産婦人科で派遣として働く|直接雇われる場合との差と、合う場面


この記事のポイント
- ✓産婦人科で派遣として働けるのはどの職種か
- ✓労働者派遣法の線から整理しました
- ✓看護師や助産師が入れる例外
先日、ある看護師さんから相談を受けました。「子育てが落ち着いたので、派遣で産婦人科のクリニックに入りたいと派遣会社に登録したら、看護師としての紹介はできないと言われた。受付ならあると言われたけれど、どういうことなのか」と。
結論から言うと、これは派遣会社の意地悪ではありません。労働者派遣法のルールで、病院や診療所で看護師や助産師が医療の仕事をするための派遣は、原則として禁止されているんです。つまり、産婦人科で派遣として働けるかどうかは、「どの職種で入るか」によってはっきり分かれます。
これ、知らない人が本当に多いんです。
この記事では、産婦人科で派遣として働ける範囲を法律の線から整理したうえで、直接雇われる場合との違い、派遣の人が職場の中で任される範囲、派遣が合う場面と合わない場面、契約の前に確かめておくことをまとめます。
産婦人科で派遣として働けるのは、どの職種か
まず一番大事な線から確認しましょう。
労働者派遣法では、派遣してはいけない仕事がいくつか決められています。その一つが「医療関係の業務」です。病院、診療所、助産所、介護老人保健施設などで行う、医師、看護師、准看護師、助産師、保健師などの医療の仕事は、原則として派遣の対象外とされています。
なぜ禁止されているのかというと、医療はチームで行うもので、派遣では派遣先の病院が職員を選べず、チームの一員としての連携がとりにくいと考えられてきたからです。つまり、「誰が来るか分からない人に、患者さんの命に関わる仕事を任せる形は避ける」という考え方です。
これを産婦人科に当てはめると、次のように整理できます。
| 職種 | 産婦人科の病院やクリニックへの派遣 |
|---|---|
| 医師 | 原則できない(医師の少ない地域などの例外あり) |
| 助産師 | 原則できない(例外あり) |
| 看護師、准看護師 | 原則できない(例外あり) |
| 受付、医療事務 | できる |
| 医師事務作業補助者(医療クラーク) | できる |
| 看護補助者 | 医療の資格が要らない補助の範囲ならできる場合がある |
| 清掃、調理、物品の管理など | できる |
受付や医療事務は、医療の資格が必要な仕事ではないので、派遣の禁止の対象に入りません。冒頭の看護師さんが「受付ならある」と言われたのは、このためです。
派遣と、紹介と、直接の応募は別物
ここで混同しやすいのが、派遣会社が同時に行っている「職業紹介」です。職業紹介は、求職者と病院を引き合わせて、病院に直接雇ってもらう仕組みです。雇用主は病院なので、看護師や助産師でも問題なく利用できます。
つまり、看護師や助産師が「派遣会社」経由で産婦人科に入る場合、多くは派遣ではなく紹介の形になっている、ということです。登録した会社が派遣と紹介のどちらで話を進めているのかは、必ず確かめておきましょう。雇用主が変わると、給与の支払い、社会保険、辞めるときの手続きの相手がすべて変わるからです。
看護師や助産師が、派遣で産婦人科に入れる例外
原則は禁止ですが、例外もあります。産婦人科で働く看護師や助産師にとって関係が深いのは、次の2つです。
例外1:産休、育休、介護休業の代わり
病院や診療所の職員が、産前産後休業、育児休業、介護休業を取っている間、その代わりとして看護師や助産師を派遣することは認められています。
これ、産婦人科という職場を考えると、とても身近な例外なんです。産婦人科で働くスタッフは女性が多く、職員自身の妊娠や出産で休業に入る人が出やすい職場だからです。休業に入った人の代わりとして、その期間だけ派遣の看護師や助産師を受け入れる、という形がありえます。
ただし、あくまで「特定の人の休業の代わり」なので、派遣の期間は休業の期間に合わせて決まります。休業していた人が職場に戻れば、派遣の契約は終わります。求人に「産休代替」「育休代替」と書かれていたら、この例外による派遣だと考えてください。
