職歴を並べただけの在宅校正・校閲の職務経歴書は通らない


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この記事のポイント
- ✓校正・校閲の職務経歴書を在宅求人向けに書くとき
- ✓職歴を時系列で並べただけでは通りません
- ✓在宅特有の6ブロック構成
まず、安心してください。校正・校閲の職務経歴書が在宅の求人で通らないのは、皆さんの経歴が足りないからとは限りません。書き方が、在宅の発注構造と噛み合っていないだけということが非常に多いのです。この記事では、職歴を時系列に並べただけの職務経歴書がなぜ落ちるのか、在宅向けにはどういう構成が必要なのか、経験が浅い方やブランクのある方が何を材料にできるのかを、実際の求人条件を見ながら順に整理していきます。私も40代でメーカーを辞めてフリーランスになった人間なので、書類で落ち続ける時期のしんどさは想像がつきます。
在宅の校正・校閲では、職務経歴書の読まれ方が違う
最初に押さえておきたいのが、在宅の校正・校閲求人は、通常の転職とは選考の性質が違うという点です。
社内で働く校閲職の採用なら、面接で人柄を見て、入社後に育てるという前提が置けます。ところが在宅、特に業務委託の場合、発注側は「この人に原稿を送って、期限までに使える赤字が返ってくるか」だけを判断しようとします。育てる前提がないので、書類に書かれていないことは、できないものとして扱われます。
ここが決定的です。職歴を並べただけの職務経歴書は、発注側に推測を強います。「出版社に5年勤務」と書いてあっても、その5年で何をどれだけ処理したのか、赤字をどの形式で入れていたのか、在宅で回せるのかは書かれていません。推測する時間があるなら、次の応募者の書類を開いたほうが早い。そうやって落ちていきます。
実際の求人条件を見ると、何が見られているかがはっきりします。
個人投資家向けWEBメディア「インベストーク」にて、個人投資家向け企業レポート作成やWEBメディアのオリジナルコンテンツ作成、校正・校閲業務を担当いただきます。フルリモート勤務で、1日3時間~、勤務時間も自由にご相談可能です。投資家向けメディアでのライティング経験をお持ちの方を募集しています。服装自由、オンライン選考OK、副業やプライベートとの両立も可能です。週1回程度のミーティングにご参加いただきます。 出典: 求人ボックス
この募集で求められているのは、校正スキル一般ではなく「投資家向けメディアでのライティング経験」です。つまり分野の一致が第一条件になっている。職歴を並べただけの書類では、この一致が見えません。逆に言えば、分野の一致を意識して並べ替えるだけで、同じ経歴でも通りやすくなります。
もう1つ、別の求人条件も見ておきます。
【応募資格】医療や医学、医薬系媒体の校正、校閲実務経験がある方事前課題に取り組んでいただける方 【オススメポイント】基本在宅勤務!... 出典: 求人ボックス
ここでも分野の指定があり、加えて「事前課題に取り組んでいただける方」という条件が入っています。書類は通過点で、本番は課題です。だとすれば職務経歴書の役割は、課題に進む資格があると示すことに絞られます。長々と書く必要はありません。
完全在宅と一部在宅では、見られる場所が変わる
在宅と言っても幅があります。求人の見出しを眺めると、フルリモートの編集業務、ほぼ完全在宅の事務、週2在宅の経費精算サポート、最初以外はほぼ完全在宅の未経験可ポジションと、在宅の度合いはバラバラです。
完全在宅の業務委託では、成果物と稼働の再現性が見られます。職務経歴書に必要なのは、処理量、対応工程、納品形式、稼働時間帯の4点です。人柄や成長意欲の記述はほぼ効きません。
一部在宅の雇用契約では、通常の転職と同じ見方になります。ここは職務経歴の厚みや、チームでの立ち回りも評価対象です。育成の余地があるので、未経験に近い方が狙うならこちらになります。
事務職に校正が含まれる求人では、事務としての正確さと処理速度が主で、校正は付帯業務です。校正の専門性を全面に出しすぎると、事務職としての適性が見えなくなります。
自分が出そうとしている求人がどれかを判定してから書く。この一手間を省くと、どれだけ丁寧に書いても的を外します。
職歴を並べただけの書類が落ちる、3つの理由
もう少し具体的に、何が起きているかを分解します。
理由1 「できること」が読み手の推測任せになっている
