翻訳の報酬が支払われないときはまず証拠を固めて窓口へ相談

中西 直美
中西 直美
翻訳の報酬が支払われないときはまず証拠を固めて窓口へ相談

この記事のポイント

  • 翻訳の報酬未払いに遭った在宅フリーランス向けに
  • 最初の72時間でやること
  • 発注書やCATツールのログを使った証拠の残し方

納品したのに、入金がない。問い合わせても返事が来ない。翻訳の報酬未払いは、在宅で働くフリーランスの方からのご相談で、ここ数年ずっと上位にあるテーマです。

最初にお伝えしたいことがあります。未払いに遭ったのは、あなたの見る目がなかったからではありません。翻訳という仕事の取引の形そのものに、未払いが生まれやすい構造があります。だから、必要なのは反省ではなく手順です。

この記事では、未払いに気づいた直後にやるべきこと、翻訳ならではの証拠の残し方、督促をどの順番で進めるか、無料で使える相談先、海外クライアントの場合の考え方、そして確定申告での扱いまでを順に整理します。大丈夫です。打てる手はまだ残っています。

翻訳の報酬未払いは、なぜ起きやすいのか

「自分の相手だけが特別ひどかったのでは」と感じている方が多いのですが、実際にはそうではありません。翻訳の取引には、未払いが起きやすい条件がいくつもそろっています。

翻訳の仕事は3つの経路に分かれ、リスクの高さが違う

在宅で翻訳の仕事を受ける経路は、大きく3つあります。

1つ目は、クラウドソーシングサービス経由です。仕事の募集から納品、報酬の受け取りまでがプラットフォーム上で完結する形。

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この形の利点は、仮払いの仕組みがあることです。作業を始める前にクライアントが運営会社に代金を預けるので、クライアントが逃げても報酬は守られます。手数料が16.5%から20%かかりますが、その一部は回収の保証料だと考えると納得しやすくなります。

2つ目は、翻訳会社との継続的な取引です。トライアルに合格して登録翻訳者になり、案件ごとに発注を受ける形。国内の翻訳会社であれば支払いは比較的安定していますが、会社の規模が小さいと資金繰りの影響を受けます。

3つ目は、直接取引です。事業会社や個人から直接依頼を受ける形。単価は最も高くなりやすい代わりに、契約書がないまま口約束で進むことが多く、未払いのリスクも上がります。

未払いの相談が集中するのは、2つ目の中でも海外の翻訳会社との取引、そして3つ目の直接取引です。

AI翻訳の普及が「値切り」の圧力を生んでいる

もうひとつ、市場の変化にも触れておきます。機械翻訳の精度が上がったことで、翻訳の仕事は「ゼロから訳す仕事」から「機械の出力を直す仕事」に移りつつあります。ポストエディットと呼ばれる作業です。

この変化は、単価の考え方を揺らしました。「機械で下訳ができているのだから、この単価で十分でしょう」という交渉が増え、納品後に「思ったより手を入れていないようだ」と言われて減額を求められるケースも出ています。

実務翻訳の単価は、英日で原文1ワードあたり8円から20円、日英で原文1文字あたり8円から15円程度が目安です。分野と難易度によって幅があります。この相場を知らないまま交渉に入ると、根拠なく下げられたときに反論できません。

「悪意」より「資金繰り」で止まることが多い

知っておいていただきたいのは、未払いの多くは最初からだます気で始まっているわけではないということです。

小さな翻訳会社や制作会社は、売上の波が大きく、月によって現金が尽きます。そこで真っ先に後回しにされるのが、契約書もなく、催促もしてこない、おとなしい取引先です。声を上げる相手から順に支払われるので、黙って待っている人が最後に回されます。

これは冷たい話ですが、希望でもあります。悪意ではなく順番の問題であるなら、こちらが「支払いを待っている取引先である」と明確に見せることで、順番は前に来ます。実際、文面を整えて期限を明記した連絡を1通送っただけで入金された例は、珍しくありません。

在宅であることが、声を上げにくさを生む

在宅で翻訳をしていると、クライアントと顔を合わせる機会がほとんどありません。取引はメールとファイル送付だけ、相手の顔も声も知らない。この距離感が、督促のハードルを上げます。

