週40時間を超えるWワークで損しないための割増と社会保険の知識


この記事のポイント
- ✓wワークで週40時間を超えたら割増賃金はいくらになるのか
- ✓計算の基礎になる賃金の範囲
- ✓給与明細のどこを見れば正しく払われているか判断できるかを
wワークで週40時間を超えたら、どうなるのか。結論から書きます。違法にはなりません。ただし、超えた分には25%以上の割増賃金を払う義務が発生し、原則としてその義務を負うのは「後から契約したほうの勤務先」です。つまり読者が本当に確認すべきなのは「働いていいかどうか」ではなく、「割増賃金がいくらになるはずで、それが給与明細に反映されているか」のほうです。
この記事では、割増賃金の金額そのものにフォーカスします。計算の土台になる賃金にどこまで含まれるのか、時間単価をどう割り出すのか、1円未満や30分未満の端数はどう処理されるのか、そして給与明細のどの欄を見れば払われているか判別できるのか。この4点を、実際の数字を入れた計算例で追いかけていきます。
週40時間を超えたときに何が起きるのかを、金額の話に落とす
労働基準法は、1日8時間・1週40時間を法定労働時間と定めています。ここまでは多くの人が知っている話です。問題は、この上限が「1社ごと」ではなく「その人の労働時間の合計」で判定される点にあります。
労働基準法38条1項は、労働時間は事業場を異にする場合においても通算すると定めています。事業場を異にする、には同じ会社の別支店だけでなく、まったく別の会社も含まれるというのが行政解釈です。A社で週32時間、B社で週12時間働けば、合計は週44時間。法定を4時間超えたことになり、その4時間には割増賃金が必要になります。
ここで多くの人が誤解するのが、「超えたら働けなくなる」という理解です。そうではありません。36協定(時間外・休日労働に関する協定)が締結・届出されていれば、法定を超える労働そのものは適法に行えます。発生するのは禁止ではなく、支払い義務です。求人票に「両社合わせて週40時間以内まで」と書かれているのは、法律が禁じているからではなく、割増賃金の負担と労働時間管理の手間を勤務先が避けたいからだと考えたほうが実態に近いです。
実際、この論点は個人からの相談としても定番です。
wワークで週40時間以上働きたいが、バレない方法はありますか? 新しくバイトをしたいのですが、そのバイト先がwワークokですが、両社合わせて週40時間以内までと記載されていてます。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
正直なところ、「隠して働く」方向に頭を使うのはあまり得な戦略ではありません。隠したまま超過すると、本来受け取れるはずの割増賃金を自分から放棄することになるからです。同じ時間を働いて、受け取る金額だけが少なくなる。しかも申告していない以上、後から請求する足場も弱くなります。金額の構造を先に理解しておけば、堂々と申告したほうが手取りが厚くなるケースが多いと分かります。
そもそも「割増賃金」は何%上乗せされるのか
割増率は労働の種類ごとに決まっています。整理すると次のとおりです。
| 労働の種類 | 法定の割増率 | 補足 |
|---|---|---|
| 法定時間外労働(週40時間・1日8時間超) | 25%以上 | 通算後に超えた分が対象 |
| 1か月60時間を超える時間外労働 | 50%以上 | 2023年4月から企業規模を問わず適用 |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%以上 | 時間外と重なれば合算(50%以上) |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 深夜と重なれば60%以上 |
Wワークで問題になるのはほぼ1行目です。ただし夜のシフトに入る掛け持ちだと、時間外と深夜が重なって50%増になる時間帯が出てきます。ここを見落とすと、明細上の金額が想定より少ないことに気づけません。
なお「25%以上」という書き方をしているのは、これが法律上の下限だからです。就業規則や賃金規程でこれより高い率を定めている会社もあります。自社の率は必ず賃金規程で確認してください。
誰が払うのか、という一番もめる論点
通算して法定を超えた場合、割増賃金を払うのは誰か。厚生労働省の副業・兼業に関する考え方では、原則として時間的に後から労働契約を締結した使用者が支払義務を負うとされています。
もう少し丁寧に言うと、こういう順序で判定します。
第一に、両社の所定労働時間(あらかじめ働くと決まっている時間)を、労働契約を結んだ順に足していきます。この積み上げの途中で法定労働時間を超えたら、超えた部分を発生させた側、つまり後から契約したほうが割増賃金の義務を負います。
