役員を誰にするか|家族を入れるときに先に見ること

前田 壮一
前田 壮一
役員を誰にするか|家族を入れるときに先に見ること

この記事のポイント

  • 会社を作るときの役員の決め方を
  • 取締役会を置くかどうか
  • 家族を役員に入れる利点と負担

会社を作る準備を進めていくと、必ずぶつかるのが「役員を誰にするか」という問いです。1人で始めるつもりでも、書類には役員の欄があります。配偶者や親を入れたほうがいいと聞いたけれど、本当にそうなのかも分からない。ここで手が止まる方はとても多いです。

先に結論を書きます。株式会社は取締役1人だけで作れます。無理に誰かを入れる必要はありません。そして、家族を役員に入れるかどうかは「税金が軽くなるらしい」という理由だけで決めると、あとで重い負担が返ってきます。判断の材料になるのは、その人が実際に会社の仕事をするのか、社会保険の扱いがどう変わるのか、そして辞めてもらうときにどれだけ手間がかかるのか、この3つです。

この記事では、役員の決め方を順番に整理します。人数の決まり、会社の形による違い、家族を入れる利点と負担、役員報酬の仕組み、任期の選び方、そして迷ったときの決め方の手順まで扱います。専門用語はその場で普通の言葉に置き換えます。

「役員」という言葉が指す範囲をそろえる

最初に言葉をそろえます。役員という言葉は、場面によって指す範囲が変わるからです。ここを曖昧にしたまま話を進めると、あとで噛み合わなくなります。

会社法でいう役員は、取締役、会計参与、監査役の3つです。このうち小さな会社に関係するのは取締役と監査役で、会計参与を置く会社はほとんどありません。取締役は会社の経営を決めて実行する人、監査役は取締役の仕事を監視する人、という役割分担です。

一方、日常会話で使う役員はもっと広く、社長、専務、常務、執行役員、顧問、相談役といった肩書きを全部ひっくるめて呼ぶことがあります。このうち専務や常務や執行役員は、会社が社内で付けている呼び名にすぎません。法律上の役員かどうかは、取締役として選ばれて登記されているかで決まります。

そして3つ目に、税金の世界の役員があります。こちらはさらに広く、登記されていなくても会社の経営に関わっている人を役員として扱う考え方があります。相談役や顧問、あるいは社長の家族が従業員として働いている場合に問題になりやすい領域です。

つまり、同じ「役員」でも、会社法上の役員、社内の肩書きとしての役員、税務上の役員の3つがあります。この記事で「役員」と書くときは、原則として会社法上の役員、つまり取締役と監査役を指します。

株式会社は取締役1人でも作れる

人数の話から始めます。ここで誤解している方がいちばん多いからです。

会社法は、株式会社には1人または2人以上の取締役を置かなければならないと定めています。つまり下限は1人です。3人必要だというのは、後で説明する取締役会を置く場合の話であって、すべての会社に当てはまるわけではありません。

監査役も同じです。監査役を置くかどうかは、原則として会社が定款で決められます。定款とは、会社の基本的な決まりを書いた文書のことです。小さな会社で監査役を置く例は多くありません。

つまり、1人で会社を作るなら、取締役はその1人だけでよく、監査役も要りません。役員が1人の会社は、日本にいくらでもあります。「形として何人かいないと格好がつかない」という理由で人を増やすのは、後の手間を考えるとおすすめしません。

上限はどうか。法律上の上限はありません。ただし人数を増やすほど、登記の手間も費用も増えます。役員変更の登記には登録免許税がかかり、任期が来るたびにその作業が回ってきます。人が多い会社ほど、誰かの任期を忘れる確率も上がります。

もう1つ、取締役が1人だけの会社では、その人が当然に会社を代表します。代表取締役をあえて選ぶ手続きも要りません。2人以上いる場合は、全員が各自で会社を代表するのが原則で、そこから1人を代表取締役として選ぶこともできます。誰が代表するかは登記に載るので、外から見て分かる形になります。

