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箱庭療法の資格|学び方と仕事

@SOHO編集部
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箱庭療法の資格|学び方と仕事

この記事のポイント

  • ✓箱庭療法の資格を調べる人に向けて
  • ✓箱庭療法そのものに国家資格は無いこと
  • ✓心理職として使うなら公認心理師や臨床心理士が土台になること

箱庭療法の資格を調べると、数日の講座で取れる認定から、大学院を修了してようやく受けられる試験まで、まったく性質の違うものが並んで出てきます。結論から書くと、箱庭療法という技法そのものを対象にした国家資格はありません。心の悩みを抱える人に箱庭療法を使う専門職として働くなら、公認心理師や臨床心理士といった心理職の資格が土台になり、箱庭療法はその上で学会の研修などを通じて磨いていく技法です。この記事では、箱庭療法とはどのような方法か、資格の種類と違い、学び方の段階、民間講座を選ぶときの注意、学んだあとに生かせる仕事の場面までを、学会や資格の認定団体の公式の案内をもとに説明します。

箱庭療法とはどんな方法か

箱庭療法とは、砂の入った木の箱の中に、人や動物、家、木、乗り物などの小さな玩具(ミニチュア)を自由に並べて、ひとつの世界を作ってもらう心理療法です。言葉で気持ちを説明するのが難しい子どもや、悩みをうまく言葉にできない大人でも、手を動かして作品を作る中で、自分の内面と向き合うことができるとされています。

作る人は、決まった課題に沿って作品を作るのではなく、心の向くままに玩具を選び、置き方を決めていきます。セラピストは、その過程を見守り、作品について感じたことを一緒に味わいます。作品を急いで解釈して答えを示すのではなく、作る人が安心して表現できる場を保つことが、セラピストの大切な役割です。

日本に箱庭療法を導入したのは、心理学者の河合隼雄です。一般社団法人日本箱庭療法学会の案内では、次のように紹介されています。

箱庭療法は、1965年に河合隼雄によりわが国に導入された。1987年7月、日本箱庭療法学会が設立され、第一回大会が京都に開催された。 出典: sandplay.jp

同じ学会の案内では、箱庭療法は心理療法の一つとして、心理相談、法務臨床、精神科や小児科などの医療、学校教育など、さまざまな領域の心理臨床で使われていると説明されています。また、2000年に厚生省(現在の厚生労働省)が児童虐待への対策として箱庭療法の導入を後押ししたことを受け、学会は会員以外にも研修の場を設けるようになったと書かれています。児童相談所や児童養護施設で働く心理職にとって、箱庭療法はなじみの深い技法の一つです。

箱庭療法を学びたいと考える人は、大きく2つに分かれます。1つは、心理職として働いている、または目指していて、技法の一つとして本格的に身に付けたい人です。もう1つは、保育や介護、教育などの仕事の中で、言葉に頼らない関わり方を取り入れたい人や、自分自身の心を見つめる方法として興味を持った人です。どちらに当たるかで、選ぶべき資格や学び方は大きく変わります。

箱庭療法そのものに国家資格は無い

最初に押さえておきたいのは、「箱庭療法士」という国家資格は無いということです。国が定めた試験に合格しなければ箱庭療法を行ってはいけない、という決まりもありません。

一方で、心の悩みを抱える人を支援する専門職としては、国家資格の公認心理師があります。厚生労働省の案内では、公認心理師を次のように定義しています。

  • 公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いる人
  • 保健医療、福祉、教育その他の分野で、心理学の専門的な知識と技術を使う人
  • 支援を必要とする人の心理状態を観察して分析し、相談に乗り、助言や援助を行う人
  • その人の家族などの関係者への相談や援助、心の健康についての教育や情報の提供を行う人

公認心理師は、名称独占の資格です。名称独占とは、資格を持たない人がその名前を名乗ってはいけないという決まりのことで、仕事そのものを資格のある人だけに限るものではありません。ただし、病院や学校、福祉の施設で心理職として雇われるときには、公認心理師や臨床心理士の資格が採用の条件になっていることが多く、実際に箱庭療法を仕事で使う場面の多くは、これらの資格を持つ人が担っています。

臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格です。国家資格ではありませんが、公認心理師ができる前から心理職の代表的な資格として位置づけられてきました。協会の案内では、臨床心理士の中心的な業務である臨床心理面接について、次のように説明しています。

