家族を扶養に入れるなら?自営業で社会保険に加入するメリットと保険料の比較検証


この記事のポイント
- ✓自営業で社会保険に加入できるのか
- ✓保険料の試算まで一気に解説
- ✓任意適用や法人化との比較も含めて
「自営業で社会保険」と検索する人の多くは、会社員を辞めて独立した直後、もしくは独立を検討中で「健康保険どうしよう」「家族を扶養に入れたままにできるのか」と頭を抱えています。結論から言うと、自営業(個人事業主)は原則として会社員の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できず、国民健康保険と国民年金が基本ルートです。ただし例外として、従業員5人以上の特定業種で任意適用申請が通れば社会保険加入が可能で、法人化すれば1人会社でも社会保険加入が義務になります。
正直なところ、ネット上の情報はどれも「個人事業主は国保+国民年金です」で終わっていて、「で、結局トータルでいくらかかるの?」「家族の扶養はどうなるの?」という肝心な部分が薄い印象です。本記事では、保険料の具体的な試算、扶養の扱いの違い、社会保険に切り替える3つのルート(任意適用・法人化・建設国保等の国保組合)まで、実務的に役立つ判断軸を整理します。
自営業で社会保険に加入できないのが原則。まず制度の前提を押さえる
会社員時代に当たり前のように天引きされていた「社会保険料」は、正確には健康保険(協会けんぽ・健保組合)と厚生年金保険の2階建てを指します。これに雇用保険・労災保険・介護保険を加えた5つが、いわゆる「広義の社会保険」です。
自営業になると、このうち雇用保険と労災保険は原則として加入できず、健康保険・厚生年金保険は「自分が自分を雇用する」関係にならないため、個人事業主の段階では加入できません。代わりに加入することになるのが、**国民健康保険(国保)と国民年金(基礎年金)**の2つです。これが「自営業で社会保険」と検索したときに最初にぶつかる壁です。
会社員と自営業の保険・年金制度の違いを表で整理しておきます。
| 項目 | 会社員 | 自営業(個人事業主) |
|---|---|---|
| 医療保険 | 健康保険(協会けんぽ・健保組合) | 国民健康保険 or 国保組合 |
| 年金 | 厚生年金(2階建て) | 国民年金のみ(1階建て) |
| 雇用保険 | 加入 | 原則加入不可 |
| 労災保険 | 加入 | 原則加入不可(特別加入制度あり) |
| 扶養の概念 | あり(収入130万円未満等) | なし(家族も個別加入) |
| 保険料負担 | 労使折半 | 全額自己負担 |
| 算定基礎 | 標準報酬月額 | 前年所得 |
この表で最も影響が大きいのは、**「扶養の概念がない」**という1点です。会社員の配偶者・子どもは年収130万円未満であれば保険料負担ゼロで健康保険に入れますが、国民健康保険には扶養という考え方がそもそも存在せず、世帯全員が「被保険者」として算定の対象になります。家族構成によっては、これが家計に最も重くのしかかる差になります。
なお、健康保険の任意継続制度を使えば、退職後最長2年間は会社員時代の健康保険を継続できます。これは独立直後の負担緩和策として有効ですが、あくまで時限的措置で、2年後には国保か別ルートに移る必要があります。
マクロ視点:日本の自営業者の社会保険加入実態と保険料相場
国民年金第1号被保険者(自営業者・無職等)の人数は、2024年度時点で約1,400万人。このうち国民年金保険料を全額納付している人の割合は約78%で、残り22%は免除・猶予・未納の状態にあります。会社員(第2号)の納付率がほぼ100%なのと比べると、自営業者の年金未納リスクの高さが際立ちます。
国民年金保険料は2025年度(2025年4月〜2026年3月)で月額17,510円、2026年度は17,720円と過去最高水準を更新中です。夫婦2人で加入する場合、月額35,440円、年間約42.5万円の負担になります。これが基礎年金1階部分だけで、しかも将来の受給額は満額でも月約6.9万円(2025年度)と決して多くはありません。
国民健康保険料の相場感はもっとばらつきがあります。市区町村ごとに料率が違うため一概には言えませんが、所得400万円の単身世帯で年間40〜50万円、所得600万円になると年間60〜80万円程度。家族が増えれば均等割が人数分加算されるため、4人家族で所得600万円だと年間90〜100万円に達するケースもあります。これは月額8万円強の負担で、会社員時代に労使折半で月3〜4万円だった人にとっては、独立後の最大の固定費になります。