在職期間と会社名と部署名だけが並んでいる書類は、情報量がほぼゼロです。「2018年4月から2023年3月まで、株式会社◯◯出版 校閲部」と書かれていても、担当媒体、年間の処理量、担当工程、使用ツールが書かれていなければ、何も判断できません。
必要なのは分解です。校正・校閲の仕事は、素読み、赤字照合、事実確認、表記統一、法令チェック、といった工程に分けられます。自分がどの工程を、どの媒体で、どれくらいの量こなしたのか。ここまで書いて初めて、発注側は「うちの案件を任せられるか」を判断できます。
私が最初にフリーランス向けの書類を作ったとき、まさにこれをやっていませんでした。前職の業務内容を丁寧に書いたつもりが、読み返すと「何をどれだけできる人か」がまったく伝わらない。会社の中では通じる書き方が、外に出すと通じなくなる。この切り替えに、正直かなり時間がかかりました。
理由2 在宅で回せるという証拠がどこにもない
在宅の選考で最も抜けやすい項目です。皆さんの職務経歴書に、次の項目は書かれているでしょうか。
赤字をどの形式で入れて返せるか。PDFの注釈機能なのか、iPadとタッチペンによる手書き注釈なのか、Wordの変更履歴なのか、Googleドキュメントの提案モードなのか。オンライン会議に出られるか。ファイル共有の手段は何が使えるか。通信環境は安定しているか。連絡への返信は何時間以内が目安か。
これらは職務経歴ではないので、経歴欄には収まりません。だからこそ、独立した項目として立てる必要があります。ここが空白のままだと、発注側は在宅で回せるかを判断できず、確認のやり取りが発生します。その手間を避けたい担当者は、書いてある人を選びます。
理由3 分野の一致が読み取れない
先に見た求人のように、在宅の校正・校閲は分野指定が入ることが多い。医薬、法律、金融、教材、自治体広報、ITと、それぞれ必要な知識が違うからです。
職歴を時系列に並べると、直近の経歴が上に来ます。ところが応募先が求める分野の経験が5年前だった場合、それは書類の下のほうに埋もれます。読み手は上から順に読んで、途中でやめます。
対策は単純で、応募先の分野に関わる経験を職務要約の中に引き上げることです。時系列の詳細は下に残したまま、冒頭の要約で「金融メディアの記事校正を通算3年」と書いておく。これだけで拾われる確率が変わります。
在宅向け職務経歴書の6ブロック構成
ここからは実際の構成です。A4で1枚から2枚に収めます。3枚以上は在宅の業務委託では読まれません。
ブロック1 職務要約(150字から200字)
冒頭に置きます。ここだけで判断されると思って書いてください。
書く要素は、通算の経験年数、主に扱ってきた媒体と分野、得意な工程、そして応募先の分野との接点です。「校正・校閲の実務は通算7年です。書籍と企業広報物を中心に、素読みから赤字照合、事実確認までを一貫して担当してきました。直近3年は金融系の企業レポートを扱っており、数値と注記の突き合わせを日常的に行っています」といった書き方になります。
応募先ごとに、この要約だけは書き換えます。全体を作り直す必要はありません。要約の最後の一文を応募先の分野に合わせるだけで、印象は大きく変わります。
ブロック2 対応可能な工程と納品形式
在宅特有のブロックで、ここを立てている応募者は少数です。だからこそ差がつきます。
工程は、素読み、赤字照合(初校と再校の突き合わせ)、事実確認(ファクトチェック)、表記統一、法令や規制のチェック、原稿整理、リライトのうち、対応できるものを列挙します。できないものは書かない。書いていないものはできないと判断されますが、それで構いません。嘘を書いて課題で崩れるほうが損失は大きい。
納品形式は、対応可能なものを具体的に並べます。PDFの注釈、iPadでの手書き注釈、Wordの変更履歴とコメント、Googleドキュメントの提案モード、紙にペン入れしてスキャン、InDesignのPDF校正。求人票に指定がある場合は、それが含まれていることが一目でわかるように書きます。
CMSでの直接修正が可能かどうかも書いておくと有利です。WordPressの管理画面に入って修正まで行えるなら、依頼できる範囲が広がります。
ブロック3 稼働条件
週に何日、1日に何時間、どの時間帯か。緊急対応の可否。連絡への返信目安。契約形態の希望。
「柔軟に対応可能」は書かないでください。在宅の発注側にとって、柔軟という言葉は「稼働が読めない」と同義です。「平日9時から15時、週4日、1日5時間程度。連絡は営業時間内であれば2時間以内に返信します」と数字で固定するほうが、はるかに信頼されます。
