弁理士の在宅でできる仕事


この記事のポイント
- ✓弁理士の資格を持っている人が在宅で引き受けられる仕事を種類ごとに整理し
- ✓資格が法令上の要件になる案件とならない案件の見分け方を解説します
- ✓募集要項のどこを読めば判断できるのか
弁理士の資格を持っていて、在宅でできる仕事を探している。そういうご相談が増えています。
多くの方が最初につまずくのは、案件が見つからないことではありません。見つけた案件について「これは弁理士の資格がないと受けられない仕事なのか、それとも資格がなくても受けられる仕事なのか」の判断がつかないことです。ここが曖昧だと、応募すべき案件を見送ったり、逆に自分の立場を説明できないまま話が進んだりします。
この記事では、弁理士が在宅で引き受けられる仕事を種類ごとに整理し、そのうえで資格の要否をどう見分けるかを書きます。資格の取り方や試験の話は扱いません。既に持っている方が、明日から何を探せばよいかだけをまとめます。
在宅の仕事は「資格が要件になるもの」と「そうでないもの」に分かれる
まず、全体の地図を描いておきます。
弁理士に関わる仕事は、大きく2つに分かれます。1つは、法令によって弁理士等に限られている業務。もう1つは、法令上の制限はないけれど、弁理士としての知識と経験があることで質と速度が大きく変わる業務です。
前者については、弁理士法に業務の定めがあり、特許庁への手続の代理などが規定されています。ここで大切なのは、個別の案件がこの範囲に当たるかどうかを、募集の文面だけで自己判断しないことです。募集する側が法律用語を正確に使っているとは限らず、実際にやることが文面から読み取れないケースが少なくありません。弁理士法の条文と日本弁理士会の案内を確認し、迷ったら受任前に照会してください。「この資格があるからここまでできる」と自分で線を引いてしまうのが、いちばん危ないところです。
後者は、範囲が広く、在宅との相性がとてもよい領域です。副業として始める方の入口も、ほとんどがこちら側にあります。
安心していただきたいのは、この2つの区別さえつけば、案件選びの迷いはかなり減るということです。むずかしいのは判断そのものではなく、判断の材料をどこで手に入れるかです。
資格が要件になる仕事の性質
こちらの領域から先に見ておきます。副業で受けるかどうかは別として、性質を知っておくと後の判断が速くなります。
出願手続の代理、拒絶理由通知への対応、審判の手続といった業務は、弁理士等に業務が限られている領域として扱われます。在宅でできないわけではなく、実際には書面の作成と提出はオンラインで完結する部分が多いため、物理的には自宅でも成立します。
ただし副業として受けるときには、別の論点が出てきます。所属している事務所や勤務先との関係、そして利益相反の問題です。弁理士法には利益相反行為に関する規定があり、扱う案件によっては受任できない場合があります。
また弁理士が副業をする場合、副業の内容によっては、弁理士法第三十一条に規定されている利益相反行為に該当する可能性もあります。 出典: hr.tokkyo-lab.com
この点は、案件ごとに個別の判断が必要になります。勤務先が扱っている出願と、副業で受ける案件の技術分野や当事者が重なっていないか。ここは自分だけで結論を出さず、勤務先と日本弁理士会の双方に確認するのが安全です。確認したという記録を残しておくと、後で説明できます。
心配になりすぎる必要はありません。多くの方が最初に受けるのは、次に説明する側の仕事だからです。
資格が要件にならない、けれど弁理士だから強い仕事
ここからが本題です。在宅の副業として現実的に受けやすいのは、こちらの領域になります。
先行技術調査と侵害予防調査
出願前の先行技術調査、他社特許の調査、無効資料の探索といった仕事です。検索式を組み、公報を読み、結果を整理して報告する。作業のほとんどがオンラインで完結するため、在宅と最も相性がよい仕事のひとつです。
この仕事に法令上の資格要件は置かれていませんが、実際に発注する側は「読める人」を探しています。請求項を読んで技術的範囲を把握できるかどうかが、調査の質を決めるからです。弁理士がこの仕事を受けると、調査の網の張り方が変わります。
納品の形は、報告書が基本です。ヒットした文献、除外した理由、残ったリスクを整理して渡します。ここで「除外した理由」を書けるかどうかが、次の依頼につながるかどうかを分けます。
明細書のドラフト補助とレビュー
明細書そのものを書く仕事と、書かれたものを見る仕事があります。事務所からの外注として、ドラフトの作成補助や、技術者が書いた原稿の整理を請け負う形が出てきています。