こういうご相談がよくあります。「催促したら次から仕事が来なくなるのではないか」。この不安は、在宅で働く方ほど強く出ます。外に出ていれば誰かに愚痴をこぼせますが、自宅にひとりでいると、その不安を頭の中で何度も反芻することになります。

でも、はっきり申し上げます。約束の期日に支払わない相手は、すでに関係を壊しています。壊したのは相手であって、あなたが催促したからではありません。ここを取り違えないでください。

未払いに気づいてからの72時間でやること

支払期日が過ぎたと気づいたときが分かれ道です。感情が大きく揺れている時期でもあるので、やることを3つに絞ります。

最初の24時間は「記録を凍結する」

怒りにまかせて長文を送りたくなる気持ちは、よく分かります。でも、先にやることがあります。証拠の保全です。

トラブルが表面化すると、相手がプロジェクト管理システムのアカウントを停止したり、共有フォルダの権限を切ったり、チャットの履歴を削除したりすることがあります。相手のシステム上にしかない情報が消えると、後から取り戻すのは非常に困難です。だから最初の24時間は、記録を自分の手元に固定する作業に充ててください。

翻訳の場合、特に重要なのが発注書と納品ファイルです。詳しい方法は次の章で書きます。

48時間以内に「事実だけの確認連絡」を1通送る

証拠を確保したら、次は連絡です。コツは、感情を書かないこと。責める言葉を1文字も入れず、事実と数字だけで組み立てます。

書くのは5点だけです。案件名または発注番号、納品日、対象の分量、金額、当初の支払期日。最後に「ご確認をお願いいたします」と添えます。相手に逃げ道を作らないという意味では、この事務的な文面が最も強い。感情的な文章は、相手に「面倒な人だ」というラベルを貼らせ、無視する言い訳を与えてしまいます。

電話やオンライン会議で話した場合も、必ず直後に「本日ご確認いただいた件、○月○日までにお振込みいただけるとのことでした」とメールで送り、文字にして残してください。口頭のやり取りは証拠になりません。

72時間以内に「回収の見通し」を自分で決める

3日目にやっていただきたいのは、線引きです。いつまで待つのか、その期限を過ぎたらどの手段に進むのかを、先に自分で決めておきます。

これは実務的な理由だけでなく、心の負担を減らすためでもあります。終わりの見えない待機がいちばん人を疲れさせます。「今月末までに入金がなければ内容証明を送る」と決めてしまえば、それまでの日々は待つ時間ではなく準備の時間に変わります。同じ日数でも、消耗の度合いがまったく違います。

以前、海外の翻訳会社からの入金が4か月止まっているという方のお話を伺ったことがあります。その方は毎週催促のメールを送り、返事が来ないたびに落ち込むことを繰り返していました。回収の手順そのものより先に、「次はいつ、何をするか」を紙に書き出していただいたところ、2週間後には「毎日そのことを考えなくて済むようになった」とおっしゃっていました。手順を決めることは、心を守ることでもあります。

翻訳ならではの証拠の残し方

未払い対応の勝負は、ここでほぼ決まります。証拠がそろっている相手には、支払う側も「この人は放置できない」と判断します。

最優先で押さえる7点

1つ目は、発注書または発注メールです。案件名、分量、単価、合計金額、納期、支払期日が書かれたもの。翻訳会社との取引では発注書が発行されることが多いので、必ず保存してください。

2つ目は、納品の事実が分かるもの。納品メールの送信済みフォルダ、ファイル転送サービスの送信記録、クライアントからの受領確認。3つ目は、納品ファイルそのもの。翻訳済みファイルは、あなたの手元にも必ず残しておいてください。

4つ目は、作業ログです。CATツールを使っている場合、プロジェクトの作成日時、翻訳した分節数、作業時間が記録されています。これは「確かに作業した」ことを示す強力な証拠になります。5つ目は、請求書の控えと送付日時。6つ目は、督促のやり取りすべて。7つ目は、相手の身元情報です。会社名、所在地、代表者名、担当者名、電話番号。

このうち、在宅の翻訳者が落としがちなのが7つ目です。担当者のメールアドレスしか知らない、会社の住所を確認したことがない、というケースは実際に多い。相手の登記上の所在地が分からないと、内容証明を送ることすらできません。取引開始時に会社情報を確認しておくのは、疑うことではなく当たり前の事務手続きです。

