手術室に向いている人|長く続く人に共通していること


この記事のポイント
- ✓手術室に向いている人の特徴を
- ✓職場の仕組みから整理しました
- ✓医師に伝えるべきことを伝えるなど長く続く人の共通点
手術室に向いているかどうかは、性格の明るさや器用さだけでは決まりません。
先日、病棟で5年ほど働いた看護師さんから、こんな相談を受けました。「手術室に異動の希望を出したいけれど、私はおっとりしているし、テキパキ動けるタイプではない。向いていないと思われるのが怖い」と。結論から言うと、手術室で長く続いている人を見ていくと、いわゆる「テキパキした人」ばかりではありません。むしろ、手術室という職場の仕組みと、自分の働き方の癖がうまく噛み合っている人が続いています。
この記事では、まず手術室がどんな仕組みの職場なのかを整理し、そのうえで長く続く人に共通していること、体力や働く環境の面での条件、そして向いているかどうかを確かめる方法を順に見ていきます。
向き不向きを考える前に、手術室の仕組みを知る
向いているかどうかを考えるには、まず相手である「手術室」という職場の仕組みを知っておく必要があります。仕組みを知らずに性格だけで判断すると、見当違いの結論になりやすいからです。
手術室には、ほかの看護の職場にない特徴がいくつもあります。
1つ目は、患者さんと話す時間がとても短いことです。全身麻酔の手術では、患者さんが起きている時間は、入室から麻酔がかかるまでの数分から十数分と、手術が終わって目が覚めてからの短い時間だけです。病棟のように、何日もかけて患者さんと関係を築く看護とは、形が大きく違います。
2つ目は、手順と数がすべての土台になっていることです。器械やガーゼ、針の数を手術の前後で数える。手術の前に、患者さんの名前と手術の部位を全員で声に出して確認する。清潔と不潔を厳密に分ける。こうした手順が1つでも抜けると、取り返しのつかない事故につながります。
3つ目は、多くの職種が1つの部屋に集まることです。執刀する医師、助手の医師、麻酔科医、臨床工学技士、診療放射線技師。看護師は、この中で患者さんに一番近い立場から全体をつなぐ役割を担います。
4つ目は、予定と緊急が入り混じることです。手術は予定表に沿って進みますが、延長もあれば、緊急手術で予定が組み替わることもあります。
5つ目は、閉じた空間で長い時間を過ごすことです。窓のない部屋で、帽子とマスクをつけ、数時間立ち続けることもあります。室温は感染を防ぐために低めに保たれています。
こうした仕組みを前にしたとき、向き不向きは「この仕組みの中で、自分が無理なく力を出せるかどうか」という問いに言い換えられます。つまり、性格の良し悪しではなく、職場との相性の問題なんです。これ、知らない人が本当に多いんです。
手術室の看護師の働き方や向き不向きについては、現場の経験者の話をまとめたサイトもあります。そこで紹介されている執筆者の経歴は、手術室との付き合い方を考えるうえで示唆に富んでいます。
某24時間年中無休を掲げる徳洲会グループの病院で看護師として初めて働き、整形外科・呼吸器科・消化器科・手術室等を経験。その後、美容外科・美容皮膚科を経験し、現在は総合病院の手術室に現役で勤務しながら2児の母としても奮闘中。 出典: nurse.peko.co.jp
いくつもの診療科や職場を経験したあとで、子育てをしながら手術室に戻って働いている。手術室に向いているかどうかは、1回の配属で決まるものではなく、経験を重ねる中で見えてくるものだということが、この経歴からも伝わってきます。
長く続く人の共通点1:手順を「理由ごと」覚えている
ここから、手術室で長く続いている人に共通していることを見ていきます。1つ目は、手順を理由ごと覚えていることです。
手術室に入ったばかりのころは、覚えることの多さに圧倒されます。手術ごとの器械の名前と並べ方、体位の取り方、清潔操作の手順、記録の書き方。これを丸暗記で乗り切ろうとすると、診療科が変わるたびに一から覚え直すことになり、いつまでも追いつけない感覚に苦しみます。
長く続く人は、手順の「なぜ」を一緒に覚えています。たとえば、体位を固定するときに腕の角度に気をつけるのは、神経が引き伸ばされて手術のあとにしびれが残るのを防ぐため。器械を決まった順に並べるのは、医師の手に渡すまでの時間を短くし、数の確認をしやすくするため。理由が分かっていると、初めての手術でも「この場面では何に気をつければいいか」を自分で考えられるようになります。