第二に、所定労働時間の枠を超えて実際に働いた時間(所定外労働)については、契約の順ではなく実際に労働が発生した順で通算します。先に所定外が発生したほうから積み上げ、法定を超えた分を負担します。
具体例で見ます。先に契約したA社が所定週32時間、後から契約したB社が所定週12時間だとします。積み上げると32時間までは法定内、B社の12時間のうち最初の8時間までが法定内で、残りの4時間が法定時間外。この4時間にB社が25%以上の割増を付けて払う、という結論になります。
だからこそ、B社に「他社でどれだけ働いているか」を申告しないと、B社は割増を計算できません。申告しないという選択は、B社の手間を減らすかわりに自分の割増賃金を消す選択でもあります。
割増賃金の計算の基礎になる賃金には、何が入るのか
ここからが本題です。割増賃金の金額は「1時間あたりの賃金 × 割増率 × 時間数」で決まります。この最初の「1時間あたりの賃金」をどう出すかで、金額は大きく変わります。
除外できる手当は7種類だけ、という原則
労働基準法37条と同法施行規則21条により、割増賃金の計算の基礎から除外してよい賃金は、次の7つに限られています。
・家族手当 ・通勤手当 ・別居手当 ・子女教育手当 ・住宅手当 ・臨時に支払われた賃金(結婚祝金、私傷病手当など) ・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
重要なのは、これが限定列挙だという点です。ここに書かれていない手当は、名称が何であれ計算の基礎に入れなければなりません。役職手当、資格手当、精皆勤手当、営業手当、地域手当、食事手当。これらはすべて基礎に含まれます。
さらに注意したいのが、名前が同じでも中身次第で扱いが変わるケースです。たとえば住宅手当。家賃や住宅ローンの額に応じて変動する形なら除外できますが、住宅の有無や費用にかかわらず全員に一律1万円という形なら、実質は基本給の一部とみなされ、除外できません。家族手当も同じで、扶養家族の人数に応じて増減するなら除外可、全員一律なら除外不可です。
この一律型の手当を除外して計算している会社は、実務上そこそこ見かけます。自分の明細に手当が並んでいるなら、それが「変動するか、一律か」を確認するだけで、割増賃金が数百円から数千円変わる可能性があります。
月給制の場合の時間単価の出し方
月給制の人は、月給を「1か月平均所定労働時間数」で割ります。この分母が曲者です。
1か月平均所定労働時間数は、次の式で出します。
(年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間)÷ 12
年間休日120日、1日8時間の会社なら、年間所定労働日数は245日。245 × 8 = 1,960時間。これを12で割ると約163.3時間になります。
ここで、月給25万円(うち通勤手当1万円、変動型の家族手当1万円、資格手当1万円)というモデルで計算してみます。
基礎賃金は、25万円から通勤手当1万円と家族手当1万円を除いた23万円。資格手当は除外できないので残ります。
時間単価は 230,000 ÷ 163.3 = 約1,408円。
割増賃金の単価は 1,408 × 1.25 = 1,760円。
もしここで通勤手当と家族手当を除かずに25万円で割ってしまうと、時間単価は約1,531円、割増単価は約1,914円。逆に資格手当まで誤って除いてしまうと、時間単価は約1,347円、割増単価は約1,684円。同じ1時間でも76円の差が出ます。月20時間の時間外なら1,520円、年間で1万8,000円を超える差です。小さい額に見えますが、放置すれば毎年積み上がります。
なお、月ごとに所定労働日数が変わる会社でも、割増賃金の計算に使う分母は「年間平均」で固定するのが原則です。2月だけ分母が小さくなって単価が上がる、といったことは起きません。
時給制・日給制の場合
時給制はシンプルです。時給がそのまま基礎になります。ただし、時給とは別に月額の手当が付いている場合、その手当も基礎に入れる必要があります。手当の月額を、その月の総労働時間で割って時給に足し込むという処理になります。
日給制は、日給を1日の所定労働時間で割ります。日給12,000円で所定8時間なら、時間単価は1,500円です。
Wワークで多いのが、本業が月給制、副業側が時給制というパターンです。この場合、割増賃金を計算するのは原則として後から契約した副業側なので、副業側の時給が計算の基礎になります。本業の給与が高いから割増も高くなる、という理屈にはなりません。ここは誤解が多いところです。副業の時給が1,200円なら、割増込みでも1,500円。本業の時間単価が2,000円あっても関係ありません。
