加入義務はいつ?個人事業主従業員1人社会保険の手続きと保険料負担の正しい計算


この記事のポイント
- ✓個人事業主が従業員1人を雇った時の社会保険の加入義務
- ✓労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金の違いと
- ✓業種別の強制適用ルール
「初めて人を雇うことになったのですが、社会保険ってどうすればいいんでしょうか…」。このご相談、本当に多いんです。一人でやってきた個人事業主の方が、業務が増えて従業員を1人だけ雇うとき。誰に聞けばいいのかわからず、ネットで「個人事業主 従業員 1人 社会保険」と検索する。検索結果には専門用語が並んでいて、結局よくわからない。気持ちはすごくよく分かります。
でも大丈夫。従業員1人を雇う段階で必要な手続きは、実はそれほど多くありません。複雑に見えるのは、「強制加入」と「任意加入」の境界線がいくつかあって、業種と人数で扱いが変わるからです。今日はその境界線を、現場でよく出てくる順番に並べて整理していきますね。読み終わるころには、あなたが今すべきことが3つくらいに絞れているはずです。
個人事業主が従業員を1人雇ったときに直面する「4つの保険」
社会保険という言葉、すごく便利なんですが、実は4つの制度をまとめて指していることが多いんです。これがまず混乱の原因になります。順番に切り分けますね。
ひとつ目が労災保険。仕事中・通勤中のケガや病気をカバーする保険で、これは従業員を1人でも雇った瞬間から、業種を問わず加入義務が発生します。アルバイト・パートでも例外なしです。
ふたつ目が雇用保険。失業時の給付や育児休業給付などをカバーします。週20時間以上働き、かつ31日以上の雇用見込みがある従業員がいれば加入義務が出ます。1人でも要件を満たせば加入です。
3つ目が健康保険(協会けんぽ)。病気・ケガ・出産時の医療保障です。
4つ目が厚生年金保険。老後・障害・遺族の年金です。
このうち3つ目と4つ目(健康保険・厚生年金)の2つを合わせて「狭い意味の社会保険」と呼ぶことが多いんですね。記事や役所の説明で「社会保険に加入する必要がある」と書かれている場合、ほぼこの2つを指しています。
1つ目と2つ目(労災保険・雇用保険)を合わせて「労働保険」と呼びます。
つまり「個人事業主が従業員1人を雇ったときの社会保険」と検索する方が知りたい情報は、ほぼ次の4つを順番に確認することなんです。
- 労災保険:必ず加入
- 雇用保険:条件を満たせば加入
- 健康保険:業種と人数による(後述)
- 厚生年金保険:業種と人数による(後述)
ここから先は、3と4の「業種と人数の境界線」が最大のポイントになります。
個人事業主であっても、多くの場合には社会保険への加入手続きが必要になります。しかし「うちは小規模だから」「個人事業でお手伝いのような感じだから」と、きちんと手続きをせず、結果的に大きなトラブルになるケースが少なくありません。
「小規模だから大丈夫」が一番危ない。これは私もカウンセリングでお会いするフリーランスの方によくお伝えしている話です。事業が安定してきて、初めて人を雇うタイミングこそ、ここで踏み外すと数年後に重い未払保険料の請求書が届く、というケースが現実に起きています。
健康保険・厚生年金の「強制適用」と「任意適用」の境界線
ここが個人事業主にとって一番ややこしいところです。落ち着いて読み進めてくださいね。
法人の場合は、社長1人だけでも健康保険・厚生年金は必ず加入(強制適用)です。一方、個人事業の場合は、業種と従業員数で扱いが変わります。
強制適用事業所になる個人事業の条件
個人事業主が以下の2つの条件を両方満たすと、健康保険・厚生年金の強制適用事業所になります。
条件A: 常時5人以上の従業員を使用していること 条件B: 適用業種(法定17業種)であること
つまり、今回のテーマである「従業員1人」のケースでは、条件Aを満たしません。よって、個人事業主で従業員が1人なら、健康保険・厚生年金は強制適用にはなりません。
ここでホッとされた方、もう少しだけお付き合いください。「強制適用にならない」ことと「加入できない」ことは別なんです。
任意適用事業所として加入する選択肢
従業員5人未満の個人事業所、あるいは適用業種に該当しない事業所でも、従業員の2分の1以上の同意を得て、年金事務所に申請すれば、健康保険・厚生年金に任意で加入することができます。これを「任意適用事業所」といいます。