これは、法律の勉強とよく似ています。条文を丸暗記しても、少し形の違う事例が出てくると対応できません。その条文が何を守るために作られたのかを理解していると、初めて見る事例にも当てはめられます。私も資格の勉強をしていたころ、条文を暗記しようとして何度もつまずき、条文の「趣旨」を理解するようにしてから、ようやく応用がきくようになりました。手術室の手順も、同じ構造を持っています。
もう1つ、理由ごと覚えている人は、手順が変わったときにも強いです。手術の方法は、腹腔鏡やロボットを使った手術へと移り続けています。新しい手順が入ってきたとき、「前はこうだった」と戸惑うのではなく、「この変更は何を防ぐためか」と考えられる人は、変化を自然に受け入れていきます。
おっとりした性格の人でも、この覚え方ができていれば、手術室で十分に力を発揮できます。むしろ、急いで丸暗記するより、ゆっくり理由を確かめながら覚える人のほうが、数年後に安定していることは珍しくありません。
理由を確かめる習慣は、今日からでも始められます。先輩に手順を教わったとき、「これは何のためにしているんですか」と1つだけ聞いてみる。手術のあとに、その日初めて知った手順の理由を、ノートに1行だけ書いておく。小さな積み重ねですが、1年たつと大きな差になります。
長く続く人の共通点2:確認を面倒がらず、声に出せる
2つ目は、確認を面倒がらないことです。そして、その確認を声に出して行えることです。
手術室では、同じことを何度も確認します。患者さんの名前、手術の部位、同意書、アレルギー、器械とガーゼの数。手術の前、手術の途中で体の中を閉じる前、手術の終わりに、何度も数えます。慣れてくると、「さっき数えたから大丈夫」と思いたくなる瞬間が必ず来ます。
長く続く人は、この瞬間に手を抜きません。確認の手順が、自分と患者さんを守るためのものだと、腹の底から分かっているからです。
ここで少し、法律の視点からお話しします。看護師の業務は、保健師助産師看護師法で「療養上の世話」と「診療の補助」と定められています。手術室の看護師が行う器械出しや数の確認は、診療の補助にあたります。そして、医療に携わる人には、その職業にふさわしい注意を払う義務があります。つまり、手術のあとにガーゼなどの置き忘れが起きたとき、医師だけでなく、数の確認を担当した看護師の注意が十分だったかどうかも問われることがあるんです。
これは、看護師を責めるための話ではありません。確認の手順は、あなたが注意を尽くしたことを示す、何よりの記録になるということです。決められた手順どおりに数え、声に出して確かめ、記録に残す。その積み重ねが、万が一のときにあなたを守ります。※実際に医療事故に関わってしまった場合は、個人で抱え込まず、職場の医療安全の担当者と、必要に応じて弁護士に相談してください。
声に出すことにも、大きな意味があります。手術室では、目で確認しただけでは、ほかの人に伝わりません。「ガーゼ10枚、確認しました」と声に出すことで、チーム全員が同じ情報を持てます。声に出すのが恥ずかしい、忙しそうな医師に声をかけるのが気が引ける。そう感じる人も最初は多いのですが、長く続く人は、それを「自分の性格」ではなく「手術室の決まり」として割り切っています。
大きな声を出す必要はありません。はっきり、決まった言葉で伝えることができれば十分です。内気な人でも、決まった言葉で確認する習慣が身につけば、手術室では落ち着いて働けます。
長く続く人の共通点3:医師に、伝えるべきことを伝えられる
3つ目は、医師に伝えるべきことを、立場に関係なく伝えられることです。
手術室では、看護師が医師に指摘しなければならない場面があります。器械の数が合わない。清潔な区域に触れてしまった人がいる。患者さんの血圧が下がっているのに、手術の手が止まらない。こうしたとき、「医師に言うのは気が引ける」とためらっていると、患者さんの安全が損なわれます。
長く続く人は、この場面で伝えることを迷いません。ただし、けんか腰で指摘するのではなく、事実を短く、はっきり伝えます。「ガーゼの数が1枚合いません。閉じる前に確認をお願いします」。感情を乗せず、何が起きていて、何をしてほしいのかだけを伝える。これは、訓練で身につけられる技術です。
伝えやすいかどうかは、職場の雰囲気にも大きく左右されます。看護師が医師に遠慮なく声をかけられる手術室もあれば、医師の機嫌をうかがいながら動く手術室もあります。後者の職場で「伝えられない自分」を責める必要はありません。それは個人の向き不向きではなく、職場の仕組みの問題です。