先ほど見た求人が「1日3時間~、勤務時間も自由にご相談可能」と書いているのは、短時間でも時間帯が固定されていれば発注計画が立つからです。長く働けることより、読めることのほうが価値があります。
ブロック4 職務経歴(詳細)
ここで初めて時系列を書きます。ただし、社名と期間の羅列にしないこと。各社ごとに、担当媒体、担当工程、処理量、使用ツール、成果や工夫を書きます。
処理量は具体的に。「月に20本、1本4,000字前後」「1件80ページの会社案内を年15件」といった書き方です。量が書けると、こちらの案件量と照らして判断できるので、発注側にとって非常に助かります。
工夫や成果は、数字にしにくい仕事なので難しいところですが、書ける材料はあります。表記ルールの整備、チェックリストの作成、進行管理の改善など、仕組みを作った経験は評価されます。実際、こういう経験を明示的に求める求人もあります。
【休日・休暇など】完全週休2日制 土・日(年間休日120日以上)...社内外表記の為の校正・校閲のルールやガイドブックの作成経験...社内外表記の為の校正・校閲のルールやガイドブックの作成経験... 出典: 求人ボックス
ルールやガイドブックを作った経験が応募資格として書かれるくらいには、この種の仕事に価値が置かれています。作業者としての経験だけでなく、基準を作った側の経験があるなら、必ず書いてください。
ブロック5 スキル・ツール
保有資格、使用可能ソフト、専門知識をまとめます。校正関連なら校正技能検定、日本語表記に関する知識、記者ハンドブックなど準拠可能なルール。分野知識なら薬機法、景品表示法、金融商品の表示ルールなど。
資格については、校正技能検定のガイドで試験区分と出題範囲を確認しておくと、自分がどこまで書けるかを整理できます。学習中であることも書いて構いません。ただし、資格を職務経歴書の冒頭に置くのは避けてください。実務の記述のあとに置くほうが自然です。
IT分野の技術文書を扱う可能性がある方は、技術系の知識も書いておくと差別化になります。ネットワークやインフラの用語が正確に扱えるかは、技術文書の校正では重要な条件で、CCNA(シスコ技術者認定)のような資格を持っていれば、その分野での適性が伝わります。
ブロック6 自己PR(200字から300字)
最後に短く置きます。ここで性格を語らないこと。「几帳面です」「正確です」は全員が書くので差がつきません。
書くべきは、判断の仕方です。用字用語で迷ったときにどう決めるか、疑問出しと修正指示をどう使い分けるか、締切が厳しいときに何を優先するか。判断の基準を示せる人は、任せても崩れないと読まれます。
実務経験が浅い方、ブランクのある方が書ける材料
ここが一番相談を受ける部分です。まず、安心してください。実務経験がゼロでも、書ける材料はあります。ただし、作る必要はあります。
社内文書のチェック経験は立派な材料です。総務や広報にいた方なら、社外に出す文書のチェックをしていたはずです。年間何件、どういう観点で見ていたかを書けば、経験欄が埋まります。
学習の過程も書けます。校正の練習として、自治体の広報紙や企業のプレスリリースを題材に赤入れをして、判断根拠を一覧化する。この作業を続けていれば、「直近半年で30本の文書を題材に、表記統一の観点で校正練習を継続。判断根拠を記録し、独自の表記ルール表を作成」と書けます。実務ではありませんが、手が動く証拠にはなります。
ブランクのある方は、ブランク中に何をしていたかを短く書いてください。空白のまま出すと、発注側は最悪のケースを想像します。育児や介護で離れていたのなら、そう書けばよい。そのうえで、いま稼働できる時間帯を明確にすれば、判断材料としては十分です。
ブランクからの復帰では、稼働の条件を正直に書くことが結果的に近道になります。無理に週5日と書いて続かないより、週3日で確実に返すほうが、次の依頼につながります。
副業として応募する場合に、追加で書くこと
在宅の校正・校閲は副業として始める方が多い領域です。求人側も副業を前提にしている募集が増えています。
副業で応募する場合、職務経歴書に追加すべき項目が3つあります。
1つ目は、本業との時間の切り分けです。本業が終わったあとの時間帯なのか、週末なのか、平日の日中に一部時間が取れるのか。ここが曖昧だと、発注側は納期の判断ができません。「平日は19時から22時、土曜は終日対応可能」と書けば、緊急対応の可否まで含めて判断できます。