取締役会を置くかどうかで、必要な人数が変わる

取締役会という言葉が出てきたので、ここを整理します。

取締役会とは、取締役が集まって会社の重要なことを決める会議体のことです。これを置くと決めた会社は、取締役会設置会社と呼ばれます。会社法は、取締役会を置く会社では取締役が3人以上でなければならないと定めています。さらに、取締役会を置く会社は原則として監査役も置かなければなりません。

つまり、取締役会を置くと決めた瞬間に、最低でも取締役3人と監査役1人、合計4人が必要になります。小さな会社にとって、これはかなり重い条件です。

では取締役会を置く利点は何か。決め事のスピードです。取締役会がない会社では、重要なことを決めるたびに株主総会を開く必要がある場面が出てきます。取締役会があれば、取締役だけの会議で決められる範囲が広がります。株主が多く、意思決定の回数も多い会社では意味があります。

逆に、株主が社長1人だけの会社では、株主総会を開くといっても書面を作るだけです。取締役会を置く意味はほとんどありません。人を3人そろえる手間のほうが大きくなります。

なお、株式を自由に売り買いできる会社、つまり株式の譲渡に会社の承認が要らない会社は、必ず取締役会を置かなければなりません。ただ、設立したばかりの会社でこの形にすることは、まずありません。小さな会社のほとんどは、株式の譲渡に会社の承認が必要だと定款に書きます。

判断としては、こうなります。最初は取締役会を置かない。人数が増えて、決め事の回数が増えてから考える。取締役会は後から置くこともできますし、置いたものを後から廃止することもできます。どちらも定款を変えて登記すれば済みます。

合同会社では役員という呼び方をしない

株式会社ではなく合同会社を選ぶ方も増えています。こちらは仕組みが違うので、分けて説明します。

合同会社には取締役も監査役もいません。代わりに社員という言葉を使います。ここでいう社員は従業員のことではなく、会社にお金を出した人、つまり出資者のことです。この点で言葉の感覚がずれるので注意してください。

合同会社では、原則として社員全員が会社の業務を執行します。定款で「この人だけが業務を執行する」と決めることもでき、その人を業務執行社員と呼びます。さらに、その中から代表社員を決められます。登記に載るのは業務執行社員と代表社員です。

合同会社の大きな違いは、任期がないことです。株式会社の取締役には任期があり、切れるたびに選び直して登記しなければなりません。合同会社の社員にはこれがないので、メンバーが変わらない限り登記の作業が発生しません。設立の費用も株式会社より安く済みます。

一方で、辞めるときは株式会社より手間がかかります。合同会社の社員は出資者でもあるので、抜けるときには出資したお金の精算が絡みます。定款で業務執行社員を決めている場合、その人は正当な理由がなければ辞任できないという決まりもあります。株式会社の取締役が原則いつでも辞任できるのとは対照的です。

家族を入れる場合、この違いは効いてきます。株式会社なら、辞めてもらうときは辞任届と登記で済みます。合同会社は、持ち分をどうするかという話になります。関係がこじれたときの後始末は、株式会社のほうが軽いです。

家族を役員に入れる3つの利点

ここからが本題です。配偶者や親を役員に入れるべきか。まず利点から見ます。

1つ目は、所得を分けられることです。会社が稼いだお金を社長1人の報酬として受け取ると、その人の所得が大きくなります。所得税は所得が多いほど税率が上がる仕組みなので、1人に集中させると税率の高い部分が増えます。2人に分けて払えば、それぞれの税率が下がる可能性があります。ただし、これは実際に働いている人に、働きに見合った額を払う場合の話です。この点は後でくわしく扱います。

2つ目は、社会保険に入れることです。法人は、役員1人だけの会社であっても、健康保険と厚生年金の適用事業所になります。日本年金機構はこう説明しています。

厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。 出典: www.nenkin.go.jp

つまり、家族を役員にして報酬を払えば、その人も厚生年金に入ります。国民年金だけの場合より、将来受け取る年金は厚くなります。傷病手当金や出産手当金といった健康保険の給付も対象になります。