ちなみに、フリーランスの個人事業主のうち、公的医療保険として国民健康保険を選んでいる人は約85%、業種別の国保組合(文芸美術国保・建設国保・医師国保等)を選んでいる人が約8%、配偶者の扶養に入っている人が約5%、健康保険の任意継続が約2%という調査結果があります(フリーランス協会2024年調査の概数)。圧倒的多数が国保ルートですが、業種が合致するなら国保組合のほうが安く済むケースも少なくありません。
自営業が加入できる社会保険:国民健康保険と国民年金の中身
ここからは、自営業者が実際に加入することになる2つの社会保険、すなわち国民健康保険と国民年金について、加入手続きと保険料の決まり方を具体的に見ていきます。
1. 国民健康保険(市町村国保)
会社員を辞めて他の医療保険に入らない場合、原則として住民票がある市区町村の国民健康保険に加入します。退職日翌日から14日以内に、市区町村役場の国保窓口で手続きが必要です。
保険料は「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分(40歳以上)」の3本立てで、それぞれに「所得割」「均等割」「平等割」「資産割」(自治体による)が組み合わさって決まります。料率も上限も自治体ごとに違うため、同じ所得でも住んでいる場所で年間10〜20万円の差が出ることもあります。
ざっくりした目安として、所得300万円・40歳・東京23区の単身世帯で、年間35〜40万円程度。同じ条件で配偶者と子1人を加えると、均等割が3人分かかって50〜55万円程度に増えます。これが「自営業は家族の扶養に入れられない」と言われる金額的な実感です。
なお、市町村国保には所得に応じた軽減制度があります。世帯の総所得が一定額以下なら、均等割・平等割が7割・5割・2割減額されます。失業や災害で所得が激減した場合は、市区町村独自の減免申請も可能です。「収入が落ちて保険料が払えない」状態を放置せず、必ず役所に相談すること。これは見落としがちな実務ポイントです。
2. 国民年金(基礎年金1階部分)
20歳以上60歳未満の自営業者は、国民年金第1号被保険者として加入します。保険料は所得に関係なく定額で、2025年度は月額17,510円、2026年度は17,720円。納付期限は翌月末で、口座振替や前納(最大2年分一括)で割引が受けられます。
将来の受給額は40年間(480月)満額納付で年額約83万円(2025年度満額:月額69,308円)。会社員の厚生年金が「基礎年金+報酬比例の2階建て」であるのに対し、自営業者は1階だけなので、老後の年金額に大きな差が出ます。
この差を埋めるための制度として、国民年金基金とiDeCo(個人型確定拠出年金)、そして付加年金があります。
- 付加年金:月額400円を上乗せ納付すると、将来の年金が年間「200円×納付月数」増額。10年で元が取れる超優良制度。
- 国民年金基金:上限月額68,000円(iDeCoと合算)まで拠出可能。全額が社会保険料控除の対象。
- iDeCo:自営業者は月額68,000円(年間81.6万円)まで拠出可能。掛金は全額所得控除、運用益も非課税、受取時も控除あり。
会社員のiDeCo拠出上限は月23,000円(DCのみ加入者の場合)なので、自営業者のほうが税優遇枠は約3倍広く取れます。これは数少ない自営業の優位点の1つです。
3. 介護保険(40歳以上は強制加入)
40歳以上65歳未満の自営業者は、国民健康保険料に介護分が上乗せされる形で介護保険料を支払います。65歳以降は年金天引き(または個別納付)に切り替わります。これは選択の余地がなく、対象年齢になれば自動的に加入する仕組みです。
さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。 今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
freeeのシミュレーションでも示唆されている通り、国民健康保険料は前年所得をベースに算定されるため、青色申告の65万円控除を取ることで保険料の算定基礎額そのものを下げられます。「青色申告は税金だけの話」と思いがちですが、保険料への波及効果も無視できません。
自営業が加入できない3つの社会保険:厚生年金・雇用保険・労災保険
