士業事務所自身のバックオフィスを外注する方法|案件管理と請求業務の依頼範囲

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
士業事務所自身のバックオフィスを外注する方法|案件管理と請求業務の依頼範囲

この記事のポイント

  • 士業事務所 バックオフィス 外注を検討する所長・事務局長向けに
  • 失敗しない外注先の選び方を客観的なデータとともに解説します

士業事務所 バックオフィス 外注というキーワードで検索している方の多くは、税理士・社労士・弁護士・行政書士といった専門業務に集中したいのに、案件管理や請求書発行、経理入力に時間を取られている所長や事務局長ではないでしょうか。結論から言うと、士業事務所のバックオフィス業務は外注可能な範囲が広く、費用相場は月5万円15万円程度に収まるケースが多いというのが実態です。ただし、依頼範囲の切り分けと外注先選びを誤ると、かえって管理コストが増える事態にもなりかねません。この記事では、費用の内訳、依頼できる業務範囲、選び方のポイントを順に整理していきます。

士業事務所がバックオフィスを外注する背景にあるマクロ動向

士業事務所の経営環境は、この数年で大きく変化しています。国税庁が公表する統計を見ても、税理士登録者数は増加傾向にある一方で、1事務所あたりの職員数は横ばいか微減という事務所が少なくありません。つまり、案件数は増えているのに人手は増えていない、という構造的なひずみが多くの事務所で起きています。

長年、税理士業界から経理業務を中心としたバックオフィス業務に携わってまいりました。以前は税務のかたわら、顧問先のバックオフィス業務を行っていましたが、税務と経理のスケジュールや視点の違いを感じ、税務と経理は分けて行うべきと考えております。また、バックオフィス業務を強化することで、税務業務も行いやすくなりコミュニケーションもより取りやすくなると実感しております。今後は、中小企業のバックオフィスの課題に向き合い、士業事務所との架け橋になれるよう邁進する所存です。 出典: densuke-work.co.jp

この引用が示すように、税務や法務といった専門業務と、経理・事務といったバックオフィス業務は本来切り分けて考えるべきものです。にもかかわらず、多くの士業事務所では所長自身や少数の職員が両方を兼務し、結果として専門業務に割ける時間が圧迫されているのが実情です。中小企業庁の調査でも、士業を含む専門サービス業では人手不足感が強いという傾向が続いており、採用による解決が難しい状況で外注という選択肢が現実的な打ち手として浮上しています。

もう一つの背景として、クラウド会計ソフトの普及があります。クラウド化によって、事務所の外にいる担当者でもリアルタイムで経理データにアクセスできるようになり、物理的に同じオフィスにいなくても業務委託が成立しやすくなりました。これは士業事務所のバックオフィス外注が現実的な選択肢として広がった技術的な背景といえます。

士業事務所のバックオフィス業務で外注できる範囲

まず整理すべきは「何を外注できて、何を外注すべきでないか」という線引きです。士業事務所の業務は大きく「コア業務」と「ノンコア業務」に分けられます。

コア業務とノンコア業務の違い

コア業務とは、税理士や社労士、弁護士といった有資格者にしかできない専門判断業務のことです。税務相談、申告書の最終確認、労働問題の法的アドバイス、契約書の作成といった業務がこれにあたります。これらは資格者本人が行う必要があり、外注の対象にはなりません。

一方でノンコア業務とは、専門資格がなくても遂行できる定型的な業務です。以下のような業務が該当します。

・案件管理(顧問先とのやり取り記録、進捗管理、締切管理) ・請求業務(請求書の発行、入金確認、督促連絡) ・記帳代行(伝票入力、仕訳の一次チェック) ・給与計算のデータ入力 ・書類のスキャンとデータ化 ・スケジュール調整とアポイント管理 ・電話・メール対応の一次窓口

ノンコア業務は所長や有資格者でなくても代行可能であり、外注によって専門業務の時間を確保できる余地が大きい領域です。実務上は、案件管理と請求業務の2つから外注を始める事務所が多く見られます。理由は単純で、この2つは業務フローが標準化しやすく、かつ属人化しやすい業務でもあるからです。所長しか請求状況を把握していない、という状態は事業継続の観点からもリスクになります。