例外2:紹介予定派遣
もう一つが、紹介予定派遣です。派遣として一定期間働いた後、本人と病院の双方が合意すれば、病院に直接雇われることを前提にした派遣です。派遣として働く期間は最長で6か月までと決められています。
つまり、「いきなり正職員として入るのは不安だから、実際に働いてから決めたい」という人と、「採用の前に働きぶりを見たい」という職場の、両方の不安を減らす仕組みです。産婦人科は、分娩を扱うかどうか、夜勤の体制、院長の方針によって職場の空気が大きく違うので、紹介予定派遣で相性を確かめる意味は小さくありません。
※紹介予定派遣でも、派遣期間が終わった後に必ず直接雇ってもらえるとは限りません。どちらかが合意しなければ、そこで終わります。この点は契約の前に理解しておいてください。
産婦人科ではないが、看護師の派遣ができる場所
参考までに、特別養護老人ホームなどの社会福祉施設や、保育園などでは、看護師の派遣が認められています。産婦人科にこだわらず「母子に関わる仕事」を探している人なら、保育園の看護師という選択肢もあります。ただし、産婦人科の病棟とは仕事の中身がまったく違うので、ここでは参考として挙げておくにとどめます。
医師の派遣と、日雇いの派遣
医師については、医師の確保が難しい地域の病院や診療所への派遣が例外として認められています。産婦人科医の不足は地域によって深刻なので、この例外が使われる場面もあります。ただ、産婦人科医の多くは大学の医局からの派遣(これは労働者派遣法の派遣とは別の、人事の仕組みです)や、非常勤の直接雇用で複数の医療機関に勤めています。「派遣」という言葉が同じでも、法律上の派遣とは中身が違うので注意してください。
もう一つ知っておきたいのが、日雇い派遣の禁止です。雇用の期間が30日以内の派遣は、原則として禁止されています。例外は、60歳以上の人、昼間の学生、副業として働く人で本業の年収が一定以上ある人などに限られます。つまり、「今週の土曜日だけ、産婦人科の受付に派遣で入る」という働き方は、多くの人にとって選べない、ということです。
短い期間だけ働きたい場合は、派遣ではなく、クリニックに直接パートやアルバイトとして雇ってもらう形を考えることになります。
受付と医療事務は、派遣で入りやすい
産婦人科の受付や医療事務の求人には、資格や経験を問わないものが少なくありません。実際の求人の例を見てみます。
産婦人科の病院にて医療事務をお願いします。具体的には… 来院された患者様の受付対応 患者様からのお問合せ電話対応 お会計・レジ業務 医療保険請求業務 カルテ処理上記の通りになります。必要なスキルはパソコンの基本操作(ワード・エクセル)のみ!医療事務の経験がある方はもちろん、未経験者の方も歓迎中 出典: 求人ボックス
受付、電話、会計、保険の請求、カルテの処理。どの診療科の医療事務にも共通する仕事が並んでいます。未経験でも応募できる形になっているのは、仕事を覚えるまで職場で教える前提があるからです。
産婦人科の医療事務ならではの難しさ
ただし、求人票に「未経験歓迎」とあっても、産婦人科の医療事務には他の診療科には無い難しさがあります。
・お産そのものは健康保険が使えない自費の扱いになる ・一方で、帝王切開や切迫早産の治療などは保険が使える ・妊婦健診は自治体の受診票で費用の多くが助成される ・出産育児一時金の直接支払制度の書類がある
つまり、一人の患者さんの会計の中に、保険、自費、自治体の助成が混ざるんです。
派遣で入る場合、この知識を職場で教わりながら覚えることになります。派遣の期間が短い契約だと、覚えた頃に契約が終わる、ということもありえます。医療事務の知識を事前に身につけておきたい人は、資格の試験でどんな内容が問われるかを確かめておくとよいでしょう。医療事務の資格の試験の範囲や難易度は医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)で紹介しています。
受付の人が気をつけたい、産婦人科の個人情報
