派遣社員と業務委託の違い|指示の受け方と報酬の決まり方で見分ける

前田 壮一
前田 壮一
派遣社員と業務委託の違い|指示の受け方と報酬の決まり方で見分ける

この記事のポイント

  • ✓派遣社員と業務委託の違いは
  • ✓誰に雇われ誰の指示を受けるか
  • ✓報酬が何に対して支払われるかで見分けられます

派遣社員と業務委託の違いは、働く側から見ると2つの問いで見分けられます。1つ目は「誰に雇われ、誰の指示を受けて働くのか」、2つ目は「報酬が何に対して支払われるのか」です。派遣社員は派遣会社に雇われ、派遣先の会社の指示を受けて働き、働いた時間に応じて賃金を受け取ります。業務委託は誰にも雇われず、引き受けた仕事を自分のやり方で進め、仕事の完成や作業の遂行に対して報酬を受け取ります。

「同じ会社で働くのに、派遣と業務委託のどちらで契約するか選べと言われた」「業務委託の契約なのに、毎日細かく指示されて不安だ」と感じて調べている人に向けて、この記事では厚生労働省と公正取引委員会の資料をもとに、2つの働き方の違いを整理します。契約の名前ではなく、実際の働き方で判断されるという点が、この話の核心です。

一番の違いは「誰と契約し、誰の指示を受けるか」

厚生労働省は、労働者派遣と請負の違いを次のように説明しています。請負は業務委託の代表的な形の1つです。

労働者派遣事業とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させることを業として行うことをいいます。 請負とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)ですが、労働者派遣との違いは、請負には、注文主と労働者との間に指揮命令関係を生じないという点にあります。 出典: 厚生労働省 労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド

ここで出てくる言葉を言い換えます。派遣元事業主とは派遣会社のこと、派遣先とは実際に働きに行く会社のことです。指揮命令とは、仕事の進め方や手順、時間の使い方について具体的に指示し、管理することを指します。

派遣社員の場合、関係者は3者です。派遣社員は派遣会社と雇用契約(労働契約)を結び、派遣会社と派遣先の会社が労働者派遣契約を結びます。派遣社員は派遣先で働き、派遣先から仕事の指示を受けますが、雇い主はあくまで派遣会社です。

業務委託の場合、関係者は基本的に2者です。仕事を頼む会社(発注者)と、仕事を引き受ける人(受注者)が業務委託契約を結びます。受注者は誰にも雇われておらず、発注者から仕事の進め方について指揮命令を受けません。発注者が決めるのは、何を、いつまでに、いくらで仕上げるかであって、どういう手順で進めるかは受注者に任されます。

厚生労働省のパンフレットは、派遣で働く場合の役割の分担を次のように整理しています。労働契約を結ぶのも、賃金を支払うのも、社会保険や労働保険の手続きをするのも、年次有給休暇を与えるのも派遣会社です。勤務先と、仕事上の指揮命令を行うのは派遣先の会社です。

指示の受け方で見分ける

実際の働き方の中で、派遣か業務委託かを見分けやすいのは、指示の受け方です。次のような場面で比べてみると違いがはっきりします。

作業の手順

派遣社員は、派遣先の担当者から「この資料をこの手順で作ってください」「まずこの作業を優先してください」と具体的な指示を受けて働きます。これは派遣という働き方の前提であり、問題はありません。

業務委託の受注者は、成果物の仕様や納期は決められても、作業の手順は自分で決めます。発注者が毎日の作業を細かく割り振り、手順を指示するようになると、業務委託という契約の形と実態が食い違ってきます。

働く時間と場所

派遣社員は、派遣先の始業・終業の時刻や休憩時間に合わせて働きます。勤務時間や残業の管理は、派遣会社と派遣先が分担して行います。

業務委託の受注者は、原則として働く時間と場所を自分で決めます。打ち合わせの日時を決めたり、作業場所の都合で発注者の事務所を使ったりすることはありますが、「毎日9時に出社し、18時まで席にいること」と時間で拘束されるのは、業務委託の典型的な形ではありません。

仕事を断れるかどうか

派遣社員は、雇用契約と就業条件の範囲内であれば、派遣先から指示された仕事を行う立場にあります。

業務委託の受注者は、契約で決めた範囲を超える仕事の依頼を受けたとき、引き受けるかどうかを自分で判断できます。追加の仕事を引き受ける場合は、報酬や納期を改めて取り決めるのが本来の形です。

