【在宅ハンドメイド】長く売れている人は作る前に置き場を決める

長谷川 奈津
長谷川 奈津
【在宅ハンドメイド】長く売れている人は作る前に置き場を決める

この記事のポイント

  • 障害者手帳を持つ人が在宅でハンドメイド販売を始めるときの
  • 特定商取引法の住所表示
  • 著作権や商標のトラブル回避

「障害者手帳を持っているけれど、通勤して働くのは体調的に難しい。手を動かすことは好きだから、在宅でハンドメイド販売をやってみたい」。こういうご相談を、私は法務相談の窓口でよくお受けします。そして毎回感じるのは、みなさん驚くほど「作ること」の準備は万全なのに、「売ること」にまつわるルールをほとんど知らないまま始めようとしている、ということです。これ、知らない人が本当に多いんです。

結論から言うと、障害者手帳を持っていることは、在宅でハンドメイド作品を販売するうえで何の障害にもなりません。手帳の有無で出品を断られるマーケットプレイスは基本的に存在しませんし、逆に手帳があるからこそ使える販売ルートや支援制度も存在します。ただし、始める前に確認しておかないと後から困ることが、大きく分けて3つあります。収入と制度の関係、住所や氏名の公開ルール、そして作品そのものの権利関係です。この記事では、その3つを軸に、在宅ハンドメイド販売を長く続けている人が実際にやっていることを、法務と実務の両面から整理していきます。

なお、手帳の等級要件や、収入がいくらまでなら手当が減らないかといった判断は、自治体や制度ごとに運用が異なります。この記事では一般的な考え方の枠組みだけをお伝えしますので、ご自身のケースの可否は必ずお住まいの自治体の障害福祉課の窓口でご確認ください。

在宅のハンドメイド販売が「働き方の選択肢」になった背景

雇用されて働くこと以外の選択肢が現実的になった

かつて、障害のある人の就労といえば、一般就労(企業に雇用される)か、就労継続支援事業所での作業か、その二択で語られることがほとんどでした。ところが、この10年ほどで状況はかなり変わっています。インターネット上のマーケットプレイスが整備され、個人が在庫を抱えずに作品を売れるようになったこと、決済と配送が仕組み化されて発送作業の負担が下がったこと、そしてSNSで自分の作品を見つけてもらう導線が個人でも作れるようになったことが重なりました。

厚生労働省は障害者の就労支援について、雇用施策と福祉施策を連携させる方向で制度を組み立てています。制度の詳細や最新の運用は厚生労働省の公表資料で確認できますが、大きな流れとして「働き方の多様化」が前提に置かれつつあるのは確かです。在宅での自営的な販売活動も、その多様化のなかに含まれる働き方のひとつと考えてよいでしょう。

実際に相談を受けていて感じるのは、「週5日、決まった時間に、決まった場所へ」という前提が外れるだけで、働ける人がかなり増えるということです。体調に波がある人にとって、出勤時刻という固定の約束は想像以上に重い負担になります。在宅のハンドメイド販売は、作る時間も、出品する時間も、発送する日も、自分で組み替えられます。この自由度そのものが、続けられるかどうかを分ける最大の要素です。

ハンドメイド市場そのものが「趣味の延長」から広がった

ハンドメイド作品の流通額は、国内のマーケットプレイス各社が伸びたことで、この数年で大きく拡大しました。アクセサリー、布小物、革小物、陶器、キャンドル、編み物、レジン、刺繍といった定番ジャンルに加えて、ペット用品、推し活グッズ、痛バッグ用パーツ、収納アイテムなど、細分化されたニッチが次々に生まれています。市場が細分化するということは、大手が拾いきれない小さな需要が無数にあるということです。個人が在宅で少量生産しても十分に成立する余地は、むしろ広がっています。

一方で、市場が広がったぶん出品者も増えました。同じジャンルに何千という出品があるなかで見つけてもらうには、「作品が良い」だけでは足りません。写真の撮り方、説明文の書き方、検索されるであろう言葉をタイトルに入れる工夫、発送までの日数の設定といった、販売者としての運営スキルが必要になります。ここは作ることとはまったく別のスキルセットなので、最初から分けて考えたほうがうまくいきます。