私が以前、ある看護師さんから聞いた話があります。手術室に異動したばかりのころ、数が合わないことに気づいたのに、医師の雰囲気に押されて言い出せず、あとから先輩が気づいて止めてくれた。その日の帰り道、自分は手術室に向いていないと泣いたそうです。けれど、先輩からは「気づけたことが一番大事。次は私が隣で一緒に言うから」と声をかけられ、それから半年ほどで、自分から伝えられるようになったと話していました。
この話から分かるのは、「伝えられる人」は最初からそうだったわけではなく、伝えてよいという安心を職場から受け取って育っていくということです。向いているかどうかを考えるときは、自分の性格だけでなく、「伝えることを支えてくれる職場かどうか」も一緒に見てください。
伝える力を育てるための小さな練習もあります。手術の前の打ち合わせで、分からないことを1つだけ質問する。手術のあとに、気づいたことを1つだけ先輩に伝える。いきなり医師に指摘するのは難しくても、安全な場で「伝える」経験を重ねておくと、本当に必要な場面で言葉が出やすくなります。伝える力は、生まれ持った性格ではなく、場数で育つ技術です。
長く続く人の共通点4:患者さんと話す時間の短さを受け入れている
4つ目は、患者さんと話す時間が短いことを、手術室の看護の形として受け入れていることです。
病棟から手術室へ移った人が、最初に戸惑うことの1つが、この点です。病棟では、患者さんの話を聞き、家族と関わり、退院までの回復を一緒に見届けることができました。手術室では、患者さんと言葉を交わせるのは、入室から麻酔がかかるまでの短い時間だけです。「看護をしている実感がない」「機械の一部になったようだ」と感じる人もいます。
長く続く人は、この短い時間の中に、手術室ならではの看護を見つけています。麻酔がかかる前の数分で、患者さんの不安を少しでも和らげる声かけをする。手を握る。寒くないかを尋ねる。そして、麻酔がかかったあとは、声を出せない患者さんの代わりに、体位による圧迫や体温の低下、皮膚のトラブルを先回りして防ぐ。
患者さんが眠っている間、その人の体を守ること。これが手術室の看護の中心だと捉えられると、話す時間の短さは物足りなさではなくなります。むしろ、患者さんが自分で危険を訴えられない時間を預かっているという、重い責任を感じるようになります。
一方で、どうしても患者さんと長く関わる看護がしたいという気持ちが強い人もいます。それは、決して悪いことではありません。その場合は、手術室の中でも、術前訪問や術後訪問に力を入れている病院を選ぶ、あるいは手術室の経験を活かして、周術期の外来や病棟で働くという道もあります。
大切なのは、「短い関わりでは看護ができない」と決めつけることでも、「短い関わりに満足しなければならない」と自分に言い聞かせることでもありません。自分がどんな形の看護にやりがいを感じるのかを、正直に見つめることです。
見つめるための問いを1つ挙げておきます。これまでの看護の中で、いちばん「やってよかった」と感じた場面はどんなときだったか。患者さんから感謝の言葉をもらったときなのか、急変に気づいて早めに対応できたときなのか、難しい処置を手際よく終えられたときなのか。前者に強く心が動く人は、手術室の短い関わりに物足りなさを感じやすく、後者の2つに心が動く人は、手術室の看護に手応えを感じやすい傾向があります。どちらが正しいということはありません。自分の心の動き方を知っておくことが、職場選びの確かな手がかりになります。
長く続く人の共通点5:学び続けることを苦にしない
5つ目は、学び続けることを苦にしないことです。
手術室の看護は、覚えることに終わりがありません。診療科ごとに手術の種類があり、同じ手術でも医師によって手順が違います。新しい器械が入り、新しい手術の方法が広がります。腹腔鏡の手術、ロボットを使った手術、カテーテルと外科の手術を組み合わせたハイブリッド手術。ここ十数年だけでも、手術室の中身は大きく変わりました。
長く続く人は、この変化を「また覚えなければならない」と重荷に感じるより、「新しいことに触れられる」と面白がれる傾向があります。完璧に覚えてから臨もうとせず、分からないことはその都度調べ、聞き、次の手術で試す。そのサイクルを自然に回しています。
学びの行き先として、資格を目指す人もいます。日本看護協会の認定看護師の分野には、手術看護が含まれています。一定の実務経験を積んだうえで、専門の教育を受け、審査に合格すると認定されます。資格を目指すかどうかは人それぞれですが、目標があると、日々の学びに方向が生まれます。資格を取らなくても、院内の勉強会や学会の研修に参加して、ほかの病院の手術室のやり方に触れるだけで、自分の職場の手順を見直すきっかけになります。