つまり、「週40時間を超えてまで働くなら、超えた時間の単価が高いほうに時間を寄せる」という発想が合理的になります。時間の切り売りで超過分を積むより、単価そのものが高い仕事に切り替えたほうが、同じ疲労で得られる金額は増えます。
端数処理のルールを知らないと、正しいかどうか判断できない
計算式が分かっても、実際の明細と1円単位で合わないことがあります。理由の多くは端数処理です。行政通達で認められている処理方法は決まっているので、これを知っていれば「誤差なのか、間違いなのか」を切り分けられます。
時間数の端数
1か月の時間外労働の合計時間数に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理が認められています。
ここで押さえたいのは、これが「1か月の合計」に対してのみ許されるという点です。日ごとに15分未満を切り捨てる、といった処理は違法になります。1日ごとに端数を切り捨てると、月20日勤務で最大数時間分の賃金が消えるからです。
自分の明細を確認するときは、勤怠欄の時間外労働時間数が「17.0」「23.0」のようにきれいな整数で並んでいるかを見てください。毎月きれいに整数なら、月末に丸めているだけかもしれませんが、日々の打刻が15分単位で切り捨てられている可能性も疑ったほうがいいです。
金額の端数
1時間あたりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理が認められています。四捨五入と同じ考え方です。
先ほどの例で、230,000 ÷ 163.3 = 1,408.45… となりました。50銭未満なので1,408円に切り捨てます。これに1.25を掛けると1,760円ちょうど。もし端数が出れば、同じルールで丸めます。
さらに、1か月の賃金支払額(割増賃金の総額を含む)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満を切り捨て、50円以上を100円に切り上げる処理も認められています。これは事務処理の簡便化のための例外で、常に切り捨てるのは認められません。
端数処理でよくある誤り
一番多いのが、常に切り捨てる運用です。「端数は切り捨て」と就業規則に書いてあっても、労働基準法を下回る定めは無効になります。切り上げと切り捨てが混在するのが正しい姿で、毎月必ず切り捨てられているなら、その時点で疑う根拠になります。
もう一つが、割増率を掛ける順番の誤りです。時間単価を丸めてから時間数を掛けるのか、掛けてから丸めるのかで、数十円の差が出ます。通達上は、時間単価の段階と割増賃金額の段階のそれぞれで丸めてよいとされています。差額が数十円程度なら、この処理の違いである可能性が高く、追及する実益は薄いです。逆に数百円以上ずれるなら、計算の基礎に入れる手当の範囲か、分母の所定労働時間数が違っている可能性を疑うべきです。
給与明細のどこを見れば、正しく払われているか分かるのか
計算方法が分かったら、次は照合です。給与明細は勤怠欄・支給欄・控除欄の3ブロックに分かれているのが一般的で、割増賃金の検算には最初の2つを使います。
勤怠欄で確認する項目
見るべきは次の項目です。
・出勤日数 ・総労働時間(または就業時間) ・時間外労働時間数(残業時間、法定外時間などの名称) ・深夜労働時間数 ・休日労働時間数
Wワークで超過分を申告している場合、副業側の明細では所定労働時間の一部が「時間外」に振り分けられているはずです。たとえば週12時間のシフトのうち4時間が法定時間外なら、月4週で16時間前後が時間外欄に計上されます。ここが0のままなら、通算が反映されていません。
逆に、時間外欄に数字が入っているのに支給欄の時間外手当が0円、というケースもまれにあります。固定残業代(みなし残業)が設定されていて、その範囲内に収まっている場合です。この場合は、固定残業代が何時間分としていくら支給されているかを賃金規程で確認し、超過時間が出たら差額が支給されているかを見ます。
支給欄で確認する項目
支給欄には「時間外手当」「残業手当」「割増賃金」「深夜手当」「休日手当」といった名称の行があります。ここを勤怠欄の時間数と突き合わせます。
検算の手順はこうです。
1つ目に、支給欄の基本給と各手当から、除外できる7種類(家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時の賃金・1か月超の期間ごとの賃金)を抜いた合計を出す。 2つ目に、賃金規程で1か月平均所定労働時間数を確認し、1つ目の金額を割って時間単価を出す。 3つ目に、時間単価に1.25を掛け、勤怠欄の時間外労働時間数を掛ける。 4つ目に、出た金額と支給欄の時間外手当を比較する。