3つ目は、退職金を出せることです。役員として在任した期間に応じて、辞めるときに退職金を払うことができます。退職金は給与とは別の計算で税金がかかる仕組みになっており、条件を満たせば負担が軽くなります。ただし金額が適正かどうかは事情によって判断が分かれるので、実際に出す段階で税理士に確認してください。

家族を役員に入れる4つの負担

次に負担です。利点だけを見て決めると、ここで苦労します。

1つ目は、社会保険料です。役員報酬を払えば、会社と本人がそれぞれ保険料を負担します。会社側の負担も報酬に応じて増えます。配偶者がこれまで社長の扶養に入っていた場合、報酬額によっては扶養から外れます。基準は健康保険の制度で決まっているので、報酬を決める前に年金事務所か加入している健康保険組合に確認してください。手取りを増やすつもりで役員にしたのに、保険料の増加で世帯全体の手取りが減る、という結果は実際に起こります。

2つ目は、実態がないと認められないことです。役員報酬が会社の経費として認められるのは、その人が実際に役員としての仕事をしている場合です。名前を貸しているだけで会社に来ない、何も決めていない、という状態で報酬を払うと、税務調査でその報酬が経費として否認される可能性があります。否認されれば、その分だけ会社の利益が増えて法人税がかかります。金額や事情によって判断が変わる領域なので、迷ったら税務署か税理士に具体的な状況を伝えて確認してください。

3つ目は、辞めてもらうときの手間です。役員を辞めさせるには、辞任してもらうか、株主総会で解任するかのどちらかです。解任は決議で可能ですが、正当な理由がない解任では、残りの任期分の報酬などについて損害賠償を求められることがあります。家族との関係が悪くなったときに、この手続きを進めるのは精神的にも重い作業です。

4つ目は、責任です。取締役は、会社に損害を与えたときにその責任を負います。さらに、職務を行うにあたって悪意や重大な過失があった場合には、取引先などの第三者に対しても責任を負う可能性があります。会社の経営に関わっていない家族が、この責任だけを背負う立場になるということです。事情を説明しないまま名前を借りるのは、相手に対して誠実ではありません。

役員報酬は1年に1回しか決め直せない

役員を増やす前に必ず知っておきたいのが、役員報酬の仕組みです。従業員の給与とは扱いがまったく違います。

法人税の世界では、役員に払う給与のうち、会社の経費として認められるものが限られています。代表的なのが定期同額給与です。これは、1か月以下の一定の期間ごとに支給され、その事業年度のあいだ毎回同じ額である給与のことです。毎月同じ額を払っていれば、原則として経費になります。

問題は、額を変えたいときです。法人税法施行令は、定期同額給与の額を改定できる時期を、その事業年度が始まった日から3か月を経過する日までと定めています。つまり、3月決算の会社なら、4月から6月末までのあいだに決めた額を、翌年の同じ時期まで1年間続けることになります。

途中で変えられないわけではありません。役員の地位が変わった、職務の内容が大きく変わったといったやむを得ない事情がある場合や、会社の業績が著しく悪化した場合には、途中の改定が認められます。ただし後者は減額の場合に限られます。「今期は儲かったから増やそう」は通りません。

もう1つ、賞与に当たるものを出したいときは、事前確定届出給与という別の仕組みを使います。いつ、いくら払うかを事前に決めて税務署に届け出ておき、そのとおりに払う方法です。届け出た内容とずれると経費になりません。

この仕組みが意味するのは、役員を増やすという判断は1年単位だということです。家族を役員にして月々の報酬を決めたら、原則として1年間はその額が続きます。売上が読めない1年目に、家族の報酬を高めに設定するのは危険です。低めから始めて、翌期に見直すほうが安全です。具体的な金額の設計は会社の事情によって変わるので、税理士に相談してください。