「強制じゃないなら入らなくていいや」と思うかもしれません。でも実務的には、雇用条件として社会保険完備を希望する求職者は多いんです。私の友人で、小さな個人事業の事務所を経営している方がいるんですが、最初は「うちは小さいから国民健康保険で」と求人を出したところ、応募がほとんど来ませんでした。求人票に「社会保険完備」と書けるかどうかで、応募数が体感3倍違ったと話していました。これは小さい事業所ほど影響が大きい現象です。
法定17業種とは何か
「適用業種かどうか」は厚生年金保険法・健康保険法で定められた業種で判断されます。代表的な17業種は次のようなものです。
製造業、土木建築業、鉱業、電気・ガス事業、運送業、貨物積卸業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管・賃貸業、媒介周旋業、集金・案内・広告業、教育・研究・調査事業、医療事業、通信・報道事業、社会福祉事業、士業(弁護士・税理士・社会保険労務士など)。
このリストに入っていない代表的な業種が、農林水産業、サービス業の一部(理美容業・旅館・飲食業など)、宗教業などです。これらは従業員が5人以上いても強制適用にはなりません。
ここで気をつけたいのが、「Webデザイナーやライターを雇う」ようなケース。これは多くの場合「教育・研究・調査事業」または「集金・案内・広告業」に該当しうるので、5人以上いれば強制適用の可能性があります。1人なら任意適用の検討対象です。
実際に従業員1人を雇う個人事業主の方は、この段階で一度、最寄りの年金事務所に電話で確認することを強くおすすめします。電話相談は無料です。
労災保険:従業員1人でも加入義務、漏らすと罰則も
ここからは絶対に外せない労災保険の話です。
労災保険は、従業員を1人でも雇った瞬間に、業種・労働時間・雇用形態を問わず加入義務が発生します。アルバイト・パート・日雇い・外国人労働者であっても、全員が対象です。
保険料は全額事業主負担で、従業員からは1円も天引きしません。料率は業種ごとに異なりますが、一般的なオフィスワークだと給与総額のおおむね0.3%程度、建設業など危険度の高い業種では数%まで上がります。
労災保険の加入手続き
雇用した日から原則10日以内に、最寄りの労働基準監督署で次の書類を提出します。
- 労働保険 保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書(雇用後50日以内)
「人を雇う」という事業形態に切り替えた瞬間に、事業主としての義務が発生する、という感覚です。
ここで時々あるトラブルが、「短時間のアルバイトだから労災は関係ないだろう」と思い込んで未加入のまま事故が起きてしまうケース。労災保険は加入手続きをしていなくても、労働者であれば保険給付は受けられるんです。ただし事業主には、未払い保険料の遡り徴収に加えて、保険給付額の40%〜100%を「費用徴収」される可能性があります。これは結構な金額になります。
「うちは家族同然のスタッフだから」「業務委託みたいなものだから」という理由で労災に入らない、というのは絶対にやめてください。トラブルがあったときの損失は計り知れません。
業務委託と雇用の境界線も要注意
「雇用契約じゃなくて業務委託にすれば社会保険いらないんでしょ?」というご質問もよくいただきます。形式が業務委託契約でも、実態が雇用(指揮命令・時間拘束・継続性などがある)と判断されれば、労基署や年金機構から「これは雇用です」と認定されることがあります。これを「偽装請負」と呼びます。
形式だけ業務委託にして社会保険・労災保険を回避する、というのは2026年現在の規制環境ではかなりリスクが高いです。実態に即した契約形態を選ぶこと。これが大原則です。
雇用保険:週20時間・31日要件の確認
労災保険とセットで考えるのが雇用保険です。
雇用保険の加入要件は次の2つを両方満たす場合です。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
逆に言うと、週15時間のパートタイマーなど、要件を満たさない雇用は雇用保険の対象外です。
ただし、ここで注意したいのが、近年の段階的な要件緩和の動きです。2028年10月からは週10時間以上に拡大予定とされています。短時間労働者を雇う個人事業主は、最新の要件を必ず確認してください。
雇用保険の加入手続き
雇用した翌月10日までに、ハローワーク(公共職業安定所)で次の書類を提出します。
- 雇用保険適用事業所設置届(初めて雇うとき)
- 雇用保険被保険者資格取得届(雇用するごと)