差が数十円なら端数処理の違い。数百円以上なら、除外している手当の範囲か分母を確認します。分母は明細に載らないことが多いので、就業規則または賃金規程を請求してください。労働基準法上、就業規則は労働者に周知する義務があるので、見せてもらえないほうがおかしい状態です。
深夜手当が別行になっている場合は、深夜時間帯の時間数に時間単価の0.25を掛けた額と照合します。時間外と深夜が重なる時間帯は、時間外手当の行に1.25、深夜手当の行に0.25という分け方をする会社が多いです。合計で1.5倍になっていれば正しく処理されています。
明細に見つけたズレをどう扱うか
計算が合わないと分かったとき、最初にすべきなのは請求ではなく確認です。給与担当者に「時間外の計算の基礎に入れている手当と、1か月平均所定労働時間数を教えてほしい」と聞くのが最短ルートです。この2つが分かれば、ほぼすべてのズレは説明がつきます。
私自身、フリーの立場になる前に複数の現場を見てきましたが、割増賃金の誤りは悪意より設定ミスで起きているケースが圧倒的に多いという印象を持っています。以前、新しく作られた手当が給与システムの「割増計算対象」フラグに登録されず、そのまま数か月間ずれていた例に遭遇しました。指摘したら翌月に差額精算されて終わり、という程度の話です。まず聞く、が現実的な初手になります。
説明を受けても納得できず、明らかに法定を下回っている場合は、労働基準監督署に相談する道があります。制度の詳細や相談窓口は厚生労働省のサイトで確認できます。
割増賃金が発生しないケースと、その使いどころ
ここまで「割増賃金が発生する前提」で書いてきましたが、そもそも通算されないケースがあります。金額を最大化する観点では、こちらのほうが重要です。
業務委託・請負は労働時間の通算対象外
労働基準法38条の通算は、労働者として雇用されている場合に適用されます。副業が業務委託契約(請負・準委任)であれば、そもそも労働時間という概念が適用されないため、通算されません。週40時間の枠に縛られず、本業の労働時間とは独立して働けます。
これが、在宅ワークやフリーランス型の副業が支持される構造的な理由です。雇用のアルバイトを掛け持ちすると、週40時間の壁と、勤務先への申告義務と、割増賃金の計算という3つの手間が同時に発生します。業務委託ならその3つがまとめて消えます。
ただし、契約書の名称が業務委託でも、実態として指揮命令を受け、勤務時間や場所を拘束されているなら、労働者と判断される可能性があります。名前ではなく実態で判定されるという点は押さえておいてください。
管理監督者・農業などの適用除外
労働基準法41条により、管理監督者、農業・水産業の従事者、監視断続的労働で許可を受けた者は、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。ただし深夜割増は適用されます。該当する人は限られますが、本業が管理監督者に当たる場合、通算の考え方が変わります。
なお、いわゆる「名ばかり管理職」は管理監督者に当たりません。職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇の4点から実質判断されます。
労働時間の枠を外して単価で稼ぐという発想
週40時間の壁に悩んでいる人の多くは、「時間をどう増やすか」で考えています。しかし割増賃金の計算式を見れば分かるとおり、増える金額は時間単価に比例します。単価1,100円の仕事を4時間割増で働いても、増えるのは5,500円です。
一方、業務委託型の在宅ワークは職種によって単価の幅が広く、スキル次第で時間あたりの成果を上げやすい構造になっています。実際の相場感は職種別に整理されていて、たとえばソフトウェア作成者の年収・単価相場では開発系の単価レンジが、著述家,記者,編集者の年収・単価相場では執筆・編集系の水準が確認できます。自分の現在の時間単価と比べてみると、時間を足す戦略と単価を上げる戦略のどちらが効率的かが判断しやすくなります。
具体的な仕事の中身を知りたい場合は、アプリケーション開発のお仕事が業務内容と必要スキルを整理していますし、需要が伸びている領域としてはAIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事が参考になります。
資格から入りたい人向けには、事務・ライティング系の基礎を固めるビジネス文書検定、インフラ系に進むならCCNA(シスコ技術者認定)といった選択肢があります。資格そのものが単価を上げるわけではありませんが、実績がない段階で提案の説得力を補う材料にはなります。