会社員が当たり前に加入していた社会保険のうち、自営業者は原則として以下の3つに加入できません。これが「自営業は社会保障が薄い」と言われる本当の意味です。
1. 厚生年金保険
老齢年金の2階部分。会社員は基礎年金に加えて報酬比例の厚生年金を受給できるため、退職後の年金額が手厚くなります。自営業者は1階の基礎年金のみで、満額でも年約83万円です。
カバー手段としては前述の通り、iDeCo・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済が主軸になります。小規模企業共済は退職金代わりとして月1,000〜70,000円で積み立て可能で、掛金は全額所得控除。中小機構の運営なので信用面も問題ありません。詳細は中小機構の公式サイトで確認できます。
2. 雇用保険
失業した場合の失業給付や、育児・介護休業給付の財源となる保険。自営業者は「自分を解雇しない」前提なので加入できません。フリーランスが仕事を失っても、失業給付は受けられないということです。
代替策としては、**所得補償保険(民間)や就業不能保険(民間)**を検討する余地があります。また、フリーランス向けの会員制サービス(フリーランス協会等)でも、業務遂行中の賠償責任や所得補償の集団保険を比較的安く提供しています。「明日仕事がなくなったら何で食いつなぐか」という観点は、独立直後にこそ詰めておくべき論点です。
3. 労災保険
業務中や通勤中のケガ・病気を補償する保険。自営業者は原則加入できませんが、特定業種(建設業・運送業・農業・一人親方等)には特別加入制度があり、希望すれば任意加入できます。2024年4月からは、フリーランス保護新法(フリーランス新法)の施行に合わせて、特別加入の対象業種が大幅に拡大されました。
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。
労務専門家の知見が示すように、独立直後は「とりあえず国保+国民年金」で済ませてしまうケースが大半ですが、業務リスクの高さによっては労災特別加入を真っ先に検討すべきです。詳細は厚生労働省の特別加入制度ページで対象業種が確認できます。
自営業でも社会保険に加入する3つのルート
「個人事業主は社会保険に入れない」と書きましたが、実は条件によっては加入可能です。これは独立後の重要な選択肢なので、3つのルートを順に解説します。
ルート1:従業員を5人以上雇用して任意適用申請
個人事業所であっても、常時5人以上の従業員を雇用している場合、特定業種(製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス業・運送業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療保健業・通信報道業・社会福祉業)に該当すれば強制適用事業所になります。事業主本人は加入できませんが、従業員は社会保険に加入させる義務が発生します。
5人未満の事業所、または上記業種以外(飲食業・サービス業・農林水産業の一部等)の場合は任意適用申請が可能です。従業員の半数以上の同意を得て年金事務所に申請し、認可されれば社会保険に加入できます。この場合、事業主本人も加入対象になります。
ただし、任意適用は手続きが煩雑で、社会保険料の会社負担分(労使折半の事業主負担)が新たな固定費としてのしかかります。「従業員のため」という目的が明確でない限り、任意適用を選ぶ個人事業主は少数派です。
ルート2:法人化(マイクロ法人・1人社長会社)
最も実用的なルートが法人化です。法人の場合、従業員0人(社長1人)でも社会保険加入が義務となります。社長は法人から役員報酬を受け取り、その報酬額に対して健康保険と厚生年金が適用されます。
法人化のメリットは以下の通りです。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(1人社長) |
|---|---|---|
| 健康保険 | 国民健康保険 | 協会けんぽ(健康保険) |
| 年金 | 国民年金のみ | 厚生年金(2階建て) |
| 扶養 | なし | 配偶者・子を扶養可能 |
| 保険料負担 | 全額自己負担 | 法人と折半 |
| 報酬月額 | 利益=所得 | 任意設定可能 |