福祉の現場から生まれたECの取り組みも増えています。障害のある作り手の商品を扱う特化型ECサイトを立ち上げた方の経緯として、こんな話が紹介されています。

森井さん自身も20代に鬱になり、就職して1年で退職したという経験をもっています。療養しながらアルバイトとして働いたものの、出勤や職場の人間関係、電話対応、書類の処理など、さまざまなところで困難を感じたとのこと。結婚・出産後はさらに雇用されて働くことが難しくなったそうです。 出典: shigoto4you.com

出勤、人間関係、電話対応、書類処理。この4つが困難だったという整理は、在宅ハンドメイド販売を検討している人にとって、そのまま「自分に何が向いていないか」を言語化するヒントになります。逆に言えば、在宅販売はこの4つのうち3つ(出勤・人間関係・電話対応)をほぼ回避できる働き方です。書類処理だけは残るので、そこをどう軽くするかが設計のポイントになります。

始める前に確認しておきたい「制度との関係」

収入が制度に与える影響は、制度ごとにまったく違う

在宅でハンドメイド作品を売って収入が入ると、いま受けている支援や手当にどう影響するのか。これがいちばん多い不安です。ここで大事なのは、「障害者手帳を持っている=すべての制度が一律に連動している」わけではない、ということです。

手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)は、あくまで障害の状態を証明するもので、それ自体が収入に応じて取り消されたり停止されたりする性質のものではありません。一方、障害年金や各種手当、医療費の助成、福祉サービスの利用者負担といった制度は、それぞれ独立した基準で運用されています。所得を見る制度もあれば、就労の実態を見る制度もあり、まったく見ない制度もあります。

つまり、「いくら稼いだらどうなるか」は、あなたが利用している制度の組み合わせによって答えが変わります。障害年金については日本年金機構が制度の基本を案内していますが、個別の判断は必ず窓口での確認が必要です。自治体独自の手当や助成については、お住まいの市区町村の障害福祉課が唯一の正確な情報源になります。

私が相談者にいつもお伝えしているのは、「始める前に、いま受けている支援を全部書き出してください」ということです。制度名、支給元(国か自治体か)、更新時期、これを一覧にしたうえで窓口に持っていくと、話が驚くほど早く進みます。窓口の担当者も、何を確認すればよいかが明確になるからです。この準備をせずに「ハンドメイドで稼いだらどうなりますか」とだけ聞くと、担当者も答えようがなく、曖昧な回答しか返ってきません。

就労継続支援事業所での作業と、個人での販売は別物

もうひとつ整理しておきたいのが、就労継続支援B型事業所などで作った作品が販売されるケースと、自分で作って自分で売るケースの違いです。前者は事業所が販売主体で、あなたは工賃を受け取る立場です。後者はあなた自身が販売主体で、売上も経費も自分のものになります。

事業所を利用しながら、並行して個人でも作品を販売したいという相談もよく受けます。これは制度上できないわけではありませんが、事業所によって方針が異なりますし、利用日数や工賃の扱いに関係してくる場合があります。必ず事前に事業所の支援員に相談してください。黙って始めて後から発覚すると、信頼関係の面で不利益が大きくなります。

確定申告が必要になるラインを最初に把握しておく

販売活動で収入が出れば、税務上の扱いが発生します。給与所得がない方の場合と、給与所得がある方の場合とで基準が変わりますし、事業所得として申告するのか雑所得として申告するのかでも扱いが異なります。所得の区分や申告の要否は国税庁の案内が基準になります。

実務的なアドバイスとしては、売上がいくらであっても、初日から記録だけは取っておくことを強くおすすめします。材料費のレシート、送料、梱包材、マーケットプレイスの手数料、これらは全部経費になり得ます。後から思い出そうとすると必ず漏れます。私が見てきた限り、いちばん損をしているのは「たいした金額じゃないから」と記録を取らず、いざ申告が必要になったときに経費をほとんど計上できなかったケースです。

※ 障害者控除など、税制上の取り扱いには手帳の等級が関係する部分もあります。ご自身に適用されるかどうかは、税務署または税理士にご確認ください。

販売チャネルをどう選ぶか

在宅ハンドメイド販売のチャネルは、大きく4種類に分かれます。それぞれ得意な作品ジャンルも、手数料の構造も、体調への負担も違います。最初から複数に手を広げず、ひとつ選んで運用に慣れてから広げるのが定石です。

