ステマ規制で責任を負うのは誰か|広告主・代理店・インフルエンサーの役割分担 2026


この記事のポイント
- ✓ステマ規制で最終的に責任を負うのは広告主です
- ✓代理店・インフルエンサーとの役割分担
- ✓EC・SNS運用の現場で必要な対策チェックポイントを実務目線で解説します
インフルエンサーにPR投稿を依頼したいけれど、ステマ規制に触れないか不安。そんな相談を、アパレルブランドのEC運営を支援する中でよく受けます。結論からいえば、ステマ規制で最終的な責任を負うのは投稿者ではなく「広告主」です。この記事では、広告主・代理店・インフルエンサーそれぞれの役割分担と、違反した場合の具体的なリスク、実務で押さえるべき対策を整理します。
ステマ規制が注目される背景|マクロ視点で見る現状
SNS広告市場の拡大とインフルエンサー活用の一般化
SNSを起点にした購買行動は、この数年で完全に定着しました。Instagram・TikTokでの投稿をきっかけに商品を検索し、そのまま購入に至るユーザーは珍しくありません。特にアパレル・コスメ・食品といったBtoC領域では、インフルエンサーマーケティングの市場規模が右肩上がりで成長していると各種調査で報告されています。企業側もテレビCMや純広告だけでなく、SNS上の「個人の発信」に見える投稿を通じた集客に予算を振り向ける動きが強まりました。
一方で、この「個人の発信に見える」という部分こそが問題の核心です。企業が金銭や商品を提供してインフルエンサーに投稿を依頼しているにもかかわらず、それが広告だと分からない形で発信されれば、消費者は「第三者の自発的な感想」と誤認してしまいます。この誤認を悪用する手法が、いわゆるステルスマーケティング、通称ステマです。
2023年10月施行の景品表示法改正とは
こうした状況を受けて、日本でもステマ規制が法制化されました。2023年10月1日、改正された景品表示法に基づき、事業者が自ら行う表示であるにもかかわらず、一般消費者がそれを広告だと判別しにくい表示は「不当表示」として明確に禁止されています。これは新しい法律が作られたわけではなく、景品表示法第5条第3号に基づく告示という形で指定されたものです。約19年ぶりの新告示指定であり、業界に与えたインパクトは小さくありませんでした。
ステマ規制とは、企業が広告であることを隠し、インフルエンサーやSNS投稿を通じて宣伝する行為を法律で禁止する仕組みです。2023年10月1日に改正された景品表示法により、「広告主が提供・依頼したにもかかわらず、一般消費者に広告であると分かりにくい表示」は不当表示として明確に違法となりました。読者の中には、低コスト集客の一環としてSNS活用や口コミを検討している方も多いと思いますが、規制対象は広告主であり、投稿内容についても責任を負う必要があります。この記事を通じて、ステマ規制の基本を理解しましょう。 出典: canaeru.usen.com
私自身、アパレルブランドのSNS運用を受託する中で、この改正のタイミングでクライアントから「今までインフルエンサーに送っていたPR投稿の文面を全部見直したい」という相談を一気に受けた経験があります。それまでは「#プレゼント」「#〇〇提供」程度の軽いハッシュタグで済ませていたブランドも多く、法改正を境に運用ルールをゼロから作り直す動きが業界全体で起きました。
ステマ規制の基本構造を理解する
規制対象となる表示・投稿のパターン
ステマ規制の対象になるのは、大きく分けて次のようなパターンです。
・企業から金銭・商品・サービスの提供を受けたインフルエンサーが、それを明示せずに「個人の感想」として投稿するケース ・企業の従業員や関係者が、第三者になりすまして口コミサイトやSNSに好意的なレビューを投稿するケース ・企業がアフィリエイターに依頼して、広告であることを隠したまま比較記事やレビュー記事を作成させるケース ・ECサイトのレビュー欄に、事業者自身または依頼を受けた業者が虚偽の高評価レビューを投稿するケース
共通しているのは「事業者の表示であるにもかかわらず、それが分かりにくい」という点です。逆にいえば、たとえ企業から商品提供を受けていても、「#PR」「#広告」「#〇〇より商品提供」といった表示を明確にしていれば、この規制の対象にはなりません。
「広告であることが分かりにくい」の判断基準
消費者庁が示す運用基準では、以下のような表示が「広告であることが分かりにくい」と判断されやすいとされています。