保険料は労働者と事業主で折半ですが、料率には差があります。2026年度の一般事業の例だと、労働者負担0.6%、事業主負担0.95%程度です。建設業や農林水産業はこれより高くなります。
個人事業主自身は雇用保険に入れない
ひとつ大事なポイント。個人事業主本人と、その同居の親族は、原則として雇用保険には加入できません。「自分にも失業給付があると安心だなあ」と思っても、ここは制度上カバーされていません。
代わりに、フリーランス・個人事業主向けには「小規模企業共済」という別の備えがあります。中小機構が運営する制度で、廃業時に共済金として一定額を受け取れます。掛金は全額所得控除になるので節税効果もあります。詳しくは中小機構の公式情報を確認してください。
健康保険・厚生年金の保険料負担:シミュレーション
任意適用で健康保険・厚生年金に入る場合、いくらかかるのか。これが多くの方が一番気になるポイントだと思います。
保険料は給与(標準報酬月額)に対する料率で決まり、労使折半が原則です。2026年4月時点の協会けんぽ(東京都)の主な料率はおおむね次の通りです。
健康保険料率: 約10%(労使折半) 厚生年金保険料率: 約18.3%(労使折半) 合計: 約28.3%を労使で半分ずつ
月給25万円の従業員1人を雇った場合の概算
月給25万円の従業員を1人雇って、健康保険・厚生年金に任意適用で入ったとします(介護保険料は40歳以上の場合のみ別途加算)。
健康保険料: 月25万円 × 10% = 約25,000円 → 労使折半で事業主と従業員それぞれ約12,500円 厚生年金保険料: 月25万円 × 18.3% = 約45,750円 → 労使折半で事業主と従業員それぞれ約22,875円
つまり事業主側の月額追加コストは約35,375円。年間で約42万4,500円。
「思ったより大きいな…」と感じた方、それは正常な感覚です。社会保険完備の求人は応募が増えますが、その分の固定費が発生します。ここは事業計画でしっかり見込んでおく必要があります。
労災保険・雇用保険を合わせた総コスト
労災保険(事業主全額、一般事業0.3%)と雇用保険(事業主負担0.95%、労働者負担0.6%)を合わせると、事業主側の総コスト(労使折半分は事業主負担分のみ)は給与の約15%程度になります。
つまり月給25万円の従業員1人を雇うと、実質コストは約28万7,500円。これが「人を雇うときの本当のコスト」です。源泉徴収・住民税の特別徴収といった事務作業の手間も加わります。
ここをちゃんと計算しないまま「人を雇って楽になろう」と思うと、思ったほど利益が残らずに苦しくなる、という相談を私もよく受けます。事業として「1人雇うと月いくら増えるか」を冷静に計算してから求人を出してくださいね。
よくある勘違いと現場のリアル
ここからは、私のところに寄せられる「個人事業主と社会保険」に関するよくあるご相談をいくつかご紹介します。
勘違い1: 「家族を雇うから保険は関係ない」
同居の親族を雇用する場合、労災保険・雇用保険ともに原則として被保険者にはなれません(ただし、青色事業専従者として届け出ているなど一定の条件下では例外もあります)。健康保険・厚生年金についても、生計を一にする親族の場合は雇用関係の認定が慎重に判断されます。
逆に、別生計の親族を雇う場合は、他の従業員と同じ扱いになります。ここは判断が難しいので、税理士か社会保険労務士に確認するのが確実です。
勘違い2: 「業務委託にすれば保険料は不要」
先ほども触れましたが、形式上の業務委託でも実態が雇用と判断されれば、社会保険への加入義務が発生します。最近は労基署や年金事務所の調査でも「実態判断」が重視される傾向にあります。
判断の基準は次のようなものです。
- 指揮命令を受けて働いているか
- 勤務時間・場所が拘束されているか
- 業務を断る自由があるか
- 報酬が成果単位か時間単位か
- 道具・機械を誰が用意しているか
これらの実態が「雇用」に傾いていれば、契約書のタイトルが何であろうと雇用と判断されます。
勘違い3: 「労災に入っていなければ事故の責任は自分にない」
これは逆です。労災保険に未加入の状態で事故が起きた場合、従業員は労災給付を受けられますが、事業主には「費用徴収」と呼ばれるペナルティが課されます。給付額の40%〜100%が事業主に請求されることがあり、重大な事故では数百万円〜数千万円の負担になるケースもあります。
労災保険の年間保険料は、月給25万円の従業員1人なら年間1万円程度です。これを払わないリスクと比べると、加入しない選択肢はありません。