来談する人の特徴に応じて、さまざまな臨床心理学的技法(精神分析、夢分析、遊戯療法、クライエント中心療法、集団心理療法、行動療法、箱庭療法、臨床動作法、家族療法、芸術療法、認知療法、ゲシュタルト療法、イメージ療法など)を用いて、クライエントの心の支援に資する臨床心理士のもっとも中心的な専門行為です。 出典: fjcbcp.or.jp

箱庭療法は、臨床心理士が相談に来た人に合わせて選ぶ技法の一つとして明記されています。つまり、箱庭療法は単独の資格で完結するものではなく、心理職としての土台の上で使われる技法だということです。

心理職の土台になる2つの資格

公認心理師

公認心理師になるには、国家試験に合格して登録を受ける必要があります。厚生労働省の案内では、受験資格を得る道は7つあるとされています。代表的なのは、大学で心理学の決められた科目を学んで卒業し、さらに大学院で決められた科目を修めて修了する道と、大学で決められた科目を学んだあと、認定を受けた施設で決められた期間、実務の経験を積む道です。認定を受けた施設は、厚生労働省のページで公開されていて、少年鑑別所や家庭裁判所、病院などが並んでいます。

試験を実施するのは、指定試験機関である一般財団法人公認心理師試験研修センターです。センターのサイトでは、2026年9月に第10回公認心理師試験の実施が官報で公告されたことが案内されています。試験の日程、受験料、受験の申し込みの方法は、センターのサイトで確かめてください。

社会人になってから公認心理師を目指す場合も、大学と大学院で決められた科目を学ぶことが基本になります。すでに大学を卒業している人は、心理学の科目を学べる大学に編入する道もありますが、必要な科目がそろうかどうかは大学によって違います。学び直しの計画を立てる前に、志望する大学に問い合わせておくと確実です。

臨床心理士

臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格する必要があります。協会の案内では、試験を受けるためには、臨床心理士養成に関する指定大学院か専門職大学院を修了することが基本の受験資格になると説明されています。このほか、海外で同等以上の教育を受けて国内で2年以上の心理臨床の経験がある人や、医師の免許を持ち2年以上の心理臨床の経験がある人なども受験資格を得られます。

臨床心理士の資格は、取得後に更新が必要です。研修会への参加などでポイントを積み、決められた期間ごとに資格を更新する仕組みになっています。日本箱庭療法学会の全国研修会は、この更新のポイントの対象になっていて、2026年度の第1回全国研修会では、全体会と分科会の両方に参加した人に2ポイント、分科会で事例を発表した人に4ポイントが付くと案内されています。臨床心理士にとって、箱庭療法の研修は、技法を磨く場であると同時に、資格を保つための学びの場でもあります。

日本箱庭療法学会で学ぶ

箱庭療法を専門的に学ぶ中心的な場が、一般社団法人日本箱庭療法学会です。学会の案内では、箱庭療法学に関する国内で唯一の学術団体として1987年に設立され、日本学術会議の協力学術研究団体になっていると紹介されています。主な活動は次のとおりです。

  • 年に1回の大会(研究発表と会員総会)
  • 学会誌『箱庭療法学研究』の発行(年3回)
  • 全国研修会(年2回)と、全国6地区で年1回開かれる地区研修会
  • オンラインの研修会

研修会は会員でなくても参加できるものがありますが、だれでも参加できるわけではありません。2026年度の第1回全国研修会の参加資格は、心理臨床の事例について守秘義務を負える人で、学会の会員、箱庭療法を取り入れている、または取り入れようとしている児童相談所や児童養護施設などの心理職、臨床心理学やその関連の分野で心理臨床の実践の仕事をしている人、心理臨床を専攻する大学院生のいずれかに当たる人とされていました。参加費は、学会員が4,000円、非会員が7,000円、会員でない大学院生が5,000円です。参加には秘密を守る誓約書の提出が必要です。

地区研修会は、箱庭を実際に作る実習を中心にした研修で、北海道・東北、関東・甲信越、中部・北陸、近畿、中国・四国、九州・沖縄の6地区で開かれています。自分で箱庭を作る体験は、箱庭療法を学ぶうえで欠かせないものとされています。作る側の気持ちを知らずに、相手の作品に寄り添うことは難しいからです。

学会の正会員になるには、定款で決められた条件を満たし、理事会の承認を受ける必要があります。学会の入会案内に掲載されている定款の抜粋では、正会員は4年制大学を卒業した人で、箱庭療法に関心を持ち、この技法の進歩を目指し、事例を発表できる人などとされ、入会には正会員の推薦が必要です。入会金は10,000円、年度会費は9,000円と案内されています。正会員になると、学会誌と大会のプログラムなどの案内が届きます。