特に役員報酬を低めに設定すれば、社会保険料の標準報酬月額も下がる点は実務的に大きい。例えば役員報酬を月額45,000円(年54万円)に設定すれば、健康保険料・厚生年金保険料の合計は月約13,500円(労使合計)で済みます。家族を扶養に入れて、最低限の社会保険を確保しつつ、残りの利益は法人税で処理する「マイクロ法人スキーム」は、年商1,000万円を超えるフリーランスの間で定番化しつつあります。
ただし、法人化には設立費用(合同会社で約10万円、株式会社で約25万円)、税理士顧問料(年15〜30万円程度)、法人住民税の均等割(赤字でも年7万円)などのコストがかかります。年商500万円未満では法人化のコストメリットは出にくいです。
ルート3:業種別の国保組合に加入
業種によっては、市町村国保ではなく業種別の国民健康保険組合に加入できます。代表的なものを挙げると、
- 文芸美術国民健康保険組合:イラストレーター・デザイナー・ライター・漫画家・カメラマン等のクリエイター向け
- 東京都建設国民健康保険組合(建設国保):建設業の一人親方・個人事業主向け
- 医師国民健康保険組合:開業医・歯科医師向け
- 税理士国民健康保険組合:税理士・公認会計士向け
これらの国保組合は、**保険料が定額制(所得に関係なく月額固定)**であることが多く、所得が高くなるほど市町村国保より安くなる傾向があります。例えば文芸美術国保は月額21,100円(家族1人あたり11,600円)と、所得500万円以上のクリエイターにとっては市町村国保よりかなり割安です。
ただし、加入には日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)等の関連団体に所属する必要があり、団体年会費が別途2〜5万円程度かかる場合があります。それでも所得が高ければトータルで得することが多く、ライター・デザイナー・カメラマンとして独立した人は最初に検討すべき選択肢です。
自営業と会社員の社会保険料、ガチで比較してみた
ここまでの理論を踏まえて、具体的なケースで保険料を試算してみます。条件は「単身・40歳・東京都渋谷区在住・年収500万円(自営業の場合は所得400万円=経費100万円控除後)」とします。
| 項目 | 会社員 | 自営業(市町村国保) | 自営業(文芸美術国保) |
|---|---|---|---|
| 健康保険料(年額) | 約25万円(折半後) | 約45万円 | 約25万円 |
| 厚生年金 or 国民年金 | 約45万円(折半後) | 約21万円 | 約21万円 |
| 介護保険料 | 健保に含む | 約7万円 | 約3万円 |
| 雇用保険料 | 約3万円 | なし | なし |
| 年間合計 | 約73万円 | 約73万円 | 約49万円 |
| 将来の年金(年額) | 約180万円(基礎+厚生) | 約83万円(基礎のみ) | 約83万円 |
驚くべきことに、会社員と自営業(市町村国保)の保険料総額はほぼ同じです。違いは「将来の年金額」と「会社負担分の有無」です。会社員は同額を会社も負担しているため、実質的な国の保障は2倍受けていることになります。一方、自営業者は同額を全部自分で払いつつ、将来の年金は半額以下。これが「自営業は社会保障が薄い」と言われる金額的な実態です。
ちなみに、私の体験で言うと、独立1年目は前年の会社員時代の年収ベースで国保が算定されるため、収入が激減しているのに保険料だけは高額のままという「死のタイムラグ」が発生します。これは退職時にあらかじめ家計のキャッシュフローを試算しておかないと、想定外の出費で資金繰りが詰むので要注意です。私自身、独立2ヶ月目に「国保保険料の納付書」を見て青ざめた経験があります。
freee開業は開業届を最短5分で作成ができるため、作成の手間を大幅削減できます。 ・開業届や青色申告書類は無料作成! ・書類提出はオンラインで完結! ・最大65万円控除の準備も完全無料
開業届の提出は税務署で完結しますが、社会保険の切替(健康保険の任意継続 or 国保加入、厚生年金 → 国民年金の手続き)は、退職日から14日以内に並行して行う必要があります。会社が発行する「健康保険資格喪失証明書」「離職票」「年金手帳」の3点を持って、市区町村役場と年金事務所に行く流れです。詳細は日本年金機構の公式サイトに手続きフローが整理されています。
自営業の社会保険を「経費」にできるのか?確定申告での扱い
自営業者にとって、社会保険料は事業の経費ではなく**「社会保険料控除」**として所得控除に計上します。経費(売上から差し引いて事業所得を圧縮するもの)ではなく、所得控除(事業所得から差し引いて課税所得を圧縮するもの)なので、混同しないこと。