・PR表記がハッシュタグの羅列の中に埋もれていて視認しにくい位置にある ・文字色や文字サイズが極端に小さく、背景色と同化している ・「AD」「PR」といった略語のみで、一般消費者が広告だと認識できない表現になっている ・投稿の冒頭ではなく、大量のハッシュタグの最後に一つだけ紛れ込ませている
特に問題になりやすいのが、動画コンテンツです。TikTokやYouTubeのショート動画では、概要欄にPR表記があっても、視聴者の多くは動画本編しか見ていません。動画内でナレーションや字幕として「これは提供いただいた商品です」と明示しない限り、実質的に広告と気づかれないケースが多く、規制の観点からもリスクが高いとされています。
誰が責任を負うのか|広告主・代理店・インフルエンサーの役割分担
ここが読者の皆さんが最も知りたい部分だと思います。結論を先に言うと、ステマ規制において行政処分の対象となるのは「事業者(広告主)」であり、投稿を行ったインフルエンサー個人が直接処罰されるわけではありません。
● 規制の対象者は、商品・サービスを提供する「事業者(広告主)」「事業者(広告主)の依頼を受けた第三者」の投稿であっても、責任の所在は「事業者(広告主)」にあり、ステマ規制の対象となります。アフィリエイト広告やインフルエンサー施策に取り組む企業は、「運用(リスク対策)」を従来よりも慎重に行う必要があります。(チェックの手間が増えるので、運用負担も今まで以上にかかる点を覚悟しましょう) 出典: ecfs.jp
広告主(事業者)が全責任を負う理由
景品表示法は、そもそも「事業者が消費者に対して行う表示」を規制する法律です。インフルエンサーへの依頼は、企業から見れば「第三者を通じた表示行為」にすぎず、法律上は依頼した企業自身の表示とみなされます。つまり、たとえ実際に投稿ボタンを押したのがインフルエンサーであっても、その投稿を企画・依頼した事業者が最終的な責任主体になるという構造です。
この点は、ECサイトを運営するブランド担当者の方にとって特に重要です。「うちはインフルエンサーに丸投げしているから関係ない」という考え方は通用しません。依頼した時点で、PR表記のルールを守らせる義務が発生します。
代理店・PR会社の実務上の責任
インフルエンサーマーケティングでは、企業とインフルエンサーの間にPR会社やインフルエンサーマーケティング代理店が入るケースが一般的です。この場合、行政処分の直接的な対象は広告主(依頼元企業)ですが、実務上は代理店にも重い責任が生じます。
代理店がPR表記のルールを周知せず、結果として広告主がステマ規制違反として措置命令を受けた場合、契約上の債務不履行や信頼失墜として、代理店が広告主から損害賠償を請求される可能性があります。私が支援しているアパレルブランドでも、インフルエンサー案件を依頼する際は必ず「PR表記ガイドライン」を契約書に添付し、投稿前チェックを代理店側の業務範囲に明記するようにしています。
インフルエンサー個人は罰せられるのか
多くの方が誤解しているポイントですが、ステマ規制は「事業者の表示」を規制する法律であり、インフルエンサー個人を直接処罰する法律ではありません。ただし、これは「インフルエンサーが何をしても法的責任がゼロ」という意味ではない点に注意が必要です。
インフルエンサーが企業との契約で「PR表記を行うこと」を約束していながら意図的に守らなかった場合、契約違反として企業側から責任を問われる可能性はあります。また、企業と共謀して虚偽の口コミを作成したような悪質なケースでは、別の法律(不正競争防止法や刑法の偽計業務妨害など)に触れる可能性も理論上は残ります。「個人は絶対に安全」と単純化せず、契約上の役割分担を明確にしておくことが双方にとって重要です。
ステマ規制に違反した場合の罰則とリスク
措置命令と公表のリスク
ステマ規制に違反した事業者に対して、消費者庁は「措置命令」を出すことができます。措置命令とは、違反行為の差し止めや再発防止策の実施、そして違反があった事実を一般消費者に周知することを命じる行政処分です。この「周知」には、多くの場合、自社サイトや新聞紙上での謝罪文掲載が含まれます。
金銭的な罰金以上に、企業のブランドイメージにとって深刻なのがこの公表リスクです。SNS上で「〇〇ブランドがステマで措置命令」というニュースが拡散されれば、それまで築いてきたユーザーとの信頼関係が一気に崩れます。特にアパレル・コスメのように「ブランドへの共感」で購買が決まる業界では、この種の炎上は売上に直結するダメージになります。