この領域は、技術分野の適合が重要です。自分が実務で扱ってきた分野の案件であれば、初めての相手でも進めやすい。逆に、分野が離れていると、読み込みの時間が想定を大きく超えます。受ける前に、対象技術が自分の守備範囲かどうかを確認してください。
知財関連の翻訳とチェック
外国出願に関わる翻訳、翻訳された明細書のチェック、優先権書類の確認といった仕事です。語学力と技術理解と法域の知識が同時に要求されるため、担い手が慢性的に不足しています。
翻訳会社が翻訳した成果物を、知財の観点からチェックする仕事もあります。文章としては正しいけれど、権利範囲が変わってしまう訳が混じっていないかを見る作業です。これは弁理士でなければ気づけない部分が多く、単価も相応に設定されます。
知財コンテンツの監修と執筆
企業のオウンドメディア、法律系のポータルサイト、スタートアップ向けの解説記事。知財をテーマにした記事は増え続けていますが、書き手が足りていません。
監修の仕事は、記事を読んで事実関係の誤りを指摘し、修正案を出すものです。作業時間が読みやすく、稼働時間の指定もないため、副業として始めるにはとても入りやすい系統です。
執筆まで含めて引き受ける場合は、書く技能が別途必要になります。ただし専門知識を持つ書き手は絶対数が少ないため、供給が薄い領域が残っています。専門知識を文章にする仕事の単価水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に職種別のデータがまとまっているので、値付けの目安として参照できます。知財の専門性が乗る分は、この水準より上に置いて交渉するのが妥当です。
社内研修と教材の作成
企業の知財部門や開発部門向けの研修資料、発明提案書の書き方を教えるワークシート、新入社員向けの知財の基礎教材。こういった素材を作る仕事も在宅で完結します。
登壇まで含めると時間の拘束が生まれますが、資料の作成だけを請け負う形もあります。1度作った教材を、内容を差し替えながら別の企業向けに展開できるため、時間あたりの効率が上がっていく仕事です。
AI関連サービスの知財レビュー
ここ数年で明確に増えているのが、AIサービスの提供にともなう知財の確認です。学習データの扱い、生成物の権利関係、サービス名の商標調査。技術者だけでは判断がつかない領域が広がっており、外部の専門家に確認を求める動きが出ています。
この分野で何が起きているかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、周辺の在宅案件の建て付けと合わせて整理されています。知財の知識を新しい出口に接続する選択肢として、見ておく価値があります。
募集要項のどこを読めば資格の要否が分かるか
では、実際の案件でどう見分けるか。確認するのは5点です。
1点目は、成果物が誰の名義で外部に出るかです。特許庁に提出する書面に自分の名前が載るのか、それとも事務所や企業の内部で使われるだけなのか。外部の機関に提出される書面に関わる仕事は、慎重な確認が必要な側に寄ります。
2点目は、依頼主が誰かです。特許事務所からの外注なのか、事業会社からの直接依頼なのか。事務所からの外注であれば、最終的な責任を事務所が負う建て付けになっていることが多く、こちらは補助として関わる形になります。
3点目は、募集要項に書かれている資格要件の書き方です。「弁理士資格必須」なのか「弁理士資格歓迎」なのか。歓迎と書かれている案件は、資格が法令上の要件ではなく、質の担保として求められていることを意味します。
4点目は、業務内容の動詞です。「代理する」「手続を行う」と書かれているか、「調査する」「作成を補助する」「確認する」と書かれているか。動詞に注目すると、性質が見えてきます。
5点目は、契約書の業務範囲の条項です。ここが最も確実です。募集の文面が曖昧でも、契約書には範囲が書かれます。書かれていない場合は、書いてもらってください。
判断がつかない案件は、受けないという選択も含めて考えてください。1件を逃すことより、範囲が曖昧なまま進めることのほうがリスクが大きい。この判断の考え方は他の士業でも共通していて、行政書士の資格ガイドにも、資格が要件になる仕事とならない仕事の分かれ方が整理されています。構造は同じなので、比較して読むと自分の分野の輪郭がはっきりします。
在宅で成立させるために整えるもの
仕事の種類が決まったら、環境の話になります。知財の仕事は、扱う情報の性質上、いくつか気をつける点があります。