産婦人科の受付は、患者さんの個人情報の中でも特にデリケートな情報に触れます。妊娠していること自体を、家族や職場にまだ伝えていない人もいます。不妊治療や中絶の相談で来院する人もいます。
派遣の人も、派遣先の職場で知った情報を外に漏らしてはいけない義務を負います。労働者派遣法でも、派遣で働く人が業務で知った秘密を正当な理由なく漏らすことは禁止されています。電話で「家族です。妻は今日受診していますか」と聞かれても答えない、待合室で名前を大きな声で呼ばない、といった職場ごとの決まりは、初日のうちに必ず確認してください。
派遣で産婦人科の受付に入った人の1日
派遣で働く場合、1日の流れは直接雇われた職員とほとんど変わりません。ただ、どこで働くかによって、同じ受付でも1日の中身は大きく違います。分娩を扱うクリニックと、病院の産婦人科を例に見てみます。
分娩を扱うクリニックの受付
朝は開院の30分ほど前に出勤し、予約の一覧を確認して、カルテや受診票を準備します。開院と同時に電話が鳴り始めます。「予約の時間を変えたい」「出血があるけれど受診したほうがいいか」。症状の相談は受付では判断せず、すぐに助産師や看護師に回す、というのが多くのクリニックの決まりです。
午前は妊婦健診の受付と会計が続きます。妊婦さんが自治体の受診票を出し忘れていないか、母子健康手帳を持ってきているかを確かめます。昼前後には、退院するお母さんの会計があり、分娩の費用と出産育児一時金の差額を説明します。この説明は金額が大きく、ご家族が同席することも多いので、慣れるまでは先輩の職員が一緒に対応するのが一般的です。
午後は、夕方の外来の受付、検査の結果の郵送や電話の対応、翌日の予約の確認です。夕方にお産が始まって入院の手続きが入ると、閉院の時間が過ぎても書類の準備が続くことがあります。派遣の契約で残業がどう扱われるかを、事前に確かめておきたいのはこのためです。
病院の産婦人科の受付
病院では、受付の仕事が医事課の中で分業されています。産婦人科の外来の窓口に配属されると、来院した人の受付、診察の順番の案内、次の予約の登録が中心になり、会計や保険の請求は別の担当者が行うことが多くなります。
仕事の範囲が限られている分、手順を覚えやすく、派遣で入っても早い時期から一人で窓口に立てることが多いのが特徴です。一方で、病院は電子カルテや会計のシステムが大きく、最初の数日はシステムの操作を覚えることに時間を使います。「クリニックより仕事の範囲は狭いけれど、覚える画面は多い」というのが、病院で働く派遣の人からよく聞く感想です。
不妊治療のクリニックの受付
産婦人科の派遣の求人には、不妊治療に特化したクリニックの受付や医療事務も含まれます。ここは、分娩を扱うクリニックとはまた違う1日になります。
不妊治療では、採卵や移植の日程が、患者さん一人ひとりの体の周期に合わせて決まります。そのため、朝早い時間から診療が始まる日や、日曜日や祝日に診療がある日が組まれることがあります。派遣の契約で決めた勤務の日と、クリニックの診療の日程がずれやすいので、「休日の出勤の可能性」は契約の前に必ず確かめてください。
また、2022年4月から不妊治療の一部に健康保険が使えるようになり、保険の治療と、保険の対象外の自費の治療を組み合わせる場面が増えました。会計の説明が複雑になりやすく、患者さんから費用についての質問を受けることも多い職場です。長い治療の中で気持ちが揺れている患者さんも多いので、受付の言葉づかい一つにも気を配ることが求められます。
外来だけの婦人科クリニックの受付
分娩も不妊治療も扱わない婦人科のクリニックは、診療時間がそのまま勤務の枠になりやすく、派遣の契約で決めた時間どおりに働きやすい職場です。子宮頸がん検診、月経の悩み、更年期の症状、ピルの処方などで来院する人が中心で、会計も保険診療が中心になります。
「産婦人科の医療事務をまず経験してみたい」「残業の少ない職場で働きたい」という人には、最初の派遣先として合いやすい形です。
ここまで見てきた4つの職場のうち、どこが合うかは、「幅広く任されて覚えたい」か、「範囲を決めて確実にこなしたい」か、「時間どおりに働きたい」かで変わります。