課徴金制度との違い
景品表示法には、優良誤認表示・有利誤認表示に対する課徴金制度が存在しますが、現時点でステマ規制(第5条第3号の指定告示)は課徴金の対象にはなっていません。つまり、ステマ単体での違反に対して直接的な金銭的制裁が科されるわけではなく、主な制裁は措置命令とその公表です。
ただし、措置命令に従わなかった場合は、別途罰則(懲役または罰金)が科される可能性があります。また、ステマと同時に優良誤認表示・有利誤認表示(商品の効果効能を偽るなど)を行っていた場合は、その部分について課徴金の対象となり得るため、複合的な違反には特に注意が必要です。
実務担当者が取るべき対策とチェックポイント
契約書・ガイドラインの整備
インフルエンサーやアフィリエイターに依頼する際は、契約書または発注書に「PR表記を明示すること」を明記します。具体的には、投稿の冒頭に「#PR」「#広告」「〇〇より商品提供」といった表記を入れること、ハッシュタグの羅列に埋没させないことを条件として書面に残しておくと、後のトラブル防止に役立ちます。
PR表記のルール統一
社内やブランドごとにPR表記のルールがバラバラだと、現場での運用ミスが起きやすくなります。私が関わっている案件では、投稿テンプレートを事前に用意し、「タイトルまたは冒頭1行目に必ずPR表記を入れる」というルールで統一しています。動画コンテンツの場合は、概要欄だけでなく動画内のテロップにも表記を入れるルールにしておくと、より安全です。
投稿前チェック体制の構築
案件数が増えてくると、担当者一人ですべての投稿を確認するのは現実的に難しくなります。そこで有効なのが、投稿前の原稿チェックをフローに組み込むことです。インフルエンサーから投稿予定の文面・画像・動画を事前に共有してもらい、PR表記の有無と視認性をチェックしてから公開してもらう。この一手間だけで、意図しない違反のリスクを大きく減らせます。
法律の複雑さと規制違反へのリスクを考えると、自己流での運用には限界があります。ステマ規制は景品表示法の運用基準や告示など、専門的な解釈が必要な法律です。特に広告主としての責任を負う立場では、一つの誤りが行政処分につながる恐れがあります。ですから、必要に応じて専門家の助言を受けることが集客効果の維持と安心の両立には欠かせません。専門知識を適切に取り入れることで、安全にCV(コンバージョン)へつながる設計が可能になります。 出典: canaeru.usen.com
ステマ規制のメリットとデメリット
メリット|消費者信頼の向上とブランド価値の保全
ステマ規制がもたらす最大のメリットは、SNS上の口コミ全体の信頼性が上がることです。「この投稿は本当に広告なのか、個人の感想なのか」を消費者自身が判断しやすくなれば、健全な口コミが正当に評価される環境が整います。長期的には、誠実にPR表記を行っているブランドほど信頼を積み上げやすくなり、これは中長期でのファン獲得・リピート購入に直結します。
デメリット|現場の運用負担増とインフルエンサー起用のハードル上昇
一方で、現場の運用負担が増えたのも事実です。これまで感覚的に依頼していたインフルエンサー案件も、契約書の整備・PR表記の周知・投稿前チェックといった工程が必須になり、特に小規模なブランドやスタートアップにとっては、担当者のリソースを圧迫する要因になっています。私が支援しているアパレルブランドの中にも、規制強化を機にインフルエンサー施策自体の予算を一時的に絞り、既存顧客向けのメルマガやオウンドメディアに軸足を移した企業がありました。規制対応のコストを正しく見積もった上で、集客チャネルの配分を見直す判断も選択肢の一つです。
独自データ考察|EC・フリーランス市場から見るステマ規制対応の実態
ステマ規制への対応は、企業の広告担当者だけの課題ではありません。SNS運用やインフルエンサーマーケティングを外部のフリーランスや専門家に依頼する動きが、中小ブランドを中心に広がっています。実際、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、SNS運用やマーケティング分析を専門とする人材の需要動向を紹介しており、ステマ規制のような専門知識が必要な領域ほど、外部の専門人材を活用する動きが強まっている傾向がうかがえます。同様に、AIを活用した業務効率化やコンサルティングに関心がある方はAIコンサル・業務活用支援のお仕事でも、専門性の高い業務委託の実例を確認できます。