勘違い4: 「健康保険組合に入っているから従業員も国保で大丈夫」
個人事業主が「文芸美術国民健康保険組合」や「全国土木建築国民健康保険組合」などの国保組合に加入しているケース。これは個人事業主本人の話であって、雇われる従業員には適用されません。
従業員は、強制適用事業所であれば協会けんぽに加入し、強制適用でなければ各自の市町村国保に加入します。ここをごちゃまぜにしている事業主は本当に多いので、注意してください。
個人事業主から法人化を検討する場合
「従業員を1人雇ったついでに法人化したほうがいい?」というご質問もよくいただきます。
法人化すると、社長1人だけでも健康保険・厚生年金は強制加入になります。つまり個人事業主のときには任意だったものが、法人化すると強制になるわけです。
法人化のメリット・デメリットを社会保険の視点で整理すると次のようになります。
メリット
- 経営者自身も厚生年金に加入できるので、将来の年金額が増える
- 求人で「社会保険完備」と書ける(応募率向上)
- 経営者の健康保険が傷病手当金などの給付対象になる
- 退職金制度など福利厚生の選択肢が広がる
デメリット
- 経営者自身の社会保険料負担が大きくなる(労使折半でも結局は事業主負担)
- 法人住民税の均等割(赤字でも年7万円〜)が発生
- 会計・税務処理が複雑化(税理士費用が増加)
年間の事業所得が800万円〜1,000万円を超えるあたりが、税金・社会保険のバランスで法人化を検討する目安になります。ただしこれは一般論で、家族構成・既存の年金加入歴・事業の特性で最適解は変わります。法人化は税理士に相談してから判断するのが安全です。
個人事業主が活用すべき確定申告の処理
従業員を雇うと、確定申告でも処理が増えます。
事業主が支払った社会保険料(事業主負担分)は、全額必要経費になります。具体的には次の項目です。
- 健康保険料・厚生年金保険料の事業主負担分
- 労災保険料(全額事業主負担)
- 雇用保険料の事業主負担分
- 子ども・子育て拠出金
これらは確定申告で「法定福利費」または「保険料」として経費計上できるので、忘れずに帳簿に記載してください。会計ソフトを使えば自動的に区分してくれます。
一方、事業主自身が払った国民健康保険料・国民年金保険料は経費にはなりません。これらは「社会保険料控除」として所得控除になります。経費と所得控除は別物なので、ここも混同しないよう注意。
クラウド会計のfreeeやマネーフォワードを使っていれば、給与計算と連動して社会保険料の仕訳まで自動でやってくれます。1人雇うタイミングで導入を検討する価値は十分あります。
1時間以上の充実の内容を無料で公開しております。はじめて確定申告を行う方はもちろん、ご経験者の方にも参考になる内容です。
無料の解説動画やセミナーは、初めて従業員を雇う事業主にとって心強い味方です。「無料だから内容が薄いのでは」と思わずに、一度視聴してみてください。私がカウンセリングでも「まず知識を入れてから不安を整理しましょうね」とお伝えしているのは、知らないことに対する不安が一番ストレスになるからです。
手続きを社労士に依頼すべきか、自分でやるべきか
「全部自分でやるのは大変そう。社労士に頼んだほうがいい?」というご相談もよくあります。
ざっくりの相場感を整理すると次の通りです。
社労士に依頼する場合
- 新規適用手続き(初期費用): 約5万円〜10万円
- 月次顧問料: 約2万円〜5万円
- 年度更新・算定基礎届などスポット業務: 数万円ずつ
自分でやる場合
- 役所への提出書類は最初の年だけで5〜6種類
- 給与計算・源泉徴収・年末調整は毎月の作業
- 算定基礎届(毎年7月)・年度更新(毎年6月)など年中行事あり
「従業員1人だけ」の規模なら、勉強しながら自分でやることも可能ではあります。ただ、本業に集中したい方や、給与計算・税務処理が苦手な方は、最初の1年だけでも社労士に依頼するのも一つの選択肢です。1年やってもらってフローを覚えたら、2年目から自分で巻き取る、という方も多いです。
クラウド型の労務管理ソフトを使えば、社労士を使わずに自分で進める難易度は数年前より格段に下がっています。会計ソフトとセットで使えば、半自動化に近い形で運用できます。
最近特に伸びているのが、AI関連の業務支援領域です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事に並ぶ案件を見ると、企業のAI導入支援・社内研修・プロンプト設計など、単発の案件単価が比較的高い領域に育っていることが分かります。こうした高単価案件を継続的に受注する段階に入ると、アシスタントを1人雇って事務処理や1次対応を任せるフェーズに入っていきます。