国際箱庭療法学会の認定

箱庭療法には、国際的な認定の仕組みもあります。国際箱庭療法学会(ISST)は、1985年に、スイスのドラ・カルフの呼びかけで、河合隼雄を含む5か国の箱庭療法家が集まって始まった団体です。日本箱庭療法学会のサイトの案内によると、現在は18か国に正式な会員組織が置かれ、日本では日本国際箱庭療法士協会(JISST)が加盟団体になっています。

ISSTの正会員になるための要件は、日本国際箱庭療法士協会の案内に、次のように紹介されています。

  • 理論のトレーニングを100時間受けていること
  • 箱庭によるパーソナルプロセス(自分自身が箱庭を作り、分析を受ける体験)を受けていること
  • ティーチングメンバーによる箱庭のケースのスーパーヴィジョン(事例の指導)を、個人と集団を合わせて80時間以上受けていること
  • シンボルペーパー2篇とケース研究1篇を提出すること

ティーチングメンバーとは、ISSTで後進を指導する資格を持つ会員のことです。協会の案内では、ティーチングメンバーが講師を務める研修会に参加すると、その時間が理論のトレーニング100時間に数えられると説明されています。国内の正会員は数名と少なく、ISSTの認定は、心理職として長く箱庭療法に取り組んできた人が目指す、最も専門的な段階だといえます。

民間の講座と認定資格の選び方

インターネットで箱庭療法の資格を探すと、民間の団体や会社が開く講座と、その修了者に出す認定資格が数多く見つかります。数時間の体験講座から、数日間の集中講座まで形はさまざまで、修了すると独自の名前の資格を名乗れるものもあります。

民間の講座は、心理職ではない人が箱庭療法に触れる入り口として役立つ面があります。保育や介護、教育の仕事で、子どもや利用者との関わり方を広げたい人、自分自身の気持ちを整理する方法を知りたい人にとっては、短い時間で体験できる講座は手軽な選択肢です。

ただし、申し込む前に確かめておきたい点がいくつかあります。

  1. 資格を出している団体はどこか。学会のような学術団体なのか、講座を運営する会社なのかを確かめます。団体の名前で検索し、活動の実績や講師の経歴を見ます
  2. 講座の中身と時間。理論の講義だけなのか、自分で箱庭を作る体験や、事例を検討する時間があるのかを確かめます
  3. 費用の総額。受講料のほかに、認定料、年会費、更新料、教材費、箱庭の道具の購入費がかかるかを確かめます
  4. 修了後にできること。修了した人が、どのような場面でどこまで箱庭を使ってよいとされているのかを確かめます
  5. 講師の資格。講師が公認心理師や臨床心理士の資格を持ち、実際の臨床で箱庭療法を使ってきた人かを確かめます

注意したいのは、民間の認定資格を持っていても、それだけで心の病気の治療や診断ができるわけではないということです。箱庭は、作る人の深い気持ちに触れる方法です。心の不調が強い人や、つらい体験を抱えた人に対して、十分な訓練を受けていない人が箱庭を使うと、かえって負担をかけるおそれがあります。気分の落ち込みが長く続く人や、医療の支えが必要と思われる人には、医療機関や公認心理師、臨床心理士などの専門家につなぐことが大切です。

体験の講座に参加したら、講座のあとで講師に質問してみるのも、団体の姿勢を知る方法です。たとえば「修了した人は、どのような場面で箱庭を使っていますか」「心の不調が強い人に出会ったときは、どうするよう教えていますか」と聞くと、専門家へつなぐ線引きをどう考えている団体なのかが見えてきます。答えがあいまいな場合や、長い講座の申し込みを急がせる場合は、その場で決めずに持ち帰って考えると安心です。

また、「短期間で取れて、すぐに収入につながる」といった広告には慎重になる必要があります。箱庭療法を仕事として使う場面の多くは、病院、学校、福祉の施設などで心理職として雇われる形で、民間の認定資格だけで依頼を受けて生計を立てるのは簡単ではありません。講座を選ぶときは、修了後の仕事を約束する言葉より、学べる中身と費用を基準に判断してください。

箱庭療法の場面で大切にされていること

箱庭療法の進め方は、セラピストや相談の目的によって違いますが、学会の研修や心理臨床の現場で共通して大切にされている考え方があります。初めて学ぶ人が知っておきたいのは、次の4つです。