案件管理の外注で具体的にできること

案件管理の外注では、顧問先ごとの対応履歴をスプレッドシートやクラウドツールで一元管理し、締切が近づいている案件をリマインドする、といった業務を任せられます。士業事務所は年末調整や確定申告、労働保険の年度更新など季節性の強い業務が多いため、繁忙期の案件が漏れなく進んでいるかを管理する担当者は非常に重要です。外注担当者に案件管理を任せることで、所長は繁忙期でも個々の案件の進捗を都度確認する必要がなくなり、専門判断業務に集中できます。

請求業務の外注で具体的にできること

請求業務の外注では、月次で発生する顧問料の請求書発行、都度発生するスポット業務の見積もり作成、入金確認、未入金先への督促連絡までを一連の流れで任せることができます。士業事務所の顧問料は毎月ほぼ同じ内容で発生するため、テンプレート化しやすく、外注委託先が業務フローを覚えれば安定して回せる業務です。督促連絡のような心理的な負担がある業務を外部に任せられる点も、所長にとってはメリットとして挙げられることが多い業務です。

バックオフィス外注の費用相場と料金形態

費用面は多くの方が最初に知りたい情報だと思いますので、具体的な数字から見ていきます。

料金形態の種類

士業事務所向けのバックオフィス外注には、大きく3つの料金形態があります。

・月額固定制:毎月決まった業務量を決まった金額で依頼する形態。月5万円15万円程度が相場で、案件管理と請求業務をセットで依頼する事務所に多く見られる形態です ・従量課金制:作業時間や処理件数に応じて課金される形態。時間単価は2,000円4,000円程度が目安です ・スポット依頼制:繁忙期のみ、特定案件のみといった単発依頼の形態。単発の請求書発行代行であれば1件数百円から依頼できるケースもあります

小規模な士業事務所であれば、まずスポット依頼制や従量課金制で外注に慣れてから、業務量が安定してきた段階で月額固定制に切り替えるという流れが現実的です。

正社員採用と外注のコスト比較

ここで、正社員としてバックオフィス担当を採用する場合との比較データを見てみましょう。

この規模で正社員のバックオフィス担当を採用した場合、求人広告費・給与・社会保険料を合わせると年間400万円前後のコストが発生します。月5〜10万円の外注費と比べると、コスト差は年間300万円以上になるケースもあります。創業期こそ外注の費用対効果が最も出やすいフェーズといえるでしょう。 出典: marugotoinc.jp

この試算からも分かる通り、正社員採用と比較すると外注のコスト差は年間300万円以上になるケースがあります。小規模な士業事務所にとって、専任の事務職員を1人雇用するコストは決して軽くありません。社会保険料の事業主負担分、賞与、有給休暇の管理コストまで含めると、実質的な人件費は額面給与の1.3倍から1.5倍に膨らむのが一般的です。この点を踏まえると、業務量がフルタイム1人分に満たない事務所ほど、外注のコストメリットが大きくなります。

正直なところ、これはどうかと思う事務所の判断もあります。「とりあえず求人を出して人が来るまで待つ」という選択を続け、結局2年近く専任担当を置けないまま所長自身が経理を続けていた事務所を取材で見たことがあります。求人市場で経理経験者の応募が集まりにくい地域であれば、外注を先に検討したほうが合理的な場合も多いはずです。

仲介会社経由と直接依頼のコスト差

もう一つ押さえておきたいのが、依頼のルートによるコスト差です。バックオフィス代行を扱う仲介会社やアウトソーシング会社を通す場合、担当者の実働時間に対して仲介手数料が上乗せされるため、実際にフリーランスの担当者へ支払われる報酬より依頼側の支払額が高くなる構造になっています。一方で、経理・事務のフリーランスへ直接依頼すれば、この中間マージンが発生しない分、同じ予算でもより多くの作業時間を確保できるか、あるいは同じ作業量をより安い費用で依頼できます。

私自身、初めてバックオフィス業務を外注した際、複数の仲介会社から見積もりを取り寄せて比較したことがあります。結果として、提示された月額料金の内訳を細かく確認すると、実務を担当する側への支払いと仲介側の取り分がほぼ同額という見積もりもありました。安さだけで飛びつくのではなく、内訳を確認する重要性を痛感した経験です。