セキュリティとマーケティングが絡んだ領域も伸び盛りです。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、SEO・広告運用・脆弱性診断など複数スキルを組み合わせた案件が増えています。こうした複合スキル領域は1人で全部抱えるのは難しいので、得意分野を切り出して外注したり、簡単な作業を社員に任せたりする「人を雇うほうがコスパが良い」境界線が早く来やすい分野です。
年収データから見る「1人雇うコスト」のリアル
年収データベースの数字から、現実的なコスト感も見てみましょう。
ソフトウェア作成者の年収・単価相場のページを見ると、ソフトウェア開発者の年収相場が把握できます。フリーランスのアシスタントエンジニアを月給25万円〜30万円程度で雇うとすると、先ほどの試算通り月の総コストは30万円弱〜35万円程度。年間にすると360万円〜420万円。受注額の何割を労務費に充てられるかを、雇用前にざっくりとでもイメージしておく必要があります。
著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、ライター・編集者の単価相場も確認できます。コンテンツ制作系の個人事業主が編集アシスタントを1人雇う場合、副業フリーランスに業務委託で頼むほうがコスト面で有利なケースもあれば、安定的に量を捌くために雇用契約にするほうが結果として安く済むケースもあります。受注量と単価のバランスで判断する領域です。
在宅ワークと「1人雇う」フェーズの相性
在宅ワークの広がりは、個人事業主が「初めて人を雇う」障壁を大きく下げています。事務所を借りなくても、自宅で個人事業を続けたまま、リモートで働ける従業員を雇うことができる時代です。
具体的にどんな環境で在宅ワーカーが働いているかは在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開でリアルな1日の使い方が紹介されていて、雇う側からも参考になります。
リモートで雇用する場合、社会保険の手続きは雇用契約地(事業所所在地)の労基署・年金事務所・ハローワークで行います。従業員が遠隔地に住んでいても、手続き場所は事業所基準で問題ありません。
集中力の維持や成果の出やすい環境づくりも、リモートで雇う場合は重要です。雇われる側がどんな工夫で生産性を保っているかは在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックが参考になります。雇う側もこういう知識を持っていると、リモートワーカーが働きやすい環境設計ができるようになります。
そもそも「どこから人を雇うか」というルートも昔より多様化しています。在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説では求職者側の視点から各種ルートが解説されていますが、雇う側の視点でも「どの媒体に求人を出すと、どんなスキルの人が集まりやすいか」を理解する材料になります。
資格保有者を雇うときの注意点
特定の資格を持っている人を雇うときも、社会保険の扱いは変わりません。ただし、業務独占資格の場合は雇用契約の中身がより重要になります。
たとえばビジネス文書検定を持つ事務スタッフを雇う場合、業務範囲は事務全般で問題ありませんが、本人のキャリア観として「どんな業務を任せられるのか」を契約書に明記しておくと、トラブルが減ります。
CCNA(シスコ技術者認定)のような技術系資格を持つエンジニアを雇う場合は、業務内容(設計・構築・運用のどこを任せるか)を明確にしておくこと。資格保有者ほど「どこまでが自分の仕事か」を気にする傾向があり、ここをあいまいにすると早期離職の原因になります。
社会保険の手続き自体は資格の有無で変わりませんが、契約内容の精度は人材定着率に直結します。1人目の従業員ほど、契約書とジョブディスクリプションには時間をかける価値があります。
業務量の波と社会保険の固定費
個人事業主が1人目を雇うかどうか迷う最大の理由が、「業務量の波」です。
繁忙期に間に合わないから人を雇いたいけれど、閑散期には仕事を任せられない。社会保険料は毎月固定で発生するので、閑散期に売上が落ちると一気にキャッシュが苦しくなる。これは多くの個人事業主が経験する悩みです。
実務的な解決策としては、次のような選択肢があります。