ハンドメイド専門マーケットプレイス

ハンドメイド作品だけを扱うマーケットプレイスは、購入者が「手作りのものを探しに来ている」という点が最大の利点です。価格が量産品より高くても納得されやすく、作り手のストーリーが評価されやすい環境です。販売手数料は売上の10%前後が相場で、月額固定費がかからないところが多いのも、始めやすさにつながります。

デメリットは競合の多さです。人気ジャンルでは同種の作品が何千と並ぶため、新規出品者が埋もれやすい。対策としては、ジャンルを狭く絞ること。「ピアス」ではなく「金属アレルギー対応の樹脂ピアス」、「バッグ」ではなく「杖を使う人のための斜めがけバッグ」といった具合に、対象を限定するほど検索でも見つかりやすく、価格競争からも抜け出せます。

フリマアプリ

フリマアプリは利用者数が桁違いに多く、露出のチャンスが大きいのが利点です。ただし購入者の多くは中古品や割安な商品を探しに来ているため、価格に対する目線がシビアになりがちです。値下げ交渉のコメントが頻繁に届くことも珍しくありません。

このやりとりが精神的に負担になる方は、フリマアプリを主戦場にしないほうが賢明です。私は相談を受けるとき、「コメント対応が苦にならないか」を必ず確認するようにしています。売上の見込みより、続けられるかどうかを優先して選ぶべきだからです。

自分のECサイト・SNS直販

BASEやSTORESのようなサービスを使えば、自分の店を持つこと自体は無料でできます。手数料も比較的低く抑えられ、価格設定も自由です。ただし集客はすべて自分でやることになります。SNSで作品を発信し、そこから店に来てもらう導線を自分で作らなければ、開店しても誰も来ません。

在宅ワークで安定した集客導線を作る考え方は、ハンドメイド以外の在宅の仕事とも共通する部分があります。在宅で始められる仕事の種類とそれぞれの向き不向きを整理した記事として、在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングがあります。ハンドメイド販売と組み合わせられる収入源を探すときの見取り図として使えます。

福祉特化型EC・作業所の通販ルート

障害のある作り手の商品を専門に扱うECサイトも複数あります。こうしたサイトは「応援したい」という動機で購入する層が一定数いるため、大手マーケットより競合が少なく、丁寧に扱ってもらえるという利点があります。ただし出店には審査があったり、扱えるジャンルが限られていたりする場合があります。

作り手側から見て重要なのは、「福祉だから」という理由だけで売れる時代ではなくなっている、という点です。前述の特化型ECの立ち上げの経緯にも、こんな問題意識が示されています。

障害者福祉施設での製造・販売を知った森井さんですが、そうした施設で作られる商品が「あまり、お洒落じゃない…」ということに課題を感じたそうです。 出典: shigoto4you.com

つまり、デザインと品質は一般の商品と同じ土俵で評価されるということです。これは厳しい話に聞こえますが、実は作り手にとってプラスの情報です。同情ではなく作品そのもので選ばれるなら、リピーターがつき、価格も維持できる。長く続けるうえでは、そのほうが圧倒的に有利です。

在宅ハンドメイド販売の始め方

手順1:作るものを1ジャンルに絞る

最初から複数ジャンルに手を出すと、材料の在庫も、撮影のスタイルも、説明文の型も、全部バラバラになります。まずは1ジャンル。できれば1商品カテゴリ。そこで「作る、撮る、出品する、発送する」の一連の流れを完走してみることが先です。

手順2:原価を必ず数える

材料費だけでなく、送料、梱包材、マーケットプレイスの手数料、決済手数料まで含めて1個あたりの原価を出します。ここを飛ばすと、売れているのにお金が残らない状態になります。1,500円で売っている作品の原価が材料費400円、送料350円、梱包材80円、手数料150円なら、手元に残るのは520円です。制作に2時間かかっているなら、時間あたりの実入りは260円。この数字を直視したうえで価格を決め直すのが、続けるための第一歩になります。

手順3:写真の環境を固定する

ハンドメイド販売において、写真の質は売上を左右する最大の要素です。とはいえ高価な機材は不要です。窓際の自然光、白い背景紙、スマートフォン。この3つで十分に戦えます。重要なのは「毎回同じ条件で撮る」ことです。撮影場所を固定してしまえば、体調が悪い日でも撮影という作業のハードルが下がります。

