動画の字幕づくりを未経験から始めたシングルマザーの初月の手取り

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
動画の字幕づくりを未経験から始めたシングルマザーの初月の手取り

この記事のポイント

  • シングルマザーが在宅で動画の字幕づくりを始めるための実務を
  • 仕事の3類型・単価相場・必要ツール・未経験からの手順まで具体的に整理しました
  • AI文字起こし普及後にどこで稼げるのかを2026年の求人データから客観的に解説します

結論から書きます。在宅の字幕づくりは、シングルマザーの在宅ワークとして「かなり相性がいい部類」に入ります。理由は3つあって、納期が日単位で締切に幅のある案件が多いこと、音を出さずに作業できること、そして未経験からの学習コストが動画編集全体の中では最も低いことです。

ただし、条件があります。「AIが自動生成した字幕を直すだけの案件」を選ぶと、単価が上がらないまま消耗します。2026年時点で字幕づくりが仕事として成立しているのは、AIが苦手な部分を人間が引き受けている領域だけです。この記事では、その境界線がどこにあるのかを、求人票の実データを見ながら整理します。

「シングルマザー 動画の字幕づくり 在宅」で検索している方の多くは、動画編集の広告を見て「これなら私にもできるかも」と思った段階だと推測します。その直感は、半分正しくて半分危ういです。どこが正しくてどこが危ういのかを、順番に書いていきます。

「字幕づくり」と呼ばれる仕事は、実は3つに分かれている

まず定義を整理します。求人サイトで「字幕」「テロップ」と書かれている募集は、中身が3種類あります。この3つは必要なスキルも単価も将来性も違うので、混同したまま応募すると想像と違う仕事に当たります。

テロップ入れ(SNS・YouTube向けの装飾字幕)

最も案件数が多いのがこれです。YouTubeやショート動画で、話している内容を画面に大きく表示するあの文字です。単に文字を出すだけでなく、フォントの選択、色、縁取り、出現タイミング、強調したい語の装飾までを含みます。

この領域の本質は「文字起こし」ではなく「演出」です。全部の言葉を出すわけではなく、視聴者が飛ばしそうな部分を要約したり、逆に笑いどころを強調したりする。つまり編集判断が入るということで、ここがAIに置き換わりにくい理由になっています。

求人票の書かれ方を見てみます。

SNS動画編集スタッフ募集!未経験からプロを目指せるフルリモートワークで、残業ゼロの18時退勤です。スマホやPCを使い、動画のチェックやテロップ・BGM挿入などの簡単な編集から始め、ゆくゆくは企画アイデア出しにも携わります。入社後はPC操作から丁寧な研修があり、先輩がしっかりサポートするので安心です。土日祝休みで年間休日120日以上、各種社会保険完備、在宅勤務手当、ノートPC貸与、サブスク補助など充実した待遇をご用意しています。 出典: 求人ボックス

注目すべきは「テロップ・BGM挿入などの簡単な編集から始め、ゆくゆくは企画アイデア出しにも携わります」という部分です。ここに、この仕事のキャリア構造が正直に書かれています。テロップ入れは入口であって、そこに留まる想定ではないということです。

ちなみにこの求人は雇用型で、ノートPC貸与・社会保険完備と書かれています。業務委託で自分の機材を用意する形態とは、初期費用の面でまったく条件が違います。未経験から始めるなら、機材を貸与してくれる雇用型のほうが立ち上がりは楽です。正直なところ、業務委託で最初から高スペックPCを自費で買うのは、リスクの取り方として合理的とは思えません。

クローズドキャプション(アクセシビリティ対応の字幕)

放送番組、企業の研修動画、自治体の配信、教育コンテンツなどに付ける、正確性が求められる字幕です。聴覚に障害のある方や、音を出せない環境で視聴する方のために、話されている内容を正確に文字化します。