メールは「スレッドごと」保存する

チャットツールやプロジェクト管理システムでやり取りしている場合、相手側の操作で履歴が見られなくなることがあります。重要な合意が成立したタイミングで、その都度スクリーンショットを撮っておいてください。

メールの場合も、受信箱に置いたままにせず、案件ごとのフォルダに分けて保存し、定期的にローカルへエクスポートしておくと安心です。クラウドメールのアカウントに何かあったときに、丸ごと失う事態を避けられます。

分量の記録を客観化する

翻訳の報酬は、原文の文字数やワード数で計算されます。つまり、分量が争点になり得ます。

対策は、受注時点で分量を確定させ、その数字を相手と共有しておくことです。「本件、原文12,480ワード、単価12円、合計14万9,760円で承ります」と書いて送り、相手の同意を得る。この一往復があれば、後から「そんな分量ではなかった」と言われる余地がなくなります。

原文ファイルも必ず保管してください。分量を再計算できる状態にしておくことが大切です。

記録は時系列表にまとめる

証拠のファイルがバラバラにあるだけでは、相手にも相談窓口にも伝わりません。日付、出来事、金額、証拠ファイル名を1行ずつ並べた表を作ってください。

「2026年4月8日 発注 12,480ワード 単価12円 発注書PDF」「2026年4月22日 納品 納品メール」「2026年5月31日 支払期日 入金なし」「2026年6月3日 確認連絡 メール」という形です。この表があると、相談先への説明が5分で済み、内容証明の文面もほぼそのまま組み立てられます。

督促は4段階で進める

いきなり法的手続きに飛ぶ必要はありません。段階を踏むほうが、支払う理由が積み上がっていきます。

段階1 事務連絡(期日から1週間以内)

最初の連絡は、事故やミスの可能性を前提にした事務連絡にします。振込先の入力ミス、経理担当者の失念、請求書の受領漏れは実際によく起きます。

「4月22日にご納品した案件(発注番号○○)、合計14万9,760円につきまして、お支払期日の5月31日を過ぎておりますがご入金の確認が取れておりません。行き違いでしたら申し訳ございません。ご確認のうえ、ご連絡いただけますでしょうか」。これで十分です。この段階で入金される割合は決して低くありません。

段階2 期限を切った催告(期日から2週間から3週間)

反応がない、あるいは「確認します」のまま止まっている場合は、期限を明示した2通目を送ります。

「○月○日までにお振込みいただけますようお願い申し上げます。同日までにご入金またはご連絡をいただけない場合は、記録の残る方法での書面通知に切り替えさせていただきます」。この一文が入るだけで、相手の受け取り方は変わります。脅しではなく手順の予告なので、書いても関係が悪化することはありません。

ここまでは無料でできます。費用が発生するのは次からです。

段階3 内容証明郵便(期日から1か月以降)

内容証明郵便は、いつ誰にどんな文書を送ったかを郵便局が証明する仕組みです。法的な強制力はありませんが、効果は2つあります。相手に本気だと伝わること、そして消滅時効の完成を6か月猶予できることです。

費用は、文書1枚に配達証明を付けて合計1,500円前後が目安です。窓口に持参する方法と、電子内容証明をオンラインで送る方法があります。

書き方の要点は4つ。感情を書かないこと、金額と根拠を明確にすること、支払期限を具体的な日付で指定すること、期限後に取る手段を書いておくこと。自分で書いて問題ありません。専門家に依頼すると数万円かかるので、金額が小さい場合は費用倒れになります。

段階4 支払督促と少額訴訟

支払督促は、簡易裁判所に申し立てると、裁判所から相手に支払いを命じる書面が送られる制度です。相手が2週間以内に異議を出さなければ、強制執行につながる効力を持ちます。書類審査だけなので出向く回数が少なく、手数料も通常訴訟の半額です。

少額訴訟は、60万円以下の金銭請求に使え、原則1回の審理で判決が出ます。翻訳1案件の未払い額はこの範囲に収まることが多く、現実的な選択肢です。手数料は請求額に応じて決まり、10万円の請求なら1,000円程度です。

ただ、正直に申し上げると、回収額が数千円から1万円台の場合、時間と気力のコストが見合わないことは多いです。そのときは無理に進めず、記録だけ残して次に進むという判断も、逃げではなく立派な経営判断です。

