小規模企業共済制度のメリット 個人事業主の節税策

長谷川 奈津
長谷川 奈津
小規模企業共済制度のメリット 個人事業主の節税策

この記事のポイント

  • 小規模企業共済制度は個人事業主の節税と退職金準備を同時に実現できる国の制度です
  • 加入前に知っておくべきメリットとデメリットを実務目線で解説します

先日、ある個人事業主のWebデザイナーさんから相談を受けました。「確定申告のたびに税金が高くて。年収が増えたのは嬉しいけど、退職金もないし、老後が不安です」と。結論から言うと、こういう個人事業主の方が真っ先に検討すべきなのが、国が運営する「小規模企業共済制度」です。掛金が全額所得控除になりながら、将来は退職金として受け取れる。つまり、節税と老後資金準備を同時に解決できる制度なんです。これ、知らない人が本当に多いんです。

この記事では、小規模企業共済制度の仕組み・メリット・デメリット・加入手続きを、実務現場でよく聞かれる質問とともに整理します。法律はあなたの味方です。制度を正しく理解して、賢く活用していきましょう。

小規模企業共済制度とは:個人事業主・小規模企業経営者のための「退職金」

小規模企業共済制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する公的な共済制度です。つまり、民間の保険会社が販売する商品ではなく、国の制度として中小企業基盤整備機構法に基づき設計されています。1965年に制度が創設されて以来、半世紀以上にわたって個人事業主や小規模企業の経営者を支えてきました。

小規模企業共済制度とは、中小企業の経営者や個人事業主などの積立による退職金制度で、掛金に応じて給付を受け取ることができ、「経営者の退職金」のような役割を果たします。詳しくはこちらをご覧ください。

会社員には退職金制度があり、勤め先が積み立ててくれる。一方、個人事業主やフリーランスは、自分で老後の備えを作らないと誰も用意してくれません。そこで国は、小規模な事業者が自分自身のために退職金を積み立てられる仕組みとして、この制度を整備しました。中小機構の公式情報によると、加入件数は累計で約160万件規模、共済金等の支払い実績も毎年数千億円規模で推移しており、個人事業主にとって最もメジャーな自助制度の一つになっています。

加入対象は、業種に応じて従業員数の上限が定められた「小規模な事業者」です。具体的には、建設業・製造業・運輸業などは常時使用する従業員数20人以下、商業(卸売業・小売業)・サービス業は5人以下といった基準があり、個人事業主本人、共同経営者(事業主1人につき2人まで)、会社等の役員も加入できます。注意点として、配偶者専従者や家族従業員は加入できないケースが多く、また兼業の会社員は基本的に対象外です。「自分で事業を営む者を対象にした制度」と理解しておくと整理しやすいでしょう。

詳細は中小企業庁の制度説明ページ(https://www.chusho.meti.go.jp/)でも案内されているので、自分の業種・規模が加入要件に合致するかは必ず確認してください。

小規模企業共済の最大メリットは「掛金全額所得控除」という最強の節税効果

小規模企業共済が個人事業主に強く推奨される最大の理由が、税制優遇です。これ、本当に強力です。

支払った掛金は、その年の所得から「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除できます。生命保険料控除のように上限4万円といった天井もなく、払った金額そのままが控除される。これは個人事業主にとって極めて有利な仕組みです。

掛金は月額1,000円から70,000円まで、500円刻みで自由に設定できます。仮に月額の上限である7万円を払い続けると、年間掛金は84万円になり、その全額が所得控除になります。たとえば課税所得600万円のフリーランスの場合、所得税率20%・住民税10%を合算した実効税率はおよそ30%ですから、年間で約25万円の節税効果が見込めます。10年継続すれば250万円分の税負担軽減です。つまり、「将来の自分への積立」と「現在の節税」を同時にこなせるという、二重のメリットがある制度なんです。

国税庁が公表している所得控除の仕組み(https://www.nta.go.jp/)の中でも、小規模企業共済等掛金控除は「全額控除」というかなり優遇された位置づけになっています。iDeCo(個人型確定拠出年金)も同じ枠で控除されますが、iDeCoには月額上限が職業別に厳しく設定されているのに対し、小規模企業共済は月額7万円まで使えるため、所得が大きい個人事業主にとっては節税余地がより大きくなります。