1つ目は、作る人の自由を守ることです。どの玩具を選んでも、どう並べても構いません。セラピストが「もっとこうしたら」と口を出すと、作る人は評価されているように感じ、自由に表現できなくなります。作品の出来の良し悪しを問う場ではないことを、作る人に伝わる態度で示すことが求められます。

2つ目は、急いで意味を決めつけないことです。作品に何が置かれたかを手がかりに、すぐに「この人はこういう悩みを持っている」と結論を出すのは危険です。日本箱庭療法学会の2026年度第1回全国研修会の案内でも、治療の関係の中で生まれるイメージを急いで解釈したり、意図して方向づけたりしない態度が、研修のテーマとして取り上げられていました。作品は、回を重ねる中での変化として見ていくものです。

3つ目は、守られた場を用意することです。決まった時間、決まった部屋、決まったセラピストという枠組みがあることで、作る人は安心して自分の内面に触れられます。作品の写真を記録として残す場合も、その扱いについて作る人や保護者の同意を得ることが前提になります。

4つ目は、セラピスト自身が学び続けることです。他人の作品に寄り添うには、自分が作る側として箱庭に向き合った体験と、経験のある指導者から事例について助言を受ける機会が欠かせません。国際箱庭療法学会の要件に、自分自身のパーソナルプロセスや事例の指導の時間が含まれているのは、このためです。

守秘と倫理の決まり

箱庭療法を学ぶ場では、実際の相談の事例を扱うことが多く、守秘の決まりがとても厳しく求められます。日本箱庭療法学会の全国研修会では、参加の申し込みのときに秘密を守る誓約書の提出が必要で、誓約の内容に違反した場合は、大会や研修会に参加する資格を止めるなどの措置をとると案内されています。

守秘の決まりは、研修の場だけの話ではありません。自分が担当した相談の内容を、家族や友人に話すこと、インターネットに書き込むこと、作品の写真を許可なく人に見せることは、どれも相談に来た人の信頼を裏切る行為です。学びの成果を発表したいときは、指導者や所属先の決まりに沿って、本人が特定されないように内容を変え、必要な同意を得たうえで行います。

心理職の資格には、それぞれ倫理の決まりがあります。臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会の倫理の決まりに、公認心理師は公認心理師法の秘密を守る義務に従います。民間の講座で学ぶ人も、こうした考え方を知っておくと、箱庭を使う場面で迷ったときの判断の物差しになります。

心理職を目指す人が大学院を選ぶときの目安

心理職として箱庭療法を学びたい人にとって、大学院の選び方はその後の学び方を大きく左右します。臨床心理士を目指す人は、日本臨床心理士資格認定協会が公開している指定大学院と専門職大学院の一覧から候補を探します。公認心理師を目指す人は、大学院で公認心理師に必要な科目を学べるかを確かめます。両方の資格を目指せる大学院も多くあります。

候補の大学院を比べるときは、次の点を見ておくと、箱庭療法を学ぶ環境が整っているかを判断しやすくなります。

  • 学内の相談室(心理臨床センターなど)があり、大学院生が指導を受けながら実際の相談を担当できるか
  • 相談室に箱庭の道具がそろっていて、実習で使えるか
  • 箱庭療法やイメージを使う心理療法を専門にする教員がいるか
  • 学外の実習先に、児童相談所や病院の小児科など、箱庭療法を使う現場が含まれているか
  • 修了生が、どのような職場で働いているか

大学院の説明会や公開の講座に参加すると、相談室の様子や、教員の研究の分野を直接知ることができます。日本箱庭療法学会の学会誌は、J-STAGE(科学技術振興機構が運営する論文の公開サイト)で読めるため、関心のある教員の論文を事前に読んでおくのも、大学院を選ぶ手がかりになります。

目的別に見る学び方の道筋

ここまでの内容を、箱庭療法を学ぶ目的ごとに整理します。

目的 土台になる資格 箱庭療法の学び方
心理職として箱庭療法を使いたい 公認心理師、臨床心理士 大学院の実習、学会の全国研修会と地区研修会、事例の指導
国際的な認定を目指したい 心理職の資格と長い臨床経験 ISSTの要件に沿った理論の研修、パーソナルプロセス、事例の指導
保育や介護、教育の仕事に取り入れたい 保育士、介護福祉士、教員免許など本来の仕事の資格 体験の講座で考え方を知り、職場の心理職と相談しながら活用を考える
自分の心を見つめたい 不要 体験の講座やワークショップで、作る側として箱庭に触れる