2つ目は、本業の副業規定への対応状況です。就業規則で副業が許可されているか、届出済みかを一行書いておくと、発注側の懸念が消えます。ここを気にする発注者は実際にいます。
3つ目は、本業のスキルとの接続です。本業が経理なら数字の突き合わせ、法務なら契約書の読解、医療職なら医学用語の理解と、本業の知識が校正の武器になる分野があります。これを書かない手はありません。
副業から入って、いずれ独立を考える方もいるでしょう。私自身、退職の1年前から副業として在宅の仕事を始めました。ゼロから独立するのと、副業で回るようになってから独立するのでは、精神的な負荷がまったく違います。40代からでも遅くはありませんが、準備の順番だけは間違えないほうがいい。職務経歴書を副業向けに整えることは、その準備の一部でもあります。
業務委託・フリーランスとして応募する場合の追加事項
雇用ではなく業務委託で契約する場合、職務経歴書に加えて確認しておくべきことがあります。
まず、契約形態の明記です。業務委託を希望するのか、雇用も可なのか。時給制か、成果物単位か。ここを書いておくと、条件の合わない案件でのやり取りが減ります。
次に、社会保険の扱いです。業務委託は雇用保険や厚生年金の対象外なので、国民健康保険と国民年金に自分で加入することになります。会社員から独立する方は、この切り替えを見落としがちです。制度の内容は日本年金機構の公開情報で確認できます。職務経歴書に書く内容ではありませんが、契約条件を判断するうえで前提になる知識です。
請求と経理の体制も、書いておくと信頼されます。適格請求書の発行が可能かどうか、請求書の締めと支払いのサイクルに対応できるか。会計ソフトを使っている方なら、freeeやマネーフォワードのようなサービスで請求書発行まで完結できることを一行添えておくと、事務処理の負担が少ないと判断されます。
見本として、職務経歴書の中身を実際に書いてみる
構成の説明だけでは書き出せないと思うので、実際の文面を出します。ここでは、出版社の校閲部で5年、その後Webメディアで3年という経歴の方が、金融系メディアの在宅校正に応募する想定で作ります。
職務要約の欄には、こう書きます。「校正・校閲の実務は通算8年です。書籍の校閲部で素読み、赤字照合、事実確認を担当したのち、Webメディアで記事校正と原稿整理を行ってきました。直近3年は経済系の記事を中心に扱っており、決算数値や統計の出典確認を日常的に行っています。フルリモートでの稼働経験があり、PDF注釈とCMSでの直接修正のいずれにも対応可能です。」
分野の接点である「経済系の記事」「決算数値の確認」を要約に入れているのが要点です。時系列で書くと、この情報は下のほうに埋もれます。
対応可能な工程の欄は、箇条書きで並べます。素読み、初校と再校の赤字照合、事実確認と出典確認、表記統一(記者ハンドブック準拠および社内ルール準拠)、原稿整理、リライト。ここに書かなかった工程は、できないものとして扱われます。医薬系の資材チェックなど、経験のない領域は書きません。
納品形式の欄は、こう並べます。PDFへの注釈、iPadとタッチペンによる手書き注釈、Wordの変更履歴とコメント、Googleドキュメントの提案モード、WordPress管理画面での直接修正。求人票に手書き注釈の指定があった場合、この行があるかないかで選考の結果が変わります。
稼働条件の欄は、「平日9時から16時、週4日稼働。月あたりの処理可能量は記事校正で40本程度。連絡は稼働時間内であれば2時間以内に返信。週1回程度のオンライン会議に参加可能」と書きます。会議への参加可否をわざわざ書くのは、フルリモートの募集でも定例会議が入っているケースが多いためです。
職務経歴の詳細は、社ごとに分けます。「株式会社◯◯出版 校閲部(2017年4月から2022年3月)/担当媒体:実用書、ビジネス書/年間25冊前後、1冊あたり200から300ページ/担当工程:素読み、初校再校の赤字照合、事実確認/使用ツール:紙ゲラ、PDF注釈/表記統一ルール表を部内で作成し、外部校正者への発注時の指示書として運用」といった形です。
最後の自己PRでは、判断の仕方を書きます。「用字用語の判断で迷った場合は、媒体の既存表記、準拠ルール、過去記事の3点を確認してから決めています。修正指示と疑問出しは明確に分け、文体の好みに属する箇所は修正せず疑問出しにとどめます。締切が迫った場合は、事実誤認と数値の不整合を優先して確認し、表記の統一は次工程に申し送る運用にしています。」