テロップ入れとの決定的な違いは、「省略が許されない」ことです。話者の識別、効果音の表記、専門用語の正確な表記、そして1行あたりの文字数と表示秒数のルールを守る必要があります。読める速度で出すというのは、想像以上に技術が要ります。目安として、日本語字幕は1行あたり13文字から16文字、同時に表示するのは2行までという運用が一般的です。

この領域は、企業のコンプライアンス対応や公共性の観点から需要が伸びています。求人検索の結果に「放送業界No.1の精度 字幕生成AI/週4在宅可/自社開発」といった募集が並ぶのは、AI生成の後工程を人が担保する体制が業界の標準になりつつあるからです。

翻訳字幕(外国語コンテンツのローカライズ)

外国語の動画に日本語字幕を付ける、あるいは日本語の動画に外国語字幕を付ける仕事です。単価は3類型の中で最も高く、語学力が単価に直結します。

求人一覧には「フルリモート/ヒンディー語/縦型ショート動画の翻訳」といった募集も見られます。英語以外の言語ができる方は、競合が少ないぶん有利になる領域です。ただし、翻訳字幕はスポッティング(字幕の表示タイミングを決める作業)と翻訳の両方が必要で、参入には一定の準備が要ります。

未経験のシングルマザーが最初に選ぶなら、テロップ入れかクローズドキャプションです。翻訳字幕は語学力という前提条件がある以上、それを持っている方だけの選択肢になります。

AIが自動で字幕を出す時代に、この仕事は残るのか

正面から書きます。ここを避けて「未経験でも稼げます」とだけ書く記事は、読者に対して不誠実だと思います。

2026年現在、音声認識AIの精度は、明瞭な発話・単一話者・静かな環境という条件下では実用水準に達しています。無料で使える文字起こしツールでも、そこそこ読める字幕は出ます。これは事実です。

その上で、AIが依然として苦手な領域が明確に存在します。5つあります。

1つ目が、複数話者が重なる会話です。座談会、対談、インタビューなど、話者が交錯する音声では、誰が何を言ったかの割り当てが崩れます。

2つ目が、固有名詞と業界用語です。人名、企業名、商品名、専門分野の術語は、文脈を知らないと正しい漢字に変換できません。医療、法務、IT、金融などの動画では、この誤変換が致命的になります。

3つ目が、話し言葉の整形です。実際の会話は「えー」「あの」「ですけど、その」といった要素だらけで、そのまま文字にすると読めません。どこを削り、どこを残すかは、意味の理解を伴う判断です。

4つ目が、表示タイミングと改行位置です。文字が出るタイミングが話者の口とずれると、視聴者は強い違和感を持ちます。また、意味の切れ目を無視した改行は読解速度を落とします。AIの自動改行は、この点でまだ雑です。

5つ目が、演出判断です。どの語を強調するか、どこで文字を大きくするか、視聴維持率を上げるためにどう見せるか。これは編集者の仕事であって、文字起こしの仕事ではありません。

つまり、2026年に字幕づくりで収入を得るということは、「AIの出力を人間が仕上げる工程」を引き受けるということです。ゼロから聞き取って打ち込む仕事は、確かに減りました。ただ、動画コンテンツの総量自体が増え続けているので、仕上げ工程の総需要はむしろ拡大しています。

正直なところ、「AIに仕事を奪われる」という言い方は、この領域については的外れだと考えています。奪われるのは「打ち込むだけの作業」であって、「読めるようにする判断」ではありません。

報酬相場と、収入の目安

数字の話に入ります。単価の出方は、契約形態によって3パターンあります。

雇用型(アルバイト・パート・契約社員)の場合、時給制が基本です。求人の検索結果には「時給1600円〜/動画のテロップや字幕の入力」といった募集が見られ、未経験可の案件でおおむね1,100円から1,600円のレンジに収まります。正社員登用のある求人では、月給21万円台からスタートし、経験を積むと27万円から30万円台のレンジに入る募集が出ています。

業務委託型では、動画1本あたりの単価制が主流です。テロップ入れの相場は、10分程度の動画1本で3,000円から8,000円程度。ショート動画(60秒以内)なら1本500円から2,000円程度が中心です。カット編集やBGM挿入まで含む「編集一式」になると、10分動画で1万円から3万円程度まで上がります。