週40時間を超える働き方を続けるための実務的な手順
割増賃金を正しく受け取りながら掛け持ちを続けるには、順序があります。
手順1:両社の所定労働時間を数字で把握する
雇用契約書または労働条件通知書を出してきて、1日の所定労働時間と週の所定労働日数を確認します。「だいたい週4日、5時間くらい」では計算できません。契約上の数字が必要です。
手順2:後から契約したほうに、先の勤務先の労働時間を申告する
申告先は後から契約したほう。伝える内容は、先の勤務先の所定労働時間と、実際の労働時間の見込みです。多くの会社では副業申請書のフォーマットがあり、そこに記入欄があります。ない場合はメールで残しておくと、後から計算が合わないときの証拠になります。
手順3:どちらが割増を負担するかを、双方で確認しておく
原則は後から契約したほうですが、実務では両社の間で「管理モデル」と呼ばれる仕組みを使うこともあります。これは、先に契約した会社の法定外労働時間と後の会社の労働時間の合計に上限を設け、後の会社は自社の労働時間すべてに割増を付けて払う、という簡便な方法です。この方式なら、日々のやり取りなしで管理できます。
どちらの方式で運用されるかによって、明細に出てくる金額が変わります。管理モデルなら、副業側の労働時間が全部割増対象になるので、単純に時給の1.25倍で計算できます。
手順4:毎月、明細を検算する
前述の4ステップで照合します。慣れれば5分で終わります。3か月連続で一致したら、その後は勤怠欄の時間数だけ確認すれば十分です。
手順5:時間の上限を自分で設ける
法律とは別に、健康と継続性の観点から自分で上限を決めておくことを勧めます。時間外労働の上限規制では、単月100時間未満、複数月平均80時間以内という基準があり、これが健康障害リスクの目安として使われています。掛け持ちでこの水準に近づいているなら、金額の最適化より先に働き方の構造を見直すべき局面です。
在宅で時間を組み立てている人がどう1日を回しているかは、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開が具体的です。限られた時間で成果を出す手法としては在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックが実践的にまとまっています。仕事の探し方そのものを見直すなら在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説が入口になります。
転職を含めた選択肢の整理と、注意すべきポイント
週40時間を超えて掛け持ちする状態が長期化しているなら、そもそもの構造を見直す価値があります。掛け持ちは収入を増やす手段としては即効性がありますが、時間という有限資源を消費し続けるモデルです。
注意点1:割増賃金は社会保険料の対象になる
割増賃金は標準報酬月額の算定に含まれます。時間外が増えれば、翌年度の社会保険料も上がります。額面が増えた割に手取りが伸びない、という感覚はここから来ます。割増単価を計算するときは、そこから社会保険料と所得税が引かれることを前提に見積もってください。
注意点2:申告しないリスクは、金銭面にも及ぶ
副業を隠して掛け持ちした場合、割増賃金を受け取れないだけでなく、就業規則違反として懲戒の対象になる可能性があります。副業自体を禁止する規定は無効になる場合が多いですが、無申告や競業に関する規定は有効に機能します。
注意点3:シフトの重なりと移動時間
移動時間は原則として労働時間に含まれません。しかしA社の終業からB社の始業までが30分しかない、といった組み方だと、遅刻や欠勤のリスクが常につきまといます。割増賃金で数千円積み増すために、無断欠勤で信用を失うのは合理的ではありません。
転職・切り替えを検討する判断軸
判断軸はシンプルです。「掛け持ちで増やしている月額」と「本業の単価を上げたときに増える月額」を比較します。週4時間の割増(時給1,200円なら月約2万4,000円)を得るために月16時間を使っているなら、その16時間をスキル習得に回して本業の単価を15%上げるほうが、1年後の総額では上回る可能性が高いです。
もちろん、目先の資金が必要な局面では掛け持ちが正解です。ただ、それを恒常的な状態にすると、単価を上げる時間が永久に確保できなくなります。
市場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、労働時間の通算という論点でつまずく人には共通点があります。「雇用の枠内で時間を足す」以外の選択肢を検討していない、という点です。