心理職を目指す人にとって、最も時間がかかるのは土台の資格を取るまでの道のりです。大学と大学院で心理学を学び、実習を経て試験に合格するまでには、一般に6年以上かかります。箱庭療法は、その途中の大学院の実習や、資格を取ったあとの研修会で、段階を踏んで身に付けていくものです。

保育や介護、教育の仕事をしている人は、箱庭療法を「治療」として使うのではなく、子どもや利用者が安心して遊び、表現できる場を作る考え方として取り入れるのが現実的です。施設に心理職がいる場合は、その人と相談しながら、自分の役割の範囲で何ができるかを考えると、無理のない関わり方になります。

子どもの支援で箱庭が使われる理由

箱庭療法が子どもの支援の現場で広く使われているのには、いくつかの理由があります。

まず、子どもは自分の気持ちを言葉で説明することがまだ得意ではありません。「学校でつらいことがあった」と言えなくても、遊びの中では、その気持ちが自然に表れることがあります。箱庭は、玩具を並べるという遊びに近い形で取り組めるため、子どもが緊張せずに向き合いやすい方法です。

次に、作品が形として残ることです。言葉のやり取りは時間とともに消えていきますが、箱庭の作品は、その日の気持ちを形として目の前に示します。回を重ねて作品が変わっていく様子は、子どもの心の動きを、子ども自身とセラピストの双方が感じ取る手がかりになります。

さらに、言葉の壁が低いことも特徴です。日本語がまだ十分に話せない子どもや、発達の特性によって言葉でのやり取りが難しい子どもにも、取り組みやすい面があります。

ただし、子どもに箱庭を使うときは、とくに慎重さが求められます。子どもは大人よりも、作った作品に気持ちが強く表れることがあり、その気持ちを受け止める大人の側の準備が欠かせません。保護者への説明や同意、学校や施設の職員との連携も必要です。児童相談所や児童養護施設の心理職が、学会の研修で事例を検討しながら技法を磨いているのは、こうした難しさがあるからです。保育や教育の仕事で子どもと関わる人は、箱庭を治療として使うのではなく、気になる様子に気づいたときに専門家へつなぐ役割を意識しておくことが大切です。

本と論文で学ぶ方法

講座や研修に参加する前に、本や論文で基礎を学んでおくと、研修の内容が理解しやすくなります。

入門として読まれているのは、箱庭療法を日本に導入した河合隼雄の著作や、箱庭療法の入門書です。図書館で「箱庭療法」と検索すると、入門書から専門書まで多くの本が見つかります。最初は事例の紹介が多い入門書から読み、箱庭療法がどのような場面で、どのように使われているのかをつかむと、全体像が見えやすくなります。

より専門的に学びたい人は、日本箱庭療法学会の学会誌『箱庭療法学研究』の論文を読む方法があります。学会の案内によると、学会誌はJ-STAGEで公開されています。論文には、実際の事例をもとにした研究が多く掲載されていて、心理職がどのように考え、どのように作品と向き合っているのかを知ることができます。

本や論文を読むときに気をつけたいのは、読んだ知識だけで箱庭を人に使わないことです。箱庭療法は、知識より、守られた場の中での体験と、指導者のもとでの経験によって身に付く技法です。読むことは、学びの準備として位置づけておくとよいでしょう。

学んだ知識を生かせる仕事の場面

箱庭療法を学んだ人が、その知識を生かせる主な場面は次のとおりです。

  • 病院の精神科や小児科、心療内科での心理面接
  • 児童相談所、児童養護施設、発達支援の施設での子どもへの支援
  • 学校のスクールカウンセラーとしての相談
  • 少年鑑別所や家庭裁判所など、法務の分野の心理職
  • 大学の相談室や、民間のカウンセリングルームでの相談

どの場面でも、多くの場合は公認心理師や臨床心理士の資格が求められます。心理職の求人は、病院や自治体、学校法人などから出され、常勤のほか、週に数日の非常勤で複数の職場を掛け持ちする働き方も見られます。

心理職の仕事は、面接そのものだけではありません。面接の記録、関係する職員との会議の資料、研修会での事例の発表など、文章を書く場面が多くあります。とくに事例の報告は、相手のプライバシーを守りながら、経過と考察を分かりやすく伝える必要があり、文章の力が問われます。文章の形式や表現の基礎を固めたい人には、ビジネス文書検定が参考になります。報告書や依頼文など、仕事で使う文書の書き方を体系的に学べます。

