アルバイトの労働時間が40時間を超えたとき|割増賃金と掛け持ちの数え方


この記事のポイント
- ✓アルバイトで40時間以上働いたときの残業代の計算方法
- ✓1週間の数え方の起算日
- ✓掛け持ち時の通算ルールまでを実務目線で解説
先日、居酒屋でアルバイトをしている方から相談を受けました。「今月はシフトが埋まらなくて、店長に頼まれて週46時間入った週があるんです。でも給与明細を見たら、全部同じ時給のまま。これって普通ですか?」と。結論から言うと、普通ではありません。アルバイトであっても、1週間の労働時間が40時間を超えた分には25%以上の割増賃金が発生します。しかもその前提として、会社は36協定(サブロク協定)を結んで労働基準監督署に届け出ていなければ、そもそも40時間を超えて働かせること自体が違法です。これ、知らない人が本当に多いんです。
この記事では、「アルバイト 40時間以上」で検索する方がいちばん知りたいであろう、単一の勤務先で週40時間を超えたときの残業代の計算、36協定の意味、1週間の数え方の落とし穴、そして未払いだったときにどう動くかまでを、条文を噛み砕きながら順番に整理していきます。掛け持ちで合算して40時間を超えるケースについても、労働基準法38条の通算ルールとして後半でしっかり扱います。
アルバイトの週40時間は「働いてはいけない上限」ではなく「割増が始まるライン」
まず前提を揃えます。労働基準法32条は、使用者は労働者に休憩時間を除いて1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならないと定めています。これが法定労働時間です。ここで多くの方が誤解するのが、「40時間を超えたら即アウトで、働くこと自体が禁止される」という理解です。実際には、後述する36協定という手続きを踏めば、40時間を超えて働かせることは合法にできます。ただしその場合、超えた分には必ず割増賃金を払う義務が生じます。
つまり週40時間は、「絶対に超えてはいけない壁」ではなく、「超えるなら手続きと追加の賃金が必要になるライン」です。この違いを押さえておくと、店長から「今週は40時間超えるけど大丈夫だよね?」と言われたときに、何を確認すべきかが見えてきます。確認すべきは2つ。36協定は届け出されているか、そして超過分の時給は1.25倍になっているか、です。
法定労働時間と所定労働時間を混同しない
実務でいちばん多い勘違いが、法定労働時間と所定労働時間の取り違えです。所定労働時間とは、雇用契約書やシフトで「あなたはこの時間働きます」と決められた時間のこと。法定労働時間は、法律が定めた上限です。
たとえば契約上の所定労働時間が週30時間のアルバイトが、ヘルプで週36時間働いたとします。この6時間分は「残業」ではありますが、法定労働時間の40時間には達していません。したがって法律上は割増賃金の義務がなく、通常の時給を払えば足ります。これを法内残業(法定内残業)と呼びます。一方、週44時間働いたなら、40時間を超えた4時間は法定外残業となり、25%の割増が必須になります。
ここを理解していないと、「残業したのに時給が上がっていない、違法だ」と主張しても、会社側に「所定を超えただけで法定内です」と返されて話が止まります。逆に、雇用契約書や就業規則で「所定時間を超えたら一律1.25倍」と定めている職場もあり、その場合は法律より有利な社内ルールが優先されます。まず自分の雇用契約書を見て、所定労働時間が週何時間になっているかを確認するところから始めてください。
アルバイトだから残業代が出ない、は成立しない
「正社員じゃないから残業代はない」という説明を受けたという相談は、今でも定期的に届きます。しかし労働基準法は、雇用形態で適用を分けていません。アルバイト、パート、契約社員、日雇い、学生、いずれも労働者であり、割増賃金の規定は等しく適用されます。時給制であっても、日給制であっても、月給制であっても同じです。
例外的に割増賃金の一部が適用されないのは、管理監督者(労基法41条2号)や、農業・水産業などの一部業種に限られます。アルバイトが管理監督者に該当することは、実務上ほぼありません。店長という肩書きがついていても、シフトを自分で決められない、賃金が一般従業員と大差ない、経営に関与していないといった実態があれば、名ばかり管理職として割増賃金の支払い対象になります。
なお、労働基準法上の請求権の消滅時効は、当面の間3年とされています。つまり3年前までさかのぼって未払い残業代を請求できます。給与明細とシフト表は最低でも3年分は捨てずに残しておくことを強くおすすめします。※個別の請求可否や金額の算定は事案によって変わるため、実際に請求する段階では弁護士や労働組合に相談してください。