秘密保持が最初です。未公開の発明情報を扱うため、秘密保持契約の締結が前提になる案件がほとんどです。契約書の内容は必ず読んでください。特に、情報の保存場所、返却や消去の方法、契約終了後の義務の期間の3点です。
作業環境も確認されます。自宅で作業する場合、家族が画面を見られる状態でないか、共有のパソコンを使っていないか。発注側から具体的に聞かれることがあります。
データの持ち方については、案件ごとにルールが違います。クラウドへの保存を禁じている発注者、指定のストレージだけを許可する発注者、それぞれです。自分の慣れたやり方を押し通さず、相手のルールに合わせてください。
在宅勤務そのものは、知財の領域でも定着してきています。
【待遇・福利厚生】通勤手当支給/在宅勤務手当支給/社会保険制度/副業OK(規定に順ずる)/在宅ワーク(業務都合による出社有)...知的財産権、商標申請、弁理士対応・固定資産管理、備品管理、オフィス管理... 出典: 求人ボックス
この条件が示しているのは、雇用の側でも在宅と副業の両方を認める例が出てきているということです。10年前と比べると、環境そのものは整ってきています。
勤務先との関係を先に整理しておく
在宅でできる仕事が分かっても、勤務先の規程が引っかかることがあります。ここは案件を探す前に確認しておいてください。
確認するのは3点です。副業が禁止か、許可制か、届出制か。同業の業務に関する制限があるか。そして、勤務時間外の活動について定めがあるか。
特許事務所に勤めている方は、2点目に注意が必要です。事務所によっては、個人での受任を一切認めていない場合があります。逆に、事務所の業務に支障がない範囲で認めている場合もあります。就業規則の該当箇所を先に読んで、それでも判断がつかないときだけ確認する、という順番がよいでしょう。
聞きにくいと感じる方は多いです。ただ、後から発覚したときに失うもののほうが大きい。ここは先に片づけておいてください。
報酬の形は3通りある
在宅案件の報酬の決まり方も、種類によって変わります。
調査や翻訳は、件数や文字数で決まることが多い形です。1件あたりいくら、1語あたりいくらという単価が提示されます。慣れると1件あたりの時間が短くなるため、時間あたりの手取りが上がっていきます。
監修は、対象の分量と深さで決まります。文字数あたりの場合と、1件あたりの場合があります。監修は読むだけに見えて、実際は根拠の確認に時間の大半を使います。ここを見込まずに値付けすると、割に合わなくなります。
研修や教材の作成は、成果物単位で決まります。作成に要する時間の見積もりがそのまま報酬になるため、最初の1件で自分の所要時間を測っておくと、次から見積もりが正確になります。
技術系の在宅案件全般の単価水準を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。知財の仕事と直接は重なりませんが、技術を扱う在宅の仕事がどのくらいの水準で動いているかの目安になります。
商標まわりは在宅案件の入口になりやすい
種類の話に戻ります。在宅で最初に受ける仕事として、商標に関わる領域はとても入りやすいところです。
理由は3つあります。ひとつは、扱う情報の秘匿性が特許ほど高くないこと。未公開の発明情報と違い、商標は候補となる名称の段階から相談が始まることが多く、秘密保持の運用が比較的軽くて済みます。もうひとつは、案件の単位が小さく、短時間で完結すること。そして3つ目は、依頼する側が個人事業主や小規模な事業者であることが多く、直接のやり取りが成立しやすいことです。
具体的には、こういう仕事があります。新しいサービス名が既存の登録商標と抵触しないかを調べる調査。指定商品と役務の区分をどう選べばよいかの整理。出願前に、その名称が登録される見込みがどのくらいあるかの見立て。そして、他社から警告を受けた事業者に対する状況の整理です。
このうち、調査と区分の整理は在宅で完結します。公報データベースを引き、類似の判断をし、結果を報告書にまとめる。慣れれば1件あたりの所要時間が読めるようになるため、副業として時間の管理がしやすい仕事です。
ここで注意が必要なのは、出願そのものの代理と、調査や助言の線引きです。どこからが代理に当たるのかは弁理士法の定めによりますが、実際の案件では両者が地続きに見えることがあります。依頼者から「ついでに出しておいて」と言われる場面が実際に起きます。受ける範囲を契約の段階で書面にしておくと、こうした場面で判断に迷わずに済みます。
商標の相談は、事業の立ち上げのタイミングで発生します。つまり、依頼者はその後も知財の相談先を必要としています。1件目が小さくても、そこから関係が続きやすいのが、この領域の特徴です。
