副業の業務委託でもフリーランス新法に守られる|会社員が使える保護の範囲 2026


この記事のポイント
- ✓副業で業務委託を受けている会社員も
- ✓フリーランス新法の保護対象になるケースは多いです
- ✓適用範囲・義務内容・トラブル時の相談窓口を実務目線で解説します
会社員として働きながら、休日や仕事終わりに業務委託契約で副業を受けている人にとって、「フリーランス新法って自分にも関係あるの?」という疑問は切実だと思います。副業 業務委託 フリーランス新法の関係を正しく理解していないと、報酬の未払いや一方的な発注取消しに遭ったとき、どこに相談すればいいのか分からず泣き寝入りしてしまうことがあります。結論から言うと、副業で業務委託を受けている会社員も、条件を満たせばこの法律の保護対象になります。この記事では、適用範囲の判定基準から実務上の注意点まで、契約実務の現場で見てきた視点で整理します。
副業と業務委託を取り巻く市場の現状
まず前提として、副業をめぐる環境がここ数年で大きく変わってきたことを押さえておきたいです。政府は2018年頃から働き方改革の一環として副業・兼業の解禁を推進してきました。厚生労働省がモデル就業規則から「副業禁止」の規定を削除したのをきっかけに、大手企業でも副業を許可する動きが広がっています。人材サービス各社の調査でも、副業を容認する企業の割合は年々増加傾向にあり、正社員が業務委託契約を結んで社外の仕事を請け負うケースは珍しくなくなりました。
一方で、フリーランスとして働く人の数も右肩上がりです。内閣官房の調査によれば、日本国内で広義のフリーランスとして働く人は数百万人規模にのぼるとされ、その中には副業として業務委託を受けている会社員も相当数含まれています。この「本業は会社員、副業はフリーランス」という働き方が一般化したことで、発注者と受注者の力関係の非対称性が社会問題として顕在化しました。
具体的には、報酬の支払いが遅れる、口約束だけで仕事を発注されて後から「言った言わない」のトラブルになる、成果物の受領後に突然「やっぱり不要」と言われて報酬が支払われない、といったケースが後を絶ちませんでした。会社員の副業は本業ほど交渉力を持ちにくく、発注側から見ても「片手間の仕事」として軽視されがちな面があります。こうした背景から、フリーランス(業務委託で働く人)を保護するための法律が新設される流れになりました。
フリーランス新法とは何か
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、通称フリーランス新法やフリーランス・事業者間取引適正化等法と呼ばれています。2024年11月に施行されたこの法律は、フリーランス(特定受託事業者)に業務を委託する事業者(特定業務委託事業者)に対して、一定の義務を課すものです。
下請法と似た趣旨の法律ですが、下請法が資本金基準で適用対象を絞り込んでいたのに対し、フリーランス新法は資本金の大小に関わらず、従業員を使用している事業者であれば原則として適用対象になる点が大きな違いです。つまり、これまで下請法の網から漏れていた小規模な発注者も規制対象になったということです。
フリーランス新法に違反した場合は「公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものとする。また、 命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処する」とされています。 出典: houjin-kessan.yoshida-zeimu.jp
罰則規定があることからも、この法律が実効性を持たせるために作られたことが分かります。単なる努力義務ではなく、違反すれば行政による立入検査や勧告、命令、さらには罰金という段階的な措置が用意されています。
特定受託事業者の定義
フリーランス新法で保護対象となる「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者のうち、従業員を使用していない個人、または代表者以外に役員がおらず従業員も使用していない法人を指します。ここでのポイントは、「本業が会社員かどうか」は判定基準に含まれていないという点です。つまり会社員が副業で業務委託を受ける場合でも、その副業の実態が個人事業として行われ、自身が従業員を雇っていなければ、特定受託事業者に該当します。
副業で業務委託を受ける会社員がフリーランス新法の対象になる条件