私が見てきた現場の感覚で言うと、年収500万円を超えたあたりから「税金が重い」と感じる個人事業主が一気に増えます。そのタイミングで小規模企業共済を月3万円〜5万円から始める方が多い印象です。所得が上振れする年は掛金を増額し、苦しい年は減額するという調整もできるので、変動が大きい個人事業主と相性がとても良い制度だと感じます。

なお、掛金は前納も可能です。年末に1年分前納すれば、その分も同年の所得控除に含められるので、12月時点で「思ったより利益が出てしまった」というケースの駆け込み節税策としても使えます。※ただし、前納すべきかどうかはキャッシュフローと相談する必要があるので、不安な場合は税理士に相談してください。

受取時にも優遇:退職所得・公的年金等控除でさらに有利

小規模企業共済の節税メリットは、掛金支払い時だけでは終わりません。共済金を受け取るときにも、税制上の優遇が用意されています。

共済金の受け取り方法は、主に「一括受取」「分割受取」「一括と分割の併用」の3パターンです。一括で受け取る場合は税法上の「退職所得」として扱われ、分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得」として扱われます。どちらも、通常の事業所得や給与所得に比べて税負担が軽くなる扱いです。

特に退職所得は、勤続年数(≒掛金納付年数)に応じて大きな「退職所得控除」が使えるため、税負担がぐっと圧縮されます。たとえば、20年加入した個人事業主が一括で1,000万円の共済金を受け取った場合、退職所得控除800万円(40万円×20年)が差し引かれ、さらに残額の1/2に対してのみ所得税・住民税が課税されます。つまり、20年積み立てた1,000万円のうち、課税対象になるのは100万円程度。所得控除を上手く組み合わせれば、最終的な税負担は驚くほど小さくなります。

「払うときも控除、受け取るときも控除」という、いわば二段構えの節税が成立する設計になっています。これは法律にもとづいて設けられた優遇なので、要件さえ満たせば誰でも使えます。法律はあなたの味方です。

ただし、注意が必要なのは「短期で解約した場合」です。後ほど詳しく述べますが、加入期間が240か月(20年)未満で任意解約すると、掛金合計を下回る金額しか戻ってこないリスクがあり、しかも「一時所得」として扱われ退職所得控除も使えません。つまり、節税効果と元本割れリスクは表裏一体だということを理解した上で加入すべきです。

共済金の種類とお金がもらえる4つのタイミング

「いざ受け取れるとして、どんな条件で受け取れるの?」という質問はよく受けます。共済金の種類は、主に以下の4つに整理できます。

1. 共済金A(事業廃止・死亡時)

個人事業を廃業した場合、または共済契約者が死亡した場合に受け取れる共済金です。最も優遇された金額が支給され、加入期間が長いほど掛金総額に対する給付率が高くなります。一般的に、20年以上加入していれば掛金よりも多い金額が戻ってきます。

2. 共済金B(老齢給付)

掛金を15年以上納付し、満65歳以上になった共済契約者が請求できる「老齢給付」です。事業を続けていても受け取れるのが特徴で、いわば「公的年金とは別の、自分専用の年金」として活用できます。

3. 準共済金(法人成り・任意退任時)

個人事業を法人化(法人成り)して契約者本人が小規模企業共済の加入要件を満たさなくなった場合、または会社役員が任意退任した場合などに受け取れます。共済金Aほどではないものの、解約手当金よりは高い水準で支給されます。

4. 解約手当金(任意解約)

契約者の都合で任意解約した場合に支給されるお金です。注意すべきは、加入期間が12か月未満だと解約手当金は支給されず(つまり掛金が戻らない)、加入期間が240か月(20年)未満だと掛金総額を下回るという点です。途中解約は基本的に「損」だと考えておきましょう。

つまり、小規模企業共済はあくまで「長期で積み立て、廃業や老齢で受け取る」前提の制度で、短期で資金を引き出す目的には向きません。とはいえ、20年以上加入し続けると掛金以上のリターンが期待できますし、節税メリットも累積していくため、トータルで見れば極めて有利な選択肢になります。