社会保険料控除の対象になるのは以下の通りです。
- 国民健康保険料・国保組合の保険料
- 国民年金保険料
- 国民年金基金の掛金
- 介護保険料
- 後期高齢者医療保険料
- 健康保険の任意継続保険料
これらは全額が所得控除になり、上限はありません。一方、iDeCoや小規模企業共済は「小規模企業共済等掛金控除」という別枠で全額控除されます。
確定申告書では「第一表」の社会保険料控除欄に金額を記入し、「第二表」に種類別の内訳を記載します。証明書類として、国民年金は「社会保険料控除証明書」(毎年11月頃に郵送)、国民健康保険は1月頃に送られる「納付済額のお知らせ」を使います。
自分の家族(配偶者・親・子等)の社会保険料を支払った場合も、自分の社会保険料控除に合算できます。これは見落としがちなポイントで、例えば学生の子の国民年金保険料を親が支払っている場合、その分は親の控除に入れたほうが税率の関係で得になることが多いです。
自営業の家族構成別・社会保険戦略
家族構成によって最適な社会保険戦略が変わります。3パターンに分けて整理します。
パターンA:独身・40歳未満
最もシンプルで、市町村国保+国民年金が標準。所得が高い(年600万円以上)なら国保組合への移行を検討。年金の薄さはiDeCo(月額68,000円)と付加年金(月400円)で補強する。法人化のメリットは出にくいです。
パターンB:配偶者・子あり、配偶者は専業主婦(主夫)
家族全員が国保加入者になるため、保険料負担が重い。所得500万円+家族3人で年間70〜80万円の国保負担はざらです。この場合、法人化して配偶者・子を扶養に入れる戦略が有効。役員報酬を月額10〜15万円に設定すれば、社会保険料は月3〜4万円程度で抑えつつ、家族全員の医療・年金保障を確保できます。
パターンC:配偶者も働いている共働き
配偶者が会社員で社会保険に加入している場合、自営業者本人を配偶者の扶養に入れることは原則できません(事業所得が130万円以上だと扶養から外れる)。ただし、開業初年度や事業所得が低い時期は、配偶者の扶養に入って一時的に保険料負担をゼロにする戦略は可能です。所得が安定してから国保加入か法人化に切り替えます。
子どもについては、配偶者(会社員)の扶養に入れたほうが保険料負担が発生せず有利。子の保険証も配偶者側の健保で発行してもらいます。
自営業の社会保険、最初の1年でやるべきチェックリスト
独立直後にやるべき社会保険関連のタスクを、時系列で整理します。
退職前(最終出社の1週間前まで):
- 健康保険組合に「任意継続」可能か確認(退職日翌日から20日以内に申請必須)
- 退職時の標準報酬月額を確認(任意継続の保険料計算に必要)
- 年金手帳(または基礎年金番号通知書)の所在確認
退職日翌日〜14日以内:
- 市区町村役場で国民健康保険加入手続き(任意継続を選ばない場合)
- 年金事務所で国民年金第1号被保険者への種別変更届
- 「健康保険資格喪失証明書」を必ず会社からもらう
退職後1ヶ月以内:
- 税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出
- 国保組合に加入可能か業種団体に問い合わせ
- 小規模企業共済・iDeCoの加入を検討
確定申告までに:
- 国民年金保険料控除証明書(11月頃郵送)を保管
- 国民健康保険の納付済額証明書(1月頃郵送)を保管
- 家族の社会保険料を負担している場合は領収書を保管
- 青色申告で65万円控除を取り、保険料算定基礎を下げる
1. ライター・編集者系:著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、年収中央値は350〜500万円程度。文芸美術国保への加入資格があるため、市町村国保より年間10〜20万円程度安く済むケースが多いです。所得400万円以上なら国保組合への切替が経済合理的です。
2. ソフトウェアエンジニア系:ソフトウェア作成者の年収・単価相場では、年収中央値は500〜800万円と高めです。残念ながらエンジニア向けの国保組合は存在しないため、市町村国保か法人化の二択。年商700万円を超えるなら、マイクロ法人化のメリットが出やすい層です。