40時間を超えさせるには36協定が絶対に必要
ここが今回の記事の核心です。会社が週40時間または1日8時間を超えて働かせるためには、労働基準法36条にもとづく労使協定、いわゆる36協定を結び、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。届出をしていない状態で40時間を超えさせた場合、その残業命令自体が違法であり、使用者には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という罰則が予定されています。
つまり、割増賃金を払っていれば何時間でも働かせていいわけではありません。「お金は払っているから問題ない」という説明は、36協定の届出という前提を飛ばした説明です。労働時間に関する行政の考え方や届出様式は厚生労働省が公開しています(厚生労働省)。
36協定はアルバイトにも効力が及ぶ
36協定は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者と、使用者との間で締結します。ここでいう「労働者」にはアルバイトやパートも当然含まれます。過半数代表者を選ぶ投票や信任の手続きに、アルバイトが一切参加していない職場は珍しくありませんが、本来は含めて母数を数えなければなりません。
私が相談を受けた小売店では、社員3人とアルバイト28人という構成なのに、過半数代表者を社員3人だけで決めていました。これは手続きの瑕疵にあたり、協定自体の有効性が問題になります。自分の職場の36協定が有効かどうかを確かめたいときは、まず事業場に掲示されているか、書面で交付されているかを見てください。労基法106条により、36協定は労働者に周知する義務があります。休憩室に掲示されていない、聞いても出てこないという職場は、そもそも届出をしていない可能性があります。
残業には上限がある。月45時間・年360時間
36協定を結べば無制限に働かせられるわけでもありません。2019年以降、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間と法律に明記され、罰則付きの規制になりました。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、単月100時間未満(休日労働を含む)、月45時間を超えられるのは年6回まで、という枠がかかります。
週40時間を毎週10時間ずつ超えると、月におよそ43時間の時間外労働になり、原則の月45時間にほぼ張り付きます。「フルタイムのアルバイトで週50時間くらい入っている」という状態は、上限規制のラインを常に意識しなければならない領域です。ここは注意が必要なポイントで、シフトを増やしてほしいと頼まれたときも、月単位の合計を自分で把握しておくと交渉しやすくなります。
割増賃金の計算を具体的な数字で追いかける
理屈だけでは自分の給与明細が正しいか判断できません。実際の数字で計算してみます。割増率は労働基準法37条と関連省令で次のように定められています。時間外労働(法定労働時間超)は25%以上、深夜労働(22時から翌5時)は25%以上、法定休日労働は35%以上。さらに1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は50%以上となり、これは2023年4月から中小企業にも適用されています。
時給1,200円で週46時間働いたケース
時給1,200円のアルバイトが、ある週に休憩を除いて46時間働いたとします。内訳を分けます。
| 区分 | 時間 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法定内労働 | 40時間 | 1,200円 | 48,000円 |
| 時間外労働(25%増) | 6時間 | 1,500円 | 9,000円 |
| 合計 | 46時間 | 57,000円 |
もし会社が全時間を1,200円で計算していたら、46時間×1,200円=55,200円となり、差額の1,800円が未払いです。1週間で1,800円なら小さく見えるかもしれませんが、これが1年続けば9万円を超えます。時効の3年分をさかのぼれば28万円近くになる計算です。
深夜と重なったら割増は足し算になる
もう一段ややこしいのが、時間外と深夜が重なるケースです。飲食や小売の夜シフトでは頻繁に起こります。時間外の25%と深夜の25%は別々の規制なので、重なった時間は合算して50%増になります。時給1,200円なら、時間外かつ深夜の時間帯は1,800円です。