ここが最も気になるポイントだと思うので、詳しく整理します。副業をしている会社員がフリーランス新法の保護を受けられるかどうかは、本業の雇用形態ではなく、副業の契約形態と実態で判断されます。
業務委託契約であること
まず前提として、副業が「雇用契約」ではなく「業務委託契約(請負契約・準委任契約など)」であることが必要です。副業先でアルバイトやパートとして雇用されている場合は、労働基準法の適用対象であり、フリーランス新法の対象にはなりません。逆に、成果物の納品やタスク単位の業務遂行で報酬を受け取る形態であれば、業務委託契約とみなされ、フリーランス新法の適用対象になり得ます。
個人として契約していること
副業を法人化せず、個人事業主または個人として契約している場合に対象になります。副業のために自ら会社を設立し、その法人として発注者と契約している場合は、その法人に従業員がいなければ引き続き対象になりますが、従業員を雇っていれば対象外になる可能性があります。多くの会社員副業ワーカーは個人として契約しているはずなので、このケースは実質的に対象になることが多いです。
発注者が事業者であること
発注元が個人ではなく、事業者(法人または個人事業主で従業員を使用している者)である必要があります。友人からの個人的な依頼のような、事業者性のない発注は対象外です。ただし副業マッチングサービス経由で企業やチームから業務委託を受けるケースの大半は、発注元が事業者に該当します。
この記事ではフリーランス新法が副業に与える影響や、実際に副業の契約を結ぶ際の注意点などについてご紹介します。 出典: mid-works.com
発注事業者に課される義務内容
フリーランス新法では、発注者側(特定業務委託事業者)にいくつかの義務が課されています。副業ワーカーとして仕事を受ける際、これらの義務が守られているかどうかを確認できると、トラブルを未然に防げます。
書面等による取引条件の明示義務
業務委託をする際、発注者は業務の内容、報酬額、支払期日などの取引条件を、書面または電磁的方法(メールやチャットツールなど)で明示しなければなりません。口頭だけの発注は原則として認められていません。これは副業ワーカーにとって非常に重要な保護で、「言った言わない」のトラブルを防ぐ役割があります。もし発注者から口頭のみで仕事を依頼された場合は、遠慮せずに書面での契約条件の明示を求めるべきです。
報酬支払期日の設定・期日内の支払義務
発注者は、成果物や役務の提供を受けた日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に、報酬の支払期日を定める必要があります。さらに、その期日内に実際に報酬を支払う義務も課されます。これまで「検収が遅れているから支払いも遅れる」といった曖昧な運用がまかり通っていた業界にとって、この規定は大きな変化です。
募集情報の的確表示義務
業務委託の相手方を募集する際、広告やSNS等を通じて募集情報を提供する場合、虚偽の表示や誤解を招く表示をしてはならないという義務です。募集時に氏名(名称)、住所、連絡先、業務の内容、業務に従事する場所、報酬などを記載する必要があります。副業マッチングサービスやSNSで案件を探す際、この情報が明確に記載されているかどうかは、信頼できる発注者かどうかを見極める一つの指標になります。
育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
継続的な業務委託を行う場合、発注者は妊娠、出産、育児、介護等と業務の両立に対して必要な配慮をする義務も課されます。副業であっても、一定期間以上継続する契約であればこの規定の対象になり得ます。
ハラスメント対策に係る体制整備義務
発注者は、業務委託に関するハラスメント行為に対して、相談対応の体制整備等の措置を講じる義務があります。フリーランスは労働者に比べてハラスメントへの対抗手段が乏しいとされてきましたが、この規定によって発注者側にも一定の対応責任が課されるようになりました。
解除等の予告義務
継続的業務委託(目安として6か月以上の契約)を中途解除する場合、発注者は原則として30日前までに予告をしなければなりません。副業とはいえ、継続的な収入を見込んで生活設計をしているワーカーにとって、突然の契約打ち切りは大きな打撃になります。この予告義務は、そうした急な収入減を防ぐためのセーフティネットとして機能します。