同じ「産婦人科の受付」という求人でも、分娩を扱うかどうか、不妊治療をしているかどうかで、残業の出方も、休日の出勤の有無も、会計の難しさも変わります。求人票の職場の名前だけで判断せず、診療の内容をホームページで確かめてから応募するのが確実です。自分がどちらの働き方をしたいのかを派遣会社の担当者に伝えておくと、紹介される職場の見当違いが減ります。
直接雇われる場合との差
ここからは、派遣で働く場合と、病院やクリニックに直接雇われる場合(正職員、パート、契約職員)の違いを整理します。
| 項目 | 派遣 | 直接雇用 |
|---|---|---|
| 雇用主 | 派遣会社 | 病院、クリニック |
| 仕事の指示を出す人 | 派遣先の職場 | 雇われている職場 |
| 給与を払う人 | 派遣会社 | 病院、クリニック |
| 働ける期間 | 同じ部署では原則最長3年 | 期間の定めがない雇用もある |
| 困ったときの相談先 | 派遣会社の担当者と派遣先の責任者 | 職場の上司、人事 |
| 職場の研修や行事 | 業務に必要な範囲で参加 | 職員として参加 |
雇用主と、指示を出す人が違う
派遣の一番の特徴は、「雇っている会社」と「仕事の指示を出す職場」が別であることです。つまり、給与や社会保険、有給休暇は派遣会社との関係で決まり、毎日の仕事の指示は産婦人科の職場から受ける、ということです。
このため、職場で困ったことがあったとき、派遣先の上司に直接言いにくいことは、派遣会社の担当者に相談できます。これは派遣ならではの安心材料です。反対に、職場の人から「派遣会社を通してもらわないと決められない」と言われる場面もあります。
期間の上限
派遣には、同じ職場の同じ部署で働ける期間は、原則として最長3年という上限があります。つまり、産婦人科のクリニックの受付に派遣で入り、3年が近づいたら、直接雇われるか、別の部署や職場に移るか、派遣会社と無期雇用の契約を結ぶかといった選択を迫られます。
派遣会社には、3年に達する見込みの人に対して、派遣先に直接雇用を依頼するなどの雇用安定の措置が義務づけられています。いつが上限の日になるのかは、就業条件の書面で確認できます。
給与と、同一労働同一賃金
派遣で働く人の給与は、2020年4月から、派遣先で同じ仕事をする職員との均等、均衡を図る方式か、派遣会社が労働者の代表と結ぶ労使協定の方式のどちらかで決めることになりました。つまり、「派遣だから」という理由だけで、不合理に低い待遇にしてはいけないということです。
時給で比べると、派遣のほうが同じ職場のパートより高く見えることがあります。ただし、派遣では交通費や賞与、退職金の扱いが時給の中に含まれていることもあるので、時給の数字だけでは比べられません。年間で受け取る金額と、休みの取りやすさを合わせて比べましょう。
職場の設備を使えるか
派遣で働く人も、派遣先の職員が使っている食堂、休憩室、更衣室を利用できるよう、派遣先には配慮が求められています。産婦人科の病院で院内保育所がある場合、派遣の人が使えるかどうかは職場によって違います。子育て中の人は、ここを事前に聞いておくことをおすすめします。
産婦人科の職場の中で、派遣の人が任される範囲
直接雇われた職員と派遣の人とで、職場の中で任される仕事は同じなのでしょうか。これは、職場の形によって違いが出ます。
病院の場合
病院の産婦人科では、受付や会計を医事課がまとめて担当し、医事課の中に派遣の人がいることが珍しくありません。業務の手順が文書で決まっていることが多いので、派遣の人でも仕事の範囲がはっきりしています。
一方で、保険の請求の最終確認や、患者さんからの苦情への対応、分娩の費用の説明など、判断や責任を伴う仕事は、直接雇われた職員が担うことが多くなります。つまり、派遣の人は「決まった手順の仕事」を中心に任される傾向があります。
クリニックの場合
クリニックは職員の数が少ないので、派遣の人でも受付、会計、電話、予約の管理、書類の準備と、幅広く任されることが多くなります。院長や事務長との距離が近く、仕事のやり方もその場で教わる形です。