運営者として見てきた限りでは、掛け持ちから抜け出して安定した人の多くは、2社目を雇用契約ではなく業務委託にしています。週40時間の管理から外れるだけでなく、成果に対して報酬が決まるため、慣れるほど時間あたりの単価が上がっていく構造になるからです。最初の数か月は時給換算で見劣りすることも珍しくありませんが、半年から1年のスパンで見ると逆転する例が多い。時間を売る契約と成果を売る契約では、伸びしろの形がまるで違います。
もう一つ、額面ではなく手取りの話をしておきます。仕事の仲介にプラットフォーム手数料が乗る形だと、依頼者が支払った金額の一部が中間で差し引かれてから受け手に届きます。手数料0%で直接つながる形では、同じ予算で依頼者はより多くの量を頼めますし、受け手は同じ仕事でも手取りが厚くなる。この差は1件では小さく見えますが、継続案件になるほど効いてきます。長く続いている人ほど、単発の作業を積み上げるのではなく、「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っている。割増賃金を数千円積む努力と、継続してもらえる関係を1つ作る努力では、後者のほうが翌年の収入に効いてくるというのが、現場を見てきた実感です。
独自データから見た、時間の使い方と単価の関係
在宅ワーク求人サイトに集まる案件の傾向を見ていくと、職種によって「時間を投下すれば比例して増えるタイプ」と「習熟すると時間あたりの成果が跳ねるタイプ」に分かれます。
前者はデータ入力、テープ起こし、単純なリサーチなど。作業量と報酬がほぼ線形で、雇用のアルバイトと構造が似ています。この領域で掛け持ちしている限り、週40時間の壁と割増賃金の計算は永遠についてまわります。
後者はライティング、デザイン、開発、コンサルティングなど。同じ2時間でも、経験を積むほど成果物の質と速度が上がり、次の依頼の単価に反映されます。ここに移行できると、労働時間の通算という論点自体が消えます。
前掲の著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、同じ職種名でも経験年数と担当領域で単価レンジが大きく開くことが分かります。これは、時間ではなく担当できる範囲が単価を決めているということです。
割増賃金の計算方法を正確に理解することは、いま受け取るべき金額を守るために必要です。ただ、それは守りの技術です。攻めの側では、通算されない働き方に軸足を移し、時間単価そのものを引き上げていく。この2つを同時に進めるのが、週40時間の壁に悩む人にとって最も現実的な戦略になります。
まずは今月の給与明細を出して、勤怠欄の時間外時間数と支給欄の時間外手当を、この記事の4ステップで照合してみてください。合っていれば安心材料になりますし、ずれていれば、それは取り戻せる金額です。
よくある質問
Q. Wワークで週40時間を超えた場合、割増賃金はいくらになりますか?
時間単価の25%以上が上乗せされます。時間単価は、割増計算の基礎となる賃金を1か月平均所定労働時間数で割って算出します。たとえば基礎賃金23万円、平均所定163.3時間なら時間単価は約1,408円、割増込みで1,760円です。深夜(22時〜5時)に重なる時間帯はさらに25%が加わり50%増になります。
Q. 割増賃金の計算に含めなくてよい手当はどれですか?
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つだけです。これは限定列挙なので、役職手当や資格手当、精皆勤手当などは基礎に含めます。また家族手当や住宅手当でも、全員一律支給なら除外できず基礎に含める必要があります。
Q. 給与明細のどこを見れば正しく払われているか分かりますか?
勤怠欄の「時間外労働時間数」と、支給欄の「時間外手当」を突き合わせます。支給欄の合計から除外できる7手当を抜いた額を、賃金規程の1か月平均所定労働時間数で割って時間単価を出し、1.25を掛けて時間数を乗じた金額と比較してください。差が数十円なら端数処理の範囲、数百円以上なら基礎賃金か分母の設定を確認します。
Q. 副業が業務委託なら週40時間の通算はどうなりますか?
業務委託や請負は労働時間の通算対象外なので、本業の労働時間と合算されません。割増賃金も発生せず、勤務先への時間申告も不要になります。ただし契約書の名称が業務委託でも、実態として指揮命令を受け勤務時間や場所を拘束されている場合は労働者と判断され、通算対象になる可能性があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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