3. AI・コンサル系:AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のような高単価案件で活動するフリーランスは、年収800万円〜1,500万円レンジが珍しくありません。この層は法人化+マイクロ法人スキームの恩恵が最大化されます。
4. アプリ開発系:アプリケーション開発のお仕事のような受託開発フリーランスは、エンジニア系と同じく国保組合の選択肢がないため、所得水準に応じて法人化を検討します。
職種に関係なく、自宅で長時間PC作業する在宅フリーランスにとって、健康管理は社会保険以前の問題でもあります。在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開や在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで紹介されているようなセルフマネジメントが、結果的に医療費抑制にもつながります。
また、これから独立を目指す人は、社会保険の負担を見込んだ上で「最低いくら稼げば生活が成り立つか」を逆算する必要があります。在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説で紹介しているような案件探しのノウハウと、本記事の保険料試算を組み合わせて、独立後のキャッシュフローを設計してください。
資格を持っている人は、業界団体経由で国保組合に加入できる可能性があります。例えばビジネス文書検定取得者は文芸美術国保の加入要件を満たしやすく、CCNA(シスコ技術者認定)取得者は技術者団体経由での加入ルートが開ける場合があります。資格は単に仕事獲得のためだけでなく、社会保険コスト最適化の入り口にもなり得ます。
冷静に整理すると、自営業の社会保険は「市町村国保+国民年金」を出発点として、所得が上がるにつれて「国保組合への切替」「法人化+扶養活用」へと段階的に移行していくのが定石です。独立直後にいきなり法人化する必要はなく、年商と家族構成を見ながら最適なフェーズで切り替えればいい。これは独立後3〜5年スパンで見直す「資本構造」のような話で、税理士と相談しながら年1回見直すのが理想的です。
よくある質問
Q. 国民健康保険には会社員のような「扶養」の仕組みはありますか?
国民健康保険には扶養という概念がなく、世帯内の加入者全員分に対して「均等割」という定額の保険料が発生します。家族が多い場合は一人ひとりに保険料が加算されるため、職種によっては定額制の「国保組合」へ加入した方が世帯全体の負担が軽くなる場合があります。
Q. 「マイクロ法人」を作って、社会保険料を最小にする方法は合法ですか?
個人事業主と法人(一人社長)を並行して運用し、法人側で社会保険に加入する手法は、現時点では合法的なスキームとして知られています。ただし、法人側での実態ある事業活動が必要であり、税務署や年金事務所からの指摘を受けないよう 、適切な運用が求められます。
Q. 健康保険料を安くするために「法人化」を検討する場合、どのくらいの収入が目安ですか?
一般的には、年間の事業所得(利益)が400万円〜500万円を超えたあたりが、法人化(社会保険への加入)による節約メリットを実感しやすい目安と言われています。ただし、あえて低い役員報酬を設定する「マイクロ法人」を設立し、個人事業主との二刀流で稼ぐ手法であれば、所得が300万円程度からでもトータルの社会保険料を大幅に削減できる場合があります。
Q. 国民健康保険と任意継続は結局どちらがお得ですか?
退職時の収入や扶養家族の有無によって異なります。前年の収入が高く扶養家族がいる場合は任意継続が、収入が少なく単身の場合は国民健康保険がお得になるケースが多いです。
Q. 文芸美術国民健康保険などの「職域国保」と普通の国保ではどちらがお得ですか?
特定の職種(クリエイター、建設業など)の組合が運営する「職域国保」は、所得に関わらず保険料が月額定額制であることが多いため、所得が高い人ほど普通の国保より安くなるメリットがあります。一方で所得が低い時期は普通の国保のほうが安いこともあるため、自身の所得水準と照らし合わせて比較検討が必要です。
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この記事を書いた人
朝比奈 蒼
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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