、フリーランスへの直接発注が広がっています。前述の通り、仲介会社を通すと手数料が上乗せされますが、直接取引ならその分のコストを抑えられる。相場を把握した上で、信頼できる相手を見極めて直接依頼すれば、費用対効果の高い発注が可能です。マッチングサービスを使う際は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事アプリケーション開発のお仕事といった職種別のガイドで、どんなスキルを持つ人材がいるのかを把握しておくと、依頼先を探しやすくなります。近年はAI活用の相談も増えており、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のような領域も、Web制作とあわせて依頼を検討する発注者が出てきています。

補助金の活用も視野に入れる

Web制作は決して安い買い物ではありません。中小企業や個人事業主なら、補助金の活用も検討する価値があります。国や自治体には、Webサイト制作やIT導入を支援する補助金・助成金の制度があり、条件を満たせば費用の一部が補助されることがあります。制度の詳細は中小企業庁や各自治体の公式サイトで確認できます。

補助金を使う場合、事業計画書の作成が必要になることが多く、これがまた発注者の準備を求められる部分です。RFPと同様、「何のために・いくらかけて・どんな効果を狙うのか」を書類にまとめる作業になります。事業計画書の書き方に不安がある方は、持続化補助金 事業計画 書き方で書き方のコツを確認しておくと、申請がスムーズになります。補助金の公募には締め切りがあるので、Web制作のスケジュールと補助金の申請スケジュールを、早めにすり合わせておくことをおすすめします。

発注者が主導権を握るという発想

最後に、発注者としての心構えをお伝えします。Web制作の発注は、ともすると「制作のプロにお任せする」という受け身の姿勢になりがちです。しかし、これまで見てきたように、良い成果物を得られるかどうかは、発注者側の準備で大きく変わります。RFPを丁寧に作り、目的を言語化し、相見積もりで比較し、契約で条件を明文化する。この一連の準備こそが、発注者が主導権を握る手段なんです。

開業して間もない個人事業主の方には、フリーランスの開業届の出し方|書き方・提出方法・メリットを完全解説【2026年版】のような基礎知識とあわせて、こうした発注のノウハウも身につけておくことをおすすめします。Web制作の発注は、多くの事業者にとって数年に一度の大きな投資です。だからこそ、この記事でお伝えしたRFPの考え方を活かして、後悔のない発注をしていただきたい。準備は大変に見えますが、その手間は必ず、良いサイトと無駄のない支出という形で返ってきます。法律も、正しい知識も、あなたの味方です。

よくある質問

Q. RFP(提案依頼書)は個人や小さな会社でも作るべきですか?

はい、規模が小さくても簡易版のRFPを作ることをおすすめします。A4で2〜3枚程度、目的・予算・納期・必須機能の4点を書くだけでも、複数社の見積もりを同じ前提で比較でき、無駄な出費を防げます。予算が限られている小規模事業者ほど、RFPの効果は大きくなります。

Q. RFPに予算は書いたほうがいいですか、書かないほうがいいですか?

書いたほうがいいです。予算を伏せると制作会社は提案の粒度を決められず、的外れな見積もりが返ってきます。「80万円〜120万円」のような幅で示せば十分です。予算を書くと足元を見られると心配する方もいますが、実際は逆で、予算を共有したほうが現実的で比較しやすい提案が集まります。

Q. Web制作を制作会社とフリーランスのどちらに頼むと安いですか?

一般的に、フリーランスへ直接依頼するほうが費用を抑えられます。制作会社や代理店を経由すると管理費やマージンが上乗せされますが、直接取引なら中間マージンが発生しないためです。ただし相手を見極める責任は発注者側にあります。相場を把握した上で、実績や対応を確認して信頼できる相手を選ぶことが大切です。

Q. 完成したサイトが「イメージと違う」場合、報酬を払わなくてよいですか?

「イメージと違う」だけを理由に支払いを拒否することはできません。2024年施行のフリーランス保護新法では、発注者は成果物の受領日から原則60日以内に報酬を支払う義務があります。認識のズレを防ぐには、事前にRFPで要件を文書化しておくことが重要です。修正は契約で定めた回数の範囲で依頼し、大幅な変更は追加費用として協議します。

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公開:2026年1月27日最終更新:2026年7月9日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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