加入のメリットを整理:節税×退職金×貸付制度の3本柱

ここまでで「節税効果」「受け取り時の優遇」を見てきました。改めて、小規模企業共済の主なメリットを実務目線で整理しておきます。

メリット1:掛金全額が所得控除になる節税効果

繰り返しになりますが、年間最大84万円まで所得控除に使えます。生命保険料控除など他の所得控除と比べても、上限額・控除額のいずれも段違いに大きい。確定申告では「小規模企業共済等掛金控除」の欄に金額を記入するだけ。手続きも簡単です。

メリット2:将来の退職金を計画的に積み立てられる

個人事業主に退職金はありません。会社員のように「勤め先が払ってくれる」仕組みがないからこそ、自分で積み立てる必要があります。小規模企業共済なら月1,000円から始められ、家計の状況に応じて掛金を増減できる柔軟性があります。「老後資金が不安だけど、いくらから始めればいいか分からない」という個人事業主の方には、まず月1万円スタートを提案することが多いです。

メリット3:契約者貸付制度で「いざというとき」も安心

これは意外と知られていないんですが、小規模企業共済には掛金の範囲内で低利の貸付を受けられる「契約者貸付制度」があります。事業資金、設備投資、災害時、傷病時など、複数の貸付制度が用意されており、無担保・無保証人で借りられるのが特徴です。利率も民間ローンより大幅に低く設定されています。

つまり、積み立てたお金を「老後まで一切触れない」のではなく、いざとなれば事業を守る資金として活用できる、という安全弁が組み込まれているわけです。資金繰りに困ったときの最後の砦として、心理的にも大きな支えになります。

中小機構のサイト(https://www.smrj.go.jp/)では、それぞれの貸付制度の利率や利用条件が掲載されているので、加入前に一度目を通しておくと「いざというとき何が使えるのか」が明確になります。

メリット4:所得の変動に合わせて掛金を変更できる

個人事業主の所得は年によって大きく変動します。「今年は利益が大きいから掛金を増やしたい」「来年は少し苦しいから減額したい」という調整が、簡単にできるのも嬉しいポイントです。掛金変更は1か月単位で受け付けてもらえるので、決算予測を見ながら12月に掛金変更を申し込む方も多いです。

メリット5:制度自体の安全性が高い

民間の金融商品ではなく、国の政策として中小機構が運営しているため、安全性が高いのも特徴です。資産は厳格に管理され、運用も公的機関の基準に沿って行われています。「老後資金を任せる」相手として、信頼性は申し分ありません。

デメリットと注意点:加入前に必ず押さえておきたい3つのリスク

メリットの多い制度ですが、デメリットや注意点もあります。これを知らずに加入すると、後で「こんなはずじゃなかった」となりかねないので、しっかり確認しておきましょう。

デメリット1:加入期間20年未満の任意解約は元本割れ

最大の注意点はこれです。加入期間が240か月(20年)未満で任意解約すると、解約手当金は掛金合計を下回ります。さらに、加入期間が12か月未満だと、そもそも解約手当金が支給されません。つまり、最初の1年で解約すると掛金が丸ごと戻らない。これは本当に多い相談で、「短期間で解約してしまって損した」という声を何度も聞きました。

ただし、「事業廃止」「死亡」「老齢給付(15年以上加入+65歳以上)」など正当な事由による受給では、20年未満でも掛金以上の給付が受けられるケースが多いです。元本割れは「任意解約」のときに限られると理解しておきましょう。

デメリット2:受取時に課税される(ただし優遇あり)

「掛金は全額所得控除なのに、受取時には課税されるの?」と疑問に思う方も多いです。答えは「課税される。ただし、退職所得・公的年金等控除という大きな優遇がある」です。つまり、受取時の税負担はかなり軽くなる設計ですが、ゼロではない点は知っておきましょう。

特に、退職所得控除を使い切るほどの大きな共済金を一括受取する場合、課税分が発生します。iDeCo・小規模企業共済・退職金など、複数の「退職所得」を受け取るタイミングが重なると、控除枠が圧縮されて課税負担が増えるケースもあります。退職金・iDeCo・小規模企業共済を組み合わせる場合は、受取時期の調整を事前に税理士と相談しておくと安心です。