スタートアップと個人事業主からの相談が増えている
もうひとつ、在宅で受けやすい領域として、規模の小さい事業者からの相談があります。
これまで知財の相談は、知財部を持つ企業と特許事務所の間で完結していました。近年変わってきたのは、知財部を持たない事業者が、自分たちで判断しなければならない場面に頻繁に直面するようになったことです。
たとえば、開発したソフトウェアの権利をどう整理するか。業務委託で作ってもらった成果物の権利が誰にあるのか。他社と共同開発するときに何を決めておくべきか。名称やロゴをどこまで守るべきか。こうした相談は、正式な出願案件になる前の段階です。
この段階の相談は、時間単位で受ける形が成立します。オンラインで1時間話を聞いて、論点を整理して渡す。継続的に相談窓口として関わる形もあります。事業の内容を理解するまでに時間はかかりますが、理解したあとは効率が上がっていく仕事です。
規模の小さい事業者は、特許事務所に相談することへの心理的な距離を感じていることが多い。そこに、在宅で相談を受ける弁理士が入ると、噛み合います。この噛み合いが、いま在宅案件が生まれている場所のひとつです。
在宅で回すための時間の組み方
仕事の種類が決まったら、次は時間です。ここを設計しないまま始めると、本業に影響が出て続かなくなります。
在宅の知財案件は、まとまった時間を必要とするものと、細切れでも進むものに分かれます。明細書のドラフトや調査の検索式を組む作業は、まとまった時間が要ります。集中が切れると質が落ちる種類の作業だからです。一方、公報を読んで分類する作業、監修の指摘を書く作業、翻訳のチェックは、細切れでも進みます。
副業として組むなら、まとまった時間が取れる曜日を週に1つ確保し、そこにドラフトと検索式の作業を寄せてください。残りの日は、細切れで進む作業に充てます。この配分を先に決めておくと、案件を受けるときに「これは自分の時間の形で回せるか」がすぐ判断できます。
もうひとつ、納期の設定について。専門職の在宅案件は、発注側が納期に余裕を持たせていることが多いのですが、その余裕を全部使い切らないほうがよいでしょう。想定より早く返ってくることが、次の依頼につながります。逆に、余裕があるからと後ろに寄せると、本業の繁忙と重なったときに逃げ場がなくなります。
無理のない範囲で始めてください。最初の数件は、自分の所要時間を測るための期間だと考えると気が楽になります。
最初の1件をどう選ぶか
種類も時間も整理できたら、あとは選ぶだけです。判断の基準を4つ挙げておきます。
1つ目は、自分の技術分野と重なっているかです。実務で扱ってきた分野の案件は、読み込みの時間が短く済みます。分野が離れている案件は、単価が高く見えても時間あたりでは割に合わないことがあります。
2つ目は、業務範囲が文書で確定しているかです。範囲が曖昧なまま始めると、途中で作業が膨らみます。契約書か、少なくともやり取りの記録に範囲が残っている案件を選んでください。
3つ目は、修正の回数に上限があるかです。監修や調査の案件では、追加の質問が際限なく来ることがあります。上限が決まっていれば、そこから先は追加の報酬の話ができます。
4つ目は、秘密保持の運用が現実的かです。指定された環境が自分の作業環境で用意できないなら、受けても続きません。契約前に確認してください。
この4点を満たす案件から始めれば、初回でつまずくことはまずありません。報酬の額は、この4点のあとに見れば十分です。
意匠と著作権が絡む案件も増えている
特許と商標に隠れがちですが、意匠に関わる在宅案件も出てきています。
背景にあるのは、製品の外観やサービスの画面デザインを保護しようとする動きです。画像意匠や建築物の意匠が保護の対象に加わったことで、これまで意匠を意識してこなかった事業者からの相談が生まれました。アプリの画面デザインをどう守るか、という相談は数年前にはほとんどありませんでした。
この領域の仕事は、既存の登録意匠の調査、類似の見立て、出願前の整理が中心です。図面の準備が必要になるため、デザイナーとのやり取りが発生することもあります。技術文書を読む作業とは毛色が違い、視覚的な判断が入ります。
あわせて相談が来やすいのが、著作権との境界です。デザインが意匠として保護されるのか、著作物として保護されるのか、あるいはどちらも難しいのか。この整理を求められる場面が増えています。弁理士の守備範囲と、弁護士に相談すべき領域の境目に近い相談も混じるため、どこまでを自分が引き受けるかを最初に決めておいてください。範囲外だと判断したときに、その旨をはっきり伝えられることも専門家の仕事のうちです。