バックオフィス代行サービスの具体的な内容

続いて、実際に提供されているサービスの内容を見ていきます。

会計事務所向けの労務・経理代行サービス

労務・人事・経理業務をまとめて任せられるサービスも増えています。従業員数30名以下の小規模企業や士業事務所に向けて、給与計算、社会保険手続き、記帳代行をワンストップで提供する会計事務所系のサービスが代表的です。士業事務所自身が顧客としてこうしたサービスを利用するケースも見られ、専門知識を持つ担当者が対応するため業務品質の面で安心感があるという声もあります。

まるごと管理部型のサービス

複数の業務をまとめて依頼できる「まるごと管理部」型のサービスも存在します。

月79,200円から利用が可能なサービスです。備品管理から請求書発行まで、採用率1%の厳選されたスタッフがバックオフィスに関わるさまざまな業務に対応します。初回3時間の無料お試しも可能なため、実際の仕事ぶりを確認したうえで契約できます。 出典: marugotoinc.jp

このように、月79,200円からという価格設定で、備品管理から請求書発行まで幅広い業務をカバーするサービス形態もあります。無料のお試し期間を設けているサービスも多いため、契約前に実際の対応品質を確認できる点は依頼側にとって安心材料になります。

バックオフィス外注を成功させる4つのポイント

外注を検討する際に確認しておくべきポイントを整理します。

ポイント1:業務範囲を書面で明確にする

「どこまでを外注し、どこからを事務所内で対応するか」を契約前に明文化しておくことが最も重要です。曖昧なまま契約すると、後から「これは含まれていると思っていた」という認識のズレが発生しやすくなります。案件管理であれば管理対象の顧問先範囲、請求業務であれば発行から入金確認までの工程のどこまでを含むかを、具体的に書面に落とし込んでおきましょう。

ポイント2:セキュリティ体制を確認する

士業事務所が扱う情報は、顧問先の財務データや個人情報など機密性の高いものが中心です。外注先がどのようなセキュリティ対策を取っているか、業務委託契約の中に秘密保持条項(NDA)が含まれているかは必ず確認すべき項目です。クラウドツールを利用する場合は、アクセス権限の管理体制やログの取得状況についても確認しておくと安心です。

ポイント3:試用期間を設けて品質を見極める

いきなり長期契約を結ぶのではなく、まずは1〜3ヶ月程度の試用期間を設け、業務品質やコミュニケーションの相性を見極めることをおすすめします。前述の「まるごと管理部」型サービスのように、無料のお試し期間を用意しているサービスもあるため、こうした制度を活用するのも一つの手です。

ポイント4:繁忙期の対応力を事前に確認する

士業事務所は確定申告や年度更新など、繁忙期の業務量が平常時の数倍に膨らむことが珍しくありません。外注先が繁忙期にも柔軟に対応できる体制を持っているか、事前に確認しておくことが大切です。繁忙期だけ稼働時間を増やせるか、代替要員を用意できるかといった点は、契約前に必ず質問しておくべき事項です。

バックオフィス外注でよくある失敗と注意点

外注を導入する際に起きがちな失敗パターンも押さえておきましょう。

一つ目は、業務範囲を広げすぎて依頼側の管理負担がかえって増えるケースです。あれもこれもと業務を詰め込んだ結果、外注先とのやり取りに時間を取られ、結局所長自身が確認作業に忙殺されるという本末転倒な状況に陥ることがあります。最初は限定的な範囲から始め、徐々に拡大していくのが現実的なアプローチです。

二つ目は、価格の安さだけで外注先を選んでしまい、品質面で後悔するケースです。相場より極端に安い見積もりを提示する外注先には、実務経験の浅さや稼働時間の制約といった理由が隠れている場合があります。見積もりの内訳や実績を確認した上で判断することが重要です。

三つ目は、コミュニケーション手段を決めずに始めてしまい、連絡の行き違いが頻発するケースです。チャットツール、メール、電話のどれを主な連絡手段にするか、報告の頻度はどうするかを最初に決めておくだけで、多くのトラブルは防げます。