在宅ワーク・フリーランス市場を長く見てきた立場から言えば、法規制が強化されるタイミングほど、専門知識を持つ個人への発注が増える傾向があります。理由はシンプルで、社内に法務・コンプライアンスの専門人材を常時抱えるコストと、必要なときだけ専門知識を持つフリーランスに相談するコストを比較すると、特に中小規模のブランドでは後者の方が圧倒的に合理的だからです。運営者として見てきた限りでは、こうした案件は単発の作業依頼で終わらず、継続的な顧問契約やチェック体制の構築支援へと発展するケースが多く見られます。
この構造は、依頼する側と受注する側の双方にメリットをもたらします。仲介手数料が発生しない直接契約であれば、同じ予算でもブランド側はより多くの相談時間を確保でき、受注する側もその分手取りが厚くなります。額面の金額だけでなく、中間マージンが乗らないことで生まれる「手取りの質」の違いは、フリーランスとして独立を考える方にとって見落としがちな観点です。手数料0%で直接つながる仕組みは、単に安く発注できるという話ではなく、双方が納得できる報酬設計をしやすくなるという意味で、長く続く取引関係の土台になります。
私自身、EC運営代行の仕事を始めたばかりの頃、あるブランドから「インフルエンサーへの謝礼として無償で服を提供しているだけだから、PR表記は不要だと思っていた」と相談を受けたことがあります。改正前の感覚のまま運用を続けていたケースで、慌てて投稿テンプレートを作り直した経験があります。金銭でなくても「経済上の利益の提供」があればステマ規制の対象になり得るという基本を、担当者自身が正確に理解していないまま現場が回っているブランドは、今でも少なくない印象です。ライター・SNS運用者としてクライアントに接する際は、単に投稿を代行するだけでなく、こうした基礎知識を共有すること自体が付加価値になると感じています。
法務・コンプライアンス分野に強みを持つ人材の市場価値についてもっと詳しく知りたい方は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、法律や専門知識を扱うライティング業務の相場感を確認できます。また、開発・システム面からブランドのEC基盤を強化したい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場も参考になります。専門性の高い資格を取得してコンサルティング業務の幅を広げたい方には、中小企業診断士の資格情報もあわせて確認しておくと、企業向けの法令遵守サポートを含めた提案がしやすくなります。
ステマ規制は、今後も運用基準の細部が更新されていく可能性が高い分野です。一度ルールを整備して終わりにするのではなく、定期的に消費者庁の公表資料を確認し、社内のガイドラインをアップデートし続ける姿勢が、広告主にとっての最も現実的なリスク管理だといえます。
よくある質問
Q. ステマ規制に違反した場合、インフルエンサー本人も罰せられますか?
行政処分の対象は基本的に事業者(広告主)であり、インフルエンサー個人が直接罰せられることは想定されていません。ただし契約違反や悪質なケースでは別途責任を問われる可能性があるため、契約内容でPR表記の義務を明確にしておくことが重要です。
Q. 無償で商品を提供しただけでもステマ規制の対象になりますか?
金銭の授受がなくても「経済上の利益の提供」があれば対象になり得ます。無料の商品提供や割引、サービス無償利用なども含まれるため、対価の形式にかかわらずPR表記のルールを適用する必要があります。
Q. PR表記はどこにどう書けば「分かりやすい」と判断されますか?
投稿の冒頭やハッシュタグの先頭に「#PR」「#広告」など明確な表記を入れ、文字色やサイズで視認しにくくしないことが基準とされています。動画は概要欄だけでなく、動画内のテロップやナレーションでも明示すると安全です。
Q. インフルエンサー施策を外部委託する場合、何を契約書に盛り込むべきですか?
PR表記の明示義務、投稿前チェックの実施、表記ルールに違反した場合の対応方針を明記することが基本です。代理店やフリーランスに依頼する際は、ガイドライン遵守を契約条件として明文化しておくとトラブルを防げます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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