報酬の決まり方で見分ける

もう1つの見分け方は、報酬がどう決まり、どう支払われるかです。

派遣社員が受け取るのは、雇用の対価としての賃金です。多くの場合は時給で決まり、働いた時間に応じて派遣会社から支払われます。雇用なので、最低賃金法が適用され、法定の労働時間を超えて働けば割増賃金が支払われます。給与からは所得税や社会保険料が差し引かれます。

厚生労働省のパンフレットは、派遣先が派遣会社に支払う派遣料金と、派遣会社が派遣社員に支払う賃金の差をマージンと呼び、マージンには派遣社員の福利厚生費や教育訓練費なども含まれていると説明しています。そのため、マージン率は低いほどよいというわけではなく、他の情報と組み合わせて評価することが重要だとしています。派遣会社のマージン率や教育訓練の取り組みは、派遣会社のホームページなどで確認できます。

業務委託の受注者が受け取るのは、仕事の完成や作業の遂行に対する報酬です。成果物1件あたり、1か月あたり、作業時間あたりなど、決め方は契約によってさまざまです。受注者は請求書を発行し、発注者が報酬を支払います。働いた時間が予定より長くなっても、契約で決めた報酬が自動的に増額されるわけではありません。

報酬の額は、発注者と受注者の交渉で決まります。受注者は自分の技能や実績をもとに単価を提示できる一方で、必要な経費や税金、社会保険料は自分で負担することになります。同じ時間あたりの金額でも、派遣の時給と業務委託の報酬をそのまま比べると、手元に残る額の見通しを誤ります。

同じ仕事で比べると違いが分かる

抽象的な説明だけでは分かりにくいので、同じ仕事を派遣と業務委託で受けた場合を比べてみます。

例1 会社の経理事務を手伝う仕事

派遣で働く場合、派遣社員は派遣先の経理部に出勤し、担当者から「今日はこの伝票を入力してください」「月末までにこの照合を終えてください」と指示を受けて作業します。勤務時間は派遣先の就業時間に合わせ、残業をすれば割増賃金が支払われます。使うパソコンや会計ソフトは派遣先が用意します。

業務委託で受ける場合、受注者は「毎月の記帳と月次の試算表の作成」といった仕事の範囲と納期、報酬を発注者と取り決めます。資料を受け取ったあと、いつ、どこで、どの順番で作業するかは受注者が決めます。作業に何時間かかっても報酬は契約どおりで、早く終われば空いた時間を他の仕事に使えます。

例2 Webサイトの更新作業

派遣で働く場合は、派遣先の担当者の指示に従って、ページの修正や画像の差し替えを行います。どのページから手を付けるかは担当者が決めます。

業務委託で受ける場合は、「月10ページまでの更新作業」や「新しい特集ページ1本の制作」といった単位で契約し、仕様に沿って仕上げたものを納品します。作業のやり方や使う道具は受注者が選びます。

このように、同じ仕事でも、指示の受け方と報酬の決まり方が違えば、働き方はまったく別物になります。どちらの形で働いているのかを契約書と実態の両方で確かめておくことが、トラブルを防ぐ第一歩です。

守られるルールの違い

派遣社員と業務委託では、働く人を守る法律の仕組みが大きく異なります。

派遣社員は労働者なので、労働基準法などの労働関係の法律で守られます。厚生労働省のパンフレットは、派遣でも労働基準法、男女雇用機会均等法などの労働関係法令が適用され、年次有給休暇や育児休業を取得できると説明しています。社会保険や労働保険の加入手続きは派遣会社が行い、加入していない場合は派遣会社から理由が通知されます。仕事中のケガには、雇用されている人の労災保険が適用されます。

さらに、派遣社員には、労働者派遣法による保護があります。派遣社員の待遇については、派遣先の社員との均等・均衡を図る方式か、派遣会社と労働者の代表との労使協定による方式のいずれかで決める、同一労働同一賃金の仕組みが設けられています。厚生労働省は、令和8年10月1日から派遣労働者の同一労働同一賃金に関する改正が行われると案内しており、詳しい内容は厚生労働省のページで確認できます。