フリーランス新法という後ろ盾を知っておく

2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法は、在宅で働く翻訳者にとって大きな味方です。

発注者に課された2つの義務

ひとつは、取引条件の明示義務です。業務委託をする発注者は、業務内容、報酬額、支払期日などを書面または電子メールなどの方法で明示しなければなりません。つまり、口約束だけで発注する運用は法律に反しています。

もうひとつは、報酬支払期日のルールです。発注者は、成果物を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに報酬を支払わなければなりません。「翌々々月末払い」のような長すぎるサイトは、この規定に照らして問題があります。

この法律の運用は公正取引委員会厚生労働省が担っています。相手が事業者としてあなたに業務を委託していた場合、この枠組みが使えます。

「品質が悪い」は不払いの理由になりにくい

翻訳の未払いで最も多い言い分が、「訳質が期待と違った」というものです。

ただ、契約時に品質基準が明示されておらず、修正の機会も与えられずに一方的に全額不払いとするのは、正当な理由として認められにくい。フリーランス新法でも、受領した成果物について正当な理由なく報酬を減額することは禁止されています。

対策として有効なのは、納品時に「ご確認のうえ、修正のご要望があれば○月○日までにご連絡ください」と一文添えることです。修正の機会を提示した記録が残るので、後から品質を理由にされたときに反論しやすくなります。

海外クライアントの未払いにどう向き合うか

翻訳の仕事は国境を越えやすく、海外の翻訳会社と取引している方も多い。ただ、未払いになったときの難易度は国内と大きく違います。

現実的な回収可能性を先に見積もる

海外の事業者に対して日本の裁判所の手続きを使うのは、費用と時間の面で現実的でないことがほとんどです。金額が数十万円規模でない限り、訴訟は選択肢から外れます。

代わりに有効なのは、業界内での評判に働きかける方法です。翻訳者向けのプラットフォームには、支払い実績を評価する仕組みがあります。未払いの事実を記録として残すことは、他の翻訳者を守ることにもつながりますし、相手にとっても無視しにくい圧力になります。

予防が唯一の現実解

海外案件では、予防に力を入れるしかありません。初回取引では分量を絞る、支払条件を発注前に文書で確認する、決済手段と通貨を明確にしておく、支払いサイトが60日を超える相手は避ける。この4つを徹底してください。

また、送金手数料と為替の扱いも先に決めておきます。「手数料はどちらが負担するのか」を曖昧にしたまま進めると、入金額が想定より少なくなり、それ自体がトラブルの種になります。

無料で使える相談先

ひとりで抱え込む必要はありません。使える窓口を整理します。

フリーランスとして働く人が発注者との間で抱えるトラブルについては、弁護士に無料で相談できる窓口が国の事業として運営されています。報酬の支払遅延、一方的な減額、契約内容の不明確さといった相談に対応しており、電話やオンラインでの相談が可能です。

自治体の無料法律相談も有効です。多くの市区町村で月に数回、1回30分程度、予約制で実施されています。方針を決めるために使うと効率的で、時系列表を持参すれば具体的な助言が得られます。

収入と資産が一定の基準以下であれば、法テラスの民事法律扶助を使って無料相談を受けたり、弁護士費用の立替えを受けたりできます。在宅ワークが主な収入源で所得が高くない方は、対象になる可能性があります。

弁護士に正式に依頼するかどうかは、請求額と費用のバランスで決まります。着手金と報酬を合わせて数万円から十数万円かかるのが一般的なので、請求額が30万円を超えてくると検討する価値が出てきます。それ未満なら、支払督促や少額訴訟を自分で進めるほうが手元に残る金額は大きくなります。

なお、翻訳の業務委託は雇用契約ではないため、賃金未払いを扱う労働基準監督署の管轄からは原則として外れます。ここは誤解が多い点なので、覚えておいてください。

未払いを防ぐ仕組みをつくる

ここからは、これから先の話です。未払いは運ではなく、仕組みで減らせます。

受注前に確認する7項目

新しい取引先と話を始めたら、次の7つを埋めてから作業に入る習慣をつけてください。

相手の正式名称と所在地。担当者名と連絡先。案件の分量(ワード数または文字数)。単価と合計金額。納期。支払期日と支払方法。修正対応の範囲と回数。

これを1通のメールにまとめ、「以下の内容で認識に相違ないかご確認ください」と添える。相手が「はい」と返せば、それが合意の記録になります。契約書を作らなくても、この往復があるだけで立場がまったく違います。