バックオフィス外注の業務シミュレーション

具体的なイメージを持ってもらうため、従業員数5名程度の小規模税理士事務所を例にシミュレーションしてみます。

この規模の事務所では、顧問先数がおおよそ50社前後、月次の請求書発行件数が50件前後というケースが一般的です。案件管理と請求業務をまとめて外注する場合、月間の想定作業時間はおよそ30時間から40時間程度になることが多く、月額固定制であれば8万円前後が一つの目安になります。これを正社員のパート雇用と比較すると、社会保険料や教育コストを含めた実質コストは同程度かそれ以上になることが多く、外注のほうが結果的に割安になるケースが目立ちます。

繁忙期である1月から3月にかけては、確定申告業務が集中するため、この期間だけ稼働時間を増やす契約にしておくと、閑散期のコストを抑えつつ繁忙期の業務負荷を分散できます。

独自データから見る士業事務所の外注ニーズ

在宅ワーク求人を扱うプラットフォームの掲載データを見ていくと、士業事務所からの経理・事務系の外注募集は、他業種と比較しても継続依頼につながりやすい傾向があります。理由として、士業事務所の業務は月次・年次で反復するサイクルが明確なため、一度業務フローを覚えた担当者との関係が長期化しやすいという特徴が挙げられます。

社労士事務所からの労務業務の外注についてより詳しく知りたい方は、社労士フリーランスの需要と将来性|企業が外注する労務業務とはで、企業が社労士業務のどの部分を外注しているかを解説しています。また、経理・人事・総務全般の外注を幅広く検討したい場合は、バックオフィス業務の外注完全ガイド|経理・人事・総務【2026年版】で業務範囲ごとの依頼方法をまとめています。

案件管理や経理入力を担う人材を探す際には、AIツールを活用した業務効率化の知見を持つ担当者を選ぶという選択肢もあります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、AIを使った業務プロセスの見直し支援がどのような形で発注されているかを紹介しています。経理・事務の外注先を選ぶ際に、単なる作業代行にとどまらず業務改善の提案力も持つ人材かどうかを見極める材料にもなります。

長くフリーランス・在宅ワーク市場を運営してきた立場から見ると、士業事務所からの外注案件で長く続く関係の多くには共通点があります。それは、発注側が業務範囲を細かく切り分けて依頼するのではなく、担当者に一定の裁量を持たせて「この人に任せておけば安心」という信頼関係を築いている点です。単発の作業依頼を繰り返すよりも、継続的な関係を築いたほうが、担当者側も業務フローを深く理解し、結果として依頼側の確認作業も減っていく傾向が見られます。

また、中間マージンが発生しない直接取引の構造は、依頼側と受注側の双方にメリットをもたらします。同じ予算であれば、依頼側はより多くの作業時間を確保できますし、受注側は同じ作業量に対してより高い手取りを得られます。手数料0%という条件は、単に費用が安いという以上に、双方が納得感を持って長期的な関係を築きやすいという質的な利点があると、長年この市場を見てきた運営者としては感じています。

士業事務所のバックオフィス外注は、専門業務に集中するための有効な選択肢です。案件管理と請求業務から始め、業務範囲を明確にした上で試用期間を経て本格導入する、という段階的なアプローチを取ることで、コストと品質のバランスが取れた外注体制を築くことができるでしょう。

よくある質問

Q. 士業事務所がバックオフィスを外注する場合の費用相場はどれくらいですか?

月額固定制で月5万円から15万円程度が一般的な相場です。従量課金制であれば時間単価2,000円から4,000円程度、スポット依頼であれば単発数百円から依頼できるサービスもあります。

Q. 案件管理と請求業務、どちらから外注を始めるべきですか?

どちらも属人化しやすい業務のため、業務フローが標準化しやすい請求業務から始める事務所が多く見られます。慣れてきた段階で案件管理へ範囲を広げるのが現実的です。

Q. 仲介会社と直接依頼、どちらが費用面で有利ですか?

仲介会社を通す場合は仲介手数料が上乗せされるため、フリーランスへ直接依頼するほうが同じ予算でより多くの作業時間を確保できる傾向があります。

Q. 外注先を選ぶ際に最も確認すべき点は何ですか?

業務範囲を書面で明確にすることと、秘密保持条項を含むセキュリティ体制の確認です。試用期間を設けて品質を見極めてから本契約に移行することも重要です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月14日最終更新:2026年7月29日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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