分単位で発注される案件もあります。クローズドキャプション系では、動画1分あたり100円から300円程度が一つの目安です。

ここで重要なのが、実作業時間との関係です。未経験の段階では、10分の動画にテロップを入れるのに4時間から6時間かかることがあります。単価5,000円の案件を5時間かけたら、時間あたり1,000円です。これは最低賃金と大差ありません。

しかし、この作業時間は確実に短縮します。ショートカットキーを覚え、テンプレートを作り、AI文字起こしの下地を活用するようになると、同じ10分動画が1.5時間から2時間で仕上がるようになります。単価が同じでも、時間あたりの収入が3倍になるということです。

つまり、この仕事で稼ぐかどうかを決めるのは単価ではなく処理速度です。単価の高い案件を探すより、同じ案件を速く仕上げられるようになるほうが、収入への影響が大きい。ここを理解している人とそうでない人で、半年後の差がはっきり出ます。

必要なスキルとツール。何を用意すればいいのか

機材から書きます。

パソコンは必須です。スマートフォンで完結する案件も存在しますが、選べる案件の幅が極端に狭くなります。スペックの目安は、メモリ16GB以上、ストレージはSSDで512GB以上。テロップ入れ主体ならこれで足ります。4K素材を扱う案件を受けるなら、もう一段上が必要になりますが、最初から想定する必要はありません。

前述の通り、雇用型の求人ではPCが貸与されるケースがあります。手持ちの機材に不安がある方は、まず貸与ありの求人から入るのが合理的です。

ソフトウェアは、案件によって指定されます。無料で始められるものから、月額課金のプロ向けまで幅があります。重要なのは、複数を中途半端に触るのではなく、まず1つを使い込むことです。求人で最も指定されることが多いソフトを1つ選び、そのショートカットキーを体に入れる。ここに時間を投じるのが最短ルートです。

スキル面で必要なのは4つです。

1つ目、タイピング速度。日本語で1分あたり200文字程度打てると、作業が明らかに楽になります。これは練習量に比例するので、伸ばせます。

2つ目、日本語の運用力。話し言葉を読める文章に整える作業なので、文章力がそのまま品質になります。ここは軽視されがちですが、単価の差はここで生まれます。文書作成の基礎を客観的に証明したい場合、ビジネス文書検定のような資格が履歴に効くことがあります。

3つ目、指示を正確に読む力。クライアントは「フォントはこれ、色はこれ、1行は何文字まで」といった細かいレギュレーションを渡してきます。これを守れない人は、品質以前の問題で継続案件を失います。

4つ目、ファイル管理と納品作法。素材の受け取り、書き出し設定、ファイル名規則。地味ですが、ここが雑な人は信頼されません。

私自身、編集の仕事を始めた頃に、書き出し設定を確認せずに納品して差し戻しを食らったことがあります。中身の品質はむしろ褒められたのに、フレームレートの設定が指定と違うという一点で、丸一日分の工程が戻りました。この手のミスは、能力ではなく確認手順の有無で決まります。チェックリストを作るのが唯一の対策です。

未経験から仕事を受けるまでの5ステップ

具体的な順番を書きます。

ステップ1:ソフトを1つ決めて、10本作る

学習の最短ルートは、講座を受けることではなく、実際に手を動かすことです。任意の動画を素材として、自分でテロップを付ける練習を10本やる。誰にも納品しない練習でいいので、10本です。

なぜ10本かというと、5本目あたりで作業手順が固まり、8本目あたりでショートカットが指に入るからです。3本で止めると、まだ何も身についていません。

ステップ2:ポートフォリオを2本作る

応募時に必ず求められるのが、実績サンプルです。未経験でも、練習で作ったものを出せば問題ありません。

出すべきは2本。1本はテンポの速いショート動画、もう1本は解説系の長尺動画です。この2本があれば、発注側は「速い演出も、読ませる字幕も両方できる」と判断できます。全部同じテイストの作品を5本出すより、対照的な2本のほうが評価されます。