法定休日に働き、かつ深夜にかかった場合は、休日割増35%と深夜割増25%で合計60%増。時給1,200円なら1,920円になります。なお法定休日労働に時間外割増は重ねません。休日労働はもともと法定労働時間の枠外の扱いになるためです。この重複ルールは実務でも間違いが多いところなので、給与明細の項目が「時間外」「深夜」「休日」に分かれているかを確認してみてください。項目が1つしかない職場は、計算が丸められている可能性があります。
1分単位で計算するのが原則
「15分未満は切り捨て」という運用をしている職場は今でも見かけますが、労働時間は1分単位で計算するのが原則です。日ごとに端数を切り捨てるのは労働基準法24条の全額払いの原則に反します。
例外的に認められているのは、1か月の時間外労働の合計時間数に30分未満の端数が生じたときに切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理だけです。あくまで月単位の合計に対する処理であり、毎日15分ずつ削る運用は認められません。1日15分の切り捨てを月20日分やられると、月5時間が消えます。時給1,200円なら月6,000円、年間で7万円以上の損失です。タイムカードの打刻時刻と給与明細の労働時間を突き合わせてみると、この手のズレはすぐに見つかります。
1週間の数え方でつまずく3つのポイント
「週40時間」と言われても、その1週間がいつからいつまでなのかが分からないと計算できません。ここでつまずいている方がとても多いです。
起算日は日曜日とは限らない
労働基準法上の1週間は、就業規則などに別段の定めがなければ日曜日から土曜日までとされています。ただし、就業規則で「1週間は月曜起算とする」と定めていれば、そちらが優先されます。締め日とは別物である点にも注意してください。給与の締めが月末でも、週の起算日は日曜または就業規則で定めた曜日です。
この違いは実際の金額に直結します。たとえば土日に集中してシフトが入る職場で、金土日に長時間働いた場合、起算日が日曜なら「金土」と「日」が別の週に分かれ、どちらも40時間に達しないことがあります。しかし月曜起算なら金土日が同じ週に収まり、40時間を超えて割増が発生する、ということが起こります。まずは就業規則の労働時間の章を確認してください。
1日8時間の縛りも同時にかかる
週40時間だけを見ていると見落とすのが、1日8時間の規制です。両方が同時にかかり、二重に数えることはしません。たとえば1日10時間働いた日が週に1日あり、その週の合計が38時間だったとします。週の合計は40時間以内ですが、その日の8時間を超えた2時間は日単位で時間外労働になり、割増の対象です。
逆に、1日6時間ずつ7日間働いて合計42時間になった場合は、日単位ではどの日も8時間以内ですが、週の合計が40時間を超えた2時間分が時間外労働になります。実務では、まず日ごとに8時間超の部分を拾い、それを除いた残りで週40時間超の部分を拾う、という順序で計算します。この順序を逆にすると二重計上になるので気をつけてください。
休憩時間は労働時間に含めない
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが労基法34条で義務づけられています。この休憩時間は労働時間にカウントしません。9時から19時まで店にいても、途中で1時間の休憩を取っていれば労働時間は9時間です。
ただし、休憩と称して電話番をさせられている、制服のまま店内で待機させられている、来客があれば対応する前提で座っている、といった状態は休憩ではなく手待ち時間であり、労働時間に含めます。使用者の指揮命令下から解放されているかどうかが判断基準です。休憩中に呼び戻されることが常態化している職場では、この点を記録に残しておくと後で効いてきます。
なお、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業には特例があり、週の法定労働時間が44時間となります。小さな飲食店や理美容室などが該当することがあり、この場合は44時間を超えた分から割増が始まります。自分の職場が特例事業場かどうかも確認しておきたいポイントです。
掛け持ちのときは労働時間を通算する
ここからが掛け持ちの話です。労働基準法38条1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。この「事業場を異にする場合」には、事業主が違う場合も含まれるというのが行政解釈です。つまり、A社で週30時間、B社で週15時間働けば、合計45時間となり、40時間を超えた5時間は時間外労働として扱われます。
現場では、この通算ルールを知らないまま掛け持ちを始めて、後から会社に指摘されて慌てるケースが後を絶ちません。実際、こんな相談がインターネット上にも数多く投稿されています。