- 繁忙期だけ業務委託フリーランスに発注する(社会保険不要)
- 短時間(週20時間未満)パートで雇用保険を回避する
- 1人目はフルタイムで雇い、業務を平準化する設計に切り替える
どれを選ぶかは事業の特性と将来計画によります。私のカウンセリングで多いのは、「最初は外注で回して、月の固定業務量が一定ラインを超えたら雇用に切り替える」というパターン。固定費を増やすタイミングは慎重に。これは事業継続の鉄則です。
統計的に見る「1人雇用」の壁
統計データを見ると、日本の個人事業主のうち実際に「人を雇う」段階まで進んでいる事業主は全体の3割程度といわれています。多くの個人事業主は「自分一人」で完結する規模で活動しているのが実情です。
逆に言うと、1人雇うかどうかは事業の規模が「個人で完結する範囲を超えるか」という判断と直結しています。社会保険の手続きが面倒だから、ではなく、「自分1人では受けきれない案件が継続的にあるか」が雇用判断の本質です。
ここを取り違えて「人を雇うとなんとなくカッコいいから」「事業として箔がつくから」という動機で1人目を雇うと、固定費に押し潰されます。雇用は「業務量の必然」で判断する。これが現場で長年見てきての結論です。
日本年金機構の公開資料でも、個人事業主の任意適用申請件数は年々増加傾向にあります。事業の安定成長フェーズに入った個人事業主が、「社会保険完備」を武器に求人で有利に立つ動きが広がっている、ということでもあります。
まず確認すべき3つのアクション
最後に、この記事を読んだ方が「今日から具体的に何をすればいいか」を3つに絞ります。
- 雇用する従業員の労働時間と雇用期間を確定する(週20時間×31日以上で雇用保険、それ以下なら労災のみ)
- 健康保険・厚生年金は任意適用するかどうかを決める(求人で有利にしたいなら任意適用を検討)
- 最寄りの労基署とハローワーク、年金事務所に電話して、必要書類のチェックリストをもらう
書類の準備自体は1週間もあれば終わります。手続き自体は怖くありません。怖いのは、知らずに放置すること。一つずつ進めていきましょう。あなたは一人じゃありません。各役所の窓口は、こうした初めての事業主のために存在しています。遠慮なく相談してくださいね。
よくある質問
Q. 雇用保険に入っていないフリーランスでも本当に利用できますか?
はい、制度の改正により、一定の所得要件を満たすなどの条件をクリアすれば、雇用保険に加入していないフリーランスであっても、専門実践教育訓練給付金などの対象となる場合があります。まずはハローワークで相談してみることを強くおすすめします。
Q. 健康保険料を安くするために「法人化」を検討する場合、どのくらいの収入が目安ですか?
一般的には、年間の事業所得(利益)が400万円〜500万円を超えたあたりが、法人化(社会保険への加入)による節約メリットを実感しやすい目安と言われています。ただし、あえて低い役員報酬を設定する「マイクロ法人」を設立し、個人事業主との二刀流で稼ぐ手法であれば、所得が300万円程度からでもトータルの社会保険料を大幅に削減できる場合があります。
Q. フリーランスの妻が夫の社会保険の扶養に入るための条件は何ですか?
一般的に年間の見込み収入が130万円未満であることが条件ですが、健康保険組合によって「売上」か「必要経費を引いた所得」かという基準が異なります。事前に組合の規約を確認することが必須です。
Q. 「マイクロ法人」を作って、社会保険料を最小にする方法は合法ですか?
個人事業主と法人(一人社長)を並行して運用し、法人側で社会保険に加入する手法は、現時点では合法的なスキームとして知られています。ただし、法人側での実態ある事業活動が必要であり、税務署や年金事務所からの指摘を受けないよう 、適切な運用が求められます。
Q. 会社員から独立して個人事業主になる際、健康保険はどうなりますか?
会社員時代の健康保険を最長2年間継続する「任意継続」、またはお住まいの自治体の「国民健康保険」に加入するかのいずれかを選択します。自治体や前年の年収によって保険料が大きく異なるため、退職前にそれぞれの金額をシミュレーションして比較しておくことが大切です。
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この記事を書いた人
中西 直美
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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