ステップ3:単価の低い案件から入って、評価を作る

最初の数件は、正直、割に合いません。これは受け入れてください。実績ゼロの状態で高単価案件に応募しても、選考を通りません。

狙うべきは、継続案件です。単発の高単価より、月10本の継続案件のほうが、収入の安定性でも学習効率でも上回ります。同じクライアントの動画を続けて担当すると、レギュレーションを覚えられるぶん、作業時間が回を追うごとに短くなるからです。

ステップ4:作業を仕組み化して時間を圧縮する

前述の通り、収入を決めるのは処理速度です。3か月目あたりで、必ずここに手を付けてください。

具体的には、よく使うテロップのスタイルをテンプレート化する、AI文字起こしで下地を作ってから修正する運用に切り替える、ショートカットキーを見ずに押せるようにする。この3つで、作業時間は半分近くまで落ちます。

在宅で細切れの時間を使う働き方をしていると、作業の立ち上げに時間を取られがちです。この点については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックにある手法が、字幕作業のような反復系のタスクに特に効きます。

ステップ5:単価交渉、または領域の移動

半年から1年で、次の分岐が来ます。同じクライアントに単価改定を打診するか、より単価の高い領域(クローズドキャプション、編集一式、ディレクション)に移るかです。

打診のタイミングは、納品の品質が安定し、修正指示がほとんど来なくなった時期です。この状態は、発注側から見ると「代えがきかない」状態なので、交渉が通りやすくなります。

シングルマザーの制約との相性を、正直に検証する

在宅ワークの適性は、収入額ではなく制約との相性で決まります。字幕づくりを、この観点で採点します。

音を出さずに作業できるか。この点は問題ありません。編集ソフトの音声はヘッドホンで聞くので、子どもが寝ている横でも作業できます。電話系の在宅ワークと決定的に違うのはここです。生活音が入っても、誰にも迷惑がかかりません。

中断に強いか。これも問題ありません。作業を途中で止めて、あとから再開することに何の支障もありません。プロジェクトファイルを保存して閉じるだけです。子どもの呼びかけで10回中断しても、成果物は変わりません。

納期の余裕はどうか。ここは案件によります。配信予定に紐づく案件は、納期が固定でずらせません。一方、企業の研修動画やアーカイブ字幕の案件は、比較的余裕のある納期で発注されます。子どもの体調で作業が飛ぶリスクを考えるなら、納期に余裕のある案件を選ぶべきです。応募時に「納期は何日ありますか」と聞くのは、まったく失礼ではありません。むしろ、工程を理解している人だと評価されます。

学習時間の確保はどうか。ここが最大の課題です。前述の練習10本には、合計で30時間から50時間程度かかります。この時間を、収入ゼロの状態で捻出する必要がある。ここで脱落する方が一定数います。

対策は、期間を長く取ることです。1か月で詰め込もうとすると挫折します。1日1時間、3か月と設計すれば、無理なく到達できます。他の在宅ワークで収入を作りながら並行して学ぶという選択もあります。どんな在宅ワークがあるかは在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングにスキル別で整理されているので、並走させる仕事を選ぶ際の参考になります。実際の時間の使い方については在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開に具体例があります。

注意すべき求人と、高額スクールの問題

ここは辛口に書きます。

動画編集は、この数年で「稼げる副業」として大量に宣伝された領域です。その結果、教える側のビジネスが過剰に膨らみました。

注意すべき第1のパターンが、高額スクールです。数十万円の受講料で「案件保証」「卒業後すぐ稼げる」と謳うもの。案件保証の中身が、極端に安い自社案件を数件回すだけというケースがあります。契約前に、保証される案件の単価と件数を書面で確認してください。口頭説明だけで契約するのは危険です。