手順4:特定商取引法に基づく表記を準備する

ここが法務的にいちばん相談が多いところです。通信販売を行う事業者は、特定商取引法に基づく表記として、氏名(法人なら名称)、住所、電話番号などを表示する義務があります。「自宅の住所と本名を公開したくない」という方は非常に多い。

対策としては、マーケットプレイスによっては運営会社が代理で情報を開示する仕組みを用意している場合があります。また、バーチャルオフィスや私書箱を利用する方法もあります。ただし、サービスによって認められる範囲が異なりますし、業種によっては使えない場合もあります。どの方法が使えるかは、利用するプラットフォームの規約を必ず確認してください。※ 表示義務の解釈が微妙なケースでは、消費者関連法に詳しい弁護士や行政書士にご相談ください。

手順5:発送日数は「悪い日」を基準に設定する

これは実務的にとても大事なポイントです。発送までの日数を設定するとき、多くの人は「調子がいい日ならこれくらいでできる」を基準にしてしまいます。すると、体調が崩れた日に発送が遅れ、購入者からの問い合わせに追われることになる。この連鎖が、ハンドメイド販売をやめてしまういちばん多い原因です。

最初から「いちばん調子が悪い日でも間に合う日数」を設定してください。3日で発送できるつもりでも、設定は7日にしておく。早く届けば購入者は喜びますが、遅れれば評価が下がります。この非対称性を利用するのが賢いやり方です。

手順6:問い合わせの定型文をあらかじめ作っておく

「発送はいつになりますか」「オーダーメイドは可能ですか」「値下げできますか」。届く問い合わせは、実はパターンが限られています。あらかじめ返信の定型文をメモアプリに保存しておけば、体調が悪い日でも数十秒で対応できます。文章を一から考える負担は想像以上に大きいので、ここを仕組みで軽くしておくと消耗が減ります。

手順7:記録と申告の準備を並行して回す

前述のとおり、レシートと売上の記録は初日から取ります。会計ソフトを使う方法もありますが、最初は表計算ソフトで「日付・内容・金額・区分」の4列だけでも十分です。大事なのは完璧さではなく継続性です。

続けている人が実際にやっていること

「作る日」と「売る日」を分ける

長く続けている方に共通しているのが、作業の種類ごとに日を分けている点です。作る日、撮影する日、出品する日、発送する日。これらを同じ日に詰め込むと、頭の切り替えコストが大きく、疲労が跳ね上がります。特に、集中して手を動かす作業と、文章を書いたり数字を扱ったりする作業は、使う脳の部分が違います。

在庫を持たない受注生産から始める

先に作りためてから売る方式は、売れなかったときに材料費と時間が丸ごと損失になります。受注が入ってから作る方式なら、その心配がありません。発送までの日数を長めに設定できるのであれば、受注生産のほうが在宅ワークとしてははるかにリスクが低い。ただし、受注生産は「注文が入った瞬間に締め切りが発生する」ため、体調管理の観点では別の緊張が生まれます。どちらが自分に合うかは、実際にやってみないとわからない部分があります。

作業のリズムを固定する

在宅で仕事をしていると、時間の区切りがなくなって際限なく作業してしまう人と、逆に手がつかなくなる人に分かれます。どちらも消耗します。作業時間を区切るテクニックは、在宅ワーク全般で研究されている領域です。集中の維持と休憩の取り方については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで複数の方法が整理されているので、自分に合うリズムを探す出発点になります。

また、家庭内の他の役割と両立している方であれば、1日の流れをどう組むかが最大の課題になります。家事や育児と在宅の作業をどう配置しているかの実例は在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開が参考になります。ハンドメイド販売に置き換えても、時間の切り方の考え方はそのまま使えます。

「今日はやらない」を決めておく

これは相談を受けていて、うまくいっている方ほど徹底していると感じる点です。調子が悪い日に無理をして作った作品は、たいてい品質が落ちます。品質が落ちた作品を出荷すると、評価が下がり、その落ち込みがまた体調に響く。この悪循環を断つには、「今日は作らない」と決める権限を自分に与えておくしかありません。在宅の自営的な働き方の最大の利点は、まさにこの判断を自分で下せることです。

法務面で実際に起きているトラブル

著作権と商標の問題

いちばん多いのが、既存のキャラクターやブランドロゴを使った作品の販売です。これは明確に権利侵害になります。「原作者へのリスペクトだから」「少量だから」という理屈は通用しません。生地に印刷されたキャラクター柄を使ったハンドメイド作品も、生地メーカーが商用利用を許諾していない限りアウトです。