いまアルバイトとタイミーの掛け持ちをしており週40時間超えています。この場合どうなりますか? いままで40時間以上になるといけないことを知らずまた店長から言われたこともなかったのでタイミーを始めてから知りどうしたらいいか困っています。教えてください。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
まず落ち着いていただきたいのは、通算して40時間を超えること自体は、働く側が罰せられる話ではないという点です。労働基準法が義務を課しているのは使用者であって、労働者ではありません。ペナルティを受けるのはあくまで会社側です。
割増賃金を払うのは「後から契約した会社」が原則
では、通算して超えた分の割増賃金は、どちらの会社が払うのか。原則は、時間的に後から労働契約を結んだ会社です。先に働いていたA社が週30時間で、後から始めたB社で15時間働いたなら、B社が超過分の5時間について割増賃金を負担します。B社からすれば自社では15時間しか働かせていないのに割増義務が生じるわけで、だからこそ多くの企業が採用時に「他社での勤務時間を申告してください」と求めます。
ただし例外もあります。すでに両方で働いている状態で、A社が所定を超えて追加のシフトを入れた結果として40時間を超えたなら、その超過を発生させたA社が負担します。判断基準は「どちらの会社の指示によって法定労働時間を超えたか」です。
この仕組みが分かると、面接時に掛け持ちを伝えたのに「週40時間を超えないでください」と言われる理由も見えてきます。会社は割増賃金の負担と、上限規制違反のリスクを避けたいのです。実際、次のような困りごともよく見かけます。
ダブルワーク 週40時間以上の勤務について
面接時にダブルワークの事を伝え、その上で採用をいただきました。採用を頂いた会社は本日からアルバイトという事で入社致しました。そして本日、研修説明の際に「ダブルワークをしている方については週40時間以上超えないようにしてください」と言われました。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
このケースで取るべき対応は明確です。両社の週あたりの所定時間を紙に書き出し、合計が40時間に収まるようにシフトを組む。収まらないなら、どちらかの所定を減らすか、後から契約した会社に割増賃金の支払いを含めて相談する。黙って超え続けると、後から会社間で発覚したときに一方のシフトを削られる展開になりがちです。先に伝えておくほうが、結果的に働き方を守れます。
社会保険と雇用保険の扱いも同時に確認する
労働時間が増えると、保険の加入要件にも触れてきます。社会保険(健康保険・厚生年金)は、1つの事業所で週の所定労働時間が正社員の4分の3以上、おおむね週30時間以上で加入対象です。加えて、従業員数の要件を満たす事業所では、週20時間以上、月額賃金8.8万円以上、学生でないなどの条件で短時間労働者も適用対象になります。この適用範囲は段階的に拡大が続いており、最新の要件は日本年金機構の案内で確認してください(日本年金機構)。
ここで重要なのは、社会保険の加入判定は「事業所ごと」であり、掛け持ち先の時間を通算しない点です。労働時間の通算(労基法38条)と、社会保険の加入判定はまったく別のルールで動きます。A社20時間、B社20時間で合計40時間でも、それぞれの事業所での要件を満たさなければ加入対象にならないことがあります。両方で要件を満たした場合は、二以上事業所勤務の届出をして、報酬を合算して保険料を計算する扱いになります。
雇用保険も原則として主たる賃金を受ける1社でのみ加入します。掛け持ちで時間だけ増えても、保障が自動的に厚くなるわけではないという点は、働き方を設計するうえで知っておきたい注意点です。
残業代が支払われていないときの実務手順
計算してみて未払いがありそうだと分かったら、次は回収の話です。感情的に会社と対立する前に、順番を踏むほうが結果的に早く解決します。
手順1、証拠を確保する
最優先は記録です。タイムカードの打刻記録、シフト表、給与明細、雇用契約書、就業規則。会社が保管しているものは、退職後に開示を求めても応じてもらえないことがあるため、在職中にコピーやスマートフォンでの撮影をしておいてください。
会社が記録をつけていない場合でも、あきらめる必要はありません。自分でつけた業務日誌、始業と終業時刻を記録したメモ、出退勤時のスマートフォンの位置情報履歴、業務用チャットの発信時刻、家族へのメッセージの送信時刻なども、労働時間を推認する資料として使われた例があります。手書きのメモでも、毎日継続して記録されていれば証拠価値が認められることがあります。今日から始めても遅くありません。