性格ではなく手順を書いているので、任せたときの動き方が想像できます。ここまで書いてA4で2枚に収まります。
通らない書き方を、3つの実例で確認する
逆に、落ちる書き方も見ておきます。どれも実際によくある形です。
1つ目は、業務内容を会社の言葉のまま書いてしまうケースです。「編集業務全般を担当」「制作進行のサポート」といった表現は、社内では通じても、外の人には何も伝わりません。全般やサポートという言葉が出てきたら、それを工程に分解できていない合図です。「編集業務全般」ではなく「台割作成、原稿整理、初校の素読み、印刷所への入稿データ確認」と分解します。
2つ目は、応募先ごとに書き分けていないケースです。同じ書類を全部の求人に送ると、分野の一致が見えません。全体を作り直す必要はないので、職務要約の最後の一文だけを応募先に合わせて書き換えてください。医薬系なら医療分野の経験、自治体広報なら公文書や公共性の高い媒体の経験を最後に置く。この一手間で通過率が変わります。
3つ目は、長すぎるケースです。経験が豊富な方ほど陥ります。5枚にわたって全職歴を詳述した書類は、業務委託の選考ではまず最後まで読まれません。古い経歴は社名と期間と担当媒体だけに圧縮し、直近と応募分野に関わる部分だけを厚くします。捨てる勇気が要りますが、読まれない情報は書かれていないのと同じです。
私も独立した当初、経歴を全部詰め込んだ書類を作っていました。前職での実績を落とすのがもったいなく感じたからです。ところが返事が来る率は上がらず、思い切って直近3年に絞ったところ、反応が変わりました。読み手が使える情報だけを残す。これに気づくまで、半年ほど無駄にしました。
単価の構造を知ってから、応募先を選ぶ
職務経歴書を作る前に、報酬の構造を理解しておくと、どこに力を入れて書くべきかが見えてきます。
在宅の校正・校閲の報酬形態は、時給制、ページ単価、文字単価、案件一括のいずれかです。時給制の在宅求人では時給1,200円から2,000円台の幅が見られ、専門分野の校閲や、マーケティング支援を兼ねる高度な職種になるとさらに上振れします。Web記事の校正は文字単価が低めで、処理量で成立させる構造です。
編集や執筆まで守備範囲を広げると、報酬の水準は変わります。職種としての相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。統計に基づく年収レンジが職種別に整理されているので、校正から編集へ広げたときの到達点を見積もる材料になります。技術文書の方向に進むなら、ソフトウェア作成者の年収・単価相場も併せて見ておくと、専門分野を持つことの効き方がわかります。
もう1点、額面と手取りの差です。クラウドソーシング経由で受注する場合、システム利用料として16.5%から20%程度が引かれるのが一般的です。時給換算で1,500円相当の作業をしても、手元には1,200円から1,250円程度しか残りません。校正は時間あたりの処理量に上限がある仕事なので、この差は効いてきます。
応募先の幅を広げるという考え方
校正・校閲だけに絞ると、在宅で継続的に受注するのは簡単ではありません。守備範囲を隣接領域まで広げておくと、書類が通る確率も、仕事が途切れない確率も上がります。
隣接するのは、原稿整理、リライト、編集アシスタント、進行管理といった領域です。この範囲がどう繋がっているかは編集・校正・リライトのお仕事で整理されており、校正だけでなく編集寄りの業務まで含めた実務の全体像がわかります。職務経歴書に書ける項目を増やす意味でも、目を通しておく価値があります。
もう1つ、近年増えているのがAIが生成した文章の校正です。事実確認と表現の調整が中心で、従来の校正とは違う判断が求められます。この領域を含むAI関連の在宅業務の広がりはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱われており、どこまでが在宅で成立しているかが見えてきます。分野の異なる例として作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事も参考になります。成果物のやり取りだけで完結する在宅業務の型として、校正と構造が似ているためです。