業務委託の受注者は、原則として労働者ではないため、労働基準法の保護は受けません。その代わり、個人で仕事を受ける人を守るために、2024年11月1日にフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。公正取引委員会によると、発注事業者は、業務委託をしたら直ちに書面またはメールなどで取引条件を明示しなければならず、報酬の支払期日は受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で定めることとされています。1か月以上の業務委託では、報酬の減額や買いたたき、不当なやり直しなど7つの行為が禁止されています。

仕事中のケガへの備えについては、厚生労働省によると、令和6年11月1日からフリーランスが労災保険の特別加入の対象になりました。特別加入とは、労働者ではない人が任意で労災保険に加入できる仕組みのことで、保険料は自分で負担します。

業務委託には請負・委任・準委任の形がある

業務委託という言葉は、法律で決まった契約の名前ではなく、いくつかの契約の形をまとめて呼ぶ言い方です。代表的なのは請負と、委任・準委任です。

請負とは、仕事の完成を約束する契約のことです。厚生労働省のガイドが民法第632条を引いて説明しているとおり、労働の結果としての仕事の完成を目的とします。Webサイトの制作、記事の執筆、アプリの開発のように、完成した成果物を納める仕事がこれに当たります。成果物が完成しなければ報酬を請求できないのが原則です。

委任とは、法律に関わる事務の処理を任される契約のこと、準委任とは、法律に関わらない事務の処理を任される契約のことです。準委任では、仕事の完成ではなく、任された作業を行うこと自体が約束の中心になります。システムの運用保守、事務作業の代行、相談対応など、決まった期間に作業を行う仕事に多い形です。作業時間に応じて報酬を決める契約も、準委任として結ばれることがあります。

どの形であっても、受注者が発注者から指揮命令を受けないという点は共通しています。準委任の契約で作業時間に応じた報酬を受け取る場合でも、作業の手順や時間を発注者が管理すれば、実態は雇用や派遣に近づきます。

自分の契約がどの形なのかは、契約書の表題や、報酬の支払い条件の書き方で確かめられます。成果物の納品と検収が条件になっていれば請負、作業期間や作業時間に応じて支払われるなら準委任の可能性が高いと考えられます。

派遣で働くときの決まり

派遣という働き方には、派遣社員を守るための決まりがいくつもあります。厚生労働省のパンフレットから、働く側が知っておきたいものを整理します。

派遣が禁止されている業務

建設業務、港湾運送業務、警備業務、医療関係業務(一部を除く)は、派遣が禁止されています。

派遣先による事前面接の禁止

派遣先の会社が、派遣社員を指名することはできません。派遣が始まる前に面接を行うことや、履歴書を送らせることは禁止されています。ただし、派遣先に直接雇用されることを予定した紹介予定派遣の場合や、本人が希望する場合は認められています。

元の勤務先への派遣の禁止

正社員や契約社員、アルバイトとして働いていた会社に、辞めてから1年以内に派遣社員として働くことはできません。

期間制限

派遣には、事業所単位と個人単位の期間制限があります。派遣先の同じ事業所が派遣を受け入れられる期間は原則3年が限度です。同じ派遣社員が、派遣先の同じ組織単位(課などを想定)で働ける期間も3年が限度です。

雇用安定措置

同じ組織単位で3年続けて派遣される見込みがある派遣社員に対して、派遣会社は、派遣先への直接雇用の依頼、新しい派遣先の提供、派遣会社での無期雇用などの措置をとることになっています。

これらの決まりは、業務委託にはありません。業務委託では、期間の上限も、雇用を安定させるための措置もなく、契約の更新や終了は当事者の合意で決まります。ただし、フリーランス法では、6か月以上の業務委託を解除したり更新しなかったりする場合、発注事業者は少なくとも30日前までに予告しなければならないとされています。

「業務委託」なのに実態は雇用や派遣という場合

契約書の表題が「業務委託契約書」でも、実際の働き方が雇用や派遣と変わらない場合があります。厚生労働省は、派遣か請負かは契約の形式ではなく、実態に即して判断されると繰り返し説明しています。

注意したいのは2つの場面です。

1つ目は、偽装請負と呼ばれる場面です。厚生労働省のガイドによると、請負の形式の契約でも、注文主と労働者の間に指揮命令関係がある場合は労働者派遣事業に当たり、労働者派遣法に違反する偽装請負になります。たとえば、請負会社に雇われた人が発注者の会社に常駐し、発注者の社員から直接作業の指示を受けている場合がこれに当たり得ます。