トライアルの見分け方

翻訳の世界には、トライアルという慣行があります。これ自体は正当なものですが、悪用されることもあります。

正当なトライアルは、分量が400ワード程度までで、実案件とは別の課題文が使われます。一方、実際の納品物と同じ内容を数千ワード分「トライアル」として無償で提出させる募集は、無償で成果物を得ようとしている可能性があります。

分量が多すぎるトライアル、締切が異常に短いトライアル、内容が明らかに実務案件そのものであるトライアル。この3つに当てはまる場合は、一度立ち止まってください。

こうした相談は法律相談の場にも数多く寄せられています。

【相談の背景】 こんにちは。 私はフリーランスとしてIT企業の営業を在宅でさせていただいてました。 今まではきちんと支払われていたのですが、今月の給料が振り込まれません。 催促するとこの日に払うと言うのですが、その日を過ぎても支払いが無い状況です。支払いするという気を見せながら未払い、かなり悪質に感じます。 LINE上にて仕事のやり取り、報告をしてい... 出典: bengo4.com

注目していただきたいのは、やり取りがメッセージアプリだけで行われている点です。相手が履歴を削除できる環境で取引していると、証拠が一瞬で消えます。連絡手段はメールを基本にし、重要な合意はメールで確認し直す。この習慣だけで、リスクは大きく下がります。

初回は小さく試す

初めての相手との取引では、量を絞ってください。3万ワードの依頼なら、まず5,000ワードだけ納品して入金を確認し、それから残りに進む。納期がタイトだと言われても、実績のない相手に大量納品するリスクのほうが大きい。断る勇気を持ってください。

作業時間の記録も習慣にしておくと、単価の妥当性を数字で判断できるようになります。在宅作業は集中が途切れやすいので、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで紹介されている時間の区切り方が役に立ちます。家事や育児と並行している方は、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開で作業時間の確保の仕方を確認しておくと組み立てやすくなります。

確定申告と源泉徴収の扱い

意外と質問が多いのが税金です。ここを誤解していると、受け取っていないお金に税金がかかることがあります。

売上は「入金日」ではなく「納品日」で立つ

事業所得として申告する場合、原則は発生主義です。つまり、成果物を引き渡した日に売上が立ちます。入金がその年のうちになくても、売上として計上することになります。

そのため、未払いのまま年をまたぐと、受け取っていないお金に対して所得税が発生する形になります。これが「取られ損」に感じられる部分です。

回収不能が確定したら貸倒れとして処理できる

回収できないことが確実になった場合は、貸倒損失として必要経費に算入できます。相手が倒産した、破産手続きが終わった、取立てに要する費用のほうが債権額より大きいなど、一定の要件を満たす必要があります。

翻訳料は、国内の事業者から個人に支払われる場合、原稿料などと同様に源泉徴収の対象になることがあります。支払われるはずだった金額と、源泉徴収された金額の関係も含めて、国税庁の解説を確認してください。判断に迷う場合は、確定申告期の無料相談会や税務署の窓口で相談するのが確実です。「未払いだから申告しなくていい」と自己判断するのが一番危険です。

副業として翻訳をしている方は、給与所得以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。会計ソフトを使っていれば、売掛金の残高がそのまま「まだもらっていないお金」の一覧になり、督促の資料としても機能します。

独自データの考察と、市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークの仕事情報を扱ってきた立場から、見えていることを書きます。

未払いが起きる案件には前兆がある

蓄積された相談内容を横断して見ると、未払いに至った取引には共通する前兆があります。

ひとつは、金額の話を後回しにされること。「まず訳してみてください、単価は後で相談しましょう」という進め方をする相手は、支払い段階でも同じように曖昧にしようとします。ふたつめは、連絡手段が個人のメッセージアプリ1本しかないこと。会社のメールアドレスを教えない相手は、いつでも消えられる状態を保っています。3つめは、納期だけが妙に急かされること。判断する時間を与えないのは、こちらに検討させたくないからです。

この3つのうち2つ以上が当てはまる依頼は、受ける前に一度立ち止まる価値があります。

手数料の構造を知ると、取引の見え方が変わる

在宅の仕事を仲介するサービスは、報酬から一定割合の手数料を引きます。この手数料には、集客と決済代行、そして仮払いによる回収保証という価値が含まれています。

一方で、仲介手数料が乗らない直接取引には別の合理性があります。手数料0%の場で成立する取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側は手取りが厚くなる。同じ金額が動いても、途中で目減りしないぶん双方に残るものが増える構造です。