デメリット3:兼業会社員は加入対象外、配偶者専従者も不可

意外と引っかかるのが加入資格です。本業が会社員で副業として個人事業を営んでいる場合、原則として小規模企業共済には加入できません。「副業で月10万円稼げてきたから、節税のために小規模企業共済を始めたい」というケースは、残念ながら対象外になることが多いんです。

また、青色事業専従者として配偶者などの家族を雇用している場合、その専従者は加入できません。「専従者である配偶者にも節税対策をさせたい」というニーズには応えられない制度設計になっています。※専従者の節税策については、別途iDeCoなど他の方法を検討する必要があります。

要件は中小機構の最新案内(https://www.smrj.go.jp/)で必ず確認してください。

加入手続きと申込方法:どこで・どうやって始めるか

「メリット・デメリットは分かった。じゃあどうやって加入すればいいの?」という段階に来た方向けに、手続きの流れを整理します。

加入の窓口

加入の申込窓口は、主に以下の3パターンです。

1つ目は、商工会・商工会議所・中小企業団体中央会などの委託団体。地域の商工会窓口に行けば、加入申込書をその場で書いて提出できます。2つ目は、銀行・信用金庫・農協などの委託金融機関。普段の取引先で申込手続きが完結します。3つ目は、最近増えている提携税理士・社労士による加入サポート。確定申告の相談ついでに、加入手続きを代行してくれる事務所も多いです。

必要書類

個人事業主の場合、確定申告書の控え(直近1期分)が必要です。開業したばかりで確定申告書がない場合は、開業届の控えで代用できます。会社役員の場合は、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)と役員報酬の確認書類が求められます。共同経営者の場合は、共同経営に関する契約書や報酬の支払いが確認できる書類などが必要です。

書類が揃ったら、申込書・引落口座の届出と一緒に窓口に提出します。掛金の払込は口座振替のみで、現金や振込での支払いはできません。

加入後の確定申告での手続き

掛金は確定申告で「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入することで控除を受けられます。中小機構から毎年「掛金払込証明書」が郵送されるので、確定申告書に添付するか保管しておきましょう。e-Tax(https://www.e-tax.nta.go.jp/)で電子申告する場合は、証明書の記載事項を入力するだけで控除が受けられます。

クラウド会計ソフトを使っている場合は、freee(https://www.freee.co.jp/)やマネーフォワード(https://biz.moneyforward.com/)でも「小規模企業共済等掛金控除」の入力フォームが用意されているので、画面の指示に従うだけで処理できます。手続き面でつまずく要素はほとんどありません。

個人事業主が小規模企業共済を活用すべきタイミング

「いつから加入するのがベストか?」という質問もよく受けます。結論から言えば、「事業所得が安定して200万円〜300万円を超えてきたら検討開始」が一つの目安です。

なぜかというと、事業所得がそれ未満だと節税効果が小さく、無理に掛金を払うことで生活資金を圧迫するリスクの方が大きいからです。一方、事業所得が500万円を超えてくると、所得税の累進課税で税率がぐっと上がります。このタイミングで小規模企業共済を始めると、節税メリットが最大化しやすい。

特に、Web系のフリーランスのように所得が伸びやすい職種では、早めに加入しておくほどメリットが大きくなります。たとえば、ソフトウェア作成者の年収・単価相場の年収データベースを見ると、経験5年以上のソフトウェアエンジニアでは年収600万円を超えるケースも珍しくありません。所得がこのレベルに到達すると、月5万円〜7万円の小規模企業共済掛金が、所得控除としてフル活用できるようになります。

同様に、著述家,記者,編集者の年収・単価相場を確認すると、編集者やコピーライターでも経験を積めば高所得層に到達できる職種です。「いつかはフリーランスとして独立したい」と考えている会社員の方も、独立後すぐに小規模企業共済を検討する前提でキャリア設計しておくと、税負担を最小化しながら老後資金を準備できます。

私が現場で見てきた中で多いのは、「独立直後は不安で加入を見送り、3年目以降に売上が安定したタイミングで加入するパターン」です。ただ、振り返ってみると「もっと早く加入しておけばよかった」と仰る方がほとんど。加入期間は長いほど受取額が増え、節税効果も累積するからです。事業が軌道に乗ったら、月1万円からでも早めに始めることをおすすめします。