2つ目は、個人で業務委託を受けている人が、実態として労働者と判断される場面です。厚生労働省は、労働基準法上の労働者に当たるかどうかについて、「使用従属性」の有無、すなわち「指揮監督下の労働であること」と「報酬の労務対償性があること」のいずれにも当たるかどうかを、契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から個別に総合的に判断するとしています。報酬の労務対償性とは、報酬が仕事の成果ではなく、指揮監督の下で働いた時間そのものに対して支払われているという性質のことです。

判断に関わる事情として一般に挙げられるのは、仕事の依頼を断る自由があるか、仕事の進め方について具体的な指示を受けているか、勤務の時間や場所を決められているか、自分の代わりに他の人に作業させることが認められているか、といった点です。こうした事情を総合して判断されるため、1つの事情だけで結論が決まるわけではありません。

厚生労働省のフリーランス法の解説ページは、形式的には業務委託契約を結んでいる人でも、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、労働基準関係の法令が適用され、フリーランス法は適用されないと説明しています。自分の働き方がどちらに当たるか不安な場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口に相談できます。

常駐型の業務委託と紹介予定派遣の位置づけ

派遣と業務委託の中間のように見える働き方もあります。代表的なのが、発注者の事務所に常駐して働く業務委託と、紹介予定派遣です。

常駐型の業務委託は、システム開発などの分野でよく見られる形です。受注者が発注者の事務所に通って作業しますが、契約は業務委託(準委任であることが多い)です。発注者の事務所で働くこと自体は直ちに問題にはなりませんが、発注者の社員から作業の手順や時間について直接指示を受けるようになると、厚生労働省のガイドが説明する偽装請負や、労働者性の問題につながり得ます。厚生労働省は、システム開発を請負で行う場合の取り扱いについても疑義応答集で考え方を示しています。常駐で働く場合は、誰から指示を受けるのか、作業の管理は誰が行うのかを契約前に確認しておきましょう。

紹介予定派遣は、派遣先に直接雇用されることを予定して行う派遣です。一定の期間を派遣社員として働いたあと、本人と派遣先の双方が合意すれば、派遣先の社員として雇用されます。厚生労働省のパンフレットによると、通常の派遣では禁止されている派遣先による事前の面接も、紹介予定派遣の場合は認められています。派遣先の職場を確かめてから正社員などとして働きたい人にとっての選択肢になります。

どちらの働き方も、名前だけで判断せず、契約書に書かれた雇用主、指揮命令を行う人、報酬の決まり方を確かめることが大切です。

派遣から業務委託に切り替えるときの手続き

派遣社員として働いていた人が、業務委託で仕事を受ける働き方に切り替える場合は、雇用から外れることに伴う手続きが必要になります。主なものを順に確認します。

まず、年金と健康保険の切り替えです。派遣会社で厚生年金保険に加入していた人は、派遣の雇用契約が終わると、日本年金機構の案内に従って国民年金の第1号被保険者に切り替える手続きを行います。配偶者の扶養に入る場合は第3号被保険者の手続きになります。健康保険も、国民健康保険に加入するか、退職前の健康保険の任意継続を選ぶかなどを決めて手続きします。

次に、税金の手続きです。業務委託の報酬を受け取る人は、事業として行う場合に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を税務署に出すのが一般的です。提出の期限や、青色申告を選ぶ場合の届け出の期限は、国税庁の案内で確認してください。帳簿のつけ方を早めに決めておくと、確定申告の負担が軽くなります。

そして、取引の準備です。請求書の書式を用意し、報酬の振込先の口座を決めます。業務委託の契約書を受け取ったら、仕事の範囲、報酬、支払期日、やり直しの条件、秘密保持の扱いを確認してから署名しましょう。

雇用保険の失業給付を受けている間に業務委託の仕事を始める場合は、ハローワークへの申告が必要になることがあります。受給中の人は、仕事を始める前にハローワークに確認してください。

業務委託で求められる情報の扱い

業務委託では、受注者が発注者から独立して仕事をする分、情報の扱いにも自分で責任を持つことが求められます。人材派遣会社の解説でも、発注する側の不安として次のような点が挙げられています。

業務委託は、自社の業務を外部企業に依頼するため、自社の情報が漏えいしてしまわないか不安と感じる方も多いのではないでしょうか。近年、個人情報に関する法律の規制や企業に求められるコンプライアンスが厳しくなっており、万が一情報が漏れてしまった場合、事業の継続に多大な影響を及ぼします。 出典: tempstaff.co.jp