先日、あるハンドメイド作家さんから相談を受けました。人気アニメの柄の生地でポーチを作って販売していたところ、権利者から出品削除の通知が届いた、というものです。悪意はなく、生地は正規に購入したものでした。しかし、生地の購入と、それを使った商品を販売する権利は別のものです。結論から言えば、この通知に従って出品を取り下げる以外の選択肢はありませんでした。つまり、「材料を正規に買ったこと」は、完成品を売ってよい根拠にはならないんです。こういうケース、実は本当に多い。

対策はシンプルで、生地やパーツを買うときに商用利用の可否を必ず確認することです。多くのメーカーは公式サイトに商用利用に関する方針を掲載しています。書いていなければ問い合わせる。この一手間が、後から出品削除やアカウント停止で失うものと比べれば、圧倒的に安く済みます。

型紙・レシピの利用条件

もうひとつ見落とされがちなのが、型紙や編み図の利用条件です。「個人利用のみ可、商用利用不可」と明記されている型紙を使って作った作品を販売するのは、規約違反になります。無料で配布されている型紙ほど、この条件が付いていることが多い。ダウンロードした際の説明文を保存しておく習慣をつけておくと、後から確認できて安心です。

購入者とのトラブル

「イメージと違った」という理由での返品要求は、ハンドメイド販売でよく起きます。ここで重要なのが、購入前の説明です。サイズ、色味の個体差、天然素材の風合いの差、これらを商品説明に明記しておくと、トラブル時に「説明済みである」という立証ができます。逆に、説明が不足していたと判断されると、返品に応じざるを得ない場面が出てきます。

写真の色味についても一言添えておくことをおすすめします。「お使いのモニター環境により色の見え方が異なる場合があります」という一文があるかないかで、話の展開はかなり変わります。※ 高額な取引でトラブルがこじれた場合は、消費生活センターや弁護士への相談を検討してください。

委託販売・OEMを受けるときの契約

作品が評価されてくると、雑貨店からの委託販売の依頼や、企業からの製作依頼が来ることがあります。ここで契約書を交わさずに口約束で進めると、後々もめます。納品数、納期、単価、支払時期、売れ残った場合の扱い、返品の可否。最低限この6項目は文書で残してください。

企業から製作を請け負う形は、法的には業務委託にあたります。2024年に施行されたフリーランス保護新法では、発注者に対して取引条件の明示義務や、報酬を受領日から60日以内に支払う義務が定められています。つまり、「売れたら払う」という条件は原則として認められません。法律はあなたの味方です。相手が大企業でも、条件がおかしいと感じたら、まず書面での明示を求めてください。

こうした契約や取引条件の考え方は、ハンドメイドに限らず在宅で仕事を請け負うすべての分野で共通します。たとえば文章を書く仕事の相場感については著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種ごとのデータが整理されていますし、専門性の高い分野の相場を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場も同様の切り口で確認できます。自分の作業時間に対して適正な対価はいくらかを考えるとき、他分野の相場は良い物差しになります。

ハンドメイド販売と組み合わせられる在宅の仕事

ハンドメイド販売だけで収入を組み立てようとすると、売れ行きの波がそのまま生活の波になります。長く続けている方の多くは、性質の違う仕事を組み合わせて波をならしています。

たとえば、手作業とはまったく別の頭の使い方をする仕事を並行させると、体調の波に対して逃げ道が増えます。手が痛い日は文章の仕事をする、頭が回らない日は単純作業をする、といった具合です。在宅で受けられる仕事の幅を知っておくと、この組み替えがしやすくなります。事務やマーケティング領域の在宅案件の広がりについてはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に職種の全体像がまとまっていますし、より専門的な領域に興味があればアプリケーション開発のお仕事AIコンサル・業務活用支援のお仕事で、どんな案件が在宅で成立しているかを確認できます。

また、文章や事務の仕事を受けるなら、基礎的な文書スキルを証明できると受注のハードルが下がります。汎用性が高い資格としてはビジネス文書検定があり、IT寄りの分野を目指すならCCNA(シスコ技術者認定)のような技術系資格も選択肢になります。資格そのものが直接仕事を生むわけではありませんが、実務経験が少ない段階では、発注者に対して「基礎はある」と示す材料になります。