在宅ワーク・副業からの独立を見据えて:早期準備の重要性

最近は、在宅ワークや副業から独立して個人事業主になる方が増えています。私のもとに相談に来るフリーランスの中にも、もともとは会社員の副業から始めて、徐々に独立した方が少なくありません。

そういった方向けに、独立前の準備として読んでおくと役立つ記事をいくつか紹介します。まず、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開では、子育てや家事と両立しながら在宅ワークを続ける日常の組み立て方が紹介されています。これから独立して個人事業主になる方にとって、生活リズムの設計は思った以上に重要です。

また、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックでは、在宅ワーク特有の集中力低下に対する具体的な対処法が紹介されています。独立すると「いつでも働ける」「いつでもサボれる」という両刃の剣に直面します。集中力の維持は事業所得の安定に直結し、ひいては小規模企業共済への安定した掛金拠出にもつながります。

仕事の獲得方法に不安があるなら、在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説も参考になります。安定した収入源を確保することが、長期の自助制度を活用する大前提だからです。

独立後に挑戦できる職種としては、生成AI関連の案件も増えています。たとえばAIコンサル・業務活用支援のお仕事では、企業のAI導入を支援する役割が求められており、専門知識を活かしたコンサル単価で取り組める分野です。マーケティング寄りならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発寄りならアプリケーション開発のお仕事など、領域に応じた選択肢があります。

スキル面のサポートとしては、ビジネス文書の正確さを示すビジネス文書検定や、ITインフラ系で評価されるCCNA(シスコ技術者認定)などの資格が信頼性向上に役立ちます。資格と実績で受注単価を上げ、その分を小規模企業共済の掛金に回すサイクルを作ると、節税と老後資金準備の好循環が生まれます。

iDeCo・国民年金基金との違いと併用戦略

「小規模企業共済と似た制度に、iDeCoや国民年金基金があると聞いた。何が違うの?」という質問もよく受けます。結論から言うと、3つの制度は併用可能で、それぞれ目的と特徴が異なります。

小規模企業共済の特徴

事業廃止や老齢を主要な受給事由とする「経営者・個人事業主のための退職金」。掛金は月最大7万円、貸付制度あり、運用は公的機関主導で安全性重視。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の特徴

老後の年金準備に特化した私的年金制度。掛金上限は職業別で異なり、自営業者は月6.8万円まで。受給は原則60歳以降のみで、途中解約は基本的にできない。運用は自分で投信などを選ぶため、収益は運用次第で変動。

国民年金基金の特徴

国民年金(1階部分)の上乗せ「2階部分」として位置づけられた公的制度。掛金上限は月6.8万円(iDeCoと合算で)。受給は終身年金型が中心で、長生きするほど受給総額が増える設計。

併用戦略

3つとも所得控除の対象になるため、上手く組み合わせれば年間150万円超の所得控除を実現できます。たとえば、小規模企業共済月7万円+国民年金基金月3万円+iDeCo月3万円なら、合計月13万円、年間156万円が所得控除になります。事業所得が大きい個人事業主にとっては、強力な節税策になります。

ただし、「全部入り」が常に正解とは限りません。手元のキャッシュフローを圧迫するほど掛金を積み上げると、肝心の事業運転資金が枯渇します。優先順位としては、まず小規模企業共済から始め、所得が伸びてきたらiDeCoや国民年金基金を上乗せしていく、というステップアップが現実的です。※具体的な配分は税理士やFPに相談しながら決めてください。

よくあるトラブル事例:知らないと損する3つの落とし穴

実際の現場で見てきた、小規模企業共済をめぐる「知らないと損する」トラブル事例を3つ紹介します。

事例1:開業初年度に節税目的で加入したが、翌年に廃業

「節税になると聞いて、開業初年度に月7万円で加入した。ところが翌年に事業がうまくいかず廃業。共済金はもらえたが、加入期間が1年強だったので給付額が掛金とほぼ同額にしかならなかった」というケース。加入直後の事業廃止では、給付率がまだ十分に上がっていないため、結果的にメリットが限定的になる場合があります。事業が軌道に乗ってから加入する方が、リスク対比のリターンは高くなります。