正直なところ、字幕づくりの基礎習得に数十万円は不要だと考えています。ソフトの操作は公式チュートリアルと無料の解説動画で十分に学べます。お金を払う価値があるとすれば、それは技術そのものではなく、フィードバックをもらえる環境に対してです。

第2のパターンが、金銭を先に要求する募集です。登録料、システム利用料、教材費といった名目で働く前に支払いが発生するもの。正規の発注でこの構造はありません。

第3が、業務範囲が曖昧な募集です。「動画編集全般」としか書かれておらず、テロップだけなのか、カット編集やサムネイル作成まで含むのかが不明なもの。受注後に作業範囲が膨らみ、実質単価が半分になるという事態が起きます。契約前に、作業範囲・修正回数の上限・納期を明文化してください。

第4が、著作権と二次利用の取り決めがないケースです。制作物の権利がどちらに帰属するのか、ポートフォリオとして公開してよいのかを、事前に確認しておく必要があります。公開可否を確認せずに実績としてSNSに載せて、トラブルになった例があります。

第5が、SNSのダイレクトメッセージによる個別勧誘です。運営元の商号・所在地が確認できない相手とは契約しないでください。

業務委託で働く場合、発注者には取引条件を書面等で明示する義務があります。制度の内容については公正取引委員会のサイトに情報がまとまっています。条件が書面で出てこない発注は、それ自体が黄信号です。

税務と契約形態。始める前に整理しておくこと

業務委託で受注する場合、収入から必要経費を引いた所得に対して課税されます。パソコン、編集ソフトの利用料、通信費は、業務に使った割合に応じて経費に計上できます。高額なパソコンは、購入年に全額を経費にできるとは限らず、減価償却の対象になる場合があります。この扱いについては国税庁のサイトに具体的な説明があります。

雇用型で働く場合は、勤務条件によって社会保険の加入対象になります。加入条件は改正が続いている領域なので、最新の内容は日本年金機構で確認するのが確実です。前掲の求人票にあった「各種社会保険完備」という記載は、雇用型ならではの条件です。働き方に関する制度全般は厚生労働省のサイトが一次情報になります。

そして重要な注意点です。ひとり親世帯を対象とした支援制度は、所得の状況によって内容が変わる仕組みのものがあります。ただし、対象となる所得の範囲、判定に使う年度、控除の扱いは制度ごとに異なり、自治体ごとの運用差もあります。ネット記事に書かれた金額や基準をそのまま自分に当てはめるのは避けてください。収入が増える見込みが立った段階で、お住まいの市区町村のひとり親支援窓口または子ども家庭関連の担当課に、想定している働き方と金額を伝えて相談するのが確実です。

子どもの生活リズムに、字幕作業をどう当てはめるか

在宅で働けることと、実際に手を動かせる時間があることは別の話です。ここを曖昧にしたまま受注量を決めると、締切前に睡眠時間を削る日が続き、体調を崩して評価まで落ちるという流れになります。作業時間の見積もりは、希望ではなく実測で立ててください。

平日に確保できるのは、実質90分だと考える

夕食、入浴、寝かしつけを終えてからパソコンの前に座ると、着席は21時から22時になります。そこから翌朝の準備を逆算すると、集中して作業できるのは90分前後です。ここに「子どもが途中で起きる」「翌日の持ち物を用意し忘れていた」といった中断が週に何度か入ります。平日に確保できる作業時間は、合計で7時間前後と見積もるのが現実的です。

10分の動画にテロップを入れる作業が初期段階で3時間かかるなら、平日だけでは1本の納品に2日以上かかる計算になります。この数字を先に出したうえで、納期に余裕のある案件だけを受けてください。「今週中に3本」といった募集は、慣れるまでは見送って構いません。断ったことで信用を失うことはありませんが、受けて遅れた場合の損失は大きいです。

子どもが体調を崩した週をどう乗り切るか

保育園や学校からの呼び出しは、予告なく来ます。ここで効くのが、納期の前倒しです。発注者と合意した納期の2日前を自分の締切に設定しておくと、1日つぶれても遅延になりません。