フリーランス新法と下請法との違い
下請法との違いを理解しておくと、自分がどちらの法律の対象になるのか判断しやすくなります。下請法は発注者側の資本金額によって適用範囲が決まる仕組みでした。資本金1,000万円以下の事業者からの委託は下請法の対象外になっていたため、小規模事業者やスタートアップからの発注では保護が及ばないケースが多くありました。
フリーランス新法は資本金基準を撤廃し、従業員を使用しているかどうかで判定する仕組みに変更されています。これにより、これまで下請法の保護対象から漏れていた小規模事業者からの発注についても、規制の網がかかるようになりました。副業マッチングサービスを利用する会社員副業ワーカーの発注元には、資本金の小さい企業やフリーランスチームも多く含まれるため、この変更は実務上の影響が大きいと言えます。
副業で業務委託を受ける際に注意すべき実務ポイント
法律の内容を理解した上で、実際に副業として業務委託を受ける際にどう行動すべきかを整理します。
契約条件は必ず書面で残す
口頭やチャットでの簡単なやり取りだけで仕事を始めてしまうと、後々トラブルになったときに証拠が残りません。業務内容、報酬額、納期、支払期日、契約解除の条件などは、必ずメールやチャットログ、契約書といった形で残しておくべきです。フリーランス新法によって発注者側に明示義務が課されているとはいえ、受注者側も自衛のために記録を残す習慣をつけておくと安心です。
報酬の支払期日を事前に確認する
契約前に、報酬がいつ支払われるのかを明確に確認しましょう。フリーランス新法では成果物受領から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を設定する義務がありますが、実際の運用は発注者ごとに差があります。振込サイクルが月末締め翌月末払いなのか、検収完了後即時払いなのかによって、副業収入の入金タイミングが大きく変わってきます。
継続契約は解除予告のルールを把握しておく
6か月以上続く見込みの継続契約であれば、発注者は解除の30日前予告義務を負います。ただし、単発案件を積み重ねているだけの場合はこの規定の対象にならない可能性もあるため、契約が継続的業務委託に該当するかどうかは案件ごとに確認しておくと安心です。
トラブル時の相談窓口を知っておく
万が一、発注者から不当な扱いを受けた場合、フリーランス・トラブル110番という無料の相談窓口が用意されています。弁護士に直接相談できる体制が整っており、フリーランス新法違反の疑いがある場合は公正取引委員会や中小企業庁、厚生労働省の申出窓口に相談することもできます。会社員として本業があると、副業のトラブルで会社に迷惑をかけたくないという心理から相談をためらいがちですが、こうした窓口は本業の有無に関わらず利用できます。
@SOHOデータから見える副業と業務委託の実態
フリーランスや副業ワーカーが実際にどんな分野で業務委託を受けているのかを見ていくと、専門性を活かした職種選びが収入の安定に直結していることが分かります。例えばキャリア・副業・人生相談のお仕事では、これまでの職務経験や資格を活かして相談業務を副業化する道が紹介されており、会社員としての経験そのものが副業の武器になるケースが多く見られます。またAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、専門スキルを軸にした業務委託案件も増えており、こうした分野では継続的な契約になりやすい傾向があります。
音楽制作に興味がある方向けには作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事のような、成果物ベースの業務委託が典型的な分野もあります。成果物の受領タイミングが明確な分野は、フリーランス新法の支払期日規定が特に機能しやすいという特徴があります。
単価相場を確認したい人には、ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような年収データベースも参考になります。副業として業務委託を受ける際、相場観を持っておくことは、不当に低い報酬を提示されていないかを見極める材料になります。
資格を活かして副業を始めたい人には、行政書士のような士業資格や、Adobe認定プロフェッショナル Adobe Expressのようなクリエイティブ系の資格が、業務委託契約における専門性の証明として役立ちます。専門資格を持つ受注者は、発注者との交渉においても相対的に優位な立場に立ちやすい傾向があります。