意匠の相談は、製品の発売やサービスの公開の直前に持ち込まれることが多く、納期が短くなりがちです。副業として受けるなら、この点を見込んで、対応できる期間を先に伝えておくとよいでしょう。
もうひとつ、意匠の案件は依頼者がデザインの当事者であることが多く、思い入れの強い相談になりやすい面があります。調査の結果として「この形では登録がむずかしい」と伝えなければならない場面も出てきます。そのときに、代わりにどこを変えれば可能性が残るのかを一緒に考えられると、相談の受け止められ方がまるで変わります。結論だけを返すのではなく、次の一手を添える。この積み重ねが、継続の依頼につながっていきます。
運営者として見てきた、在宅の知財案件のいま
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、この領域について感じていることを書いておきます。
弁理士のような専門資格を持つ方が在宅の仕事に踏み出すとき、いちばんの障害になっているのは案件数ではありません。自分の技能を、発注する側が読める言葉で説明できていないことです。
知財の募集を出す企業の担当者は、多くの場合、知財の専門家ではありません。「先行技術調査ができます」と書かれても、それが自社の困りごとを解決するのかどうかが判断できないのです。ここで「新しい製品を出す前に、他社の権利に引っかからないかを確認する作業です」と一言添えられる方は、同じ資格でも結果が変わります。
もうひとつ観察として申し上げると、長く続いている方は、仕事の相手を増やす方向ではなく、少数の相手との関係を厚くする方向に時間を使っています。知財の仕事は、相手の事業や技術の背景を理解しているかどうかで、同じ作業でも所要時間が大きく変わります。2度目、3度目の依頼のほうが楽になるのは、そのためです。
その関係の積み上がりに効いてくるのが、取引の経路です。仲介の手数料が乗らない形で発注者と直接やり取りできる経路を持っている方は、手数料0%で取引できる分だけ受け手の手取りが厚くなり、発注する側から見れば同じ予算でより多く頼めることになります。金額の差そのものより、この構造が関係の続きやすさに効いている。20年見てきた限り、単価が上がっていく方ほど、この経路を早い段階で確保しています。
最後にひとつ。知財の在宅案件は、まだ「探せば見つかる」という段階には至っていません。募集の形になる前に、知り合いを通じて動いている割合が高い領域です。だからこそ、応募材料を整えたうえで、以前の職場や研修で知り合った方に「在宅で受けられる形の仕事を探している」と伝えておくことが、いちばん効きます。技能を持っていることは、伝わらなければ存在しないのと同じです。焦らず、一つずつで大丈夫ですよ。
よくある質問
Q. 弁理士の資格がないと受けられない在宅案件はどれですか?
特許庁への手続の代理など、弁理士法で業務が限られている領域が該当します。ただし個別の案件がこの範囲に入るかどうかは募集の文面だけでは判断できないことが多いため、弁理士法の条文と日本弁理士会の案内で確認し、迷う場合は受任前に照会してください。
Q. 資格が要件にならない在宅の仕事にはどんなものがありますか?
先行技術調査や無効資料調査、明細書のドラフト補助とレビュー、知財関連の翻訳とチェック、知財記事の監修と執筆、企業向け研修教材の作成などです。いずれも法令上の資格要件はありませんが、請求項を読める人が担うことで質が大きく変わるため、実務では弁理士が求められています。
Q. 募集要項から資格の要否を見分けるにはどこを見ればよいですか?
成果物が誰の名義で外部に出るか、依頼主が事務所か事業会社か、資格要件が必須と書かれているか歓迎と書かれているか、業務内容の動詞が代理なのか調査や補助なのか、そして契約書の業務範囲の条項の5点です。最も確実なのは契約書の条項です。
Q. 特許事務所に勤めながら在宅で副業を受けても問題ありませんか?
勤務先の就業規則の確認が先です。事務所によっては個人での受任を認めていない場合があります。あわせて、扱う案件が勤務先の案件と当事者や技術分野で重なっていないかを確認してください。弁理士法には利益相反に関する規定があるため、自己判断せず勤務先と日本弁理士会の双方に確認するのが安全です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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