私が以前相談を受けたケースで、派遣で産婦人科のクリニックに入った人が、「契約書には受付と会計と書いてあったのに、診察室の片付けや、新生児の沐浴の準備まで頼まれるようになった」と悩んでいたことがあります。
これは、派遣の契約で決めた業務の範囲を超える指示です。つまり、派遣先の職場が、契約に無い仕事を派遣の人に頼むことは、本来はできません。この人には、まず派遣会社の担当者に状況を伝え、派遣会社から派遣先に確認してもらうようにお伝えしました。その結果、契約の内容が見直され、業務の範囲がはっきりしました。
※業務の範囲を超えた指示が続き、派遣会社に相談しても改善しないときは、都道府県の労働局の相談窓口に相談できます。
看護補助者の場合
看護補助者として派遣で入る場合は、特に注意が必要です。シーツの交換や物品の補充、配膳などは資格の要らない補助の仕事ですが、赤ちゃんの世話や、お母さんの体に触れる介助の中には、看護師の指示のもとで行う医療に近い仕事も含まれます。どこまでが派遣で任される範囲なのかは、職場と派遣会社で事前に決めておく必要があります。
派遣が合う場面、合わない場面
ここまでの内容を踏まえて、産婦人科で派遣として働くことが合う場面と、直接雇われたほうが合う場面を整理します。
派遣が合う場面
・医療事務や受付の経験を積みたいが、最初から一つの職場に決めきれない ・産婦人科の職場の雰囲気を、働きながら確かめたい(紹介予定派遣) ・子育てや介護の都合で、期間や曜日を区切って働きたい ・職場との間に、派遣会社という相談先を持っておきたい ・看護師や助産師で、休業の代わりとして期間を決めて働きたい(産休代替)
直接雇われたほうが合う場面
・一つの産婦人科に長く勤めて、役職や専門性を積み上げたい ・賞与や退職金、院内保育所などの福利厚生を重視したい ・看護師や助産師として、分娩を含めた産婦人科の看護に本格的に関わりたい ・3年という期間の上限を気にせず働きたい
看護師や助産師にとっては、そもそも派遣の道が限られているので、「直接雇われる形でどう入るか」を考えるのが現実的です。看護師の年収の傾向や、正職員とパートでの違いは看護師の年収・単価相場で確かめられます。
働き方の選び方そのものに迷っている場合は、キャリアの相談の専門家に話を聞いてもらうのも一つの方法です。どんな相談を受けてもらえるのかは職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介しています。
派遣会社への登録から、働き始めるまでの流れ
産婦人科で派遣として働くまでの流れも、押さえておきましょう。ここにも、知らないと戸惑う法律のルールがあります。
登録と面談
まず派遣会社に登録し、担当者と面談します。これまでの職歴、医療事務の経験の有無、希望する勤務の曜日と時間、通勤の範囲などを伝えます。「産婦人科で働きたい」という希望があるなら、この時点ではっきり伝えておきましょう。産婦人科は、お産の費用の説明や、デリケートな相談の電話があるので、それを理解したうえで希望しているかどうかを、担当者も知りたいはずです。
派遣先による面接は、原則として禁止
ここは、知らない人が本当に多いポイントです。
通常の派遣では、派遣先の職場が、派遣で働く人を事前に面接して選ぶことは、原則として禁止されています。履歴書を派遣先に送らせることも同じです。つまり、派遣先は「どんな人が来るか」を選べず、派遣会社が仕事に合う人を選んで送り出す仕組みになっているんです。
ただし、働く人が自分の意思で職場を見学することや、派遣先の担当者と顔を合わせて仕事の説明を受けることは、認められています。「職場見学」「顔合わせ」と呼ばれるものです。見学の場で、業務の内容や職場の雰囲気を自分の目で確かめられるので、産婦人科の場合は特に、可能なら行っておくことをおすすめします。
一方、紹介予定派遣は、直接雇われることが前提なので、派遣先による面接や書類の選考が認められています。
就業条件の書面と、初日
派遣先が決まったら、派遣会社から就業条件の書面を受け取ります。そして初日には、派遣先の職場で業務の説明を受けます。産婦人科の場合、初日に確かめておきたいのは、個人情報の扱いの決まり、症状の相談の電話を誰に回すか、分娩で入院する人が来たときの受付の流れ、の3つです。この3つを初日に聞いておくだけで、最初の1週間の不安がぐっと小さくなります。