データから見えてくる、続く人と続かない人の違い

在宅ワークの案件動向を見ていると、ハンドメイド販売のような「自分で作って自分で売る」タイプの活動と、「依頼を受けて納品する」タイプの仕事とでは、収入の立ち上がり方がまったく違うことがわかります。前者は最初の売上が立つまでに時間がかかりますが、一度リピーターがつくと安定します。後者は最初から報酬額が決まっている代わりに、案件が途切れると即座にゼロになります。

20年この市場を見てきた立場から言えば、長く続いている人ほど、単発の売上を追いかけるのではなく、「この人から買いたい」と思ってもらう関係づくりに時間を使っています。ハンドメイド販売でいえば、同梱するメッセージカード、丁寧な梱包、購入後のフォロー。こうした細部の積み重ねが、次の注文を呼びます。派手ではありませんが、これがいちばん確実に効く投資です。そしてこの投資は、体調に波がある人でも、時間をかけて少しずつ積み上げられる種類のものです。

運営者として見てきた限りでは、もうひとつ効いているのが「中間に人が入らない取引の構造」です。仲介手数料が乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。ハンドメイド販売でも、マーケットプレイス経由と自分のショップ経由では、同じ価格で売っても手元に残る額が変わります。手数料0%で取引できる仕組みの価値は、金額そのものよりも「同じ労力に対する手取りが厚い」という質にあります。体力や作業できる時間に制約がある人ほど、この差は大きく効いてきます。限られた作業時間から生み出せる金額を最大化する、という発想は、在宅で働くすべての人にとって重要ですが、体調に波がある方にとってはとりわけ切実です。

もうひとつ、現場を見ていて感じるのは、収入の柱を1本にしない人ほど長く残る、ということです。ハンドメイド販売の売上、文章や事務の受託収入、そして制度による給付。この3つを組み合わせて生活を組み立てている方は、どれかが一時的に落ち込んでも活動を止めずに済みます。逆に、ハンドメイド1本に賭けて、売れない月が続いて心が折れてしまうケースを何度も見てきました。分散は、才能ではなく設計の問題です。

最後に、法務の立場から改めてお伝えしておきたいことがあります。障害者手帳を持っていることは、販売活動において不利にはなりません。特定商取引法も、著作権法も、フリーランス保護新法も、手帳の有無で扱いを変えていません。すべての事業者に等しく適用され、等しく守ってくれます。ルールを知っておくことは、あなたが自分の作品と時間を守るための、いちばん確実な手段です。そして、制度の使い方や支援の可否については、必ずお住まいの自治体の窓口という「正確な情報を持っている人」に直接聞いてください。ネット上の情報は目安にはなりますが、あなた個人の答えにはなりません。

よくある質問

Q. 障害者手帳を持っていると、ハンドメイドマーケットへの出品に制限はありますか?

主要なハンドメイドマーケットプレイスやフリマアプリで、手帳の有無を出品条件にしているところはありません。一般の出品者と同じ規約が適用されます。一方で、障害のある作り手の商品を専門に扱う特化型ECサイトもあり、そちらは出店に審査があることが多いので、扱えるジャンルや条件を事前に確認してください。

Q. 販売で収入が入ると、いま受けている手当や年金に影響しますか?

制度ごとに基準が異なるため、一律の答えはありません。手帳そのものは収入で取り消されるものではありませんが、障害年金や自治体独自の手当は所得や就労実態を見る場合があります。利用している制度を一覧にしたうえで、お住まいの自治体の障害福祉課の窓口で確認してください。ネット上の情報は目安にとどめるのが安全です。

Q. 自宅の住所や本名を公開せずに販売することはできますか?

通信販売では特定商取引法に基づく表記の義務があり、原則として氏名と住所の表示が必要です。ただしプラットフォームによっては運営会社が代理で開示する仕組みを用意している場合があり、バーチャルオフィスや私書箱を使う方法もあります。認められる範囲はサービスごとに違うので、必ず利用先の規約を確認してください。

Q. 体調に波があっても続けるコツはありますか?

発送までの日数を「いちばん調子が悪い日でも間に合う設定」にしておくことが最も効きます。作る日・撮る日・出品する日・発送する日を分け、問い合わせの返信は定型文を用意しておくと消耗が減ります。在庫を抱えない受注生産から始めると、売れ残りのリスクも避けられます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月11日最終更新:2026年9月9日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方