反対に、同じことを繰り返す安定した仕事を好む人は、総合病院の手術室で変化の多さに疲れてしまうことがあります。その場合は、眼科や整形外科など、特定の手術を中心に行う専門病院やクリニックの手術室を選ぶと、覚える範囲が絞られ、落ち着いて働けることがあります。つまり、「学び続けるのが苦手だから手術室に向いていない」とは限らず、学ぶ量が合う手術室を選べばよいのです。
学び方にも、人それぞれの向き不向きがあります。本や手順書を読んで頭に入れるのが得意な人、実際に手を動かして体で覚える人、人に説明することで理解を深める人。手術室では、この3つを組み合わせて学ぶのがいちばん効率がよいとされます。手術の前の晩に手順書を読み、手術で実際に動き、終わったあとに後輩や同期に説明してみる。自分の得意な学び方を軸にしながら、ほかの方法を少しずつ足していくと、覚える負担が軽くなります。
病院の種類で、求められる「向き」は変わる
同じ手術室でも、病院の種類によって求められる力は変わります。ある手術室で「向いていない」と感じた人が、別の手術室では生き生きと働いていることは珍しくありません。
救命救急センターを持つ大きな病院の手術室では、緊急手術への対応力が強く求められます。予定が崩れても慌てず、少ない情報から準備を組み立てる力。夜間のオンコールや夜勤に耐えられる体力。こうした職場では、変化を面白がれる人、瞬時に判断を切り替えられる人が力を発揮します。
大学病院の手術室では、手術の種類がとても多く、新しい方法の手術や、長時間にわたる難しい手術も行われます。研修医や学生が手術に入ることもあり、教育の場としての性格も持っています。学ぶことが好きな人、手術室の専門性を深く突き詰めたい人に合う環境です。
地域の中規模病院の手術室では、看護師の人数が少ない分、1人が担う範囲が広くなります。器械出しも外回りも、複数の診療科の手術も、手術室の物品の管理も任されます。何でも自分でこなしていく幅の広さと、少人数のチームで協力し合える人柄が生きる職場です。
眼科や整形外科などの専門病院、日帰り手術を行うクリニックの手術室では、同じ種類の手術を繰り返します。1件ごとの手順を正確に、効率よく繰り返す力が求められます。変化より安定を好む人、1つの分野の手術を極めたい人に向いています。
こうして並べてみると、「手術室に向いている人」という1つの人物像があるわけではないことが分かります。緊急手術に強い人、学び続ける人、幅広くこなす人、繰り返しを極める人。それぞれに合う手術室があるのです。求人票を読むときは、年間の手術件数、主な診療科、救急の受け入れの有無の3つを並べてみてください。それだけで、その手術室がどの型に近いのかが見えてきます。
私が相談を受けていて感じるのは、最初に配属された手術室が合わなかったことで、手術室そのものを諦めてしまう人が少なくないということです。けれど、合わなかったのは「その手術室」であって、「手術室という職場」ではないかもしれません。もし手術室の仕事そのものには手応えを感じていたのなら、病院の種類を変えて、もう一度挑戦してみる価値は十分にあります。
体力と働く環境の面での、向き不向き
性格や考え方とは別に、体力や体質の面での向き不向きもあります。ここは、気合いではどうにもならない部分なので、あらかじめ知っておいてください。
まず、立ち仕事です。器械出しでは、数時間同じ場所に立ち続けることもあります。腰や足に負担がかかりやすく、足のむくみや腰痛に悩む人は少なくありません。体に合った靴を選ぶ、弾性ストッキングを使う、休憩のたびに体を伸ばす。こうした工夫で、負担は軽くできます。
次に、寒さです。手術室は、感染を防ぎ、清潔な空気の流れを保つために、室温が低めに設定されています。冷え性の人には、つらい環境です。術衣の下に着られる薄手の肌着で調整する人が多いです。
放射線も、知っておきたいことの1つです。整形外科の手術や、カテーテルを使う手術では、術中にX線で透視をします。手術室の看護師は、防護用のエプロンを着け、線量計をつけて、受けた放射線の量を管理します。電離放射線障害防止規則という決まりで、放射線業務に従事する人が受ける線量の上限が定められていて、女性については3か月で5ミリシーベルト、妊娠と分かってから出産までの間は腹部の表面で2ミリシーベルトという上限が設けられています。妊娠を考えている人や、妊娠中の人は、放射線を使う手術から外してもらえるかどうかを、職場に確かめておきましょう。