契約の前に確かめておくこと
最後に、産婦人科で派遣として働くと決めたとき、契約の前に確かめておくことをまとめます。派遣会社からは、働き始める前に就業条件を書面で示すことが義務づけられています。その書面を受け取ったら、次の点を確かめてください。
業務の内容
「受付業務」「医療事務」とだけ書かれていないか確かめましょう。会計、電話、保険の請求、書類の作成、診察室の準備など、具体的に何を含むのかを聞いておくと、後から「契約に無い仕事を頼まれた」というトラブルを防げます。
就業の日と時間
産婦人科のクリニックは、夕方の診療や土曜日の診療があるところが多くあります。何曜日の何時から何時までか、残業がある場合の目安、土曜日や祝日の扱いを確かめてください。分娩を扱う職場では、夕方にお産があると事務の仕事が遅くまで続くこともあります。
派遣の種類と期間
通常の派遣か、紹介予定派遣か、産休代替かを確かめます。紹介予定派遣なら、直接雇用に切り替わった後の雇用形態と給与の見込み、産休代替なら、休業している人が戻る予定の時期を聞いておきましょう。
同じ部署で働ける期限の日
派遣先の部署で働ける期限の日(抵触日)がいつかも、就業条件の書面で確認できます。
トラブルのときの相談先
派遣会社の担当者の連絡先と、派遣先で苦情を受ける責任者が誰なのかも、書面に書かれています。困ったとき、誰に連絡するかを最初に知っておくことが、自分を守る一番の近道です。
在宅ワークやフリーランスの市場を20年見てきた運営者の立場から見ると、医療の現場で事務の経験を積んだ人は、その後、医療機関の書類の作成の補助や、予約の受付、問い合わせの対応を在宅で請け負う形で働き方を広げていく傾向があります。間に入る会社を通さず、依頼する人と直接やり取りする形で受ければ、仲介の手数料が乗らない分、同じ金額の依頼でも受け取る側の手取りが厚くなり、依頼する側も同じ予算で多くを頼めます。派遣は、その経験を積むための入口の一つとして考えることもできます。
派遣という働き方には、ルールを知っていれば守られる部分がたくさんあります。法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. 看護師が派遣で産婦人科のクリニックに入ることはできますか?
原則としてできません。労働者派遣法で、病院や診療所での看護師や助産師などの医療の仕事は派遣が禁止されています。例外として、職員の産前産後休業、育児休業、介護休業の代わりとしての派遣と、一定期間の後に直接雇われることを前提にした紹介予定派遣は認められています。
Q. 産婦人科の受付や医療事務は、派遣で働けますか?
働けます。受付や医療事務は医療の資格が必要な仕事ではないため、派遣の禁止の対象になりません。未経験でも応募できる求人もありますが、産婦人科ではお産の自費の扱い、保険が使える治療、自治体の妊婦健診の助成、出産育児一時金の書類が混ざるため、覚えることは他の診療科より多めです。
Q. 紹介予定派遣で産婦人科に入った場合、必ず直接雇ってもらえますか?
必ずではありません。紹介予定派遣は、派遣の期間(最長6か月)の後に、本人と職場の双方が合意した場合に直接雇われる仕組みです。どちらかが合意しなければ、そこで契約は終わります。直接雇われた後の雇用形態や給与の見込みは、派遣の契約の前に聞いておきましょう。
Q. 派遣先で契約に無い仕事を頼まれたらどうすればいいですか?
まず派遣会社の担当者に状況を伝え、派遣会社から派遣先に確認してもらいましょう。派遣で任される仕事は、就業条件の書面に書かれた業務の範囲に限られます。相談しても改善しない場合は、都道府県の労働局の相談窓口に相談できます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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