名前だけ貸してもらうのが危ない理由

「実際には何もしないけれど、役員として名前だけ入れておく」という話は、今でもよく聞きます。ここは、はっきり書いておきます。

まず、その人には取締役としての責任が付いてきます。会社に損害を与えたときの責任も、悪意や重大な過失があったときに取引先などへ負う責任も、名前だけかどうかで変わりません。会社が倒れたときに、経営に関わっていなかった家族が責任を追及される場面は実際にあります。

次に、報酬を払っていれば税務上の問題になります。実態のない役員への報酬は、経費として認められない可能性があります。逆に、報酬を払わないなら、税金を分ける効果もありません。名前だけの役員は、利点がないのに負担だけがある状態です。

さらに、辞めてもらうときに手間がかかります。登記された取締役を外すには、辞任届をもらって登記を出す必要があります。連絡が取れない、押印を拒まれる、といった事態になると、手続きが止まります。法務局が公開している記載例でも、辞任届には法務局に届け出た印鑑か、市区町村に登録した印鑑を押す必要があるとされています。印鑑証明書が要る場面もあります。相手の協力が得られなければ進みません。

役員の名義を貸してほしいと頼むときは、責任の中身と、辞めるときに何をしてもらう必要があるかを、先に説明してください。説明したうえで引き受けてもらえないなら、その人を入れない判断のほうが正しいです。

なお、登記された取締役が増えると、会社の信用の見え方も変わります。取引先が登記事項証明書を取れば、役員の名前は誰でも見られる情報です。実態と違う構成にしておくと、説明を求められたときに困ります。

役員と株主は別物。ここを混ぜると後で揉める

役員を決めるときに、もう1つ必ず切り分けておきたいことがあります。役員と株主は別の話だということです。

株主とは、会社にお金を出して株式を持っている人のことです。役員とは、会社の経営を任されている人のことです。同じ人が両方を兼ねることもできますし、別の人でも構いません。会社法は、取締役が株主でなければならないと定款で定めることを原則として禁じています。ただし株式の譲渡に会社の承認が必要な会社では、この定めを置くこともできます。

なぜ切り分けが大事かというと、力の源が違うからです。役員を選んだり辞めさせたりするのは株主総会です。つまり、株式をどれだけ持っているかで、誰を役員にするかを決める力が変わります。役員の肩書きを持っていても、株式を持っていなければ、自分を外す決議を止められません。

小さな会社でありがちなのが、出資は社長が全部して、家族に役員の肩書きだけ渡すという形です。この場合、家族には会社を動かす力はほとんどありません。逆に、出資を半分ずつにして2人が取締役になると、意見が割れたときに何も決まらなくなります。株式の持ち分が半分ずつの会社は、方向性がずれた瞬間に身動きが取れません。

結論として、出資は割らないほうが動きます。役員を増やすかどうかとは切り離して、株式は誰がどれだけ持つかを先に決めてください。役員に報いたいなら、報酬や退職金という形があります。株式を渡すのは、その人と長期で組むと決めてからで遅くありません。一度渡した株式を取り戻すのは、役員を辞めてもらうより何倍も大変です。

役員になれない人と、なると困る人

誰でも取締役になれるわけではありません。会社法は取締役になれない人を定めています。

まず、法人は取締役になれません。会社が会社の取締役になることはできない、ということです。次に、会社法などの特定の法律に違反して刑に処せられ、執行が終わってから2年を経過していない人。そして、それ以外の法令に違反して拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行が終わるまでの人です。

年齢の制限はありません。未成年でも、自分で契約する能力があれば取締役になれます。ただし実務上は、就任承諾書や印鑑証明書の準備で手間が増えることがあります。

法律上なれるとしても、入れると困る人はいます。会社の内容を理解していない人、連絡が取りにくい人、印鑑証明書を取ってもらうのに毎回交渉が必要な人です。役員変更の登記では、就任するときも辞任するときも本人の書類が要ります。年に1度も会わない相手を役員にすると、任期が来るたびに連絡を取る作業が発生します。