それでも間に合わないと分かった時点で、発注者にはできるだけ早く連絡します。前日に「間に合いません」と伝えるのと、3日前に「2日遅れそうです、代替案として前半だけ先に納品できます」と伝えるのでは、相手の受け止め方がまったく違います。遅れるという情報自体は悪い材料ですが、早く共有されれば発注側は公開スケジュールを調整できます。この一手間があるかどうかで、次の依頼が来るかが決まります。

長期休みの前に、受注量を先に減らす

夏休みや冬休みは、日中の在宅時間が丸ごと子どもとの時間に変わります。ここで通常どおりの本数を抱えると、ほぼ確実に破綻します。休みに入る2週間前から新規の受注を絞り、期間中は継続案件のうち作業量の読めるものだけを回す。この調整を毎年同じ時期に繰り返しておくと、発注者側も「この人はこの時期は本数が落ちる」と分かったうえで発注してくれるようになります。予定を先に伝えておくことは、わがままではなく取引条件の共有です。

トラブルが起きたときの、実務的な対処

素材の音声が聞き取れないとき

現場で収録された音声には、空調や環境音が乗っているもの、複数人の声が重なっているもの、専門用語が続くものがあります。聞き取れない箇所を推測で埋めると、意味が変わってしまい、修正のやり取りが長引きます。

対処は単純で、聞き取れなかった箇所にタイムコードを付けて質問リストにまとめ、まとめて1回で確認することです。1箇所ごとに連絡すると、発注者の手間が増えて印象が悪くなります。専門用語の多い分野なら、初回の納品前に用語の一覧を共有してもらえないか相談してみてください。2本目以降の作業速度がはっきり変わります。

修正依頼が想定を超えて出てきたとき

契約時に修正回数の上限を決めていなかった場合、修正が延々と続くことがあります。この状態になったら、感情的に押し返すのではなく、最初に合意した作業範囲を文面で確認するところから始めます。「当初のご依頼はテロップ挿入まででしたが、今回のご指示はカット構成の変更を含んでいます。追加でお受けする場合の条件をご相談させてください」という形です。

業務委託の取引では、発注時に業務の内容や報酬額といった条件を明示することが求められる仕組みがあります。取引条件の明示や、取引上の問題についての相談先は公正取引委員会のサイトに情報がまとまっています。制度が適用される範囲は取引の形態によって変わるため、自分のケースに当てはまるかどうかは一般論で決めつけず、窓口に確認してください。

報酬が支払われないとき

支払いが遅れたら、まず事実の確認からです。請求書の送付漏れ、振込先の記載ミス、担当者の異動による引き継ぎ漏れといった単純な行き違いが、実際には少なくありません。ここでいきなり強い文面を送ると、こちらが不利になります。

確認しても支払われない場合に効いてくるのが、やり取りの記録です。発注時のメッセージ、納品したファイル名と日時、請求書の控えを、案件ごとにフォルダを分けて保存しておいてください。相談する段階になったとき、記録が揃っているかどうかで話の進み方が変わります。契約が雇用にあたるのか業務委託にあたるのかによって相談先も変わるため、働き方の区分については厚生労働省の情報を確認したうえで、公的な相談窓口に持ち込むのが確実です。

字幕から先に広がるキャリアと、市場データからの考察

字幕づくりを「終着点」と考えると、単価の天井にぶつかります。ここから先の道筋を整理します。

第1の方向が、編集全体への拡張です。テロップからカット編集、BGM・効果音、サムネイル制作へと範囲を広げると、1本あたりの単価が数倍になります。求人票に「ゆくゆくは企画アイデア出しにも携わります」と書かれていたのは、この経路のことです。

第2が、ディレクション側への移動です。複数の編集者に発注し、品質を管理する役割。作業単価ではなく案件単価で報酬が決まるようになるため、稼働時間と収入の連動が緩みます。子育て中の方にとって、これは実は大きな意味を持ちます。