ラテックス(天然ゴム)のアレルギーも、手術室では気をつけたい体質です。手袋などの医療材料にラテックスが使われていることがあり、アレルギーのある人は、ラテックスを使わない材料に切り替えてもらう必要があります。
最後に、生活のリズムです。夜間の緊急手術に対応するため、多くの手術室にはオンコールや夜勤があります。呼び出しがあるかもしれない状態で夜を過ごすことが、精神的に大きな負担になる人もいます。
こうした条件は、向いているかどうかの前に、「働ける環境が整っているか」の問題です。体の条件に合わせて職場を選ぶことは、わがままではありません。持病や体質で配慮してほしいことがあるなら、入職や異動の前に伝えておくほうが、職場も勤務の組み方を考えやすくなります。
「向いていない」と感じやすい時期と、その正体
手術室で働き始めた人の多くが、一度は「自分は向いていないのではないか」と感じます。ただ、その感覚が本当に向き不向きの問題なのかは、落ち着いて見分ける必要があります。
最も「向いていない」と感じやすいのは、働き始めてから半年ほどの時期です。覚えることが多すぎて、1日が終わるたびに自分のできなさを思い知らされる。先輩の動きと比べて落ち込む。医師に注意される。この時期のつらさは、ほとんどの場合、向き不向きではなく「まだ覚えている途中」であることから来ています。
見分けるための目安があります。半年前の自分と比べて、できるようになったことが1つでもあるか。器械の名前が分かるようになった、体位の固定を1人でできるようになった、1つの診療科の手術の流れが見えるようになった。何か1つでもあれば、あなたは確実に前に進んでいます。
一方で、時間がたっても変わらないつらさもあります。1年以上たっても、確認の手順そのものが強い苦痛になっている。閉じた部屋にいることで、体調を崩し続けている。患者さんと関われないことへの喪失感が、日に日に大きくなっている。こうしたつらさは、覚えている途中だからではなく、手術室という仕組みと自分との相性の問題である可能性があります。
もう1つ、見落としやすいのが、職場の問題を自分の向き不向きだと思い込んでしまうことです。人員が足りず、教育の時間が確保されていない。指導する人によって言うことが違う。医師に声をかけられない雰囲気がある。こうした環境では、誰でも「向いていない」と感じます。これは、あなたの能力の問題ではありません。
「向いていない」と感じたときは、そのつらさが「覚えている途中」「相性」「職場の仕組み」のどれから来ているのかを、書き出してみてください。原因が分かると、続けるのか、職場を変えるのか、手術室から離れるのかという判断が、ぐっとしやすくなります。
職場の仕組みに原因があると感じたときに、知っておいてほしいことがあります。人員が足りないまま長時間の勤務が続き、心や体に不調が出ている場合、それは個人の頑張りで解決する問題ではありません。事業者には、働く人の安全と健康に配慮する義務があります。つまり、職場は「向いていない人が悪い」で片付けてはいけないんです。不調が続くときは、産業医や職場の相談窓口を頼ってください。
向いているかどうかを確かめる方法
最後に、手術室に向いているかどうかを、実際に確かめる方法を紹介します。
1つ目は、見学です。異動や転職を考えているなら、手術室の見学をお願いしてみてください。手術そのものを見られなくても、朝の打ち合わせの様子、看護師同士の声のかけ方、休憩室の雰囲気は見られます。「伝えることを支えてくれる職場か」は、ここでかなり分かります。
2つ目は、手術室の看護師に話を聞くことです。同じ病院の手術室の人でも、学生時代の同級生でもかまいません。「最初の1年で何がつらかったか」「どんな人が辞めていったか」を聞くと、求人票には書かれていない実態が見えてきます。反対に、「どんな人が長く続いているか」も聞いてみてください。その答えが自分に近いと感じるなら、相性のよい職場である可能性が高いです。
3つ目は、求人票や病院の紹介を読むときに、教育の体制を確かめることです。手術室の新人や異動者に、どれくらいの期間、誰がついて教えるのか。1年目に経験する手術の範囲はどう決まっているのか。教育の仕組みが整っている職場ほど、「向いていない」と感じる時期を乗り越えやすくなります。
4つ目は、期間を決めて挑戦してみることです。「まず1年やってみて、そのときに考える」と決めておくと、途中の揺れに振り回されにくくなります。手術室の経験は、病棟に戻っても、外来や内視鏡室、クリニックに移っても活かせます。合わなければ戻ってよい。そう思えるだけで、挑戦の重さはずいぶん軽くなります。