遠方に住む親を役員にするケースは、この問題が起きやすいです。10年の任期にしておけば頻度は減りますが、10年後にその人が書類を用意できる状態かどうかは分かりません。役員が亡くなった場合は、死亡届または法定相続情報一覧図の写しを添えて登記を出すことになります。手続きとしては可能ですが、相続の話と重なると時間がかかります。

任期を何年にするかは、誰を入れるかで決める

役員を決めるときにセットで考えるのが任期です。ここを機械的に決めると、あとで困ります。

取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終わる事業年度のうち最後のものに関する定時株主総会が終わるときまでです。つまりおよそ2年です。ただし、株式の譲渡に会社の承認が必要だと定款で決めている会社は、定款で任期を最長10年まで伸ばせます。監査役は原則およそ4年で、同じ条件で最長10年です。

10年にする利点は、登記の回数が減ることです。役員変更の登記には登録免許税がかかります。資本金が1億円以下の会社なら1件1万円で、司法書士に頼めば報酬も加わります。2年ごとにこれをやるか、10年に1度で済ませるかの差は小さくありません。

欠点は2つあります。1つは、忘れることです。10年後に任期が切れることを覚えている人はまずいません。設立のときの資料も残っていないことが多く、気づいたときには任期切れから何年も経っているという状態になりがちです。登記を怠ると過料の対象になりますし、最後の登記から12年が経つと会社が解散したものとみなされる整理の対象になります。

もう1つは、途中で辞めてもらいにくくなることです。任期の途中で正当な理由なく解任すると、残りの任期分について損害賠償を求められる可能性があります。任期が10年なら、残りの期間が長いほどその金額も大きくなりえます。

判断の目安は単純です。社長1人だけの会社なら10年にしてよいです。ただし、次に登記が必要になる年を必ずどこかに記録してください。家族や第三者を役員に入れるなら、最初は2年にしておくほうが安全です。関係が続くと分かってから伸ばせば済みます。定款の変更と登記が必要ですが、こじれたときの損害賠償の話に比べれば軽い手間です。

決め方の手順を4つに分ける

最後に、実際に決めるときの手順を並べます。

第1に、自分1人でやるのか、他に人を入れるのかを決めます。入れるなら、その人が実際に会社の仕事をするのかを確かめます。仕事をしないなら入れない。これが最初の分岐点です。税金の話は、実際に働いている人にどう払うかを考える段階で初めて出てきます。

第2に、会社の形を決めます。株式会社にするか合同会社にするか。設立の費用と、あとで人を入れ替える可能性の両方で考えます。人の出入りがありそうなら株式会社、当面1人か夫婦だけで動かすなら合同会社という整理でおおむね足ります。

第3に、取締役会を置くかどうかを決めます。人数が3人未満なら置けません。3人以上いても、決め事の回数が少ないなら置かないほうが身軽です。後から置くこともできます。

第4に、任期を決めます。1人なら10年でよく、他人が入るなら2年から始めます。決めた内容は定款に書き、設立の登記に反映します。

ここまで決まれば、あとは書類です。設立の登記に必要な様式と記載例は法務局の商業・法人登記の申請書様式のページから無料でダウンロードできます。役員に関する部分では、就任承諾書と印鑑証明書または本人確認証明書が必要になります。取締役会を置かない会社で新しく取締役になる人は、就任承諾書に市区町村に登録した印鑑を押し、その印鑑証明書を添える扱いです。

役員を決めたあとにやることもあります。会社を作ったら、健康保険と厚生年金の加入手続きが必要です。役員1人だけの会社でも対象になります。届出の期限は短く、新たに人を使うようになったときの資格取得届は5日以内に提出することとされています。設立の登記が終わったら、すぐ動けるよう準備しておいてください。