派遣社員は派遣先の社内の決まりに従って情報を扱い、端末やアカウントも派遣先から貸し出されることが多いのに対し、業務委託の受注者は自分の端末や環境で作業することも多くあります。そのため、業務委託では秘密保持契約を結んだり、データの保管方法や作業場所について取り決めたりするのが一般的です。発注者が求める情報管理の水準を満たせるかどうかも、業務委託を選ぶときの判断材料になります。

派遣で働きながら業務委託の仕事も受ける場合

派遣社員として働きながら、空いた時間に業務委託の仕事を受ける人もいます。この掛け持ちで気をつけたい点を整理します。

1つ目は、派遣会社の就業規則です。派遣社員の雇い主は派遣会社なので、副業の扱いは派遣会社の決まりに従います。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)では、副業・兼業を定めた第70条で、労働者は勤務時間外に他の会社等の業務に従事できるとしたうえで、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏れる場合、会社の名誉や信用を損なう場合、競業により会社の利益を害する場合には、禁止または制限できるとしています。これはあくまで厚生労働省が示すひな形で、実際の決まりは派遣会社ごとに違うので、事前に確認しましょう。

2つ目は、労働時間の扱いです。厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインでは、雇用されて働く場合は複数の勤務先の労働時間を通算する一方、業務委託のように労働基準法上の労働者として働くのではない場合は、労働時間は通算されないとしています。ガイドラインは、フリーランスや独立、起業、顧問などを、労働基準法が適用されない例として挙げています。ただし、ガイドラインはこうした場合でも過労などで業務に支障が出ないよう配慮することを求めており、時間の管理が自分任せになる分、働きすぎにならないよう自分で調整することが大切です。

3つ目は、税金の申告です。派遣の給料は年末調整で精算されますが、業務委託の報酬による所得がある場合は、金額によって確定申告が必要になります。所得税では、給与を受け取っている人の給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要とされるのが基本ですが、住民税の申告はこれとは別の扱いです。自分の場合にどうなるかは、税務署や住んでいる市区町村で確認してください。

税金と社会保険の違い

派遣と業務委託では、税金と社会保険の扱いも変わります。

派遣社員の給料は給与所得です。所得税は毎月の給料から差し引かれ、年末調整で精算されます。他に所得がなければ、原則として自分で確定申告をする必要はありません。社会保険は、加入の要件を満たせば派遣会社を通じて健康保険と厚生年金保険に加入し、保険料は会社と折半で負担します。雇用保険にも加入の要件を満たせば加入します。

業務委託の報酬は、一般に事業所得や雑所得として扱われます。必要経費を差し引いた額が所得になり、原則として自分で確定申告をして税金を納めます。報酬の種類によっては、発注者が所得税を差し引いて(源泉徴収して)支払う場合があります。社会保険は、会社員の配偶者の扶養に入っている場合などを除き、国民健康保険と国民年金に自分で加入し、保険料を全額自分で負担します。雇用保険には加入しません。

税金の扱いは、収入の額や他の所得、経費の内容によって変わります。業務委託で働き始めたら、早めに帳簿をつける習慣をつけ、具体的な申告の方法は税務署に確認すると確実です。

どちらの働き方が向いているか

派遣と業務委託のどちらが良いかは、何を重視するかで変わります。判断の目安を整理します。

派遣が向いているのは、収入の安定や、有給休暇・社会保険などの保護を重視する人です。働いた時間に応じて賃金が支払われるため、収入の見通しが立てやすく、仕事の進め方を派遣先が示してくれるので、未経験の業務にも取り組みやすい面があります。一方で、働く時間や場所の自由度は低く、同じ部署で働ける期間には3年の上限があります。

業務委託が向いているのは、働く時間や場所を自分で決めたい人、自分の技能で単価を上げていきたい人です。複数の発注者から仕事を受けることもでき、実績に応じて報酬を交渉できます。一方で、仕事がなければ収入はなく、税金や社会保険の手続き、契約の確認も自分で行う必要があります。

迷う場合は、自分が「どこまで指示を受けたいか」「収入の変動をどこまで受け入れられるか」の2点を考えてみてください。仕事の進め方を任せてもらいたい人には業務委託、決まった時間で安定して働きたい人には派遣が合いやすくなります。