20年この市場を見てきた立場から言えば、直接取引で長く続いている人には、はっきりした共通点があります。単発の作業をこなすことより、「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っているのです。用語集の作成を自分から提案する、原文の不明点を着手前にまとめて確認する、請求書を期日どおりに出す。こうした地味な積み重ねが、結果として未払いを遠ざけます。支払う側から見て、記録が整っていて連絡が丁寧な相手は、支払いを後回しにしづらい相手でもあるからです。

運営者として見てきた限りでは、未払いを一度経験した方が、その後に取引の質を上げていく例は非常に多い。条件確認を定型文にする、初回は小さく試す、記録を必ず残す。これらは防御であると同時に、依頼する側から見れば「仕事の進め方がしっかりしている人」というシグナルになります。守りの工夫が、そのまま評価につながっていきます。

収入の入口を複線化する

翻訳一本で在宅の収入を組み立てると、機械翻訳の普及による単価変動と未払いリスクの両方を正面から受けることになります。実際、多くの方が隣接する仕事を並行しています。

文章を書く仕事は、翻訳で培った日本語力がそのまま活きます。単価の目安は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種ごとに確認できます。ビジネス文書の作成力を客観的に示したい場合は、ビジネス文書検定が実務に直結する内容で取り組みやすい選択肢です。

AIツールの活用を業務に落とし込む支援も需要が広がっています。機械翻訳の運用に詳しい翻訳者は、この領域と相性がいい。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、どんな依頼が発生しているかが具体的に整理されています。マーケティング寄りの領域についてはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事が参考になります。

技術方面に踏み込む道もあります。開発の仕事は在宅で完結しやすく、アプリケーション開発のお仕事で案件の種類と必要なスキルが分かります。単価の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認でき、ネットワーク分野からの入口としてはCCNA(シスコ技術者認定)が代表的です。在宅で成立する仕事の全体像は、スキル別に整理された在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングで確認できます。

もちろん、いますぐ全部やる必要はありません。未払いで気持ちが削られているときに、新しいことを始めるのは負担が大きすぎます。まずは目の前の1件を、この記事の手順どおりに進めてください。証拠を固めて、事実だけの連絡を1通送る。そこまでできれば、状況は必ず動き始めます。

あなたが訳した文章には、ちゃんと値段がついています。その対価を求めることは、わがままでも図々しさでもありません。当たり前の権利です。ひとりで抱えず、使える窓口を使いながら、少しずつ進めていきましょう。

よくある質問

Q. 翻訳の報酬が支払われないとき、最初にやるべきことは何ですか?

証拠の保全です。発注書、納品メール、納品ファイル、CATツールの作業ログ、相手の会社情報を自分の手元に固定してください。そのうえで、案件名、納品日、分量、金額、支払期日だけを書いた事務的な確認連絡を1通送ります。感情を書かず、事実だけで組み立てるのが回収率を上げるコツです。

Q. 「訳質が悪い」と言われて報酬を減額されました。応じるべきですか?

契約時に品質基準が明示され、修正の機会が与えられていたかが分かれ目です。基準の提示も修正依頼もないまま一方的に減額するのは、フリーランス新法が禁じる不当な減額に当たる可能性があります。納品時に「修正のご要望があれば○月○日までにご連絡ください」と添えておくと、後で反論しやすくなります。

Q. 海外の翻訳会社から支払われない場合、回収できますか?

日本の裁判手続きを海外事業者に使うのは費用と時間が見合わないことがほとんどで、数十万円規模でなければ現実的ではありません。翻訳者向けプラットフォームの支払い評価に事実を記録する方法が有効です。海外案件は予防が中心になるため、初回は分量を絞り、支払条件を発注前に文書で確認してください。

Q. 未払いのまま年をまたいだ場合、確定申告ではどう扱いますか?

事業所得は原則として発生主義なので、入金がなくても納品した時点で売上に計上します。回収不能が確定した場合は貸倒損失として必要経費に算入できますが要件があるため、国税庁の解説を確認してください。翻訳料は源泉徴収の対象になる場合があるので、支払調書の内容も併せて確認しましょう。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月6日最終更新:2026年9月12日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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