誰と組むかという判断が、あとの働き方を決める

制度の話が続いたので、実務の感覚も書いておきます。

20年にわたって在宅ワークと業務委託の市場を運営してきた立場から言えば、小さな組織がうまく回るかどうかは、人数や肩書きではなく、役割が言葉になっているかで決まります。誰が何を決めるのか。誰が判断を止められるのか。これが決まっていない組織は、人数が少なくても止まります。役員を決めるという作業は、この役割分担を最初に書き出す機会でもあります。

運営者として見てきた限りでは、長く続く事業者ほど、身内を役員にするかどうかを税金だけで決めていません。実際に手を動かしてもらえるか、関係が変わったときに話し合えるか、という点を先に見ています。結果として、家族を役員に入れずに、必要な仕事だけを外部に頼む形を選ぶ会社も少なくありません。

お金の流れについても触れておきます。仕事を外部に頼むとき、仲介が入ると報酬から中間の取り分が引かれます。直接やり取りできる関係があれば、同じ予算で依頼する側はより多くを頼めますし、受ける側の手取りも厚くなります。金額の大小ではなく、同じ仕事でも手元に残る額が変わるという構造の話です。役員を増やして固定費にするか、必要なときに外部へ頼むかは、この構造を踏まえて比べると判断しやすくなります。

外部に頼むときの相場感を知っておくと、役員を増やすべきかどうかの比較ができます。資料や文書を書く仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、システム側の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。実際にどういう依頼が出ているかは、アプリケーション開発のお仕事AI・マーケティング・セキュリティのお仕事を見ると分かります。経営の進め方そのものを相談したい段階なら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事の内容が参考になります。

役員として経営の判断に加わる人に、知識の土台を作ってもらう方法もあります。経営の全体像を体系立てて学ぶなら中小企業診断士が扱う範囲が近く、事務の実務を担ってもらうなら医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のように業界ごとの資格が判断の目安になります。制度を使って設備や仕組みを整えたい場面もあるので、公的な支援の探し方はテレワーク 助成金 2026のような記事で流れをつかんでおくと動きが早くなります。

最後に、手を動かす順番をもう一度並べます。役員に入れる候補が実際に働くかを確かめる。会社の形を決める。取締役会を置くかどうかを決める。任期を決める。定款に書いて設立の登記を出す。社会保険の手続きをする。この6つです。迷ったときは、人を増やさない側に倒してください。あとから増やすのは簡単ですが、減らすのは手間も気持ちも重い作業になります。

よくある質問

Q. 株式会社の役員は最低何人必要ですか?

会社法は株式会社に1人または2人以上の取締役を置くと定めており、下限は1人です。監査役を置くかどうかも原則として会社が決められます。3人必要になるのは取締役会を置く場合で、その場合は監査役も原則として必要になるため、合計4人が最低ラインになります。1人で会社を作るなら取締役1人だけで足ります。

Q. 家族を役員にすると税金は軽くなりますか?

所得を分けることで世帯全体の税負担が下がる場合はありますが、その人が実際に役員としての仕事をしていることが前提です。実態がないと報酬が経費として認められない可能性があります。また社会保険料の負担が増え、扶養から外れる場合もあります。金額や事情で結論が変わるため、税務署か税理士に具体的な状況を伝えて確認してください。

Q. 役員報酬は途中で変えられますか?

定期同額給与として経費にするには、改定できる時期が事業年度の開始日から3か月を経過する日までと定められています。それ以外の時期の改定は、役員の地位や職務内容が大きく変わったなどのやむを得ない事情がある場合か、業績が著しく悪化して減額する場合に限られます。1年間は同じ額が続く前提で設計してください。

Q. 役員の任期は2年と10年のどちらにすべきですか?

社長1人だけの会社なら、登記の回数を減らせる10年が向いています。ただし10年後に任期が切れることを必ず記録に残してください。家族や第三者を役員に入れる場合は2年から始めるほうが安全です。任期の途中で正当な理由なく解任すると、残りの任期分について損害賠償を求められる可能性があるためです。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月21日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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