士業関係者の副業事例としては、税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】や税理士資格でフリーランス副業|確定申告代行で稼ぐ方法と注意点で、資格を活かした業務委託の始め方が具体的に解説されています。また会計士のコンサルティング副業|CFO代行・IPO支援の始め方【2026年版】のように、専門性の高いコンサルティング業務でも業務委託契約が一般的な形態になっています。
こうした事例に共通しているのは、契約形態が業務委託であり、受注者が個人(または実質的に個人と同視できる小規模事業者)であるという点です。フリーランス新法の保護対象になり得る働き方が、実際の副業市場でも主流になりつつあることが見えてきます。
フリーランス・在宅ワーク市場を長く見てきた運営者の視点から言えば、法律ができたこと自体よりも、発注者側の意識が変わってきたことのほうが実務上のインパクトは大きいと感じています。以前は「副業だから」「片手間だから」という理由で契約条件が曖昧なまま仕事が進むケースが珍しくありませんでした。しかし法律の施行以降、書面での条件明示を当然のこととして扱う発注者が増え、受注者側も「契約条件を確認するのは当たり前」という感覚を持てるようになってきています。
長く継続的に案件を受けられる副業ワーカーほど、単発の作業をこなすことよりも「この人になら安心して継続的に発注できる」という信頼関係の構築に時間を使っている印象があります。仲介手数料が発生しない直接取引の形態では、同じ予算で発注者はより多くの業務を依頼でき、受注者は手取りが厚くなるという構造上のメリットがあります。中間マージンが差し引かれない分、報酬の実質的な価値が下がりにくく、フリーランス新法が定める支払期日の順守とも相性が良い取引形態だと言えます。
私が現場で気づいたこと
私自身、SNSコンサルとして副業を始めた当初は、契約条件を文書化する習慣がなく、口頭でのやり取りだけで仕事を進めてしまった経験があります。ある案件で、当初の合意と異なる修正回数を求められたとき、証拠となる文書が手元になく、結局こちらが折れる形で対応せざるを得ませんでした。この失敗を機に、どんな小さな案件でも契約条件をメールやチャットで文書化するようにしてから、条件面での揉め事は目に見えて減りました。フリーランス新法によって発注者側に明示義務が課されたとはいえ、受注者側も自分の身を守る意識を持つことが、結局は一番の防御策になると実感しています。
副業として業務委託を受けている会社員は、本業がある分、副業のトラブルに時間や労力を割きにくいという構造的な弱さを抱えています。だからこそ、フリーランス新法という後ろ盾があることを知っているだけでも、発注者との交渉における心理的な負担は大きく変わってきます。契約前の確認事項を怠らず、法律で定められた保護の範囲を正しく理解した上で、安心して副業に取り組んでいただければと思います。
よくある質問
Q. 会社員が副業で業務委託を受けても、フリーランス新法の対象になりますか?
副業の実態が雇用契約ではなく業務委託契約であり、個人(従業員を雇わない事業者)として契約している場合は対象になります。本業が会社員かどうかは判定に影響しません。
Q. 副業先から口頭だけで仕事を依頼されました。問題ないですか?
フリーランス新法では、発注者に書面または電磁的方法での取引条件明示義務があります。口頭のみの発注は原則違反にあたるため、書面での条件明示を求めるべきです。
Q. 報酬の支払いが大幅に遅れています。どこに相談すればいいですか?
無料相談窓口のフリーランス・トラブル110番や、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の申出窓口に相談できます。弁護士への相談体制も整っています。
Q. フリーランス新法と下請法はどう違いますか?
下請法は発注者の資本金額で適用範囲が決まりますが、フリーランス新法は資本金に関わらず従業員を使用する事業者であれば原則対象になります。小規模事業者からの発注もカバーされる点が大きな違いです。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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