契約前に確かめるチェックリスト

派遣で働く場合と業務委託で働く場合のそれぞれについて、契約前に確かめたい項目を整理します。

派遣で働く場合は、次の点を確かめます。

・雇用主が派遣会社であることと、労働条件、派遣料金額、就業条件の明示を受けたか ・賃金の見込み額の説明を受けたか ・派遣の期間と、期間制限の抵触日がいつになるか ・社会保険・労働保険に加入するか。加入しない場合の理由の説明を受けたか ・トラブルが起きたときの派遣会社と派遣先の相談担当者は誰か

業務委託で働く場合は、次の点を確かめます。

・業務の内容、納期、報酬の額と支払期日が書面やメールで明示されているか ・報酬は成果物に対して支払われるのか、作業期間や時間に対して支払われるのか ・作業の手順や時間を発注者が細かく管理する内容になっていないか ・追加の仕事ややり直しが生じたときの扱いが決まっているか ・秘密保持や成果物の権利の扱いがどうなっているか

困ったときの相談先

派遣で働いていてトラブルが起きた場合は、まず派遣会社と派遣先にいる相談の担当者に相談します。厚生労働省のパンフレットは、法違反となる可能性のあるケースで困ったときは、近くの都道府県労働局に相談するよう案内しています。

業務委託の取引でトラブルが起きた場合は、厚生労働省の委託を受けて第二東京弁護士会が運営するフリーランス・トラブル110番に電話やメールで相談できます。報酬の未払いや一方的な減額、契約内容の不明点などの相談を受け付けています。業務委託の契約なのに実態は雇用ではないかと感じる場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口が窓口になります。

運営者の視点から見た、業務委託の選び方

在宅ワークやフリーランスの市場を20年見てきた運営者の立場から言えば、派遣から業務委託に移って長く続く人は、「指示を待つ」働き方から「仕事の範囲と条件を自分で決める」働き方に切り替えられた人です。業務委託では、受注者が自分のやり方で成果を出す代わりに、条件の交渉や契約の確認も自分で担います。仲介の手数料がかからない直接取引なら、発注者は同じ予算でより多く依頼でき、受注者の手取りも厚くなります。手数料0%の良さは、金額そのものより、この手取りの厚さにあります。

業務委託の契約書で確かめるべき項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに一覧で整理されています。万が一報酬が支払われない場合の回収の流れは、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で確認できます。

派遣から業務委託に移る人が多い分野の1つが、システムやアプリの開発です。業務委託で受ける場合の単価の目安は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で全国と都道府県別に確かめられます。どのような案件があり、どんな力が求められるかは、アプリケーション開発のお仕事で具体的に確認できます。

よくある質問

Q. 派遣社員と業務委託で一番大きな違いは何ですか?

派遣社員は派遣会社に雇われ、派遣先の会社から仕事の指示を受けて働き、働いた時間に応じた賃金を受け取ります。業務委託は誰にも雇われず、引き受けた仕事を自分のやり方で進め、仕事の完成や作業の遂行に対して報酬を受け取ります。どちらに当たるかは契約の名前ではなく、実際の働き方で判断されます。

Q. 業務委託の契約なのに毎日細かく指示されています。問題はありますか?

業務委託では、発注者は受注者に仕事の進め方を指揮命令しないのが前提です。手順や時間を細かく管理されている場合、実態として労働者に当たると判断される可能性や、偽装請負に当たる可能性があります。判断は個別の事情を総合して行われるため、不安があれば労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口に相談してください。

Q. 派遣と業務委託で税金や社会保険はどう違いますか?

派遣社員の給料は給与所得で、所得税は給料から差し引かれ年末調整で精算されます。社会保険は要件を満たせば派遣会社を通じて加入します。業務委託の報酬は一般に事業所得や雑所得で、原則として確定申告が必要です。国民健康保険と国民年金に自分で加入するのが一般的です。具体的な扱いは税務署や市区町村で確認してください。

Q. 業務委託で働く人を守る法律はありますか?

2024年11月1日に施行されたフリーランス法があります。発注事業者は取引条件を書面やメールで明示し、報酬の支払期日を受け取った日から60日以内で定める必要があります。1か月以上の業務委託では報酬の減額など7つの行為が禁止されています。トラブルはフリーランス・トラブル110番に相談できます。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月2日最終更新:2026年10月2日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、43歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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