手順2、会社に書面で請求する
証拠が揃ったら、まずは会社に対して支払いを求めます。口頭ではなく書面で行うのが原則です。未払いの期間、対象となる時間数、計算根拠、請求額を明記します。内容証明郵便で送れば、請求した日付と内容が公的に記録され、時効の完成を6か月間猶予する効果(催告)も得られます。
書面を出すと関係が悪化するのではと心配される方は多いのですが、未払い賃金の請求を理由に解雇したり不利益な扱いをしたりすることは違法です。労基法104条2項は、監督機関への申告を理由とする不利益取扱いを明確に禁止しています。もし請求後にシフトを大幅に削られたなど不利益があれば、それ自体が別の問題として争える材料になります。
手順3、労働基準監督署や専門家に相談する
会社が応じない場合は、労働基準監督署への申告、労働局のあっせん、労働審判、訴訟といった選択肢があります。労働基準監督署は行政機関なので、法違反があれば是正勧告を出しますが、個別の金額を取り立ててくれる機関ではありません。金額の回収を確実にしたいなら、労働審判や訴訟が現実的です。
費用が心配な場合は、法テラスの民事法律扶助や、各地の労働組合(個人加盟できるユニオン)の相談窓口も選択肢になります。※未払い額が大きい、複数年にわたる、退職と絡むといったケースでは、初期の対応を誤ると回収額が変わります。早い段階で弁護士に相談してください。
私自身、相談を受けた中でいちばん悔しかったのは、3年半前からの未払いに気づいた方のケースでした。時効の3年を超えた半年分は、どうやっても取り戻せませんでした。気づいた時点ですぐ動くことが、最大の防御になります。
時間の上限に縛られない働き方という選択肢
ここまで読んで、「そもそも40時間の枠に収めながら収入を増やすのは難しい」と感じた方もいるはずです。実際、雇用契約で時間を売る働き方には、法律が定めた明確な天井があります。1日8時間、週40時間、月45時間の時間外。これは労働者を守るための規制であり、同時に収入の伸びしろを構造的に制限するものでもあります。
その天井を外す選択肢が、雇用契約ではなく業務委託契約で仕事を受ける働き方です。業務委託は労働基準法の労働時間規制の対象外なので、そもそも週40時間という概念がありません。報酬は時間ではなく成果物や業務の遂行に対して支払われます。ただし当然ながら、割増賃金も有給休暇も労災保険(特別加入を除く)もありません。守られない代わりに、時間の使い方を自分で決められる。この交換条件を理解したうえで選ぶことが大切です。
なお、業務委託と言いながら実態が雇用と変わらない、いわゆる偽装請負には注意が必要です。始業終業時刻を指定される、業務の進め方を細かく指揮命令される、他社の仕事を受けることを禁じられる、といった実態があれば、契約書の名称にかかわらず労働者と判断され、労働基準法が適用されます。その場合は40時間超の割増賃金も請求できます。2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)も含め、業務委託で働く人を守る枠組みは整備が進んでいます。法律はあなたの味方です。
在宅で業務委託の仕事を探し始めるなら、まず求人の見極め方を知っておくと遠回りせずに済みます。在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説では、求人の探し方と、避けるべき募集の見分け方を初心者向けに整理しています。また、実際に在宅で働く人がどう1日を組み立てているかは在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開が参考になります。時間を自分で管理する働き方は、集中の維持そのものがスキルになるため、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックのような具体的な技術も知っておくと立ち上がりが早くなります。
独自データから見る、時間ではなく成果で報酬を得る職種
フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、週40時間の壁を意識して働き方を変える人には、はっきりした共通点があります。それは、時間単価の引き上げを狙うのではなく、「同じ作業を短時間で終えられる領域」に移動していることです。時給制の仕事は、収入を増やす手段が労働時間の追加しかありません。だから40時間の壁に突き当たる。一方、成果物で報酬が決まる仕事は、習熟すれば同じ報酬をより短い時間で得られるようになります。