専門知識を持つ人が在宅に移る流れは、他の職種でも起きています。法律事務所のパラリーガルの働き方|在宅・時短勤務の現状【2026年版】では、法務の専門性を在宅の働き方に接続する実例が整理されています。資格の学習途中でも武器になるという考え方については、税理士試験合格者の在宅ワーク事情|科目合格が武器になる理由【2026年版】が参考になります。校正技能検定の学習中に応募する方にも、同じ論理が当てはまります。
在宅の校正は、集中を要する作業を一人で長時間続ける仕事です。書類が通って仕事が始まってからのほうが、実は消耗しやすい。在宅ワーカーのメンタルヘルスケア|孤独・燃え尽きを防ぐ5つの習慣【2026年版】では、在宅で働く人が疲弊する典型的なパターンと予防策がまとめられているので、応募と並行して読んでおくことをおすすめします。
書類が通ったあと、何が効いてくるか
最後に、市場を長く見てきた運営者の立場から観察を書いておきます。
20年この市場を見てきた立場から言えば、在宅の校正・校閲で長く続いている人は、赤字の精度が突出しているというより、依頼側の手間を減らす動き方をしています。原稿を受け取ったら着手の一報を入れる、判断が分かれる箇所は理由を添えて2案を出す、次回に向けて表記の判断基準を整理して共有する。こうした動きは職務経歴書には書きにくいのですが、実際には継続発注を決めている要因です。だからこそ、書類の段階で「判断の仕方」を書ける人が有利になります。仕事が始まってからの動き方が想像できるからです。
運営者として見てきた限りでは、中間マージンが乗らない直接取引の効き方は、金額より仕事の質に出ます。仲介手数料が引かれない分、依頼側は同じ予算でより多くの分量を頼めます。受け手側は同じ作業量で手取りが厚くなる。すると1件あたりに使える時間が増え、確認の粒度が上がります。結果として成果物の質が上がり、また次が来る。手数料0%の意味は、単価が上がることではなく、丁寧に仕事をする余白が生まれることだと考えています。この余白があるかどうかが、在宅の校正を3年続けられる人と、1年で消耗して離れる人を分けています。
職務経歴書の話に戻ります。皆さんがやるべきことは、経歴を増やすことではありません。すでにある経歴を、在宅の発注側が判断できる形に組み替えることです。職務要約で分野の接点を示し、対応工程と納品形式を独立させ、稼働条件を数字で固定する。この3点を足すだけで、同じ経歴でも読まれ方が変わります。まずは手元の職務経歴書を開いて、対応工程と納品形式の項目があるかどうかを確認してみてください。ない方が、おそらく大半だと思います。
よくある質問
Q. 在宅の校正・校閲の職務経歴書は何枚くらいが適切ですか?
A4で1枚から2枚に収めてください。3枚以上は業務委託の選考ではまず読まれません。職務要約を150字から200字で冒頭に置き、対応可能な工程と納品形式、稼働条件、職務経歴の詳細、スキル、自己PRの順に構成します。詳細を書きたい場合は、応募先の分野に関係する経歴だけを厚くしてください。
Q. 実務経験がない場合、職務経歴書に何を書けばいいですか?
社内文書や広報物のチェック経験、校正の学習過程が材料になります。自治体の広報紙やプレスリリースを題材に赤入れを行い、判断根拠を記録しておけば、「直近半年で30本を題材に校正練習を継続」といった形で処理量として書けます。実務経験の代わりにはなりませんが、手が動く証拠にはなります。
Q. 職務経歴書に必ず書くべき在宅特有の項目は何ですか?
赤字の納品形式と稼働条件の2つです。PDFの注釈、iPadでの手書き注釈、Wordの変更履歴、Googleドキュメントの提案モードのうち何に対応できるかを列挙します。稼働は「平日9時から15時、週4日、連絡は2時間以内に返信」のように数字で固定してください。柔軟に対応と書くのは避けます。
Q. 副業として応募する場合、職務経歴書に追加すべきことはありますか?
本業との時間の切り分け、本業の副業規定への対応状況、本業スキルとの接続の3点です。稼働可能な時間帯を具体的に書き、就業規則上問題ないことを一行添えます。本業が経理なら数値の突き合わせ、法務なら契約書読解といった形で、本業の知識が校正の武器になる点も明記してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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