事例2:短期で解約して元本割れ

「資金繰りが苦しくなったので、加入から3年で任意解約。掛金合計の80%程度しか戻ってこなかった」というケース。前述のとおり、加入20年未満の任意解約は元本割れします。資金繰りが苦しいときは、解約ではなく契約者貸付制度を使うのが正解です。これ、知らない人が本当に多い。※どうしても解約が必要な場合は、事前に窓口で給付見込み額を確認してから判断してください。

事例3:法人成り後の取り扱いを誤る

「個人事業を法人化(法人成り)したが、小規模企業共済の手続きをせず放置していた。数年後に加入要件を満たしていなかったことが発覚し、共済金の給付が思ったより少なかった」というケース。法人成りした場合は、契約変更手続きをしないと「準共済金」として受け取ることになり、共済金Aより支給率が低くなります。法人成りした方は、必ず中小機構に連絡して契約の継続手続きをしてください。

これらの事例から学べるのは、「制度の細かい仕組みを知らないまま加入すると、本来得られたはずのメリットを取り損ねる」ということです。法律はあなたの味方ですが、味方であるためには制度を正しく理解する必要があります。

@SOHO独自データの考察:個人事業主・フリーランスが小規模企業共済を活用する意義

@SOHOには、長年にわたってフリーランス・個人事業主の方々から寄せられた案件データや、職種別の単価・年収相場が蓄積されています。このデータから見えてくるのは、「個人事業主の所得は職種・経験年数・スキル特化度で大きく分散している」という事実です。

たとえばソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、エントリー層と熟練層では年収レンジに数倍の差があります。同様に著述家,記者,編集者の年収・単価相場でも、編集者やライターの収入は実績と専門領域で大きく変わってきます。つまり、個人事業主は「収入の上振れが起きやすい職業群」だということ。

収入が上振れする年に掛金を増やし、事業所得を圧縮することで、累進課税の高税率帯から逃れることができます。これは法人化(マイクロ法人化)と並ぶ、個人事業主の代表的な節税戦略です。@SOHOのデータからも、年収600万円を超えるフリーランスの所得控除活用率は、それ未満の層と比べて明らかに高い傾向が見られます。

また、フリーランス保護新法の施行以降、個人事業主が「事業として継続できる体制」を整える重要性は増しています。報酬の支払い遅延や一方的な契約変更といったリスクに対して、自助の備えとして小規模企業共済の貸付制度を活用しておくと、いざというときに事業を継続できる体力を確保できます。

つまり、小規模企業共済は単なる節税策ではなく、「事業を長く続けるための安全網」でもあるんです。フリーランスとして10年、20年と仕事を続けていくなら、早めに加入してじっくり積み立てる。これが、@SOHOで活躍する個人事業主の多くが取っている賢い戦略です。

老後の資金不安・税負担・事業継続リスク。個人事業主が抱える3つの大きな悩みに、小規模企業共済は1つの制度で答えを提供してくれます。掛金1,000円から始められる、加入要件さえ満たせば誰でも使える、そして国が運営する安全な制度。これだけのメリットがある制度を活用しない手はありません。事業が一定の規模に達したら、ぜひ一度、中小機構や商工会の窓口に相談に行ってみてください。

よくある質問

Q. 掛金の全額が所得控除になると、具体的にどのくらい節税になりますか?

課税される所得金額によって異なりますが、例えば課税所得が400万円の人が月額7万円(年間84万円)を掛けた場合、所得税と住民税を合わせて年間で約25万円程度の節税効果が見込めます。

Q. 利用する上でのデメリットや注意点はありますか?

加入から20年(240ヶ月)未満で自己都合による「任意解約」をした場合、受け取れる金額が掛金合計額を下回る(元本割れする)リスクがあります。ただし、事業を廃業した場合などの「共済事由」による解約であれば、加入期間が6ヶ月以上 で掛金以上の共済金が受け取れます。

Q. 小規模企業共済の貸付制度はすぐに使えますか?

加入期間や掛金納付実績に応じて利用可能です。一般貸付であれば、最短で即日融資が可能なケースもありますが、事前に利用条件をよく確認しておくことをお勧めします。

Q. iDeCoと小規模企業共済は併用できますか?

併用可能です。iDeCoは月最大68,000円、小規模企業共済は月最大70,000円まで、合計月138,000円の所得控除が可能。フリーランスの節税策としては両方フル活用が理想です。

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長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津

行政書士・元企業法務

企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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