異動の場合は、元の部署に戻る道があるかどうかも、事前に上司と話しておくと安心です。転職の場合は、試用期間の長さと、その間の教育の進め方を確かめておきましょう。試用期間は、職場があなたを見る期間であると同時に、あなたが職場を見る期間でもあります。
看護師の働き方を選ぶときには、給与の水準も判断材料の1つになります。年代や勤務先ごとの年収の目安をまとめた看護師の年収・単価相場を見ておくと、手術室の手当を含めた条件を、ほかの職場と比べやすくなります。
運営者として見てきたこと
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、手術室で長く続く人の共通点は、どの業界で長く働く人にも通じるものがあります。それは、自分の強みを「性格」ではなく「仕事の型」として持っていることです。
運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続く人ほど、単発の作業を器用にこなすことより、「この人に任せると楽」という関係づくりに時間を使っています。手術室でいえば、確認を正確に積み重ねる、医師の次の動きを先読みして準備する、気づいたことを短くはっきり伝える。どれも目立たない仕事ですが、チームの中で信頼を集める力です。そして、この力は職場が変わっても持ち運べます。反対に、「自分は器用だから」「気が強いから」と性格を強みにしている人は、職場の雰囲気が変わると力を出しにくくなるように見えます。性格は環境によって出方が変わりますが、仕事の型は環境が変わっても崩れにくいのです。
自分に向いている働き方が分からなくなったとき、専門家と一緒に整理するという方法もあります。働く人の悩みや転職、キャリアの相談に乗る仕事の内容をまとめた職場・転職・キャリア相談のお仕事を見ると、どんな相談ができるのかがつかめます。人の適性や働き方を一緒に考える国家資格として、その内容を紹介したキャリアコンサルタントもあります。
臨床の経験を、病院の外で活かす働き方もあります。依頼する人と直接やり取りする仕事では、手数料0%で受けられる仕組みもあり、中間の取り分が乗らないぶん、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。どんな場所で働くにしても、自分の強みを型として言葉にできる人ほど、よい条件に出会いやすいと感じます。
手術室に向いているかどうかは、最初から決まっているものではありません。仕組みを知り、自分の癖と照らし合わせ、支えてくれる職場を選ぶことで、向いている人に「なっていく」ことができます。法律はあなたの味方です。そして、あなたの経験も、あなたの味方です。
よくある質問
Q. 手術室に向いているのはどんな人ですか?
手術室で長く続く人には、手順を理由ごと覚えている、確認を面倒がらずに声に出せる、医師に伝えるべきことを事実として伝えられる、患者さんと話す時間の短さを受け入れている、学び続けることを苦にしない、といった共通点があります。性格の明るさや器用さより、手術室の仕組みとの相性が大切です。
Q. おっとりした性格でも手術室で働けますか?
働けます。手術室で求められるのは素早さそのものより、決められた手順を確実に守り、声に出して確認することです。ゆっくり理由を確かめながら覚える人のほうが、数年後に安定していることも珍しくありません。教育の体制が整っていて、確認を支えてくれる職場を選ぶと、力を発揮しやすくなります。
Q. 手術室で妊娠した場合、働き続けられますか?
働き続けている人は多くいますが、放射線を使う手術には注意が必要です。電離放射線障害防止規則で、妊娠と分かってから出産までの間は腹部の表面で2ミリシーベルトという上限が定められています。放射線を使う手術から外してもらえるか、長時間の立ち仕事を調整できるかを、早めに職場へ相談してください。
Q. 手術室に向いていないと感じたらどうすればいいですか?
まず、そのつらさが「まだ覚えている途中」なのか、「手術室の仕組みとの相性」なのか、「職場の人員や教育の問題」なのかを書き出して分けてみてください。働き始めて半年ほどのつらさは覚えている途中であることが多く、時間とともに和らぎます。相性や職場の問題なら、別の手術室や別の部署を選ぶことも前向きな選択です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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