在宅・業務委託の職種別データを見ると、その傾向がはっきり出ます。ソフトウェア開発の領域は、成果物単位の契約が定着していて、経験年数に応じて単価が階段状に上がっていく構造です。市場相場の目安はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。文章を書く仕事も同様で、文字単価から記事単価、さらに月額の顧問契約へと契約形態が変わっていく人が多く、その相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。
案件の中身を具体的に知りたいなら、職種ごとのガイドが手がかりになります。近年いちばん需要の伸びが目立つのは生成AIの導入支援で、AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、業務フローの棚卸しから運用定着までを支援する仕事の実像がまとまっています。マーケティングやセキュリティと組み合わせた領域はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発系の実務はアプリケーション開発のお仕事が入り口になります。
資格を足がかりにするのも現実的な方法です。事務や広報の在宅案件では、書類の型を外さない力がそのまま信頼につながるため、ビジネス文書検定のような基礎資格が地味に効きます。インフラ領域に進むならCCNA(シスコ技術者認定)が定番で、未経験から実務に入る際の説得材料になります。資格そのものが仕事を連れてくるわけではありませんが、実績がない段階で「この人は基礎を押さえている」と伝える手段としては有効です。
運営者として長く見てきて実感するのは、長く続く人ほど、単発の作業をこなすことより「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っているという点です。納品が早い、確認の往復が少ない、こちらが言語化できていない要望を先に拾ってくれる。こうした積み重ねが、次の依頼と単価の引き上げを生みます。時間を売る働き方では、この積み重ねが報酬に反映されにくい。同じ40時間でも、時間で売るか関係で売るかで、3年後の景色がまるで違ってきます。
もうひとつ、額面ではなく手取りの話をしておきます。仲介手数料が乗らない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くの仕事を頼めて、受ける側は手元に残る金額が厚くなります。手数料0%の意味は、単価が高いことではなく、決まった報酬がそのまま手取りになるという質の違いです。運営者として見てきた限り、この差は1件では小さくても、継続案件を数年積み上げたときに無視できない開きになります。週40時間の枠内でどう稼ぐかを考えるのと同じくらい、受け取った金額のうちいくらが自分に残るのかを見る視点を持っておいてください。
よくある質問
Q. アルバイトで週40時間を超えたら、時給はいくらになりますか?
40時間を超えた分は通常の時給の1.25倍以上になります。時給1,200円なら1,500円です。22時から翌5時の深夜に重なればさらに25%が加算されて1.5倍、法定休日なら1.35倍、休日かつ深夜は1.6倍になります。給与明細の項目が「時間外」「深夜」「休日」に分かれているか確認してください。
Q. 掛け持ちで合計40時間を超えると、自分が罰せられますか?
労働者が罰せられることはありません。労働基準法が義務を課しているのは使用者です。超過分の割増賃金は、原則として後から労働契約を結んだ会社が負担します。ただし会社側が負担やシフト調整を嫌うため、面接時と入社後に他社での勤務時間を正直に伝えておくと、後からシフトを削られるトラブルを避けられます。
Q. 36協定が届け出されていない職場で40時間を超えて働かされたらどうなりますか?
その残業命令自体が違法で、使用者には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が予定されています。36協定は労働者への周知義務があるため、休憩室への掲示や書面交付があるか確認してください。見当たらない場合は、労働基準監督署に匿名で相談することもできます。
Q. 未払いの残業代は何年前までさかのぼって請求できますか?
当面の間、時効は3年です。給与明細、タイムカードの記録、シフト表は最低3年分保管してください。会社が記録を残していない場合でも、自分でつけた出退勤メモや業務チャットの送信時刻が証拠として認められることがあります。金額が大きい場合や退職が絡む場合は、早い段階で弁護士に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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