第3が、テキスト系への転換です。字幕づくりで身につく「話し言葉を読める文章に整える力」は、ライティングと直結します。実際、字幕から取材記事や構成台本へ移る方は少なくありません。文章系の職種の単価水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に整理されています。

第4が、技術寄りへの転職です。動画配信の裏側には、エンコード、配信基盤、字幕データの規格といった技術領域があります。ここに関心が向くならアプリケーション開発のお仕事で仕事の中身を確認できますし、単価の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。ネットワークやインフラ側から入る場合はCCNA(シスコ技術者認定)が定番の入口です。

第5が、AI活用の支援側に回るパターンです。字幕づくりでAI文字起こしを日常的に使っていると、「AIの得意・不得意」が体感で分かるようになります。この感覚は、企業のAI導入支援の現場でそのまま価値になります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事AI・マーケティング・セキュリティのお仕事を見ると、企業が外部に何を求めているかが具体的に分かります。

20年この市場を見てきた立場からの観察

フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、字幕・編集系で長く続いている人には、はっきりした共通点があります。作業の速さではなく、「戻ってくる修正が少ない」ことです。

発注する側にとって、修正のやり取りは最もコストの高い工程です。1回の確認で通る人と、3回往復する人では、同じ単価でも発注側の負担がまったく違う。だから、多少単価が高くても、修正が来ない人に仕事が集まります。長く続く人ほど、納品前の自己チェックに時間を使っています。

もう一つ、運営者として見てきて構造的にはっきりしていることがあります。同じ動画1本の制作費でも、制作会社と代理店が何段も入る形で下請けすると、末端の作業者に届く金額は元の予算の一部です。仲介手数料が乗らない直接の取引になると、依頼する側は同じ予算でより多くの本数を頼めて、受ける側は手取りが厚くなる。手数料0%という条件が効いてくるのは、金額の大小そのものではなく、限られた時間で働く人ほど1本あたりの手取りが生活に直結するからです。

子育てをしながら働く場合、投入できる時間には上限があります。だからこそ、単価を上げる努力と、処理速度を上げる努力と、中間コストを減らす選択の3つを、同時に進める必要があります。字幕づくりは、この3つすべてに手を打てる仕事です。始めるハードルの低さだけで選ぶのではなく、1年後にどこへ行くかを決めてから始めてください。それだけで、結果はかなり変わります。

よくある質問

Q. 未経験でも在宅の字幕づくりで仕事を受けられますか?

受けられます。まず編集ソフトを1つ決めて練習を10本こなし、テンポの速いショート動画と解説系の長尺動画を1本ずつポートフォリオとして用意してください。最初の数件は単価が低くても、継続案件を狙うほうが学習効率も収入の安定性も上がります。練習には合計30時間から50時間を見込んでください。

Q. 単価の目安はどれくらいですか?

雇用型なら時給1,100円から1,600円程度、業務委託なら10分程度の動画1本のテロップ入れで3,000円から8,000円、ショート動画で500円から2,000円が中心です。ただし未経験時は10分動画に4時間から6時間かかるため、実質時給は低くなります。慣れると同じ作業が1.5時間から2時間になり、時間あたり収入が大きく変わります。

Q. AIの自動字幕が普及していますが、この仕事は残りますか?

残ります。ただし「聞いて打ち込むだけ」の作業は減りました。AIが苦手なのは、複数話者の重なり、固有名詞や専門用語、話し言葉の整形、表示タイミングと改行位置、そして演出判断の5点です。2026年の字幕づくりはAI出力を人が仕上げる工程が中心で、動画の総量が増えているぶん仕上げ需要は拡大しています。

Q. シングルマザーの働き方として向いていますか?

向いている部分が多い仕事です。ヘッドホンを使えば音を出さずに作業でき、途中で何度中断しても成果物に影響しません。一方で納期は案件によって差があるため、応募時に納期日数を確認し、余裕のある案件を選んでください。最大の課題は学習期間の時間確保なので、1日1時間で3か月という設計にすると無理がありません。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月25日最終更新:2026年8月10日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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