心理学の知識は、研究や調査の仕事にもつながります。大学や研究機関で心理学の研究に携わる人、企業で利用者の調査を担う人もいます。研究や調査の仕事の報酬の水準については、研究者の年収・単価相場で紹介しています。

費用と時間の考え方

箱庭療法を学ぶための費用と時間は、目的によって大きく違います。

心理職として学ぶ場合、最も大きいのは大学院の学費と、修了までの時間です。これに加えて、資格を取ったあとも、学会の年会費、研修会の参加費、事例の指導を受ける費用などが続きます。日本箱庭療法学会の場合、入会金と年度会費のほか、全国研修会の参加費が1回あたり数千円かかります。学び続けることそのものが、心理職の仕事の一部だと考えておくとよいでしょう。

体験として学ぶ場合は、数時間の講座やワークショップから始められます。最初から長い講座や高額な認定のコースに申し込むのではなく、まず短い体験で自分に合うかを確かめ、もっと学びたいと思ったら次の段階に進むという順番が安心です。

勤め先の研修として学ぶ場合は、事業所が国の助成金を使える場合があります。社員の研修に人材開発支援助成金を使う仕組みについては、福祉用具貸与事業所のスキルアップ助成金2026|人材開発支援助成金の活用法で、福祉の事業所が助成金を申請する流れを紹介しています。対象になる研修の条件は細かく決まっているため、申し込む前に事業所の担当者や労働局で確かめてください。

運営者として見てきたこと

在宅ワークとフリーランスの仲介を2004年から続けてきた運営者として見てきた限りでは、心理や福祉の分野の知識を仕事に生かしている人は、資格の数を増やすことより、一つの分野で学んだことを、文章や講座、相談などの形で丁寧に伝え続けることを大切にしています。とくに心の分野は、相手の信頼が何より大切で、その信頼は、確かな資格と、相手の立場に立った言葉の選び方の両方から生まれます。

もう1つ見えてくるのは、仲介の手数料が重い仕組みほど、専門の知識を持つ人の手元に残る報酬が薄くなり、学び続けるための費用を確保しにくくなるということです。依頼主と受け手が直接やり取りし、手数料0%で契約できる形なら、同じ予算でも依頼主は必要な仕事を頼みやすく、受け手は手元に残る金額が厚くなります。研修や事例の指導に費用がかかり続ける心理の分野では、その差が学びを続けられるかどうかに表れます。

箱庭療法の資格を考えるときは、まず自分が箱庭療法を何のために学びたいのかを決めてください。心理職として使いたいなら公認心理師や臨床心理士の取り方を、仕事や生活に取り入れたいなら体験の講座の中身と費用を確かめるところから始めるのが確実です。事例の報告や研修の資料を書く力も合わせて伸ばしたい人は、ビジネス文書検定の出題の範囲を確かめてみると、文章の基礎を見直すきっかけになります。

よくある質問

Q. 箱庭療法の国家資格はありますか?

箱庭療法という技法だけを対象にした国家資格はありません。心の支援の専門職としては国家資格の公認心理師があり、民間の資格では日本臨床心理士資格認定協会が認定する臨床心理士があります。病院や学校、福祉の施設で箱庭療法を使う心理職の多くは、これらの資格を持っています。

Q. 心理職でなくても日本箱庭療法学会の研修に参加できますか?

研修ごとに参加資格が決まっています。2026年度の第1回全国研修会では、学会の会員、箱庭療法を取り入れている児童相談所や児童養護施設などの心理職、心理臨床の実践の仕事をしている人、心理臨床を専攻する大学院生が対象でした。参加には秘密を守る誓約書の提出も必要です。

Q. 民間の箱庭療法の資格を取れば仕事にできますか?

民間の認定資格だけで心の病気の治療や診断ができるわけではありません。箱庭療法を仕事で使う場面の多くは、病院や学校、福祉の施設で心理職として雇われる形で、公認心理師や臨床心理士の資格が求められます。民間の講座は、仕事や生活に生かす考え方を学ぶ入り口として選ぶのが現実的です。

Q. 箱庭療法を学ぶにはどのくらいの期間がかかりますか?

目的によって違います。体験として知るだけなら数時間の講座から始められます。心理職として使うには、大学と大学院で心理学を学んで公認心理師や臨床心理士の資格を取り、その後も学会の研修会や事例の指導で長く学び続けます。国際箱庭療法学会の認定には、理論の研修100時間などの要件があります。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年2月27日最終更新:2026年10月29日
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